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  • 特開2015227406-カーボンブラック分散液 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227406(P2015-227406A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】カーボンブラック分散液
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20151120BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20151120BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   C09D17/00
   H01M4/62 Z
   G03F7/004 505
   G03F7/004 504
   G03F7/004 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-113228(P2014-113228)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平石 篤司
【テーマコード(参考)】
2H125
4J037
5H050
【Fターム(参考)】
2H125AC36
2H125AC54
2H125AD06
2H125AN34P
2H125AN39P
2H125AN56P
2H125AN94P
2H125AP03P
2H125BA01P
2H125BA35P
2H125CA18
2H125CB06
2H125CC01
2H125CC13
2H125CD01P
2H125CD29P
2H125CD40
4J037AA02
4J037CB07
4J037CB19
4J037CB26
4J037EE28
4J037FF11
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA10
5H050FA17
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リチウムイオン電極正極材料ペースト又はブラックレジスト組成に用いる、カーボンブラックの分散安定性が良好で、カーボンブラック以外の成分(分散剤等の添加剤)の含有量が少ないカーボンブラック分散液の提供。
【解決手段】カーボンブラック、フタロシアニン骨格を有しその側鎖にSP値が7〜13(cal/cm)1/2の有機溶媒との相溶性に優れたポリオキシアルキレン基を有する分散剤、及びSP値が7〜13(cal/cm)1/2の有機溶媒を含有するカーボンブラック分散液。前記カーボンブラックの平均一次粒子径が5〜50nmであり、前記カーボンブラック分散液中の前記分散剤の含有量は、前記カーボンブラック分散液中のカーボンブラックを100質量部とすると、1〜50質量部であるカーボンブラック分散液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック、下記式(1)で表わされる分散剤、及びSP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒を含有するカーボンブラック分散液。
【化1】
式(1)中、Mは、無金属(水素)、金属、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属酸化物のいずれかである。
式(1)中、R1〜8はそれぞれ独立に芳香環のいずれかの位置に共有結合された、水素原子又は下記式(2)で表わされる官能基であり、R1〜8のうち少なくとも1つは下記式(2)である。
【化2】
式(2)中、R9とR10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜50の正の数である。
【請求項2】
前記カーボンブラックの平均一次粒子径が5nm以上50nm以下である請求項1記載のカーボンブラック分散液。
【請求項3】
前記カーボンブラック分散液中の前記分散剤の含有量は、前記カーボンブラック分散液中のカーボンブラックを100質量部とすると、1質量部以上50質量部以下である請求項1又は2に記載のカーボンブラック分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のカーボンブラック分散液とリチウム活物質とを含むリチウムイオン電池用正極材料ペースト。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの項に記載のカーボンブラック分散液とアルカリ可溶性樹脂とを含むブラックレジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック分散液、これを用いたリチウムイオン電池正極材料ペースト又はブラックレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは黒色であることだけでなく、導電性や光隠ぺい性等の特徴的な物性を有することから、電子材料や情報材料の原材料として広く利用されている。これらの用途では、カーボンブラックは、樹脂中に分散された状態、又は所望の基材上に薄膜状に積層された状態で使用されることが多い。そしてこのような状態を得るためにカーボンブラック分散液が一般的に用いられている。
【0003】
カーボンブラックは、ほぼ炭素のみで形成された微小な粒子であり、数nm〜数十nmの一次粒子が不規則にアグリゲートしたいわゆる「ストラクチャ」という構造を形成しているために、非常に表面積が大きく凝集性が強いので、安定な分散液を得るためには分散剤を添加する。
【0004】
しかし、前記用途では、分散剤が物性の阻害因子になることが懸念される。例えば、リチウムイオン電池の正極材料では、分散剤が電気抵抗になったり、未吸着の分散剤がリチウムイオンの移動を阻害することが懸念される。例えば、液晶パネル等で使用されるブラックレジスト組成物では、分散剤の添加量が多いために隠ぺい性が不足したり、未吸着の分散剤が現像性の悪化やベイク時の熱分解による欠陥発生を引き起こすことが懸念される。
【0005】
また、これらの用途で、カーボンブラックの分散性を困難にしている理由として、非水系の有機溶媒が使用されることが多いために、水系分散剤のアニオン又はカチオンに依拠した静電的な分散効果を期待できず、分散剤の分子設計にも制約があることが挙げられる。そのために、従来から、カーボンブラックの表面を酸化やカップリング等の化学修飾により、分散媒及び分散剤とカーボンブラックとの親和性を高めたり、新たな分散剤を開発する等して、分散剤の添加量の低減が試みられてきた。
【0006】
前記試みの例として、特許文献1には、ブラックマトリックスレジスト用の感光性黒色樹脂組成物用のカーボンブラックとして、1分子中にイソシアネート基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で処理された改質カーボンブラックが開示されている。特許文献2には、アントラキノニルアミノ基とトリアジン基を分子内に有するカーボンブラック顔料用の分散剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−371204
【特許文献2】特開2001−172530
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カーボンブラックの更なる表面修飾は、導電性の低下の問題や反応残渣等の混入の問題を引き起こすというデメリットがある。故に、カーボンブラック以外の成分(分散剤等の添加剤)の含有量が少ないカーボンブラック分散液が依然として熱望されている。また、特許文献2に記載の分散剤による分散性も、今後のさらなる高性能化、高精細化を鑑みれば決して十分なレベルとは言えない。
【0009】
本発明の一態様はかかる状況を鑑みてなされたものであり、カーボンブラックの更なる表面修飾を行わずしても、分散安定性が良好な、カーボンブラック以外の成分(分散剤等の添加剤)の含有量が少ないカーボンブラック分散液を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、カーボンブラック(成分A)、下記式(1)で表わされる分散剤(成分B)、及びSP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒を含む有機溶媒(成分C)を含有するカーボンブラック分散液である。
【化1】
式(1)中、Mは、無金属(水素)、金属、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属酸化物のいずれかである。
式(1)中、R1〜8はそれぞれ独立に芳香環のいずれかの位置に共有結合された、水素原子又は下記式(2)で表わされる官能基であり、R1〜8のうち少なくとも1つは下記式(2)で表わされる官能基である。
【化2】
式(2)中、R9とR10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基であり、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜50の正の数である。
【0011】
本発明は、その他の態様として、本開示にかかるカーボンブラック分散液とリチウム活物質とを含むリチウムイオン電池正極材料ペーストに関する。
【0012】
本発明は、その他の態様として、本開示にかかるカーボンブラック分散液とアルカリ可溶性樹脂とを含むブラックレジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、カーボンブラック分散液が、分散剤として上記式(1)で表わされる分散剤を含み、SP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒を含むことにより、従来のカーボンブラック分散液よりも分散剤の添加量が少なくても、カーボンブラックの分散安定性が良好という効果が奏される。また、本発明のカーボンブラック分散液では、分散剤の有機溶媒への親和性が良好であるだけでなく、分散剤がカーボンブラックに対して強い吸着性を示すため、本発明のカーボンブラック分散液を、リチウムイオン電池用正極材料ペーストやブラックレジスト組成物等の調製に用いた場合、塗膜形成性の向上及び/又は未吸着分散剤の存在によって引き起こされる悪影響の低減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径と分散剤の添加量との相関関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は上記課題に対して鋭意検討の結果、SP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒中に、少なくともカーボンブラック及び分散剤として下記式(1)で表わされるフタロシアニン誘導体を含むことにより、本発明の目的に合致したカーボンブラック分散液の発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の効果発現のメカニズムの詳細は不明であるが、以下の様に推定している。ただし、本発明は、下記のメカニズムに限定されない。
【0017】
下記式(1)で表わされるフタロシアニン誘導体は、そのフタロシアニン骨格が平面構造であるために、カーボンブラック表面にあるグラファイト平面との親和性が高く、カーボンブラックに対して強い吸着性を示す。また、下記式(1)で表わされるフタロシアニン誘導体は、その側鎖にSP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒との相溶性に優れたポリオキシアルキレン基を有する。その結果、カーボンブラックの分散安定性が向上したものと推測される。また、分散剤の側鎖が非結晶性の構造であるために、フタロシアニン同士が接合して不溶性の結晶となることを抑制し、分散剤がカーボンブラック分散液製造時に有機溶媒に容易に均一に溶解できることが、カーボンブラックの分散安定性の向上に一層効果的に作用したものと考えている。尚、「カーボンブラックの分散安定性の向上」とは、カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの凝集が少なくカーボンブラックが微細に分散された状態であり、且つ、一定期間保存後のカーボンブラック分散液において、分離や凝集が起こり難いことを意味する。すなわち、カーボンブラックの凝集抑制とカーボンブラック分散液の保存安定性が達成できていることを意味する。
【0018】
本発明の一態様は、カーボンブラック(成分A)、下記式(1)で表わされる分散剤(成分B)、及びSP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒を含む有機溶媒(成分C)を含有するカーボンブラック分散液である。
【0019】
[カーボンブラック(成分A)]
本発明の一態様であるカーボンブラック分散液の調製に使用されるカーボンブラック(成分A)としては、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられ、例えば、カーボンブラック分散液をリチウムイオン電池の製造に使用する場合には、アセチレンブラック及びケッチェンブラックが好ましく、例えば、カーボンブラック分散液をブラックレジスト組成物の製造に使用する場合には、ファーネスブラックが好ましい。また、従来から公知の、シランカツプリング剤等により表面修飾されたカーボンブラック、表面が酸化されたカーボンブラックであってもよい。
【0020】
本発明の一態様であるカーボンブラック分散液の調製に使用されるカーボンブラックの平均一次粒子径は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましい。また、本発明の一態様であるカーボンブラック分散液の調製に使用されるカーボンブラックの平均一次粒子径は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。
【0021】
本発明の一態様であるカーボンブラック分散液の調製に使用されるカーボンブラックの25℃におけるpHは、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、2以上が好ましく、10以下が好ましい。
【0022】
[有機溶媒(成分C)]
本開示のカーボンブラック分散液は、分散剤の有機溶媒への親和性の観点から、有機溶媒としてSP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒(成分C)を含有する。SP値はSolubility Parameter(溶解度パラメータ)のことであり、SP値(δ)は、下記の(3)式のように凝集エネルギー密度の平方根で定義される。
δ=(ΔE/V)1/2 (3)
ここで、Vは溶媒のモル体積、ΔEは凝集エネルギーである。
具体的な数値はC.M.Hansen: J. Paint Tech., 39〔505〕,104-117(1967)に記載されており、記載のないものについては、簡易的にはFedorsの推算法が使用される。(R.F.Fedors: Polym. Eng. Sci., 14〔2〕, 147-154(1974))
【0023】
本発明の一態様であるカーボンブラック分散液の調製に使用される有機溶媒のSP値は、分散剤の有機溶媒中への親和性の観点から、7(cal/cm)1/2以上であるが、8(cal/cm)1/2以上が好ましく、8.5(cal/cm)1/2以上がより好ましい。また、SP値は、分散剤の有機溶媒中への親和性の観点から、13(cal/cm)1/2以下であり、12(cal/cm)1/2以下が好ましく、11.5(cal/cm)1/2以下がより好ましい。
【0024】
SP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒としては、例えば、メチルシクロヘキサン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上混合して使用してもよい。これらの有機溶媒の中でも、分散剤の有機溶媒中への親和性の観点から、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、エチレングリコールジアセテート、N-メチルピロリドン、及び2-プロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒が好ましく、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、及びN-メチルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒がより好ましく、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒が更に好ましい。有機溶媒(成分C)の含有量については特に制限はなく、カーボンブラック分散液に含まれる他の成分の残余である。
【0025】
本発明の有機溶媒(成分C)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、SP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒以外の有機溶媒を含んでいても良いが、SP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒の量は、分散剤の有機溶媒中への親和性の観点から、有機溶媒(成分C)中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは実質的に100質量%、よりさらに好ましくは100質量%である。
【0026】
[分散剤(成分B)]
本発明の一態様であるカーボンブラック分散液の調製に使用される分散剤(成分B)は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、下記式(1)で表わされる分散剤を含む。
【化3】
【0027】
前記式(1)中、Mは、無金属(水素)、金属、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属酸化物のいずれかである。無金属(水素)とは、2個の水素原子であることを意味する。
【0028】
前記式(1)中、Mは、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、好ましくは無金属(水素)、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、ケイ素、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、パラジウム、スズ、インジウム、鉛、チタン、ルビジウム、バナジウム、ガリウム、テルビウム、セリウム、ランタン、亜鉛、及びこれらのハロゲン化物、水酸化物、酸化物であり、より好ましくは無金属(水素)、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、スズ、亜鉛及びこれらのハロゲン化物であり、更に好ましくは無金属(水素)又は銅である。
【0029】
式(1)中、R1〜8はそれぞれ独立に芳香環のいずれかの位置に共有結合された、水素原子又は式(2)で表わされる官能基であり、R1〜8のうち少なくとも1つは式(2)で表わされる官能基である。
【化4】
【0030】
カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、式(1)中、R1〜8のうちR1、R3、R5、R7が水素原子であることが好ましい。
【0031】
カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、R2、R4、R6、R8は水素原子又は式(2)で表わされる官能基であることが好ましく、置換基4つ(R2、R4、R6、R8)のうち、式(2)で表わされる官能基が、2つ以上であることがより好ましく、3つ以上であることが更に好ましく、4つ全てであることが更により好ましい。
【0032】
R2、R4、R6、R8は全てフタロシアニン構造のβ位(外側)であることが好ましい。
【0033】
式(2)で表わされる官能基中のR9とR10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であるが、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、少なくともいずれか一方が水素原子であることが好ましい。即ち、式(2)の構造の中で下記式(3)で表わされる官能基は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、これら両方のブロック付加物若しくはランダム付加物、ポリオキシエチレン基、又はポリオキシプロピレン基であると好ましい。
【化5】
【0034】
また、式(3)で表わされる官能基がオキシプロピレン基を含む場合は、オキシプロピレン基のR9とR10のいずれがメチル基でもよいし、式(3)で表わされる官能基に含まれる、全てのオキシプロピレン基のR9が水素原子でR10がメチル基であってもよく、全てのオキシプロピレン基のR9がメチル基でR10が水素原子であってもよく、一部のオキシプロピレン基のR9が水素原子でR10がメチル基であり、残りのオキシプロピレン基のR9がメチル基でR10が水素原子であってもよい。前記一部のオキシプロピレン基と前記残りのオキシプロピレン基の配列は交互でも1以上の連続を有していてもよい。
【0035】
フタロシアニン構造に式(2)で表わされる官能基を導入する際の反応性向上の観点から、ポリオキシアルキレン基中の最もフタロシアニン構造に近い位置のR9は水素原子であることが好ましい。即ち、最もフタロシアニン構造に近いオキシアルキレン基は、R9、R10が共に水素原子であるオキシエチレン基であるか、又はR9が水素原子でR10がメチル基であるオキシプロピレン基であることが好ましい。
【0036】
式(2)中のR11は、水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基であるが、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基が更に好ましく、メチル基が更により好ましい。
【0037】
式(2)及び(3)中のnは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜50の正の数であるが、好ましくは1〜30であり、より好ましくは5〜20であり、更に好ましくは5〜15である。
【0038】
[分散剤の合成]
フタロシアニン誘導体の合成方法は多数の文献に記載されており、脱離基や反応性官能基を有するフタロシアニンに置換や付加を行い、所望のフタロシアニン誘導体を合成することも可能であるが、原料として、無水フタル酸誘導体、フタルイミド誘導体又はフタロニトリル誘導体を用いて常法により4量化するのが一般的であり、反応の簡便さから、ニトロ基等の脱離基を有するフタロニトリルにエーテルアルコールを導入したのち、4量化する方法が好ましい。例えば、式(2)で表わされる官能基を0〜2個有するフタロニトリル誘導体の4量化反応によって、式(1)中のR1〜8のうち少なくとも1つが式(2)で表わされる官能基であり残りの0〜7つが水素原子であるフタロシアニン誘導体が得られる。また、例えば、式(1)中のR1〜8全てが式(2)で表わされる官能基である場合は、式(2)で表わされる官能基を2つ有するフタロニトリル誘導体を原料とすれば良く、式(1)中のR1、3、5、7が水素原子で、R2、4、6、8が式(2)で表わされる官能基である場合は、式(2)を1つ有するフタロニトリル誘導体を原料とすれば良い。また、式(2)で表わされる官能基を1つ有するフタロニトリル誘導体を1〜3つと、フタロニトリル(式(2)で表わされる官能基を有していない)を3〜1つとを混合して4量化することで、式(1)中のR1、3、5、7が水素原子で、R2、4、6、8のうちの平均1〜3つが式(2)であるフタロシアニン誘導体が得られる。
【0039】
式(2)中のR11が水素原子のときの、式(2)で表わされる官能基の導入は、水酸基を有する無水フタル酸、水酸基を有するフタルイミド、又は水酸基を有するフタロニトリルに、アルキレンオキシドを開環付加させることにより行ってもよいし、ポリアルキレングリコールを、脱離基を有する無水フタル酸、脱離基を有するフタルイミド、又は脱離基を有するフタロニトリルと反応させることにより行ってもよい。
【0040】
式(2)中のR11が炭素数1〜24の炭化水素基のときのポリオキシアルキレンの導入は、水酸基を有する無水フタル酸、水酸基を有するフタルイミド、又は水酸基を有するフタロニトリルに、アルキレンオキシドを開環付加させたのち、末端水酸基アルキルエーテル化することによって行ってもよいし、予めアルキルアルコールにアルキレンオキシドを開環付加させたエーテルアルコールを合成し、これを、脱離基を有する無水フタル酸、脱離基を有するフタルイミド、又は脱離基を有するフタロニトリルと反応させることによって行ってもよく、合成の簡便さの観点から、後者の方法が好ましい。前記エーテルアルコールを合成する方法は、アルキレンオキシドを開環付加させる従来公知の技術を用いることが出来る。例えば、特公昭48−19560号公報に開示されているように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を触媒とする方法、特開平3−47832号公報に開示されているようにアミン触媒を用いる方法、特開平1−164437号公報に開示されているように酸化マグネシウム‐アルミニウム系触媒を用いる方法、特開2000−344881号公報に開示されているようにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のホウ素系触媒を使用する方法等が挙げられる。
【0041】
[カーボンブラック分散液]
カーボンブラック分散液は、カーボンブラック(成分A)、前記式(1)で表わされる分散剤(成分B)、及びSP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒を含む有機溶媒(成分C)を含むが、必要に応じて、他の炭素材料、無機フィラー、バインダー樹脂、活物質、アルカリ可溶性樹脂、粘性調整剤、その他の添加剤を含んでいてもよい。カーボンブラック分散液中の成分A〜成分C以外の成分の含有量について特に制限はないが、通常、0質量%以上60質量%以下であると好ましい。
【0042】
カーボンブラック分散液中のカーボンブラック(成分A)の含有量はカーボンブラックの分散安定性向上の観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの含有量は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0043】
カーボンブラック分散液中の前記式(1)で表わされる分散剤(成分B)の含有量は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.7質量%以上が更に好ましい。また、カーボンブラック分散液中の前記式(1)で表わされる分散剤の含有量は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
カーボンブラック(成分A)と前記式(1)で表わされる分散剤(成分B)の質量比は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、カーボンブラックを100質量部とすると、前記式(1)で表わされる分散剤(成分B)は、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。また、カーボンブラックと分散剤の質量比は、カーボンブラックの分散安定性向上、及び分散剤のカーボンブラックに対する吸着性の向上の観点から、カーボンブラックを100質量部とすると、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。
【0045】
動的光散乱法に基づいて測定されるカーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましい。また、カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下が更に好ましい。当該カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0046】
また、下記の方法により測定された「最小分散粒径」を100としたときに、動的光散乱法に基づいて測定される前記カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径は、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、50以上が好ましく、70以上がより好ましい。また、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、200以下が好ましく、170以下がより好ましく、160以下が更に好ましく、150以下が更により好ましい。
【0047】
[最小分散粒径の測定]
「最小分散粒径」とは、下記の通り、カーボンブラックを過剰量の水系界面活性剤で水に分散した際に到達できる粒径であって、目標粒径を決定する指標となる。有機溶媒中に分散されたカーボンブラックの粒径が「最小分散粒径」に近いほど、分散安定性が良好であることを示す。
【0048】
カーボンブラック 2gと界面活性剤デモールN(β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩:花王社製) 0.4gの混合物に、全量で40gとなるようにイオン交換水を加え、これらにジルコニアビーズ(ニッカトー社製、0.3mmφ) 80gを入れて、密栓し、ペイントシェイカー(浅田鉄工社製)で3時間分散処理を行う。得られた分散液を200メッシュのステンレス金網でろ過して、ジルコニアビーズをろ別除去したのち、カーボンブラック水分散液中のカーボンブラックの粒径を粒径測定器(Malvern社製Zetasizer Nano−S)を用いて測定する。測定にはGlass cubetteセルを使用し、測定用に採取したサンプルは予め光が透過する程度にイオン交換水で希釈したのち、直ちに測定を行う。測定時のパラメーターは、機器に付属の資料に掲載されているカーボンブラックの数値(屈折率1.800、吸収10.000)を使用する。
【0049】
カーボンブラック分散液は公知の分散方法により製造できる。分散に用いる分散機としては、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、ディスパー、ホモミキサー、ジェットミル、サンドミル、ビーズミル、遊星ミル、ペイントシェイカー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中でも、ビーズミルやペイントシェイカー等のメディアミルを使用する分散方法が好ましい。またその際に使用するメディアとしては、公知のメディア粒子を使用することができ、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から比重の大きいジルコニアビーズが好ましい。メディアの直径φは0.015〜5mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。
【0050】
各成分の混合順序は特に制限がなく、カーボンブラックと分散剤と有機溶媒を一括して混合してもよいし、カーボンブラックと有機溶媒の混練物に分散剤を徐々にあるいは分割して添加する方法でもよいし、分散剤と有機溶媒の混合物にカーボンブラックを徐々にあるいは分割して添加する方法でもよい。分散剤を一部又は全部の有機溶媒と混合し得られた溶液にカーボンブラックを添加する方法が、カーボンブラックの分散安定性向上の観点から、好ましい。
【0051】
カーボンブラック分散液において、汎用性を高める観点から、分散剤は、カーボンブラックに対する吸着率が高いものが好ましい。当該吸着率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、更に好ましくは80%以上であり、更により好ましくは90%以上である。当該吸着率は下記の方法により算出できる。
【0052】
[吸着率の算出]
分散剤のカーボンブラックに対する吸着率は、カーボンブラックに吸着した分散剤と未吸着の分散剤を分離し定量することで求めることができる。すなわち、カーボンブラック分散液を遠心分離し、カーボンブラック粒子を完全に沈降させることで未吸着の分散剤が上澄みの液中に残留する。この上澄みの液中に含まれる分散剤(すなわち、カーボンブラックに吸着していない未吸着分散剤)の濃度Z(質量%)を下記の乾燥減量法で測定し、以下の式に、下記X(質量%)、Y(質量%)、及びZ(質量%)を代入することにより算出できる。ただし、カーボンブラック分散液には、カーボンブラックと分散剤と有機溶媒のみが含まれているものとする。カーボンブラック、分散剤、及び有機溶媒以外の成分(他の成分)を含む態様のカーボンブラック分散液について吸着率の評価を行う場合は、他の成分を除いたカーボンブラックと分散剤と有機溶媒のみで構成された分散液を別途用意し、これを吸着率の評価に用いることとする。
【数1】
分散剤の吸着率A(%)
カーボンブラック分散液中のカーボンブラック濃度X(質量%)
カーボンブラック分散液中の全分散剤濃度Y(質量%)
上澄み中に含まれる分散剤濃度Z(質量%)
【0053】
<乾燥減量法>
上澄み中に含まれる分散剤の濃度の測定は以下の方法で行った。質量W3(g)のシャーレに試料約5gを採り、小数点以下4桁まで計測可能な電子天秤を使用して、前記試料を含んだシャーレ全体の質量W1(g)を測定した。シャーレ全体を、減圧乾燥器(アドバンテック社製VO−320、圧力約20cmHg、窒素フロー)で130℃2時間乾燥させ、乾燥後さらにデシケータで30分放冷した後、前記試料の不揮発分を含んだシャーレ全体の質量を測定し、W2(g)とした。次式より得られた値を分散剤量とした。
上澄み中に含まれる分散剤の濃度Z(質量%)=100−(W1−W2)/(W1−W3)×100
【0054】
[リチウムイオン電池用正極材料ペースト]
本開示にかかるリチウムイオン電池用正極材料ペーストの一例としては、本開示のカーボンブラック分散液とリチウム活物質とを含む。本開示にかかるリチウムイオン電池用正極材料ペーストの一例は、本開示のカーボンブラック分散液を含んでいるので、塗膜形成性の向上が期待できる。尚、「塗膜形成性の向上」とは、乾燥後の塗膜の均質性が向上することであり、例えば、乾燥後の塗膜の平滑性が向上することを意味する。
【0055】
本開示のチウムイオン電池用正極材料ペーストの調製に使用されるカーボンブラック分散液中の有機溶媒は、例えば、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0056】
本開示にかかるリチウムイオン電池用正極材料ペーストには、従来公知のリチウムイオン電池用正極材料ペーストに含まれる成分(例えば、結着剤等)が含まれていてもよい。また、本開示にかかるリチウムイオン電池用正極材料ペーストを調製する際、リチウム活物質とカーボンブラック分散液以外に、カーボンブラック分散液の調製に使用した有機溶媒と同じか又は異なる有機溶媒を更に使用してもよい。
【0057】
本開示にかかるリチウムイオン電池用正極材料ペースト中の上記式(1)で表わされる分散剤の含有量は、リチウムイオン電池用正極材料ペースト中に含まれるカーボンブラックを100質量部とすると、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。
【0058】
本開示にかかるリチウムイオン電池用正極材料ペースト中の上記式(1)で表わされる分散剤以外の各成分の含有量について特に制限はなく、従来公知のリチウムイオン電池用正極材料ペーストのそれと同様でよい。
【0059】
[ブラックレジスト組成物]
本開示にかかるブラックレジスト組成物の一例としては、本開示のカーボンブラック分散液とアルカリ可溶性樹脂とを含む。本開示にかかるブラックレジスト組成物の一例は、本開示のカーボンブラック分散液を含んでいるので、塗膜形成性の向上や、未吸着分散剤の存在によって引き起こされる悪影響の低減が期待できる。
【0060】
本開示のブラックレジスト組成物の調製に使用されるカーボンブラック分散液中の有機溶媒としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられ、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の光硬化性樹脂が挙げられる。
【0061】
本開示にかかるブラックレジスト組成物には、従来公知のブラックレジスト組成物に含まれる成分(例えば、光重合開始剤等)が含まれていてもよい。また、本開示にかかるブラックレジスト組成物を調製する際、アルカリ可溶性樹脂とカーボンブラック分散液以外に、カーボンブラック分散液の調製に使用した有機溶媒と同じか又は異なる有機溶媒を更に使用してもよい。
【0062】
本開示にかかるブラックレジスト組成物中の上記式(1)で表わされる分散剤の含有量は、ブラックレジスト組成物中に含まれるカーボンブラックを100質量部とすると、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。
【0063】
本開示にかかるブラックレジスト組成物中の上記式(1)で表わされる分散剤以外の各成分の含有量について特に制限はなく、従来公知のブラックレジスト組成物のそれと同様でよい。
【0064】
本発明は、更に以下<1>〜<19>を開示する。
【0065】
<1> カーボンブラック、下記式(1)で表わされる分散剤、及びSP値が7(cal/cm)1/2以上13(cal/cm)1/2以下の有機溶媒を含有するカーボンブラック分散液。
【化6】
式(1)中、Mは、無金属(水素)、金属、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属酸化物のいずれかである。
式(1)中、R1〜8はそれぞれ独立に芳香環のいずれかの位置に共有結合された、水素原子又は下記式(2)で表わされる官能基であり、R1〜8のうち少なくとも1つは下記式(2)である。
【化7】
式(2)中、R9とR10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基であり、nは、オキシアルキレンの平均付加モル数であり、1〜50の正の数である。
<2> 前記カーボンブラックの平均一次粒子径は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい、前記<1>に記載のカーボンブラック分散液。
<3> 前記カーボンブラック分散液の調製に使用されるカーボンブラックの25℃におけるpHは、2以上が好ましく、10以下が好ましい、前記<1>又は<2>に記載のカーボンブラック分散液。
<4> 前記SP値は、8(cal/cm)1/2以上が好ましく、8.5(cal/cm)1/2以上がより好ましく、12(cal/cm)1/2以下が好ましく、11.5(cal/cm)1/2以下がより好ましい、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<5> 前記有機溶媒は、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、エチレングリコールジアセテート、N-メチルピロリドン、及び2-プロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒が好ましく、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、及びN-メチルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒がより好ましく、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒が更に好ましい、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<6> 前記式(1)中、Mは、好ましくは無金属(水素)、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、ケイ素、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、パラジウム、スズ、インジウム、鉛、チタン、ルビジウム、バナジウム、ガリウム、テルビウム、セリウム、ランタン、亜鉛、及びこれらのハロゲン化物、水酸化物、酸化物であり、より好ましくは無金属(水素)、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウム、スズ、亜鉛及びこれらのハロゲン化物であり、更に好ましくは無金属(水素)又は銅である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<7> 前記式(1)中、R1〜8のうちR1、R3、R5、及びR7は、水素原子である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<8> 前記式(1)中、R2、R4、R6、R8は水素原子又は前記式(2)で表わされる官能基であることが好ましく、置換基4つ(R2、R4、R6、R8)のうち、式(2)で表わされる官能基が、2つ以上であることがより好ましく、3つ以上であることが更に好ましく、4つ全てであることが更により好ましい、前記<1>〜<7>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<9> 前記式(2)で表わされる官能基中のR9とR10は、少なくともいずれか一方が水素原子であると好ましい、前記<1>〜<8>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<10> 前記式(2)の構造中の下記式(3)で表わされる官能基は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、これら両方のブロック付加物若しくはランダム付加物、ポリオキシエチレン基、又はポリオキシプロピレン基であると好ましい、前記<1>〜<8>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
【化8】
<11> 前記式(3)で表わされる官能基がオキシプロピレン基を含む場合、オキシプロピレン基のR9とR10のいずれがメチル基でもよいし、前記式(3)で表わされる官能基に含まれる、全てのオキシプロピレン基のR9が水素原子でR10がメチル基であってもよく、全てのオキシプロピレン基のR9がメチル基でR10が水素原子であってもよく、一部のオキシプロピレン基のR9が水素原子でR10がメチル基であり、残りのオキシプロピレン基のR9がメチル基でR10が水素原子であってもよく、前記一部のオキシプロピレン基と前記残りのオキシプロピレン基の配列は交互でも1以上の連続を有していてもよい、前記<10>に記載のカーボンブラック分散液。
<12> 前記式(3)で表わされるポリオキシアルキレン基中の最もフタロシアニン構造に近いオキシアルキレン基の、R9は水素原子であると好ましい、前記<10>に記載のカーボンブラック分散液。
<13> 前記式(2)中のR11は、炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基が更に好ましく、メチル基が更により好ましい、前記<1>〜<12>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<14> 前記式(2)中のnは、好ましくは1〜30であり、より好ましくは5〜20であり、更に好ましくは5〜15である、前記<1>〜<13>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<15> 前記カーボンブラック分散液中の前記カーボンブラックの含有量は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい、前記<1>〜<14>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<16> 前記カーボンブラック分散液中の前記式(1)で表わされる前記分散剤の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.7質量%以上が更に好ましく、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<15>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<17> 前記カーボンブラック分散液中の前記式(1)で表わされる前記分散剤の含有量は、カーボンブラック分散液中のカーボンブラックを100質量部とすると、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい、前記<1>〜<16>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<18> 動的光散乱法に基づいて測定される前記カーボンブラック分散液中の前記カーボンブラックの粒径は、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましく、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下が更に好ましい、前記<1>〜<17>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<19> 前記カーボンブラックの最小分散粒径を100とした場合、動的光散乱法に基づいて測定される前記カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径は、50以上が好ましく、70以上がより好ましく、200以下が好ましく、170以下がより好ましく、160以下が更に好ましく、150以下が更により好ましい、前記<1>〜<18>のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
<20> 前記<1>〜<19>のいずれかの項に記載のカーボンブラック分散液とリチウム活物質とを含むリチウムイオン電池用正極材料ペースト。
<21> 前記<1>〜<19>のいずれかの項に記載のカーボンブラック分散液とアルカリ可溶性樹脂とを含むブラックレジスト組成物。
【実施例】
【0066】
<カーボンブラック分散液の調製に用いられるカーボンブラックの平均一次粒子径の測定方法>
カーボンブラック粉体を、透過型電子顕微鏡を用いて5万倍で撮影し、粒子径を100個測定し、その平均値をカーボンブラックの平均一次粒子径として求め、下記表2に示した。
【0067】
<カーボンブラック分散液の調製に用いられるカーボンブラックのpH>
測定するカーボンブラック 3g及び蒸留水 100gをビーカーに入れ全重量を測定し、これを1時間煮沸し、室温まで放冷した。全重量を測定して煮沸による減量分の蒸留水を加え攪拌した後10分間静置し、上澄液のpHをカーボンブラックのpHとして、ガラス電極式pHメーターで測定した。
【0068】
<分散性の評価>
[カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径の測定方法]
下記実施例1〜9、比較例1〜9のカーボンブラック分散液中のカーボンブラックの動的光散乱法に基づいて測定される粒径(nm)は、粒径測定器(Malvern社製Zetasizer Nano−S)を用い測定した。測定にはGlass cubetteセルを使用し、測定用に採取したサンプルは予め光が透過する程度に使用した溶媒で希釈したのち、直ちに測定を行った。尚、測定時のパラメーターは、機器に付属の資料に掲載されているカーボンブラックの数値(屈折率1.800、吸収10.000)を使用した。
【0069】
下記の実施例1〜6及び比較例1〜7のカーボンブラック分散液、実施例7及び比較例8のリチウムイオン電池用正極ペースト、実施例8〜9及び比較例9〜10のブラックレジスト組成物の調製に用いた、分散剤、カーボンブラックの詳細は、表1及び表2に示している。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
[実施例1]
100mLのポリ広口ビン(ニッコー・ハンセン社製)内で、表1記載の分散剤B−1 0.3gをN−メチルピロリドン(有機溶媒、SP値11.2(cal/cm)1/2)と混合して、分散剤B−1と有機溶媒との混合物の全量が38gとなるようにしたのち、広口ビン内にカーボンブラックA−1 2gを入れ、更にジルコニアビーズ(ニッカトー社製、0.3mmφ) 80gを入れて、密栓し、ペイントシェイカー(浅田鉄工社製)で3時間分散処理をした。得られた分散液を200メッシュのステンレス金網でろ過して、ジルコニアビーズをろ別除去し、カーボンブラック分散液1を得た。
【0073】
カーボンブラック分散液1中における、カーボンブラックA−1の含有量は5質量%、分散剤B−1の含有量は0.75質量%である。また、カーボンブラック分散液1における分散剤B−1の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液1中のカーボンブラックA−1の粒径は268nm(カーボンブラックA−1の最小分散粒径193nmを100とすると139)であり、カーボンブラック分散液1の流動性もよかった。カーボンブラック分散液1について、60℃1週間の保存後も分離や凝集は見られず安定であった。
【0074】
[比較例1]
実施例1で使用した分散剤B−1を市販分散剤DISPERBYK−167(ウレタン系高分子分散剤、有効分52%;ビックケミー社製)0.58gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、カーボンブラック分散液2を得た。
【0075】
カーボンブラック分散液2中における、カーボンブラックA−1の含有量は5質量%、市販分散剤DISPERBYK−167(有効分)の含有量は0.75質量%である。また、カーボンブラック分散液1における分散剤DISPERBYK−167(有効分)の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液2中のカーボンブラックの粒径は1260nm(カーボンブラックA−1の最小分散粒径193nmを100とすると653)であり、凝集が見られた。カーボンブラック分散液2は、60℃1週間の保存後は分離していた。
【0076】
[実施例2]
分散剤として表1記載の分散剤B−2 2gを用い、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値9.2(cal/cm)1/2)を用い、分散剤B−2と有機溶媒との混合物の全量が30gとなるようにし、カーボンブラックとしてカーボンブラックA−2 10gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりカーボンブラック分散液3を得た。
【0077】
カーボンブラック分散液3中における、カーボンブラックA−2の含有量は25質量%、分散剤B−2の含有量は5質量%である。また、カーボンブラック分散液3における分散剤B−2の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、20質量部である。得られたカーボンブラック分散液3中のカーボンブラックA−2の粒径は115nm(カーボンブラックA−2の最小分散粒径120nmを100とすると96)であり、カーボンブラック分散液3の流動性もよかった。カーボンブラック分散液3について60℃1週間の保存後も分離や凝集は見られず安定であった。
【0078】
[比較例2]
実施例2で使用した分散剤B−2を市販分散剤DISPERBYK−167(ウレタン系高分子分散剤、有効分52%;ビックケミー社製)3.9gに変更したこと以外は実施例2と同様の方法により、カーボンブラック分散液4を得た。
【0079】
カーボンブラック分散液4中における、カーボンブラックA−2の含有量は25質量%、市販分散剤DISPERBYK−167(有効分)の含有量は5質量%である。また、カーボンブラック分散液3における市販分散剤DISPERBYK−167(有効分)の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、20質量部である。得られたカーボンブラック分散液4中の、カーボンブラックA−2の粒径は367nm(カーボンブラックA−2の最小分散粒径120nmを100とすると306)であり、カーボンブラック分散液4は流動性のない状態であった。カーボンブラック分散液4について60℃1週間の保存後は分離していた。
【0080】
[実施例3]
分散剤として表1記載の分散剤B−3 0.6gを用い、有機溶媒としてブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値8.7(cal/cm)1/2)を用い、分散剤B−3と有機溶媒との混合物の全量が36gとなるようにし、カーボンブラックとしてカーボンブラックA−3 4gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりカーボンブラック分散液5を得た。
【0081】
カーボンブラック分散液5中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−3の含有量は1.5質量%である。また、カーボンブラック分散液5における分散剤B−3の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液5中のカーボンブラックA−3の粒径は119nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると125)であり、カーボンブラック分散液5の流動性もよかった。カーボンブラック分散液5について60℃1週間の保存後も分離や凝集は見られず安定であった。
【0082】
[実施例4]
実施例3で使用した分散剤の使用量を0.4gとしたこと以外は実施例3と同様の方法によりカーボンブラック分散液6を得た。
【0083】
カーボンブラック分散液6中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−3の含有量は1質量%である。また、カーボンブラック分散液6における分散剤B−3の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、10質量部である。得られたカーボンブラック分散液6中の、カーボンブラックA−3の粒径は153nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると161)であり、カーボンブラック分散液6の流動性もよかった。カーボンブラック分散液6について、60℃1週間の保存後、底部に少量の凝集沈降物が見られたが、液分離等の現象は見られなかった。
【0084】
[実施例5]
実施例3で使用した分散剤の使用量を0.8gとしたこと以外は実施例3と同様の方法によりカーボンブラック分散液7を得た。
【0085】
カーボンブラック分散液7中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−3の含有量は2質量%である。また、カーボンブラック分散液7における分散剤B−3の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、20質量部である。得られたカーボンブラック分散液7中のカーボンブラックA−3の粒径は104nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると109)であり、カーボンブラック分散液7の流動性もよかった。カーボンブラック分散液7について60℃1週間の保存後も分離や凝集は見られず安定であった。
【0086】
[比較例3]
実施例3で使用した分散剤B−3を市販分散剤DISPERBYK−167(ウレタン系高分子分散剤、有効分52%;ビックケミー社製) 1.15gに変更したこと以外は実施例3と同様の方法により、カーボンブラック分散液8を得た。
【0087】
カーボンブラック分散液8中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、市販分散剤DISPERBYK−167(有効分)の含有量は1.5質量%である。また、カーボンブラック分散液7における市販分散剤DISPERBYK−167(有効分)の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液8中の、カーボンブラックA−3の粒径は269nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると283)であり、カーボンブラック分散液8は流動性の悪い状態であった。カーボンブラック分散液8について60℃1週間の保存後は分離していた。
【0088】
[実施例6]
実施例3で使用した分散剤B−3を表1記載の分散剤B−4に変更したこと以外は実施例3と同様の方法によりカーボンブラック分散液9を得た。
【0089】
カーボンブラック分散液9中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−4の含有量は1.5質量%である。また、カーボンブラック分散液9における分散剤B−4の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液9中の、カーボンブラックA−3の粒径は133nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると140)であり、カーボンブラック分散液9の流動性もよかった。カーボンブラック分散液9について60℃1週間の保存後、分離や凝集は見られず安定であった。
【0090】
[比較例4]
実施例3で使用した分散剤B−3を表1記載の分散剤B−5に変更したこと以外は実施例3と同様の方法によりカーボンブラック分散液10を得た。
【0091】
カーボンブラック分散液10中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−5の含有量は1.5質量%である。また、カーボンブラック分散液10における分散剤B−5の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液10中の、カーボンブラックA−3の粒径は629nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると662)であり、カーボンブラック分散液10は流動性のない悪い状態であった。カーボンブラック分散液10について60℃1週間の保存後は分離していた。
【0092】
[比較例5]
実施例3で使用した分散剤B−3を表1記載の分散剤B−6に変更したこと以外は実施例3と同様の方法によりカーボンブラック分散液11を得た。
【0093】
カーボンブラック分散液11中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−6の含有量は1.5質量%である。また、カーボンブラック分散液11における分散剤B−6の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液11中の、カーボンブラックA−3の粒径は1180nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると1242)であり、カーボンブラック分散液11は流動性のない悪い状態であった。カーボンブラック分散液11について60℃1週間の保存後は分離していた。
【0094】
[比較例6]
実施例3で使用した分散剤B−3を市販のフタロシアニン化合物であるソルスパース5000(ルブリゾール社製;銅フタロシアニンモノスルホン酸のジメチルジアルキルアンモニウム中和塩)に変更したこと以外は実施例3と同様の方法によりカーボンブラック分散液12を得た。
【0095】
カーボンブラック分散液12中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−6の含有量は1.5質量%である。また、カーボンブラック分散液12における分散剤B−6の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液12中の、カーボンブラックA−3の粒径は1058nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると1114)であり、カーボンブラック分散液12は流動性のない悪い状態であった。カーボンブラック分散液12について60℃1週間の保存後は分離していた。
【0096】
[比較例7]
実施例3で使用した有機溶媒をメタノール(SP値14.5)に変更したこと以外は実施例3と同様の方法によりカーボンブラック分散液13を得た。
【0097】
カーボンブラック分散液13中における、カーボンブラックA−3の含有量は10質量%、分散剤B−3の含有量は1.5質量%である。また、カーボンブラック分散液13における分散剤B−3の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、15質量部である。得られたカーボンブラック分散液13中の、カーボンブラックA−3の粒径は1086nm(カーボンブラックA−3の最小分散粒径95nmを100とすると1143)であり、カーボンブラック分散液13は流動性のない悪い状態であった。
【0098】
<リチウムイオン電池用正極ペーストの作製>
[実施例7]
50mlスクリュー管に、実施例1で作成したカーボンブラック分散液 24gと、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(JSR社製) 1.2gと、N−メチルピロリドン 1.7gを加えて手撹拌したのち10分静置し、続いて正極活物質(LiNi1/3Mn1/3Co1/32(日本化学工業社製) 27.6gを加えて密閉し、脱泡混練機である「あわとり練太郎」(シンキー社製自転・公転ミキサー、2000rpm5分混練、2000rpm1分脱泡)を用いてリチウムイオン電池用正極ペースト1を作製した。
【0099】
リチウムイオン電池用正極ペースト1をギャップサイズ200ミクロンのアプリケーターを用いてアルミ箔上に塗布し、130℃にて1時間乾燥したところ、塗工スジもなく良好な均一塗膜が得られた。
【0100】
[比較例8]
実施例7で使用したカーボンブラック分散液に変えて、比較例1で作成したカーボンブラック分散液を用いた以外は実施例7と同様の方法でリチウムイオン電池用正極ペースト2を作製した。
【0101】
リチウムイオン電池用正極ペースト2をギャップサイズ200ミクロンのアプリケーターを用いてアルミ箔上に塗布したところ塗工スジが発生し、130℃にて1時間乾燥後は表面が荒れた塗膜が得られた。
【0102】
<ブラックレジスト組成物の作製>
[実施例8]
100mlスクリュー管に、実施例3で作成したカーボンブラック分散液 30gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 0.7gと、アルカリ可溶性樹脂としてフルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物(固形分56質量%、新日鐵化学社製V259ME) 5.15g、光重合開始剤イルガキュアOXE02(BASFジャパン社製) 0.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 13.85gを加えて、マグネチックスターラーで10分撹拌して、ブラックレジスト組成物1を得た(組成物中のカーボンブラック含有量は6質量%)。
【0103】
ブラックレジスト組成物1を、スピンコーターを用いて乾燥後の膜厚が1ミクロンとなるように150mm×150mmのTEMPAXガラス上に塗布し、これを表面温度90℃のホットプレートで1分乾燥した(乾燥塗膜中のカーボンブラック含有量は40質量%)。乾燥後の塗膜は光沢があり平滑で黒色度のムラのない良好な膜であった。
【0104】
[比較例9]
実施例8で使用したカーボンブラック分散液に変えて、比較例3で作成したカーボンブラック分散液を用いた以外は実施例8と同様の方法でブラックレジスト組成物2を作製した。ブラックレジスト組成物2を実施例8と同様にスピンコーターで塗工したが、放射状に塗工スジが発生し、乾燥後も表面が荒れたムラの多い塗膜が得られた。
【0105】
[実施例9]
実施例3で使用した分散剤の量を0.3g(7.5質量部)、0.4g(10質量部)、0.5g(12.5質量部)、0.6g(15質量部)、0.7g(17.5質量部)[( )内の数字はカーボンブラック分散液中のカーボンブラック全重量を100質量部とした場合の分散剤(有効分換算)についての質量部]とし、カーボンブラックを十分に分散するために分散処理時間を5時間としたこと以外は、実施例3と同様の方法により5種のカーボンブラック分散液を作製した。各カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径と分散剤の添加量との相関関係を確認したところ(図1参照)、分散剤の添加量が0.5g(最小粒径に到達するのに要した分散剤量)である場合において、カーボンブラックの粒径がカーボンブラックA−3の最小分散粒径(95nm)と同等の良好な分散状態となることがわかった。ほぼ最小分散粒径に到達した添加量(すなわち最少添加量)0.5g(12.5質量部)における、分散剤のカーボンブラックに対する吸着率は98%であった。
【0106】
100mlスクリュー管に、前記最少添加量0.5g(12.5質量部)で作成したカーボンブラック分散液 30gと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 0.7gと、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物(V259ME) 5.6gと、光重合開始剤イルガキュアOXE02 0.3gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 13.6gを加えて、マグネチックスターラーで10分撹拌して、ブラックレジスト組成物3を得た(組成物中のカーボンブラック含有量は6質量%)。
【0107】
ブラックレジスト組成物3をスピンコーターを用いて乾燥後の膜厚が1ミクロンとなるように150mm×150mmのTEMPAXガラス上に塗布し、これを表面温度90℃のホットプレートで1分乾燥した(乾燥塗膜中のカーボンブラック含有量は40質量%)。乾燥後の塗膜は光沢があり平滑で黒色度のムラのない良好な膜であった。
【0108】
乾燥塗膜の上に、ライン幅が20μmのパターンを形成するためのネガ型フォトマスクを設置し、UV(I線、λ=365nm)露光(100mJ/cm2)を行った。次に、TEMPAXガラスと露光済み塗膜とからなる積層体を25℃の現像液(0.04%水酸化カリウム、0.15%エマルゲンA−60含有水溶液)に浸漬し且つ緩やかに振とうした。積層体を、現像液に浸漬してから1分経過後現像液から取り出し、次いで、露光済み塗膜を洗ビンを用いてイオン交換水で掛け洗ったところ、塗膜の未露光部分が溶解し、残留した露光部分が鮮明なパターンを形成していた。
【0109】
[比較例10]
比較例3で使用した分散剤の量を1.15g(有効分15質量部)、1.5g(有効分20質量部)、1.8g(有効分24質量部)、2.5g(有効分32質量部)、3.1g(有効分40質量部)とし、カーボンブラックを十分に分散するために分散処理時間を5時間としたこと以外は、比較例3と同様の方法により5点のカーボンブラック分散液を作製した。各カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの粒径と分散剤の添加量との相関関係を確認したところ(図1参照)、分散剤の添加量が2.5g(有効分32質量部)においてようやく最小分散粒径と同等の良好な分散状態となることがわかった。カーボンブラックの粒径が最小(最小粒径)となることがわかった。ほぼ最小分散粒径に到達した添加量(すなわち最少添加量)2.5g(有効分32質量部)における、分散剤のカーボンブラックに対する吸着率は64%であった。
【0110】
100mlスクリュー管に、前記最少添加量2.5g(32質量部)で作成したカーボンブラック分散液 30gと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 0.7gと、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物(V259ME) 4.53gと、光重合開始剤イルガキュアOXE02 0.3gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 14.5gを加えて、マグネチックスターラーで10分撹拌して、ブラックレジスト組成物4を得た(組成物中のカーボンブラック含有量は6%)。
【0111】
ブラックレジスト組成物4を、スピンコーターを用いて乾燥後の膜厚が1ミクロンとなるように150mm×150mmのTEMPAXガラス上に塗布し、これを表面温度90℃のホットプレートで1分乾燥した(乾燥塗膜中のカーボンブラック含有量は40%)。乾燥後の塗膜は光沢があり平滑で黒色度のムラのない良好な膜であった。
【0112】
乾燥塗膜の上に、ライン幅が20μmのパターンを形成するためのネガ型フォトマスクを設置し、UV(I線、λ=365nm)露光(100mJ/cm2)を行った。次に、TEMPAXガラスと露光済み塗膜とからなる積層体を25℃の現像液(0.04%水酸化カリウム、0.15%エマルゲンA−60含有水溶液)に浸漬し且つ緩やかに振とうした。積層体を、現像液に浸漬してから1分経過後、現像液から取り出し、次いで、露光済み塗膜を洗ビンを用いてイオン交換水で掛け洗ったところ、塗膜の未露光部分のみならず、露光部分まで完全に脱落しパターンは得られなかった。
【0113】
図1から、分散剤の添加量とカーボンブラック分散液中の動的光散乱法に基づいて測定されるカーボンブラックの粒径との相関関係が分かる。図1中、実施例9は分散剤としてB−3を用いた場合のグラフ、比較例10は分散剤としてD−167を用いた場合のグラフである。異なる分散剤を含むカーボンブラック分散液同士の対比において、カーボンブラックの粒径がほぼ最小分散粒径に到達するための分散剤の添加量(最少分散剤量)がより少なくてすむものほど、分散剤の使用量がより少なくても(換言すると、カーボンブラック以外の成分の量が少なくても)、分散安定性が良好なカーボンブラック分散液を得ることができる。更に最少分散剤量における分散剤吸着率が高いほどカーボンブラックの分散安定性が良好であり、カーボンブラック分散液が使用される用途に求められる機能・要求特性等への悪影響が少ない傾向にある。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のカーボンブラック分散液では、使用する分散剤が、従来の分散剤と比べて分散安定性に優れるだけでなくカーボンブラックへの吸着性も優れているために、未吸着分散剤の存在によって引き起こされる悪影響が低減されており、リチウムイオン電池やブラックレジスト組成物等への用途に適している。
図1