(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-226887(P2015-226887A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】電解水生成システム及び電解水生成方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/46 20060101AFI20151120BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20151120BHJP
C25B 9/00 20060101ALI20151120BHJP
C02F 1/20 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
C02F1/46 Z
C25B1/26 A
C25B9/00 F
C02F1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-114194(P2014-114194)
(22)【出願日】2014年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】311001347
【氏名又は名称】NKワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 康展
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋造
(72)【発明者】
【氏名】阿閉 祐介
【テーマコード(参考)】
4D037
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037BA23
4D037CA04
4D061DA10
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB33
4D061FA09
4K021AA01
4K021AA02
4K021AB05
4K021BA05
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】塩酸の混合を防止し、pHのばらつきを抑制することができる電解水生成システム及び電解水生成方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る電解水生成システムは、陽極及び陰極を有し、当該陽極と陰極との間に隔膜が設けられていない電解槽と、電解槽に塩酸を含む電解液を供給する供給管と、電解槽において電解処理により生成された電解生成物を、当該電解槽から排出する第1排出管と、第1排出管の先端部に取付けられ、気体と液体の混合物のうち、気体のみを通過させるように構成され、前記電解生成物に含有される塩酸を通過させず、前記電解生成物に含有される気体成分を排出可能な塩酸除去部と、前記塩酸除去部から前記気体成分を排出する第2排出管と、生成気体を被処理水に混合し、酸性電解水を生成する混合部と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極を有し、当該陽極と陰極との間に隔膜が設けられていない電解槽と、
前記電解槽に塩酸を含む電解液を供給する供給管と、
前記電解槽において電解処理により生成された電解生成物を、当該電解槽から排出する第1排出管と、
前記第1排出管の先端部に取付けられ、気体と液体の混合物のうち、気体のみを通過させるように構成され、前記電解生成物に含有される塩酸を通過させず、前記電解生成物に含有される気体成分を排出可能な塩酸除去部と、
前記塩酸除去部から前記気体成分を排出する第2排出管と、
前記気体成分を被処理水に混合し、酸性電解水を生成する混合部と、
を備えている
電解水生成システム。
【請求項2】
前記塩酸除去部は、前記第1排出管の断面積よりも大きい内部空間を有する収容体を備え、前記第2排出管は、前記内部空間の上部に連結されている、請求項1に記載の電解水生成システム。
【請求項3】
前記第1排出管は、前記収容体の内部空間の下部に連結されている、請求項2に記載の電解水生成システム。
【請求項4】
前記収容体の内部空間における塩酸の貯留部分または前記第1排出管と、前記電解槽とを連通し、前記塩酸を前記電解槽に返送する返送管をさらに備えている、請求項1から3のいずれかに記載の電解水生成システム。
【請求項5】
陽極及び陰極を有し、当該陽極と陰極との間に隔膜が設けられていない電解槽に、塩酸を含有する電解液を供給するステップと、
前記電解槽において、電解処理を行い、電解生成物を生成するステップと、
前記電解生成物を前記電解槽から排出するステップと、
前記電解生成物を、気体と液体の混合物のうち、気体のみを通過させるように構成された塩酸除去部に供給するステップと、
前記塩酸除去部において、前記電解生成物に含有される塩酸を通過させず、前記電解生成物に含有される気体成分を排出するステップと、
前記気体成分を被処理水に混合し、酸性電解水を生成するステップと、
を備えている、電解水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成システム及び電解水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生上の観点から殺菌を目的とした、種々の電解水の生成方法が提案されている。例えば、特許文献1では、陰極と陽極とが収容された電解槽に、塩酸を含む電解水を供給し、電解処理により酸性の電解水を生成する装置が提案されている。この装置は、陽極と陰極との間に隔膜を有しない、いわゆる一室型の電解槽を採用したものであり、塩酸、塩素などが電解処理液として排出される。また、特許文献1のように、電解処理液を直接殺菌水として利用するほか、電解槽から排出された電解処理液を,水道水などに混合して電解水を生成する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−128336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電解処理液を水道水に混合する場合には、次のような問題がある。すなわち、上記のような一室型の電解槽からは、電解水の生成に必要な塩素のほか、塩酸も排出される。したがって、水道水には塩酸が混合されるため、生成される電解水のpHがばらつき、所望のpHの電解水を得るのが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、塩酸の混合を防止し、pHのばらつきを抑制することができる電解水生成システム及び電解水生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電解水生成システムは、陽極及び陰極を有し、当該陽極と陰極との間に隔膜が設けられていない電解槽と、前記電解槽に塩酸を含む電解液を供給する供給管と、前記電解槽において電解処理により生成された電解生成物を、当該電解槽から排出する第1排出管と、前記第1排出管の先端部に取付けられ、気体と液体の混合物のうち、気体のみを通過させるように構成され、前記電解生成物に含有される塩酸を通過させず、前記電解生成物に含有される気体成分を排出可能な塩酸除去部と、前記塩酸除去部から前記気体成分を排出する第2排出管と、前記気体成分を被処理水に混合し、酸性電解水を生成する混合部と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、電解槽で生成された電解生成物が塩酸除去部に送られた後、塩酸を除去するように構成されている。そして、電解生成物から塩酸が除去された生成気体が、混合部において被処理水と混合されることにより、酸性電解液が生成される。ここで、本発明のような一室型の電解槽では、電解処理により、例えば、塩酸のほか、例えば、塩素及び水素などを含有した電解生成物が生成されるため、これが第1排出管を介して塩酸除去部に送られる。そして、塩酸除去部では、電解生成物に含有される液体である塩酸が貯留されるため、その他の気体成分は第2排出管から排出される。したがって、混合部において塩酸が被処理水に混合されるのを防止することができる。その結果、生成された酸性電解水のpHのばらつきを抑制することができる
【0008】
上記塩酸除去部は、種々の構成にすることができるが、例えば、前記第1排出管の断面積よりも大きい内部空間を有する収容体を備え、前記第2排出管を、前記内部空間の上部に連結したものとすることができる。この構成によれば、電解生成物が収容体の内部空間に入ると、液体である塩酸が内部空間の下部に貯留され、その他の気体成分は、内部空間の上部に連結された第2排出管から排出される。したがって、混合部において塩酸が被処理水に混合されるのを確実に防止することができる。
【0009】
上記電解水生成システムにおいて、前記第1排出管は、前記収容体の内部空間の下部に連結することができる。これにより、内部空間の下部に電解生成物の塩酸が溜まりやすくなり、電解生成物に含まれた気体成分は、泡として内部空間の上部に上がり、第2排出管から排出される。したがって、電解生成物から塩酸を分離しやすくなる。
【0010】
上記電解水生成システムにおいては、前記収容体の内部空間における塩酸の貯留部分または前記第1排出管と、前記電解槽とを連通し、前記塩酸を前記電解槽に返送する返送管をさらに備えることができる。
【0011】
このようにすると、塩酸除去部の内部空間に貯留された塩酸または第1排出管にある電解槽に戻すことができるため、この塩酸を電解槽における電解処理に再度用いることができる。したがって、塩酸の効率的な利用が可能となる。
【0012】
本発明に係る電解水生成方法は、陽極及び陰極を有し、当該陽極と陰極との間に隔膜が設けられていない電解槽に、塩酸を含有する電解液を供給するステップと、前記電解槽において、電解処理を行い、電解生成物を生成するステップと、前記電解生成水を前記電解槽から排出するステップと、前記電解生成物を、気体と液体の混合物のうち、気体のみを通過させるように構成された塩酸除去部に供給するステップと、前記塩酸除去部において、前記電解生成物に含有される塩酸を通過させず、前記電解生成物に含有される気体成分を排出するステップと、前記気体成分を被処理水に混合し、酸性電解水を生成するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塩酸の混合を防止し、pHのばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電解水生成システムの概略構成図である。
【
図4】
図1の電解水生成システムの他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.電解水生成システムの概要>
以下、本発明に係る電解水生成システムの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
まず、この電解水生成システムの概略構成について、図面を参照しつつ説明する。
図1はこの電解水生成システムの概略構成図である。同図に示すように、このシステムは、電極を含む電解槽1を備えている。この電解槽1には、塩酸を含む電解液が供給管2により供給され、この電解液を電解槽1で電解処理することで、塩酸、塩素、及び水素を含有する電解生成物が生成される。そして、この電解生成物は、電解槽1に接続された第1排出管3により外部に排出される。第1排出管3は、塩酸除去部4に接続され、この塩酸除去部4を通過し、電解生成物から抽出された塩素及び水素が第2排出管5を介して、水エジェクタ6に供給される。また、水エジェクタ6には、水道水が供給され、第2排出管5から供給された塩素及び水素が混合されることで、酸性電解水が生成され、水エジェクタ6から排出される。以下、このシステムを構成する各部材について、詳細に説明する。
【0017】
はじめに、電解槽1について説明する。
図2は電解槽の分解図、
図3は電解槽の断面図である。
図2及び
図3に示すように、この電解槽1は、第1及び第2支持ブロック11,12を備えており、これらが組み合わされることで形成された内部空間13に、電極及び電解液が収容される。より詳細には、以下の通りである。
【0018】
第1支持ブロック11は、正方形状に形成された一対の面が対向する直方体状に形成されている。以下では、一方の正方形状の面のうち、第2支持ブロック12と対向する面を内面111、それとは反対側の面を外面112と称することとする。また、この名称は、第2支持ブロック12においても同じである。第1支持ブロック11と第2支持ブロック12とは概ね同様の構成であるため、以下では、第1支持ブロック11について、詳細に説明し、第2支持ブロック12については、相違点のみ説明する。
【0019】
第1支持ブロック11の内面111には、円形の第1凹部113が形成されており、この第1凹部113の底面にさらに矩形状の第2凹部114が形成されている。また、第1凹部113の底面、及び第2凹部114の底面には、第1貫通孔115,及び第2貫通孔116がそれぞれ形成されており、内面111側と外面112側とを連通するようになっている。なお、第1貫通孔115は、第2凹部114の下側に形成されている。
【0020】
また、第1凹部113の外周縁には、円形の溝117が形成されており、この溝117にOリング19が配置される。第2凹部114には、板状の陽極14が嵌め込まれ、この陽極14には外面から第2貫通孔116に挿入された導線141が接続されている。そして、第2凹部114に嵌め込まれる陽極14の表面、つまり第2支持ブロック12を向く面は、第1支持ブロック11の内面111よりも深い位置にある。また、第1貫通孔115には、上述した供給管2が連結されている。
【0021】
第2支持ブロック12も第1支持ブロック11と同様に形成されており、相違点は、以下の通りである。まず、第2支持ブロック12の第1凹部123には、第2凹部124の上側に第1排出管3が連結される第1貫通孔125が形成されている。また、第2凹部124には、板状の陰極15が収容され、この陰極15には外面122から第2貫通孔126に挿入された導線151が接続されている。また、第1支持ブロック11と同様に、第2凹部124に嵌め込まれる陰極15の表面、つまり第1支持ブロック11を向く面は、第2支持ブロック12の内面121よりも深い位置にある。
【0022】
以上のように構成された第1及び第2支持ブロック11,12は、内面111,121同士が接触するように配置され、第1凹部113,123の外側に形成された複数の第3貫通孔118,128に挿通されるボルト17とナット16によって互いに固定される。そして、
図3に示すように、各支持ブロック11,12に形成された第1凹部113,123が組み合わされることで、電解槽1に内部空間13が形成される。このとき、各第1凹部113,123の外周に形成された溝117,127に、上述したガスケット19が配置されるため、このガスケット19により、内部空間13は液密に保持される。また、上述したように、陽極14及び陰極15の表面は、それぞれ、第1支持ブロック11及び第2支持ブロック12の内面よりも深い位置にあるため、内部空間13においては、陽極14と陰極15との間には隙間が形成される。そして、第1支持ブロック11の第1貫通孔115に連結された供給管2からは、内部空間13に電解液が供給される。一方、第2支持ブロック12の第1貫通孔125に連結された第1排出管3からは、内部空間13で生成された電解生成物が排出される。
【0023】
なお、電極14,15を構成する材料は、特には限定されず、公知の材料が用いられる。こうして、上記電解槽1は、いわゆる一室型の電解槽として電解処理に用いられる。
【0024】
次に、塩酸除去部4について説明する。塩酸除去部4は、内部空間411を有する直方体状の容器(収容体)41を備えており、この容器41の下面に上述した第1排出管3が連結され、容器41の内部空間411に電解槽1から排出された電解生成物が供給される。一方、容器41の上面には、上述した第2排出管5が連結されており、内部空間411に連通している。
【0025】
内部空間411は、第1排出管3の断面積よりも大きい断面積を有するものであり、後述するように、塩酸が貯留するスペースを有している。なお、内部空間411の断面積とは、内部空間411の平面視の断面積であり、
図1に示すように、第1排出管3が連結されている部分における断面積であるほか、例えば、内部空間が漏斗状に形成される場合のように、いずれかの部分で平面視の断面積が第1排出管3よりも大きければよい。
【0026】
次に、水エジェクタ6について説明する。水エジェクタ6は、公知のものを用いることができ、高圧の液体を供給することで、低圧の気体を吸引し、液体が混合された気体を排出するものである。
図1に示すように、本実施形態に係る水エジェクタ6は、水道水が通過する主管61と、この主管61の外周面に対し垂直に連結された連結管62とを備えている。そして、主管61の一端部の供給孔611から水道水が高圧で供給されるとともに、連結管62には、上述した第2排出管5が連結されている。
【0027】
<2.電解水生成システムの動作>
次に、上記のように構成されたシステムの動作について説明する。まず、陽極14及び陰極15に通電する。続いて、供給管2から電解槽1へ電解液を供給する。ここで用いられる電解液は、例えば、2〜6%の濃度の希塩酸とすることができる。
【0028】
こうして、電解液が電解槽1に供給されると、電解槽1の内部空間13において電解処理が行われる。具体的には、陽極14及び陰極15において以下の反応が生じ、塩酸、塩素、及び水素を含む電解生成物が生成される。なお、塩素は次亜塩素酸が水中で分解することで発生する。
2HCl+H
2O → HClO+HCl+H
2
【0029】
こうして、生成された電解生成物は、第2支持ブロック12の第1貫通孔125から第1排出管3へ排出され、塩酸除去部4へ供給される。そして、塩酸除去部4の容器41内には、下方から、液体である塩酸、気体である塩素及び水素が供給される。このとき、液体である塩酸は、容器41の下部に貯まっていく。そして、この容器41内に貯留されている間は、容器41の上方に連結された第2排出管5側へは排出されない。一方、気体成分である塩素と水素は、塩酸を通過して容器41の上部から第2排出管5へと排出される。したがって、この塩酸除去部4においては、電解生成物から塩酸が除去され、塩素と水素が第2排出管5へ排出される。
【0030】
こうして、塩素が除去された後の塩素と水素を含有する気体(気体成分)は、第2排出管5を通じてエジェクタ6に供給される。ここで、エジェクタ6の主管61には水道水が圧送されているため、主管61には連結管62から塩素と水素が吸引され、水道水に混合される。そして、塩素と水素が混合された水道水は、酸性電解水としてエジェクタの主管61の排出孔612から排出される。
【0031】
<3.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、塩酸除去部4には、電解槽1から排出された電解生成物のうち、液体である塩酸が貯まるため、容器41の上部に連結された第2排出管5へは塩酸は排出されない。そのため、第2排出管5へは気体である塩素と水素が排出され、これらの気体がエジェクタ6において水道水と混合される。したがって、エジェクタ6において塩酸が水道水に混合されるのを防止することができる。その結果、生成された酸性電解水のpHのばらつきを抑制することができる
【0032】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0033】
<4−1>
例えば、上記実施形態では、塩酸除去部4において、塩酸を貯留しているが、この塩酸を電解槽1に戻すことができる。例えば、
図4に示すように、塩酸除去部4の容器41において、塩酸が貯留されている部分、つまり容器41の下部と、電解槽1の内部空間13とを連結する返送管9を設けることができる。このとき、返送管9を介して塩酸を電解槽1に戻すためには、種々の方法があるが、例えば、塩酸除去部4を電解槽1よりも上方に配置し、塩酸除去部4内の塩酸を自重により電解槽1に戻すことができる。この場合、返送管9には逆止弁が設けられることが好ましい。あるいは、返送管9にポンプを設け、このポンプを駆動することで、塩酸除去部4から電解槽1へ塩酸を戻すこともできる。
【0034】
<4−2>
電解槽1の構成は、特には限定されず、塩酸を含有する電解液によって電解処理を行うことができる一室型の電解槽であれば、本発明に適用することができる。
【0035】
<4−3>
また、上記実施形態では、エジェクタ6を用いて気体と水道水とを混合しているが、これに限定されるものではなく、気体と液体とを混合できる装置を用いればよい。また、気体を混合する媒体として、水道水を用いているが、電解水用に準備された水道水以外の水であってもよい。
【0036】
<4−4>
塩酸除去部4の構成は、上記実施形態に限定されず、少なくとも第1排出管3の断面積よりも大きい内部空間を有する容器であればよく、使用中に、塩酸が上部の第2排出管5から排出されない程度の容積を有していれば、その形状、材質などは特には限定されない。例えば、直方体のほか、漏斗状、球状、多角柱状、円錐状、多角錐状など、種々の形状にすることができる。
【0037】
このほか、本発明の塩酸除去部は、液体及び気体のうち、液体を通過させず、気体を排出可能に構成することで、液体である塩酸を通過させないように構成されていればよい。例えば、収容体を設けず、第1排出管3の先端部に気体のみが通過可能な膜を設け、これを塩酸除去部とすることもできる。これにより、気体である塩素や水素のみが第2排出管を介して水エジェクタに供給される。このとき、第1排出管と膜との連結部分の近傍に上述した返送管を設ければ、塩酸が第1排出管に貯まるのを防止できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明に係る実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0039】
以下の実施例においては、
図1〜
図3で示したシステムを用いて酸性電解水を生成した。また、比較例として、実施例のシステムから塩酸除去部を取り外したシステムを用いた。その他の構成において、実施例と比較例とは同じである。
【0040】
システムの構成は、以下の通りである。
・陽極及び陰極 5cm×5cmの板材
・陽極と陰極との距離 2mm
・陽極と陰極に対する電気の設定 電圧1.94V,電流5A
・水道水の流量 2L/min
・電解液である希塩酸の濃度 6%
・第1排出管の内径 4mm
・第2排出管の内径 4mm
・塩酸除去具の容器の形状 内部空間が縦42mm,横42mm,高さ50mmの直方体
・供給管から電解槽へ電解液を供給するためのポンプ吐出量 1.28mL/min
【0041】
以上の構成のシステムを用い、エジェクタから排出される酸性電解水を電解処理の開始から、5秒おきに採取し、水温、pH,有効塩素濃度を測定した。結果は、以下の通りである。
【表1】
【0042】
表1によれば、実施例に係るシステムでは、pH及び有効塩素濃度がとも一定であるが、比較例は、pH及び有効塩素濃度がともにばらついており、特に、pHについては最大値と最小値との差が、3.19にも広がっている。したがって、実施例に係るシステムでは、塩酸除去部が有効に作用し、生成された酸性電解水のpHが安定していることが分かった。
【符号の説明】
【0043】
1 電解槽
3 第1排出管
4 塩酸除去部
41 容器(収容体)
411 内部空間
5 第2排出管
6 エジェクタ(混合部)