(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227410(P2015-227410A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】精密研磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20151120BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20151120BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20151120BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20151120BHJP
H01L 41/337 20130101ALN20151120BHJP
【FI】
C09K3/14 550M
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
C09K3/14 550D
C09G1/02
H01L41/337
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-113328(P2014-113328)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000178310
【氏名又は名称】山口精研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100157680
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 潤一
(72)【発明者】
【氏名】川原 彰裕
(72)【発明者】
【氏名】原口 哲朗
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158CA04
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED01
3C158ED02
3C158ED10
3C158ED24
3C158ED26
5F057AA28
5F057BA11
5F057BB40
5F057BC09
5F057CA19
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA21
5F057EA23
5F057EA29
5F057EA33
(57)【要約】
【課題】タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムなどの酸化物単結晶基板の精密研磨加工において、被研磨物のキャリア鳴きと呼ばれる微細振動を抑制する精密研磨剤組成物を提供する。
【解決手段】精密研磨剤組成物は、水、平均粒径が10〜100nmのコロイダルシリカ、および水溶性高分子化合物を含有し、タンタル酸リチウム単結晶材料またはニオブ酸リチウム単結晶材料を精密研磨加工するために用いることができる。コロイダルシリカの平均粒径の範囲を10〜100nmと規定し、水溶性高分子化合物を含むことにより、研磨レートを低下させることなく、キャリア鳴きを防止する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、平均粒径が10〜100nmのコロイダルシリカ、および水溶性高分子化合物を含有し、タンタル酸リチウム単結晶材料またはニオブ酸リチウム単結晶材料を精密研磨加工するための精密研磨剤組成物。
【請求項2】
前記コロイダルシリカの濃度が5〜50質量%である請求項1に記載の精密研磨剤組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子化合物が多糖類、ポリカルボン酸およびそのエステル、ポリアルキレングリコールの少なくとも1種類からなる請求項1または2に記載の精密研磨剤組成物。
【請求項4】
前記多糖類がアルギン酸、アルギン酸エステル、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、キサンタンガム、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種類である請求項3に記載の精密研磨剤組成物。
【請求項5】
前記水溶性高分子化合物の含有量が0.0001〜1.0質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の精密研磨剤組成物。
【請求項6】
さらにキレート性化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の精密研磨剤組成物。
【請求項7】
前記精密研磨剤組成物のpHが、7〜11である請求項1〜6のいずれか1項に記載の精密研磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬脆材料のタンタル酸リチウム単結晶材料やニオブ酸リチウム単結晶材料を被研磨物とした精密研磨加工に用いられ、被研磨物が微細振動を起こして摩擦音を発生することを防止する精密研磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からテレビの中間周波数フィルタや共振器等のエレクトロニクス部品として、圧電材料の圧電効果により発生する弾性表面波(SAW)を利用した弾性表面波デバイスが広く用いられている。近年においては、そのような弾性表面波デバイスが用いられる携帯電話の普及が著しく拡大しているが、それに伴って弾性表面波デバイスを構成する圧電体ウエハーの需要も増大している。
【0003】
そのような圧電体ウエハー材料としては、圧電性、電気光学効果に優れたタンタル酸リチウム単結晶材料やニオブ酸リチウム単結晶材料などの硬脆材料が広く採用されている。このような硬脆材料からなる弾性表面波デバイス用ウエハーは、通常、電極が写真印刷される表面には、精密研磨加工が施されて、その表面が鏡面とされる。具体的には、ポリウレタン等からなる研磨布を貼った定盤を用いて、この定盤を回転させると共に、スラリー状の研磨剤を研磨布面上に供給しつつ、被研磨物としての圧電体ウエハー材料を研磨布面に押圧し、圧電体ウエハー材料の表面を精密研磨する。
【0004】
タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの酸化物単結晶は、硬度が高く(モース硬度が5〜6)、また化学的にも極めて安定な材料であることから、研磨速度は非常に遅い。この酸化物単結晶の研磨は、通常、工業的には研磨液を繰り返し供給、回収する循環供給方式で行っているが、所望の厚みを得るために、長時間の研磨が必要となり、その生産性と効率の悪さが課題となっている。
【0005】
タンタル酸リチウム単結晶やニオブ酸リチウム単結晶などの酸化物単結晶を被研磨物として精密研磨すると、この材料の圧電材料としての特性に起因すると考えられるが、キュッキュという摩擦音を発生するキャリア鳴きと呼ばれる微細振動を起こしやすい。その結果、被研磨物が研磨位置から外れ、割れるという問題が起きている。このような研磨時の微細振動を抑制することも重要な課題となっている。
【0006】
シリコンウエハの精密研磨剤として使用されているコロイダルシリカを主成分として含む研磨剤が、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの酸化物単結晶の研磨にも採用されてきた。そのようなコロイダルシリカ研磨剤は、表面および内面に欠陥を起こすことなく、研磨面の精度を高度に達成しうるという特徴を有する一方で、研磨条件などによっては、キャリア鳴きと呼ばれる被研磨物の微細振動が発生する。
【0007】
また、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの研磨速度を向上させる目的で、特許文献1には硬脆材料用の精密研磨剤としてBET比表面積が10〜60m
2/gであり、2次粒子の平均粒子径が0.5〜5μmである沈降法微粒子シリカのみを固形成分として含む、水系スラリー分散液が提案されている。同様に特許文献2には、硬脆材料用の研磨剤として、コロイダルシリカの分散安定性向上を目的として、グルコン酸ナトリウム等の添加剤を加えることにより、研磨速度が向上するとの提案がなされている。
【0008】
さらに、タンタル酸リチウム単結晶材料やニオブ酸リチウム単結晶材料の基板用研磨剤として、特許文献3が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−1279号公報
【特許文献2】特開2006−150482号公報
【特許文献3】特開2002−184726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2の研磨剤も、圧電材料の研磨におけるキャリア鳴きと呼ばれる微細振動に関しては改善されていない。
【0011】
一方、特許文献3は、硬脆材料基板用研磨剤であるが、研磨速度が高く、外観を良好に研磨することを目的としている。そのためγ−アルミナ、シリカを含み、さらに、潤滑剤、分散助剤を多く含んでいる。アルミナを含むと、研磨面の面質に限界があり、アルミナとシリカとを含むと、沈降が起こりやすく、循環供給方式の研磨には不向きである。また、潤滑剤、分散助剤を多く含むと、粘度が上がり、問題が生じやすい。さらに、特許文献3は、キャリア鳴きについては、考慮していない。
【0012】
そこで、タンタル酸リチウム単結晶やニオブ酸リチウム単結晶の精密研磨の際に、被研磨物が微細振動を起こしやすく、安定な研磨の障害になっているという問題について解決が求められている。
【0013】
本発明の課題は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムなどの酸化物単結晶基板の精密研磨加工において、被研磨物のキャリア鳴きと呼ばれる微細振動を抑制する精密研磨剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、水、コロイダルシリカ、水溶性高分子化合物を含有する精密研磨剤組成物を用いることにより、タンタル酸リチウム/ニオブ酸リチウム単結晶材料を被研磨物として研磨する際のキャリア鳴きと呼ばれる被研磨物の微細振動を抑制できることを見出した。
【0015】
[1] 水、平均粒径が10〜100nmのコロイダルシリカ、および水溶性高分子化合物を含有し、タンタル酸リチウム単結晶材料またはニオブ酸リチウム単結晶材料を精密研磨加工するための精密研磨剤組成物。
【0016】
[2] 前記コロイダルシリカの濃度が5〜50質量%である前記[1]に記載の精密研磨剤組成物。
【0017】
[3] 前記水溶性高分子化合物が多糖類、ポリカルボン酸およびそのエステル、ポリアルキレングリコールの少なくとも1種類からなる前記[1]または[2]に記載の精密研磨剤組成物。
【0018】
[4] 前記多糖類がアルギン酸、アルギン酸エステル、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、キサンタンガム、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種類である前記[3]に記載の精密研磨剤組成物。
【0019】
[5] 前記水溶性高分子化合物の含有量が0.0001〜1.0質量%である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の精密研磨剤組成物。
【0020】
[6] さらにキレート性化合物を含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の精密研磨剤組成物。
【0021】
[7] 前記精密研磨剤組成物のpHが、7〜11である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の精密研磨剤組成物。
【発明の効果】
【0022】
水、平均粒径が10〜100nmのコロイダルシリカ、および水溶性高分子を含有することにより、タンタル酸リチウム単結晶材料またはニオブ酸リチウム単結晶材料を精密研磨加工する際に問題となっていたキャリア鳴きを抑制することができる。これにより研磨効率の向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
本発明の精密研磨剤組成物は、水、平均粒径が10〜100nmのコロイダルシリカ、および水溶性高分子化合物を含有し、タンタル酸リチウム単結晶材料またはニオブ酸リチウム単結晶材料を精密研磨加工するために用いることができる。コロイダルシリカの平均粒径の範囲を10〜100nmと規定し、水溶性高分子化合物を含むことにより、研磨レートを低下させることなく、キャリア鳴きを防止することができる。
【0025】
本発明においてコロイダルシリカは、液中にある無定形シリカの安定なコロイド状分散体をいう。この液中において、シリカ粒子の平均粒径は10〜100nm、好ましくは、20〜80nmであり、特に好ましくは、30〜70nmである。平均粒径が10nm以上とすることにより、研磨時にキャリア鳴きを抑制することができる。平均粒径が100nm以下とすることにより研磨速度を向上させることができる。
【0026】
精密研磨剤組成物中のコロイダルシリカの濃度は、研磨材粒子の安定した分散状態の確保や経済性から、5〜50質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。5質量%以上とすることにより、コロイダルシリカによる研磨効果、特に優れた面質を得ることができる。一方、50質量%以下とすることのより、経済性の面で有利であるばかりでなく、コロイダルシリカ以外の研磨材やその他の配合剤をさらに配合する際に、凝集やゲル化が発生しにくい。
【0027】
本発明に有用な水溶性高分子化合物としては、多糖類、ポリカルボン酸、およびそのエステル、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0028】
多糖類としては、アルギン酸、アルギン酸エステル、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、キサンタンガム、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。
【0029】
ポリカルボン酸としてはポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸などが挙げられる。
【0030】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびエチレングリコーループロピレングリコールブロック共重合体などが挙げられる。
【0031】
上記水溶性高分子化合物の中では、多糖類の使用が好ましい。多糖類の中でも、アルギン酸、アルギン酸エステル、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、キサンタンガム、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースから1種以上を使用することがより好ましい。なお、上記水溶性高分子化合物は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
水溶性高分子化合物は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの基板表面に吸着しやすいと考えられる。基板表面に水溶性高分子化合物が吸着することによって、基板と砥粒や研磨パッドとの間で生じる必要以上の摩擦が抑えられる。必要以上の摩擦が抑えられることにより、スムーズに研磨が行われ、キャリア鳴きと呼ばれる被研磨物の微細振動を抑制することができるのではないかと考えられる。特に、多糖類は基板表面に吸着した際に適度な立体的な嵩高さを持つため、より摩擦を抑える効果が高く、キャリア鳴きをより抑制することができると考えられる。
【0033】
水溶性高分子化合物の含有量は、0.0001〜1.0質量%であり、0.001〜0.5質量%が好ましく、0.003〜0.3質量%がより好ましく、0.01〜0.1質量%が特に好ましい。水溶性高分子化合物の含有量を0.0001質量%以上とすることにより、研磨時のキャリア鳴きの抑制効果を十分なものとすることができる。また、1.0質量%以下とすることにより、高粘度化して流動性が低下することを防止し、作業性を向上させることができる。
【0034】
本発明の精密研磨剤組成物には、研磨速度を向上させる観点から、さらにキレート性化合物を含有することが好ましい。キレート性化合物としては、ポリアミノカルボン酸系化合物、ポリアミン系化合物、ホスホン酸系化合物、多価アルコール系化合物などが挙げられる。
【0035】
ポリアミノカルボン酸系化合物としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸等、およびこれらのアンモニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩、などが挙げられる。
【0036】
ポリアミン系化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等の単量体、これらの塩酸塩等の塩が挙げられる。
【0037】
ホスホン酸系化合物としては、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ホスホノヒドロキシ酢酸、ヒドロキシエチルジメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、ヒドロキシエタンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等、およびこれらのアンモニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0038】
多価アルコール系化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムなどが挙げられる。
【0039】
上記キレート性化合物の中でも、ポリアミノカルボン酸系化合物、ポリアミン系化合物、ホスホン酸系化合物の使用が好ましい。
【0040】
精密研磨剤組成物中におけるキレート性化合物の含有量は、0.05〜4質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは、0.2〜2質量%である。0.05質量%以上とすることにより研磨速度をさらに向上させることができる。4質量%以下とすることのより、研磨時にキャリア鳴きが発生することを防止することができる。
【0041】
また、本発明の精密研磨剤組成物のpHは7〜11のアルカリ性に調整されていることが好ましい。pHが7〜11であると、コロイダルシリカ粒子の電荷が負に大きくなる傾向にある。それによって、粒子間において働く電気的な反発力が大きくなり、各粒子に効果的に作用して、研磨材粒子が均等に分散されることになる。
【0042】
一方、pHが7未満、特にpHが5〜6付近となる場合には、粒子間の電荷のバランスが崩れ、粒子の凝集、ゲル化が起こりやすくなる。またpHが11を超えるようになると、徐々にシリカ表面が溶解し、精密研磨剤組成物としての作用を有効に発揮しにくくなる。
【0043】
ところで、本発明の目的とするタンタル酸リチウム単結晶/ニオブ酸リチウム単結晶材料用の精密研磨剤組成物を製造するに際しては、以下の方法を例示することができる。なお、本発明によるタンタル酸リチウム単結晶/ニオブ酸リチウム単結晶材料用の精密研磨剤組成物の調製方法は、例示の方法に限定されるものではなく、配合される研磨材や添加剤等に応じて、種々の態様にて実施されうる。
【0044】
あらかじめ、所定のpH(アルカリ性)に調製された水溶液に、水溶性高分子化合物を添加し、混合撹拌して均一溶液としたものを、コロイダルシリカに加えて、混合撹拌することにより、目的とする精密研磨剤組成物を得る。
【0045】
そして、本発明の精密研磨剤組成物を用いて、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム単結晶材料に、精密研磨加工を施す際には、従来から公知の各種の研磨手法を適宜選択することができる。たとえば、所定量の精密研磨剤組成物を研磨機に設けられた供給容器に投入する。供給容器からノズルやチューブを用いて、研磨機の定盤上に貼付されたポリウレタン等からなる研磨布に対して精密研磨剤組成物を滴下して供給する一方、被研磨物の研磨面を研磨布面に押圧し、定盤を所定の回転速度にて回転させることにより、被研磨材表面を精密研磨する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本発明には、以下の実施例の他にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えることができる。
【0047】
(精密研磨剤組成物の調製)
下記表1または表2の配合割合になるように、以下に示す方法で、実施例1〜12および比較例1〜6の精密研磨剤組成物の調製を行った。
【0048】
(実施例1)
市販のアルカリ性コロイダルシリカ(平均粒径40nm、固形分量50質量%、pH=11)800gにキサンタンガム0.3gを加えた。さらに表1中のpHにマロン酸を加えて調整した酸性の水溶液200gを添加し、撹拌することにより、均一な精密研磨剤組成物1kgを得た。
【0049】
(実施例2および実施例12)
市販のアルカリ性コロイダルシリカ(平均粒径40nm、固形分量50質量%、pH=11)800gに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)8g、キサンタンガム0.3gを加えた。さらに表1〜表2中のpHに5%水酸化カリウム水溶液を加えて調整したアルカリ性の水溶液200gを添加し、撹拌することにより、均一な精密研磨剤組成物1kgを得た。
【0050】
(実施例3〜7)
実施例2の各成分の配合割合を変更することにより、実施例3〜7の精密研磨剤組成物各1kgを得た。
【0051】
(実施例8〜9)
実施例2のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を、実施例8はフォスフォノブタントリカルボン酸(PBTC)に、実施例9はエチレンジアミン四酢酸二カルシウム塩(EDTA・2Ca)に変更し、実施例8〜9の精密研磨剤組成物各1kgを得た。
【0052】
(実施例10〜11)
実施例1のキサンタンガムを、実施例10は水溶性高分子としてのアルギン酸プロピレングリコールエステルに、実施例11は水溶性高分子としてのヒドロキシプロピルセルロースに変更し、実施例10〜11の精密研磨剤組成物各1kgを得た。
【0053】
(比較例1)
市販のアルカリ性コロイダルシリカ(平均粒径40nm、固形分量50質量%、pH=11)800gに、表1中のpHにマロン酸を加えて調整した酸性の水溶液200gを添加し、撹拌することにより、均一な精密研磨剤組成物1kgを得た。比較例1は、水溶性高分子を含んでいない。
【0054】
(比較例2および比較例6)
市販のアルカリ性コロイダルシリカ(平均粒径40nm、固形分量50質量%、pH=11)800gに、EDTA・2Na8gを加えた。さらに表1〜2中のpHに5%水酸化カリウム水溶液を加えて調整したアルカリ性の水溶液200gを添加し、撹拌することにより、均一な精密研磨剤組成物1kgを得た。比較例2および比較例6は、水溶性高分子を含んでいない。
【0055】
(比較例3〜4)
実施例2のコロイダルシリカの平均粒径を変更することにより、比較例3〜4の精密研磨剤組成物各1kgを得た。
【0056】
(比較例5)
実施例1のキサンタンガムに代えて、グルコン酸ナトリウムを使用して、配合割合を変更することにより、比較例5の精密研磨剤組成物各1kgを得た。
【0057】
(研磨試験)
上記で得られた実施例1〜12および比較例1〜6の各1kgの精密研磨剤組成物を、それぞれ両面研磨機(SPEED FAM社製:6B−5P−II、ポリシング定盤直径:422mm)に設けられた精密研磨剤供給容器に導入した後、この研磨機を用いて、タンタル酸リチウム単結晶材料、またはニオブ酸リチウム単結晶材料からなる基板(直径:76mm、厚み:0.3mm)の表面に5時間のポリシングを行った。
【0058】
ポリシングに際して、定盤の回転速度(回転数)は55rpmに設定され、研磨圧力は300g/cm
2であった。精密研磨剤組成物は、チューブポンプを用いて200ml/minの供給速度にて、定盤上に貼られた研磨布上に供給されると共に、あふれ出した精密研磨剤組成物が容器に戻される、いわゆる循環供給方式によって、繰り返し用いられた。そして、上述のように基板の表面をポリシングしつつ、研磨時間が1時間経過するごとに、マイクロメータ(ミツトヨ社製、測定精度:1μm)を用いて基板の厚みを測定し、それにより、1時間ごとの研磨速度(μm/hr)を求めた。表1にはタンタル酸リチウム単結晶基板の結果を、表2にはニオブ酸リチウム単結晶基板の結果を示す。尚、比較例3については、キャリア鳴きが激しいため、途中で研磨を中止した。
【0059】
(キャリア鳴きの判定)
研磨開始直後より研磨終了までの間において、研磨試験機の回転する定盤(キャリア)周辺から発生する音を以下に従って評価し、キャリア鳴きの発生の有無を判定した。
○:研磨時の際の通常の摺動音が認められる。
×:摺動音ではないキュッキュという摩擦音が認められる。
××:ガリッガリという強い摩擦音が認められる。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1〜2の結果から本発明の効果は明らかである。実施例1、10、11と比較例1との比較、実施例2、3、4と比較例2との比較、実施例12と比較例6との比較などから水溶性高分子化合物の添加により、研磨速度を維持しながら、キャリア鳴きが抑制されることがわかる。実施例2と比較例3の比較からコロイダルシリカの粒径が小さすぎると、キャリア鳴きが激しくなり、研磨に支障をきたすことがわかる。実施例2と比較例4の比較から、コロイダルシリカの粒径が大きすぎると、研磨速度が低下することがわかる。比較例1と比較例5の比較から、特許文献2に示されているグルコン酸ナトリウム添加では、キャリア鳴きが改善されないことがわかる。つまり、水溶性高分子を含まず、キレート性化合物としてのグルコン酸ナトリウムを含む場合は、キャリア鳴きは改善されない。また、実施例2、7、8、9と実施例1の比較から、水溶性高分子に加え、さらにキレート性化合物を添加するとキャリア鳴きの抑制に加え、研磨速度向上の効果も得られることがわかる。
【0063】
以上のように、水溶性高分子を添加することにより研磨速度を維持しながら、キャリア鳴きを抑えることができる。さらにキレート性化合物を添加すると、キャリア鳴きを抑えながら、研磨速度の向上も図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の精密研磨剤組成物は、タンタル酸リチウム単結晶材料、ニオブ酸リチウム単結晶材料の精密研磨に用いることができる。