【解決手段】複合粒子18は、ポリブタジエンまたはポリイソプレンからなる球状のゴム粒子10と、このゴム粒子10の主鎖をなす二重結合と加硫反応により結合する反応性官能基と加水分解性基とを有するカップリング剤に、加水分解性基との化学的結合により担持されて、該ゴム粒子10の表面または内側に固着された機能性粒子12とから構成されている。
前記カップリング剤は、前記反応性官能基としてチオール基を有すると共に、前記加水分解性基としてアルコキシ基を有するシラン系カップリング剤である請求項1記載の複合粒子。
前記ゴム粒子の二重結合に対して1/32当量以上で、1/2当量より少なく配合される前記カップリング剤により、前記機能性粒子を該ゴム粒子の表面に固着した請求項1〜3の何れか一項に記載の複合粒子。
前記ゴム粒子の二重結合に対して1/2当量以上配合される前記カップリング剤により、前記機能性粒子を該ゴム粒子の内側に固着した請求項1〜3の何れか一項に記載の複合粒子。
ゴムを有機溶媒に溶解させたゴム溶液を水系媒体に混合して撹拌することで液滴を形成し、加熱して液滴から有機溶媒を蒸発させる懸濁蒸発法によって、前記ゴム粒子を生成するようにした請求項6記載の複合粒子の製造方法。
前記ゴム溶液に、異なる溶解パラメータを有する2つのゴムを共存させることで、水系媒体の溶解パラメータと離れた溶解パラメータを有する第1のゴムを液滴の内側に配置すると共に、第1のゴムよりも水系媒体の溶解パラメータに近い溶解パラメータを有する第2のゴムを第1のゴムの外側に配置し、第1のゴムの表面を第2のゴムで被覆する二重構造の前記ゴム粒子を生成するようにした請求項7記載の複合粒子の製造方法。
前記カップリング剤を、前記ゴム溶液に添加して該ゴム溶液中のゴムと反応させた後に、ゴム溶液に前記機能性粒子を添加し、前記機能性粒子を分散したゴム溶液と前記水系媒体とを混合して行う前記懸濁蒸発法によって、ゴム粒子を生成するときに該ゴム粒子に機能性粒子を固着するようにした請求項7または8記載の複合粒子の製造方法。
前記カップリング剤を、前記ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/32当量以上でかつ1/2当量より少なく添加することで、前記懸濁蒸発法で生成するゴム粒子の表面に前記機能性粒子を固着するようにした請求項9記載の複合粒子の製造方法。
前記カップリング剤を、前記ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/2当量以上添加することで、前記懸濁蒸発法で生成するゴム粒子の内側に前記機能性粒子を固着するようにした請求項9記載の複合粒子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無機材料や金属をポリマー粒子に物理的に固着した複合粒子は、無機材料や金属がポリマー粒子の表面から脱落し易く、無機材料や金属の脱落により複合粒子に求められる機能が低下してしまう。また、無機材料等をポリマー粒子に内包した複合粒子であっても、ポリマー粒子に無機材料を物理的に混ぜ込んだだけでは、該複合粒子の使用の仕方によっては無機材料等が脱落してしまう。
【0007】
すなわち本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、ゴム粒子に固着された機能性粒子による機能を好適に発現し得る複合粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の複合粒子は、
ポリブタジエン、ポリイソプレンまたはこれらのゴムを組み合わせて構成される球状のゴム粒子と、
前記ゴム粒子の主鎖をなす二重結合との加硫反応により反応性官能基を結合したカップリング剤が有する加水分解性基との化学的結合により、該ゴム粒子に固着した機能性粒子とから構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、ゴム粒子に対して機能性粒子がカップリング剤を介して化学的に結合しているので、機能性粒子がゴム粒子から脱落し難い。すなわち、複合粒子は、ゴム粒子とこのゴム粒子に固着した機能性粒子との夫々または協働による機能を適切に発揮することができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記カップリング剤は、前記反応性官能基としてチオール基を有すると共に、前記加水分解性基としてアルコキシ基を有するシラン系カップリング剤であることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、反応性官能基としてのチオール基が、ゴム粒子の主鎖をなす二重結合との加硫反応により結合すると共に、加水分解性基としてのアルコキシ基が、機能性粒子に対して化学的に結合しているので、ゴム粒子に機能性粒子を安定的に固着させることができる。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記ゴム粒子は、溶解パラメータが異なる2つのゴムで構成され、一方のゴムの表面を他方のゴムで被覆する二重構造であることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、2つのゴムからなる二重構造のゴム粒子を用いることで、ゴム粒子の物性を調節することができ、複合粒子の機能を向上させることができる。
【0011】
請求項4に係る発明では、前記ゴム粒子の二重結合に対して1/32当量以上で、1/2当量より少なく配合される前記カップリング剤により、前記機能性粒子を該ゴム粒子の表面に固着したことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、カップリング剤の配合量の調節により、機能性粒子をゴム粒子に内包させるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の表面に分散させた状態でカップリング剤により化学的に固着することができる。従って、複合粒子は、ゴム粒子の表面に機能性粒子を付けても該機能性粒子が脱落し難く、ゴム粒子とこのゴム粒子の表面に固着した機能性粒子との夫々または協働による機能を適切に発揮することができる。
【0012】
請求項5に係る発明では、前記ゴム粒子の二重結合に対して1/2当量以上配合される前記カップリング剤により、前記機能性粒子を該ゴム粒子の内側に固着したことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、カップリング剤の配合量の調節により、機能性粒子をゴム粒子の表面に付けるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の内側に包んだ状態でカップリング剤により化学的に固着することができる。従って、複合粒子は、例えばゴム粒子を変形させるような強い力が加わる用途であっても、ゴム粒子の内側から機能性粒子が押し出されて脱落し難く、ゴム粒子とこのゴム粒子の内側に存在する機能性粒子との夫々または協働による機能を適切に発揮することができる。
【0013】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項6に係る発明の複合粒子の製造方法は、
ポリブタジエン、ポリイソプレンまたはこれらのゴムを組み合わせて構成される球状のゴム粒子を生成するときまたは生成した後に、
前記ゴム粒子の主鎖をなす二重結合に対して加硫反応により結合する反応性官能基と機能性粒子に対して化学的に結合する加水分解性基とを有するカップリング剤を介して、ゴム粒子に機能性粒子を固着するようにしたことを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、カップリング剤の反応性官能基をゴム粒子の主鎖をなす二重結合との加硫反応により結合すると共に、カップリング剤の加水分解性基を機能性粒子に対して水素結合することで、ゴム粒子に機能性粒子を固着している。すなわち、化学的な反応によってゴム粒子と機能性粒子とを固着しているので、ゴム粒子に対して機能性粒子を物理的に固着させる場合のように、大掛かりな設備や煩雑な手間を要さず、ゴム粒子に機能性粒子が強固に固着した複合粒子を簡単に得ることができる。
【0014】
請求項7に係る発明では、ゴムを有機溶媒に溶解させたゴム溶液を水系媒体に混合して撹拌することで液滴を形成し、加熱して液滴から有機溶媒を蒸発させる懸濁蒸発法によって、前記ゴム粒子を生成するようにしたことを要旨とする。
請求項7に係る発明によれば、懸濁蒸発法によってゴム粒子を生成することで、真円度の高い球状のゴム粒子を得ることができる。
【0015】
請求項8に係る発明では、前記ゴム溶液に、異なる溶解パラメータを有する2つのゴムを共存させることで、水系媒体の溶解パラメータと離れた溶解パラメータを有する第1のゴムを液滴の内側に配置すると共に、第1のゴムよりも水系媒体の溶解パラメータに近い溶解パラメータを有する第2のゴムを第1のゴムの外側に配置し、第1のゴムの表面を第2のゴムで被覆する二重構造の前記ゴム粒子を生成するようにしたことを要旨とする。
請求項8に係る発明によれば、懸濁蒸発法に際して、第1のゴムの溶解パラメータと、第2のゴムの溶解パラメータと、ゴムを溶解したゴム溶液を分散する水系媒体の溶解パラメータとの差による相互作用によって、第1のゴムと第2のゴムとが内外に重なる二重構造のゴム粒子を簡単に生成することができる。
【0016】
請求項9に係る発明では、前記カップリング剤を、前記ゴム溶液に添加して該ゴム溶液中のゴムと反応させた後に、ゴム溶液に前記機能性粒子を添加し、前記機能性粒子を分散したゴム溶液と前記水系媒体とを混合して行う前記懸濁蒸発法によって、ゴム粒子を生成するときに該ゴム粒子に機能性粒子を固着するようにしたことを要旨とする。
請求項9に係る発明によれば、ゴムへのカップリング剤の化学的結合およびカップリング剤への機能性粒子の化学的結合と、懸濁蒸発法によるゴム粒子の生成を合わせて行うことで、ゴム粒子の生成とゴム粒子へのカップリング剤による機能性粒子の導入とを別々に行う方法よりも、大きく手間を減らすことができる。また、ゴム粒子の生成および該ゴム粒子への機能性粒子の固着を、懸濁蒸発法による所謂ワンポットで行うことが可能になる。
【0017】
請求項10に係る発明では、前記カップリング剤を、前記ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/32当量以上でかつ1/2当量より少なく添加することで、前記懸濁蒸発法で生成するゴム粒子の表面に前記機能性粒子を固着するようにしたことを要旨とする。
請求項10に係る発明によれば、カップリング剤を、ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/32当量以上でかつ1/2より少なく添加するだけの簡単な調節で、機能性粒子をゴム粒子に内包させるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の表面に固着するようにコントロールすることができる。機能性粒子をゴム粒子の表面に固着するようにコントロールすることができるので、機能性粒子がゴム粒子の内側に入って該ゴム粒子の物性を変化させたり、ゴム粒子表面における機能性粒子の固着量が足りなくなるなどを防止でき、意図した機能を発現し得る複合粒子を簡単に製造することができる。
【0018】
請求項11に係る発明では、前記カップリング剤を、前記ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/2当量以上添加することで、前記懸濁蒸発法で生成するゴム粒子の内側に前記機能性粒子を固着するようにしたことを要旨とする。
請求項11に係る発明によれば、カップリング剤を、ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/2当量以上添加するだけの簡単な調節で、機能性粒子をゴム粒子の表面に付けるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の内側に固着するようにコントロールすることができる。機能性粒子をゴム粒子に内包されるようにコントロールすることができるので、ゴム粒子の表面に付いた機能性粒子が邪魔になったり、ゴム粒子内側における機能性粒子の固着量が足りなくなるなどを防止でき、意図した機能を発現し得る複合粒子を簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る複合粒子によれば、ゴム粒子に固着された機能性粒子による機能を好適に発現し得る。本発明に係る複合粒子の製造方法によれば、ゴム粒子に固着された機能性粒子による機能を好適に発現し得る複合粒子を簡単に生成し得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る複合粒子およびその製造方法につき、以下に説明する。
【0022】
本発明に係る複合粒子は、球状に形成されたゴム粒子と、このゴム粒子にカップリング剤を介して固着された機能性粒子とから構成される。複合粒子は、ゴム粒子と化学的に結合したカップリング剤に、機能性粒子が化学的に結合している。複合粒子は、ゴム粒子の表面に機能性粒子を固着して、ゴム粒子の表面が機能性粒子で被覆された所謂コア・シェル構造としたり、またはゴム粒子の内側に機能性粒子を固着した機能性粒子内包構造とすることができる。ここで、複合粒子では、カップリング剤の反応性官能基がゴム粒子の主鎖をなす二重結合との加硫反応により化学的に結合し、カップリング剤の加水分解性基が機能性粒子と水素結合および/または共有結合により結合しており、ゴム粒子に機能性粒子が強固に安定した状態で固着されている。
【0023】
前記ゴム粒子は、主鎖に二重結合を有するジエン系ゴムが用いられ、ポリブタジエンまたはポリイソプレンから選択されるゴムで構成しても、ポリブタジエンおよびポリイソプレンを組み合わせて構成してもよい。また、ゴムとしては、異性体も含み、ポリブタジエンであれば、1,2−ポリブタジエンや1,4−ポリブタジエンなどの構造異性体を、単独またはこれらの異性体を組み合わせて構成してもよい。更に、ゴム粒子は、全体を単一のゴムで構成しても、化学的構造が異なる複数のゴムを重ねた複層構造としてもよい。ここで、化学的構造が異なるゴムとは、異なる分子式で表される関係と、同一の分子式であっても構造が異なる異性体の関係とをいう。すなわち、ゴム粒子は、例えば1,2−ポリブタジエンと1,4−ポリブタジエンとが内外に重なる二重構造としても、ポリブタジエンとポリイソプレンとが内外に重なる二重構造としてもよい。ゴム粒子の平均粒径は、複合粒子の用途などに応じて適宜設定されるが、例えば1μm〜1000μmの範囲、好ましくは3μm〜700μmの範囲がよい。そして、前に挙げたジエン系ゴムは、主鎖に二重構造を有しているので、他の材料を結合させるための官能基をゴムに導入する面倒なプロセスが不要であるメリットがある。また、ゴム粒子は、ゴム特有の弾力性などの物性を有している。
【0024】
前記機能性粒子としては、複合粒子に要求される機能に応じて種々の材料が用いられ、無機材料および有機材料の何れも用いることができる。機能性粒子として無機材料を用いる場合は、酸化ダイヤ、酸化セリウム、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、窒化アルミ、シリカ等を挙げることができる。機能性粒子として有機材料を用いる場合は、高分子化合物に関しては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルアクリレートポリマー、ヒドロキシアクリルアミドポリマー、セルロース、プルランキトサン、でんぷん、グルコマンナン、アルギン酸など、水酸基を有するポリマーなどが挙げられる。ここで、機能性粒子としては、カップリング剤に導入し得るもの、すなわちカップリング剤が有する加水分解性基と化学的に結合し得る材料であれば採用することができる。機能性粒子を機能で説明すると、酸化チタンや酸化亜鉛などの光触媒、研磨材やブラスト材として用いられる酸化セリウム、炭化ケイ素、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ボロンカーバイトなどの硬質無機材料、アルミナやボロンナイトライドなどの熱伝導性材料が挙げられる。また、機能性粒子としては、ヘクトライト、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、セリサイト、カオリナイト、石英などの粘土鉱物も採用することができる。機能性粒子は、母材としてのゴム粒子よりも粒径が小さく設定され、平均粒径が0.001μm〜30μmの範囲、好ましくは0.007μm〜20μmの範囲がよい。すなわち、機能性粒子の粒径がゴム粒子と比べて非常に小さいので、ゴム粒子の粒径が複合粒子の粒径にほぼ対応している。機能性粒子は、単一の材料を用いるのに限らず、複数の材料を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
前記カップリング剤は、ゴム粒子の主鎖をなす二重結合と反応する反応性官能基と、機能性粒子と化学的に係合して該機能性粒子を担持する加水分解性基とを、1つの分子中に有している。ここで、カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコネート系などを用いることができ、この中でもシラン系のカップリング剤が好適である。反応性官能基としては、チオール基(メルカプト基)、ビニル基、アリル基、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基などが挙げられ、この中でもゴムの二重結合と加硫反応するチオール基が好適である。加水分解性基としては、機能性粒子と化学的に結合して該機能性粒子を導入し得るものであればよく、例えばアルコキシ基などの溶媒中で加水分解が生じるものが挙げられ、アルコキシ基としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。シラン系カップリング剤は、反応性官能基としてメルカプト基を有するメルカプトアルコキシシランが好適であり、反応性官能基としてビニル基を有するア(メタ)クリロキシアルコキシシランや、反応性官能基としてアリル基を有するアリルアルコキシシランなどが挙げられる。なお、機能性粒子として挙げた前記無機材料は、カップリング剤の加水分解性基としてのアルコキシ基と何れも反応し得るものである。また、一般的に加硫反応に用いる多硫化物をゴム粒子に導入してもよい。多硫化物の導入量によって、加硫反応でゴム粒子の硬さを制御することも可能である。
【0026】
前記複合粒子は、ゴム粒子に対するカップリング剤の配合量を調節することで、機能性粒子をゴム粒子の表面に固着したり、機能性粒子をゴム粒子の内側に固着するように、ゴム粒子における機能性粒子の固着位置をコントロールすることができる。具体的には、カップリング剤をゴム粒子を構成するゴムの二重結合に対して、1/32当量以上でかつ1/2当量より少なく配合することで、ゴム粒子の表面に機能性粒子を固着した複合粒子とすることができる。また、カップリング剤をゴム粒子を構成するゴムの二重結合に対して、1/2当量以上配合することで、ゴム粒子の内側に機能性粒子を固着した複合粒子とすることができる。
【0027】
次に、複合粒子の製造方法について説明する。第1の製造方法では、ゴム粒子をまず生成し、得られたゴム粒子にカップリング剤を介して機能性粒子を固着している。また、第2の製造方法では、懸濁蒸発法によりゴム粒子を生成するときにカップリング剤を介して機能性粒子を固着している。
【0028】
前記第1の製造方法において、球状のゴム粒子は、懸濁蒸発法や粉砕法や溶融法などにより調製することができ、この中でも、微細で真円度が高いゴム粒子を得ることができることから懸濁蒸発法を用いるのが好ましい。また、第2の製造方法では、懸濁蒸発法により球状のゴム粒子を生成するのに合わせて、カップリング剤を導入すると共に導入したカップリング剤を介して機能性粒子を固着している。懸濁蒸発法は、例えばJournal of Chromatography A, Vol.1082, pp.185-192, 2005などのように、ゴムを有機溶媒に溶解させたゴム溶液を水系の粘性媒体(水系媒体)に投与し、水中でゴム溶液の液滴を形成させ、加熱しながら有機溶媒を蒸発させて、球状のゴム粒子を得る方法である。懸濁蒸発法による場合は、前述したポリブタジエンやポリイソプレンなどの原料としてのゴムを有機溶媒に溶解したゴム溶液を調製する。ここで、有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルムや二塩化エタン等の有機ハロゲン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素等の、水と混ざらず、相分離を起こす溶媒を用いることができる。なお、ゴム溶液は、0℃〜有機溶媒の沸点以下で調製を行うことができ、室温で調製すればよい。ゴム溶液において、ゴムの有機溶媒中の濃度は、0.1wt%〜20wt%の範囲、好ましくは0.5wt%〜10wt%の範囲に設定される。ゴムの濃度が0.1wt%より低いと得られるゴム粒子の収量が少なくなり、20wt%より高いとゴム溶液の粘性が高くなり過ぎて、ゴムを粒子化することができない。
【0029】
前記ゴム溶液を、ポリビニルアルコール水溶液、でんぷん水溶液、ゼラチン水溶液、ポリアクリルアミド水溶液、ポリビニルピロリドン水溶液などの非イオン性高分子水溶液、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンイミン、N,N-ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドポリマー、アルギン酸などのイオン性高分子水溶液等の水系媒体に混合した懸濁液を調製する。ここで、水系媒体に混合する高分子の濃度は、0.1wt%〜20wt%の範囲、好ましくは0.5wt%〜10wt%の範囲に設定される。高分子の濃度が0.1wt%より低いと、水系媒体中で形成させるゴム溶液からなる液滴が安定せずにゴム粒子が得られず、20wt%より高くなると、ゴム粒子から高分子の除去が困難となる。水系媒体とゴム溶液の割合は、体積比で、3:7(V/V)〜9.9:0.1(V/V)の範囲、好ましくは5:5(V/V)〜8:2(V/V)の範囲に設定される。3:7(V/V)より水系媒体の割合が小さくなると、粒子化浴(懸濁液)における水系媒体と液滴との海−島構造が逆転し、ゴム粒子が得られず、9.9:0.1より水系媒体の割合が大きくなるとゴム粒子の収量が低くなり、ゴム粒子の回収が難しくなる。
【0030】
そして、懸濁液を、ホモジナイザー等の撹拌手段で撹拌することで、前記ゴムを含むゴム溶液と水系媒体との相分離により、懸濁液中に該ゴム溶液からなる液滴を形成させる。ここで、撹拌により液滴を形成しながら加熱して、形成された液滴から有機溶媒を蒸発させることで、液滴に残るゴム分が固化して球状のゴム粒子が生成される。ここで、ゴムの粒子化に際する懸濁液の温度は、有機溶媒の沸点以下を目安にして、その前後のプラスマイナス10℃の範囲内とすることが好ましい。水系媒体の突沸を防ぎつつ弱く減圧しながら、懸濁液の温度は、その時の圧力の有機溶媒の沸点以下、あるいは沸点のプラスマイナス10℃に設定される。なお、有機溶媒の沸点より20℃以上になると急激な有機溶媒の蒸発により、ゴム粒子の破壊が生じる。懸濁液での粒子化時間は、液滴からの有機溶媒の完全な蒸発により、適宜終了することができる。粒子化時間は、3時間〜48時間、好ましくは8時間〜24時間の範囲に設定され、48時間より長く撹拌すると、ゴム粒子が壊れてしまう。粒子化時間が3時間以下となると、ゴム粒子の形状が定まらず、ゴム粒子の粘着が生じる。懸濁液の撹拌速度は、液滴を安定化できれば、特に限定されないが、撹拌速度が大きくなれば、得られるゴム粒子の粒子径を小さくすることができる。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行って懸濁液からゴム粒子を回収し、ゴム粒子を水で洗浄して水系媒体を除去した後に、減圧乾燥を行っている。なお、ゴム粒子を生成する際に、光架橋を行うこともでき、得られるゴム粒子の表面を硬化させることも可能である。
【0031】
本件において、ボルテクスミキサー、マグネッティックスターラーによるかき混ぜ、内部超音波、外部超音波、ホモジナイザー、オーバーヘッドスターラーなどの撹拌手段による撹拌があげられるが、液滴が形成されたり、分散対象が液中で分散すればよく、これらの撹拌方法に限定されるものではない。
【0032】
(第1の製造方法)
前記第1の製造方法について説明する。複合粒子は、機能性粒子にカップリング剤を導入した後に、カップリング剤を介してゴム粒子の表面に機能性粒子を固着して生成しても(第1固着方法)、ゴム粒子にカップリング剤を導入した後に、カップリング剤を介して機能性粒子をゴム粒子の表面に固着して生成してもよい(第2固着方法)。また、複合粒子は、ゴム粒子と機能性粒子とカップリング剤とを共存させて、ゴム粒子の表面にカップリング剤を介して機能性粒子を固着して生成することもできる(第3固着方法)。第1固着方法のように、機能性粒子にカップリング剤を先に導入することで、機能性粒子全体をカップリング剤で被覆させることができる。また、第2固着方法のように、ゴム粒子にカップリング剤を先に結合させた後に、機能性粒子を固着させると、ゴム粒子の表面に固着された機能性粒子の外側をカップリング剤で覆わないようにすることができる。従って、ダイヤモンドや酸化セリウム(CeO
2:セリア)や炭化ケイ素(SiC)などでゴム粒子の表面を被覆して、機械研磨のような硬さ機能のみ要求される用途の複合粒子の場合は、機能性粒子にカップリング剤を先に導入しても、ゴム粒子にカップリング剤を先に導入しても何れであってもよい。アルミン酸化合物やイットリウム系化合物、硫化亜鉛化合物などを機能性粒子として表面修飾し、耐水性や耐湿性が要求される発光材料用途の複合粒子の場合は、第1固着方法のように、機能性粒子にカップリング剤を先に導入すると、耐水性を向上させる利点が出てくる。一方、ガラスの化学研磨に用いられる酸化セリウムなどを機能性粒子とする場合は、第2固着方法のように、ゴム粒子にカップリング剤を先に導入した後に、酸化セリウムを固着させなければ、酸化セリウムの表面全体がカップリング剤で覆われて化学研磨機能が損なわれてしまう。また、ダイヤモンドや酸化セリウム(CeO
2:セリア)や炭化ケイ素(SiC)などのフォノン伝導性の熱伝導材料やグラフェンやグラファイト、金属などの自由電子による熱伝導材料などを機能性粒子として用いて放熱材料としての複合粒子を構築する場合には、熱伝導材料同士を直接接触したほうが放熱性は向上するため、第2固着方法のように、ゴム粒子にカップリング剤を導入し、その後に熱伝導材料としての機能性粒子を固着したほうがよい。
【0033】
(第1固着方法)
前記第1固着方法によって複合粒子を得る場合について説明する。カップリング剤を、有機溶媒中に溶解させ、この溶液中に機能性粒子を分散した分散液を調製する。ここで、カップリング剤の導入時に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコールや、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランやジオキサン、クロロホルム、二塩化エタン、ジクロロメタンなどの非イオン性の溶媒等の有機溶媒が挙げられるが、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有する有機溶媒以外の溶媒であれば、適用できる。分散液を、撹拌手段でかきまぜながら、カップリング剤の加水分解性基と機能性粒子とを反応させることで、機能性粒子に、ゴムの二重結合と反応し得る反応性官能基を導入する。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行い、反応性官能基が導入された機能性粒子を回収する。カップリング剤と機能性粒子との反応時間は、1時間〜96時間、好ましくは3時間〜24時間の範囲に設定される。反応時間が1時間未満であると機能性粒子にカップリング剤が結合せず、96時間より長くなるとカップリング剤の劣化が生じる。カップリング剤と機能性粒子との反応温度は、5℃〜分散する有機溶媒の沸点プラス10℃の範囲、好ましくは20℃〜有機溶媒の沸点からマイナス10℃の範囲に設定される。機能性粒子に対するカップリング剤の割合は、0.001ml/g−機能性粒子〜500ml/g−機能性粒子の範囲、好ましくは0.5ml/g−機能性粒子〜100ml/g−機能性粒子の範囲に設定される。カップリング剤の割合が500ml/g−機能性粒子より多くても、機能性粒子表面にカップリング剤を導入できるが、カップリング剤のコストがかかりすぎる。また、カップリング材の割合が0.001ml/g−機能性粒子より少ないと、ゴム粒子に固着することができる十分な量の官能基を導入することはできない。機能性粒子およびカップリング剤に対する有機溶媒の割合は、過剰に加えてもよいが、機能性粒子1gに対して、10ml〜100mlの範囲がよい。なお、機能性粒子1gに対してカップリング剤の量が10.0mlより多い場合は、有機溶媒を入れなくてもよく、このときの反応温度は、室温〜100℃が好ましい。
【0034】
反応性官能基が導入された機能性粒子とゴム粒子とを、有機溶媒中に分散する。そして、機能性粒子とゴム粒子とを有機溶媒中に分散した分散液を撹拌手段でかきまぜて、反応性官能基とゴム粒子の二重結合とを加硫反応させることで、ゴム粒子の表面に機能性粒子が固着し、これにより複合粒子が生成される。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行い、複合粒子を回収する。反応性官能基が導入された機能性粒子とゴム粒子と分散する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコールや、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトンなどのポリブタジエンを溶かさない、有機溶媒が挙げられる。また、カップリング剤のシロキサン結合を破壊するカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を有する有機溶媒や酸水溶液、水、アルカリ水溶液は、用いることはできない。カップリング剤とゴム粒子との反応時間は、1時間〜96時間、好ましくは3時間〜24時間の範囲に設定される。反応時間が1時間未満であると機能性粒子にカップリング剤が結合せず、96時間より長くなるとカップリング剤の劣化が生じる。カップリング剤とゴム粒子との反応温度は、5℃〜分散する有機溶媒の沸点プラス10℃の範囲、好ましくは20℃〜有機溶媒の沸点からマイナス10℃の範囲に設定される。ゴム粒子に対する機能性粒子との割合は、0.001g/g−ゴム粒子〜20g/g−ゴム粒子の範囲、好ましくは、0.1g/g−ゴム粒子〜10g/g−ゴム粒子の範囲に設定される。機能性粒子の割合が、20g/g−ゴム粒子より大きくなると、機能性粒子の脱落が生じ易くなる。機能性粒子の割合が、0.001g/g−ゴム粒子より小さくなると、機能性粒子の機能を十分に発現できるだけの量がゴム粒子の表面に固着されない。機能性粒子およびゴム粒子に対する有機溶媒の割合は、ゴム粒子1gに対して、5ml〜500ml、好ましくは7.5ml〜100mlの範囲がよい。1mlより少なくなるとゴム粒子を分散できない。有機溶媒が500mlより多くなると、機能性粒子とゴム粒子との接触率が低くなり、ゴム粒子の表面に機能性粒子が固着できなくなる。
【0035】
(第2固着方法)
前記第2固着方法によって複合粒子を得る場合について説明する。カップリング剤を有機溶媒に溶解させ、この溶液中にゴム粒子を分散した分散液を調製する。ここで、使用可能な有機溶媒は、前述した第1固着方法と同じである。分散液を、ホモジナイザー等の撹拌手段でかきまぜながら、カップリング剤の反応性官能基とゴム粒子の二重結合とを加硫反応させることで、ゴム粒子に、機能性粒子と化学的に結合し得る加水分解性基を導入する。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行い、加水分解性基が導入されたゴム粒子を回収する。カップリング剤とゴム粒子との反応時間は、1時間〜96時間、好ましくは3時間〜24時間の範囲に設定される。反応時間が1時間未満であるとゴム粒子にカップリング剤が結合せず、96時間より長くなるとカップリング剤の劣化が生じる。カップリング剤とゴム粒子との反応温度は、5℃〜分散する有機溶媒の沸点プラス10℃の範囲、好ましくは20℃〜有機溶媒の沸点からマイナス10℃の範囲に設定される。ゴム粒子に対するカップリング剤の割合は、0.001ml/g−ゴム粒子〜500ml/g−ゴム粒子の範囲、好ましくは0.5ml/g−ゴム粒子〜100ml/g−ゴム粒子の範囲に設定される。カップリング剤の割合が500ml/g−ゴム粒子より多くても、ゴム粒子表面にカップリング剤を導入できるが、カップリング剤のコストがかかりすぎる。また、カップリング剤の割合が0.001ml/g−ゴム粒子より少ないと、機能性粒子を固着することができる十分な量の官能基を導入することはできない。ゴム粒子およびカップリング剤に対する有機溶媒の割合は、ゴム粒子1gに対して、500mlまで添加可能であるが、好ましくは10ml〜100mlの範囲がよい。なお、ゴム粒子1gに対してカップリング剤の量が10.0mlより多い場合は、有機溶媒を入れなくてもよく、このときの反応温度は、室温〜100℃が好ましい。
【0036】
加水分解性基が導入されたゴム粒子と機能性粒子とを、有機溶媒中に分散する。そして、機能性粒子とゴム粒子とを有機溶媒中に分散した分散液を撹拌手段でかきまぜて、加水分解性基と機能性粒子とを結合することで、ゴム粒子の表面に機能性粒子が固着し、これにより複合粒子が生成される。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行い、複合粒子を回収する。ここで、使用可能な有機溶媒は、前述した第1固着方法と同じである。また、反応時間、反応温度、ゴム粒子に対する機能性粒子の割合、機能性粒子およびゴム粒子に対する有機溶媒の割合等の諸条件は、第1固着方法と同様に設定することができる。
【0037】
(第3固着方法)
前記第3固着方法によって複合粒子を得る場合について説明する。カップリング剤を有機溶媒に溶解させ、この溶液中にゴム粒子および機能性粒子を分散した分散液を調製する。ここで、使用可能な有機溶媒は、前述した第1固着方法と同じである。そして、分散液を撹拌手段でかきまぜて、カップリング剤の反応性官能基とゴム粒子の二重結合と加硫反応により結合すると共に、カップリング剤の加水分解性基と機能性粒子とを結合する。これによりゴム粒子の表面に機能性粒子が固着した複合粒子が生成される。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行い、複合粒子を回収する。反応時間は、1時間〜96時間、好ましくは3時間〜24時間の範囲に設定される。反応時間が1時間未満であるとゴム粒子および機能性粒子にカップリング剤が結合せず、96時間より長くなるとカップリング剤の劣化が生じる。また、反応温度は、5℃〜分散する有機溶媒の沸点プラス10℃の範囲、好ましくは20℃〜有機溶媒の沸点からマイナス10℃の範囲に設定される。ゴム粒子に対する機能性粒子の割合は、0.001g/g−ゴム粒子〜20g/g−ゴム粒子の範囲、好ましくは0.1g/g−ゴム粒子〜10g/g−ゴム粒子の範囲に設定される。機能性粒子の割合が、20g/g−ゴム粒子より大きくなると、機能性粒子の脱落が生じ易くなる。機能性粒子の割合が、0.001g/g−ゴム粒子より小さくなると、機能性粒子の機能を十分に発現できるだけの量がゴム粒子の表面に固着されない。カップリング剤の割合は、ゴム粒子と機能性粒子との総量に対し、0.005ml/g−(ゴム粒子+機能性粒子)〜500ml/g−(ゴム粒子+機能性粒子)の範囲、好ましくは0.5ml/g−(ゴム粒子+機能性粒子)〜100ml/g−(ゴム粒子+機能性粒子)の範囲に設定される。カップリング剤の割合が、500ml/g−(ゴム粒子+機能性粒子)より大きくても、機能性粒子およびゴム粒子にカップリング剤を導入できるが、カップリング剤のコストがかかりすぎる。また、カップリング剤の割合が、0.005ml/g−(ゴム粒子+機能性粒子)より小さくなると、機能性粒子をゴム粒子に固着することができる十分な量の官能基を導入することはできない。機能性粒子およびゴム粒子に対する有機溶媒の割合は、ゴム粒子と機能性粒子の総量1gに対して、5ml〜500mlの範囲、好ましくは7.5ml〜100mlの範囲がよい。有機溶媒が1mlより少ないとゴム粒子を分散できない。有機溶媒が500mlより多くなると、機能性粒子とゴム粒子との接触率が低くなり、ゴム粒子の表面に機能性粒子を固着できなくなる。
【0038】
(第2の製造方法)
前記第2の製造方法では、前述した懸濁蒸発法によりゴム粒子を生成しており、当該製造方法に用いられる有機溶媒や水系溶媒などの種類や配合割合、条件、操作手順や操作方法などは、前記懸濁蒸発法で説明したことを採用できる。まず、ポリブタジエン(PBD)やポリイソプレンなどの原料としてのゴムを有機溶媒(
図11ではジクロロメタン:CH
2Cl
2)に溶解したゴム溶液を調製する(
図11(a))。ゴム溶液にカップリング剤を添加し、このカップリング剤−ゴム溶液を、ホモジナイザー等の撹拌手段でかきまぜながら、カップリング剤の反応性官能基とゴムの二重結合とを加硫反応させることで、ゴムに、機能性粒子と化学的に結合し得る加水分解性基を導入する。カップリング剤とゴムとの反応時間は、1時間〜96時間、好ましくは3時間〜24時間の範囲に設定される。反応時間が1時間未満であるとゴムにカップリング剤が結合せず、96時間より長くなるとカップリング剤の劣化が生じる。カップリング剤とゴムとの反応温度は、5℃〜分散する有機溶媒の沸点プラス10℃の範囲、好ましくは20℃〜有機溶媒の沸点の範囲に設定される。ゴム粒子に対するカップリング剤の割合は、0.001ml/g−ゴム粒子〜500ml/g−ゴム粒子の範囲、好ましくは0.5ml/g−ゴム粒子〜100ml/g−ゴム粒子の範囲に設定される。カップリング剤の割合が500ml/g−ゴム粒子より多くても、ゴム粒子にカップリング剤を導入できるが、カップリング剤のコストがかかりすぎる。また、カップリング剤の割合が0.001ml/g−ゴム粒子より少ないと、機能性粒子を固着することができる十分な量の官能基を導入することはできない。ゴム粒子およびカップリング剤に対する有機溶媒の割合は、ゴム粒子1gに対して、500mlまで添加可能であるが、好ましくは10ml〜100mlの範囲がよい。なお、ゴム粒子1gに対してカップリング剤の量が10.0mlより多い場合は、有機溶媒を入れなくてもよく、このときの反応温度は、室温〜100℃が好ましい。
【0039】
機能性粒子を有機溶媒に添加し、超音波照射等により機能性粒子を有機溶媒中に分散させた分散液を調製する。ここで、分散液に用いる有機溶媒は、ゴム溶液と同じものである。機能性粒子分散液を前記カップリング剤−ゴム溶液に混合し、この混合液を水系溶媒(
図11ではポリビニルアルコール:PVA)に加えて懸濁液を調製する。そして、懸濁液を、ホモジナイザー等の撹拌手段で撹拌することで(
図11(b))、前記ゴムを含むゴム溶液水系媒体との相分離により、懸濁液中に該ゴム溶液からなる液滴を形成する。この際に、ゴム溶液中のゴムに加硫反応により反応性官能基が結合しているカップリング剤の加水分解性基と、機能性粒子とが結合し、ゴムに機能性粒子がカップリング剤を介して担持される。また、撹拌によりゴム溶液の液滴を形成しながら加熱して、形成されたゴム溶液の液滴から有機溶媒を蒸発させることで(
図11(c))、液滴に残るゴム分が固化して球状のゴム粒子が生成されるのに合わせて、機能性粒子がカップリング剤によりゴム粒子に固着した複合粒子が得られる(
図11(d))。懸濁蒸発法における液滴形成および有機溶媒蒸発時の温度条件、粒子化時間などは、前述した条件を採用できる。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行い、無機微粒子が固着されたゴム粒子からなる複合粒子を懸濁液より回収し、複合粒子を水で洗浄して水系媒体を除去した後に、減圧乾燥を行う。
【0040】
懸濁蒸発法を用いる前記第2の製造方法では、ゴム溶液中のゴムに対するカップリング剤の配合量を調節することで、機能性粒子におけるゴム粒子に固着する位置を、ゴム粒子の表面または内側になるようにコントロールすることができる。具体的には、カップリング剤をゴム溶液に添加する際に、該ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/32当量以上でかつ1/2当量より少ない配合量に設定して前記懸濁蒸発法を行うことで、ゴム粒子の表面に機能性粒子が固着した複合粒子を得ることができる。ここで、カップリング剤の配合量は、ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/16当量以上でかつ1/2当量より少ない範囲が好ましく、1/8当量以上でかつ1/2当量より少ない範囲がより好ましい。カップリング剤の配合量を比較的少なく設定してカップリング剤の反応性官能基をゴムの二重結合に対して部分的に反応させると、カップリング剤における加水分解性基が存在する部位が、水系媒体における水との界面に分布し易くなる。機能性粒子を含むゴム溶液と水系媒体とを撹拌しつつ有機溶媒を蒸発させるゴムの粒子化に際して、親水性を有する機能性粒子が、ゴムと水との界面の方向に拡散する。ここで、ゴムと水との界面には、カップリング剤の加水分解性基が存在するために、機能性粒子がゴムの系外に分配されることはなく、ゴムの粒子化が完了するまで機能性粒子が当該界面で固定されるものと考えられる。なお、カップリング剤の配合量が、ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/32当量より少なくなると、機能性粒子をゴム粒子の表面に固着できる十分な量のカップリング剤を導入することができず、機能性粒子が脱落し易くなってしまう。
【0041】
カップリング剤をゴム溶液に添加する際に、該ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/2当量以上の配合量に設定して前記懸濁蒸発法を行うことで、ゴム粒子の内側に機能性粒子が固着した複合粒子を得ることができる。ここで、カップリング剤の配合量は、ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/2当量〜2当量の範囲が好ましく、2/3当量〜1当量の範囲がより好ましい。カップリング剤の配合量を比較的多く設定すると、表面が親水性である機能性粒子が水系媒体側に拡散する前にカップリング剤でゴムに固定化され、これにより機能性粒子がゴムに内包された状態でゴムが粒子化するものと考えられる。カップリング剤の配合量をゴム溶液中のゴムの二重結合に対して2当量より多く設定しても、カップリング剤をゴムに導入することができる。しかし、カップリング剤の配合量を2当量より多くするのに応じて、機能性粒子の固着量および固着強度が増すものではないことから、カップリング剤の配合量を2当量より大きくするとコストがかかりすぎる。
【0042】
(二重構造のゴム粒子)
前述したゴム粒子としては、単一の化学的構造のゴムだけで構成してもよいが、化学的構造および溶解パラメータが異なる2つのゴムからなる二重構造(コア・シェル構造)のゴム粒子を前述した懸濁蒸発法によって生成することができる。なお、懸濁蒸発法の基本的な操作および条件は、前述した事項を採用し得る。懸濁蒸発法によって二重構造のゴム粒子を生成する場合は、まず、化学的構造が異なって溶解パラメータが異なる2つのゴムを、ジクロロメタン、クロロホルムや二塩化エタン、クロロトルエン等の有機ハロゲン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素等の有機溶媒に相溶させたゴム溶液を調製する。ここで、化学的構造が異なるとは、ポリブタジエンとポリイソプレンとの関係のように異なる分子式で表されものと、1,2−ポリブタジエンと1,4−ポリブタジエンとの関係のように同一の分子式であっても構造が異なる異性体をいう。ゴム溶液を、ジクロロメタン溶液、シクロヘキサン溶液等の溶液、または、ポリビニルアルコール水溶液、でんぷん水溶液、ゼラチン水溶液、ポリアクリルアミド水溶液、ポリビニルピロリドン水溶液などの非イオン性高分子水溶液、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンイミン、N,N-ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドポリマー、アルギン酸などのイオン性高分子水溶液等の水系媒体に分散して、ゴム溶液を混合した懸濁液を調製する。次に、懸濁液を、撹拌手段で撹拌することで、懸濁液中に前記2つのゴムを含むゴム溶液からなる液滴を形成する。懸濁液中においてゴム溶液からなる液滴を形成する際に、ゴム溶液に相溶している2つのゴムの溶解パラメータが異なっているために、液滴の中で2つのゴムの相分離が生じる。すなわち、相分離によって、液滴を囲う水系媒体の溶解パラメータと離れた溶解パラメータを有する第1のゴムが液滴の中心側(水系媒体よりも遠い側)となり、第1のゴムよりも水系媒体の溶解パラメータと近い溶解パラメータを有する第2のゴムが液滴の外周側(水系媒体に近い側)となる。そして、撹拌により液滴を形成した後に、または撹拌により液滴を形成しながら、懸濁液を撹拌しつつ加熱して液滴から有機溶媒を蒸発させることで、液滴にゴム分だけが残って固化して、内側に配置された第1のゴムとこの第1のゴムの外側を覆う第2のゴムとからなる二重構造の球状のゴム粒子が生成される。そして、遠心分離機などの固液分離手段によって固液分離を行って懸濁液からゴム粒子を回収し、ゴム粒子を水で洗浄して水系媒体を除去した後に、減圧乾燥を行っている。
【0043】
前述した懸濁蒸発法で得られる二重構造のゴム粒子は、ゴムの溶解パラメータと、このゴムを溶解したゴム溶液を分散する水系媒体の溶解パラメータとの関係により、第1のゴムと第2のゴムとの内外配置を簡単に変更することができる。すなわち、溶解パラメータの異なる第1のゴムと第2のゴムが共存するゴム溶液を分散する水系媒体として、第2のゴムよりも第1のゴムと近い溶解パラメータを有するものを採用すれば、第2のゴムが液滴中で内側となると共に第1のゴムが液滴中で外側になるように相分離が生じる。これにより、内側に配置された第2のゴムとこの第2のゴムの外側を覆う第1のゴムとからなる二重構造の球状のゴム粒子を生成し得る。より具体的に説明すると、1,2−ポリブタジエンの溶解パラメータは、16.95[J/cm
3]
1/2であり、1,2−ポリブタジエンの構造異性体である1,4−ポリブタジエンの溶解パラメータは、17.52[J/cm
3]
1/2である。1,2−ポリブタジエンと1,4−ポリブタジエンとを相溶させたゴム溶液を、溶解パラメータが18.84[J/cm
3]
1/2であるジクロロメタン溶液(水系媒体)に分散した際には、ジクロロメタン溶液の溶解パラメータに近い1,4−ポリブタジエンがジクロロメタン溶液近傍、すなわち液滴中で外側に分布する。これに対して、ジクロロメタン溶液の溶解パラメータに遠い1,2−ポリブタジエンがジクロロメタン溶液より離れた側、すなわち液滴中で内側に分布する。従って、水系媒体としてジクロロメタン溶液を用いた場合は、1,2−ポリブタジエンを1,4−ポリブタジエンで被覆する二重構造のゴム粒子を得ることができる。また、1,2−ポリブタジエンと1,4−ポリブタジエンとを相溶させたゴム溶液を、溶解パラメータが16.50[J/cm
3]
1/2であるシクロヘキサン溶液(水系媒体)に分散した際には、シクロヘキサン溶液の溶解パラメータに近い1,2−ポリブタジエンがシクロヘキサン溶液近傍、すなわち液滴中で外側に分布する。これに対して、シクロヘキサン溶液の溶解パラメータに遠い1,4−ポリブタジエンがシクロヘキサン溶液より離れた側、すなわち液滴中で内側に分布する。従って、水系媒体としてシクロヘキサン溶液を用いた場合は、1,4−ポリブタジエンを1,2−ポリブタジエンで被覆する二重構造のゴム粒子を得ることができる。なお、溶解パラメータは、Fedors, R. F.; Polym. Eng. Sci. 1974, 14, 147-154.の計算に従って算出している。前述した二重構造のゴム粒子を生成する場合であっても、前記第2の製造方法を適用できる。
【0044】
前述した構成の複合粒子によれば、ゴム粒子の主鎖をなす二重結合と加硫反応により結合する反応性官能基と、機能性粒子と化学的に結合する加水分解性基とを有するカップリング剤を介して、ゴム粒子に機能性粒子が化学的結合により固着されているので、機能性粒子がゴム粒子から脱落し難い。反応性官能基としてチオール基を有するシラン系カップリング剤であると、ゴム粒子の主鎖をなす二重結合とチオール基との間で加硫反応(エン−チオール反応)が、特別な操作を行ったり特別な条件を設定することなく円滑に生じ、ゴム粒子の表面にカップリング剤(加水分解性基)を導入することができる。また、加水分解性基としてアルコキシ基を有するシラン系カップリング剤であると、アルコキシ基が加水分解し、シラノール基を生成して、このシラノール基と無機材料からなる機能性粒子の表面にある水酸基との脱水縮合反応を経て機能性粒子の表面との強固な共有結合が生じる。このように、複合粒子では、ゴム粒子に対して架橋により強固に結合していると共に、機能性粒子に対して共有結合により強固に結合しているから、ゴム粒子に機能性粒子を強固にかつ安定的に固着させることができる。しかも、複合粒子は、ゴム粒子の表面または内側に、機能性粒子を均一に分散させることができる。従って、複合粒子は、ゴム粒子とこのゴム粒子に固着した機能性粒子との夫々または協働による機能を適切に発揮することができる。
【0045】
前記複合粒子は、ゴム粒子の二重結合に対して1/32当量以上でかつ1/2当量より少なく配合したカップリング剤により、機能性粒子をゴム粒子の表面で固着することができる。すなわち、複合粒子は、カップリング剤の配合量を比較的少なくすることにより、機能性粒子をゴム粒子に内包させるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の表面に分散させた状態でカップリング剤により化学的に固着することができる。従って、複合粒子は、ゴム粒子の表面に機能性粒子を付けても該機能性粒子が脱落し難く、ゴム粒子とこのゴム粒子の表面に固着した機能性粒子との夫々または協働による機能を適切に発揮することができる。
【0046】
前記複合粒子は、ゴム粒子の二重結合に対して1/2当量以上配合したカップリング剤により、機能性粒子をゴム粒子の内側で固着することができる。すなわち、複合粒子は、カップリング剤の配合量を比較的多くすることにより、機能性粒子をゴム粒子の表面に付けるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の内側に包んだ状態でカップリング剤により化学的に固着することができる。従って、複合粒子は、例えばゴム粒子を変形させるような強い力が加わる用途であっても、ゴム粒子の内側から機能性粒子が押し出されて脱落し難く、ゴム粒子とこのゴム粒子の内側に存在する機能性粒子との夫々または協働による機能を適切に発揮することができる。
【0047】
前述した複合粒子の第1および第2の製造方法によれば、反応性官能基をゴム粒子の主鎖をなす二重結合との加硫反応により結合すると共に、加水分解性基を機能性粒子に対して水素結合することで、ゴム粒子に機能性粒子を固着している。すなわち、化学的な反応によってゴム粒子と機能性粒子とを固着しているので、ゴム粒子に対して機能性粒子を物理的に固着させる場合のように、大掛かりな設備や煩雑な手間を要さず、ゴム粒子に機能性粒子が強固に固着した複合粒子を簡単に得ることができる。しかも、懸濁蒸発法によってゴム粒子を生成することで、真円度の高い球状のゴム粒子を得ることができる。このように複合粒子の前記製造方法によれば、ゴム粒子に固着された機能性粒子による機能を好適に発現し得る複合粒子を簡単に生成し得る。
【0048】
前述した第2の製造方法によれば、ゴムへのカップリング剤の化学的結合およびカップリング剤への機能性粒子の化学的結合と、懸濁蒸発法によるゴム粒子の生成を合わせて行うことで、ゴム粒子の生成とゴム粒子へのカップリング剤による機能性粒子の導入とを別々に行う方法よりも、大きく手間を減らすことができる。また、ゴム粒子の生成および該ゴム粒子への機能性粒子の固着を、懸濁蒸発法による所謂ワンポットで行うことが可能になる。
【0049】
前述した第2の製造方法において、カップリング剤を、ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/32当量以上でかつ1/2より少なく添加するだけの簡単な調節で、機能性粒子をゴム粒子に内包させるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の表面に固着するようにコントロールすることができる。複合粒子において機能性粒子をゴム粒子の表面に固着するようにコントロールすることができるので、機能性粒子がゴム粒子の内側に入って該ゴム粒子の物性を変化させたり、ゴム粒子表面における機能性粒子の固着量が足りなくなるなどを防止でき、意図した機能を発現し得る複合粒子を簡単に製造することができる。
【0050】
前述した第2の製造方法において、カップリング剤を、ゴム溶液中のゴムの二重結合に対して1/2当量以上添加するだけの簡単な調節で、機能性粒子をゴム粒子の表面に付けるのではなく、機能性粒子をゴム粒子の内側に固着するようにコントロールすることができる。複合粒子において機能性粒子をゴム粒子に内包されるようにコントロールすることができるので、ゴム粒子の表面に付いた機能性粒子が邪魔になったり、ゴム粒子内側における機能性粒子の固着量が足りなくなるなどを防止でき、意図した機能を発現し得る複合粒子を簡単に製造することができる。
【0051】
前記懸濁蒸発法に際して、第1のゴムの溶解パラメータと、第2のゴムの溶解パラメータと、ゴムを溶解したゴム溶液を分散する水系媒体の溶解パラメータとの差による相互作用によって、第1のゴムと第2のゴムとが内外に重なる二重構造のゴム粒子を簡単に生成することができる。そして、前記複合粒子は、2つのゴムからなる二重構造のゴム粒子を用いることで、ゴム粒子の物性を調節することができ、複合粒子の機能を向上させることができる。
【0052】
溶解パラメータの相互関係により前記懸濁蒸発法で得られる二重構造のゴム粒子は、第1のゴムの物性と第2のゴムの物性とが複合して、単一のゴムでは得られない物性を得ることができる。例えば1,2−ポリブタジエンは、比較的硬いゴム材料であり、1,4−ポリブタジエンは、1,2−ポリブタジエンと比べて柔らかいゴム材料であることが知られている。1,2−ポリブタジエンの外側を1,4−ポリブタジエンを覆った二重構造のゴム粒子は、1,4−ポリブタジエンにより表面を柔軟にできるが、比較的硬い1,2−ポリブタジエンが芯材として存在しているので、全体としてつぶれにくくすることができるなど、単一のゴムだけでは達成できない機能を持たせることができる。また、1,4−ポリブタジエンの外側を1,2−ポリブタジエンを覆った二重構造のゴム粒子は、比較的硬い1,2−ポリブタジエンにより表面の強度や耐磨耗性など担保しつつ、内側の1,4−ブタジエンにより弾力性などを担保し得るといった、単一のゴムだけでは達成できない機能を持たせることができる。そして、二重構造のゴム粒子であっても、従来技術で説明したシリカゲル等の無機材料を比べて、弾力性を有して柔軟である。
【0053】
前述したゴムの外側を別のゴムで被覆する二重構造のゴム粒子を生成する、すなわち、ポリマー粒子に他のポリマー相を導入するには、特開2008−274006号公報、米国特許第5,972,552号公報、米国特許第5,973,025号公報などに示すように、ATRP重合法のようなポリマー粒子の表面にラジカルを発生させ、そこから、モノマーを重合させる方法や、特開2003−337125号公報に示すように、活性点を有するポリマーをあらかじめ調製し、これをポリマー粒子に導入する方法などが挙げられる。しかしながらこれらの方法は、内層にポリマー粒子、外層にポリマー相を設けることができるが、ポリマー粒子を調製してから表面を被覆するための複数プロセスを経る必要があり、非常に煩雑である。このような従来の方法と比べて、前述した二重構造のゴム粒子の製造方法によれば、懸濁蒸発法に際して、第1のゴムの溶解パラメータと、第2のゴムの溶解パラメータと、ゴムを溶解したゴム溶液を分散する水系媒体の溶解パラメータとの差による相互作用によって、第1のゴムと第2のゴムとが内外に重なる二重構造のゴム粒子を簡単に生成することができる。
【実施例】
【0054】
まず、前記第1の製造方法により複合粒子を製造する場合について説明する。
【0055】
(実施例のゴム粒子の生成)
45gの1,2−ポリブタジエンを、300mlのジクロロメタンに溶解したゴム溶液を、900mlの1wt%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液に添加して、懸濁液を調製した。懸濁液を、37℃になるように加熱した状態で、ホモジナイザーによって、150rpmの撹拌強度で24時間に亘ってかき混ぜてゴム溶液からなる液滴を形成し、液滴からジクロロメタンを蒸発させて、懸濁蒸発法によって1,2−ポリブタジエンからなるゴム粒子を得た。得られたゴム粒子を水で洗浄し、PVAを除去した後に、減圧乾燥を行った。ゴム粒子の回収率は91.27%であった。また、得られたゴム粒子の粒径は、300μm〜500μmの範囲にあった。なお、
図1は実施例に係るゴム粒子を示す模式図であり、ゴム粒子に符号10を付してある。実施例に係るゴム粒子の顕微鏡写真を
図5に示す。
図5に示すように、実施例のゴム粒子は、表面が滑らかで、真円に近い形状であることが判る。
【0056】
(機能性粒子への反応性官能基の導入)
10gのダイヤと、30mlの3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)とを、200mlのメタノール中に分散して、ホモジナイザーによってかき混ぜながら、室温で4時間に亘って反応させて、ダイヤに反応性官能基としてチオール基を導入した。なお、ダイヤは、粒径が4μm〜6μmの範囲にあるものを用いた。そして、遠心分離機で固液分離を行い、チオール基を導入したダイヤを回収した。回収率は98%であった。
【0057】
また、5gの窒化ホウ素(BN)と、15mlの3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)とを、100mlのメタノール中に分散して、ホモジナイザーによってかき混ぜながら、室温で4時間に亘って反応させて、窒化ホウ素に反応性官能基としてチオール基を導入した。なお、窒化ホウ素は、粒径が3.2μm〜17.1μmの範囲(平均粒径8μm)にあるものを用いた。そして、遠心分離機で固液分離を行い、チオール基を導入した窒化ホウ素を回収した。回収率は99.2%であった。
図2は、機能性粒子への反応性官能基の導入を説明する模式図であり、機能性粒子に符号12を付すと共にカップリング剤に符号14を付し、反応性官能基に符号16を付している。なお、
図2のRはアルキル基を示す。
【0058】
(実施例1の複合粒子の調製)
チオール基を導入した前記ダイヤ2gと、1,2−ポリブタジエンからなる前記ゴム粒子20gとを、150mlのメタノール中に分散して、かき混ぜながら、60℃で24時間に亘って反応させて、ゴム粒子の表面にダイヤを固着させた実施例1に係る複合粒子を得た。そして、遠心分離機で固液分離を行い、当該複合粒子を回収した。なお、回収量は20.22gであった。実施例1に係る複合粒子の顕微鏡写真を
図6に示す。
図6に示すように、実施例1の複合粒子は、ゴム粒子の表面にダイヤが分散して固着していることが判る。
【0059】
(実施例2の複合粒子の調製)
チオール基を導入した前記窒化ホウ素1gと、1,2−ポリブタジエンからなる実施例のゴム粒子10gとを、75mlのメタノール中に分散して、かき混ぜながら、60℃で24時間に亘って反応させて、ゴム粒子の表面に窒化ホウ素を固着させた実施例2に係る複合粒子を得た。そして、遠心分離機で固液分離を行い、当該複合粒子を回収した。なお、回収量は9.98gであった。実施例2に係る複合粒子の顕微鏡写真を
図7に示す。
図7に示すように、実施例2の複合粒子は、ゴム粒子の表面に窒化ホウ素が分散して固着していることが判る。
図3は、実施例の複合粒子18を示す模式図であり、ゴム粒子に符号10を付し、機能性粒子に符号12を付している。
【0060】
(ゴム粒子への加水分解性基の導入)
25mlのメタノールに、1,2−ポリブタジエンからなる実施例のゴム粒子3gと3mlの3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)とを加え、ホモジナイザーによってかき混ぜながら、60℃で4時間に亘って反応させて、実施例のゴム粒子に加水分解性基としてアルコキシ基を導入した。
図4は、ゴム粒子への加水分解性基の導入を説明する模式図であり、ゴム粒子に符号10を付し、加水分解性基に符号20を付してある。
【0061】
(実施例3の複合粒子の調製)
段落[0060]で説明したチオール基を導入した1,2−ポリブタジエン粒子からなる実施例のゴム粒子2gと平均粒径0.5μmの酸化セリウム0.2gを、30mlのメタノール中に分散して、かき混ぜながら、60℃で24時間に亘って反応させて、ゴム粒子の表面に酸化セリウムを固着させた実施例3に係る複合粒子を得た。そして、遠心分離機で固液分離を行い、当該複合粒子を回収した。なお、回収量は2.0gであった。実施例3に係る複合粒子の顕微鏡写真を
図8に示す。
図8に示すように、実施例3の複合粒子は、ゴム粒子の表面に酸化セリウムが分散して固着していることが判る。
【0062】
(変更例のゴム粒子の調製)
1,2−ポリブタジエンと1,4−ポリブタジエンを表1に示す割合で、105gのジクロロメタンに添加してゴム溶液を調製した。このゴム溶液を、300mlの1wt%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液に添加して、ゴム溶液を4.5%含む懸濁液を調製した。そして、懸濁液を、37℃になるように加熱した状態で、ホモジナイザーによって、150rpmの撹拌強度で24時間に亘ってかき混ぜて、懸濁液中にゴム溶液からなる液滴を形成し、液滴からジクロロメタンを蒸発させて、懸濁蒸発法によって二重構造のゴム粒子を得た。得られたゴム粒子を水で洗浄し、PVAを除去した後に、減圧乾燥を行った。
【0063】
【表1】
【0064】
変更例2に係るゴム粒子の顕微鏡写真を
図9および
図10に示す。
図9に示すように、変更例2のゴム粒子は、表面が滑らかで、真円に近い形状であることが判る。なお、1,2−ポリブタジエンの溶解パラメータは16.95[J/cm
3]
1/2であり、1,4−ポリブタジエンの溶解パラメータは17.52[J/cm
3]
1/2であり、ポリビニルアルコール水溶液の溶解パラメータは32.97[J/cm
3]
1/2ある。すなわち、ポリビニルアルコール水溶液の溶解パラメータに近い1,4−ポリブタジエンが液滴中で外側に分布する一方で、ポリビニルアルコール水溶液の溶解パラメータに遠い1,2−ポリブタジエンが液滴中で内側に分布することになる。そして得られた変更例のゴム粒子は、1,2−ポリブタジエンの外側を1,4−ポリブタジエンで被覆する二重構造のゴム粒子となっていることが、
図10により確認することができる。
【0065】
(変更例1の複合粒子の調製)
段落[0056]で説明したチオール基を導入したダイヤ2gと、変更例2のゴム粒子20gとを、150mlのメタノール中に分散して、かき混ぜながら、60℃で24時間に亘って反応させて、ゴム粒子の表面にダイヤを固着させた変更例1に係る複合粒子を得た。そして、遠心分離機で固液分離を行い、当該複合粒子を回収した。なお、回収量は20.22gであった。
【0066】
(変更例2の複合粒子の調製)
25mlのメタノールに、変更例のゴム粒子3gと3mlの3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)とを加え、ホモジナイザーによってかき混ぜながら、60℃で4時間に亘って反応させて、変更例のゴム粒子に加水分解性基としてアルコキシ基を導入した。チオール基を導入した変更例のゴム粒子2gと平均粒径0.5μmの酸化セリウム0.2gを、30mlのメタノール中に分散して、かき混ぜながら、60℃で24時間に亘って反応させて、ゴム粒子の表面に酸化セリウムを固着させた変更例2に係る複合粒子を得た。そして、遠心分離機で固液分離を行い、当該複合粒子を回収した。なお、回収量は1.95gであった。
【0067】
次に、前記第2の製造方法により複合粒子を製造する場合について説明する。
【0068】
(実施例4)
100mlの三ツ口三角フラスコ中のジクロロメタン72.75gに、ポリブタジエン2.25g を溶解し、3wt%ポリブタジエン溶解液(ゴム溶液)を調製した。このポリブタジエン溶解液に、3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)を該ポリブタジエン溶解液中のポリブタジエンの二重結合に対して表2に示す所定当量添加し、水浴温度40℃、かき混ぜ速度400rpmで24時間に亘ってかき混ぜて、MPS−ポリブタジエン溶解液を得た。実施例4−1では、3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)をポリブタジエン溶解液中のポリブタジエンの二重結合に対して1/32当量分添加した。同様に3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)の配合量を、実施例4−2は1/20当量、実施例4−3は1/16当量、実施例4−4および実施例4−13は1/4当量、実施例4−5は1/3当量、実施例4−6は2/5当量、実施例4−7は1/2当量、実施例4−8は3/5当量、実施例4−9は2/3当量、実施例4−10は3/4当量、実施例4−11は1当量、実施例4−12は2当量に設定した。また、40mlビーカーに酸化チタン(TiO
2)とジクロロメタン20ml入れて、実施例4−1〜4−12は酸化チタンがポリブタジエンに対して10wt%になるように調製し、実施例4−13は酸化チタンがポリブタジエンに対して20wt%になるように調製した。なお、酸化チタンは、粒径が4μm〜6μmの範囲にあるものを用いた。次に、酸化チタン分散液に内部超音波照射を10分間行って酸化チタンを分散した後に、 酸化チタン分散液をMPS−ポリブタジエン溶解液に混合した。そして、酸化チタン−MPS−ポリブタジエン混合液を、ポリビニルアルコール2wt%水溶液240mlに加えて、水浴温度40℃、かき混ぜ速度300rpmの条件で20時間に亘ってゴムの粒子化を行った。これにより、懸濁液中にゴム溶液からなる液滴を形成すると共に、液滴からジクロロメタンを蒸発させる懸濁蒸発法によって、ポリブタジエンからなるゴム粒子を生成し、これと合わせてゴム粒子に酸化チタンの固定化を行った。複合粒子の粒子化終了後に、純水でポリビニルアルコールを洗浄・除去しながら吸引濾過を行い、メタノールで置換して、ポリブタジエン粒子に酸化チタンを固着した実施例4−1〜4−13の複合粒子を得た。また、3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)を添加しない以外は実施例4の複合粒子と同じ条件で、比較例の複合粒子を製造した。
【0069】
【表2】
【0070】
得られた実施例4−1〜4−13および比較例の複合粒子の粒径は、20μm〜80μmの範囲にあった。表2に示すように、カップリング剤を添加した実施例4−1〜4−13では、水層(懸濁液)への酸化チタンの脱落が確認できず、ポリブタジエン粒子に酸化チタンがしっかりと固着した複合粒子が得られることが確認できた(
図12〜
図14参照)。これに対して、懸濁蒸発法に際してカップリング剤を添加していない比較例では、酸化チタンがゴム粒子から水層へ脱落することが確認される。また、
図19に示すように、比較例の複合粒子は、ポリブタジエン粒子の表面に酸化チタンが、不均一に、塊状に付着していることが確認できる。比較例の複合粒子では、ポリブタジエン粒子の表面に酸化チタンが物理的に吸着しているだけに過ぎず、酸化チタンがポリブタジエン粒子に固定化されていないと考えられる。
【0071】
表2に示すように、カップリング剤の配合量が、ゴム溶液(ポリブタジエン溶解液)中のポリブタジエンの二重結合に対して1/2当量より少ないと、酸化チタンがポリブタジエン粒子の表面に固着(表2の表面分散)した複合粒子が生成される。
図12に示すように、実施例4−4の複合粒子は、ポリブタジエン粒子の表面において酸化チタンがほぼ全体に分散して固着していることが確認できる。
図14に示すように、実施例4−4よりも酸化チタンの配合量を多くした実施例4−13の複合粒子は、実施例4−4よりもポリブタジエン粒子の表面に酸化チタンが密に固着していることが確認でき、また酸化チタンがポリブタジエン粒子の表面に均一に分散していることも判る。また、カップリング剤の配合量が、ゴム溶液(ポリブタジエン溶解液)中のポリブタジエンの二重結合に対して1/2当量以上であると、酸化チタンがポリブタジエン粒子の内側に固着(表2の内包)した複合粒子が生成される。
図13に示すように、実施例4−11の複合粒子は、ポリブタジエン粒子の表面に酸化チタンが存在せず、前述したように水層に酸化チタンの脱落がないことから、酸化チタンがポリブタジエン粒子に内包されていることが確認できる。このように、カップリング剤の配合量1/2当量を境にして、酸化チタンをポリブタジエン粒子に対して固定化する位置が、該ポリブタジエン粒子の内または表面に切り替わる。
【0072】
(実施例5)
100mlの三ツ口三角フラスコ中のジクロロメタン72.75gに、ポリブタジエン2.25g を溶解し、3wt%ポリブタジエン溶解液(ゴム溶液)を調製した。このポリブタジエン溶解液に、3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)を該ポリブタジエン溶解液中のポリブタジエンの二重結合に対して1/4当量添加し、 水浴温度40℃、かき混ぜ速度400rpmで24時間に亘ってかき混ぜて、MPS−ポリブタジエン溶解液を得た。また、40mlビーカーに酸化セリウム(CeO
2)とジクロロメタン20ml入れて、実施例5−1は酸化セリウムがポリブタジエンに対して20wt%になるように調製し、実施例5−2は酸化セリウムがポリブタジエンに対して50wt%になるように調製した。なお、酸化セリウムは、粒径が4μm〜6μmの範囲にあるものを用いた。次に、酸化セリウム分散液に内部超音波照射を10分間行って酸化セリウムを分散した後に、酸化セリウム分散液をMPS−ポリブタジエン溶解液に混合した。そして、酸化セリウム−MPS−ポリブタジエン混合液を、ポリビニルアルコール2wt%水溶液240mlに加えて、 水浴温度40℃、かき混ぜ速度300rpmの条件で20時間に亘ってゴムの粒子化を行った。これにより、懸濁液中にゴム溶液からなる液滴を形成すると共に、液滴からジクロロメタンを蒸発させる懸濁蒸発法によって、ポリブタジエンからなるゴム粒子を生成し、これと合わせてゴム粒子に酸化セリウムの固定化を行った。複合粒子の粒子化終了後に、純水でポリビニルアルコールを洗浄・除去しながら吸引濾過を行い、メタノールで置換して、ポリブタジエン粒子に酸化セリウムを固着した実施例5−1〜5−2の複合粒子を得た。
【0073】
得られた実施例5−1および5−2の複合粒子の粒径は、20μm〜80μmの範囲にあった。機能性粒子として酸化セリウムを用いた場合であっても、カップリング剤の配合量を、ゴム溶液(ポリブタジエン溶解液)中のポリブタジエンの二重結合に対して1/2当量より少ない1/4当量に設定した実施例5−1および5−2では、いずれも酸化セリウムがポリブタジエン粒子の表面に固着(表2の表面分散)した複合粒子が生成される(
図15および
図16)。
図16に示すように、実施例5−2の複合粒子は、ポリブタジエン粒子の表面において酸化セリウムがほぼ全体に分散して固着していることが確認できる。酸化セリウムは、実施例4で用いた酸化チタンよりも比重が大きく、疎水的であるので、ゴム粒子の内側に入り込んで表面に出にくいと考えられるが、
図16の実施例5−2に示すように、酸化セリウムであってもポリブタジエン粒子の表面で固定化することができるのが判る。
【0074】
(実施例6)
100mlの三ツ口三角フラスコ中のジクロロメタン72.75gに、ポリブタジエン2.25g を溶解し、3wt%ポリブタジエン溶解液(ゴム溶液)を調製した。このポリブタジエン溶解液に、3−メルカプトトリメトキシシラン(MPS)を該ポリブタジエン溶解液中のポリブタジエンの二重結合に対して1/4当量添加し、水浴温度40℃、かき混ぜ速度400rpmで24時間に亘ってかき混ぜて、MPS−ポリブタジエン溶解液を得た。また、40mlビーカーに酸化チタン(TiO
2)と酸化セリウム(CeO
2)とジクロロメタン20ml入れて、酸化チタンがポリブタジエンに対して20wt%になると共に酸化セリウムをポリブタジエンに対して50wt%になるように調製した。なお、酸化チタンおよび酸化セリウムは、粒径が4μm〜6μmの範囲にあるものを用いた。次に、機能性粒子分散液に内部超音波照射を10分間行って酸化チタンおよび酸化セリウムを分散した後に、機能性粒子分散液をMPS−ポリブタジエン溶解液に混合した。そして、機能性粒子−MPS−ポリブタジエン混合液を、ポリビニルアルコール2wt%水溶液240mlに加えて、水浴温度40℃、かき混ぜ速度300rpmの条件で20時間に亘ってゴムの粒子化を行った。これにより、懸濁液中にゴム溶液からなる液滴を形成すると共に、液滴からジクロロメタンを蒸発させる懸濁蒸発法によって、ポリブタジエンからなるゴム粒子を生成し、これと合わせてゴム粒子に酸化チタンおよび酸化セリウムの固定化を行った。複合粒子の粒子化終了後に、純水でポリビニルアルコールを洗浄・除去しながら吸引濾過を行い、メタノールで置換して、ポリブタジエン粒子に酸化チタンおよび酸化セリウムを固着した実施例6の複合粒子を得た(
図17および
図18参照)。
【0075】
得られた実施例5−1および5−2の複合粒子の粒径は、20μm〜80μmの範囲にあった。実施例6のように機能性粒子として酸化チタンおよび酸化セリウムを組み合わせて用いた場合であっても、酸化チタンおよび酸化セリウムをいずれもポリブタジエン粒子に固定化した複合粒子を製造することができる。また、機能性粒子を複数の材料を用いても、カップリング剤の配合量を、ゴム溶液(ポリブタジエン溶解液)中のポリブタジエンの二重結合に対して1/2当量より少ない1/4当量に設定した実施例6では、酸化チタンおよび酸化セリウムがポリブタジエン粒子の表面に固着(表2の表面分散)した複合粒子が生成される。
図18に示すように、実施例6の複合粒子は、ポリブタジエン粒子の表面において酸化チタンおよび酸化セリウムがほぼ全体に分散して固着していることが確認できる。ここで、実施例6の複合粒子において、酸化チタンおよび酸化セリウムは、ポリブタジエン粒子表面の一部に集中して固着しているのではなく、ポリブタジエン粒子表面の全体にほぼ均一に固定化されていることも確認できる(
図18参照)。