は各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子を示し、a、b、d、eは各々独立して0又は1〜4の整数を示し、cは0又は1〜8の整数を示し、a、b、c、d、eが2以上のとき、R
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の芳香族ジアミン化合物について詳細に説明する。
本発明の、上記一般式(1)で表される芳香族ジアミン化合物において、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子である。
これらの基における炭素原子数1〜8のアルキル基としては、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基又は、炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。
このようなアルキル基として具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等の直鎖状又は分岐鎖状飽和アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状飽和アルキル基を挙げることができる。
このようなアルキル基には、本発明の効果を妨げない範囲においてハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基等が置換していてもよい。
【0008】
また、これらの基における炭素原子数1〜8のアルコキシ基としては、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基又は炭素原子数5〜6のシクロアルコキシ基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基である。
このようなアルコキシ基としては、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、s−ブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、シクロペンチルオキシ基又はシクロヘキシルオキシ基等のシクロアルコキシ基を挙げることができる。
このようなアルコキシ基には、本発明の効果を妨げない範囲においてハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基等が置換していてもよい。
【0009】
また、これらの基におけるフェニル基としては、置換基がないフェニル基が好ましい。しかしながらフェニル基には本発明の効果を妨げない範囲においてメチル基等のアルキル基、メトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換していてもよい。
【0010】
また、これらの基におけるハロゲン原子としては、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0011】
上記一般式(1)の化合物において、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びアミノ基の好ましい置換位置として、まずR
1、R
2の置換位置としては、オキシ基に対しオルソ位に置換することが好ましい。また、メタ位に置換する場合は、置換基としてはメチル基またはメトキシ基が好ましく、メタ位の少なくとも1つの炭素原子は置換しないことが好ましい。
R
3の置換位置としては、シクロヘキサン−1,3−ジイル基の4位及び/または5位の炭素原子が好ましい。また、2位の炭素原子には置換しないか又は置換基は一つであることが好ましく、2位及び6位の炭素原子にそれぞれ同時に2つ置換することはなく、オキシフェニル基の結合している炭素原子には置換しない。R
4、R
5の置換位置としては、アミノ基に対しオルソ位又はメタ位が好ましい。
アミノ基の置換位置としては、オキシ基に対しメタ位又はパラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
また、上記一般式(1)において、式中、a、b、c、d、eで示される置換基の数としては、a、b、d、eは0又は1〜4であり、好ましくは0又は1〜2であり、より好ましくは0又は1である。cは0又は1〜8であり、好ましくは0又は1〜2であり、より好ましくは0である。
【0012】
従って、本発明の芳香族ジアミン化合物の中でも、好ましい化合物は下記一般式(2)で表される。
(式中、R
6、R
7、R
8は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子を示す。)
R
6、R
7、R
8における炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基及びハロゲン原子の具体例及び好ましい例は、R
1、R
2のそれと同じである。
【0013】
上記一般式(1)で表される本発明の芳香族ジアミン化合物においては、中央のシクロヘキサン骨格において、下記一般式(1a)又は一般式(1b)で表される立体異性体(シス体、トランス体)が存在する。
従って、上記一般式(1)で表される本発明の芳香族ジアミン化合物は、 一般式(1a)又は一般式(1b)で表される立体異性体の混合物であっても良いし、一方の立体異性体のみを分別単離したものであってもよい。
【0014】
このような本発明の芳香族ジアミンとしては、具体的には例えば、
1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)−3−フェニルフェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)−2,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)−3−メトキシフェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(3−アミノフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン、
1,3−ビス(4−(2−アミノフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン
等が挙げられる。
【0015】
本発明の芳香族ジアミン化合物の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、目的ジアミン化合物に対応する下記一般式(3)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物を炭酸アルカリ金属塩等の塩基の存在下、有機溶媒中、下記一般式(4)で表される芳香族ハロニトロ化合物と縮合させることにより対応するジニトロ化合物を得る第一工程及びこれにより得られたジニトロ化合物を有機溶媒中で接触水素化還元する第二工程を経て、対応する芳香族ジアミン化合物を得る方法が挙げられる。
(式中、R
1、R
2、R
3、a、b、cは一般式(1)のそれと同じである。)
(式中、R
4、dは一般式(1)のそれと同じである。)
【0016】
下記に1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンと4−クロロニトロベンゼンを原料とする上記製造方法の反応式を例示する。
【0017】
上記製造方法において、一般式(3)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物としては、式中、R
1、R
2、R
3、a、b、cは一般式(1)のそれと同じであり、好ましいR
1、R
2、R
3、a、b、cも同様である。
従って本発明の好ましい芳香族ジアミンに対応して、具体的には例えば、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、 1,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、 1,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、これらはシス体でもトランス体でもよく、シス体とトランス体の異性体混合物であっても良い。
1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンがシス体又はトランス体の場合、これを原料として得られる本発明の芳香族ジアミンは、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンがシス体の場合はシス体として、トランス体の場合はトランス体として得られる。
また、本発明の芳香族ジアミンは、シス体でもトランス体でもよく、シス体とトランス体の異性体混合物であっても良いが、シス体であることが好ましい。
【0018】
また、一般式(4)で表される芳香族ハロニトロ化合物において、式中、R
4、dは一般式(1)のそれと同じであり、好ましいR
4、dも同様である。従って本発明の好ましい芳香族ジアミンに対応して、具体的には例えば、4−クロロニトロベンゼン、4−ブロモニトロベンゼン、3−クロロニトロベンゼン、3−ブロモニトロベンゼン、 2−クロロ−3−ニトロトルエン、2−クロロ−4−ニトロトルエン、2−クロロ−6−ニトロトルエン、 4−クロロ−2−ニトロトルエン、4−クロロ−3−ニトロトルエン等が挙げられる。
【0019】
一般式(3)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物と一般式(4)で表される芳香族ハロニトロ化合物と縮合させることにより対応するジニトロ化合物を得る第一工程において、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに対して、芳香族ハロニトロ化合物は2倍モル以上あればよく、後処理の煩雑さ、コスト等を考慮して、2〜3倍モルを用いて行うのが好ましい。
塩基としては、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物またはアルコキシド等であり、具体的には例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、カリウムイソプロポキシド等が挙げられる。塩基としては、これらの混合物であってもよい。これらの塩基の使用量は、原料の1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物に対して2モル以上あればよく、具体的には2〜3倍モルあれば良い。
【0020】
縮合反応においては、反応を促進するため必要に応じて触媒を用いてもよい。 触媒としては、例えば 第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、クラウンエーテルのような環状ポリエーテル、含窒素鎖状ポリエーテル、ポリエチレングリコール、そのアルキルエーテルのような相間移動触媒、 銅粉、銅塩のような銅化合物があげられる。これらは単独又は混合物として用いてもよい。
触媒の使用量は触媒の種類によって異なるので一概には言えないが、通常、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物100重量%に対して0.01〜200重量%の範囲、好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。
反応に使用する溶媒としては、例えば、 ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、 アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、 1,2−ジクロルエタン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、 ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホニウムトリアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。 これら有機溶媒は、単独又は混合物として用いることができる。
溶剤の使用量は、特に限定されないが、通常、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物に対して1〜10重量倍である。
反応温度は通常、40〜250℃の範囲であるが、好ましくは60〜180℃の範囲である。
【0021】
工程1の一般的な反応方法としては、所定量の1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物、塩基および溶剤を装入し、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物をアルカリ金属塩とした後、芳香族ハロニトロ化合物を添加して反応させるか、あるいは、あらかじめ芳香族ハロニトロ化合物を含む全原料を同時に加え、そのまま昇温して反応させるかのいずれであってもよい。また、これらに限定されるものではなく、その他の方法により適宜実施できる。反応の終点は、薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより原料の減少をみながら決定することができる。
上記縮合反応の後、得られた反応混合物は常法により反応生成物として得ることができる。例えば、水洗して、副生した塩類を除去することによって、ビスフェノール化合物と芳香族ハロニトロ化合物との縮合反応生成物、即ち、中間原料としての芳香族ニトロ化合物の粗結晶を得ることができる。この粗結晶は、必要に応じて、再結晶してもよいが、そのまま還元反応に付してもよい。
【0022】
このようにして一般式(3)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン化合物と一般式(4)で表される芳香族ハロニトロ化合物から第一工程の反応で得られた本発明に係る中間体の芳香族ジニトロ化合物は下記一般式(5)で表される。
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、a、b、c、d、eは一般式(1)のそれと同じである。)
【0023】
従って、上記一般式(5)で表される芳香族ジニトロ化合物としては、本発明の目的化合物である芳香族ジアミンに対応して、具体的には例えば、1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)−3−フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、 1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)−2,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)−3−メトキシフェニル)シクロヘキサン、 1,3−ビス(4−(3−ニトロフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−(2−ニトロフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
これらはシス体又はトランス体の異性体の混合物であっても、分離体であってもかまわない。
【0024】
本発明のジアミノ化合物は、上記第一工程によって得られた対応するジニトロ化合物を、次のニトロ基をアミノ基に還元する第二工程を経て製造することができる。このジニトロ化合物を還元する方法は特に制限はなく、ニトロ基をアミノ基に還元する公知の方法を適用できるが、工業的には接触還元が好ましい。
接触還元の場合、使用される還元触媒としては、一般に接触還元に用いられている金属触媒、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト、銅などを使用することができる。工業的には、パラジウム触媒を使用するのが好ましい。これらの触媒は、金属の状態でも使用することができるが、通常はカーボン、硫酸バリウム、シリカゲル、アルミナ、セライトなどの担体表面に担持させて用いたり、また、ニッケル、コバルト、銅などのラネー触媒としても用いられる。これらの触媒は単独または混合して用いてもよい。触媒の使用量は、特に制限はないが、原料のジニトロ化合物100重量%に対して、通常、0.1〜300重量%、好ましくは0.5〜200重量%の範囲である。
【0025】
本発明の還元反応で使用する反応溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に制限されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の脂肪族低級アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエチレングリコールのモノアルキルエーテル、 トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル、石油エーテル 又はこれらの混合物等が挙げられる。溶媒の使用量は、原料を懸濁させるか、あるいは、完全に溶解させるに足る量で十分であり、特に制限されないが、通常、ジニトロ化合物に対して1〜50重量倍である。
反応温度は、特に制限はなく、通常、20〜200℃の範囲であるが、好ましくは、20〜100℃の範囲である。反応圧力は、通常、常圧〜1MPa(ゲージ圧)、好ましくは0.1〜0.8MPa程度(ゲージ圧)である。
【0026】
工程2の一般的な反応方法としては、通常、原料ジニトロ化合物を溶媒に溶解もしくは懸濁させた状態で触媒を加え、ついで撹拌下に所定の温度で水素を導入して還元反応を行う。反応の終点は、水素吸収量あるいは薄層クロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーなどによっても決定できる。反応終了後、反応混合物から常法に従って、目的物を単離することができる。 例えば、得られた反応混合物から触媒を濾過等の手段によって除去した後、溶媒を留去する等の方法によって、反応生成物である芳香族ジアミン化合物を分別単離することができる。
また高純度の化合物が必要であれば、晶析等を行って目的物の結晶を取得してもよく、更に精製が必要であれば、必要に応じて、再結晶を1回〜複数回行ってもよいし、カラムクロマトグラフィーで分離、精製してもよい。
【0027】
また、上記一般式(3)で表される本発明の芳香族ジアミンの原料である1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類は、公知の製造方法、例えば、1,3−シクロヘキサンジオンとフェノールより合成した1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを、水素受容体を使用せずに分解反応させる方法(特開平1−168634号公報)、4−メトキシフェニルマグネシウムブロミドと2−シクロヘキセン−1−オンを反応させた後、水素化反応を行う方法(JACS,1951年,73,2377)により得られた1,3−ビス(4−ジメトキシフェニル)シクロヘキサンを脱保護する方法などにより得ることができる。
また、上記以外の方法として、2−シクロヘキセン−1−オン類又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類とフェノール類を原料とし、反応させ、得られた1,1,3−トリス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を分解反応に付し、次いで分解反応生成物を水素化反応に付す方法によっても得ることが出来る。
【0028】
以下にこの製造方法についてさらに詳しく述べる。
(式中、R
1、R
2、R
3、a、b、cは一般式(1)のそれと同じである。)
上記一般式(3)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンは下記一般式(5)で表される2−シクロヘキセン−1−オン,下記一般式(6)で表されるフェノール類を原料とし、下記の工程(1)、工程(2)、工程(3)を順次行うことにより得られる。
(式中、R
3、cは一般式(3)のそれと同じである。)
(式中、R
1、aは一般式(3)のそれと同じである。)
【0029】
工程(1):2−シクロヘキセン−1−オン類とフェノール類を酸触媒の存在下に反応させて下記一般式(7)で表される1,1,3−トリスフェノール類を得る工程
工程(2):1,1,3−トリスフェノール類を分解し下記一般式(8)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
工程(3):ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を水素化して1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを得る工程
(式中、R
1、R
3、a、cは一般式(3)のそれと同じである。)
(式中、R
1、R
3、a、cは一般式(3)のそれと同じであり、結合位置が固定されていない4−ヒドロキシフェニル基の結合位置はシクロヘキセン環の3位又は5位である。)
【0030】
工程1において、好ましい態様によれば、例えば、反応容器に所定量のフェノール類、酸触媒及び必要に応じて、助触媒、反応溶媒を仕込み、窒素気流下に撹拌しながら、所定の反応温度まで昇温した後、そこに2−シクロヘキセン−1−オン類を逐次添加していく方法が挙げられる。
反応に際し、フェノール類は2−シクロヘキセン−1−オン類に対し、通常8〜20モル倍の範囲、酸性触媒としては例えば35%塩酸の場合、2−シクロへキセン−1−オン類に対し、通常0.3〜0.6モル倍の範囲で用いられる。更に反応を促進するためにメチルメルカプタン等の助触媒を用いることができる。反応溶媒は用いてもよく、また用いなくてもよいが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ヘプタン、シクロヘキサンまたはこれらの混合溶剤が挙げられる。反応温度は、通常15〜50℃の範囲で行われる。
このような反応条件においては、反応は、原料を全て反応系内に添加して後、通常80時間程度以内で完結する。
反応終了後、得られた反応終了液から生成物の1,1,3−トリスフェノール類を分離せずに反応混合物のまま、次工程(2)の原料として用いることもできるが、好ましくは、公知の単離乃至精製方法を適宜適用し、中和、水洗等の後処理を行い、目的物を晶析または沈殿させた後、濾別して得られた1,1,3−トリスフェノール類を用いるのが好ましい。
【0031】
工程(2)において、好ましくは、1,1,3−トリスフェノール類の熱分解反応は、例えば、反応容器に1,1,3−トリスフェノール類とアルカリ触媒とテトラエチレングリコール等の溶媒を仕込み、不活性雰囲気中、温度160〜200℃、圧力1〜10kPaゲージで3〜6時間程度、分解反応によって生成したフェノール類を留去しながら、撹拌することによって行われる。
アルカリ触媒としては、特に好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等が挙げられ、1,1,3−トリスフェノール100モルに対して、0.1〜20モルの範囲で用いられ、使用形態としては、通常10〜50重量%の水溶液として用いられる。
【0032】
反応溶媒は、用いる1,1,3−トリスフェノール類100重量部に対して、通常、20〜100重量部の範囲で用いられる。例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、市販の有機熱媒体である「サームエス」(新日鉄化学(株)製)や「SK−OIL」(綜研化学(株)製)が用いられる。
このような反応条件において、1,1,3−トリスフェノール類は、好ましくは、2〜12時間程度の熱分解反応に供される。熱分解反応は、例えば、分解反応によって生成するフェノール類の留出がなくなった時点をその終点とすることができる。
熱分解反応の終了後、得られた反応混合物に酸を加えてアルカリを中和し、得られた含水油状の混合物を晶析、濾過等の精製を施すことなく、そのまま、次の工程(3)の原料に用いてもよく、また、必要に応じて、公知の方法で反応生成物を分離、精製した後、これを工程(3)の原料に使用してもよい。
【0033】
この反応では生成するビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類は通常、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類及び1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類の異性体混合物として得られる。得られる異性体混合物のモル比としては、原料の1,1,3−トリスフェノール類や反応条件などによりその比率は特定のものに限定されるものではないが、例えばシクロヘキセン−1−オンの2位や6位に置換基がなければ、通常、1,3−置換体と1,5−置換体の異性体モル比は1前後又は0.6〜1.5程度の範囲で得られる。
また、得られた1,3−置換体や1,5−置換体は不斉炭素原子を有しているので、それぞれに鏡像異性体等の光学異性体が存在し、通常光学異性体の混合物であり、どちらも工程(3)の有効な原料として用いられる。
【0034】
工程(3)において、好ましくは、工程(2)で得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセンの水素化反応は、例えば、反応容器にビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセンとパラジウム/カーボン等の水素化触媒とイソプロピルアルコール等の反応溶媒を仕込み、系内を水素ガス置換した後、温度40℃程度で反応容器内の水素圧が140kPa程度になるように調整しながら1時間程度、撹拌することによって行われる。
水素化触媒としては、例えば、酸化パラジウム、パラジウム黒、パラジウム/カーボン等のパラジウム触媒、プラチナ黒、プラチナ/カーボン等の白金触媒が好ましいものとして挙げられる。
このような水素化触媒は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類100重量部に対して、通常、0.2〜15重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常、20〜60℃の範囲である。反応溶媒としては、工程の簡略化の観点から、前記1,1,3−トリスフェノール類の熱分解反応において用いた溶媒をそのまま用いることが好ましい。また、反応は、好ましくは、常圧下で行われる。このような反応条件において、水素化反応は、通常、20分から10時間程度で終了する。
このようにして、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を水素化反応に付し、その反応終了後、得られた反応混合物から、常法に従って、触媒を分離した後、晶析濾過等の方法にて、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類の粗製品を得ることができ、これを、更に必要に応じて、再度、晶析濾過等の方法にて精製すれば、高純度品を得ることができる。
【0035】
このようにして得られた1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類は中央のシクロヘキサン骨格において、下記立体異性体(シス体・トランス体)が存在する。
従って、得られた1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類は下記一般式(9)又は一般式(10)で表される立体異性体の混合物であってもよいし、晶析等により一方の立体異性体のみに分離したものであってもよい。
【0036】
実施例1
<cis−1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサンの合成>
工程1[ cis−1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサンの合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた200ミリリットル容量4つ口フラスコに純度98.2%(高速液体クロマトグラフィー法)のcis−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン10.0g、p−ニトロクロルベンゼン12.9g、炭酸カリウム12.4g、ジメチルホルムアミド60.0gを仕込み、125〜130℃で8時間、撹拌下に反応を行なった。
反応終了後、得られた反応液を60〜80℃で濾過し、無機塩を濾別して除去した。得られた濾液にメタノールを加えて70℃まで昇温後、冷却することによって析出した結晶を濾別し、得られた結晶を乾燥して目的とするcis−1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン15.2g(高速液体クロマトグラフィー法による純度99.6%)を得た。
収率 80.0%
(対cis−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)
分子量(M−H)
− 509(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点 129℃(示差走査熱量測定法)
【0037】
工程2[ cis−1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサンの合成]
撹拌機、温度計を備えた190ml容量オートクレーブに上記で得られたcis−1,3−ビス(4−(4−ニトロフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン5.0g、ラネーニッケル0.25g、スポンジニッケル触媒R−200(日興リカ製)2.5g、スポンジニッケル触媒R−100(日興リカ製)2.5g、テトラヒドロフラン50.0gを仕込み、窒素置換後、水素を0.5MPa(ゲージ圧)まで圧入した。反応圧力0.2〜0.5MPa(ゲージ圧)、反応温度80℃を保ちながら水素の吸収が認められなくなるまで反応を継続した。
反応終了後、得られた反応混合物を冷却して触媒を濾別し、濾液から溶媒を減圧下に一部留去し、析出した結晶を濾別し、乾燥して目的とするcis−1,3−ビス(4−(4−アミノフェニルオキシ)フェニル)シクロヘキサン1.47g(高速液体クロマトグラフィー法による純度97.7%)を得た。
分子量(M+H)
+ 451(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点 193℃(示差走査熱量測定法)
1H−NMR測定(400MHz)(溶媒:DMSO−d6):表1参照