紙基材上に、顔料及びバインダー樹脂を含有する水蒸気バリア層、ポリビニルアルコール及びアスペクト比が100以上の顔料を含有するガスバリア層をこの順に設けた紙製バリア包装材料において、該ガスバリア層にセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、アニオン変性セルロースナノファイバー)が含有されることを特徴とする紙製バリア包装材料。
紙基材上に、顔料及びバインダー樹脂を含有する水蒸気バリア層、ポリビニルアルコール及びアスペクト比が100以上の顔料を含有するガスバリア層をこの順に設けた紙製バリア包装材料において、該ガスバリア層にセルロース誘導体が含有されることを特徴とする紙製バリア包装材料。
前記ガスバリア層に含有される、ポリビニルアルコールに対するセルロース誘導体との配合比率が、ポリビニルアルコール/セルロース誘導体=99/1〜50/50(質量部)であることを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア包装材料。
前記ガスバリア層に含有される顔料に対するポリビニルアルコール及びセルロース誘導体の配合比率が、顔料/ポリビニルアルコール及びセルロース誘導体=5/95〜50/50(質量部)であることを特徴とする請求項1〜2に記載の紙製バリア包装材料。
前記ガスバリア層に含有される顔料が、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、タルクから選択される少なくとも1種類の顔料を含有していることを特徴とする請求項1〜4に記載の紙製バリア包装材料。
前記ガスバリア層に含有されるセルロース誘導体が、アニオン変性セルロースナノファイバー及び/又はカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1〜5に記載の紙製バリア包装材料。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、紙基材上(以下、「原紙」ということがある。)に水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に設けた紙製バリア包装材料(以下、「包装材料」ということがある。)である。二種類のバリア層は水性の塗工料を塗布して形成される。
【0018】
紙基材の上に水蒸気バリア層、更にその上にガスバリア層を形成した本発明の紙製バリア包装材料が優れた水蒸気バリア性およびガスバリア性を併せ持つ理由は次のように推測される。
【0019】
ガスバリア層の形成には、親水性の高い材料(以下、「親水性材料」ということがある。)が用いられている例が多い。紙基材上にガスバリア層、水蒸気バリア層をこの順に設けた場合、紙基材を経由して浸透する空気中の水分などが作用して、親水性材料を含有するガスバリア層が劣化する。一方、紙基材上に、耐水性の良好な樹脂を含有する水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に設けた場合、紙基材を経由した水分は水蒸気バリア層にブロックされるので、ガスバリア層への影響(劣化)を防止することができる。このため、本発明の紙製バリア包装材料は良好な水蒸気バリア性およびガスバリア性を有する。
【0020】
本発明の紙製バリア材料は、ガスバリア層側が内容物(被包装材)側で紙層側が外気側(外表面)として通常使用される。外気の水分が内部へ浸透することを防止できるので、被包装物が乾燥性の物質であれば、本発明の構造が有効である。湿った物を包装する場合は、内容物側となるガスバリア層上に、樹脂の押し出しラミネート層やフィルムのラミネート層を付加形成してもよい。
【0021】
1.紙基材
本発明において紙基材とは、パルプ、填料、各種助剤からなるシートである。パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などがある。これらの素材を適宜配合して用いることが可能である。これらの中でも、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)などの化学パルプが好ましい。化学パルプは、原紙中への異物混入が発生し難いこと、使用後の紙容器を古紙原料に供してリサイクル使用する際に経時変色が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好であり包装材料として使用価値が高くなること、などの理由から適している。
【0022】
填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0023】
紙基材の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシンを用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材を製造することができる。また、紙基材としては、一般の塗工紙に用いられる坪量が25〜400g/m
2程度の紙基材が好ましい。
【0024】
さらに、紙基材の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酸素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができる。これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0025】
紙基材の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリング式サイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロースコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
【0026】
2.水蒸気バリア層
1)バインダー樹脂
水蒸気バリア層に含有させるバインダー樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、ポリオレフィン・無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等を例示することができる。これらを単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。特に、スチレン・ブタジエン系共重合体が水蒸気バリア性の点から好ましい。
【0027】
本発明においてスチレン・ブタジエン系共重合体とは、スチレンとブタジエンを主構成モノマーとし、これに変性を目的とする各種のコモノマーを組み合わせ、乳化重合したものである。コモノマーの例として、メチルメタクリルレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレートや、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。
【0028】
また、水蒸気バリア層に含有させるバインダー樹脂は、乳化剤により水中に分散したエマルジョンタイプの樹脂を使用することが水蒸気バリア性の点から好ましい。乳化剤としては、限定されるものではないが、オレイン酸ナトリウム、ロジン酸石鹸、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤を例示することができ、これらを単独、またはノニオン性界面活性剤と組み合わせて用いることができる。さらに、必要に応じて両性またはカチオン性界面活性剤を用いても良い。
【0029】
本発明では、水蒸気バリア層を形成する塗工料は、炭化水素、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、脂肪酸及び脂肪酸とアルコールのエステルなどの撥水成分を含有していないことが好ましい。なお、従来の水蒸気バリア性を有する包装材料は、撥水成分を含有した樹脂を設けてあることが一般的である。撥水成分を含有すると、水蒸気バリア層とガスバリア層との親和性が低下することとなり、一方の層から浸透した水分やガスが界面剥離を促すこととなり、好ましくない。
【0030】
2)顔料
本発明において、水蒸気バリア層に顔料を含有させることにより、水蒸気バリア性を向上させることができる。また、顔料を含有させることにより、水蒸気バリア層とガスバリア層の密着性が向上する。
【0031】
顔料として、無機顔料、有機顔料がある。
【0032】
無機顔料は、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどである。
【0033】
有機顔料は、密実型、中空型、またはコアーシェル型などである。
【0034】
これらの顔料を単独または2種類以上混合して使用することができる。顔料は、大きく扁平の形状が適している。更に、大粒径と小粒径を併用することにより水蒸気バリア性が向上する。
【0035】
これらの顔料の中でも、形状が扁平なカオリンなどの無機顔料は、水蒸気のバリア性を向上させる。特に、平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上のカオリンがより好ましい。扁平な顔料が塗工層に平行に分布すると、水蒸気バリア層内に浸透した水蒸気は扁平な顔料によって厚さ方向に移動することが遮られ、迂回して移動することとなり、水蒸気が水蒸気バリア層を移動する距離が長くなり、バリア性が向上する。添加する顔料のアスペクト比が小さいと塗工層中を水蒸気が迂回する回数が減少し、移動する距離があまり長くならないため、結果として水蒸気バリア性は、扁平で大粒径の顔料よりも劣ることとなる。
【0036】
扁平な顔料は、ガスバリア層中でも同様の作用が期待できる。
【0037】
扁平な顔料として、カオリンの他、マイカやモンモリロナイトを使用することも可能である。しかしながら、マイカ、モンモリロナイトの分散液はカオリンの分散液より固形分濃度が低く、マイカ、モンモリロナイトを用いた水蒸気バリア層用の塗工液は低濃度となる。低濃度な塗工液から形成される水蒸気バリア層中では、顔料が塗工層に平行に配向しにくいため、塗工液の濃度を高くすることができるカオリンの方が適している。
【0038】
水蒸気バリア層に上記した扁平な顔料に加えて、平均粒子径が5μm以下の顔料を更に添加することにより、水蒸気バリア性を更に向上させることができる。
【0039】
本発明において、水蒸気バリア性の向上、及びガスバリア層との密着性の点から、平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上のカオリンを含有する水蒸気バリア層に、更に平均粒子径5μm以下の顔料を含有させることが好ましい。重層的に存在する平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上のカオリンの間に平均粒子径5μm以下の顔料が入り込む構造となって、扁平なカオリンの面に沿って移動を余儀なくされる水蒸気は、この小さな顔料粒子により移動が阻止されることとなる。つまり、水蒸気バリア層に扁平な顔料と、平均粒子径の小さい顔料を含有させた場合、水蒸気バリア層中で、扁平で大きな粒子径の顔料により形成される空隙に、小さな粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気が顔料を迂回して移動するため、小さな粒子径の顔料を混入していない水蒸気バリア層と比較して、高い水蒸気バリア性を発揮する。
【0040】
本発明において、平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上のカオリンと平均粒子径5μm以下、より好ましくは3μm以下の顔料の配合比率が、乾燥重量で50/50〜99/1であることが好ましい。平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上のカオリンの比率が上記範囲より少ないと水蒸気が塗工層中を迂回する距離があまり長くならないため、十分な水蒸気バリア性を得ることができない。一方、上記範囲より多いと、塗工層中の大粒径顔料が形成する空隙を平均粒子径5μm以下の顔料で十分に埋めることができないため、水蒸気バリア性の向上は見られない。
【0041】
本発明において、平均粒子径5μm以下の顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中では、重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0042】
水蒸気バリア層に顔料を含有させる場合、バインダー樹脂と顔料の配合量は、顔料(乾燥重量)100重量部に対して、バインダー樹脂(乾燥重量)5〜200重量部の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくはバインダー樹脂35〜150重量部である。また、水蒸気バリア層には、バインダー樹脂、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0043】
3)架橋剤
本発明において、水蒸気バリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤は水蒸気バリア層に含有されるバインダー樹脂と架橋反応を起こすため、水蒸気バリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、水蒸気バリア層が緻密な構造となり、良好な水蒸気バリア性を発現する。
【0044】
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、水蒸気バリア層に含有されるバインダー樹脂の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸などから適宜選択して使用することができる。架橋剤の配合部数は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができる。なお、水蒸気バリア性に優れた効果を発現するスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系などのスチレン系のバインダー樹脂を用いた場合、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましい。更に、カリウムミョウバン(AlK(SO
4)
2・12H
2O)がより好ましい。
【0045】
架橋剤の添加量は、水蒸気バリア層に使用されるバインダー樹脂100重量部に対して、1〜10重量部である。より好ましくは3〜5重量部である。1重量部より少ないと、十分な効果が得られず、10重量部より多いと、塗工液の粘度が著しく増加するため、塗工困難になる。
【0046】
本発明において、水蒸気バリア層を形成させる塗工液に架橋剤を添加する場合、アンモニア水溶液などの極性溶媒に架橋剤を溶解させてから塗工液へ添加することが好ましい。架橋剤を極性溶媒に溶解することにより、架橋剤が極性溶媒と水素結合を形成する。そのため、架橋剤の溶液を塗工液へ配合しても直ちにラテックスとの架橋反応が起こらず、塗料の増粘を抑制することができる。その場合、紙基材に塗工して極性溶媒が揮発した後に、架橋剤とバインダーとの架橋反応が起こり、緻密な水蒸気バリア層が形成されると推測される。
【0047】
本発明の水蒸気バリア層の水蒸気バリア性としては、温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下で、水蒸気透過量が500g/m
2・day以下であることが好ましく、300g/m
2・day以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明の実施例では、150〜380g/m
2・dayの水蒸気透過量が達成されており、本発明の水蒸気バリア層を備えた紙製バリア包装材料を使用することで、包装物を水蒸気による劣化から保護することができる。
【0049】
3.ガスバリア層
本発明において、ガスバリア層にアスペクト比100以上の顔料、ポリビニルアルコール及びセルロース誘導体を含有することが重要である。ポリビニルアルコールと無機層状化合物からなるガスバリア層において、アスペクト比が大きな顔料を用いる方が高いガスバリア性を発現する傾向となるが、顔料のアスペクト比が大きくなりすぎるとポリビニルアルコールと相溶性が不十分となる。例えば、アスペクト比が100以上のマイカとポリビニルアルコールの水溶液を混合したガスバリア層用の塗工液を調整した場合、塗工液中にマイカ由来の凝集物が発生する。このため、この塗工液を塗工して形成させたガスバリア層は、均一な塗工層とならないため、期待するガスバリア性を得ることができない。一方、ポリビニルアルコール、アスペクト比が大きな顔料、セルロース誘導体を混合したガスバリア層用の塗工液を調整した場合には、塗工液中に凝集物は発生しないため、この塗工液を塗工して形成させたガスバリア層は、均一な層となり、期待通りのガスバリア性が発現する。
【0050】
1)ポリビニルアルコール、セルロース誘導体
本発明で使用するポリビニルアルコールとしては、完全ケン化品、部分ケン化品、変性ポリビニルアルコール、低重合度品、高重合度品、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどいずれの種類のポリビニルアルコールでも差支えなく使用することができる。
【0051】
本発明において、セルロース誘導体とは、セルロースを出発原料とするフィルム上になった場合にガスバリア性を有する材料であり、カルボキシメチルセルロース及びその塩、アニオン変性(カルボキシメチル化、カルボキシル化)したセルロースナノファイバーなどを例示することができる。なお、アニオン変性セルロースナノファイバーは、パルプなどのセルロース原料をアニオン変性し、得られたアニオン変性セルロースを解繊して得られることができる、平均繊維長50〜10000nm、平均繊維幅1〜1000nmであるセルロース繊維である。
【0052】
本発明において、カルボキシメチルセルロース及びその塩のカルボキシメチル基の置換度はグルコース単位当たりの0.3〜2.0であることが好ましく、0.5〜1.5であることがより好ましい。
【0053】
本発明において、カルボキシルメチル化セルロースナノファイバーのカルボキシメチル基の置換度はグルコース単位当たりの0.01〜0.50であることが好ましく、0.05〜0.3であることがより好ましい。また、酸化(カルボキシル化)セルロースのカルボキシル基量は、セルロースの絶乾質量に対して、0.5〜2.0mmol/gであることが好ましい。
【0054】
2)顔料
本発明で使用される顔料のアスペクト比100以上であり、より好ましくは200以上である。アスペクト比が100以上の顔料は、特に限定されるものではなく、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカなどの無機顔料、および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などのうちいずれかを使用することができ、これらを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、高湿度下でのガスバリア性低下抑制の点から無機顔料を使用することが好ましい。
また、所望の効果を阻害しない範囲で、アスペクト比が100未満の顔料を併用することができる。
【0055】
本発明において、ガスバリア層に含有される、ポリビニルアルコールに対するセルロース誘導体との配合比率は、ポリビニルアルコール/セルロース誘導体=99/1〜50/50(質量部)であることが好ましい。
【0056】
本発明において、ガスバリア層に含有される顔料に対するポリビニルアルコール及びセルロース誘導体の配合比率が、顔料/ポリビニルアルコール及びセルロース誘導体=5/95〜50/50(質量部)であることが好ましい。
【0057】
3)バインダー樹脂
本発明において、所望の効果を阻害しない範囲で、バインダー樹脂として、デンプン、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を併用することができる。
【0058】
4)架橋剤
本発明において、ガスバリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤はアニオン変性セルロースナノファイバーの水酸基あるいはアニオン変性基を架橋構造にて結合させるため、高湿度となった場合に結合が緩む(または切れる)水酸基量が減少し、層全体の耐水性が向上する。そのため、高湿度下でのガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0059】
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することができる。架橋剤の配合部数は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができる。なお、アニオン変性セルロースナノファイバーに対する架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
【0060】
架橋剤の添加量は、ガスバリア層に使用されるアニオン変性セルロースナノファイバー100重量部に対して、1〜10重量部であり、より好ましくは3〜5重量部である。1重量部より少ないと、十分な効果が得られず、10重量部より多いと、塗工液の粘度が著しく増加するため、塗工困難になる。
6)添加剤
本発明において、顔料をアニオン変性セルロースナノファイバー中に配合する際に、顔料を水分散してスラリー化したものを添加し混合することが好ましい。
【0061】
本発明において、ガスバリア層には、バインダー樹脂、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0062】
4.塗工について
本発明において、水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置を用いることができる。例えば、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0063】
本発明において、水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で4〜30g/m
2とすることが好ましく、より好ましくは6〜25g/m
2であり、更に好ましくは10〜20g/m
2であることが好ましい。塗工量が4g/m
2未満であると原紙を塗工液が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られない、ガスバリア層が紙基材に浸透するため、均一なガスバリア性が得られない問題がある。一方、30g/m
2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなり、操業面、コスト面の両方の観点より好ましくない。
【0064】
本発明において、ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2〜10g/m
2とすることが好ましい。塗工量が0.2/m
2未満であると均一なガスバリア層を形成することができないため、十分なガスバリア性が得られない問題がある。一方、10g/m
2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなり、操業面、コスト面の両方の観点より好ましくない。
【0065】
本発明において、紙基材上に水蒸気バリア層、ガスバリア層を設けた紙製バリア包装材料に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル重合体などのシーラント層を設けることができる。シーラント層の積層方法については特に制限されるものではないが、従来の溶融押し出しラミネート法やフィルムを用いたドライラミネート法、直接溶融コート法など公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、もちろんこれらの例に限定される物ではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%は、それぞれ重量部、重量%を示す。なお、塗工液及び得られた包装材料について以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。試験結果を表に示す。
(評価方法)
(1)水蒸気透過度:温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下で、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80−4000)を用いて測定した。
(2)酸素透過度:MOCON社製OX−TRAN2/21を使用し、23℃−0%RH条件および23℃−85%RH条件にて測定した。
(3)アスペクト比:顔料の平面方向および断面方向を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて撮影し、顔料配向面の直径と厚さを測定して、[アスペクト比=顔料配向面の直径/厚さ]により算出した。
(4)平均繊維長:マイカ切片上に固定したセルロースナノファイバーの原子間力顕微鏡像から、繊維長を測定し、ランダムに選んだ100本の繊維を測定し、平均繊維長を算出した。繊維長測定は、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用いて範囲で行った。
(5)平均繊維幅: 走査型プローブ顕微鏡(SPI3800N/SPA400:SII. NanoTechnology 社製.)用のPCソフト「Spisel32」を用いて、観察により得られた繊維画像から、Z軸方向の高さを測定して繊維幅とした。この繊維幅を20本分測定し、その相加平均値を平均繊維幅とした。
【0067】
(6)グルコース単位当たりのカルボキシメチル基の置換度の測定方法
カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにした。水素型CM化セルロース(絶乾)を約2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。
【0068】
カルボキシメチル基の置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
(7)カルボキシル基量の測定方法
カルボキシル基量は、酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕。
(顔料スラリーの調製)
顔料である大粒径エンジニアードカオリン(イメリス社製バリサーフHX 粒子径9.0μm アスペクト比100)に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダを、前記顔料100質量部に対して0.2部添加し、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%のスラリーを調製した。
(ポリビニルアルコール液の調製)
クラレポリビニルアルコール117を濃度10%となるようクッカーにて蒸煮し、ポリビニルアルコール液を得た。
(アニオン変性セルロースの製造:カルボキシメチル化)
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥質量で250g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で67g加え、パルプ固形濃度が40%になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、モノクロロ酢酸ナトリウムを127g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のアニオン変性セルロース(カルボキシメチル基を導入したセルロース)を得た。
(アニオン変性セルロースナノファイバー分散液の調整)
前記アニオン変性セルロースを1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、140Mpa)で3回処理して、アニオン変性セルロースナノファイバー(カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)分散液を得た。
【0069】
得られた分散液中のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの平均繊維長は860nm、平均繊維幅は26nmであった。
[実施例1]
(紙基材の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。原料パルプスラリーに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量59g/m
2の紙を得た。次いで、得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面に1.0g/m
2塗工、乾燥し、坪量60g/m
2の原紙を得た。得られた原紙をチルドカレンダーを用いて、速度300min/m、線圧50kgf/cm 1パスにて平滑処理を行った。
(水蒸気バリア層用塗工液Aの調製)
上記で調整した顔料スラリー(大粒径エンジニアードカオリン、固形分濃度55%)に、スチレン・ブタジエン系ラテックス(日本ゼオン社製PNT7868)を前記顔料100質量部(固形分)に対して100質量部(固形分)となるように配合し、固形分濃度50%の塗工液Aを得た。
(ガスバリア層用塗工液Bの調製)
上記処理にて得られた顔料スラリー液とポリビニルアルコール液とカルボキシメチル化セルロースナノファイバー分散液を顔料、セルロースナノファイバー、ポリビニルアルコールの順に100/10/90質量部(固形分)となるよう添加し、ガスバリア層用塗工液Bとした。
(紙製バリア包装材料の作製)
得られた原紙上に塗工液Aを塗工量(乾燥)12g/m
2となるよう塗工速度300m/minでブレードコーターを用いて片面塗工、乾燥した後、その上に塗工液Bを塗工量(乾燥)3.0g/m
2となるよう塗工速度300m/minでロールコーターを用いて片面塗工し、紙製バリア包装材料を得た。
[実施例2]
塗工液Bのポリビニルアルコールとセルロースナノファイバーの比率を70/30に変更した以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。
[実施例3]
塗工液Bのポリビニルアルコールとセルロースナノファイバーの比率を50/50に変更した以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。
[実施例4]
塗工液Bの顔料とポリビニルアルコール及びセルロースナノファイバーの比率を50/100に変更した以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。
[実施例5]
塗工液Bの顔料を大粒径エンジニアードカオリンからマイカ(トピー工業株式会社製NTS−10、アスペクト比1000、粒子径12μm)に変更した以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。
[比較例1]
塗工液Bの顔料を大粒径エンジニアードカオリンから微粒カオリン(イメリス社製、KCS、アスペクト比15、粒子径3.5μm) に変更した以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。[比較例2]
塗工液Bに顔料を配合しない以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。
[比較例3]
塗工液Bにセルロースナノファイバーを配合しなかった以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。
[比較例4]
塗工液Bのポリビニルアルコールを配合しなかった以外は実施例1と同様にして包装材料を得た。
【0070】
【表1】