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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-226501(P2015-226501A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20151120BHJP
【FI】
   A01C11/02 380A
   A01C11/02 382C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-113476(P2014-113476)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山口 信
【テーマコード(参考)】
2B065
【Fターム(参考)】
2B065AA05
2B065AA07
2B065AB01
2B065AC06
2B065BA05
2B065DA15
(57)【要約】
【課題】植付伝動ケース内の伝動回転体の回転速度を、より確実に一定に保つことのできる苗移植機を提供すること。
【解決手段】走行車体2の後部に苗を積載する苗載置台51と、苗載置台51の下部に配設され、苗載置台51から苗をとって圃場に植え付ける植付体61に駆動力を供給する植付伝動ケース64と、植付伝動ケース64と、植付体61と、複数の植付伝動ケース64に駆動力を供給する植付伝動軸82と、を有する苗植付装置60と、複数の植付伝動ケース64を装着する植付支持フレーム55と、を備える苗移植機1において、植付伝動ケース64には、内部の伝動スプロケット104の回転速度を減速させるブレーキステー110が設けられており、複数の植付伝動ケース64のうち、機体内側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力は、機体外側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力よりも弱くなっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体の後部に苗を積載する苗載置台と、
前記苗載置台の下部に配設され、前記苗載置台から苗をとって圃場に植え付ける植付体に駆動力を供給する植付伝動ケースと、
前記植付伝動ケースと、前記植付体と、複数の前記植付伝動ケースに駆動力を供給する植付伝動軸と、を有する苗植付装置と、
複数の前記植付伝動ケースを装着する植付支持フレームと、
を備える苗移植機において、
前記植付伝動ケースには、内部の伝動回転体の回転速度を減速させるブレーキ部材が設けられており、
複数の前記植付伝動ケースのうち、機体内側の前記植付伝動ケースにおける前記ブレーキ部材のブレーキ力は、機体外側の前記植付伝動ケースにおける前記ブレーキ部材のブレーキ力よりも弱くなっていることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記植付伝動ケースは、機体後部側に、開閉自在な調整部カバーが配設されており、
前記調整部カバーに、
前記ブレーキ部材に対して付勢力を付与する付勢部材と、
前記付勢部材での付勢力を調節する押付部材と、
により前記ブレーキ部材のブレーキ力を調節するブレーキ力調節機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記ブレーキ部材には、前記ブレーキ部材と前記伝動回転体との接触面における前記伝動回転体の回転軸を挟んだ両側に、一対の減速部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記ブレーキ部材は、前記伝動回転体と共に回転して前記植付体を回転させる植付軸と一体で回転するブレーキディスクと共にブレーキ装置を構成しており、
前記ブレーキ装置は、前記ブレーキ部材と前記ブレーキディスクとが接触する方向の付勢力を前記ブレーキ部材または前記ブレーキディスクに付与する付勢部材からの付勢力によりブレーキ力を発生し、
前記植付伝動ケースは、内部が潤滑油で満たされていることを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記ブレーキ部材は、機体前側を開放状態としたことを特徴とする請求項2または3に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を圃場に植え付ける、植付装置を備える苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機など、圃場に苗を植え付ける苗移植機では、一般的に機体後方に配置された苗載せ台に積載されている苗マットから、苗を取り圃場に植え付ける苗植付装置が備えられている。苗植付装置としては、例えば、特許文献1に記載されるように、苗タンクの下方に植付伝動ケースを備え、植付伝動ケース内の伝動チェーンによって植付爪に動力を伝達することにより、植付爪を回転させて圃場に苗を植え付けるものが知られている。また、特許文献1では、植付伝動ケース内の伝動チェーンを下方から付勢し、伝動チェーンの弛みや、苗植付装置の不等速回転により生じるガタによるチェーン飛びを防止するテンショナを設ける構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−176331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、伝動チェーンにテンショナを接触させることによって伝動チェーンの弛みやチェーン飛びを防止する方式では、苗植付装置の不等速回転に伴うガタが大きいと、伝動チェーンがテンショナ自体から離れることがある。この場合、伝動チェーンがテンショナから離れた際に、伝動チェーンの回転速度が乱れてしまい、伝動回転体である伝動スプロケットの回転速度が乱れ、苗植付装置の不等速回転が乱れてしまうことがある。これにより、苗植付装置で苗の植付動作を行う際における苗を取るタイミングが早くなったり、遅くなったりしたり、または、苗を取り落として回転してしまい、苗の植付精度が低下したりする虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、植付伝動ケース内の伝動回転体の回転速度を、より確実に一定に保つことのできる苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の苗移植機は、走行車体(2)の後部に苗を積載する苗載置台(51)と、前記苗載置台(51)の下部に配設され、前記苗載置台(51)から苗をとって圃場に植え付ける植付体(61)に駆動力を供給する植付伝動ケース(64)と、前記植付伝動ケース(64)と、前記植付体(61)と、複数の前記植付伝動ケース(64)に駆動力を供給する植付伝動軸(82)と、を有する苗植付装置(60)と、複数の前記植付伝動ケース(64)を装着する植付支持フレーム(55)と、を備える苗移植機(1)において、前記植付伝動ケース(64)には、内部の伝動回転体(104)の回転速度を減速させるブレーキ部材(110、131)が設けられており、複数の前記植付伝動ケース(64)のうち、機体内側の前記植付伝動ケース(64)における前記ブレーキ部材(110、131)のブレーキ力は、機体外側の前記植付伝動ケース(64)における前記ブレーキ部材(110、131)のブレーキ力よりも弱くなっていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機において、前記植付伝動ケース(64)は、機体後部側に、開閉自在な調整部カバー(100)が配設されており、前記調整部カバー(100)に、前記ブレーキ部材(110)に対して付勢力を付与する付勢部材(121)と、前記付勢部材(121)での付勢力を調節する押付部材(122)と、により前記ブレーキ部材(110)のブレーキ力を調節するブレーキ力調節機構(120)を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の苗移植機において、前記ブレーキ部材(110)には、前記ブレーキ部材(110)と前記伝動回転体(104)との接触面における前記伝動回転体(104)の回転軸(83)を挟んだ両側に、一対の減速部材(115)を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機において、前記ブレーキ部材(131)は、前記伝動回転体(104)と共に回転して前記植付体(61)を回転させる植付軸(83)と一体で回転するブレーキディスク(140)と共にブレーキ装置(130)を構成しており、前記ブレーキ装置(130)は、前記ブレーキ部材(131)と前記ブレーキディスク(140)とが接触する方向の付勢力を前記ブレーキ部材(131)または前記ブレーキディスク(140)に付与する付勢部材(145)からの付勢力によりブレーキ力を発生し、前記植付伝動ケース(64)は、内部が潤滑油で満たされていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2または3に記載の苗移植機において、前記ブレーキ部材(110)は、機体前側を開放状態としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の苗移植機は、植付伝動ケース(64)にブレーキ部材(110、131)を設けることにより、伝動回転体(104)の回転速度を減速させることができ、回転速度の急激な変化を抑制することができる。また、機体外側の植付伝動ケース(64)のブレーキ力を強くし、機体内側の植付伝動ケース(64)のブレーキ力を弱くしたことにより、植付伝動軸(82)における両端付近の位置から駆動力が伝達される植付伝動ケース(64)での駆動力の伝達時に生じる振動を抑えることができる。これらの結果、植付伝動ケース(64)内の伝動回転体(104)の回転速度を、より確実に一定に保つことができる。
また、ブレーキ部材(110、131)でブレーキ力を発生することにより、伝動回転体(104)の回転速度を一定に保つことができるので、植付伝動軸(82)から植付伝動ケース(64)に対して駆動力が伝達する際における入力負荷を軽減することができる。これにより、燃費や耐久性を向上させることができる。
また、伝動回転体(104)の回転速度を一定に保つことができるため、苗植付装置(60)が有する植付体(61)の回転軌跡を乱れ難くすることができ、苗の植付精度を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の苗移植機は、請求項1の発明の効果に加えて、調整部カバー(100)にブレーキ力調節機構(120)を設けたため、ブレーキ力調節機構(120)を容易に操作することができる。これにより、ブレーキ力の調節作業に要する労力を軽減することができると共に、必要に応じて容易にブレーキ力を調節できる。この結果、苗の植付精度を、より確実に維持することができる。
【0013】
請求項3に記載の苗移植機は、請求項1または2の発明の効果に加えて、ブレーキ部材(110)に減速部材(115)を設け、減速部材(115)を伝動回転体(104)に接触させることにより、回転する伝動回転体(104)に対して、より確実に摩擦抵抗を発生させることができる。これにより、より確実に、伝動回転体(104)の回転のブレを防止することができ、植付体(61)の回転軌跡を乱れ難くすることができるため、苗の植付精度を向上させることができる。
【0014】
請求項4に記載の苗移植機は、請求項1の発明の効果に加えて、植付軸(83)に設けるブレーキ装置(130)によって常時伝動回転体(104)にブレーキ力をかけ続けることにより、伝動回転体(104)の回転のブレを防止できるので、植付体(61)の回転軌跡を乱れ難くすることができ、苗の植付精度を向上させることができる。植付伝動ケース(64)内部を潤滑油で満たしたことにより、潤滑油不足による伝動回転体(104)や植付軸(83)、ブレーキ装置(130)の回転の乱れや焼き付きを防止でき、苗の植付精度を、一層向上させることができる。
【0015】
請求項5に記載の苗移植機は、請求項2または3の発明の効果に加えて、ブレーキ部材(110)の機体前側を開放状態としたことにより、ブレーキ部材(110)と伝動回転体(104)との接触面積が減少するため、メンテナンス時などに取り外しが容易になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態1に係る苗移植機の側面図である。
図2図2は、図1に示す苗移植機の平面図である。
図3図3は、植付装置が取り付けられる苗植付体の平面図である。
図4図4は、図3のA−A断面図である。
図5図5は、図4のB−B断面図である。
図6図6は、図4に示すブレーキステーの平面図である。
図7図7は、図6のC−C矢視図である。
図8図8は、実施形態2に係る苗移植機が備える植付伝動ケースの断面図である。
図9図9は、図8のD−D断面図である。
図10図10は、図8のE−E断面図である。
図11図11は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、線引きマーカの上下動の制御にポテンショメータを用いる場合の説明図である。
図12図12は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、防波板の設置形態についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る苗移植機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る苗移植機の側面図である。図2は、図1に示す苗移植機の平面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、苗移植機の操縦席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。本実施形態1に係る苗移植機1の走行車体2は、左右一対の前輪4と、同様に左右一対の後輪5とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。これにより、走行車体2は、圃場や道路を走行することが可能になっている。また、走行車体2の後部には、苗植付部昇降機構40によって昇降可能な苗植付部50が備えられている。
【0019】
この走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の動力を駆動輪と苗植付部50とに伝える動力伝達装置15と、を備えている。つまり、本実施形態1に係るこの苗移植機1では、動力源であるエンジン10で発生した動力は、走行車体2を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部50を駆動させるためにも使用され、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
【0020】
また、エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置されている。また、フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間に渡って設けられてメインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場に落とせるようになっている。また、このフロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられている。このリアステップ27は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン10の左右それぞれの側方に配置されている。
【0021】
エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設されている。即ち、エンジンカバー11は、フロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出した状態で、エンジン10を覆っている。
【0022】
また、走行車体2には、エンジンカバー11の上部に操縦席28が設置されており、操縦席28の前方で、且つ、走行車体2の前側中央部には、操縦部30が配設されている。この操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。
【0023】
操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられている。また、操縦部30の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル32が配設されている。このハンドル32は、作業者が前輪4を操舵操作することにより走行車体2を操舵する操舵部材として設けられており、操縦部30内の操作装置等を介して前輪4を転舵させることが可能になっている。また、操作レバーとしては、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作する変速操作部材である変速レバー35と、走行車体2の走行速度を、走行する場所に応じた速度に切り替える副走行操作部材である副変速レバー38とが、機体右側と左側に配設されている。
【0024】
また、フロアステップ26における操縦部30の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗を載せておく予備苗載台65が配置されている。この予備苗載台65は、フロアステップ26の床面から突出した支持軸(鉛直軸)によって回転自在に支持されており、作業者の手、または電動モータ等の回動部材によって回動させることが可能になっている。
【0025】
また、動力伝達装置15は、エンジン10から伝達される駆動力を変速する変速装置である油圧式無段変速機16と、この油圧式無段変速機16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17と、を有している。このうち、油圧式無段変速機16とは、HST(Hydro Static Transmission)と云われる静油圧式の無段変速装置として構成されている。このため、油圧式無段変速機16は、エンジン10からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。これにより、油圧式無段変速機16は、エンジン10で発生する動力を、走行車体2を走行させる力に変換する。
【0026】
その際に、油圧式無段変速機16は、回転力の方向や回転速度を変更することにより、走行車体2の前後進及び走行速度を変更することが可能になっており、変速レバー35は、この油圧式無段変速機16の出力及び出力方向を変更することによって、走行車体2の前後進及び走行速度を操作することが可能になっている。
【0027】
この油圧式無段変速機16は、エンジン10よりも前方で、且つ、フロアステップ26の床面よりも下方に配置されており、本実施形態1に係る苗移植機1では、走行車体2の上面から見て、エンジン10の前方に配置されている。
【0028】
また、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸に取り付けたプーリと、油圧式無段変速機16の入力軸に取り付けたプーリと、双方のプーリに巻き掛けたベルトと、さらに、このベルトの張力を調整するテンションプーリと、を備えている。これにより、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機16に伝達可能になっている。
【0029】
さらに、動力伝達装置15は、ベルト式動力伝達機構17を介して油圧式無段変速機16に伝達され、油圧式無段変速機16で変速したエンジン10からの駆動力を各部に伝達する伝動装置であるミッションケース18を有している。このミッションケース18は、路上走行時や植付時等における走行車体2の作業速度を切り替える副変速機構(図示省略)を内設しており、メインフレーム7の前部に取り付けられている。副変速レバー38は、ミッションケース18内の副変速機構を操作することにより、走行車体2の走行速度を切り替えることが可能になっている。ミッションケース18は、ベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されたエンジン10からの出力を、当該ミッションケース18内の副変速機構で変速して、前輪4と後輪5への走行用動力と、苗植付部50への駆動用動力とに分けて出力可能になっている。
【0030】
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース21を介して前輪4に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケース22を介して後輪5に伝達可能になっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース21は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設されており、左右の前輪4は、車軸を介して左右の前輪ファイナルケース21に連結されている。また、この前輪ファイナルケース21は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース22には、車軸を介して後輪5が連結されている。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部50へ伝達される。
【0031】
また、走行車体2の後部に備えられる苗植付部50を昇降させる苗植付部昇降機構40は、昇降リンク装置41を有しており、苗植付部50は、この昇降リンク装置41を介して走行車体2に取り付けられている。この昇降リンク装置41は、走行車体2の後部と苗植付部50とを連結させる平行リンク機構42を備えている。この平行リンク機構42は、上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム43に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部50に回転自在に連結されることにより、苗植付部50を昇降可能に走行車体2に連結している。
【0032】
また、苗植付部昇降機構40は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ44を有しており、油圧昇降シリンダ44の伸縮動作によって、苗植付部50を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構40は、その昇降動作によって、苗植付部50を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
【0033】
また、苗植付部50は、苗を植え付ける範囲を複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができ、本実施形態1に係る苗移植機1では、苗を6つの区画で植え付ける、いわゆる6条植の苗植付部50になっている。この苗植付部50は、苗植付装置60と、苗載置台51及びフロート47を備えている。このうち、苗載置台51は、走行車体2の後部に複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面52を有し、それぞれの苗載せ面52に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。これにより、苗載置台51に載置した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
【0034】
また、苗植付装置60は、苗載置台51の下部に配設されており、苗載置台51の前面側に配設される植付支持フレーム55によって支持されている。この苗植付装置60は、苗載置台51に載置された苗を苗載置台51から取って圃場に植え付ける装置になっており、植付伝動ケース64と植付体61と植付伝動軸82(図3参照)とを有している。このうち、植付体61は、苗載置台51から苗をとって圃場に植え付けることができるように構成されており、植付伝動ケース64は、植付体61に駆動力を供給することが可能になっている。
【0035】
詳しくは、植付伝動ケース64は、エンジン10から苗植付部50に伝達された動力を、植付体61に供給可能に構成されており、植付体61は、植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されている。また、植付体61は、苗載置台51から苗をとって圃場に植え付ける植込杆62と、植込杆62を回転可能に支持すると共に植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されるロータリケース63と、を有している。ロータリケース63は、植付伝動ケース64から伝達された駆動力によって植込杆62を回転させる際に、回転速度を変化させながら回転させることのできる不等速伝動機構(図示省略)を内装している。これにより、植付体61の回転時には、植込杆62は、ロータリケース63に対する回転角度によって回転速度が変化しながら回転をすることができる。
【0036】
このように構成される苗植付装置60は、2条毎に1つずつ配設されており、即ち、複数の苗植付装置60は、それぞれ植付条が割り当てられている。また、各植付伝動ケース64は、2条分の植付体61を回転可能に備えており、つまり、1つの植付伝動ケース64には、2つのロータリケース63が、機体左右方向の両側に連結されている。本実施形態1に係る苗移植機1が有する苗植付装置60は、この植付伝動ケース64を3つ備えており、これにより、6条分の植付体61を備えている。
【0037】
また、フロート47は、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体2の左右方向における苗植付部50の中央に位置するセンターフロート48と、左右方向における苗植付部50の両側に位置するサイドフロート49と、を有している。
【0038】
また、苗植付部50の下方側の位置における前側には、圃場の整地を行う整地用ロータ67が設けられている。この整地用ロータ67は、後輪ギヤケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって回転可能に構成されている。
【0039】
また、苗植付部50の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ68が備えられている。即ち、線引きマーカ68は、苗移植機1が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ68は、マーカモータ160(図11参照)によって作動し、走行車体2が旋回するごとに、左右の線引きマーカ68が入れ替わって作動することができるように構成されている。この左右の線引きマーカ68の入れ替えは、マーカモータ160が接続されるコントローラ(図示省略)によって行う。即ち、コントローラは、走行車体2の旋回時に、左右の線引きマーカ68を交互に作動状態と非作動状態とに切り替えるマーカ切替装置としても設けられている。なお、左右の線引きマーカ68の線引き作用部は、図1及び図2に示す通り、円盤の外周部に複数の突起体を設け、回転自在にロッド部に装着したものとすると、圃場面との接地抵抗により確実に圃場面に線を形成することができ、次の植付作業位置での直進作業が行い易くなり、作業能率が向上する。
【0040】
また、走行車体2における操縦席28の後方には、施肥装置70が搭載されている。この施肥装置70は、肥料を貯留する貯留ホッパ71と、貯留ホッパ71から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置72と、繰出し装置72により繰り出される肥料を圃場に供給する施肥通路である施肥ホース74と、施肥ホース74に搬送風を供給することにより、施肥ホース74内の肥料を苗植付部50側に移送する起風装置であるブロア73と、を有している。さらに、施肥装置70は、苗植付部50の下方に配設されると共に、施肥ホース74によって肥料が移送される施肥ガイド75と、施肥ガイド75の前側に設けられると共に、施肥ホース74によって移送された肥料を、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器76と、を有している。
【0041】
図3は、植付装置が取り付けられる苗植付体の平面図である。苗植付部50が有する複数の苗植付装置60は、植付伝動ケース64を支持すると共に、苗植付装置60に駆動力を伝動可能に構成される苗植付体80に備えられている。この苗植付体80は、植付支持フレーム55に支持されており、これにより、苗植付装置60が有する複数の植付伝動ケース64は、植付支持フレーム55に装着されている。苗植付体80は、内部に伝動機構(図示省略)を有するメインケース81を有しており、メインケース81内の伝動機構には、エンジン10で発生した駆動力をミッションケース18から苗植付装置60に対して伝動する植付ドライブシャフト95が連結されている。これにより、メインケース81内には、ミッションケース18から出力された駆動力が、植付ドライブシャフト95によって伝達可能になっている。また、メインケース81は、植付ドライブシャフト95から伝達された駆動力を複数の植付伝動ケース64に供給する植付伝動軸82を支持しており、植付伝動軸82は、機体左右方向に延在している。
【0042】
複数の植付伝動ケース64は、メインケース81からの出力軸である植付伝動軸82にそれぞれ前端側が連結されており、これにより、植付伝動ケース64は、植付伝動軸82から駆動力を受けることが可能になっている。各植付伝動ケース64は、内部にチェーン駆動機構102(図4参照)を備えており、それぞれの植付伝動ケース64の後端側には、駆動力をロータリケース63に伝達する植付軸83が、機体左右方向両側に突出している。植付伝動軸82から植付伝動ケース64に入力された駆動力は、内部のチェーン駆動機構102によって植付軸83に伝達され、植付軸83によって出力される。植付軸83には、植付体61のロータリケース63が連結されており、植付体61は、この植付軸83から出力される駆動力により駆動する。即ち、植付軸83は、植付体61に駆動力を出力することにより、植付体61を回転させる。
【0043】
また、メインケース81には、植付ドライブシャフト95から駆動力を受けて作動し、苗載置台51を機体左右方向に往復摺動させる摺動機構であるリードカム機構90が備えられている。このリードカム機構90は、リードカム軸91と、摺動軸92とを備えている。リードカム軸91は、長手方向が左右方向と平行な状態で、左右方向の移動が規制され、且つ、軸心回りの回転が許容されて、メインケース81に支持されている。リードカム軸91は、植付ドライブシャフト95からエンジン10の駆動力が伝動されて、エンジン10からの駆動力により軸心回りに回転する。即ち、植付ドライブシャフト95は、リードカム軸91にエンジン10からの駆動力を伝動する。
【0044】
摺動軸92は、中央部がメインケース81に収容されて支持されている。摺動軸92は、リードカム軸91のカムに係合するリードカムを固着して、リードカム軸91に接触してリードカム軸91の回転により機体左右方向に往復移動する。摺動軸92は、両端が苗載置台51に連結されており、リードカム軸91の回転によって左右方向に往復移動することにより、苗載置台51を機体左右方向に往復摺動させる。
【0045】
図4は、図3のA−A断面図である。図5は、図4のB−B断面図である。植付伝動ケース64には、植付伝動軸82から伝達された駆動力を、植付伝動ケース64の機体前後方向における後端側に配設された植付軸83に伝達するチェーン駆動機構102が、内部に設けられている。チェーン駆動機構102は、植付軸83に取り付けられて植付軸83と一体となって回転をする伝動回転体である伝動スプロケット104と、植付伝動軸82側のスプロケット(図示省略)と、植付軸83に取り付けられた伝動スプロケット104との間に巻き掛けられた伝動チェーン103と、を有している。植付軸83と伝動スプロケット104とは、植付軸83が伝動スプロケット104の回転軸となり、双方が一体となって回転可能に設けられている。
【0046】
また、植付伝動ケース64内における伝動チェーン103の機体下方側には、下方側から伝動チェーン103を支持するバネ部材105が設けられている。バネ部材105は、伝動チェーン103に対して、機体下方側から機体上方に向けた付勢力を付与することにより、伝動チェーン103の弛みを抑制する、テンションナーとして設けられている。
【0047】
伝動スプロケット104には、伝動チェーン103が巻き掛けられることにより、植付伝動軸82から植付伝動ケース64に供給される駆動力は、伝動チェーン103を介して伝動スプロケット104に伝達することができる。伝動スプロケット104と、伝動スプロケット104が取り付けられる植付軸83とは、この伝動チェーン103によって伝達される駆動力により、一体となって回転可能になっている。植付軸83には、植付体61が連結されるため、植付伝動ケース64に伝達された駆動力は、植付軸83が回転することにより植付体61に伝達され、植付体61を駆動させる駆動力として用いられる。
【0048】
また、植付伝動ケース64には、伝動スプロケット104に接触することにより、具体的には、伝動スプロケット104の側面に接触することにより、摩擦力によって伝動スプロケット104の回転速度を減速させるブレーキ部材であるブレーキステー110が設けられている。即ち、ブレーキステー110は、回転する伝動スプロケット104に対して、摩擦抵抗によって負荷を付与することが可能になっている。このブレーキステー110は、植付伝動ケース64の内部において、機体前後方向における伝動スプロケット104が配設されている位置から、植付伝動ケース64内の後端側にかけて設けられており、機体左右方向における位置が、伝動スプロケット104の位置と同程度の位置になっている。即ち、ブレーキステー110は、植付伝動ケース64内における伝動スプロケット104の近傍から、植付伝動ケース64の後端側にかけて設けられている。
【0049】
ブレーキステー110は、植付伝動ケース64内に配設されている状態において機体左右方向に見た場合における形状が、略Y字状の形状になっている。略Y字状の形状で形成されるブレーキステー110は、Y字の二方向に分かれる部分のそれぞれの部位が、機体上下方向における植付軸83の両側に位置し、Y字の二方向に分かれる部分に連結される直線状の部分は、伝動スプロケット104の近傍から伝動スプロケット104の機体後方に延びている。即ち、ブレーキステー110は、Y字の二方向に分かれる部分の間の部分に、植付軸83が通るように配設されている。
【0050】
図6は、図4に示すブレーキステーの平面図である。図7は、図6のC−C矢視図である。ブレーキステー110におけるY字の二方向に分かれる部分は、伝動スプロケット104の回転速度を減速させる減速部111になっており、減速部111に連結される直線状の部分は、ブレーキ力の調節に用いるブレーキ力調節部114になっている。減速部111は、半円の略円弧状の形状で形成されており、円弧の円周方向における中央付近にブレーキ力調節部114が接続されることにより、ブレーキ力調節部114から見た場合に、減速部111は二方向に分かれて形成されている。
【0051】
略円弧状に形成される減速部111の両端部分付近、つまり、減速部111における二方向に分かれている部分のそれぞれの先端付近には、一方の面に、伝動スプロケット104に対して摩擦抵抗による負荷を付与する減速部材であるライニング115が設けられている。具体的には、ライニング115は、ブレーキステー110を植付伝動ケース64内に配設した際における、減速部111において伝動スプロケット104の側面に対向する面に設けられている。つまり、ライニング115は、伝動スプロケット104に接触することにより伝動スプロケット104の回転速度を減速させるブレーキステー110における、伝動スプロケット104に接触する部分に設けられている。
【0052】
また、ブレーキ力調節部114は、略長方形の板状の形状で形成されており、厚さ方向が、減速部111の形状である半円の軸方向になる向きで減速部111に接続されている。このブレーキ力調節部114における減速部111寄りの位置には、ブレーキステー110を植付伝動ケース64内に配設する際に用いる支持部112が設けられている。支持部112は、ブレーキ力調節部114における減速部111寄りの位置で、且つ、ブレーキ力調節部114の形状である長方形の幅方向の両側に設けられている。
【0053】
このように設けられる支持部112は、減速部111におけるライニング115が設けられている面側の反対方向に、ブレーキ力調節部114の厚さ方向に突出している。支持部112は、略矩形の板状の形状で形成されており、板の厚さ方向が、ブレーキ力調節部114の幅方向になる向きで設けられている。このため、ブレーキ力調節部114の幅方向における両側に設けられる2つの支持部112は、ブレーキ力調節部114の両側で互いに対向するように設けられている。
【0054】
この2つの支持部112には、共に厚さ方向に開けられた孔部113が形成されている。2つの支持部112に開けられたそれぞれの孔部113は、2つの孔部113が連通する向き、及び位置となって形成されている。換言すると、2つの孔部113は、共に円形の形状で支持部112の厚さ方向に開けられており、円形の中心軸が同一線上になる向きで形成されている。
【0055】
このように形成されるブレーキステー110は、減速部111の形状である半円の中心軸が植付軸83の軸心と一致し、減速部111におけるライニング115が設けられている側の面が伝動スプロケット104の側面に対向し、さらに、ブレーキ力調節部114が減速部111から機体後方に延びる向きで、植付伝動ケース64内に配設されている。該ライニング115は、ブレーキステー110と伝動スプロケット104との接触面に設けられている。つまり、ライニング115は、ブレーキステー110と伝動スプロケット104との接触面における植付軸83を挟んだ両側に、一対設けられるものである。また、減速部111は、当該減速部111の形状である半円の開放側が機体前方側に位置する向きになっており、換言すると、ブレーキステー110は、機体前側を開放状態として形成され、配設されている。
【0056】
この向きで配設されるブレーキステー110は、回動ピン116が、支持部112の孔部113と、調整部カバー100における回動ピン116の支持部とに通され、回動ピン116を中心として回動可能に配設されている。このように、内部にブレーキステー110が配設される植付伝動ケース64は、機体後部側に、開閉自在な調整部カバー100が配設されている。この調整部カバー100は、植付伝動ケース64の後端側に取付ボルト101によって固定することにより、機体後方に向けて開放している植付伝動ケース64における機体後部を閉じることができ、取付ボルト101を取り外すことにより、植付伝動ケース64における機体後部を開けることが可能になっている。ブレーキステー110における、減速部111から機体後方側に延びるブレーキ力調節部114は、閉じた状態の調整部カバー100の近傍に、後端部分が位置している。なお、上記の構成部材の円滑な動作や、長時間の作動による焼き付きを防止すべく、前記植付伝動ケース64の内部には、少なくとも伝動スプロケット104の下面と伝動チェーン103の周回軌跡上の最下部が常時浸漬される程度の量の潤滑油を封入しておくものとする。
【0057】
この調整部カバー100には、スプリング121と、ボルト122とで構成する、ブレーキステー110のブレーキ力を調節するブレーキ力調節機構120が設けられている。このうち、スプリング121は、圧縮ばねからなり、ブレーキステー110に対して付勢力を付与する付勢部材として設けられている。また、ボルト122は、ブレーキステー110に対するスプリング121での付勢力を調節する押付部材として設けられている。
【0058】
詳しくは、スプリング121の一端側は、ブレーキステー110のブレーキ力調節部114における、減速部111においてライニング115が設けられている側の面と同じ側の面に接触しており、スプリング121の他端側は、ボルト122の先端に接触している。このため、圧縮ばねからなるスプリング121は、ブレーキ力調節部114における、当該スプリング121が接触している面に、付勢力を付与している。
【0059】
また、ボルト122は、調整部カバー100の外面から内面に向けて形成されるネジ孔に螺合しており、ネジ孔に対するボルト122のねじ込み深さを調節することにより、先端の位置を調節することができる。このため、スプリング121における、ボルト122に接触する側の端部の位置を調節することができ、これにより、ブレーキ力調節部114に対するスプリング121からの付勢力の大きさを調節することができる。
【0060】
ブレーキステー110は、回動ピン116を中心として回動することができるように配設されているため、スプリング121から付勢力が付与されている際には、付与された付勢力により、回動ピン116を中心として回動する。ブレーキステー110に付与される付勢力は、ブレーキ力調節部114に対して、減速部111においてライニング115が設けられている側の面に付与される向きの付勢力であるため、ブレーキステー110は、ブレーキ力調節部114が、ボルト122から離れる方向に回動ピン116を中心として回動する。
【0061】
ブレーキステー110におけるこの方向への回動は、減速部111が伝動スプロケット104に近付く向きになっており、ブレーキステー110がこの方向に回動した場合、減速部111に設けられるライニング115は、伝動スプロケット104に近付き、伝動スプロケット104の側面に押し付けられることになる。これにより、伝動スプロケット104の回転時には、伝動スプロケット104とライニング115との間に摩擦力が発生し、伝動スプロケット104の回転速度を減速させるブレーキ力が発生する。
【0062】
また、ブレーキ力調節機構120のボルト122のねじ込み深さを調節することにより、スプリング121からブレーキ力調節部114への付勢力の大きさを変化させた際には、伝動スプロケット104に対してライニング115が押し付けられる力が変化する。これにより、ブレーキステー110によって発生させるブレーキ力が変化する。例えば、ボルト122のねじ込み深さを深くすることにより、スプリング121からブレーキ力調節部114への付勢力の大きさが大きくなり、伝動スプロケット104に対してライニング115が押し付けられる力が大きくなった際には、ブレーキ力も大きくなる。反対に、ボルト122のねじ込み深さを浅くすることにより、スプリング121からブレーキ力調節部114への付勢力の大きさが小さくなり、伝動スプロケット104に対してライニング115が押し付けられる力が小さくなった際には、ブレーキ力も小さくなる。
【0063】
このようにブレーキ力を発生させるブレーキステー110は、全ての植付伝動ケース64に設けられているが、ブレーキステー110は、植付伝動ケース64に応じて、ブレーキ力が異なるように設けられている。つまり、複数の植付伝動ケース64のうち、機体内側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力は、機体外側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力よりも弱くなっている。具体的には、本実施形態1に係る苗移植機1では、植付伝動ケース64は、3つが機体左右方向に並んで設けられているため、機体左右方向における中央の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力は、機体左右方向における両端の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力よりも弱くなっている。
【0064】
本実施形態1に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。苗移植機1の運転時は、エンジン10で発生する動力によって、走行車体2の走行と、苗載置台51に載せた苗の植付作業を行う。この植付作業は、苗植付装置60の植付軸83が左右方向になる向きで植付体61全体が回転しながら、植込杆62も回転することにより、苗載置台51に載せられた苗を順次植込杆62で取り、取った苗を徐々に圃場に植え付ける。その際に、苗載置台51を、苗載置台51に載置する1条分の機体左右方向の幅の範囲内で機体左右方向に往復移動させることにより、各苗植付装置60は、苗載置台51においてそれぞれの苗植付装置60に対応する部分から苗を取り出し、圃場に植え付ける。即ち、各苗植付装置60は、苗載置台51の所定の条に対応する部分から苗を取り出して、所定の条に苗を植え付ける。植付作業時は、このように苗植付装置60を作動させながら圃場内を走行車体2で走行することにより、複数の列状に苗を植え付ける。
【0065】
走行車体2の走行時には、エンジン10で発生した動力はベルト式動力伝達機構17に伝達され、ベルト式動力伝達機構17から油圧式無段変速機16に伝達されて、油圧式無段変速機16で所望の回転速度や回転方向、トルクに変換されて出力される。油圧式無段変速機16から出力された動力は、ミッションケース18に伝達され、路上走行時の走行速度に適した回転速度、または苗の植え付け時の走行速度に適した回転速度にミッションケース18内で変速されて、前輪4側や後輪5側に出力される。
【0066】
また、ミッションケース18から出力される動力の一部は、ミッションケース18内で変速された後、植付ドライブシャフト95によって苗植付部50側にも伝達され、苗植付部50での植付作業にも用いられる。苗植付体80では、植付ドライブシャフト95によって伝達された駆動力が、植付伝動軸82によって各植付伝動ケース64に伝達される。各植付伝動ケース64は、植付伝動軸82によって伝達された駆動力を、植付伝動ケース64に内設されているチェーン駆動機構102によって植付軸83に伝達する。植付軸83は、このように伝達された駆動力によって回転し、植付軸83に連結されている植付体61は、植付体61の回転に伴い、回転駆動する。即ち、植付体61は、ロータリケース63が回転をしながら、ロータリケース63に取り付けられる植込杆62も、ロータリケース63に対して相対回転をする。
【0067】
また、苗植付体80にはリードカム機構90が備えられており、リードカム機構90は、植付ドライブシャフト95によって苗植付体80に伝達された駆動力により作動し、摺動軸92が機体左右方向に往復移動する。これにより、摺動軸92に連結されている苗載置台51も機体左右方向に往復移動する。苗の植え付け時には、このように苗載置台51が機体左右方向に往復移動しながら、回転駆動する植付体61の植込杆62で、苗載置台51に載置されている苗を順次取り、圃場に植え付ける。
【0068】
苗植付装置60は、このように植付体61が回転駆動することにより圃場に苗を植え付けるが、植付体61は、不等速伝動機構により、植込杆62が不等速回転をしながら回転駆動する。この植込杆62が不等速回転をした場合、その反動による回転トルクが植付軸83を介して、植付伝動ケース64内のチェーン駆動機構102に伝達されるが、チェーン駆動機構102の伝動スプロケット104は、ブレーキステー110が発生させるブレーキ力により、回転速度を減速させながら回転する。
【0069】
つまり、ブレーキステー110は、ライニング115が伝動スプロケット104に接触した状態で配設されているため、伝動スプロケット104は、ライニング115との摩擦抵抗により、ブレーキステー110から負荷が付与されてブレーキ力が発生した状態で回転をする。その際に、ライニング115は、ブレーキステー110の減速部111の全面には設けられておらず、ブレーキステー110と伝動スプロケット104との接触面における植付軸83を挟んだ両側に一対が設けられているのみになっている。このため、ライニング115は、大きな摩擦抵抗は発生させず、伝動スプロケット104の回転の負荷になる程度のブレーキ力を発生させるため、伝動スプロケット104は回転をし続ける。このため、伝動スプロケット104は、伝動チェーン103で伝達される駆動力によって回転する際に、ブレーキステー110から受ける負荷により、急激な回転速度の変動の影響を受けにくい状態で回転している。
【0070】
これにより、植込杆62の不等速回転時の反動による回転トルクが植付軸83を介して伝動スプロケット104に伝達された場合でも、この回転トルクに起因する伝動スプロケット104の回転速度の急激な変動が抑制される。従って、伝動スプロケット104は、植込杆62が不等速回転で回転する状態であっても、伝動チェーン103で伝達される駆動力によって一定の回転速度で回転する。
【0071】
また、各植付伝動ケース64には、植付伝動軸82によって駆動力が伝達されるが、植付伝動軸82には、駆動力の伝達時に捩れが発生するため、植付伝動軸82から植付伝動ケース64に対して駆動力が伝達される際に、この捩れに起因して振動が発生することがある。特に、植付伝動軸82の端部付近では、植付伝動軸82の捩れが大きくなるため、植付伝動軸82の端部付近に連結される植付伝動ケース64では、駆動力の伝達時の振動も大きくなり易くなる。
【0072】
植付伝動ケース64に内設されているブレーキステー110は、伝動スプロケット104にブレーキ力を付与して伝動スプロケット104を安定して回転させることにより、このように植付伝動軸82から植付伝動ケース64への駆動力の伝達時に発生する振動も抑え、伝動チェーン103を安定して回転させる。
【0073】
また、ブレーキステー110のブレーキ力は、機体外側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力よりも、機体内側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力の方が弱くなっている。つまり、機体外側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力は、機体内側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力よりも強くなっている。ブレーキステー110のブレーキ力は、例えば、機体左右方向における植付伝動ケース64の位置によって、ブレーキステー110のライニング115の材質を異ならせてライニング115の摩擦係数を異ならせることにより、機体左右方向における位置によってブレーキ力を異ならせる。
【0074】
このため、植付伝動軸82の端部付近に連結される植付伝動ケース64、即ち、機体外側の植付伝動ケース64において、植付伝動軸82から植付伝動ケース64への駆動力の伝達時に発生する大きな振動も、ブレーキステー110の大きなブレーキ力によって抑制することができる。これにより、駆動力の伝達時に発生する振動に起因して伝動スプロケット104の回転速度が急激に変化することが抑制され、伝動スプロケット104は、伝動チェーン103で伝達される駆動力によって一定の回転速度で回転する。上記により、植付体61には、回転速度が安定した駆動力が植付軸83によって伝達され、この安定した駆動力によって回転駆動をして、苗の植え付け動作を行う。
【0075】
植付伝動ケース64は、このようにブレーキステー110によってブレーキ力を発生することにより、植付体61に駆動力を伝達する際における回転速度を安定させることができるが、このブレーキ力は、ブレーキ力調節機構120によって調節することが可能になっている。このブレーキ力調節機構120は、ボルト122のねじ込み深さを調節することにより、ブレーキ力を調節することが可能になっている。即ち、ブレーキ力調節機構120は、ボルト122のねじ込み深さを深くした場合には、ブレーキ力を強くすることができ、ボルト122のねじ込み深さを浅くした場合には、ブレーキ力を弱くすることができる。
【0076】
このため、複数の植付伝動ケース64のうち、駆動力の伝達時における振動が大きい植付伝動ケース64では、ブレーキ力調節機構120によってブレーキステー110で発生するブレーキ力を強くすることにより、伝動スプロケット104の回転時における負荷を大きくする。これにより、伝動スプロケット104に伝達される回転トルクが大きく変動する場合でも、この回転トルクに基づく回転速度の大きな変動を、ブレーキステー110で発生するブレーキ力によって抑制することができる。
【0077】
これに対し、複数の植付伝動ケース64のうち、駆動力の伝達時における振動が小さい植付伝動ケース64では、ブレーキ力調節機構120によってブレーキステー110で発生するブレーキ力を弱くすることにより、伝動スプロケット104の回転時における負荷を小さくする。これにより、伝動スプロケット104の回転時における回転抵抗が少なくなるので、植付伝動ケース64に伝達される駆動力を、効率的に植付体61に伝達でき、効率的に植付体61を回転駆動させることができる。
【0078】
なお、機体外側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力を、機体内側の植付伝動ケース64におけるブレーキステー110のブレーキ力よりも強くする際には、このブレーキ力調節機構120によってブレーキ力を調節してもよい。
【0079】
このように、ブレーキ力を発生するブレーキステー110は、略Y字状の形状で形成され、機体前側が開放された状態で植付伝動ケース64内に配設されている。このため、ブレーキステー110の点検や交換等のメンテナンスを行う際には、植付伝動ケース64における機体後部側に配設されている調整部カバー100用の取付ボルト101を外して調整部カバー100を開けることにより、ブレーキステー110は、機体後方側に引き抜くことができる。即ち、機体前側が開放しているブレーキステー110は、機体後方側に移動させる際には、いずれのものにも引っ掛かることなく移動させることができる。これにより、ブレーキステー110は、機体後方側に引き抜くことができるため、ブレーキステー110は、植付伝動ケース64の外に出してメンテナンスを行うことができる。
【0080】
以上の実施形態1に係る苗移植機1は、植付伝動ケース64にブレーキステー110を設けることにより、伝動スプロケット104の回転速度を減速させることができ、回転速度の急激な変化を抑制することができる。また、機体外側の植付伝動ケース64に内設されるブレーキステー110のブレーキ力を強くし、機体内側の植付伝動ケース64に内設されるブレーキステー110のブレーキ力を弱くしたことにより、植付伝動軸82における両端付近の位置から駆動力が伝達される植付伝動ケース64での駆動力の伝達時に生じる振動を抑えることができる。これらの結果、植付伝動ケース64内の伝動スプロケット104の回転速度を、より確実に一定に保つことができる。
【0081】
また、ブレーキステー110でブレーキ力を発生することにより、伝動スプロケット104の回転速度を一定に保つことができるので、植付伝動軸82から植付伝動ケース64に対して駆動力が伝達する際における入力負荷を軽減することができる。これにより、燃費や耐久性を向上させることができる。また、伝動スプロケット104の回転速度を一定に保つことができるため、苗植付装置60が有する植付体61の回転軌跡を乱れ難くすることができる。これにより、苗の植付精度を向上させることができる。
【0082】
また、調整部カバー100にブレーキ力調節機構120を設けたため、ブレーキ力調節機構120を容易に操作することができる。これにより、ブレーキ力の調節作業に要する労力を軽減することができると共に、必要に応じて容易にブレーキ力を調節できる。この結果、苗の植付精度を、より確実に維持することができる。
【0083】
また、ブレーキステー110の回動支点軸である回動ピン116を、植付伝動ケース64内に設けたため、植付伝動ケース64のコンパクト化を図ることができる。この結果、植付伝動ケース64の外部に余分な突起が形成されないようにすることができ、夾雑物の引っ掛かりを防止することができる。
【0084】
また、ブレーキステー110に減速部材であるライニング115を設け、ライニング115を伝動スプロケット104に接触させることにより、回転する伝動スプロケット104に対して、より確実に摩擦抵抗を発生させることができる。これにより、より確実に、チェーン駆動機構102での駆動力の伝達時における伝動スプロケット104の回転のブレを防止することができる。この結果、植付体61の回転軌跡を乱れ難くすることができ、苗の植付精度を向上させることができる。
【0085】
また、ブレーキステー110は、機体前側を開放状態にしたため、機体後方側に引き抜くのみで、植付伝動ケース64内から取り外すことができる。また、ブレーキステー110の機体前側を開放状態としたことにより、ブレーキステー110と伝動スプロケット104との接触面積が減少するため、ブレーキステー110と伝動スプロケット104との摩擦力を減少させることができ、ブレーキステー110を移動させる際に、小さな力で移動させることができる。これらの結果、メンテナンス時などに、ブレーキステー110の取り外しが容易になり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0086】
〔実施形態2〕
実施形態2に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と略同様の構成であるが、多板式ディスクブレーキ130によって伝動スプロケット104の回転速度を減速させる点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0087】
図8は、実施形態2に係る苗移植機が備える植付伝動ケースの断面図である。図9は、図8のD−D断面図である。図10は、図8のE−E断面図である。本実施形態2に係る苗移植機1は、実施形態1に係る苗移植機1と同様に、植付伝動ケース64にはチェーン駆動機構102が内設されており、チェーン駆動機構102を構成する伝動スプロケット104と、植付体61が連結される植付軸83とが、一体となって回転可能に設けられている。また、この実施形態2に係る苗移植機1では、伝動スプロケット104の回転速度を減速させるブレーキ部材131は、植付軸83と一体で回転するブレーキディスク140と共に、ブレーキ装置である多板式ディスクブレーキ130を構成している。
【0088】
このうち、ブレーキディスク140は、中央に孔があいた略円板状の形状で形成され、中央の孔に植付軸83が通されることにより、ブレーキディスク140は、植付軸83と一体となって回転可能に、植付軸83に取り付けられている。その際に、ブレーキディスク140は、スプライン等により、回転方向に対しては植付軸83と一体となって回転しつつ、植付軸83の軸方向に対しては、植付軸83に対して相対移動ができるように取り付けられている。本実施形態2に係る苗移植機1では、ブレーキディスク140は3つが並んで植付軸83に取り付けられている。
【0089】
ブレーキ部材131は、中央に孔が開いた略円板状の形状で形成されており、その内径は、植付軸83においてブレーキ部材131が配設される位置の外径よりも大きくなっている。本実施形態2に係る苗移植機1では、ブレーキ部材131は2つ設けられており、2つのブレーキ部材131は、軸方向において3つのブレーキディスク140のそれぞれの間に位置するように配設されている。即ち、多板式ディスクブレーキ130は、3つのブレーキディスク140と2つのブレーキ部材131とが、植付軸83に軸方向に交互に位置するように配設されている。
【0090】
また、ブレーキ部材131には、径方向における外方側に、当該ブレーキ部材131を支持する部分である支持部133が設けられている。この支持部133は、径方向における外方に突出してブレーキ部材131の2箇所に設けられており、2箇所の支持部131は、ブレーキ部材131において点対称となる位置に設けられている。このように形成される支持部133には、ブレーキ部材131の厚さ方向に開けられた孔が形成されており、この孔には、ブレーキ部材131の回転を規制しつつブレーキ部材131を支持する支持ピン135が通されている。
【0091】
2つのブレーキ部材131は、軸方向において支持部133が重なる向きで配設されており、支持ピン135は、植付軸83に平行になる向きで配設されて、2つのブレーキ部材131の支持部133の孔を連通している。詳しくは、支持部133は、1つのブレーキ部材131あたりの点対称となる位置に2つが設けられているため、支持ピン135も、2つの支持ピン135が点対称となる位置で、それぞれ2つのブレーキ部材131の支持部133の孔に通されている。これにより、支持ピン135は、ブレーキ部材131の回転を規制しつつ、植付軸83の軸方向には移動可能に、ブレーキ部材131を支持している。
【0092】
このように設けられるブレーキ部材131には、ブレーキディスク140に対向する面に、減速部材であるライニング132が設けられている。即ち、ライニング132は、植付軸83の軸方向におけるブレーキ部材131の両面に設けられている。このライニング132は、複数のライニング132が、互いに離間してブレーキ部材131の周方向に並んで設けられている。
【0093】
また、多板式ディスクブレーキ130は、ブレーキ部材131とブレーキディスク140とが接触する方向の付勢力をブレーキ部材131、またはブレーキディスク140に付与する付勢部材であるスプリング145が設けられている。このスプリング145は、圧縮ばねからなり、内側に植付軸83が通る状態で設けられている。このスプリング145は、一端が、3つのブレーキディスク140のうち、軸方向において端部に位置するブレーキディスク140の外側の面に接触しており、他端が、植付軸83に取り付けられるスプリング受け146に接触している。これにより、スプリング145は、植付軸83と一体となって回転しつつ、植付軸83の軸方向に並んで配設されるブレーキディスク140とブレーキ部材131とが近付く方向に、ブレーキディスク140に対して付勢力を付与することが可能になっている。
【0094】
これらのように構成される多板式ディスクブレーキ130を内設する植付伝動ケース64は、機体後部側に、取付ボルト151によって伝動ケースカバー150が取り付けられている。植付伝動ケース64は、伝動ケースカバー150が取り付けられた状態では、内部が潤滑油で満たされている。
【0095】
本実施形態2に係る苗移植機1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態2に係る苗移植機1においても、植付伝動ケース64から植付体61に駆動力が伝達されて植付体61が回転駆動する際には、植付体61は、植込杆62が不等速回転をしながら回転駆動する。このため、植付軸83や伝動スプロケット104には、その反動による回転トルクが伝達されるが、植付軸83や伝動スプロケット104は、多板式ディスクブレーキ130で発生するブレーキ力により回転速度が減速しながら回転をする。
【0096】
つまり、多板式ディスクブレーキ130は、ブレーキ部材131とブレーキディスク140とが交互に並んだ状態で配設され、さらに、スプリング145によって、これらが近付く方向に付勢力が付与されている。このため、回転が規制されているブレーキ部材131とブレーキディスク140とは、対向している面同士が接触し、植付軸83は、この状態でブレーキディスク140と共に回転する。これにより、ブレーキ部材131のライニング132とブレーキディスク140との間には摩擦抵抗が発生し、この摩擦抵抗により、ブレーキディスク140は、ブレーキ部材131から負荷が付与されてブレーキ力が発生した状態で回転をする。
【0097】
多板式ディスクブレーキ130は、このように、スプリング145からの付勢力によりブレーキ力を発生し、植付軸83は、この多板式ディスクブレーキ130のブレーキ力によって回転方向の負荷が付与された状態で回転する。従って、植付軸83や伝動スプロケット104は、伝動チェーン103により伝達される駆動力によって回転する際に、急激な回転速度の変動が、多板式ディスクブレーキ130からの負荷によって抑制される状態で回転をする。
【0098】
これにより、植込杆62の不等速回転時の反動による回転トルクが植付軸83や伝動スプロケット104に伝達された場合でも、この回転トルクに起因する回転速度の急激な変動が抑制される。従って、植付軸83や伝動スプロケット104は、植込杆62が不等速回転で回転する状態であっても、伝動チェーン103で伝達される駆動力によって一定の回転速度で回転する。
【0099】
また、このようにブレーキ力を発生する多板式ディスクブレーキ130のブレーキ力は、機体外側の植付伝動ケース64における多板式ディスクブレーキ130のブレーキ力よりも、機体内側の植付伝動ケース64における多板式ディスクブレーキ130のブレーキ力の方が弱くなっている。このため、植付伝動軸82での駆動力の伝達時における捩れに起因して、機体外側の植付伝動ケース64の伝動スプロケット104の回転速度が急激に変化することを抑制することができ、伝動スプロケット104は、一定の回転速度で回転する。これらのため、植付体61には、回転速度が安定した駆動力が植付軸83によって伝達され、この安定した駆動力によって回転駆動をして、苗の植え付け動作を行う。
【0100】
以上の実施形態2に係る苗移植機1は、植付軸83に設ける多板式ディスクブレーキ130によって、常時伝動スプロケット104にブレーキ力をかけ続けることにより、伝動スプロケット104の回転のブレを防止することができる。この結果、植込杆62が不等速回転をする植付体61の回転軌跡を乱れ難くすることができ、苗の植付精度を向上させることができる。
【0101】
また、植付伝動ケース64の内部を潤滑油で満たしたため、潤滑油不足による伝動スプロケット104や植付軸83、多板式ディスクブレーキ130の回転の乱れや焼き付きを防止することができる。この結果、苗の植付精度を、一層向上させることができる。
【0102】
〔変形例〕
なお、走行車体2の旋回に伴って上下動することにより作動状態と非作動状態とが切り替わる線引きマーカ68は、上下動時の角度に応じて、動作の速度を変化させてもよい。図11は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、線引きマーカの上下動の制御にポテンショメータを用いる場合の説明図である。線引きマーカ68の上下動時の角度に応じて線引きマーカ68の動作の速度を変化させる際には、例えば、図11に示すように、線引きマーカ68の回動角度を検出するポテンショメータ161を設けてもよい。また、線引きマーカ68を上下動させるマーカモータ160としては、例えば、ステッピングモータ等の回転速度を調節できるものを用いる。
【0103】
このように構成される線引きマーカ68を、下に降ろして圃場上に目印を線引きする作動状態の位置である作業位置Pwから、線引きマーカ68を上に上げて非作動状態にする位置である非作業位置Pnまで回動させる際には、マーカモータ160を駆動することにより、線引きマーカ68を回動させる。
【0104】
このように、線引きマーカ68を作業位置Pwから非作業位置Pnまで回動させる際には、非作業位置Pnの手前の所定の角度を非作業時減速開始位置Pdとして設定し、非作業時減速開始位置Pdから非作業位置Pnまでの回動速度を、作業位置Pwから非作業時減速開始位置Pdまでの回動速度よりも遅くするのが好ましい。この非作業時減速開始位置Pdは、例えば、作業位置Pwから非作業位置Pnまで回動角度が70°くらいである場合には、非作業時減速開始位置Pdは、非作業位置Pnの手前10°くらいに設定する。
【0105】
つまり、線引きマーカ68を作業位置Pwから非作業位置Pnまで回動させる際には、作業位置Pwから非作業時減速開始位置Pdまでの約60°は、通常の速度で回動させ、線引きマーカ68が非作業時減速開始位置Pdの角度になったことをポテンショメータ161で検出したら、マーカモータ160を減速する。これにより、非作業時減速開始位置Pdから非作業位置Pnまでの約10°の回動速度を、作業位置Pwから非作業時減速開始位置Pdまでの回動速度よりも遅くする。
【0106】
このように、線引きマーカ68を作業位置Pwから非作業位置Pnまで回動させる際に、非作業位置Pnの直前で回動速度を低減することにより、非作業位置Pnで線引きマーカ68が停止する際におけるガタ付きを小さくすることができる。これにより、線引きマーカ68を作業位置Pwにして圃場上に目印を線引きすることにより、線引きマーカ68に泥が付着した場合でも、非作業位置Pnで停止する際に泥が飛び散ることを抑えることができる。
【0107】
つまり、線引きマーカ68の回動速度を減速することなく、非作業位置Pnで停止した際には、ガタ付きが大きくなるため、線引きマーカ68に泥が付着している場合には、線引きマーカ68の停止時に、この泥が飛び散り易くなる。これに対し、線引きマーカ68を作業位置Pwから非作業位置Pnまで回動させる際、非作業時減速開始位置Pdから非作業位置Pnまでの回動速度を減速した際には、非作業位置Pnで静かに停止するため、泥の飛び散りを抑えることができる。
【0108】
また、この場合でも、作業位置Pwから非作業時減速開始位置Pdまでは、通常の回動速度で線引きマーカ68を回動させるため、回動範囲の大半の範囲を通常の回動速度で回動させることになるため、収納に時間がかかることがない。このため、線引きマーカ68の収納時間が遅くなることなく、泥の飛び散りを抑えることができる。
【0109】
また、線引きマーカ68は、収納をする際には、植付支持フレーム55に設けられたフック165に引っ掛けることにより収納するが、線引きマーカ68がフック165に引っ掛けられている状態のときに、線引きマーカ68を下げる操作を作業者が行った場合には、マーカモータ160を駆動しないのが好ましい。つまり、線引きマーカ68をフック165に引っ掛ける際には、線引きマーカ68は、非作業位置Pnから、作業位置Pwの反対方向に手動でさらに回動させることによって引っ掛ける。
【0110】
線引きマーカ68がフック165に引っ掛けられた状態の回動位置は、線引きマーカ68の収納位置になっており、線引きマーカ68が収納位置であることをポテンショメータ161で検出している状態では、線引きマーカ68を下げる操作を作業者が行っても、マーカモータ160を駆動しない。その際には、作業者に対して操縦部30で警告を報知するのが好ましい。これにより、線引きマーカ68がフック165に引っ掛けられて、下に下げることができない状態で、マーカモータ160を駆動させることを防止することができるため、マーカモータ160を保護することができ、また、フック165や線引きマーカ68の破損を防止することができる。
【0111】
また、このように、線引きマーカ68がフック165に引っ掛けられた状態で線引きマーカ68を下げる操作を作業者が行った際には、マーカモータ160を駆動させず、警告を報知する際には、植付クラッチも係合状態にならないようにするのが好ましい。メンテナンス等で植付クラッチを係合させて苗載置台51を左右に移動させる際には、線引きマーカ68をフック165から外す必要があるが、フック165から外し忘れた状態で苗載置台51を移動させると、フック165や線引きマーカ68が破損する虞がある。
【0112】
このため、線引きマーカ68がフック165に引っ掛けられた状態であることをポテンショメータ161で検出した際には、植付クラッチが係合状態にならないようにし、苗載置台51が移動しないようにすることにより、フック165や線引きマーカ68の破損を防止することができる。また、苗載置台51を移動させようと思っても移動しないため、作業者は、線引きマーカ68がフック165に引っ掛けられている状態であることに気付くことができる。
【0113】
また、苗植付部50の下方には、防波板170が設けられるが、防波板170は、圃場の藁屑等を乗り上げ易いように構成してもよい。図12は、実施形態1に係る苗移植機の変形例であり、防波板の設置形態についての説明図である。防波板170は、苗植付部50の下方における機体左右両端に設けられており、苗の植え付け作業時に、水や泥が強い勢いで機体左右方向に流れることを防止する部材になっている。つまり、苗の植え付け作業時に、整地用ロータ67がかき回した水や泥がフロート47等に当たると、この水や泥は、機体左右方向に流れるが、この水や泥が、機体左右方向において苗の植え付けが完了した側に強い勢いで流れると、植え付けられた苗は、この水流によって倒れてしまうことがある。
【0114】
防波板170は、厚さ方向が機体左右方向になる板状の形状で形成され、整地用ロータ67の機体側方を含む、苗植付部50の下方における機体左右両端に設けられることにより、このように水や泥が強い勢いで機体左右方向に流れることを防ぐ部材になっている。このように設けられる防波板170には、複数の抜け孔171が形成されており、整地用ロータ67やフロート47側から機体左右方向に流れる水流は、防波板170の前後方向に流すと共に、水流の一部は抜け孔171から流すことにより、機体左右方向には、勢いが小さい水流を流すことが可能になっている。
【0115】
また、このように構成される防波板170は、軸方向が機体左右方向になる回動支点172を中心として回動可能になっており、圃場の藁屑や石等に防波板170が接触した際には、防波板170は回動支点172を中心として回動することにより、この藁屑等を乗り越えることが可能になっている。この回動支点172の位置は、植付ドライブシャフト95よりも機体下方側で、且つ、アルミフレーム175の上面よりも機体下方側に位置し、さらに、苗載置台51が有する前板178よりも機体下方側に位置することが好ましい。このうち、アルミフレーム175は、植付支持フレーム55の下端側に位置して機体左右方向に延在し、植付支持フレーム55と共に、苗植付部50の骨格を構成する部材になっている。また、前板178は、苗載置台51の下部に配設されて当該苗載置台51の下部の苗を受ける部材になっている。
【0116】
防波板170の回動支点172を、これらの部材の下方に位置させることにより、防波板170は、回動支点172を中心とする姿勢変化が起き易くなるため、圃場の藁屑等を乗り越え易くなる。つまり、防波板170が回動し難いと、圃場の藁屑や石に防波板170が当たった場合、苗植付部50全体が持ち上げられてしまい、苗植付部50の高さが変化してしまう虞がある。この場合、苗の植え付け深さが変化してしまうことになる。
【0117】
これに対し、防波板170の回動支点172を低くした場合には、圃場の藁屑や石に防波板170が当たった場合、防波板170は回動支点172を中心として回動し易くなるため、苗植付部50の高さが変化することなく、防波板170の姿勢変化のみで、藁屑等を乗り越えることができる。これにより、苗の植え付け深さが変化してしまうことを抑制できる。
【0118】
また、防波板170の回動支点172は、苗植付部50がロール方向に回動する際における軸であるローリング軸180よりも機体下方側に位置させるのが好ましい。詳しくは、回動支点172は、ローリング軸180よりも機体下方側で、且つ、前後方向における位置がローリング軸180の後端と同程度になる位置に配設するのが好ましい。これにより、苗植付部50がローリング軸180を中心としてロール方向に回動した場合における防波板170の変位量を小さくすることができ、防波板170の接地性を向上させることができる。
【0119】
また、防波板170の回動支点172は、整地用ロータ67の回転軸よりも機体後方側に位置させるのが好ましい。防波板170の回動支点172を、整地用ロータ67の回転軸よりも機体後方側に位置させることにより、回動支点172を中心として防波板170が回動した際に、防波板170は、機体前後方向において整地用ロータ67の側方から前方側の位置が上下方向に移動し易くなる。これにより、整地用ロータ67の前に水や泥が溜まった場合でも、防波板170は、前方側が上に上がる方向に回動支点172を中心として回動することにより、整地用ロータ67の側方の位置で防波板170と圃場との間で隙間が発生し、この隙間から水を抜け易くすることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 苗移植機
2 走行車体
4 前輪
5 後輪
7 メインフレーム
10 エンジン
15 動力伝達装置
26 フロアステップ
27 リアステップ
28 操縦席
30 操縦部
40 苗植付部昇降機構
47 フロート
50 苗植付部
51 苗載置台
55 植付支持フレーム
60 苗植付装置
61 植付体
62 植込杆
63 ロータリケース
64 植付伝動ケース
65 予備苗載台
67 整地用ロータ
68 線引きマーカ
70 施肥装置
80 苗植付体
81 メインケース
82 植付伝動軸
83 植付軸(回転軸)
90 リードカム機構
95 植付ドライブシャフト
100 調整部カバー
102 チェーン駆動機構
103 伝動チェーン
104 伝動スプロケット(伝動回転体)
110 ブレーキステー(ブレーキ部材)
114 ブレーキ力調節部
115 ライニング(減速部材)
116 回動ピン
120 ブレーキ力調節機構
121 スプリング(付勢部材)
122 ボルト(押付部材)
130 多板式ディスクブレーキ(ブレーキ装置)
131 ブレーキ部材
132 ライニング(減速部材)
135 支持ピン
140 ブレーキディスク
145 スプリング(付勢部材)
150 伝動ケースカバー
160 マーカモータ
161 ポテンショメータ
170 防波板
172 回動支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12