特開2015-225811(P2015-225811A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-225811(P2015-225811A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】長尺PTCヒーター
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20151117BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   H05B3/14 A
   H05B3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-111452(P2014-111452)
(22)【出願日】2014年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲生
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一徳
(72)【発明者】
【氏名】上山 啓太
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA02
3K092QA05
3K092QB21
3K092QB30
3K092RC01
3K092RC16
(57)【要約】
【課題】部品点数を少なくできるとともに、界面の生成をなくすことで、切断面である先端部の封止(密閉性・気密性)を一層向上させた長尺PTCヒーターを提供する。
【解決手段】第1および第2の長尺給電線11、12、給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体13、および給電線および発熱体を包囲する2層絶縁材料からなる被覆16、22を備えた長尺PTCヒーターA1において、その長尺PTCヒーターの一方の端部は、外側の絶縁材料からなる被覆22の融着によって封止部23とされている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の長尺給電線、前記給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体、および前記給電線および発熱体を包囲する2層または2層以上の絶縁材料からなる被覆を少なくとも有してなる長尺PTCヒーターであって、前記長尺PTCヒーターの一方の端部は、最も外側の絶縁材料からなる被覆の融着によって封止されていることを特徴とする長尺PTCヒーター。
【請求項2】
前記2層または2層以上の絶縁材料からなる被覆の少なくとも1つの層間には金属の編組線によるシールドが介装されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺PTCヒーター。
【請求項3】
前記正温度係数特性を備えた発熱体は、導電体粉末を含む樹脂組成物からなるチップ状の発熱体であることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺PTCヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は正温度係数特性を備えた長尺PTCヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
正温度係数(PTC)特性を備えた発熱体を備えた長尺PTCヒーターは知られており、柔軟性があり敷設が容易なことから、融雪等の用途に広く用いられている。ここで、PTC特性とは、Positive Temperature Coefficientの頭文字を取ったものであり、温度が高くなると電気抵抗が正の数の係数だけ変化する特性をいう。その一例として、特許文献1には、第1および第2の長尺給電線、前記給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体、および前記給電線および発熱体を包囲する2層構造の絶縁材料からなる被覆を少なくとも有してなる長尺PTCヒーターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2758263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の形態の長尺PTCヒーターは、通常、数十mから数百mの長さのものとして製造され、巻き取りドラム等にロール状に巻き取られて保管されており、実使用に当たっては、施工現場に応じた適宜の長さに切断される。切断面には第1および第2の長尺給電線などの切断面が露出した状態となっており、切断面に水分が付着すると給電線間での短絡が生じる恐れがある。それを回避するために、特許文献1に記載の長尺PTCヒーターでは、切断面である先端部の絶縁封止のために封止用のハウジングを別途用意し、それをヒーターの先端部に取り付けるようにしている。また、特許文献1に記載のものでは、ヒーターの先端部付近でのより適切な環境的封止を達成するために、グリース、接着剤、マスチック、ゲルのように、圧縮下でヒーターの表面の周囲に適合して封止を形成する材料も配置するようにしている。
【0005】
長尺PTCヒーターにおいて、先端の絶縁封止を別部材を用いて行うことは、部品点数の増加を招く。また、別部材で絶縁封止する場合には、ヒーター本体と封止用のハウジングとの間に界面が生成されるのを避けることができないので、気密性の信頼性に限界が生じる。封止用のハウジング内に気密性を保持するために樹脂や接着剤を封入する場合にも、それらの充填の状態や寿命により界面が生成される恐れがあり、その界面から水分が侵入することで絶縁性低下を招く恐れがある。
【0006】
本発明は、従来の長尺PTCヒーターが持つ上記の不都合を解消することにあり、部品点数を少なくできるとともに、界面の生成をなくすことで、切断面である先端部の封止、すなわち、密閉性・気密性を一層向上させた長尺PTCヒーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による長尺PTCヒーターは、第1および第2の長尺給電線、前記給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体、および前記給電線および発熱体を包囲する2層または2層以上の絶縁材料からなる被覆を少なくとも有してなる長尺PTCヒーターであって、前記長尺PTCヒーターの一方の端部は、最も外側の絶縁材料からなる被覆の融着によって封止されていることを特徴とする。
【0008】
上記の長尺PTCヒーターでは、給電線および発熱体を包囲する絶縁材料からなる被覆自体を熱融着することで先端部の封止を行っている。そのために、絶縁封止用の部材を別途用意することを要しないので、ヒーターとしての部品点数は低減する。また、封止は、絶縁材料からなる被覆自体を熱融着することで行われるので、融着面に界面が生じる恐れはなく、長時間にわたって先端部の高い密閉性、気密性が維持される。
【0009】
本発明による長尺PTCヒーターの一態様では、前記2層または2層以上の絶縁材料からなる被覆の少なくとも1つの層間には金属の編組線によるシールドが介装されていることを特徴とする。このシールドは、アース線としての機能、ヒーターそのものに対する外力からの保護機能、均熱材としての機能などを果たすことができ、長尺PTCヒーターの利便性が向上する。
【0010】
本発明による長尺PTCヒーターにおいて、前記正温度係数特性を備えた発熱体は、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックスからなるものであってもよく、カーボンブラックのような導電体粉末を含む樹脂組成物からなるものであってもよい。後者の場合には、発熱体が柔軟性を備えているので、より可撓性、柔軟性に富んだ長尺PTCヒーターとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品点数が少ないにもかかわらず、切断側端部の高い封止性が確保された長尺PTCヒーターが得られる。そのために、本発明による長尺PTCヒーターは切断側端部の気密性を確実に保持することができ、長期にわたり絶縁性能が衰えることのない長尺PTCヒーターとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】長尺PTCヒーターにおける第1および第2の長尺給電線および給電線の間で並列に接続されている複数の正温度係数特性を備えた発熱体の一例を説明するための図。
図2】長尺PTCヒーターにおける給電線および発熱体が絶縁材料からなる第1の被覆によって覆われた状態を説明する図。
図3図2に示す長尺PTCヒーターの第1の被覆をさらに金属の編組線によるシールドと絶縁材料からなる第2の被覆で覆った状態を説明する図。
図4図3に示す長尺PTCヒーターをベースとする本発明による長尺PTCヒーターの一例を説明する図。
図5図4に示す本発明による長尺PTCヒーターの一例を長手方向の断面で示す図。
図6】本発明による長尺PTCヒーターのさらに他の例を説明する図。
図7】本発明による長尺PTCヒーターのさらに他の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による長尺PTCヒーターの幾つかの実施の形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
[長尺PTCヒーター線の説明]
最初に、本発明による長尺PTCヒーターA1(図4図5参照)のベースとなる長尺PTCヒーター線30の一例(図3参照)について説明する。図1は、長尺PTCヒーター線30の発熱部10を説明するための斜視図であり、好ましくは銅単線のより線または編組線である第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12とを備え、第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12の間には複数の正温度係数特性を備えたチップ状の発熱体13の複数個が並列に接続されている。
【0015】
チップ状の発熱体13は、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックスからなるものであってもよく、カーボンブラックのような導電体粉末を含む樹脂組成物からなるものであってもよい。後者の場合、導電体粉末としては、カーボンブラック、ニッケルなどの導電体粉末が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラックおよびファーネスブラックで表面積が大きいもの、例えば、バルカンXC−72(キャポット社製品)、コンチネックスN330(カポット社製品)などが挙げられる。導電体粉末の平均粒径は40〜70μmであるか、それより大きな平均粒径のものあるいはそれより小さい平均粒径のものと混合したものでもよい。樹脂組成物とは、ポリマーとして一般に使用されている高分子材料であってよく、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリエステル、フッ素樹脂、フッ素系ゴム、アクリルゴム、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。
【0016】
導電体粉末の樹脂組成物に対する添加量は、樹脂組成物100質量部に対して、15〜30質量部であることが好ましい。導電体粉末の添加量が少なすぎると抵抗値が大きくなりすぎて発熱しなくなる。逆に多くなりすぎると抵抗が低くなると同時に、抵抗値の温度依存性がなくなりPTC特性を示さなくなる。
【0017】
第1の長尺給電線11および第2の長尺給電線12とチップ状の発熱体13とは、両者を機械的および電気的に接続するめの金属端子14によってかしめられて一体化している。チップ状の発熱体13の形状に制限はないが、この例では、幅がD、長さがL、厚みがHの直方体をなしており、一例として、幅D:8mm、長さL:6mm、厚みH:1.6mmの寸法である。可撓性を向上させるために、発熱体13での幅D/長さLの値Pが1または1以上であることが望ましい。金属端子14の素材としては、銅、リン青銅、鉄、鉄ニッケル合金、金、銀、アルミニウムなどを用いることができる。また、好ましくは、発熱体13と金属端子14との間には、導電ペースト15が塗布される。
【0018】
なお、隣接するチップ状の発熱体13、13間の距離は、所要の加熱環境が得られることを条件に任意であってよいが、通常は、1〜100mm程度の範囲である。また、隣接するチップ状の発熱体13、13の距離はすべて同じであってもよく、異なった間隔で配置されていてもよい。
【0019】
図1に示す発熱部10は、一般に、図示しない巻き取りドラムにロール状に巻き取られており、巻き取りドラムから引き出して、それを従来知られた押し出し成形法を用いて、全体を絶縁材料からなる第1の被覆16で覆うことにより、図2に示す長尺PTCヒーター線20とされる。絶縁材料としては、例として、電気絶縁性および可撓性を有する塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0020】
図2に示す長尺PTCヒーター線20の全長に対して、例えばスズメッキ軟銅線のような金属の編組線によるシールド21が巻き付けられ、さらにその上に、適宜の手段により(例えば、従来知られた押し出し成形法を用いて)、好ましくは前記第1の被覆16と同じ絶縁材料による第2の被覆22で覆うことにより、図3に示す長尺PTCヒーター線30とされる。長尺PTCヒーター線30は、例えば30〜100m程度の長さに製造され、図示しない巻き取りドラムに巻き取られて保管される。
【0021】
使用に当たって、長尺PTCヒーター線30は敷設する現場に適合した長さに切断される。図3に示すように、その切断面には、第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12の切断端面、第1の被覆16の切断端面、シールド21の切断端面、第2の被覆22の切断端面がそのまま現れている。一方の切断面側には、図示しない電気供給コードが第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12に接続され、接続部は適宜のカバーによって気密に封止される。
【0022】
[第1の実施の形態]
図4および図5は、本発明による長尺PTCヒーターAの第1の実施の形態を示している。この長尺PTCヒーターA1は、図3に示した長尺PTCヒーター線30をベースとする長尺PTCヒーターA1であり、電気供給コードを接続した端部側と反対側の切断端部側は、図4に全体の斜視図を、図5に長手方向の断面を示すように、前記した絶縁材料からなる第2の被覆22自体を熱融着することで封止されている。熱融着に当たっては、最初に、適宜の手段、例えば、切断端面側からニッパー等の工具を差し入れて、先端から数ミリ程度に亘って、第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12、第1の被覆16およびシールド21を除去する。その後、除去した部分に相当する第2の被覆22自体を熱融着により自己融着させることで、気密な封止部23を形成する。熱融着の手段に制限はないが、超音波ウェルダーによる自己融着は作業性と高い自己融着性が得られることから特に好ましい。
【0023】
本発明による長尺PTCヒーターA1においては、上記のように、切断された端面を、特別の、すなわち別部材である封止用部材を用いることなく、給電線11、12および発熱体13を包囲する、絶縁材料からなる被覆(図4図5に示す例では、第2の被覆22)自体を、熱融着により自己融着させることで気密に封止しており、部品点数を減らすことができる。さらに加えて、別部材である封止用部材を用いる場合のように、封止部に界面が形成されないことから、高い気密性を長期にわたり保持することができ、絶縁性能が衰えない長尺PTCヒーターA1となる。
【0024】
[第1の実施の形態の変形例]
第1の実施の形態では、絶縁材料からなる被覆として、第1の被覆16と第2の被覆22の2層構造とし、外側の層、すなわち第2の被覆22を自己融着させることで、切断端部の封止を行ったが、強度確保等の観点から、絶縁材料からなる被覆が3層あるいは3層以上で構成される場合が起こり得る。金属の編組線によるシールド21を絶縁材料からなる被覆の異なった層間に2層以上に巻き付けることも起こり得る。特に図示しないが、このような場合には、切断端部から数ミリに亘り、最も外側の絶縁材料からなる被覆を除いた部分を切断排除した後、その部分に相当する最も外側の絶縁材料からなる被覆を自己融着させることで、切断端部の封止を行っても、所期の目的を達成することができる。
【0025】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明による長尺PTCヒーターの第2の実施の形態を示している。この長尺PTCヒーターA2では、ベースとなる長尺PTCヒーター線として、絶縁材料からなる被覆は第1の被覆16と第2の被覆22を有しているが、第1の被覆16と第2の被覆22との間に金属の編組線によるシールド21が介装されていない長尺PTCヒーター線40を用いている点で、第1の実施の形態と相違している。この態様でも、切断端面側からニッパー等の工具を差し入れ、先端から数ミリに亘って、第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12を除去し、その後、除去した部分に相当する第2の被覆22を熱融着により自己融着させることで、気密な封止部23aを形成することができる。
【0026】
[第3の実施の形態]
図7は、本発明による長尺PTCヒーターの第3の実施の形態を示している。この長尺PTCヒーターA3は、図4図5に示した第1の実施の形態による長尺PTCヒーターA1における前記第2の被覆22自体を熱融着により自己融着させることで形成した気密な封止部23、あるいは図6に示した第2の実施の形態による長尺PTCヒーターA2における第2の被覆22自体を熱融着により自己融着させることで形成した気密な封止部23aの部分に、そこを覆うようにして、先端にフック孔51を備えたキャップ50を熱融着あるいは接着剤により、一体に取り付けている点に特徴がある。
【0027】
長尺PTCヒーターA1またはA2の先端部にこのようなキャップ50を一体に取り付けることにより、施工現場での長尺PTCヒーターの引き回しが容易となる。また、キャップ50には切断端面の封止機能は求められないので、引き回し時に求められる機械的強度を満足するだけの強度を備えたものであって良く、前記した特許文献1に記載されるように封止機能が求められる部材と比較して、外径を小型のものとすることが可能となる。
そのために、例えば、適宜のパイプ内に長尺PTCヒーターA1、A2を引き込む場合でも、パイプの内面と長尺PTCヒーターA1、A2との間の隙間をより小さくすることが可能となり、熱伝導性を低下させない引き込みが可能となる。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
図3に示した長尺PTCヒーター線30と同様な構成を備えたセキスイセラミックスヒーター(積水化成品工業株式会社製)(発熱体:チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックス)を用い、その第2の被覆22を除き、切断面から2mmの深さに中身(第1の長尺給電線11と第2の長尺給電線12、第1の被覆16およびシールド21等)の全てを取り除いた。取り除かれた部分の第2の被覆22を、以下の条件で超音波ウェルダーにより融着した。なお、第2の被覆22は耐熱ビニル樹脂であり、標準厚1.0mm、平均厚0.9mm以上、最小厚0.8mm以上、外径7.5±1.0×18.5±1.5mmである。
【0029】
【0030】
サンプル1と2に対して、融着部の密着性(融着性)の確認を引き裂き試験によって行った。試験は、サンプル1と2から第2の被覆22の融着した先端部から、60mmの長さに第2の被覆22を取り出し、その両側部を切開して、融着部を中心に上下に開いた状態の試験片を用意した。試験機としてRTGシリーズの引っ張り試験機を用い、開いた状態の試験片の上下部分を試験機のチャックで把持した。チャック間距離は40mm、試験速度100.0mm/分、周囲温度25℃、周囲湿度60%で、引き裂き破壊が出るまで引っ張った。
【0031】
破壊後、破壊部分を目視で観察したところ、破壊面は全てのサンプルにおいて平滑な面は観察されなかった。このことは、破壊は材料そのものの破壊であることを示しており、融着面での剥離や破壊は起こっていないことがわかった。このことから、上記実験での超音波ウェルダーによる融着によって、材料(耐熱ビニル樹脂)同士の融着が生じており、この状態では、長時間、雨に当たるような外部環境におかれても、少なくとも融着部分から水が侵入する恐れはないことが確認できた。このことは、本発明による長尺PTCヒーターにおいて、長尺PTCヒーターの一方の端部が絶縁材料からなる被覆自体の融着によって封止されていることが、長尺PTCヒーターの実使用において、気密性の破壊などにおいて何の不都合も生じさせないことを示している。
【0032】
[実施例2]
発熱体として、カーボンブラック20重量部と低密度ポリエチレン100重量部とクレー5重量部との混和材を用いた以外は実施例1と同じ構成の長尺PTCヒーター線を用いて、実施例1と同じ試験を行ったところ、融着部については同じ結果が得られた。
【符号の説明】
【0033】
A1、A2,A3…本発明による長尺PTCヒーター、
30…長尺PTCヒーター線、
10…長尺PTCヒーター線の発熱部、
11…第1の長尺給電線、
12…第2の長尺給電線、
13…正温度係数特性を備えた発熱体、
14…金属端子、
15…導電ペースト、
16…絶縁材料からなる第1の被覆、
20…長尺PTCヒーター線、
21…金属の編組線によるシールド、
22…絶縁材料による第2の被覆、
23,23a…絶縁材料による第2の被覆自体を熱融着することで形成された気密な封止部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7