(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-225898(P2015-225898A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】金型、樹脂成形装置、及び、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20151117BHJP
B29C 33/68 20060101ALI20151117BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B29C33/68
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-108265(P2014-108265)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】森村 政弘
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AH37
4F202AM28
4F202AM32
4F202AR02
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CM04
4F202CM08
4F202CP01
4F202CP06
4F206AH37
4F206AM32
4F206JA02
4F206JB12
4F206JB17
4F206JQ81
5F061AA01
5F061BA01
5F061CA21
5F061CA22
5F061CB02
5F061DA06
5F061DA08
5F061DA09
5F061DA14
5F061DB01
5F061DD02
5F061DD03
5F061DE06
(57)【要約】
【課題】低コストで確実に樹脂成形が可能な金型を提供する。
【解決手段】金型は、第1の金型と、第2の金型とを有し、第2の金型には、樹脂を成形するためのキャビティ、及び、キャビティの外側であって、被成形品の平面領域内のキャビティ側の金型面において空気を供給するための通路が形成されており、第1の金型は、粘着フィルム材を載置するように構成され、第2の金型は、リードフレームを載置するように構成され、第1の金型及び第2の金型は、粘着フィルム材及び前記リードフレームを介して粘着フィルム材をクランプした状態で、通路に空気が供給されるように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と、
第2の金型と、を有し、
前記第2の金型には、樹脂を成形するためのキャビティ、及び、該キャビティの外側であって、被成形品の平面領域内のキャビティ側の金型面において空気を供給するための通路が形成されており、
前記第1の金型は、粘着フィルム材を載置するように構成され、
前記第2の金型は、リードフレームを載置するように構成され、
前記第1の金型及び前記第2の金型は、前記粘着フィルム材及び前記リードフレームを介して該粘着フィルム材をクランプした状態で、前記通路に前記空気が供給されるように構成されている、ことを特徴とする金型。
【請求項2】
前記第1の金型及び前記第2の金型は、前記通路に前記空気が供給されることにより、前記第2の金型の上に載置された前記リードフレームが該第2の金型から離れて該粘着フィルム材に当接するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金型と、
前記通路に前記空気を供給する空気供給手段と、を有することを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項4】
前記空気の供給及び停止を制御する制御手段を更に有することを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記キャビティ内の圧力を減少させるための減圧手段を更に有することを特徴とする請求項3または4に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
第1の金型に粘着フィルム材を載置するステップと、
キャビティを有する第2の金型にリードフレームを載置するステップと、
前記第1の金型及び前記第2の金型を用いて前記粘着フィルム材をクランプするステップと、
前記キャビティの外側において前記第2の金型に形成された通路から空気を供給するステップと、
前記キャビティの内部に樹脂を充填して樹脂成形を行うステップと、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記通路から前記空気を供給することにより、前記第2の金型の上に載置された前記リードフレームが該第2の金型から離れて前記粘着フィルム材に当接することを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記リードフレームが前記粘着フィルム材に当接した状態で前記樹脂成形を行うことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂成形の際に、前記通路からの前記空気の供給を停止することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記通路を介して圧縮空気を前記キャビティの内部に噴出させることにより、前記リードフレームを前記粘着フィルム材に密着させることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記リードフレームの上に複数の半導体チップをマトリクス状に配置して構成された被成形品に対して前記樹脂成形を行うことを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
減圧手段を用いて前記キャビティ内の圧力を減少させながら前記樹脂成形を行うことを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム等の被成形品の樹脂成形を行う樹脂成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被成形品を金型でクランプして樹脂成形する際に、被成形品の外部に露出する面を押さえる金型面をリリースフィルムにより被覆して樹脂成形する方法が知られている。この樹脂成形方法によれば、樹脂成形の際に、柔軟性を有するリリースフィルムを介して被成形品の外面をクランプすることにより、樹脂が被成形品の露出面側に回り込むことを防止することができる。
【0003】
しかしながら、リリースフィルムを用いた樹脂成形方法では、マトリクスタイプの個別キャビティ(個別に分離されたキャビティ)の樹脂成形を行う場合には問題ないが、複数の半導体チップを一括で1つ又は数少ないキャビティで成形する所謂マップタイプの樹脂成形を行う場合に問題がある。すなわちマップタイプの樹脂成形を行う際に、リードフレーム上にマトリクス状に配置して構成された被成形品をクランプする場合、キャビティの中央付近ではリードフレームを押さえることができない。このため、キャビティの中央付近において被成形品とリリースフィルム間に樹脂が回り込みやすくなり、高品質な成形品を確実に製造することが困難である。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、リリースフィルムに代えて、被成形品の樹脂成形面とは反対側の面に粘着層に接着剤を塗布した粘着フィルムを使用して被成形品の樹脂成形を行う方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、他の方法として、被成形品であるリードフレームの裏面側に予め粘着テープ(ポリイミドテープ)を張り付けた後に被成形品を搭載し、電気的に接続し、樹脂成形した後に粘着テープを剥がす方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−170962号公報
【特許文献2】特開平7−29927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、被成形品に粘着層を有した粘着フィルムを使用して樹脂成形を行う方法では、樹脂成形時にリードフレームと粘着フィルムが押え付けられることなく、すなわち粘着する前に溶融した樹脂がキャビティに送り込まれるために、リードフレームと粘着テープ間に樹脂が回り込みやすくなる。また、仮にリードフレームと粘着フィルムとの間に樹脂が回りこむ前に粘着フィルムを樹脂圧によってリードフレームに押し付けることができた場合、樹脂成形後の樹脂封止装置内で製品(成形品)から粘着フィルムを剥離する工程が必要となる。また粘着フィルムの剥離工程において、リードフレームを反らす等のダメージを与える可能性がある。また粘着フィルムを用いると、樹脂成形後のリードフレームに粘着成分が付着(残存)する可能性がある。また粘着フィルムは、ロールテープからの引き出しが困難であり、それを回避しようとすると、粘着フィルム同士の接着を防止するためのセパレータが必要である。このように、粘着フィルムを用いた場合、樹脂成形方法が煩雑となり、高コスト化の要因となる。
【0008】
また、特許文献2に開示されているように、被成形品に粘着テープ(ポリイミドテープ)を被成形品に接着させた状態で樹脂成形を行う方法では、樹脂成形後の製品(成形品)から粘着テープを剥離する工程が必要となる。また、粘着テープの剥離工程において、リードフレームを反らす等のダメージを与える可能性がある。また粘着テープを用いると、樹脂成形後のリードフレームに粘着成分が付着(残存)する可能性がある。
【0009】
そこで本発明は、低コストで確実に樹脂成形が可能な金型、樹脂成形装置、及び、半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての金型は、第1の金型と、第2の金型とを有し、前記第2の金型には、樹脂を成形するためのキャビティ、及び、該キャビティの外側であって、被成形品の平面領域内のキャビティ側の金型面において空気を供給するための通路が形成されており、前記第1の金型は、粘着フィルム材を載置するように構成され、前記第2の金型は、リードフレームを載置するように構成され、前記第1の金型及び前記第2の金型は、前記粘着フィルム材及び前記リードフレームを介して該粘着フィルム材をクランプした状態で、前記通路に前記空気が供給されるように構成されている。
【0011】
本発明の他の側面としての樹脂成形装置は、前記金型と、前記通路に前記空気を供給する空気供給手段とを有する。
【0012】
本発明の他の側面としての半導体装置の製造方法は、第1の金型に粘着フィルム材を載置するステップと、キャビティを有する第2の金型にリードフレームを載置するステップと、前記第1の金型及び前記第2の金型を用いて前記粘着フィルム材をクランプするステップと、前記キャビティの外側において前記第2の金型に形成された通路から空気を供給するステップと、前記キャビティの内部に樹脂を充填して樹脂成形を行うステップとを有する。
【0013】
本発明のその他の目的及び効果は以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低コストで確実に樹脂成形が可能な金型、樹脂成形装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態における樹脂成形装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態における被成形品(半導体実装基板)の構成図である。
【
図3】本実施形態における金型の断面図である(クランプ時)。
【
図4】本実施形態における金型の断面図である(空気供給中)。
【
図5】本実施形態における金型の断面図である(樹脂成形中)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
まず、
図1を参照して、本実施形態における樹脂成形装置について説明する。
図1は、樹脂成形装置100(トランスファ成形装置)の概略構成図である。樹脂成形装置100は、被成形品としての半導体実装基板(半導体チップを実装したリードフレーム)をプレス部に搬入するローダー106と、成形品としての半導体装置をプレス部から成形品取出部へ取り出すアンローダー107とが移動レール部108を共用して樹脂成形するように構成されている。
【0018】
樹脂成形装置100は、供給ユニット101、収納ユニット102、プレスユニット103、104、及び、樹脂供給ユニット105を備えて構成される。供給ユニット101において、111は被成形品を供給する供給部であり、供給マガジン(不図示)に収納された被成形品(半導体チップが搭載されたリードフレームや樹脂基板などのワーク等)をフレームインデックス(不図示)へ搭載させた後、プレヒートレール112へ向きを揃えて送り出される。プレヒートレール112では、被成形品がプレヒートされて、ローダー106に受け渡される。
【0019】
収納ユニット102において、成形品取出部(不図示)は、プレスユニット103、104の一つからアンローダー107により取り出された成形品(半導体装置)を、下方に待機している移動テーブル121へ受け渡すように動作する。アンローダー107は、成形品を成形品取出部に待機している移動テーブル121へ受け渡すと、次の成形品の取出し動作に移行する。移動テーブル121は、成形品を載置してディゲート部122へ搬送する。ディゲート部122は、移動テーブル121へ載置されて搬送された成形品をゲートブレイクする。そして移動テーブル121は、ゲートブレイク後の成形品(半導体装置)を載置して、収納部123へ搬送する。
【0020】
プレスユニット103、104、及び、樹脂供給ユニット105は、供給ユニット101と収納ユニット102との間に設けられている。ローダー106及びアンローダー107は、移動レール部108を共用することにより、プレスユニット103、104、及び、樹脂供給ユニット105の間を移動可能に構成されている。
【0021】
樹脂供給ユニット105において、151は樹脂供給部(樹脂タブレット供給部)である。樹脂供給部151は、樹脂タブレットを保持するタブレットホルダー(不図示)を有する。樹脂タブレットは、タブレットホルダーからローダー106に受け渡される。
【0022】
プレスユニット103、104には、プレス部131、141がそれぞれ搭載されている。プレス部131、141は、それぞれ、金型132、142(モールド金型)、金型132、142を型締め型開きする型開閉機構、及び、金型132、142のキャビティに樹脂圧を加えながら成形樹脂を送り出すトランスファ機構などを備えて構成される。この成形樹脂は、樹脂供給ユニット105からローダー106を介して受け渡された樹脂タブレットをトランスファ成形することにより、金型132、142のキャビティに送り出される。またプレス部131、141には、金型132、142の金型面を覆うフィルム材(粘着フィルム材又は微粘着フィルム材)を張設するフィルムユニット133、143がそれぞれ設けられている。
【0023】
ローダー106は、プレヒートレール112で被成形品を受け取って保持し、プレス部131、141のいずれかへ、進退移動して搬入する。同様に、ローダー106は、樹脂供給部151から樹脂タブレットを受け取って保持し、プレス部131、141のいずれかへ、進退移動して搬入する。また、樹脂成形後の製品(成形品)は、金型132、142から離型され、アンローダー107により成形品取出部を介して移動テーブル121へ搬出されるように構成されている。移動テーブル121に搬出されて載置された成形品は、ディゲート部122でゲートブレイクされて収納部123へ収納される。なお、
図1における各ユニットの配置、数量及び形態は、必要に応じて設計の変更が可能である。
【0024】
次に、
図2を参照して、本実施形態における被成形品について説明する。
図2は、被成形品としての半導体実装基板(半導体チップを実装したリードフレーム)の構成図である。なお本実施形態では、被成形品として半導体実装基板の場合について説明するが、これに限定されるものではなく、本実施形態は他の種類の被成形品にも適用可能である。
【0025】
図2において、リードフレーム10は、複数の半導体チップ40を実装可能に構成されており、半導体装置(半導体パッケージ)を製造するために用いられる。本実施形態のリードフレーム10は、QFNパッケージ(Quad Flat Non−leaded Package)等のMAPパッケージ(Molded Array Packaging)に広く適用可能である。リードフレーム10は、例えば、銅系フレーム材の表面に、ニッケル、パラジウム、銀、又は、金などのメッキ層(例えばNi−Agメッキ)を形成して構成される。リードフレーム10の厚さは、例えば0.15mmであるが、板厚0.25mmや0.5mm程度のリードフレームを用いてもよい。リードフレーム10上には複数の半導体チップ40が実装され、樹脂成形後にリードフレーム10をダイシング(切断)することにより、複数の半導体装置(半導体パッケージ)が完成する。
【0026】
リードフレーム10は、複数の半導体チップ40を実装するための複数のダイパッド部12、及び、複数のダイパッド部12のそれぞれの周囲に設けられた複数のリード部14がマトリクス状に配置されている。リードフレーム10において、複数のダイパッド部12のそれぞれは、吊りピン16(吊りリード部)により支持されている。ダイパッド部12は半導体チップ実装領域を構成し、複数のダイパッド部12のそれぞれの上には半導体チップ40が実装される。また、半導体チップ40の電極部とそれに対応するリード部14とがワイヤ42を用いてワイヤボンディングされることにより、半導体チップ40とリード部14との間が電気的に接続される。
【0027】
なお、
図2には一つの半導体チップ40のみが示されているが、実際には全てのダイパッド部12のそれぞれの上に半導体チップ40が実装される。また、
図2に示されるリードフレーム10には、縦4個、横8個のダイパッド部12が設けられているが、1つのリードフレーム10に設けられるダイパッド部12の個数はこれに限定されるものではない。
【0028】
次に、
図3乃至
図5を参照して、本実施形態における金型について説明する。
図3乃至
図5は金型200の断面図であり、半導体装置の製造方法を示している。
図3はクランプ状態、
図4は空気供給中の状態、及び、
図5は樹脂供給中の状態における金型200をそれぞれ示している。なお、
図3乃至
図5に示される金型200は、
図1中の金型132、142に相当する。また
図3乃至
図5は、理解を容易にするため、それぞれ異なる断面を示しており、各図の説明に必要な要素のみを示している。
【0029】
図3に示されるように、金型200は、上金型201(第1の金型)及び下金型203(第2の金型)を備えて構成されている。金型200は、上金型201及び下金型203を用いて半導体チップ40が実装されたリードフレーム10(被成形品)をクランプし、樹脂成形を行う。なお
図3乃至
図5において、説明を簡単にするため、一つの半導体チップ40が実装されているリードフレーム10が示されているが、実際には
図2に示されるようにリードフレーム10は複数のダイパッド部12及び複数の半導体チップ40がマトリックス状に配置されている。
【0030】
上金型201は、そのクランプ面が平面(フラットな面)である。クランプ前の状態において、上金型201の平面状のクランプ面には、フィルム材20が載置される。フィルム材20としては、微粘着フィルム材(粘着フィルム材)が用いられる。フィルム材20は、フィルム吸着手段(不図示)を用いて、上金型201に形成されたフィルム吸着孔(不図示)を介して上金型201のクランプ面上に吸着されて固定される。
【0031】
本実施形態の粘着フィルム材(微粘着フィルム材)は、上金型201のクランプ面(吸着面)には粘着性はなく、クランプ面(吸着面)とは反対側の面(リードフレーム側)において微粘着性を有し、リードフレーム10(被成形品)をわずかな粘着力で貼り付けることが可能である。ここで、微粘着性とは、フィルム材20の粘着力では被成形品を貼り付けた状態を維持することができるが、容易に剥がすことができる程度の粘着性を意味する。換言すると、微粘着性とは、外部からの力(補助力)が微粘着フィルムと被成形品との間に加えられることによって被成形品を貼り付けた状態を維持可能な粘着力であり、かつ、成形後に金型を型開きした際に、金型より容易に離型できる程度の粘着力である。
【0032】
このように、本実施形態のフィルム材20(粘着フィルム又は微粘着フィルム材)は、フィルム材の粘着力で被成形品と共にモールド成形を行った場合に被成形品から粘着フィルムを剥がすことが困難となる通常の粘着フィルム(粘着テープ)とは異なる。また本実施形態のフィルム材20は、粘着フィルムから被成形品を剥がす際に積極的に被成形品を剥がすための剥離手段(剥離工程)が必要となる通常の粘着フィルムとは異なる。
【0033】
表1は、一例として、本実施形態のフィルム材20として使用される微粘着フィルムと、従来の粘着フィルムとの比較を示している。
【0035】
下金型203は、そのクランプ面において、キャビティ205(凹部)が形成されている。下金型203のクランプ面には、被成形品(半導体チップ40を実装したリードフレーム10)が載置される。本実施形態において、リードフレーム10は、半導体チップ40の実装面を下金型203に向けて載置される。このため、半導体チップ40は、下金型203のキャビティ205の内部(下金型203とリードフレーム10との間)に収容される。キャビティ205の内部には、後述の樹脂成形工程において樹脂30が充填されることにより、半導体チップ40が樹脂封止される。
【0036】
図3に示されるように、クランプ時において、下金型203のクランプ部207は、フィルム材20を介して上金型201を押し付ける。このため、厚さD1(例えば0.05mm)のフィルム材20は、クランプ部207により、厚さD2(例えば0.03mm)に変化する。一方、上金型201に載置されたフィルム材20と下金型203に載置されたリードフレーム10との間には、厚さD3(例えば0.01mm)の隙間(所定の隙間)が生じている。
【0037】
続いて
図4に示されるように、樹脂成形装置100に設けられた空気供給手段245は、空気(エア)を供給する。好ましくは、空気供給手段245は圧縮空気を供給する。下金型203には、空気を供給(注入)するための通路231、232(空気孔)が形成されている。通路231、232は、下金型の203のうちキャビティ205の外側であって、被成形品であるリードフレーム10の平面領域内のキャビティ側の金型面(第2の金型面)に形成されている。キャビティの外側に配置するのは、後述の樹脂成形工程においてキャビティ205の内部には樹脂30が充填されるため、キャビティ205の内部に通路を形成すると樹脂30が漏れてしまうからである。また、リードフレーム10の平面領域内に形成するのは、圧縮空気を供給することでリードフレームを微粘着フィルムに押し付けるためである。
【0038】
空気供給手段245は、
図4中に示される矢印の方向に空気を供給する。すなわち空気供給手段245は、下金型203の通路231、232を介してキャビティ205の内部に空気を供給する。通路231、232の噴出口から噴出した空気(圧縮空気)は、キャビティ205に入り、リードフレーム10を上方向に押し上げる。これにより、通路231、232とキャビティ205の内部とは互いに連通し、通路231、232から噴出した空気がキャビティ205の内部に供給される。
【0039】
キャビティ205の内部に供給された空気は、矢印で示されるように、キャビティ205の内部においてリードフレーム10及びその上に実装された半導体チップ40を上方向に押し上げる。この結果、クランプ時には下金型203の上に載置されていたリードフレーム10は、フィルム材20に当接(密着)する。このとき、リードフレーム10(半導体チップ40の実装面)と下金型203(リードフレーム10の載置面)との間には、厚さD4(=D3)の隙間が形成される。この隙間は、空気を通過させる一方、後述の樹脂成形工程において樹脂30がキャビティ205の外部に漏れ出さない程度のわずかな厚さ(例えば0.01mm)を有する。
【0040】
フィルム材20として微粘着フィルムを用いた場合、その一方の面(
図4中においてフィルム材20の下面)は、前述のように微粘着性を有する。このためリードフレーム10は、空気供給手段245により供給された空気により押し上げられてフィルム材20に当接すると、フィルム材20に張り付け保持される。張り付け後であって樹脂注入までは、圧縮空気を停止してもよい。なお、空気の供給又は停止などの制御は、樹脂成形装置の制御装置161(制御手段)により行われる。また、
図3乃至
図5に示される金型において、キャビティ内の圧力を減少させるための減圧機構(減圧手段)を設けてもよい。一般的な減圧機構は、キャビティ205のエアベントを介して設けられた通路254に減圧装置255(外部真空源)を繋げ、キャビティ205内のエアを減らすように構成されている。これにより、キャビティ205内のボイドを減らしながら樹脂成形を行うことができる。
【0041】
続いて
図5に示されるように、下金型203のカル212、ランナ214、及び、ゲート216を介して、キャビティ205の内部に向けて樹脂30を供給する。樹脂30を供給する際(樹脂成形時)には、下金型203のポット(不図示)の中で樹脂を加熱溶融させる。そして、トランスファ機構(不図示)を用いてポットに沿って上下に摺動可能に構成されたプランジャ(不図示)を可動させることにより、加熱溶融した樹脂30を圧送する。これにより、樹脂30は、半導体チップ40を覆うようにキャビティ205の内部に充填される。
【0042】
このとき、リードフレーム10の一方の面(上面)は、微粘着フィルム材20によって粘着されているため、樹脂はリードフレームと微粘着フィルム間には入り込まない。また、樹脂30が供給されることにより、
図5中に示される矢印の方向(上方向)に、さらにリードフレーム10をフィルム材20に押し付ける力が働く。この結果、リードフレーム10とフィルム材20との間の貼付力(密着力)がより強固なものとなり、樹脂30がリードフレーム10の上面側(リードフレーム10とフィルム材20との間の領域)に漏れることが確実に防止される。なお本実施形態において、空気供給手段245は、リードフレーム10をフィルム材20に密着させた後に空気の供給を停止し、キャビティ205の内部を大気圧に戻してから
図5の樹脂成形工程が実行される。
【0043】
樹脂成形工程の完了後、上金型201と下金型203とを離す(離型する)。このとき、フィルム材20は微粘着フィルムであるため、微粘着フィルム材20は、リードフレーム10や金型面から軽く引き剥がす程度で容易に剥がすことができる。このため成形品は、下金型203の元の位置(空気を供給する前のクランプ時の位置)に戻り、下金型203の上に載置される。一方、微粘着フィルム材20は、上金型201に張り付けられたままである。このように本実施形態によれば、被成形品を圧縮エアにより確実に粘着フィルムに張り付けることができ、さらに樹脂成形工程後に成形品を微粘着フィルムから容易に剥がすことが可能である。このため、金型から取り出す際に、特別な剥離手段(剥離工程)を必要としないため、樹脂成形工程のコスト低減及び時間短縮に寄与する。
【0044】
本実施形態の樹脂成形装置によれば、高価なポリイミドテープ等の粘着フィルム(粘着テープ)を用いることなく、広い成形ブロック(成形ブロックの外周でのみ金型で押さえることが可能な構成)においても樹脂フラッシュ(リードフラッシュ)や樹脂バリが生ずることを低減することができる。本実施形態の樹脂成形装置は、特にQFNタイプの半導体パッケージ等の半導体装置を量産する際に適して用いられる。このため本実施形態によれば、低コストで確実に樹脂成形が可能な金型、樹脂成形装置、及び、半導体装置の製造方法を提供することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。ただし、本発明は、上記実施形態にて説明した事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
【0046】
例えば、
図5に記載されているように、本実施形態は、樹脂成形としてトランスファ成形の場合について説明したが、下キャビティの圧縮成形の場合にも適用可能である。具体的には、下型キャビティ底を可動にした下キャビティの圧縮成形金型において、上型に微粘着フィルム材を粘着面下側に配置させ、下キャビティに樹脂供給後に被成形品を下型にセットする。そして金型をクランプした後、本実施形態と同様にキャビティ205の外側から通路231、232を介して空気をキャビティ205に送り込むことで、被成形品を微粘着フィルムに押し付けることができる。その後、下キャビティを可動させることにより、樹脂成形が可能となる。なお、下型にはリリースフィルムを使用することができ、または、リリースフィルムを使用しなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 リードフレーム
12 ダイパッド部
14 リード部
20 フィルム材
30 樹脂
40 半導体チップ
100 樹脂成形装置
161 制御装置
200 金型
201 上金型(第1の金型)
203 下金型(第2の金型)
205 キャビティ
212 カル
214 ランナ
216 ゲート
231、232 通路
245 空気供給手段
254 通路
255 減圧装置