【解決手段】アルデヒド類含有排水W1を排水源11で再利用する排水処理システム1であって、排水W1に亜硫酸塩を添加し、所定の環境で反応させることで加工水W5を調製する亜硫酸塩添加装置32,33と、送水された加工水W5を濾過処理し、透過水W6を得る逆浸透膜装置43と、アルデヒド類含有排水W2に殺菌剤を添加し、殺菌剤の水溶液W3を生成する殺菌剤添加装置24,25と、所定のタイミングで加工水W5の調製及び濾過処理を停止し、亜硫酸塩を添加する位置の近傍31から逆浸透膜装置43の一次側配管L41に向けて殺菌剤の水溶液W3(W5)を通液させるように、亜硫酸塩添加装置32,33、逆浸透膜装置43及び殺菌剤添加装置24,25を制御する制御装置と、を備える。
前記処理工程は、前記アルデヒド類含有排水を貯水槽に供給することで工程Aを実行すると共に、前記逆浸透膜装置に前記貯水槽から前記加工水を送水することで工程Bを実行し、
前記殺菌工程においては、前記貯水槽に供給される前記アルデヒド類含有排水に前記殺菌剤を添加し、前記貯水槽において所定濃度に調整された前記殺菌剤の水溶液を生成する
請求項1又は2に記載の排水処理方法。
前記殺菌工程において、前記殺菌剤は次亜塩素酸ナトリウムであり、前記逆浸透膜装置の一次側配管を通過後の前記殺菌剤の水溶液を前記排水源とは異なる工場設備の用水として再利用する
請求項1〜5のいずれかに記載の排水処理方法。
前記制御装置は、前記逆浸透膜装置の一次側配管を介して前記逆浸透膜装置の膜モジュールに達するまで、前記殺菌剤の水溶液を通液させるように前記逆浸透膜装置を制御する
請求項10又は11に記載の排水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態の排水処理システム1について説明する。第1実施形態の排水処理システム1により、本発明の排水処理方法の第1実施形態が実施される。
図1は、本発明の第1実施形態の排水処理システム1を示すフロー図である。
図2は、第1実施形態の各工程における動作モードを示す図(表)である。
【0023】
第1実施形態の排水処理システム1は、排水源としてのレトルト装置11(レトルト釜)からのアルデヒド類含有排水としての冷却排水W1を、レトルト装置11において再利用するための排水処理システムである。
図1に示すように、第1実施形態の排水処理システム1は、食品製造工場におけるレトルト装置11と、中継槽12と、中継ポンプ13と、流量調整槽14と、前段原水ポンプ21と、前段プレフィルタ22と、UF膜装置23と、を備える。
【0024】
また、排水処理システム1は、殺菌剤添加装置としての殺菌剤貯留部24と、殺菌剤添加装置としての殺菌剤添加ポンプ25と、第1貯水槽としての貯水槽31(31A,31B,31C)と、亜硫酸塩添加装置としての亜硫酸塩貯留部32と、亜硫酸塩添加装置としての亜硫酸塩添加ポンプ33と、pH調整剤添加部34と、循環ポンプ35と、RO加圧ポンプ41と、後段プレフィルタ42と、逆浸透膜装置43と、冷却水槽44と、冷却水導入ポンプ45と、排水槽51と、排水ポンプ52と、制御装置91と、を備える。なお、
図1では、制御装置91と各機器との電気的な接続の経路については図示を省略する。
【0025】
排水処理システム1は、ラインとして、第1排水ラインL11と、第2排水ラインL12と、前段原水ラインL21と、前段透過水ラインL22(L22A,L22B,L22C)と、殺菌剤添加ラインL23と、循環ラインL3(循環上流側分岐ラインL31A,L31B,L31C、循環下流側分岐ラインL32A,L32B,L32Cを含む)と、亜硫酸塩添加ラインL33と、pH調整剤添加ラインL34と、を備える。
【0026】
また、排水処理システム1は、後段原水ラインL41(L41A,L41B,L41C)と、後段透過水ラインL42と、濃縮水ラインL43と、ROバイパスラインL44と、冷却水導入ラインL45と、冷却水バイパスラインL46と、補給水ラインL47と、再利用先流通ラインL51と、殺菌剤排水ラインL52と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0027】
第1排水ラインL11の上流側の端部は、レトルト装置11(レトルト釜)の排出部に接続している。第1排水ラインL11の下流側の端部は、中継槽12の導入部に接続している。第1排水ラインL11には、レトルト装置11から排出された冷却排水W1が、中継槽12に向けて流通する。
【0028】
第2排水ラインL12の上流側の端部は、中継槽12の排出部に接続している。第2排水ラインL12の下流側の端部は、流量調整槽14の導入部に接続している。第2排水ラインL12には、中継槽12から排出された冷却排水W1が、流量調整槽14に向けて流通する。
【0029】
前段原水ラインL21の上流側の端部は、流量調整槽14の排出部に接続している。第2排水ラインL12の下流側の端部は、UF膜装置23の一次側に接続している。前段原水ラインL21には、流量調整槽14から排出された冷却排水W1が、UF膜装置23に向けて流通する。
【0030】
前段透過水ラインL22の上流側の端部は、UF膜装置23の二次側の透過水排出部に接続している。前段透過水ラインL22の下流側は、L22A,L22B,L22Cの3本に分岐し、それぞれ貯水槽31A,31B,31Cの導入部に接続している。前段透過水ラインL22には、UF膜装置23から排出された前段透過水W2が、貯水槽31A,31B,31Cに向けて流通する。
【0031】
殺菌剤添加ラインL23の上流側の端部は、殺菌剤貯留部24の排出部に接続している。殺菌剤添加ラインL23の下流側の端部は、接続部J1において、分岐する前の前段透過水ラインL22に接続している。殺菌剤添加ラインL23には、殺菌剤貯留部24から排出された殺菌剤が、接続部J1に向けて流通する。
【0032】
循環ラインL3の上流側は、循環上流側分岐ラインL31A,L31B,L31Cの3本に分岐し、それぞれ貯水槽31A,31B,31Cの排出部に接続している。循環ラインL3の下流側は、循環下流側分岐ラインL32A,L32B,L32Cの3本に分岐し、それぞれ貯水槽31A,31B,31Cの導入部に接続している。循環ラインL3には、貯水槽31A,31B,31Cから排出された循環水W4が、貯水槽31A,31B,31Cの導入部に向けて流通する。つまり、循環ラインL3には、貯水槽31A,31B,31Cを介して、循環水W4が循環する。循環水W4は、前段透過水W2に亜硫酸塩が添加されたものである。
【0033】
亜硫酸塩添加ラインL33の上流側の端部は、亜硫酸塩貯留部32の排出部に接続している。亜硫酸塩添加ラインL33の下流側の端部は、接続部J2において、循環ラインL3に接続している。亜硫酸塩添加ラインL33には、亜硫酸塩貯留部32から排出された亜硫酸塩が、接続部J2に向けて流通する。
【0034】
pH調整剤添加ラインL34の上流側の端部は、pH調整剤添加部34の排出部に接続している。pH調整剤添加ラインL34の下流側の端部は、接続部J3において、循環ラインL3に接続している。接続部J3は、循環ラインL3において接続部J2よりも下流側に位置する。pH調整剤添加ラインL34には、pH調整剤添加部34から排出されたpH調整剤が、接続部J3に向けて流通する。
【0035】
後段原水ラインL41の上流側は、L41A,L41B,L41Cの3本に分岐し、それぞれ貯水槽31A,31B,31Cの排出部に接続している。後段原水ラインL41の下流側の端部は、逆浸透膜装置43の一次側の原水導入部に接続している。後段原水ラインL41は逆浸透膜装置43の一次側配管とみることもできる。後段原水ラインL41には、貯水槽31A,31B,31Cから排出された加工水W5が、逆浸透膜装置43に向けて流通する。
【0036】
後段透過水ラインL42の上流側の端部は、逆浸透膜装置43の二次側の透過水排出部に接続している。後段透過水ラインL42の下流側の端部は、冷却水槽44の導入部に接続している。後段透過水ラインL42には、逆浸透膜装置43から排出された後段透過水W6が、冷却水槽44に向けて流通する。
【0037】
濃縮水ラインL43の上流側の端部は、逆浸透膜装置43の一次側の濃縮水排出部に接続している。濃縮水ラインL43の下流側の端部は、排水槽51の導入部に接続している。濃縮水ラインL43には、逆浸透膜装置43から排出された濃縮排水W7が、排水槽51に向けて流通する。
【0038】
ROバイパスラインL44の上流側の端部は、接続部J4において後段原水ラインL41に接続している。接続部J4は、後述する後段プレフィルタ42とROモジュール入口バルブV41との間に位置する。ROバイパスラインL44の下流側の端部は、接続部J5において濃縮水ラインL43に接続している。接続部J5は、後述する濃縮水ラインバルブV42よりも下流側に位置する。ROバイパスラインL44には、後段原水ラインL41の接続部J4から排出された殺菌剤排水W8(後述)が、接続部J5に向けて流通する。
【0039】
冷却水導入ラインL45の上流側の端部は、冷却水槽44の排出部に接続している。冷却水導入ラインL45の下流側の端部は、レトルト装置11(レトルト釜)の導入部に接続している。冷却水導入ラインL45には、冷却水槽44から排出された冷却水W9が、レトルト装置11に向けて流通する。
【0040】
冷却水バイパスラインL46の上流側の端部は、冷却水槽44の排出部に接続している。冷却水バイパスラインL46の下流側の端部は、中継槽12の導入部に接続している。冷却水バイパスラインL46には、冷却水槽44から排出されたバイパス冷却水W10が、中継槽12に向けて流通する。
【0041】
補給水ラインL47の下流側の端部は、冷却水槽44の導入部に接続している。補給水ラインL47は、冷却水槽44に貯留されている冷却水が少ない場合に、冷却水槽44に補給水として水道水(すなわち、新水)を強制的に供給するラインである。補給水ラインL47には、水道水が冷却水槽44に向けて流通する。
【0042】
再利用先流通ラインL51の上流側の端部は、排水槽51の排出部に接続している。再利用先流通ラインL51の下流側の端部は、濃縮排水の再利用先の工業設備53に接続している。再利用先流通ラインL51には、排水槽51から排出された濃縮再利用水W11が、工業設備53に向けて流通する。
【0043】
殺菌剤排水ラインL52の上流側の端部は、接続部J6において再利用先流通ラインL51に接続している。接続部J6は、後述する再利用先バルブV51よりも上流側に位置する。殺菌剤排水ラインL52の下流側の端部は、例えば、所定の排水処理設備に接続している。殺菌剤排水ラインL52には、再利用先流通ラインL51の接続部J6から排出された濃縮再利用水W11が、所定の排水処理設備に向けて流通する。
【0044】
第1排水ラインL11、第2排水ラインL12、前段原水ラインL21、前段透過水ラインL22、後段原水ラインL41、後段透過水ラインL42、及び冷却水導入ラインL45は、冷却排水W1の再利用循環ラインを形成する。
【0045】
次に各機器について説明する。レトルト装置11(レトルト釜)は、被処理物としての飲料缶(不図示)を収容可能な収容部を有する。レトルト装置11は、収容部に収容された飲料缶に対して、後述する予熱処理、殺菌処理及び冷却処理を順次実行する。
【0046】
予熱処理は、収容部に蒸気又は温水を導入して、飲料缶を設定温度まで加熱する処理である。温水を導入して加熱する場合には、飲料缶に充填された内容物の膨張等を防ぐため、レトルト装置11の内部を加圧することが好ましい。後述する殺菌処理においても同様である。
【0047】
殺菌処理は、予熱処理に引き続き、収容部に蒸気又は温水を導入して、飲料缶を設定温度で一定時間加熱する処理である。上述した予熱処理及び殺菌処理における設定温度は、例えば、110℃〜120℃である。
【0048】
冷却処理は、収容部に冷却水を導入して、飲料缶を冷却する処理である。冷却処理では、冷却水の温度を段階的に下げていき、最終的に20℃前後の冷却水を導入することにより、飲料缶が40℃未満となるように冷却する。なお、冷却水を導入して冷却する場合には、飲料缶に充填された内容物の膨張等を防ぐため、レトルト装置11の内部を加圧することが好ましい。
【0049】
上記各処理において、加熱や冷却に使用された温水や冷却水は、第1排水ラインL11を介してレトルト装置11の外部へ、アルデヒド類含有排水としての冷却排水W1として排出される。冷却排水W1に含有されるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドが挙げられる。なお、被処理物は、その他の包装飲食物(例えば、缶詰、パック食材(真空包装された食材))でもよい。ホルムアルデヒドは、包装飲食物の側面に印刷された絵柄の塗料等から溶出したものと考えられている。
【0050】
中継槽12は、第1排水ラインL11を介して導入される冷却排水W1、及び冷却水バイパスラインL46を介して導入されるバイパス冷却水W10を貯留する。バイパス冷却水W10は、例えば、冷却水槽44をオーバーフローした冷却水W9や新水である。
【0051】
中継ポンプ13は、第2排水ラインL12に設けられ、中継槽12から排出される冷却排水W1(バイパス冷却水W10を含む)を吸引し、下流側に向けて送水する。
【0052】
流量調整槽14は、UF膜装置23へ導入される冷却排水W1を、その流量を調整するため一旦貯留する。
【0053】
前段原水ポンプ21は、前段原水ラインL21に設けられ、流量調整槽14から排出される冷却排水W1を吸引し、下流側に向けて圧送する。
【0054】
前段プレフィルタ22は、前段原水ラインL21において前段原水ポンプ21とUF膜装置23との間に設けられる。前段プレフィルタ22は、UF膜装置23の上流側において、比較的大きな不純物(例えば、10μm以上の固形物)を捕捉する。
【0055】
UF膜装置23は、限外濾過膜(UF膜)を有するUF膜モジュールを備え、亜硫酸塩を添加する前の冷却排水W1を濾過処理し、冷却排水W1に含まれる懸濁物質等の不純物を除去する。
【0056】
殺菌剤添加装置としての殺菌剤貯留部24及び殺菌剤添加ポンプ25は、前段透過水ラインL22を流通する前段透過水(アルデヒド類含有排水)W2に殺菌剤を添加し、殺菌剤の水溶液W3(有効濃度が数mg/Lの希薄水溶液)を生成する。殺菌剤貯留部24は、殺菌剤を貯留する。殺菌剤添加ポンプ25は、殺菌剤貯留部24から排出される殺菌剤を吸引し、殺菌剤添加ラインL23の下流側に向けて送液する。殺菌剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過酢酸、オゾンが挙げられる。殺菌剤は、通常、水溶液の状態(有効濃度が1〜15%の水溶液)で殺菌剤添加装置から添加されるのが好ましい。殺菌剤には、前記の物質以外にも、電解次亜塩素酸溶液を使用することもできる。
【0057】
貯水槽31は、3個の貯水槽31A,31B,31Cから構成される。貯水槽31は、後述する工程A〜工程Cからなる処理工程において、前段透過水W2(アルデヒド類含有排水)を受水し、貯留する。貯水槽31においては、貯留された前段透過水W2に更に亜硫酸塩が添加され、ホルムアルデヒドとの反応生成物であるヒドロキシメタンスルホン酸イオンを含む加工水W5が調製される。調製された加工水W5は、逆浸透膜装置43に向けて送水される。すなわち、処理工程においては、貯水槽31A,31B,31Cは、受水、反応、送水のいずれかの状態に設定される。
【0058】
一方、貯水槽31は、後述する殺菌工程を実行する前の準備工程において、殺菌剤の添加された前段透過水W2(アルデヒド類含有排水)を受水し、殺菌剤の水溶液W3として貯留する。なお、調製済みの加工水W5は、殺菌工程後の水洗工程において、洗浄水として利用される。
【0059】
亜硫酸塩添加装置としての亜硫酸塩貯留部32及び亜硫酸塩添加ポンプ33は、循環ラインL3を流通(循環)する循環水(アルデヒド類含有排水)W4に亜硫酸塩を添加し、所定の環境で反応させることで加工水W5を調製する。亜硫酸塩貯留部32は、亜硫酸塩を貯留する。亜硫酸塩添加ポンプ33は、亜硫酸塩貯留部32から排出される亜硫酸塩を、亜硫酸塩添加ラインL33の下流側に向けて送液する。
【0060】
亜硫酸水素イオン源化合物が水に溶解して生成した亜硫酸水素イオンは、循環水(アルデヒド類含有排水)W4に含まれるホルムアルデヒドと反応して、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成する。つまり、加工水W5は、ヒドロキシスルホン酸イオンを含有する。所定の環境は、例えば、pHが7未満の環境であり、好ましくはpHが6.0〜6.5の環境である。
【0061】
亜硫酸塩添加装置により添加される亜硫酸塩は、水相においてアルデヒド類と反応することでα−ヒドロキシスルホン酸イオンを生成可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常、アルカリ金属(好ましくはナトリウム)の亜硫酸塩や亜硫酸水素塩である。亜硫酸塩として、亜硫酸塩と亜硫酸水素塩との混合物を用いることもできる。亜硫酸塩は、通常、水溶液の状態で亜硫酸塩添加装置から添加されるのが好ましい。
【0062】
pH調整剤添加部34は、循環ラインL3を流通する循環水W4にpH調整剤を添加する。pH調整剤としては、循環水W4に対してpHを高めるための調整剤(例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等)、又はpHを低めるための調整剤(例えば、塩酸、硫酸等)を選択的に添加可能である。
【0063】
循環ポンプ35は、循環ラインL3に設けられ、循環ラインL3を流通する循環水W4を吸引し、下流側に向けて送水する。
【0064】
前段透過水ラインL22A,L22B,L22C、循環上流側分岐ラインL31A,L31B,L31C、循環下流側分岐ラインL32A,L32B,L32C、及び、後段原水ラインL41A,L41B,L41Cには、それぞれラインを開閉するためのバルブ(
図1に記号を図示。符号は省略)が設けられる。
【0065】
RO加圧ポンプ41は、合流した後の後段原水ラインL41に設けられ、処理工程においては、いずれかの貯水槽31から加工水W5を吸引し、下流側に向けて圧送する。また、RO加圧ポンプ41は、殺菌工程においては、いずれかの貯水槽31から殺菌剤の水溶液W3を吸引し、下流側に向けて圧送する。
【0066】
後段プレフィルタ42は、後段原水ラインL41においてRO加圧ポンプ41と逆浸透膜装置43との間に設けられる。後段プレフィルタ42は、逆浸透膜装置43の上流側において、比較的大きな不純物(例えば、10μm以上の固形物)を捕捉する。
【0067】
逆浸透膜装置43は、後段原水ラインL41を送水された加工水W5を膜モジュール(図示せず)によって濾過処理し、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが大幅に除去された後段透過水(透過水)W6と、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンが濃縮された濃縮排水W7とに分離させる。
【0068】
なお、本発明における逆浸透膜装置には、通常の逆浸透膜(RO膜)よりも細孔がルーズなナノ濾過膜(NF膜)による濾過処理を行うナノ濾過膜装置も含まれる。
【0069】
冷却水槽44は、逆浸透膜装置43からの後段透過水W6を貯留する。冷却水導入ポンプ45は、冷却水導入ラインL45に設けられ、冷却水導入ラインL45を流通する冷却水W9(後段透過水W6、又は後段透過水W6と新水との混合水)を吸引し、下流側に向けて送水する。
【0070】
排水槽51は、後述する処理工程において生じた排水であって、濃縮水ラインL43を流通する濃縮排水W7を貯留する。また、排水槽51は、後述する殺菌工程において生じた排水であって、ROバイパスラインL44を流通する殺菌剤排水W8を貯留する。
【0071】
排水ポンプ52は、再利用先流通ラインL51に設けられ、再利用先流通ラインL51を流通する濃縮再利用水W11を吸引し、下流側に向けて送水する。
【0072】
後述する殺菌工程において逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41における接続部J4よりも上流側)を通過後の殺菌剤の水溶液W3、すなわち殺菌剤排水W8は、レトルト装置11とは異なる工業設備53の用水として再利用される。工業設備53の用水としては、例えば、排出源以外のレトルト装置の一次冷却水、飲料缶・ボトル等の容器洗浄装置の一次洗浄水が挙げられる。
【0073】
ROモジュール入口バルブV41は、後段原水ラインL41における接続部J4よりも下流側に設けられ、後段原水ラインL41を開閉する。濃縮水ラインバルブV42は、濃縮水ラインL43における接続部J5よりも上流側に設けられ、濃縮水ラインL43を開閉する。ROモジュール入口バルブV41及び濃縮水ラインバルブV42を閉じると、後段原水ラインL41における接続部J4よりも上流側を流通する殺菌剤の水溶液W3は、ROバイパスラインL44を経由して逆浸透膜装置43をバイパスして、排水槽51に向けて流通する。
【0074】
バイパスラインバルブV43は、ROバイパスラインL44に設けられ、ROバイパスラインL44を開閉する。
【0075】
再利用先バルブV51は、再利用先流通ラインL51における接続部J6よりも下流側に設けられ、再利用先流通ラインL51を開閉する。殺菌剤排水バルブV52は、殺菌剤排水ラインL52に設けられ、殺菌剤排水ラインL52を開閉する。再利用先バルブV51を閉じ、殺菌剤排水バルブV52を開くと、再利用先流通ラインL51における接続部J6よりも上流側を流通する濃縮再利用水W11は、工業設備53には向かわず、殺菌剤排水ラインL52を下流側に向けて流通する。
【0076】
なお、本実施形態の排水処理システム1には、前述のポンプやバルブ以外にも、ポンプやバルブ等が適宜設けられている。
【0077】
制御装置91は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御装置91は、前述のポンプやバルブ等の機器を制御する。
【0078】
制御装置91は、所定のタイミングで加工水W5の調製及び逆浸透膜装置43による濾過処理を停止し、亜硫酸塩を添加する位置(貯水槽31)の近傍から逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41)に向けて、殺菌剤の水溶液W3(殺菌剤が添加された前段透過水W2)を通液させるように、亜硫酸塩添加装置(亜硫酸塩貯留部32、亜硫酸塩添加ポンプ33)、逆浸透膜装置43及び殺菌剤添加装置(殺菌剤貯留部24、殺菌剤添加ポンプ25)を制御する。所定のタイミングは、例えば、1日1回、1日おきに1回である。
【0079】
亜硫酸塩を添加する位置の「近傍」とは、亜硫酸塩を添加する位置そのものだけではなく、本発明の効果を奏する範囲で、亜硫酸塩を添加する位置よりも上流側の位置又は下流側でもよい。第1実施形態においては、殺菌剤の水溶液は、亜硫酸塩を添加する位置としての貯水槽31の内部から、後段原水ラインL41の下流側に向けて通液する。
【0080】
制御装置91は、貯水槽31に供給される前段透過水(アルデヒド類含有排水)W2に殺菌剤を添加し、貯水槽31において所定濃度に調整された殺菌剤の水溶液W3を生成するように殺菌剤添加装置(殺菌剤貯留部24、殺菌剤添加ポンプ25)を制御する。前段透過水ラインL22の接続部J1において前段透過水W2に殺菌剤が添加された時点では、殺菌剤の水溶液W3の濃度は安定していないが、貯水槽31において殺菌剤の水溶液W3は所定濃度に調整される。
【0081】
逆浸透膜装置43の膜モジュール(図示せず)を殺菌する動作モードによっては、制御装置91は、逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41)を介して逆浸透膜装置43の膜モジュールに達するまで、殺菌剤の水溶液W3を通液させるように、逆浸透膜装置43を制御する。
【0082】
以上の構成を有する第1実施形態の排水処理システム1は、処理工程と殺菌工程とを有する第1実施形態の排水処理方法を実施することができる。処理工程は、アルデヒド類含有排水としての前段透過水W2に亜硫酸塩を添加し、所定の環境で反応させることで加工水W5を調製する工程Aと、逆浸透膜装置43に加工水W5を送水して濾過処理し、逆浸透膜装置43からの後段透過水W6を得る工程Bと、亜硫酸塩を添加する前のアルデヒド類含有排水としての冷却排水W1をUF膜装置23で濾過処理する工程Cを含む。殺菌工程は、所定のタイミングで前記処理工程を停止し、亜硫酸塩を添加する位置(貯水槽31)の近傍から逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41)に向けて殺菌剤の水溶液W3を通液する。
【0083】
前記処理工程は、アルデヒド類含有排水としての前段透過水W2を貯水槽31に供給することで工程Aを実行する(すなわち、前段透過水W2が供給された貯水槽31において、亜硫酸塩の添加と所定環境での反応を実行する)と共に、逆浸透膜装置43に貯水槽31から加工水W5を送水することで工程Bを実行する。殺菌工程においては、貯水槽31に供給されるアルデヒド類含有排水としての前段透過水W2に殺菌剤を添加し、貯水槽31において所定濃度に調整された殺菌剤の水溶液W3を生成する。
【0084】
前記処理工程は、アルデヒド類含有排水としての前段透過水W2を複数の貯水槽31A〜31Cに順次供給し、亜硫酸塩を添加することで工程Aを実行するとともに、逆浸透膜装置43に複数の貯水槽31A〜31Cから加工水W5を順次送水することで工程Bを実行する。複数の貯水槽31A〜31Cのうち逆浸透膜装置43への加工水W5の送水が完了した貯水槽31を、工程Aにおいて前段透過水W2を供給するための貯水槽31として順次再利用する。
【0085】
殺菌工程において、逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41)を介して逆浸透膜装置43の膜モジュールに達するまで、殺菌剤の水溶液W3を通液することもできる。
【0086】
次に第1実施形態の排水処理システム1の動作モード(運転モード)の具体例について説明する。3基の貯水槽31A〜31Cの運転状態及び機器の動作状態は、
図2に示す通りである。その一部を具体的に詳述する。
【0087】
(1)処理工程においては、3基の貯水槽31A〜31Cが「受水」、「反応」及び「送水」のいずれかの状態となるように、3基の貯水槽31A〜31Cをローテーションさせながら運転する。
図2では、3基の貯水槽を「貯水槽1」、「貯水槽2」及び「貯水槽3」として示す。中継槽12が空になると、排水処理システム1の動作は停止する。
【0088】
(1−1)受水
貯水槽31が満水となるまで、排水(UF膜装置23で濾過処理された前段透過水W2)を供給する。満水になると「反応」に移行する。他の貯水槽31が「反応」中の場合には、待機となる。
【0089】
(1−2)反応
貯留された排水を、循環ラインL3を介して循環しながら所定量の亜硫酸塩(例:亜硫酸水素ナトリウム=SBS)を添加して、ホルムアルデヒドと反応させ、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンを生成させる。排水のpHが6.0〜6.5の範囲になるように、pH調整剤として水酸化ナトリウムを適宜に添加する。所定時間の循環を行うと「送水」に移行する。他の貯水槽31が「送水」中の場合には、待機となる。
【0090】
(1−3)送水
反応後のヒドロキシメタンスルホン酸イオン含有排水(加工水)W5を逆浸透膜装置43に送水する。貯水槽31が空になる(ただし、給水ポンプが空運転しない水量は残す)と、「受水」に移行する。他の貯水槽31が「受水」中の場合には、待機となる。
【0091】
本発明の処理工程では、工程A(貯水槽31が「反応」状態)において、アルデヒド類含有排水に対してホルムアルデヒド濃度の2〜6モル当量の亜硫酸塩を添加することで、少なくとも15分間の反応時間を確保する。また、工程B(貯水槽31が「送水」状態)では、膜モジュールの操作圧力を0.6MPa〜1MPaに設定し、かつ、後段透過水W6の回収率を60〜95%の範囲で調節する。本発明の処理工程に従ってホルムアルデヒド濃度が1〜5mg/Lの冷却排水W1を処理すると、通常、レトルト装置11での再利用に適した水道水基準に適合する透過水、すなわち、残留ホルムアルデヒド濃度が0.08mg/L以下でありかつ全有機炭素量が3.0mg/L以下の透過水が得られる。
【0092】
(2)予め設定された殺菌タイミング(例えば、隔日の設定時刻)になった場合、以下の準備工程、殺菌工程及び水洗工程からなる殺菌処理の動作を割り込みさせる。
【0093】
(2−1)準備工程
◎貯水槽1:殺菌剤水溶液の調製(受水)
◎貯水槽2:洗浄水の調製(反応)
◎貯水槽3:送水
貯水槽1では、排水を受け入れる際、前段透過水W2に殺菌剤を添加し、貯水槽1を殺菌剤の水溶液W3で満たす。この結果、貯水槽1において、所定濃度に調整された殺菌剤の水溶液W3が生成される。貯水槽2では、「反応」中の状態を継続しており、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)の添加により、殺菌剤(酸化剤)濃度がほぼゼロの加工水W5が調製される。この加工水W5は、後述する水洗工程で洗浄水として使用される。貯水槽3では、加工水W5の「送水」中の状態を継続している。
【0094】
(2−2)殺菌工程
◎貯水槽1:殺菌剤水溶液の通液
◎貯水槽2:待機
◎貯水槽3:受水
貯水槽1では、貯水槽3が空になり「送水」が完了すると、逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41)に殺菌剤の水溶液W3を通液する。通液後の殺菌剤排水W8は、排水槽51に受けられた後、殺菌剤排水ラインL52を介して廃棄される。貯水槽2では、殺菌工程の間「待機」状態が継続される。貯水槽3では、処理工程の再開に備えて、前段透過水W2の「受水」が行われる。殺菌工程の終了時には、貯水槽1は空、貯水槽2は加工水W5で満水、貯水槽3は前段透過水W2で満水となる。
【0095】
殺菌工程において、後段原水ラインL41に流通させる殺菌剤の水溶液W3の濃度は、1〜5mg/Lに設定するのが好ましく、2〜3mg/Lに設定するのがより好ましい。殺菌剤濃度が1mg/L未満の場合、十分な殺菌・制菌効果が得られない可能性がある。逆に、殺菌剤濃度が5mg/Lを超える場合、配管やポンプ等の金属材料を腐食させる恐れがある。また、後段原水ラインL41に流通させる殺菌剤の水溶液W3の通液時間は、3〜20分に設定するのが好ましく、5〜10分に設定するのがより好ましい。通液時間が3分未満の場合、一次側配管内に殺菌剤が十分に行き渡らない可能性がある。逆に、通液時間が20分を超える場合、殺菌剤の水溶液W3が多量に消費されるのに伴い、殺菌剤の水溶液W3の調製時に多量の前段透過水W2を必要とすることから、再利用可能な冷却排水W1の量が大幅に減少する。殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、例えば残留塩素濃度が3mgCl
2/Lの水溶液を6分間通液すると、効果的かつ十分な殺菌・制菌効果が得られる。
【0096】
(2−3)水洗工程
◎貯水槽1:受水
◎貯水槽2:洗浄水の通水
◎貯水槽3:反応
貯水槽1では、処理工程の再開に備えて、前段透過水W2の「受水」が行われる。貯水槽2では、加工水W5を洗浄水として逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41)に通水する。逆浸透膜装置43の一次側配管では、加工水W5の通水により、殺菌剤の水溶液W3の押出しと加工水W5への置換が行われる。通水後の洗浄排水は、排水槽51に受けられた後、殺菌剤排水ラインL52を介して廃棄される。貯水槽3では、処理工程の再開に備えて、貯留された前段透過水W2に対して亜硫酸塩の添加により「反応」が行われる。
【0097】
(2−4)(水洗工程後の)処理工程
通常のモードに戻る。前述のように、処理工程においては、3基の貯水槽31A〜31Cが「受水」、「反応」及び「送水」のいずれかの状態となるように、3基の貯水槽31A〜31Cをローテーションさせながら運転する。逆浸透膜装置43の後段透過水W6は冷却水槽44に供給される。逆浸透膜装置43からの濃縮排水W7は、排水槽51に受けられた後、殺菌剤排水ラインL52を介して廃棄される。
【0098】
上述した第1実施形態の排水処理システム1によれば、例えば、次のような効果を奏する。
【0099】
〔1〕貯水槽31では、ホルムアルデヒド(アルデヒド類)からヒドロキシメタンスルホン酸イオン(α−ヒドロキシスルホン酸イオン)を生成させるために亜硫酸塩を添加するので、貯水槽31からの排水(加工水W5)中には、残留塩素などの殺菌成分はほとんど存在しない。そのため、貯水槽31と逆浸透膜装置43との間において、配管内部や膜面に微生物が繁殖し、スライムが発生しやすい。
【0100】
この問題に対し、本発明の第1実施形態においては、所定のタイミングで加工水W5の調製及び逆浸透膜装置43による濾過処理を停止し、亜硫酸塩を添加する位置の近傍から逆浸透膜装置43の一次側配管(後段原水ラインL41)に向けて殺菌剤の水溶液W3を通液させている。そのため、第1実施形態によれば、貯水槽31と逆浸透膜装置43との間が定期的に消毒・殺菌される。この結果、一次側配管(後段原水ラインL41)や逆浸透膜装置43の膜面において、微生物の繁殖やスライムの発生を抑制でき、延いては、逆浸透膜装置43の詰まりを抑制できる。
【0101】
〔2〕飲料充填後の缶・ボトルの外面には、飲料の雫が付着していることがある。レトルト殺菌処理される飲料が乳成分を含む場合(例:コーヒー飲料,紅茶飲料など)、この雫に由来して、冷却排水W1にタンパク質等の高分子化合物が混入しやすい。このような高分子化合物を含む冷却排水W1を逆浸透膜装置43で処理すると、膜面が汚染され、膜モジュールが早期に閉塞する恐れがある。
【0102】
この問題に対し、第1実施形態の排水処理システム1は、前段濾過装置として、亜硫酸塩を添加する前のアルデヒド類含有排水(冷却排水W1)を限外濾過膜で濾過処理するUF膜装置23を備える。そのため、第1実施形態によれば、UF膜装置23により冷却排水W1中のタンパク質等の高分子化合物を容易に捕捉し、分離することができる。この結果、逆浸透膜装置43における膜モジュールの閉塞を防止し、初期の透過流束を維持することができる。なお、UF膜装置は、MF膜装置よりも、高分子化合物の分離性能が高い点で好ましい。
【0103】
〔3〕逆浸透膜装置43の膜モジュールの膜の劣化を避けることを最優先すれば、膜モジュールへの殺菌剤の水溶液W3の通液を行わないことが好ましい。一方で、膜モジュールへの殺菌剤の水溶液W3の通液を行えば、膜モジュールの膜面の殺菌を行うことができる。
【0104】
そこで、膜モジュールへの殺菌剤の水溶液W3の通液を短時間のみ行うことも行われる。殺菌剤の水溶液の濃度にもよるが、膜の劣化を避けるため、膜モジュールへの通液時間は5分以内が好ましい。例えば、10分間の通液を行う場合、前半の5分間は一次側配管及び膜モジュールの両方に通液し、後半の5分間は一次側配管のみに通液する。
【0105】
(変形例)
第1実施形態において、限外濾過膜を有するUF膜装置23に代えて、精密濾過膜を有するMF膜装置を設けてもよい。
第1実施形態において、殺菌剤添加ラインL23の下流側の端部(殺菌剤が添加される位置)は、貯水槽31よりも下流側のラインに接続されることができる。例えば、殺菌剤添加ラインL23の下流側の端部は、合流した後の後段原水ラインL41におけるRO加圧ポンプ41よりも上流側に接続されることができる。
第1実施形態において、限外濾過膜を有するUF膜装置23(又は精密濾過膜を有するMF膜装置)は、循環ラインL3の途中や、合流した後の後段原水ラインL41におけるRO加圧ポンプ41よりも上流側に設けられていてもよい。
【0106】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の排水処理システム1Aについて、
図2を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第2実施形態の排水処理システム1Aを示すフロー図である。なお、第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を適宜に省略する。
【0107】
第2実施形態においては、UF膜装置23に代えて、精密濾過膜(MF膜)で濾過処理するMF膜装置123を備える点、及びMF膜装置123とRO加圧ポンプ41との間の構成が、第1実施形態とは主に異なる。第2実施形態の排水処理システム1Aは、MF膜装置123とRO加圧ポンプ41との間における後段原水ラインL41に、前段透過水加圧ポンプ46、スタティックミキサ47A及びスタティックミキサ47Bを備える。
【0108】
MF膜装置123は、精密濾過膜(MF膜)を有するMF膜モジュールを備え、亜硫酸塩を添加する前の冷却排水W1を濾過処理し、冷却排水W1に含まれる懸濁物質等の不純物を除去する。
【0109】
前段透過水ラインL22の上流側の端部は、MF膜装置123の二次側の透過水排出部に接続している。前段透過水ラインL22の下流側の端部は、貯水槽131の導入部に接続している。前段透過水ラインL22には、MF膜装置123から排出された前段透過水W2が、貯水槽131に向けて流通する。
【0110】
第2貯水槽としての貯水槽131は、アルデヒド類含有排水としての前段透過水W2を、(殺菌剤の水溶液W3が混合していない状態で)貯留する。
【0111】
後段原水ラインL41の上流側の端部は、貯水槽131の排出部に接続している。後段原水ラインL41の下流側の端部は、逆浸透膜装置43の一次側に接続している。後段原水ラインL41には、貯水槽131から排出された前段透過水W2が、逆浸透膜装置43に向けて流通する。
【0112】
殺菌剤添加ラインL23の上流側の端部は、殺菌剤貯留部24の排出部に接続している。殺菌剤添加ラインL23の下流側の端部は、接続部J1において、後段原水ラインL41に接続している。殺菌剤添加ラインL23には、殺菌剤貯留部24から排出された殺菌剤が、接続部J1に向けて流通する。
【0113】
亜硫酸塩添加ラインL33の上流側の端部は、亜硫酸塩貯留部32の排出部に接続している。亜硫酸塩添加ラインL33の下流側の端部は、接続部J2において、後段原水ラインL41に接続している。亜硫酸塩添加ラインL33には、亜硫酸塩貯留部32から排出された亜硫酸塩が、接続部J2に向けて流通する。
【0114】
pH調整剤添加ラインL34の上流側の端部は、pH調整剤添加部34の排出部に接続している。pH調整剤添加ラインL34の下流側の端部は、接続部J3において、循環ラインL3に接続している。pH調整剤添加ラインL34には、pH調整剤添加部34から排出されたpH調整剤が、接続部J3に向けて流通する。
【0115】
前段透過水加圧ポンプ46は、後段原水ラインL41に設けられ、後段原水ラインL41を流通する前段透過水W2を吸引し、下流側に向けて圧送する。
【0116】
スタティックミキサ47A,47Bは、駆動部が無い静的混合部であり、後段原水ラインL41に設けられ、後段原水ラインL41を流通する前段透過水W2を混合させる。
【0117】
後段原水ラインL41において上流側から下流側に向けて、接続部J1、前段透過水加圧ポンプ46、接続部J2、スタティックミキサ47A、接続部J3、スタティックミキサ47Bの順で配置している。スタティックミキサ47A,47Bは混合機能を有し、また、前段透過水加圧ポンプ46は、羽根車の回転運動に基づく混合機能を有する。
【0118】
従って、前述した処理工程においては、スタティックミキサ47Aは、前段透過水W2に更に亜硫酸塩を混合して反応させ、加工水W5を調製する。スタティックミキサ47Bは、前段透過水W2に更にpH調整剤を混合する。一方、前述した殺菌工程においては、前段透過水加圧ポンプ46は、前段透過水W2と殺菌剤とを混合して殺菌剤の水溶液W3を得る。
【0119】
制御装置91は、貯水槽131から取水されるアルデヒド類含有排水としての前段透過水W2に殺菌剤を添加し、所定濃度に調整された殺菌剤の水溶液を生成するように殺菌剤添加装置(殺菌剤貯留部24、殺菌剤添加ポンプ25)を制御する。
【0120】
第2実施形態においては、処理工程は、貯水槽131からアルデヒド類含有排水としての前段透過水W2を取水しながら、亜硫酸塩及びpH調整剤を添加して工程Aを実行すると共に、逆浸透膜装置43に加工水W5を送水することで工程Bを実行する。殺菌工程においては、貯水槽131から取水されるアルデヒド類含有排水としての前段透過水W2に殺菌剤を添加し、所定濃度に調整された殺菌剤の水溶液W3を生成する。
【0121】
第2実施形態においては、殺菌剤の水溶液の通液が開始される「亜硫酸塩を添加する位置の近傍」(殺菌剤添加ラインL23との接続部J1)は、貯水槽131よりも下流側の後段原水ラインL41である。殺菌剤の水溶液は、貯水槽31の内部を通液しない。また、後段原水ラインL41において殺菌剤の水溶液が通液しない領域が存在することになる。後段原水ラインL41において殺菌剤の水溶液が通液しない領域を小さくするためには、殺菌剤添加ラインL23との接続部J1は、貯水槽31の排出部に近いことが好ましい。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、本実施形態における排出源は、レトルト装置11であったが、これに制限されず、パストライズ装置、容器洗浄装置、アセプティック充填装置でもよい。
【0123】
前記実施形態は、逆浸透膜装置43よりも上流側にUF膜装置23又はMF膜装置123を備えているが、これに制限されない。例えば、UF膜装置23又はMF膜装置123によって補足可能な懸濁物質等の不純物の発生が少ない排水処理システムにおいては、UF膜装置23又はMF膜装置123は設けられていなくてもよい。