【課題】従来の圧縮機では、運転停止後に、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流する問題がある。また、潤滑油の逆流を防止するために、吸入管に形状記憶合金の弁が設けられたものでは、圧縮機の製造コストが増大する問題がある。
【解決手段】この圧縮機は、ローラ25に対するクランクシャフト8の偏心部8aの軸方向位置が、運転時と運転停止時とで変化するものである。ローラ25は、ローラ25の内周面と外周面とを連通する連通部41を有する。連通部41の内周面側の開口41Iは、運転時に偏心部8aによって塞がれるとともに、運転停止時に開かれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の圧縮機では、運転停止後(直後)に、圧縮機内とその上流側(アキュームレータ内)との圧力差により、圧縮機内の冷媒が吸入管からアキュームレータ内に流入する。その際、圧縮機内の冷媒が圧縮機構の各摺動部の隙間、例えばローラの端面と端面部材との間の隙間や仕切部材収容部と仕切部材との間の隙間を通過するため、各摺動部の隙間を潤滑する潤滑油が冷媒に巻き込まれてアキュームレータ内に逆流する問題がある。その結果、圧縮機内の油量が低下して、圧縮機構の各摺動部を十分に潤滑できなくなり、圧縮機構の各摺動部に焼付きが生じるおそれがある。
【0006】
その対策として、例えば特許文献1では、吸入管に形状記憶合金の弁が設けられた圧縮機が記載されている。この圧縮機では、吸入管を逆流する潤滑油がこの弁から圧縮機内に戻されるので、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流することが防止される。しかし、この圧縮機では、形状記憶合金の弁が設けられるので、圧縮機の製造コストが増大する問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、圧縮機の製造コストが増大するのを抑制しつつ、運転停止時に潤滑油が圧縮機の上流側に逆流するのを防止できる圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明にかかる圧縮機は、圧縮機構および当該圧縮機構を駆動するクランクシャフトを備えた圧縮機であって、前記圧縮機構は、圧縮室を有するシリンダ本体と、前記圧縮室の内部に配置され、前記クランクシャフトの偏心部が内側に配置された環状のローラとを有しており、前記ローラに対する前記偏心部の軸方向位置が運転時と運転停止時とで変化するものであり、前記ローラは、当該ローラの内周面と外周面とを連通する連通部を有し、前記連通部の内周面側の開口は、運転時に前記偏心部によって塞がれるとともに、運転停止時に開かれることを特徴とする。
【0009】
この圧縮機では、運転停止後(直後)において、圧縮機内の冷媒が、圧縮機構の各摺動部の隙間よりもローラに設けられた連通部を通って圧縮機の上流側に流入するので、冷媒が圧縮機の上流側に流入する際に、圧縮機構の各摺動部の隙間を潤滑する潤滑油が冷媒に巻き込まれて、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流するのを防止できる。また、ローラに連通部が設けられる構成を採用するだけで済むので、圧縮機の製造コストが増大するのを抑制できる。また、連通部の内周面側の開口が、運転時にクランクシャフトの偏心部によって塞がれるので、運転時に圧縮機内の冷媒が圧縮機の上流側に逆流するのを防止できる。
【0010】
第2の発明にかかる圧縮機は、第1の発明にかかる圧縮機において、前記偏心部は、運転時の軸方向位置が、運転停止時に対して上方に移動するものであることを特徴とする。
【0011】
この圧縮機では、運転時における偏心部の軸方向位置が運転停止時における偏心部の軸方向位置に対して上方に移動するものであるので、運転停止後に偏心部が重力で自然と下方に移動する。したがって、運転停止後に連通部の内周面側の開口を容易に開くことができる。
【0012】
第3の発明にかかる圧縮機は、第1または第2の発明にかかる圧縮機において、前記ローラの外周面から径方向外側に突出し、前記圧縮室を低圧室と高圧室とに仕切るブレードと、前記シリンダ本体に形成され、前記圧縮室に連通するとともに前記ブレードを収容するブレード収容部と、前記ブレード収容部の近傍に配置され、前記圧縮室の低圧室に連通する吸入孔とを備え、前記連通部の外周面側の開口が、前記ブレード収容部の中心線を延長した線よりも前記吸入孔側にあることを特徴とする。
【0013】
この圧縮機では、連通部の外周面側の開口がブレード収容部の中心線を延長した線よりも吸入孔側にあるので、当該開口がブレード収容部の中心線を延長した線に対して吸入孔と反対側にある場合に比べて、当該開口が圧縮室の高圧室よりも低圧室に開口しやすい。よって、運転停止後に、圧縮機内の冷媒が連通部から低圧室に流入する際に、ローラの外周面と圧縮室の内周面との間の隙間(低圧室と高圧室との間の隙間)を通過する可能性が低くなる。したがって、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流するのをより防止しやすい。
【0014】
第4の発明にかかる圧縮機は、第3の発明にかかる圧縮機において、前記ローラの外周面が前記圧縮室の内周面に沿って回転する際に、周方向について、前記連通部の外周面側の開口が、常に前記ブレード収容部と前記吸入孔との間にあることを特徴とする。
【0015】
この圧縮機では、連通部の外周面側の開口が常に圧縮室の低圧室に開口するので、運転停止後に、圧縮機内の冷媒が連通部から低圧室に流入する際に、ローラの外周面と圧縮室の内周面との間の隙間(低圧室と高圧室との間の隙間)を通過することがない。したがって、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流するのをより防止しやすい。
【0016】
第5の発明にかかる圧縮機は、第1−第4のいずれかに記載の圧縮機において、前記クランクシャフトは、運転時において前記圧縮機構に潤滑油を供給するための給油路を内部に有しており、前記偏心部の外周面は、前記給油路から排出された潤滑油を受ける給油溝を有していないとともに、前記ローラの内周面は、平面視において前記連通部の内周面側の開口と離れた位置に前記給油溝を有することを特徴とする。
【0017】
この圧縮機では、偏心部の外周面に給油溝がないので、偏心部の外周面に給油溝がある場合のように、運転時に給油溝と連通部とが対向することにより、連通部の内周面側の開口が開かれてしまうことがない。したがって、運転時に圧縮機内の冷媒が連通部から上流側に逆流するのを防止できる。また、ローラの内周面に給油溝があるので、この給油溝と偏心部の外周面とにより形成される空間に潤滑油が供給され、この潤滑油によって偏心部の外周面とローラの内周面との間の隙間が潤滑される。したがって、偏心部の外周面とローラの内周面との間において焼付きが生じるのを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
第1の発明では、運転停止後(直後)において、圧縮機内の冷媒が、圧縮機構の各摺動部の隙間よりもローラに設けられた連通部を通って圧縮機の上流側に流入するので、冷媒が圧縮機の上流側に流入する際に、圧縮機構の各摺動部の隙間を潤滑する潤滑油が冷媒に巻き込まれて、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流するのを防止できる。また、ローラに連通部が設けられる構成を採用するだけで済むので、圧縮機の製造コストが増大するのを抑制できる。また、連通部の内周面側の開口が、運転時にクランクシャフトの偏心部によって塞がれるので、運転時に圧縮機内の冷媒が圧縮機の上流側に逆流するのを防止できる。
【0020】
第2の発明では、運転時における偏心部の軸方向位置が運転停止時における偏心部の軸方向位置に対して上方に移動するものであるので、運転停止後に偏心部が重力で自然と下方に移動する。したがって、運転停止後に連通部の内周面側の開口を容易に開くことができる。
【0021】
第3の発明では、連通部の外周面側の開口がブレード収容部の中心線を延長した線よりも吸入孔側にあるので、当該開口がブレード収容部の中心線を延長した線に対して吸入孔と反対側にある場合に比べて、当該開口が圧縮室の高圧室よりも低圧室に開口しやすい。よって、運転停止後に、圧縮機内の冷媒が連通部から低圧室に流入する際に、ローラの外周面と圧縮室の内周面との間の隙間(低圧室と高圧室との間の隙間)を通過する可能性が低くなる。したがって、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流するのをより防止しやすい。
【0022】
第4の発明では、連通部の外周面側の開口が常に圧縮室の低圧室に開口するので、運転停止後に、圧縮機内の冷媒が連通部から低圧室に流入する際に、ローラの外周面と圧縮室の内周面との間の隙間(低圧室と高圧室との間の隙間)を通過することがない。したがって、潤滑油が圧縮機の上流側に逆流するのをより防止しやすい。
【0023】
第5の発明では、偏心部の外周面に給油溝がないので、偏心部の外周面に給油溝がある場合のように、運転時に給油溝と連通部とが対向することにより、連通部の内周面側の開口が開かれてしまうことがない。したがって、運転時に圧縮機内の冷媒が連通部から上流側に逆流するのを防止できる。また、ローラの内周面に給油溝があるので、この給油溝と偏心部の外周面とにより形成される空間に潤滑油が供給され、この潤滑油によって偏心部の外周面とローラの内周面との間の隙間が潤滑される。したがって、偏心部の外周面とローラの内周面との間において焼付きが生じるのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態にかかる圧縮機1について説明する。なお、以下においては、圧縮機1が垂直方向に配置される縦置き型の圧縮機である場合について記載し、
図1の上下方向、すなわち駆動機構6のクランクシャフト8の軸方向を上下方向として説明する。
【0026】
[圧縮機の全体構成]
図1に示すように、圧縮機1は、2シリンダ型のロータリ圧縮機であって、密閉容器2と、密閉容器2内に収容された駆動機構6および圧縮機構9とを有している。圧縮機1は、例えば空気調和機などの冷凍サイクルに組み込まれて使用され、アキュームレータ3の吸入管3a、3bから圧縮機構9に供給される冷媒(例えば、R32冷媒)を圧縮して排出管4から排出する。
【0027】
密閉容器2は、上下両端が塞がれた円筒状の容器である。密閉容器2の側部には、上述した2本の吸入管3a、3bが設けられている。密閉容器2の上部には、圧縮機構9で圧縮された冷媒を排出するための排出管4と、駆動機構6の後述する固定子7bのコイルに電流を供給するためのターミナル端子(不図示)が設けられている。また、密閉容器2内の底部には、潤滑油Lが溜められている。潤滑油Lは、圧縮機構9の各摺動部の動作を滑らかにするためのものである。この潤滑油Lの液面高さは、クランクシャフト8の下端よりも高く、運転時は後述するリアシリンダ14よりも高くなる場合がある。
【0028】
[駆動機構]
駆動機構6は、圧縮機構9を駆動するために設けられており、駆動源となるモータ7と、このモータ7に取り付けられたクランクシャフト8とを有している。なお、
図1では、モータ7の断面を示すハッチングを省略している。
【0029】
<モータ>
モータ7は、密閉容器2の内周面に固定される略円環状の固定子7bと、この固定子7bの径方向内側にエアギャップを介して配置される略円環状の回転子7aとを有している。回転子7aは磁石を有し、固定子7bはコイルを有している。固定子7bのコイルに電流を流すことで生じる電磁力によって、回転子7aは回転する。
【0030】
このモータ7の回転子7aは、運転時と運転停止時とで軸方向位置が変化する。
図2(a)に示すように、運転開始前(運転停止時)は、モータ7の回転子7aは、回転子7aの軸方向中心位置C1が固定子7bの軸方向中心位置C2に対して下方にずれるように配置されている。一方、
図2(b)に示すように、運転時は、モータ7の回転子7aは、上下方向において回転子7aの軸方向中心位置C1が固定子7bの軸方向中心位置C2に略一致するように上方に移動する。モータの回転子は、磁気中心(マグネットセンタ)で回転する性質があるからである。また、
図2(c)に示すように、運転停止後(運転停止時)は、モータ7の回転子7aは、重力によって自然と下方に移動し、運転開始前の位置に戻る。
【0031】
<クランクシャフト>
クランクシャフト8は、回転子7aの内周面に固定されており、回転子7aと一体的に回転して圧縮機構9を駆動する。クランクシャフト8は、後述する圧縮室21、31内に、偏心部8a、8bをそれぞれ有している。この偏心部8a、8bは、いずれも円柱状に形成されており、その中心軸がクランクシャフト8の回転中心に対して偏心している。この偏心部8a、8bは、圧縮機構9のピストン24、34(ローラ25、35)の内側に配置されている。
【0032】
また、クランクシャフト8の下側略半分の内部には、上下方向に沿って延びた給油路10aと、給油路10aからクランクシャフト8の径方向に枝分かれした複数の排出孔10b−10eとを有している。クランクシャフト8の下端には、クランクシャフト8の回転に伴って潤滑油Lを給油路10a内に吸い上げる螺旋羽根形状の図示しないポンプ部材(油供給機構)が取り付けられている。このポンプ部材によってクランクシャフト8の下端から給油路10aに吸い上げられた潤滑油Lは、排出孔10b−10eからクランクシャフト8の側面に排出されて、圧縮機構9の各摺動部に供給される。このポンプ部材は、クランクシャフト8の下端から圧入されるオイルチューブ20によって、クランクシャフト8の内部に保持されている。
【0033】
排出孔10bは、給油路10aの最も上端側に形成され、圧縮された高圧の冷媒で満たされる吐出空間2bに開口している。排出孔10cは、排出孔10bと偏心部8aとの間に形成され、運転停止時において、ローラ25の内側の空間25A(
図2(a)参照)に開口している。排出孔10b、10cは、運転停止後(直後)において、吐出空間2b内の高圧の冷媒(ガス)をアキュームレータ3内に流入させるためのガス抜き穴として機能する。また、排出孔10d、10eは、それぞれ偏心部8a、8bに形成されている。排出孔10d、10eは、それぞれローラ25の内側の空間25A、およびローラ35の内側の空間35A(
図2(a)参照)に開口している。
【0034】
[圧縮機構]
図1に示すように、圧縮機構9は、フロントヘッド11と、フロントシリンダ12(シリンダ本体)と、ミドルプレート13と、リアシリンダ14と、リアヘッド15とを有している。これらは、圧縮機1の上から下の順に配置されている。
【0035】
<フロントシリンダ>
図3に示すように、フロントシリンダ12(シリンダ本体)は、略円形板状の部材であって、その中央部に円形孔である圧縮室21が形成されている。また、フロントシリンダ12には、圧縮室21に冷媒を導入するための吸入孔22と、圧縮室21の内周面21Iから径方向外側に凹んだ形状であって、ピストン24のブレード26を収容するブレード収容部23が形成されている。この吸入孔22は、ブレード収容部23の近傍に配置される。具体的には、ブレード収容部23の中心線L1からクランクシャフト8の回転方向(
図3の矢印方向)に0°〜90°離れた範囲内に配置される。また、吸入孔22には、吸入管3aの先端が内嵌されている。
【0036】
図3に示すように、ピストン24は、円環状のローラ25と、このローラ25の外周面25Oから径方向外側に突出するブレード26とを有している。ローラ25は、偏心部8aの外側に配置されており、
図4(a)−(d)に示すように、ローラ25の外周面25Oが圧縮室21の内周面21Iに沿うように回転する。ブレード26は、ブレード収容部23に配置された一対のブッシュ27の間に進退可能に配置されている。
図3に示すように、圧縮室21は、ブレード26によって低圧室21aと高圧室21bとに分断されている。上述した吸入孔22は、圧縮室21の低圧室21aに連通している。
【0037】
図示は省略するが、ブレード収容部23には、サイフォン給油管(図示省略)に連通する流路が形成されている。サイフォン給油管は、下端が潤滑油Lに向かって開口しており、圧縮機1の運転時において、潤滑油Lを吸い上げてブレード収容部23に供給する役割を果たしている。したがって、ブレード26とブッシュ27との間の隙間や、ブッシュ27とブレード収容部23との間の隙間は、潤滑油Lで潤滑・シールされている。
【0038】
<フロントヘッド>
図1に示すように、フロントヘッド11は、フロントシリンダ12の上端面に配置されており、圧縮室21の上端を閉塞している。このフロントヘッド11は、
図1に示すように、クランクシャフト8が回転可能に挿通される挿通孔11aが形成されたボス部11bと、ボス部11bの下部側の外周面から径方向外側に突出した本体部11cとを有している。この本体部11cは、密閉容器2の内周面に例えば溶接により固定されている。この本体部11cには、フロントシリンダ12の圧縮室21で圧縮された冷媒を吐出するための吐出ポート11d(
図3参照)が形成されている。この吐出ポート11dは、圧縮室21の高圧室21bに連通している。また、本体部11cの上面には、圧縮室21内の圧力に応じて上述の吐出ポート11dの出口を開閉する弁機構(図示省略)が取り付けられている。
【0039】
また、フロントヘッド11の上側には、フロントマフラ16が取り付けられている。フロントヘッド11とフロントマフラ16との間には、第1マフラ空間17が形成されている。第1マフラ空間17は、フロントシリンダ12の吐出ポート11dを介して圧縮室21の高圧室21bに連通している。この第1マフラ空間17は、冷媒の吐出に伴う騒音を低減するために設けられている。フロントシリンダ12の圧縮室21で圧縮され、第1マフラ空間17に吐出された冷媒は、フロントマフラ16の上端に形成された吐出孔から吐出空間2bに吐出される。
【0040】
<ミドルプレート>
ミドルプレート13は、円形板状の部材であって、フロントシリンダ12の下端面かつリアシリンダ14の上端面に配置されている。このミドルプレート13は、フロントシリンダ12の圧縮室21の下端を閉塞するとともに、リアシリンダ14の圧縮室31の上端を閉塞している。
【0041】
<リアシリンダ>
リアシリンダ14は、フロントシリンダ12と略同様の構成を有するものである。このリアシリンダ14は、略円形板状の部材であって、その中央部に円形孔である圧縮室31が形成されている。また、リアシリンダ14には、圧縮室31に冷媒を導入するための吸入孔32と、圧縮室31の内周面から径方向外側に凹んだ形状であって、ブレード36(
図6(b)参照)を収容するブレード収容部(図示省略)が形成されている。この吸入孔32は、ブレード収容部の近傍に配置される。具体的には、ブレード収容部の中心線からクランクシャフト8の回転方向に0°〜90°離れた範囲内に配置される。また、吸入孔32には、吸入管3bの先端が内嵌されている。
【0042】
図6(b)に示すように、ピストン34は、円環状のローラ35と、このローラ35の外周面から径方向外側に突出するブレード36とを有している。ローラ35は、偏心部8bの外側に配置されており、外周面が圧縮室31の内周面に沿うように回転する。ブレード36は、ブレード収容部に配置された一対のブッシュ(図示省略)の間に進退可能に配置されている。圧縮室31は、ブレード36によって低圧室と高圧室とに分断される。上述した吸入孔32は、圧縮室31の低圧室に連通している。
【0043】
<リアヘッド>
リアヘッド15は、リアシリンダ14の下端面に配置されており、リアシリンダ14の圧縮室31の下端を閉塞している。このリアヘッド15は、クランクシャフト8が回転可能に挿通される挿通孔が形成されたボス部と、ボス部の上部側の外周面から径方向外側に突出した本体部とを有している。この本体部には、リアシリンダ14の圧縮室31で圧縮された冷媒を吐出するための吐出ポート(図示省略)が形成されている。この吐出ポートは、圧縮室31の高圧室に連通している。また、本体部の下面には、圧縮室31内の圧力に応じて上述の吐出ポートの出口を開閉する弁機構(図示省略)が取り付けられている。
【0044】
また、リアヘッド15の下側には、リアマフラ18が取り付けられている。リアヘッド15とリアマフラ18との間には、第2マフラ空間19が形成されている。第2マフラ空間19は、リアシリンダ14の吐出ポート(図示省略)を介して圧縮室31の高圧室に連通している。この第2マフラ空間19は、冷媒の吐出に伴う騒音を低減するために設けられている。なお、第1マフラ空間17と第2マフラ空間19とは、図示しない貫通孔によって連通している。したがって、リアシリンダ14の圧縮室31で圧縮され、第2マフラ空間19に吐出された冷媒は、上記貫通孔を通って第1マフラ空間17に吐出される。そして、フロントシリンダ12の圧縮室21で圧縮された冷媒と合流して、フロントマフラ16の上端に形成された吐出孔から吐出空間2bに吐出される。
【0045】
[偏心部、ローラの詳細]
図2(a)−(c)に示すように、偏心部8aの上下方向長さは、ローラ25の上下方向長さよりも僅かに小さくされている(例えば3mm程度小さい)。そして、この圧縮機1では、運転時において、モータ7の回転子7aが磁気中心(マグネットセンタ)で回転することにより、ローラ25に対する偏心部8aの軸方向位置が圧縮機1の運転時と運転停止時とで変化する。具体的には、
図2(a)に示すように、運転開始前(運転停止時)は、偏心部8aは、ミドルプレート13に載置される。したがって、ローラ25の内側の上方に空間25Aが形成される。一方、
図2(b)に示すように、運転時は、偏心部8aは上方に移動し、フロントヘッド11の下端面に接触する。すなわち、フロントヘッド11の下端面がスラスト面となる。したがって、ローラ25の内側の下方に空間25Aが形成される。また、
図2(c)に示すように、運転停止後(運転停止時)は、偏心部8aが重力によって自然に下方に移動し、
図2(a)の状態に戻る。
【0046】
図2、
図5及び
図6に示すように、ローラ25は、ローラ25の内周面25Iと外周面25Oとを連通する連通部41を有している。この連通部41は、径方向に沿った貫通孔であり、ローラ25の上方側に設けられている。連通部41は、例えば直径2mmの円形孔であり、その断面積は、圧縮機構9の各摺動部の隙間、例えば、ローラ25の上端面とフロントヘッド11との間の隙間や、ローラ25の下端面とミドルプレート13との間の隙間や、ブレード26とブッシュ27との間の隙間などよりも大きくされている(すなわち、連通部41は圧縮機構9の各摺動部の隙間よりも圧力損失が小さい)。
【0047】
図2(b)に示すように、圧縮機1の運転時において、連通部41の内周面25I側の開口41Iは、偏心部8aが上方に移動することによって塞がれる。また、
図2(c)に示すように、圧縮機1の運転停止後において、連通部41の内周面25I側の開口41Iは、偏心部8aが下方に移動することによって開かれる。なお、開口41Iが塞がれるとは、開口41Iの略全域が塞がれることを意味する。一方、開口41Iが開かれるとは、開口41Iの少なくとも一部が開かれることを意味する。ただし、本実施形態では、圧縮機1の運転時において、開口41Iの略全域が開かれている。
【0048】
図4(a)−(d)に示すように、連通部41の外周面25O側の開口41Oは、ローラ25の外周面25Oが圧縮室21の内周面21Iに沿って回転する際に、常に、ブレード収容部23の中心線を延長した線L1’よりも吸入孔22側にある。
【0049】
より詳しくは、ローラ25の外周面25Oが圧縮室21の内周面21Iに沿って回転する際に、連通部41の外周面25Oの開口41Oの少なくとも一部が、周方向について、常に、ブレード収容部23と吸入孔22との間にある。ブレード収容部23と吸入孔22との間は、常に低圧室21aが形成される部分であるので、開口41Oは、常に低圧室21aに開口する。
【0050】
なお、ブレード収容部23と吸入孔22との間とは、具体的には、
図4(a)−(d)に示すように、平面視において、ブレード収容部23の中心線を圧縮室21の中心まで延長した線L2と、圧縮室21の中心から径方向に沿って延び且つ吸入孔22の一端22aを通る線L3との間の範囲R(ハッチング部分)を指す。なお、この一端22aは、平面視において、吸入孔22の両側端のうちブレード収容部23から離れた側の端部であって、且つ最も圧縮室21に近い部分である。
【0051】
偏心部8bの上下方向長さは、偏心部8aの上下方向長さと同様に、ローラ35の上下方向長さよりも僅かに小さくされている(例えば3mm程度小さい)。そして、この圧縮機1では、運転時において、モータ7の回転子7aが磁気中心(マグネットセンタ)で回転することにより、ローラ35に対する偏心部8bの軸方向位置が圧縮機1の運転時と運転停止時とで変化する。具体的には、
図2(a)に示すように、運転開始前は、偏心部8bは、リアヘッド15に載置される。したがって、ローラ35の内側の上方に空間35Aが形成される。一方、
図2(b)に示すように、運転時は、偏心部8bは上方に移動し、ミドルプレート13の下端面に接触する。すなわち、ミドルプレート13の下端面がスラスト面となる。したがって、ローラ35の内側の下方に空間35Aが形成される。また、
図2(c)に示すように、運転停止後は、偏心部8bが重力によって自然に下方に移動し、
図2(a)の状態に戻る。
【0052】
図6(b)に示すように、偏心部8bの外周面51は、クランクシャフト8の排出孔10eから排出された潤滑油Lを受ける給油溝52を有する。この給油溝52は、上下方向において偏心部8bの全域に形成された貫通溝である。
図6(b)に示すように、ローラ35の内周面35Iは、平面視において円環状である。この給油溝52によって、偏心部8bの外周面51とローラ35の内周面35Iとの間に潤滑油Lを受ける空間S2が形成される。その結果、密閉容器2の底部から給油路10aに引き上げられた潤滑油Lが排出孔10eから空間S2に排出される。空間S2に排出された潤滑油Lは、クランクシャフト8の回転によって偏心部8bの外周面51とローラ35の内周面35Iとの間全体に延ばされ、偏心部8bの外周面51とローラ35の内周面35Iとの間の隙間が潤滑油Lで潤滑・シールされる。したがって、偏心部8bの外周面51とローラ35の内周面35Iとの間において焼付きが生じるのが防止される。
【0053】
一方、
図6(a)に示すように、偏心部8aの外周面61は、偏心部8bのような給油溝を有しておらず、平面視において円環状である。一方で、
図6(a)に示すように、ローラ25の内周面25Iは、クランクシャフト8の排出孔10c、10dから排出された潤滑油Lを受ける給油溝62を有する。この給油溝62は、平面視において、連通部41の内周面25I側の開口41Iと離れた位置に配置されている。詳しくは、この給油溝62は、平面視においてブレード収容部23の中心線を延長した線L1’よりも吸入側に設けられている。さらに具体的には、この給油溝62は、ブレード収容部23の中心線からクランクシャフト8の回転方向に約90°離れた位置に形成されている。また、給油溝62は、上下方向においてローラ35の全域に形成された貫通溝である。この給油溝62によって、偏心部8aの外周面61とローラ25の内周面25Iとの間に潤滑油Lを受ける空間S1が形成される。その結果、密閉容器2の底部から給油路10aに引き上げられた潤滑油Lが排出孔10c、10dから空間S1に排出される。空間S1に排出された潤滑油Lは、クランクシャフト8の回転によって偏心部8aの外周面61とローラ25の内周面との間全体に延ばされ、偏心部8aの外周面51とローラ25の内周面25Iとの間の隙間が潤滑油Lで潤滑・シールされる。したがって、偏心部8aの外周面61とローラ25の内周面25Iとの間において焼付きが生じるのが防止される。
【0054】
[圧縮機の動作]
次に、本実施形態の圧縮機1の動作について説明する。圧縮機1の運転が開始されると、吸入管3a、3bからフロントシリンダ12およびリアシリンダ14の圧縮室21、31内に冷媒が供給される。また、モータ7の駆動によりクランクシャフト8が回転する。
図4(a)−(d)に示すように、フロントシリンダ12の圧縮室21では、クランクシャフト8の偏心部8aが回転することによって、偏心部8aの外側に配置されたローラ25の外周面25Oが圧縮室21の内周面21Iに沿って回転する。これにより、高圧室21bと低圧室21aの容積が変化して、高圧室21bで冷媒が圧縮される。そして、圧縮室21の高圧室21b内の圧力が所定圧力以上になると、フロントヘッド11に設けられた弁機構(図示省略)が開弁して、圧縮室21内の冷媒が第1マフラ空間17に吐出される。第1マフラ空間17に吐出された高圧の冷媒は、図示しないフロントマフラ16の吐出孔から吐出空間2bに吐出される。吐出空間2bに吐出された冷媒は、固定子7bと回転子7aとの間のエアギャップなどを通過して、最終的に、排出管4から密閉容器2の外に排出される。
【0055】
また、リアシリンダ14においても、フロントシリンダ12と同様に、圧縮室31で冷媒が圧縮されて、圧縮室31の高圧室内の圧力が所定圧力以上になると、リアヘッド15に設けられた弁機構(図示省略)が開弁して、圧縮室31内の冷媒が第2マフラ空間19に吐出される。第2マフラ空間19に吐出された冷媒は、図示しない貫通孔を通って、第1マフラ空間17に吐出されたあと、図示しないフロントマフラ16の吐出孔から吐出空間2bに吐出される。
【0056】
モータ7の駆動によりクランクシャフト8が回転すると、クランクシャフト8の下端に取り付けられた図示しないポンプ部材によって潤滑油Lが給油路10a内に吸い上げられる。給油路10aに吸い上げられた潤滑油Lは、排出孔10b−10eから圧縮機構9の各摺動部に供給される。したがって、例えばフロントシリンダ12を例にとると、運転時において、ローラ25の上端面とフロントヘッド11との間の隙間や、ローラ25の下端面とミドルプレート13との間の隙間や、ローラ25の外周面25Oと圧縮室21の内周面21Iとの間の隙間は、潤滑油Lで潤滑・シールされている。また、同様に、リアシリンダ14でも、運転時において、ローラ35の上端面とミドルプレート13との間の隙間や、ローラ35の下端面とリアヘッド15との間の隙間や、ローラ35の外周面35Oと圧縮室31の内周面31Iとの間の隙間は、潤滑油Lで潤滑・シールされている。
【0057】
また、サイフォン給油管では、潤滑油Lが吸い上げられ、潤滑油Lがブレード収容部23に供給される。したがって、運転時において、ブレード26とブッシュ27との間の隙間や、ブッシュ27とブレード収容部23との間の隙間は、潤滑油Lで潤滑・シールされている。
【0058】
圧縮機1の運転が開始されると、
図2(b)に示すように、偏心部8aが上方に移動し、偏心部8aによって連通部41の内周面25I側の開口41Iが塞がれる。したがって、圧縮機1の運転時に、圧縮室21、31から吐出空間2bに吐出された高圧の冷媒が、連通部41から上流側(アキュームレータ3側)に逆流するのが防止される。一方、
図2(c)に示すように、圧縮機1の運転が停止されると、偏心部8aが下方に移動し、開口41Iが開かれる。したがって、運転停止後(直後)において、吐出空間2b内の高圧の冷媒が、
図2(c)中の細矢印で示すように、圧縮機構9の各摺動部の隙間、例えば、ローラ25の上端面とフロントヘッド11との間の隙間や、ローラ25の下端面とミドルプレート13との間の隙間や、ブレード26とブッシュ27との間の隙間よりも圧力損失が小さい連通部41を通って、アキュームレータ3内に流入する。その結果、高圧の圧縮機1内と圧縮機1内よりも圧力が低い圧縮機1の上流側(アキュームレータ3内)とで均圧が行われる。
【0059】
[本実施形態にかかる圧縮機の特徴]
本実施形態の圧縮機1では、
図2(c)に示すように、圧縮機1の運転停止後(直後)において、圧縮機1内の冷媒が、圧縮機構9の各摺動部の隙間よりもローラ25に設けられた連通部41を通って圧縮機1の上流側に流入するので、冷媒が圧縮機1の上流側に流入する際に、圧縮機構9の各摺動部、例えばローラ25の端面とフロントヘッド11およびミドルプレート13との間の隙間や、ブレード26とブッシュ27との間の隙間を通過することが防止される。したがって、冷媒が圧縮機1の上流側に流入する際に、圧縮機構9の各摺動部を潤滑する潤滑油Lが冷媒に巻き込まれて圧縮機1の上流側(アキュームレータ3内)に逆流するのを防止できる。また、ローラ25に連通部41が設けられる構成を採用するだけで済むので、圧縮機1の製造コストが増大するのを抑制できる。また、
図2(b)に示すように、連通部41の内周面25I側の開口41Iが、運転時にクランクシャフト8の偏心部8aによって塞がれるので、運転時に圧縮機1内の冷媒が圧縮機1の上流側に逆流するのを防止できる。
【0060】
また、本実施形態の圧縮機1では、圧縮機1の運転時における偏心部8aの軸方向位置が運転停止時における偏心部8aの軸方向位置に対して上方に移動するものであるので、運転停止後(直後)に偏心部8aが重力で自然と下方に移動する。したがって、運転停止後(直後)に連通部41の内周面25I側の開口41Iを容易に開くことができる。
【0061】
また、本実施形態の圧縮機1では、
図4(a)−(d)に示すように、連通部41の外周面25O側の開口41Oがブレード収容部23の中心線を延長した線L1’よりも吸入孔22側にあるので、当該開口41Oがブレード収容部23の中心線を延長した線L1’に対して吸入孔22と反対側にある場合に比べて、当該開口41Oが圧縮室21の高圧室21bよりも低圧室21aに開口しやすい。よって、運転停止後(直後)に、圧縮機1内の冷媒が連通部41から低圧室21aに流入する際に、ローラ25の外周面25Oと圧縮室21の内周面21Iとの間の隙間(低圧室21aと高圧室21bの間の隙間)を通過する可能性が低くなる。したがって、潤滑油Lが圧縮機1の上流側に逆流するのをより防止しやすい。
【0062】
また、本実施形態の圧縮機1では、
図4(a)−(d)に示すように、連通部41の外周面25O側の開口41Oが常に圧縮室21の低圧室21aに開口するので、運転停止後(直後)に、圧縮機1内の冷媒が連通部41から低圧室21aに流入する際に、ローラ25の外周面25Oと圧縮室21の内周面21Iとの間の隙間(低圧室21aと高圧室21bの間の隙間)を通過することがない。したがって、潤滑油Lが圧縮機1の上流側に逆流するのをより防止しやすい。
【0063】
また、本実施形態の圧縮機1では、
図6(a)に示すように、偏心部8aの外周面61に給油溝がないので、偏心部の外周面に給油溝がある場合のように、運転時に給油溝と連通部41とが対向することにより、運転時に連通部41の内周面25I側の開口41Iが開かれてしまうことがない。したがって、運転時に圧縮機1内の冷媒が連通部41から上流側に逆流するのを防止できる。また、ローラ25の内周面25Iに給油溝62があるので、この給油溝62と偏心部8aの外周面61とにより形成される空間S1に潤滑油が供給され、この潤滑油Lによって偏心部8aの外周面61とローラ25の内周面25Iとの間の隙間が潤滑される。したがって、偏心部8aの外周面61とローラ25の内周面25Iとの間において焼付きが生じるのを防止できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
[変形例]
上述の実施形態では、圧縮室21内にローラ25とブレード26とからなるピストン24が配置される場合について説明したが、例えば
図7に示すように、圧縮室21内に、ローラ125とベーン126とが配置されていてもよい。この場合、フロントシリンダ12には、ベーン126を収容するベーン収容部123が形成される。ローラ125の内側には偏心部8aが配置される。また、ローラ125は、ローラ25と同様に連通部41、給油溝62を有する。また、ベーン126は、ローラ125と別体であり、ベーン収容部123内に設けられた付勢バネ127によって付勢され、先端がローラ125の外周面に押し付けられている。このベーン126によって、圧縮室21は低圧室21aと高圧室21bとに分断される。
【0066】
また、上述の実施形態では、圧縮室31内にローラ35とブレード36とからなるピストン34が配置される場合について説明したが、上記と同様、圧縮室31内に、ローラとベーンとが配置されていてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、ローラ25に形成された連通部41が貫通孔である場合について説明したが、ローラに形成された連通部は、ローラの端面に形成され且つローラの内周面と外周面とを連通する貫通溝であってもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、連通部41の内周面25I側の開口41Iと外周面25O側の開口41Oとが、上下方向において同一位置に配置される場合について説明したが、連通部41の内周面25I側の開口41Iが圧縮機1の運転時に塞がれ、圧縮機1の運転停止時に開かれるのであれば、連通部41の内周面25I側の開口41Iと外周面25O側の開口41Oとが、上下方向において異なる位置に配置されてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、
図4(a)−(d)に示すように、連通部41の外周面25O側の開口41Oが、ローラ25の外周面25Oが圧縮室21の内周面21Iに沿って回転する際に、周方向について、常にブレード収容部23と吸入孔22との間にある場合について説明したが、それに限られない。例えば、連通部41は、ブレード収容部23の中心線を延長した線L1’よりも吸入孔22側であればどこにあってもよい。また、例えば、連通部41は、ブレード収容部23の中心線を延長した線L1’に対して吸入孔22と反対側(吐出ポート11d側)にあってもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、
図6(a)に示すように、ローラ25の外周面61が給油路10aから排出された潤滑油Lを受ける給油溝を有しないとともに、ローラ25の内周面25Iが給油路10aから排出された潤滑油Lを受ける給油溝62を有する場合について説明したが、ローラの内周面が給油路から排出された潤滑油を受ける給油溝を有していなくてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、給油溝62が上下方向についてローラ25の全域に配置される貫通溝である場合について説明したが、給油溝は上下方向について貫通してなくてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、給油溝62が平面視においてブレード収容部23の中心線を延長した線L1’よりも吸入孔22側に配置される場合、より詳しくは、ブレード収容部23の中心線からクランクシャフト8の回転方向におよそ90°離れた位置に配置される場合について説明したが、給油溝62は、平面視において連通部41の内周面25Iの開口41Iと離れた位置であれば、ローラ25の内周面25Iのどこに配置されてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、偏心部8aは、圧縮機1の運転時の軸方向位置が、運転停止時に対して上方に移動するものである場合について説明したが、下方に移動するものであってもよい。例えば、圧縮機1の運転停止時にモータ7の回転子7aの軸方向中心位置C1が固定子7bの軸方向中心位置C2よりも上方に配置され、且つ偏心部8aの下端面とミドルプレート13の上端面との間にバネが設けられていることによって、圧縮機1の運転時の軸方向位置が運転停止時に対して下方に移動してもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、2つのローラ25、35のうちローラ25のみが連通部41を有する場合について説明したが、ローラ25、35がともに連通部を有していてもよいし、ローラ35のみが連通部を有していてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、2シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用した場合について説明したが、1シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用しても同様の効果が得られる。