特開2015-226048(P2015-226048A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-226048(P2015-226048A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】広帯域光源
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20151117BHJP
   H01S 3/0933 20060101ALI20151117BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   H01S3/06 B
   H01S3/091 S
   H01S3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-122831(P2014-122831)
(22)【出願日】2014年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】504243718
【氏名又は名称】株式会社トリマティス
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】山田 誠
(72)【発明者】
【氏名】志賀 代康
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE15
5F172AE16
5F172AF01
5F172AF05
5F172AG07
5F172NR13
5F172NR14
(57)【要約】
【課題】広帯域及び高出力な1.7μm帯広帯域光源の実現が望まれていた。
【解決手段】スーパールミネッセントダイオード(SLD)1からの光を、光ファイバ3を用いた増幅器へ結合して、前記増幅器からの光を出力する構成であって、前記光ファイバが、コア部あるいはクラッド部にレーザ遷移準位を有する希土類元素または遷移金属を添加したものであり、前記光ファイバを励起する励起光を発生する励起光源4を有し、前記励起光からの光を前記光ファイバに結合する光学部品5を有することを特徴とする広帯域光源である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパールミネッセントダイオード(SLD)からの光を、光ファイバを用いた増幅器へ結合して、前記増幅器からの光を出力する構成であって、前記光ファイバが、コア部あるいはクラッド部にレーザ遷移準位を有する希土類元素または遷移金属を添加したものであり、前記光ファイバを励起する励起光を発生する励起光源を有し、前記励起光からの光を前記光ファイバに結合する光学部品を有することを特徴とする広帯域光源。
【請求項2】
前記希土類元素または遷移金属を添加した光ファイバとして、コア部あるいはクラッド部にツリウム(Tm3+)とテリビウム(Tb3+)が添加されたファイバ(Tm/Tb添加ファイバ)を用いると共に、前記SLDとして出力スペクトルのピーク波長が1650から1850nm近傍であることを特徴とする請求項1記載の広帯域光源。
【請求項3】
前記希土類元素または遷移金属を添加した光ファイバとして、Tm3+のみがコア部あるいはクラッド部に添加されたTm3+添加ファイバが配置されたことを特徴とする請求項1,2記載の広帯域光源。
【請求項4】
前記光ファイバ増幅器とSLD光源が光アイソレータを介して結合されていることを特徴とする請求項1−3記載の広帯域光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外分光や医学応用で適用可能な1650nm〜1850nm帯で動作する実用的な広帯域光源に関するものである。
【背景技術】
広帯域光源は、光デバイスの損失特性評価、ローコヒーレントOTDR用の光源、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)用の光源として用いられてきた。
【0002】
広帯域光源の種類としては、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、希土類添加ファイバを用いたASE光源及びスーパ−コンティニュ−ム(SC)光源が有る。SC光源は広帯域及び高出力特性に優れるが、発生メカニズムで光ファイバの非線形現象を用いるため出力の安定性に課題を有すると共に、装置が高価で小型が難しいとの欠点を有していた。
【0003】
それに対してASE光源及びSLD光源は低価格で、小型化性に優れるため汎用的で実用的な光源である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、実現されてきたSLD光源及びASE光源の波長帯は、光通信の分野での適用を目的に1.3帯、1.5μm帯、OCT分野への適用を目的に0.8μm帯、1.3μm帯であった。
【0005】
しかし、近年、近赤外分光用の広帯域光源を用いた近赤外分光の研究が進められており、その波長域は800〜2500 nmであり、同分光の性能を向上するために、同要求波長域で動作する高出力で広帯域光源が望まれていた。
【0006】
特に1.7μm帯は、水の吸収がなく、有機物の吸収スペクトルが多く存在する波長域で有り、血液中のグルコースや脂肪等の吸収を観測するために重要で有ると考えられていた。このため同波長域で動作するSLD光源及びASE光源が開発された。
【0007】
しかし、開発された1.7μm帯SLD光源及びASE光源の大きな課題としては、広帯域化であった。また、SLD光源は高出力化という課題も合わせ持っていた。
【0008】
本発明は、以上のような実情を鑑みなされたものであり、1.7μm帯で広帯域性と高出力性を有する広帯域光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の広帯域光源は、低価格で汎用性に優れたSLD光源を用いて、1.7μm帯で広帯域性と高出力性を有する広帯域光源を実現するものである。
【0010】
請求項1記載の広帯域光源は、スーパールミネッセントダイオード(SLD)からの光を光ファイバを用いた増幅器へ結合して、前記増幅器からの光を出力する装置であって、前記光ファイバが、コア部あるいはクラッド部にレーザ遷移準位を有する希土類元素または遷移金属を添加したものであり、前記光ファイバを励起する励起光を発生する励起光源を有し、前記励起光からの光を前記光ファイバに結合する光学部品を有することを特徴とする広帯域光源である。
【0011】
請求項2に記載の広帯域光源は、前記希土類元素または遷移金属を添加した光ファイバとして、コア部あるいはクラッド部にツリウム(Tm3+)とテリビウム(Tb3+)が添加されたファイバ(Tm/Tb添加ファイバ)を用いると共に、前記SLDとして出力スペクトルのピーク波長が1650から1850nm近傍であることを特徴とする請求項1記載の広帯域光源である。
【0012】
請求項3に記載の広帯域光源は、前記希土類元素または遷移金属を添加した光ファイバとして、Tm3+のみがコア部あるいはクラッド部に添加されたTm3+添加ファイバが配置されたことを特徴とする請求項1,2記載の広帯域光源である。
【0013】
請求項4に記載の広帯域光源は、前記光ファイバ増幅器とSLD光源が光アイソレータを介して結合されていることを特徴とする請求項1−3記載の広帯域光源である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明は、従来出力及び帯域特性に課題を有していた1.7μm帯SLD光源に、Tm3+/Tb3+添加ファイバ増幅器を特性改善ユニットとして配置することにより、SLD光源の特性改善が実現でき、汎用的、実用的な低価格な1.7μm帯動作の広帯域光源が実現できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施形態図
図2】SLD光源と本発明の広帯域光源の出力スペクトル
図3】本発明の第二の実施形態図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面にもとづいて説明する。
【0017】
本発明は、図1に示すようにSLD光源1の出力端に特性改善ユニット2を配置することを特徴とする。特性改善ユニット2は、1.7μm帯の光増幅を行うTm/Tb添加ファイバ増幅器であり、Tm/Tb添加ファイバ或いはTm3+添加ファイバ(Tm3+未添加)3と、励起光源4、励起光と増幅された光を分離するWDMフィルタ5、光アイソレータ6により構成される。
【0018】
図2は、SLD光源と本発明の広帯域光源の出力スペクトルを示す。SLD光源の出力ピーク波長は1710nm、帯域幅(出力−30dBm/nm以上)は55nmである。また、ピーク波長の出力は−25.1dBm/nmである。
【0019】
特性改善ユニット2で用いたTm/Tb添加フッ化物ファイバ3のΔnは2.5%、カットオフ波長は1μm、Tm3+濃度は2000ppm、Tm3+濃度は500ppm、ファイバ長は2.1mである。また、励起光源3は1.21μm帯LDで励起光量は90mW、WDMフィルタ5の挿入損失は0.7dB以下である。
【0020】
図2に示すように、本構成を用いることで最大出力光量を向上できると共に帯域幅(出力−30dBm/nm以上)を162nmに拡大できることが明らかとなっている。
【0021】
以下に図面を参照し本発明をより具体的に詳述するが、以下に開示する実施例は本発明の単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を何等限定するものではない。
【実施例1】
【0022】
本実施例1では図1に示す構成を用いて実施した。表1に使用したSLD光源1のピーク波長及び帯域(出力が−30dBm/nm以上)、特性改善ユニット2で使用するTm/Tb添加ファイバ或いはTm3+添加ファイバ(Tm3+未添加)3の諸元と励起光源4として用いた1.21μm帯LDの励起光量及び本発明によってえられた光強度が−30dBm/nm以上が得られる帯域を示す。なお、Tm/Tb添加ファイバ或いはTm3+添加ファイバ(Tm3+未添加)3としてはガラス材料がフッ化物のものとテルライトガラスのものを用いた。表に示すように特性改善ユニットを用いることにより広帯域化が実現できた。
【表1】
【実施例2】
【0023】
図3に実施例2を説明する図を示す。本発明に用いる光ファイバを含む回路は、複数個用いることもでき、二つの例として、本実施例ではSLD光源1に2つの特性改善ユニット2−1,2−2を用いて実施した。SLD光源1のピーク波長は1710nm、帯域(出力が−30dBm/nm以上)は55nmである。Tm/Tb添加ファイバ或いはTm3+添加ファイバ(Tm3+未添加)3−1はTm3+添加濃度2000wt.ppm.Tm3+添加濃度1000wt.ppm、ファイバ長1m(比屈折率差2.5%、カットオフ波長1.0μm)を有するフッ化物ファイバ、Tm/Tb添加ファイバ或いはTm3+添加ファイバ(Tm3+未添加)3−2はTm3+添加ファイバ(Tm3+未添加、カットオフ波長1.0μm、比屈折率差1.6%、ファイバ長2m)を用いた。励起光源4−1、4−2として用いた1.21μm帯LDの励起光量は各々、89mW、90mWである。本構成においても従来構成部の帯域幅(−30dBm/nm以上)が、本実施例により177nmに拡大できた。
【符号の説明】
【0024】
1 SLD光源
2 特性改善ユニット2
3,3−1,3−2 Tm3+/Tb3+添加ファイバ或いはTm3+添加ファイバ
4,4−1,4−2 励起光源
5 励起光と増幅された光を分離するWDMフィルタ
6 光アイソレータ
図1
図2
図3