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特開2015-226816平衡型水晶体超音波乳化吸引術用チップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-226816(P2015-226816A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】平衡型水晶体超音波乳化吸引術用チップ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20151120BHJP
【FI】
   A61F9/007 130B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-144846(P2015-144846)
(22)【出願日】2015年7月22日
(62)【分割の表示】特願2013-529151(P2013-529151)の分割
【原出願日】2011年8月3日
(31)【優先権主張番号】12/884,285
(32)【優先日】2010年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミカイル エー.オブチニコフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シャフトと、少なくとも第1および第2の湾曲部を有する刃先部分とを含む水晶体超音波乳化吸引術用チップを提供する。
【解決手段】チップ100の形状は、10kHz〜60kHzの周波数のねじれ振動の間、チップの円錐部分110の端部からチップの刃先部分112における第1の湾曲部102に延びるシャフト108の一部に亘って、チップの遠位端点における横変位の約5%〜25%(例えば15%)未満のシャフトに対して垂直な横変位(ux)をもたらすように構成される。ソフトウェアおよび/または物理的なモデル化がチップ形状を求めるのに使用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部と遠位端部とを有するシャフトと、
前記シャフトの遠位端部における刃先部分であって、少なくとも第1および第2の湾曲部を有する刃先部分と
を備える水晶体超音波乳化吸引術用チップであって、
前記シャフトと前記少なくとも第1および第2の湾曲部との形状は、前記シャフトの近位端部から前記刃先部分の第1の湾曲部に延びる前記シャフトの一部に亘って、当該チップの遠位端点における横変位の約5%〜25%未満の、当該チップの超音波ねじれ振動中の前記シャフトに対して垂直な横変位をもたらすように構成されている、水晶体超音波乳化吸引術用チップ。
【請求項2】
前記横変位(ux)は、次の方程式を使用して少なくとも部分的に定義され、
【数1】
ここで、
φは当該チップのねじれ角であり、
ρはチップ材料の密度であり、
S(z)は、前記シャフトと同一直線上の軸線に沿った当該チップの横断面積であり、
Eはチップ材料のヤング係数であり、
y(z)は、前記シャフトと同一直線上の軸線に対して垂直な軸線の周りの当該チップの横断面の慣性モーメントであり、
l(z)は、前記シャフトと同一直線上の軸線に対して垂直な軸線に沿った横変位である、請求項1に記載の水晶体超音波乳化吸引術用チップ。
【請求項3】
φは、次の方程式によって与えられ、
【数2】
ここで、I(z)は、前記シャフトと同一直線上の軸線の周りの円筒形チップ横断面の慣性モーメントであり、C(z)=I(z)×μであり、μは前記チップ材料のねじれ弾性係数である、請求項2に記載の水晶体超音波乳化吸引術用チップ。
【請求項4】
前記方程式
【数3】
および
【数4】
は、調和解析によって解かれる、請求項3に記載の水晶体超音波乳化吸引術用チップ。
【請求項5】
前記チップの近位端部は円錐形部分を含み、該円錐形部分の長さは、前記チップの遠位端点におけるより大きな横変位を生じさせるように、超音波ねじれ振動中に当該チップのねじれ振動を増大させるように選択される、請求項4に記載の水晶体超音波乳化吸引術用チップ。
【請求項6】
前記チップの遠位端点における前記チップの横変位は約40〜200ミクロンの範囲内である、請求項1に記載の水晶体超音波乳化吸引術用チップ。
【請求項7】
水晶体超音波乳化吸引術用チップの形状を決定する方法であって、
第1のチップ形状を与えることと、
前記チップの超音波ねじれ振動中の前記第1のチップ形状の横変位をモデル化することと、
第2のチップ形状を与えることと、
前記チップの超音波ねじれ振動中の前記第2のチップ形状の横変位をモデル化することと、
前記第1のチップ形状の横変位と前記第2のチップ形状の横変位とを比較することと、
どちらのチップ形状が、水晶体超音波乳化吸引術処置中に眼球内の切開部に沿うように構成されたチップシャフトの一部に沿ったより小さい横変位を有するかに基づいて、前記第1のチップ形状または前記第2のチップ形状を選択することと
を含む、方法。
【請求項8】
前記第1のチップ形状は、少なくとも、
直線形状からの横変位としてのl(z)と、
チップ材料の密度としてのρと、
チップシャフトと同一直線上の軸線の周りの円筒形チップ横断面の慣性モーメントとしてのI(z)と、
前記シャフトと同一直線上の軸線に沿った前記チップの横断面積としてのS(z)と、
前記チップ材料のヤング係数としてのEと、
前記シャフトと同一直線上の軸線に対して垂直な軸線の周りの前記チップの横断面の慣性モーメントとしてのIy(z)と、
C(z)=I(z)×μと、
前記チップ材料のねじれ弾性係数としてのμと
を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記チップの超音波ねじれ振動中の前記チップ形状の横変位(ux)をモデル化することは、次の方程式
【数5】
および
【数6】
によって前記チップの横方向の動きを求めることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のチップ形状は円錐形部分を含み、当該方法は、さらに、次の方程式
【数7】
にしたがって前記チップのねじれ振動をモデル化することと、
前記チップの遠位端点におけるより大きな横変位を生じさせるように超音波ねじれ振動中の前記チップのねじれ振動の増大を生じさせる前記円錐形部分の長さを決定することと
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2のチップ形状は、少なくとも第1および第2の湾曲部と、前記第2の湾曲部の異なる位置または曲率とを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が遠位端点の横変位の約15%未満であるかどうかを判定することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が前記遠位端点の横変位の約15%よりも大きい場合、第3のチップ形状を生成することと、該第3のチップ形状の横変位をモデル化することと、該第3のチップ形状の横変位を前記第1または第2のチップ形状の横変位の少なくとも一方と比較することとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
水晶体超音波乳化吸引術用チップ形状を決定する方法であって、
第1のチップ形状を有する第1のチップを与えることと、
前記第1のチップ形状を超音波ねじれ振動させることと、
前記第1のチップの超音波ねじれ振動中に前記チップ形状に沿った横変位を求めることと、
第2のチップ形状を有する第2のチップを与えることと、
前記第2のチップ形状を超音波ねじれ振動させることと、
前記第2のチップの超音波ねじれ振動中に前記第2のチップ形状に沿った横変位を求めることと、
前記第1のチップ形状の横変位と前記第2のチップ形状の横変位とを比較することと、
どちらのチップ形状が、水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成されたチップシャフトの一部に沿ったより小さい横変位を有するかに基づいて、前記第1のチップ形状または前記第2のチップ形状を選択することと
を含む、方法。
【請求項15】
前記第1または第2のチップ形状を選択することは、前記第1のチップ形状と前記第2のチップ形状とのどちらが、前記シャフトの長さの少なくとも半分にわたって前記シャフトの近位端部から延びる前記シャフトの一部を通じて、前記チップシャフトのより小さい横変位を有するかを判定することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1および第2のチップ形状は少なくとも第1および第2の湾曲部を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1および第2のチップ形状は前記第2の湾曲部の異なるそれぞれの位置または曲率を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が、前記チップの遠位端点における横変位の約5%〜25%未満であるかどうかを判定することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が前記チップの遠位端点における横変位の約5%〜25%よりも大きい場合、第3のチップ形状を生成することと、前記第3のチップ形状の横変位をモデル化することと、前記第3のチップ形状の横変位を前記第1または第2のチップ形状の横変位の少なくとも一方と比較することとをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記チップ形状の横の動きを求めることは、サーマルイメージング、ストロボスコピー、または、変位の物理的測定のうちの少なくとも1つを使用することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して水晶体超音波乳化吸引術に関する。特に、本発明は、限定されるものではないが、水晶体超音波乳化吸引術用チップに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の眼球は、最も簡単に言えば、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して光を伝導し、水晶体を介して網膜上に画像を集束させることによって、視覚を実現するように機能する。集束画像の品質は、眼球のサイズと形状、角膜と水晶体の透明度とを含む、様々な要因に依存する。
【0003】
加齢または疾病のために水晶体の透明度が低下すると、網膜に伝導されることが可能な光が減少するせいで、視力が低下する。眼の水晶体におけるこの欠陥が白内障として医療的に知られている。この病状に対する一般的に認められている治療が、水晶体の外科的除去と、眼内レンズ(IOL)による水晶体の機能の置き換えである。
【0004】
白内障の水晶体は、水晶体超音波乳化吸引術と呼ばれる外科的手法によって取り除かれるだろう。この処置中には、水晶体超音波乳化吸引術用の細い平衡型チップが、病変した水晶体の中に挿入され、超音波振動させられるだろう。この振動する平衡型チップは、水晶体が眼球の外に吸引されるように水晶体を液化または乳化させるだろう。この病変した水晶体は、取り除かれた後に、人工の水晶体によって置き換えられるだろう。
【発明の概要】
【0005】
様々な実施態様では、水晶体超音波乳化吸引術用チップは、シャフトと、少なくとも第1および第2の湾曲部を有する刃先部分とを含むだろう。このシャフトと少なくとも第1および第2の湾曲部との形状は、チップの遠位端点の変位の約5%から25%(例えば15%)(他の閾値も使用されてよい)未満の、シャフトの長さに沿った(チップの超音波ねじれ振動中のシャフトに対して垂直方向の)シャフトの横変位をもたらす構成されるだろう。幾つかの実施態様では、シャフトは、(例えばチップの遠位端点から約12mmであることがある)円錐形部分の端部から(例えばチップの遠位端点から約5mmであることがある)刃先部分内の第1の湾曲部に延びるだろう。第1の湾曲部の他の位置も想定される(例えば、チップの遠位端点から3mm、8mm等)。幾つかの実施態様では、円錐形部分の近位端部(すなわちハブ)が、超音波ホーン(ultrasonic horn)に結合するように構成されうる。
【0006】
幾つかの実施態様では、チップの形状を決定する方法が、(例えば、チップ形状を表す1つまたは複数の記憶された変数を有するコンピュータ可読入力ファイルのような電子フォーマットの形で)2つ以上のチップ形状を提供することと、超音波ねじれ振動中のチップ形状の挙動をモデル化することと、チップを選択するための様々なチップ形状の横変位を、(例えば、円錐形部分の端部から第1の湾曲部への)水晶体超音波乳化吸引術処置中に眼球内の切開部に沿うように形成されているチップシャフトの一部に沿った最小の横変位と比較することとを含むだろう。
【0007】
幾つかの実施態様では、チップの形状を決定する方法が、異なる形状(例えば、チップに沿った2つ以上の位置にあるハンドベント(hand bent))を有する2つ以上の物理的チップを提供することと、異なるチップを超音波ねじれ振動させることと、様々なチップの横変位を求めることと、求められた横変位を比較して、水晶体超音波乳化吸引術処置中の眼球内の切開部に沿うように構成されたチップシャフトの一部に沿った最小の横変位を有するチップを選択することとを含むだろう。
【0008】
本発明のより完全な理解のために、添付図面に関連して示されている以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による、2つの湾曲部を有する遠位端部を有する平衡型水晶体超音波乳化吸引術用チップを示す。
図2】一実施形態による、潅注管路と吸引管路とを経由してハンドピースに連結されている水晶体超音波乳化吸引術用手術コンソールを示す。
図3】一実施形態による、平衡型チップに取り付けられている超音波ホーンを示す。
図4】一実施形態による、平衡型チップの動きを示す。
図5】一実施形態による、眼球内の切開部の中に挿入されている平衡型チップを示す。
図6】一実施形態による、平衡型チップに対するねじれ振動と横方向振動とを示す。
図7a】一実施形態による、チップのz軸に沿ったねじれ変位に関するモデル方程式を示す。
図7b】一実施形態による、チップのz軸に沿った横変位に関するモデル方程式を示す。
図7c】一実施形態による、モデリング方程式の成分(l(z))を示す。
図8a】入力チップ形状と、モデル方程式によるチップ長さに沿った対応する出力横変位およびねじれ角とを示す。
図8b】入力チップ形状と、モデル方程式によるチップ長さに沿った対応する出力横変位およびねじれ角とを示す。
図9】一実施形態による、チップ形状を決定するための方法のフローチャートを示す。
図10】一実施形態による、チップ形状を決定するための別の方法のフローチャートを示す。
図11】6つの採用可能な平衡型チップの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した概略的な説明と以下の詳細な説明の両方が、単に例示的かつ説明的であるにすぎず、および、特許請求されている本発明のさらに詳細な説明を提供することが意図されている。
【0011】
図1は、近位端部114と、チップシャフト108に対して相対的に湾曲している刃先部分112とを有する水晶体超音波乳化吸引術用平衡型チップ100を示す。この平衡型チップ(balanced tip)100は、大部分は直線状であるシャフト108と、刃先部分112の少なくとも2つの湾曲部(第1の湾曲部102と第2の湾曲部104)とを含むだろう。他の個数の湾曲部(例えば、3つ、4つ、または、7つ等の湾曲部)も想定されている。平衡型チップ100は、水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピース204(例えば、図2を参照されたい)と組み合わせて使用されるだろう。ハンドピース204と共に使用される時には、平衡型チップ100は、チップ100の軸線回りにチップ100を往復回転させることによって、縦方向および/またはねじれ方向に振動させられるだろう。湾曲部102/104は、例えば、((チップ軸線116に沿って測定された)そのチップの遠位端点106から約5mmから12mmまでに位置している部分であってよい)平衡型チップ100の長さの遠位側の約5−25%に沿って配置されているだろう。この長さの他の部分も想定されている。
【0012】
幾つかの実施形態では、チップ100を平衡させることが、チップ100の超音波ねじれ振動中に、シャフト108の長さに沿ったシャフト108に対して垂直方向のシャフト108の横変位が、(例えば、眼科処置中にチップが振動させられる周波数中に測定される)チップ100の遠位端点106の横変位の約5%〜25%(例えば15%)よりも小さくなるように、チップ100の形状(例えば、チップの円錐形部分110、シャフト108、および/または、少なくとも第1の湾曲部102および第2の湾曲部104の形状)を形成することを含むだろう。他の閾値(例えば、10〜20%、15〜30%、10〜40%等)も使用されることがある。幾つかの実施形態では、遠位端点106における(期待動作周波数中の)チップの横変位が、約30−200ミクロンの範囲内であることがある。一例では、遠位端点106がチップ100の超音波ねじれ振動中に約±0.035mmの横変位を有する場合に、そのチップの形状は、シャフトに沿った最大横変位が5ミクロン未満であるように形成されることがある(他の変位も想定可能である)。別の例では、チップ100の超音波ねじれ振動中に遠位端点106が約±0.055mmの横変位を有する場合に、そのチップの形状は、シャフトに沿った最大横変位が8ミクロン未満であるように形成されることがある。幾つかの実施形態では、例えば、シャフトが、(例えば、遠位端点106から約12mm離れていることがある)円錐形部分110の端部から、(例えば、遠位端点106から約5mm離れていることがある)刃先106の第1の湾曲部102に延びることがある。第1の湾曲部102の他の位置(例えば、遠位端点106から3mm、8mm等)も想定されている。
【0013】
図2は、潅注管路206と吸引管路208とを経由してハンドピース204に連結されている水晶体超音波乳化吸引術用手術コンソール214を示す。幾つかの実施形態では、電気ケーブル210を経由して電力がハンドピース204に供給されることがあり、潅注管路206と吸引管路208とを通る流れが、水晶体超音波乳化吸引術処置を行うためにユーザによって(例えば、フットスイッチ212を介して)制御されるだろう。水晶体超音波乳化吸引術処置のためのハンドピースの一例が、2005年7月18日付けで出願された、Mikhail Boukhny、James Y.ChonおよびAhmad Salehiによる、発明の名称「超音波ハンドピース」の米国特許出願公開第2006/0041220号明細書、シリアル番号11/183,591に説明されており、この出願は、本明細書においてあたかも完全に説明されているように、参照によって、その全体において本明細書の一部を構成する。
【0014】
幾つかの実施形態では、ハンドピース204は水晶体超音波乳化吸引術用平衡型チップ100に連結されているだろう。幾つかの実施形態では、ハンドピース204は、適切な共振周波数で励起させられる時に縦方向運動を生じさせるように分極化されている少なくとも1組の圧電素子227を含むだろう。図3に見てとれるように、この圧電結晶227は、平衡型チップ100が取り付けられている超音波ホーン216に連結されているだろう。このホーン216および/または平衡型チップ100は、複数の対角のスリットまたは溝224を含むだろう。このスリットまたは溝224は、圧電結晶が共振周波数で励起させられる時に平衡型チップ100においてねじれ運動を生じさせるだろう。ハンドピース204内の固定された要素に係合する溝224によって生じさせられる平衡型チップ100の運動は、ホーン216の中央線に対する相対的なねじれ回転成分を含むだろう。
【0015】
図4に見てとれるように、幾つかの実施形態では、平衡型チップ100は、近似的に約2度から約6度の範囲内の円弧(例えば4度の円弧)に亘って、超音波によるねじれ往復回転するように構成されている。他の円弧(例えば、10度の円弧(例えば、中心から±5度ずれて)(真ん中の略図2を参照されたい)、中心から±20度ずれて、中心から±90度ずれて等)も想定されている。幾つかの実施形態では、平衡型チップ100は、約10〜60kHzの間の周波数(例えば31kHz)で超音波ねじれ振動させられるだろう。他の円弧と周波数も想定されている。例えば、±20度の円弧、および/または、42kHzの周波数が使用されることもある。図4に示されている円弧は、運動を示すために誇張されている(すなわち、示されている全体的な円弧は180度であり、一方、平衡型チップ100は、4度の円弧を有するだろう)。幾つかの実施形態では、図4のチップ運動は、さらに、縦方向の成分(例えば、シャフトに対して平行な軸線に沿った上下)を含むことがある。
【0016】
図5に見てとれるように、水晶体超音波乳化吸引術を行うために使用される時に、平衡型チップ100の端部と灌注スリーブ226の先端とが、例えば眼球509の前房503への到達のために、角膜501または強膜507または眼球組織内の他の場所の小さな切開部511の中に挿入されるだろう。様々な実施形態では、平衡型チップ100の一部または全部が灌注スリーブ226の内側に位置しているだろう。切開部511に沿ったチップ100の一部分513が、水晶体超音波乳化吸引術処置中に灌注スリーブ226を介して切開部511(および/または眼球の他の部分)との熱接触状態にあるだろう。幾つかの実施形態では、切開部511に沿った部分513が、(例えばスリーブ266なしに)切開部511と直接的に接触していることがある。平衡型チップ100は、結晶駆動超音波ホーン216によって灌注スリーブ226の内側でそのチップの縦軸線に沿って超音波ねじれ振動させられ、これによって、選択された組織を生体内で接触時に乳化するだろう。平衡型チップ100の中空穴がそのホーンの穴と連通し、一方、そのホーンの穴は、ハンドピース204からコンソール214への吸引管路と連通するだろう(例えば、図2)。コンソール214内の減圧源または真空源が、眼球509からの乳化された組織を、平衡型チップ100の開放端部と、平衡型チップ100の穴と、ホーンの穴と、吸引管路208とを通して、収集装置の中に吸い込むか吸引するだろう。乳化された組織の吸引は、潅注スリーブ226の内側表面と平衡型チップ100の外側表面との間の小さい環状の間隙を通して手術部位の中に注入されることがある生理食塩水洗浄液または潅注液によって促進されるだろう。
【0017】
図6に見てとれるように、平衡型チップ100の超音波ねじれ振動は、少なくとも2つの動き、すなわち、(1)シャフトの直線部分と同一直線上の軸線116(軸線116は「z軸」と示されることがある)に対して垂直であり且つ(図1ではy軸として示されている)チップの湾曲部の軸線(y軸とz軸とは、湾曲部を含む平面を形成する)に対して垂直な、平行型チップ100のその均衡位置からの横変位と、(2)平衡型チップ100のz軸に沿ったねじれ角(twist angle)とをもたらすだろう。非平衡型チップは、ねじれ振動の作用を受けて(特にシャフト内において)チップ長さに沿った大きな湾曲を有するだろう。本明細書で説明するようにチップを平衡させることによって、チップ100のシャフトに沿った横変位が減少させられ、これと同時に、チップ100の遠位端点106における横変位が増大させられるだろう。ねじれ振動が、チップ100内に存在し(例えば、z軸に対するねじれ角に沿って往復してねじれる)、このことが、シャフト108の横変位に加えて、または、この横変位なしに、遠位端点106の相対的に大きな横変位を生じさせるだろう。
【0018】
幾つかの実施形態では、チップ100を平衡させることは、チップ形状を調整することと、調整された形状を有するチップを物理的に試験すること、または、遠位端点106における横変位及びねじれの増大しつつシャフト108に沿った横変位の減少を生じさせるチップ形状を発見するために、チップ振動をモデル化するためのモデリング方程式又は有限要素解析(FEA)を使用すること(例えば、ANSYSのようなソフトウェアを使用すること)とを含む。チップ形状の特徴が、例えば、湾曲部の個数(例えば、湾曲部102、103)、湾曲部の位置、シャフトの長さ、シャフト108の直径、円錐形部分110の長さ、および、円錐形部分の直径を含むだろう。他のチップの形状的特徴も変更されることがある。幾つかの実施形態では、異なるチップ形状が、例えば、様々なチップ形状を有するチップを物理的に形成することと、(例えば、水晶体超音波乳化吸引術中に使用される周波数及びモードを使用して)そのチップを振動させることと、様々なチップ形状によって生じさせられる横変位および/または熱を監視することとによって試験されるだろう。(例えば、チップ内の1つの湾曲部の位置を固定することと、異なる第2の湾曲部の位置及び曲率を有する異なるチップを試験することとによる)異なるチップ形状の試験の1回または複数回の繰り返しが、1つまたは複数の最適化されたチップ形状の識別をもたらすだろう。他の個数の湾曲部および形状変更(例えば、両方の湾曲部の曲率を一定不変に維持しながら両方の湾曲部の位置を変更すること、湾曲部の位置及び曲率を変更すること、湾曲部の個数を変更すること、シャフトの長さを変更すること、円錐形部分の長さを変更すること、シャフトの半径を変更すること、円錐形部分の半径を変更すること等)も可能である。
【0019】
幾つかの実施形態では、モデリング方程式が、異なるチップ形状を試験するために(FEAおよび/または物理的試験の代わりに、または、これに加えて)使用されることがある。例えば、直線状の(大部分は円筒形である)チップを超音波ねじれ振動させている時にねじれ角(φ)と横変位(ux)とが軸zに沿ってどのように変化するかを記述する方程式(例えば一般的な弾性理論に基づいた)が、次のように表されるだろう(図7a−bも参照されたい)。
【0020】
【数1】
ここで、
【数2】
【数3】
C(z)=I(z)×μ
【数4】
ここで、
【数5】
【数6】
【数7】
【0021】
前式中で、φはチップのねじれ角でありρはチップ材料の密度であり、I(z)は、z軸の周りの円筒形チップ横断面の慣性モーメントであり、R1(z)は円筒形チップ本体の中空内側断面の内側半径であり(円筒形本体が中実である場合にはR1(z)はz軸全体に沿って0であるだろう)、R2(z)は円筒形チップ本体の外側半径であり、tは時間であり、uxはx軸に沿った横変位であり、S(z)はz軸に沿った円筒形チップの横断面積であり、Eはチップ材料のヤング係数であり、Iy(z)はy軸の周りの円筒形チップの横断面の慣性モーメントであり、および、μはチップ材料のねじれ弾性係数である。ρのような特徴がチップ全体に関して同一であることがあり、一方、R1(z)とR2(z)のような特徴がz軸に沿って変化することがある(ひいては、例えば値の配列として表されることがある)。湾曲した(大部分は円筒形の)チップ(例えば、湾曲部102/103を有するチップ)を超音波ねじれ振動させている時にねじれ角(φ)と横変位(ux)とがz軸に沿ってどのように変化するかを記述する方程式が、次のように表されるだろう(図7a−bも参照されたい)。
【0022】
【数8】
ここで、
【数9】
【数10】
C(z)=I(z)×μ
【数11】
ここで、
【数12】
【数13】
【数14】
【0023】
前式中で、φはチップのねじれ角であり、ρはチップ材料の密度であり、I(z)は、z軸の周りの円筒形チップ横断面の慣性モーメントであり、R1(z)は円筒形チップ本体の中空内側断面の内側半径であり(円筒形本体が中実である場合にはR1(z)は0であるだろう)、R2(z)は円筒形本体の外側半径であり、tは時間であり、uxはx軸に沿った横変位であり、S(z)はz軸に沿った円筒形チップの横断面積であり、Eはチップ材料のヤング係数であり、Iy(z)はy軸の周りの円筒形チップの横断面の慣性モーメントであり、μはチップ材料のねじれ弾性係数であり、l(z)は図7cに示されているy軸に沿った横変位である。幾つかの実施形態では、入力および/または方程式の1つまたは複数が、チップが中で振動している媒質(例えば、水、硝子体等)の存在を計算に入れるために変更されるだろう。例えば、チップの横変位に関する方程式は次のように変形されることがある。
【0024】
【数15】
【0025】
前式中で、γは、媒質(例えば水)に起因する散逸を表す経験的なパラメータである。γの値は、この方程式を媒質中の既存のチップの測定された変位に整合させるように調整されるだろう。分母のρMediaMedia(z)項が、チップの動きに追従している媒質に起因したチップ質量の増大を表す。ρMedia項が媒質の密度であり、SMedia(z)項がチップと共に動く媒質の横断面であり、これは、SMedia(z)=π(R12(z)+R22(z))としての理想流体理論を使用して評価されるだろう(前式中でR1は媒質塊の内径であり、R2は、チップに追従する媒質塊の外径である)。他の変更も想定されている。
【0026】
幾つかの実施形態では、様々なチップ特徴(例えば、ρ、E等)と共に、形状的特徴(例えば、S(z)、I(z)、C(z)、Iy(z)等)が、ユーザによって入力されるか、または、ユーザによって提供される他の入力に基づいてモデリングソフトウェア(例えば、MatlabTM)によって計算されるだろう(例えば、ユーザは、(チップが中央部において中空である場合に)内側半径、z軸に沿ったチップの外側半径、1つまたは複数の湾曲部の位置(例えば、(z軸に沿った)開始点と終了点)と曲率等を提供するだろう)。ユーザは、さらに、グラフィカルユーザインタフェースを使用してチップ形状を描くこと(例えば、図8a−bにおける入力プロットを参照されたい)、および、ユーザはチップ形状をプリロード(preload)する(例えば、3次元レンダリング)ことなどを行うだろう。幾つかの実施形態では、外側半径は、小さいzの値で(すなわち、チップの円錐形部分内で)大きく、および、チップの端部において相対的に小さいだろう。他の入力も想定されている。
【0027】
幾つかの実施形態では、上述の方程式からのφおよびuxの解が、異なるチップ形状に関するz軸に沿った横変位とねじれ角を調べるために使用され、チップ長さに沿った(例えばシャフト108に沿った)横変位uxを最小化すると同時に遠位端点106の横変位uxとねじれ角φを最大化する平衡化/調節されたチップ形状が幾つかのチップ形状から選択されるだろう。幾つかの実施形態では、φおよびuxを解くことが調和解析を使用することを含むだろう。φおよびuxに関するその方程式の解は、zとtの両方の関数としてねじれ角および/または横変位を提供するだろう(例えば、u(z,t)およびφ(z,t))。その次に、これらの解は、調和力(harmonic force)によってチップをモデル化するために使用されるだろう。調和力によるモデリングは、cos(ωt)のような特定の周波数ωでチップが振動するようにチップをモデル化することを含むだろう。したがって、高調波が、上述したように、
【数16】

【数17】
とについての方程式にしたがってu(z,t)とφ(z,t)に関するモデリング方程式を単純化するために使用されることがある。幾つかの実施形態では、この解はu(z)cos(ωt)によってモデル化されるだろう(すなわち、振動振幅がzだけに依存するようにモデル化されるだろう)。式u(z)cos(ωt)は、時間とは無関係である振動u(z)の振幅に関する微分方程式を与えるために、動きの方程式(
【数18】
および
【数19】
)において使用されるだろう。その次に、チップの変位振幅とねじれ振幅に関する解がプロットされるだろう(例えば、図8a−bにおける出力を参照されたい)。幾つかの実施形態では、調和解析が使用されないことがある(例えば、時間とzに依存している様々な解が求められて解析されることがある)。
【0028】
図8a−bは、入力チップ形状と、上述したモデル方程式によるチップ長さに沿った対応する変位およびねじれ角とを示す。幾つかの実施形態では、第1の湾曲部102の位置と曲率とが、人間工学および製造上の配慮のような様々な要因に基づいて選択されるだろう。第2の湾曲部104は、平衡型チップ100の刃先106により近い位置に配置されるだろう。その次に、この湾曲部の曲率が、上述したモデル方程式の予測を使用して選択されるだろう。その次に、結果的に得られるチップ形状が、有限要素解析シミュレーションを行うことによって、検証および/または調整されるだろう。理想曲率が、平衡型チップ100のねじれ振動モードと曲げ振動モードとが切り離されるような曲率であるだろう。ねじり力を受ける平衡型チップ100の動きは、そのねじれ振動モードと同一だろう。幾つかの実施形態では、チップ湾曲部(例えば、102/103)が、平衡型チップ100における超音波ねじれ振動エネルギーがシャフト108の大部分に沿って(横方向の動きの減少を伴って)ねじれ振動モードにあるように配置されるだろう。幾つかの実施形態では、シャフト108の長さも、遠位端点106におけるねじれ変位を増大させるためにねじれ振動が超音波駆動機構(例えば、ホーンと組み合わされたハンドピース内の圧電素子227)と共に共振するように、ねじれ振動モードを調節するように調整されるだろう。
【0029】
幾つかの実施形態では、平衡型チップ100の遠位端点の横変位の振幅は、ねじり駆動力とねじれ振動モードとの間の共振に依存するだろう。駆動周波数がねじれホーン設計によって設定されることがあるが、ねじれモードの周波数は、例えば平衡型チップ100の円錐形部分110の長さを選択することによって調整されるだろう。円錐形部分110の長さは、平衡型チップ100のねじれ振動を最大化して遠位端点106の最大ねじれ変位を生じさせるように選択されるだろう。
【0030】
幾つかの実施形態では、平衡型チップ100は約0.5mmから2mmの範囲内(例えば1.5mm)の直径を有するだろう。幾つかの実施形態では、平衡型チップ100は、チップの頂部において約1.5mmの直径を有し、かつ、チップの遠位端部の付近において0.9mmの直径を有するだろう(他の直径と形状が想定される)。一実施形態では、平衡型チップ100は、約3.49cm(約1と8分の3インチ)の長さを有するだろうし、湾曲部102、103は遠位の約3.175mm(約8分の1インチ)と約6.35mm(約8分の2インチ)とに沿って配置されているだろう。他の寸法も想定される。幾つかの実施形態では、第1の湾曲部102は約10度から−30度の範囲内にあり、一方、第2の湾曲部104は約20度から50度の範囲内にあるだろう。他の湾曲部の角度も想定される。刃先部分112は、フレア状端部、テーパ状端部、および/または、傾斜端部を有するだろう(幾つかの実施形態では、刃先部分112が平らであることがある)。平衡型チップ100は、ステンレス鋼またはチタンで作られるだろう(他の材料も使用可能である)。平衡型チップ100は、1.27cm(0.50インチ)から3.81cm(1.50インチ)の全長(例えば3.05cm(1.20インチ))を有するだろう。他の長さも想定される。平衡型チップ100は、従来の金属加工技術を使用して形成されてもよく、電子研磨されてもよい。シャフト108は、概して管状であり、0.127mm(0.005インチ)から2.54mm(0.100インチ)の外径と、25.4μm(0.001インチ)から2.29mm(0.090インチ)の内径とを有するだろう(他の寸法も想定される)。
【0031】
図9は、一実施形態によるチップ形状を決定するための方法のフローチャートを示す。このフローチャートに示されている要素は例示的であるにすぎない。示されている様々な要素が省略されてもよく、追加の要素が加えられてもよく、かつ/または、様々な要素が、後述する順序とは異なる順序で実行されてもよい。
【0032】
901では、チップ形状がシステムに入力されるだろう。例えば、形状の入力が入力ファイルの形で格納されるだろう。幾つかの実施形態では、チップ形状は、チップのスライスにおける形状の値として定義された次のものの1つまたは複数を含むだろう(例えば、チップは500個のスライスの形に分割され、各々のスライスにおけるチップの形状的特徴は、それぞれの形状変数に割り当てられた別々の配列の形で格納されるだろう)。例えば、チップのスライスに関する形状的特徴が、曲率(例えば、角度単位で)、ねじり剛性(例えばC(z))、x軸の周りの慣性モーメント(例えばI(z))、横断面積(例えばS(z))、チップの曲げ剛性を決定するy軸の周りのスライスの慣性モーメント(例えばIy(z))、z軸からのチップの距離(例えばl(z))を含むだろう。他の入力も想定される。
【0033】
幾つかの実施形態では、これらのスライスに基づく配列は、ユーザによって直接的に入力されるか、または他の形状入力に基づいて計算されるだろう。例えば、ユーザは、チップの長さ、円錐形部分の長さ、第1の湾曲部が始まるチップに沿った位置、第1の湾曲部が終わるチップに沿った位置、第1の湾曲部の曲率、第2の湾曲部が始まるチップに沿った位置、第2の湾曲部が終わるチップに沿った位置、第2の湾曲部の曲率、チップ材料の剪断弾性係数、チップ材料のヤング係数、チップ材料の密度等を与え、異なるスライスに関する個別の入力が、計算され、入力ファイルとして格納され、または、モデリングソフトウェアに提供されるだろう。幾つかの実施形態では、コンピュータシステムがこれらの入力を自動的に生成することもある。例えば、このコンピュータシステムは、採用可能なチップ形状の様々な反復を循環することもある。幾つかの実施形態では、(例えば、グラフィカルユーザインタフェースを介して)ユーザがチップを描画し、コンピュータシステムがこの図に基づいた形状を計算することがある。他の入力タイプも想定される。
【0034】
903では、システムが、特定のチップ形状と超音波ねじれ振動周波数(例えば、約31kHz)とに関する、チップの長さに沿った横変位とねじれ角とを求めるために、モデリング方程式及び調和解析を使用するだろう。他の周波数も想定される。例えば、方程式
【数20】
および
【数21】
が、時間を取り除くことによって結果を単純化するために、(上記で定義した)入力と、(例えば、u(z)cos(ωt)、φ(z)cos(ωt))を使用する)調和解析とを使用して、uxとφに関して解かれるだろう。幾つかの実施形態では、調和解析にしたがって、
x(z,t)=u(z)cos(ωt)かつφ(z,t)=φ(z)cos(ωt)
と見なされるだろう。
時間微分
cos(ωt)″=−ω2cos(ωt)
をとることと、これを当初の方程式の中に代入し、時間コサインを消去することとによって、時間に依存しない次の方程式が得られるだろう。
【数22】
および
【数23】
その次に、上記の方程式が、変位の振幅u(z)とねじれ角φ(z)とに関して解かれるだろう。uxを解くための他の方程式も使用されるだろう。
【0035】
905では、システムは、チップ形状に関する横変位および/またはねじれ角の1つまたは複数をプロットするだろう(例えば、図8a−bを参照されたい)。
【0036】
907では、ユーザ(またはシステム)は、第2のチップ形状を与えて(または、第1のチップ形状を変更して)、チップの長さに沿った横変位(ux)とねじれ角(φ)を再計算するだろう。他のモデリング手法も使用されるだろう。例えば、有限要素解析(FEA)が、様々な振動の影響を受ける様々な形状のチップの長さに沿った横変位(ux)および/またはねじれ角(φ)を求めるために使用されるだろう。さらに、別の方程式も使用されることがある(例えば、異なる方程式が二乗チップモデリング(square tip modeling)のために使用されることがある)。
【0037】
909では、異なる形状を有する幾つかのチップに関する特徴が、901−907に従って計算され、1つのチップ形状の選択(または、解析すべき新たなチップ形状の生成)のために比較されるだろう。チップ形状の1つを選択することは、水晶体超音波乳化吸引術処置中に眼球内の切開部に沿うように形成されているチップシャフトの一部に沿って、どのチップ形状がより小さい横変位を有するかに基づいて、チップ形状を選択することを含むだろう。幾つかの実施形態では、(例えば、(円錐形部分の端部のような)シャフトの近位端部から刃先部分の第1の湾曲部へ延びるシャフトの一部に亘って)水晶体超音波乳化吸引術処置中に眼球内の切開部に沿うように構成されたチップシャフトの一部に沿った(解析されるチップ形状の)横変位が、遠位端点106の横変位の約5%〜25%(例えば15%)よりも大きい場合に(他の閾値(例えば、1ミクロン、2ミクロン、100ミクロン、2mm等)も使用されることがある)、別のチップ形状が生成されてもよく、この新たなチップ形状の横変位がモデル化されて、第1の、第2の、および、新たな形状の間のさらに別の選択のために、第1または第2のチップ形状の横変位の少なくとも1つと比較されるだろう(この時点で、これらチップのうちの1つが選択されるか、または、別のチップ形状が比較のために生成されてもよい)。
【0038】
幾つかの実施形態では、新たな形状を生成することが、追加のモデリングのために、以前に試験された形状を変更することを含むことがある。幾つかの実施形態では、ユーザは、さらに、追加の基準にしたがって形状を調節するために、選択されたチップ形状を変更することがある。例えば、ユーザは、遠位端点106のより大きな横変位を実現するために平衡型チップ100のねじれ振動を増大させるように、円錐形部分110の長さ(または、シャフトの長さのような他の形状的特徴)を変更することがある。幾つかの実施形態では、ユーザは、チップの遠位端部に向かって横変位を増大させながらチップの近位端部に向かって横変位を減少させるために、1つまたは複数の湾曲部の異なる位置及び曲率を試みることがある。この変更は、第3のチップ、第4のチップ等のために使用されることがあり、以前のチップと比較された結果が、チップの形状的特徴の選択を最適化することをもたらす。
【0039】
図10は、一実施形態による、チップ形状を決定するための別の方法のフローチャートを示す。このフローチャートに示されている要素は例示的であるにすぎない。示されている様々な要素が省略されてもよく、追加の要素が加えられてもよく、かつ/または、様々な要素が、後述する順序とは異なる順序で実行されてもよい。
【0040】
1001では、第1の形状を有する第1のチップが物理的に作られるかまたは(例えば、有限要素解析を使用して)モデル化されるだろう。幾つかの実施形態では、第1のチップは、円形の横断面、正方形の横断面、または、チップの軸線に沿って変化する横断面を有するだろう。
【0041】
1003では、第1のチップが、(例えば、図2−3に示されている水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピース内に固定されて約31kHzの周波数で振動させられることによって、かつ/またはANSYSのようなモデリングソフトウェアを使用して「振動」させられることによって)水晶体超音波乳化吸引術処置と同一の条件の下で振動させられるだろう。(例えば、約10kHzから60kHzの間の)他の周波数も想定される。幾つかの実施形態では、第1のチップは、振動させられるべき水晶体超音波乳化吸引術用ハンドピースに固定されることがある。幾つかの実施形態では、このチップは、振動を与えるための異なる装置(例えば、試験用取付具)に固定されることがある。幾つかの実施形態では、第1のチップの端部は、水、または、硝子体に類似した特徴を有する材料の中に入れられることがある(他の液体も想定される)。幾つかの実施形態では、第1のチップは2つの湾曲部(例えば、102、103)を含むだろう。他の個数の湾曲部も想定される。
【0042】
1005では、第1のチップが振動中に解析されるだろう。例えば、サーマルイメージング、ストロボスコピー、変位の物理的測定等が、そのチップに関する横変位(ux)および/またはねじれ角(φ)(または、横変位(ux)および/またはねじれ角(φ)を表している特徴)を求めるために使用されるだろう。例えば、振動チップの熱スキャンにおいては、チップ長さに沿ったより高い熱の位置が、より大きい横変位(ux)を表しているだろう。
【0043】
1007では、第2のチップが形成されるだろう(例えば、第1のチップの形状が変更されるだろう)。変更は、上述した様々な形状的特徴に対して行われるだろう。例えば、第2の湾曲部103の位置および/または曲率が変更されるだろう。
【0044】
1009では、第2のチップが第1のチップと同じ条件の下で振動させられるだろう。
【0045】
1011では、第2のチップが、第1のチップに関して求められたのと同じ(横変位とねじれ角のような)特徴を求めるために、振動中に解析されるだろう。
【0046】
1013では、第1のチップと第2のチップに関する特徴が比較され、第1のチップの形状と第2のチップの形状の一方が選択されるか、または、比較のために新たなチップ形状が生成されて試験されるだろう。例えば、第1のチップ形状または第2のチップ形状を選択することは、水晶体超音波乳化吸引術処置中に眼球内の切開部に沿うように形成されているチップシャフトの一部に沿って、どちらのチップがより小さい横変位を有するかに基づいているだろう。幾つかの実施形態では、(例えば、(円錐形部分の端部のような)シャフトの近位端部から刃先部分の第1の湾曲部へ延びるシャフトの一部に亘って)水晶体超音波乳化吸引術処置中に眼球内の切開部に沿うように形成されているチップシャフトの一部に沿った横変位がチップの遠位端点106の変位の約5%〜25%(例えば、15%)よりも大きい(上述したように、他の閾値も採用可能である)場合に、第3のチップが生成されて試験されもよい。第3のチップの横変位および/またはねじれ角が、求められ、第1のチップ形状と第2のチップ形状と第3のチップ形状との間のさらに別の選択のために第1または第2のチップ形状の横変位および/またはねじれ角に対して比較されるだろう(この時点では、これらのチップの1つが選択されるか、または、別のチップ形状が比較のために生成されるだろう)。
【0047】
図11は、採用可能な6つの平衡型チップの実施形態を示す(他の実施形態も採用可能である)。平衡型チップ100は、図11の表に示されている複数の組のパラメータの中の1つの組のパラメータにしたがった形状を有するだろう。平衡型チップ100は、ODインチの外径と、IDインチの内側穴の直径と、ハブ(超音波ホーンに取り付くように形成されているチップ100の近位先端)からチップ100の刃先106までのLインチの全長とを有するだろう。チップ100の円錐形部分110はハブからLcインチ延びるだろう。チップ100の第1の湾曲部102は、α1度の角度を有し、遠位端点106からx1インチおよびx2インチに位置する箇所の間を延びるだろう。第2の湾曲部104は、α2度の角度を有し、遠位端点106からy1インチおよびy2インチの距離に位置する箇所の間を延びるだろう。刃先部分112は、表に示されているように30度または45度に上向きであるか、または、30度に下向きである(すなわち、刃先部分の最遠位の端縁における)傾斜端縁を有するだろう(例えば、図1に示されている傾斜は下向きである)。
【0048】
幾つかの実施形態では、モデリングシステムが1つまたは複数のプロセッサを含むだろう。このプロセッサは、単一の処理デバイスまたは複数の処理デバイスを含むだろう。こうした処理デバイスは、マイクロプロセッサ、(マイクロコントローラであってもよい)コントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコンピュータ、中央処理ユニット、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブル論理デバイス、状態機械、論理回路構成、制御回路構成、アナログ回路構成、デジタル回路構成、および/または、操作命令に基づいて(アナログおよび/またはデジタル)信号を操作する任意のデバイスであるだろう。これらのプロセッサに接続されかつ/または組み込まれている記憶装置は、単一のメモリデバイスまたは複数のメモリデバイスであってよい。こうしたメモリデバイスは、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、スタティックメモリ、ダイナミックメモリ、フラッシュメモリ、キャッシュメモリ、および/または、デジタル情報を記憶する任意のデバイスであってよい。プロセッサが、状態機械、アナログ回路構成、デジタル回路構成、および/または、論理回路構成を介して、その機能の1つまたは複数を実行する時に、対応する操作命令を記憶する記憶装置は、状態機械を備える回路構成、アナログ回路構成、デジタル回路構成、および/または、論理回路構成の内部に、または、その外部に組み込まれるだろう。記憶装置は、図示されておりかつ図(図9図10)に関連して説明されている要素の少なくとも幾つかに対応する操作命令を記憶し、プロセッサが、こうした操作命令を実行するだろう。
【0049】
当業者によって様々な変更が上記の実施形態に加えられてもよい。本発明の他の実施形態も、本明細書の理解と、本明細書に開示されている本発明の実施とにおいて、当業者にとって明らかだろう。本明細書と具体例とが単に例示的なものと見なされることが意図されており、および、本発明の真の範囲と着想は、以下の特許請求の範囲とその等価物とによって示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2015年7月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶体超音波乳化吸引術用チップの形状を決定する方法であって、
第1のチップ形状を与えることと、
前記チップの超音波ねじれ振動中の前記第1のチップ形状の横変位をモデル化することと、
第2のチップ形状を与えることと、
前記チップの超音波ねじれ振動中の前記第2のチップ形状の横変位をモデル化することと、
前記第1のチップ形状の横変位と前記第2のチップ形状の横変位とを比較することと、
どちらのチップ形状が、水晶体超音波乳化吸引術処置中に眼球内の切開部に沿うように構成されたチップシャフトの一部に沿ったより小さい横変位を有するかに基づいて、前記第1のチップ形状または前記第2のチップ形状を選択することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のチップ形状は、少なくとも、
直線形状からの横変位としてのl(z)と、
チップ材料の密度としてのρと、
チップシャフトと同一直線上の軸線の周りの円筒形チップ横断面の慣性モーメントとしてのI(z)と、
前記シャフトと同一直線上の軸線に沿った前記チップの横断面積としてのS(z)と、
前記チップ材料のヤング係数としてのEと、
前記シャフトと同一直線上の軸線に対して垂直な軸線の周りの前記チップの横断面の慣性モーメントとしてのIy(z)と、
C(z)=I(z)×μと、
前記チップ材料のねじれ弾性係数としてのμと
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チップの超音波ねじれ振動中の前記チップ形状の横変位(ux)をモデル化することは、次の方程式
【数1】
および
【数2】
によって前記チップの横方向の動きを求めることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2のチップ形状は円錐形部分を含み、当該方法は、さらに、次の方程式
【数3】
にしたがって前記チップのねじれ振動をモデル化することと、
前記チップの遠位端点におけるより大きな横変位を生じさせるように超音波ねじれ振動中の前記チップのねじれ振動の増大を生じさせる前記円錐形部分の長さを決定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2のチップ形状は、少なくとも第1および第2の湾曲部と、前記第2の湾曲部の異なる位置または曲率とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が遠位端点の横変位の約15%未満であるかどうかを判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が前記遠位端点の横変位の約15%よりも大きい場合、第3のチップ形状を生成することと、該第3のチップ形状の横変位をモデル化することと、該第3のチップ形状の横変位を前記第1または第2のチップ形状の横変位の少なくとも一方と比較することとをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
水晶体超音波乳化吸引術用チップ形状を決定する方法であって、
第1のチップ形状を有する第1のチップを与えることと、
前記第1のチップ形状を超音波ねじれ振動させることと、
前記第1のチップの超音波ねじれ振動中に前記チップ形状に沿った横変位を求めることと、
第2のチップ形状を有する第2のチップを与えることと、
前記第2のチップ形状を超音波ねじれ振動させることと、
前記第2のチップの超音波ねじれ振動中に前記第2のチップ形状に沿った横変位を求めることと、
前記第1のチップ形状の横変位と前記第2のチップ形状の横変位とを比較することと、
どちらのチップ形状が、水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成されたチップシャフトの一部に沿ったより小さい横変位を有するかに基づいて、前記第1のチップ形状または前記第2のチップ形状を選択することと
を含む、方法。
【請求項9】
前記第1または第2のチップ形状を選択することは、前記第1のチップ形状と前記第2のチップ形状とのどちらが、前記シャフトの長さの少なくとも半分にわたって前記シャフトの近位端部から延びる前記シャフトの一部を通じて、前記チップシャフトのより小さい横変位を有するかを判定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のチップ形状は少なくとも第1および第2の湾曲部を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2のチップ形状は前記第2の湾曲部の異なるそれぞれの位置または曲率を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が、前記チップの遠位端点における横変位の約5%〜25%未満であるかどうかを判定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
水晶体超音波乳化吸引術処置中の、眼球内の切開部に沿うように構成された前記チップシャフトの一部に沿った横変位が前記チップの遠位端点における横変位の約5%〜25%よりも大きい場合、第3のチップ形状を生成することと、前記第3のチップ形状の横変位をモデル化することと、前記第3のチップ形状の横変位を前記第1または第2のチップ形状の横変位の少なくとも一方と比較することとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記チップ形状の横の動きを求めることは、サーマルイメージング、ストロボスコピー、または、変位の物理的測定のうちの少なくとも1つを使用することを含む、請求項8に記載の方法。
【外国語明細書】
2015226816000001.pdf