(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227574(P2015-227574A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】可動式多段津波緩衝堰
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20151120BHJP
E02B 7/40 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
E02B3/06 301
E02B7/40
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-113653(P2014-113653)
(22)【出願日】2014年6月1日
(11)【特許番号】特許第5683056号(P5683056)
(45)【特許公報発行日】2015年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】512108717
【氏名又は名称】▲濱▼田 英外
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 英外
【テーマコード(参考)】
2D019
2D118
【Fターム(参考)】
2D019CA00
2D118AA11
2D118AA12
2D118CA02
2D118DA05
2D118FA01
2D118JA11
2D118JA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複雑な構造や動作を避け,自然の力をうまく活用し,高い信頼性で動作する可動式の多段防波堤を提供する。
【解決手段】構造体を屏風形式にして、対応津波高さを屏風段数の倍数分増加させる。この時、多段分の構造体は内部に浸水した津波を取り込む構造とし,取り込んだ水の分も併せて、津波により構造体を持ちあげさせる。設置時には横倒しにして地面下などに伏せて設置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特許第5207091号の可動式津波緩衝堰の機構において、構造体を屏風形式で多段に作成することにより、対応する津波高さを多段にした倍数分向上させて、その高さ分、後続の大部分の津波の動きを抑えると同時に、その中に浸水してきた津波をより多く取り込み、それも併せて津波に持ちあげさせることによって、津波の威力を低減する可動式多段津波緩衝堰。
【請求項2】
特許第5207091号の可動式津波緩衝堰の機構において、構造体を多段格納式で作成することにより、対応する津波高さを多段にした倍数分向上させて、その高さ分、後続の大部分の津波の動きを抑えると同時に、その中に浸水してきた津波をより多く取り込み、それも併せて津波に持ちあげさせることによって、津波の威力を低減する可動式多段津波緩衝堰。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
津波や高波などの海からの波により起こる浸水などの被害を抑えるために設置する防波堤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今までの津波防御用の防波堤は、鉄筋の入ったコンクリートなどを使った固定式のものが主体であり、大がかりで、材料費や工事費が膨大であった。 又、今までに発明されていた可動式のものは、空気室を設置するなどにより、複雑な工夫により動作されるもので、材料費や工事費が嵩むし、信頼性が必ずしも高くなかった。
又、軽質材の構造体の一端を固定し浸水中に入って浮力で他端を立ち上がらせて防波堤効果をもたらす概念は既知であるが、強度的な課題や適用場所の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5329452号
【特許文献2】特許公開2012−57401
【特許文献3】特許公開2012−241449
【特許文献4】特許第5207091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定式の防波堤でかかる膨大な材料費や工事費を低減させること。他の可動式の防波堤で必要である複雑な工夫や動作を避け、自然の力をうまく活用した設計により、高い信頼性で動作が行われるようにすること。廉価な材料の構造体の持つ強度の弱さに対応する設置機構、動作機構を検討し、実用性を高めること。
前特許第5207091号では、定型の構造体を個別に作成し複数を並べるのが特徴であるため、対応可能な津波高さが限られていたので、それを改善すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前特許第5207091号で下記を行った。
材料費を節減するために、木製材料を使い、固定式ではなく、必要に応じて防波堤として機能する津波自動対応の防波堤を考慮した。 構造体を自動的に防波堤として機能させるために、必要なメカニズムとして、津波による浮力を採用し、高い信頼性で充分な作動力を与えるように工夫した。
軽質材の構造体の一端を固定し他端を立ち上がらせて防波堤効果をもたらす概念は既知となっているが、強度的な課題や適用する場所の課題があったので、当発明では、以下のように解決を図った。
(1) 構造体を主として木材で個別に(ユニット形式で)製作し、複数の構造体(ユニット)を、直列に、更にはその直列に並んだものを並列に並べて、海岸線などの大規模な津波防止に対応させる。
(2) 構造体内部に空間を持たせ、その空間部に浸水した水を取り込み、強度と重量を増す。「浸水の取り込むこと」と、「取り込んだ水分を併せた構造体の重量を津波に持ちあげさせること」によって、津波の強度を弱めさせる。副次効果として、構造体全部を材料で製作する必要がなく、材料費の低減が図れる。
(3) 浸水を完全に遮蔽する強度を木材を中心とした構造体が持つことは困難であるので、密閉形式とはせず、構造体の後方への津波の浸水を許しながら、浸水高さが構造体の持つ防止高さになるまでは構造体が立ち上がりながら津波の浸水強度を弱め、持つ防止高さ以降は水中に入ってほぼ直立しながら後続の津波の陸上への浸水を防止する方式とした。よって構造体は水中に屹立した状態で、後続の波の侵行を防止するのに十分な強度を持てば良い。
これらの点から、有効に動作し、防波堤として充分に機能する仕組みを考案した。
今特許で、津波対応高さを向上させるために、構造体を多段にして、津波浸水時にその津波高さに応じて多段部分が順次に立ち上がる工夫を考案した。 これにより、後続の津波の大部分の侵入を抑え、想定高さの高い津波の威力を低減する仕組みとして活用できるようになった。
【発明の効果】
【0006】
前特許第5207091号で下記を行った。
当発明では、木材などの軽質で環境に優しい材料を使うので、安価な材料費、工事費で済む。 この装置は、地面などに伏せたり埋めたりして設置し、いざという時に、押し寄せる水の中で、浮力と押し寄せる波の力で自動的に立ち上がり、防波堤の役割を果たす。このため、視界の邪魔にならず(景勝地では、景色を阻害しないで)、波の力を弱める効果もあり、立ち上がった堰の高さに相応する防波効果が達成できる。
又、引き波に対しても、浮力により堰として機能するので、災害の低減に役立つ。
今特許で、津波対応高さを向上させたので、想定津波高さが高くて、防波堤の設置費用が膨大になると予想される地域にも適用できるので、費用対効果のバランスの良い防波堤の設置を行うことができる。 又、砂や土の中に伏せて設置することもできるので、景勝地では、景色を阻害しないで、漁業や魚の養殖を行っている地域では、その生活空間を殆ど制限することなく、災害防止ができる。
又、既存の固定式のコンクリート防波堤に沿わせて併設すれば、既存設備以上に景観を阻害することなく、津波対応高さの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、前発明の構造体(ボーセキ又は防波扉と呼称)の構造図である。
【
図3】
図3は、前発明の津波を緩衝する時の動作を表した図である。
【
図4】
図4は、前発明の大規模津波に対応する場合の設置想定図である。
【
図5】
図5は、本発明の屏風式多段構造体の動作図である。
【
図6】
図6は、本発明の多重格納式構造体の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前特許第5207091号で下記を行った。
構造体は、木材の板と枠組みで作る。構造体の枠組みの一方の柱を設置面に蝶番形式で接続し、構造体自体は設置面に装着された扉のように立ち上がり、水位に応じて、防波堤として機能する。
・ 構造体は、扱い易く、強度を保ちやすいユニットとして製作し、ある海岸線全体の防波堤の役割を果たすためには、対象となる海岸線に平行に(海岸線の対象位置に)複数のユニットを直列に、並べることで対応する。(
図4参照)
・ 構造体内部に空間を設け、その中に津波の水を取り込み、構造体の強度と重量を高める。構造体とその取り込んだ水を併せた重量を、津波に持ちあげる仕事をさせて、津波の威力を弱めさせる。
・ 構造体は木材などの軽質材で製作されており、強力な津波を完全に押さえ込むような強度をもたせるのは、非現実的である。そこで、その津波の力を一部逃がして、防波扉の山側にも海側に近い水位を早目に持たせて前後の水位をほぼ同等にするように機能させるので、隣り合った構造体の間は密封しない。又、防波扉がほぼ垂直に立ち上がった位置で保持するように支柱などを設置するが、津波の威力を逃がすように多少に陸側に傾いて良いように自由度を持たせる。これにより一部の水が防波堤より山側に侵入するが、浸水高さに応じて堰の高さまでの大部分の後続の津波の動きを抑えることができるので、相応の効果が期待できる。 よって構造体は水中に屹立した状態で、後続の波の侵行を防止するのに十分な強度を持てば良い。
・ 構造体の強度の関係から、あまり高い防波堤効果を一列の構造体に持たせることができない。大規模な津波に対しては、構造体をある程度の距離を置いた複数の並列として設置することで対応する。(
図4参照)
今特許では、対応津波高さを改善するために、構造体を屏風形式にして、対応津波高さを屏風段数の倍数分増加させることを考案した。(
図5参照) この時、多段分の構造体の内部に浸水した津波を取り込むことができるので、その取り込んだ水の分も併せて、津波に持ちあげさせることになり、その分、津波の威力低減に役立てることができる。又、多段格納形式にすることによって、対応津波高さを多段にした倍数分増加させることを考案した。(
図6参照)この場合は、スペースをあまり取らないメリットがある。 津波の威力をより低減させるために、横倒しにして地中などに伏せて設置しておき、早期に侵入した津波を内部に取り込んで、津波にそれを持ちあげさせる仕事をさせることも可能である。
【符号の説明】
【0009】
1.山板:動作時に山側に立つ板で、機密性と強度を持つ。
2.海板:動作時に海側に立つ板で、上部に押し寄せる水を取り込む開口部を持つ
3.軸横柱:動作時に設置面側になる横柱で、接地面に設けた複数箇所(3点以上)の接合部に蝶番形式で接合する。
4.浮き横柱:動作時に水に浮く横柱で、平常時に砂や瓦礫が構造体内に侵するを防止する役割も持つ(構造体内はできるだけ空間を持たせる)
5.たて柱:動作時に垂直方向に動いて立つ柱で、山板と海板の強度を高める
6.蝶番形式接合部:軸横柱と設置面を繋ぐ部分で、杭などで設置面に固定する。浸水時にずれたり外れたりしないように強度を持たせる。
【手続補正書】
【提出日】2014年6月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特許第5207091号の可動式津波緩衝堰の機構において、ユニット形式の構造体を屏風形式で多段に作成することにより、対応する津波高さを多段にした倍数分向上させて、その高さ分、後続の大部分の津波の動きを抑えると同時に、その中に浸水してきた津波をより多く取り込み、それも併せて津波に持ちあげさせることによって、津波の威力を低減する可動式多段津波緩衝堰。
【請求項2】
特許第5207091号の可動式津波緩衝堰の機構において、ユニット形式の構造体を多段格納式で作成することにより、対応する津波高さを多段にした倍数分向上させて、その高さ分、後続の大部分の津波の動きを抑えると同時に、その中に浸水してきた津波をより多く取り込み、それも併せて津波に持ちあげさせることによって、津波の威力を低減する可動式多段津波緩衝堰。
【手続補正書】
【提出日】2014年10月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽質材の枠組みを軽質材の板で挟んで作り、ドアのような形状の構造体を地面や壁面に沿わせて設置した可動式津波緩衝堰であって、前記構造体は水中に入った時の浮力や波の力を利用して立ち上がり、津波の威力を軽減する役目を果たすことを特徴とする可動式津波緩衝堰の機構において、ユニット形式の構造体を屏風形式で多段に作成することにより、対応する津波高さを多段にした倍数分向上させて、その高さ分、後続の大部分の津波の動きを抑えると同時に、構造体の中に、浸水してきた津波を取り込み、それも併せて津波に持ちあげさせることによって、津波の威力を低減する可動式多段津波緩衝堰。
【請求項2】
軽質材の枠組みを軽質材の板で挟んで作り、ドアのような形状の構造体を地面や壁面に沿わせて設置した可動式津波緩衝堰であって、前記構造体は水中に入った時の浮力や波の力を利用して立ち上がり、津波の威力を軽減する役目を果たすことを特徴とする可動式津波緩衝堰の機構において、ユニット形式の構造体を多段格納式で作成することにより、対応する津波高さを多段にした倍数分向上させて、その高さ分、後続の大部分の津波の動きを抑えると同時に、構造体の中に、浸水してきた津波を取り込み、それも併せて津波に持ちあげさせることによって、津波の威力を低減する可動式多段津波緩衝堰。