【解決手段】保持部材28に設けられたコネクタ部28bと、一端部33aが給電用ブラシに接続され、他端部33bの固定部33cが円筒状の圧着端子34を介してコネクタの一方側端子31aに接続されたピグテールハーネス33と、を備え、ピグテールハーネスは、一端部と他端部との間の部位がブラシ保持部28aの底壁28g外面から突設された円柱状のガイド部35の外周面35aに沿って屈曲形成されていると共に、該屈曲部から前記他端部の固定部までが圧着端子の軸方向に沿ってほぼ直線状に形成されている。
スリップリングに当接する給電用ブラシを介して電動モータに通電することによって、クランクシャフトの回転に対するカムシャフトの相対回転位相を変更する内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記給電用ブラシを摺動自在に保持する保持部材と、
該保持部材に設けられ、電源に接続されるコネクタと、
一端部が前記給電用ブラシに接続され、他端部が固定部を介して前記コネクタのコネクタ端子に接続されたピグテールハーネスと、
前記保持部材に設けられて、外周に円弧面を有するガイド部と、
を備え、
前記ピグテールハーネスは、前記ガイド部の円弧面に沿って屈曲形成されていると共に、該屈曲部から前記固定部までの前記他端部がほぼ直線状に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
スリップリングに当接する給電用ブラシを介して電動モータに通電することによって、クランクシャフトの回転に対するカムシャフトの相対回転位相を変更する内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
前記給電用ブラシを摺動自在に保持する保持部材と、
該保持部材に設けられ、電源に接続されるコネクタと、
一端部が前記給電用ブラシに接続され、他端部が固定部を介して前記コネクタのコネクタ端子に接続された導線と、
前記保持部材に設けられて、外周に円弧面を有するガイド部と、
を備え、
前記導線は、前記ガイド部の円弧面を屈曲部としてほぼく字状に屈曲形成されていると共に、該屈曲部と前記固定部が所定距離離間していることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態では、吸気弁側に適用したものである。
【0014】
このバルブタイミング制御装置は、
図1及び
図2に示すように、内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動する駆動回転体であるタイミングスプロケット1と、シリンダヘッド01上に軸受02を介して回転自在に支持され、前記タイミングスプロケット1から伝達された回転力によって回転するカムシャフト2と、タイミングスプロケット1の前方位置に配置されたチェーンカバー49に固定されたカバー部材3と、タイミングスプロケット1とカムシャフト2の間に配置されて、機関運転状態に応じて前記両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構4と、を備えている。
【0015】
前記タイミングスプロケット1は、全体が鉄系金属によって環状一体に形成され、内周面が段差径状のスプロケット本体1aと、該スプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、巻回された図外のタイミングチェーンを介してクランクシャフトからの回転力を受けるギア部1bと、前記スプロケット本体1aの前端側に一体に設けられた内歯構成部19と、から構成されている。
【0016】
また、このタイミングスプロケット1は、スプロケット本体1aと前記カムシャフト2の前端部に設けられた後述する従動部材9との間に、1つの大径ボールベアリング43が介装されており、この大径ボールベアリング43によって、タイミングスプロケット1と前記カムシャフト2が相対回転自在に支持されている。
【0017】
前記大径ボールベアリング43は、外輪43aと、内輪43b及び該両輪43a、43bの間に介装されたボール43cと、から構成され、前記外輪43aがスプロケット本体1aの内周側に固定されているのに対して内輪43bが従動部材9の外周側に固定されている。
【0018】
前記スプロケット本体1aは、内周側に、前記カムシャフト2側に開口した円環溝状の外輪固定部60が切欠形成されており、この外輪固定部60は、段差径状に形成されて、前記大径ボールベアリング43の外輪43aが軸方向から圧入されると共に、該外輪43aの軸方向一方側の位置決めをするようになっている。
【0019】
前記内歯構成部19は、前記スプロケット本体1aの前端部外周側に一体に設けられ、位相変更機構4の前方へ延出した円筒状に形成されていると共に、内周には波形状の複数の内歯19aが形成されている。
【0020】
また、前記内歯構成部19の前端側には、後述するモータハウジング12と一体の円環状の雌ねじ形成部12eが対向配置されている。
【0021】
さらに、スプロケット本体1aの内歯構成部19と反対側の後端部には、円環状の保持プレート61が配置されている。この保持プレート61は、金属板材によって一体に形成され、
図1に示すように、外径が前記スプロケット本体1aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、内径が前記大径ボールベアリング43の外輪43aの内径よりも小径に形成されている。
【0022】
前記保持プレート61の内周部61aは、前記外輪43aの軸方向の外端面に当接配置されている。また、前記内周部61aの内周縁所定位置には、径方向内側、つまり中心軸方向に向かって突出したストッパ凸部61bが一体に設けられている。
【0023】
このストッパ凸部61bは、
図1及び
図4に示すように、ほぼ扇状に形成されて、先端縁61cが後述するストッパ溝2bの円弧状内周面に沿った円弧状に形成されている。
【0024】
前記スプロケット本体1a(内歯構成部19)及び保持プレート61の各外周部には、それぞれボルト挿通孔1c、61dが周方向のほぼ等間隔位置に6つ貫通形成されている。前記雌ねじ形成部12eには、各ボルト挿通孔1c、61dと対応した位置に6つの雌ねじ孔12fが形成されており、これらに挿通した6本のボルト7によって前記タイミングスプロケット1と保持プレート61及びモータハウジング12が軸方向から共締め固定されている。
【0025】
なお、前記スプロケット本体1aと内歯構成部19は、後述する減速機構8のケーシングとして構成されている。
【0026】
また、前記スプロケット本体1aと前記内歯構成部19、保持プレート61、雌ねじ形成部12eは、それぞれの外径がほぼ同一に設定されている。
【0027】
前記チェーンカバー49は、
図1に示すように、機関本体であるシリンダヘッド01と図外のシリンダブロックの前端側に前記タイミングスプロケット1に巻回された図外のチェーンを覆うよう上下方向に沿って配置固定されている。また、前記位相変更機構4に対応した位置に形成された開口部を構成する環状壁49aの円周方向の4箇所に、ボス部49bが一体に形成されていると共に、環状壁49aから各ボス部49bの内部に亘って雌ねじ孔49cがそれぞれ形成されている。
【0028】
前記カバー部材3は、
図1、
図2に示すように、アルミニウム合金材よってカップ状に一体に形成されて、前記モータハウジング12の前端部を覆うように配置され、膨出状のカバー本体3aと、該カバー本体3aの開口側の外周縁に一体に形成された円環状の取付フランジ3bと、を備えている。また、このカバー部材3の内面3fとモータハウジング12の前端部外面との間には、カップ状の空間部Sが画成されている。
【0029】
前記カバー本体3aは、外周部側に円筒壁3cが軸方向に沿って一体に突設されており、この円筒壁3cは、内部軸方向に保持用孔3dが貫通形成されている。
【0030】
また、カバー本体3aの前記円筒壁3cの下部側には、円筒部3gが前記円筒壁3cと平行かつ軸方向に沿って突設されている。この円筒部3gは、上端部が前記円筒壁3cの下端部と一体に結合されて、内部軸方向に前記カバー本体3aの外側と前記空間部Sとの間を連通する連通孔3hが貫通形成されていると共に、この連通孔3hの外端側に通気用栓体56が圧入固定されている。
【0031】
前記連通孔3h(円筒部3g)は、前記カバー部材3をチェーンカバー49に組み付けた後に、前記従動部材9をカムシャフト2に固定するためのカムボルト10をモータ出力軸13の内部を介して挿通するための作業用孔として機能するものである。
【0032】
前記通気用栓体56は、有底円環状の合成樹脂材の本体57と、該本体57の前端面に形成された凹溝内に嵌着圧入された円盤状の支持部58と、前記凹溝の底面に配置収容されて、該底面と前記支持部58に挟持状態に保持された円形状のフィルタ59と、を備えている。
【0033】
前記支持部58は、中央に本体57凹溝中央に形成された第1通気孔57aと連通する第2通気孔58aが軸方向に沿って貫通形成されている。
【0034】
前記フィルタ59は、自由に撓み変形可能な薄い布状の円盤形状に形成され、全体が前記凹溝の底面上に密着するようになっている。また、このフィルタ59は、支持部58側の表面から本体底面側の裏面側に掛けて空気を透過可能になっていると共に、裏面から表面に掛けては液体や塵芥などを透過しない材質の基材が用いられている。
【0035】
前記取付フランジ3bは、
図2にも示すように、円周方向のほぼ等間隔位置に4つのボス部3eが周方向のほぼ等間隔位置(約90°位置)に設けられている。この各ボス部3eには、
図1に示すように、前記チェーンカバー49に形成された各雌ねじ孔49dに螺着するボルト70が挿通するボルト挿通孔3fがそれぞれ貫通形成されて、前記各ボルト70によってカバー部材3がチェーンカバー49に固定されている。
【0036】
また、前記カバー本体3aの外周側の段差部内周面と前記モータハウジング12の外周面との間には、シール部材である大径なオイルシール50が介装されている。この大径オイルシール50は、横断面ほぼコ字形状に形成されて、合成ゴムの基材の内部に芯金50aが埋設されていると共に、外周側の円環状基部50bが前記カバー部材3の内周面に設けられた円環溝の底面に圧入固定されている。また、この大径オイルシール50は、前記円環状基部50bの内周側に一体に形成されたシールリップを含むシール部50cがバックアップスプリング50dのばね力によってハウジング本体12aの外周面に弾接されてシール機能を発揮するようになっている。つまり、前記電動モータ5の内部に有する前記空間部Sを液密的に封止して、主として前記タイミングスプロケット1の回転駆動に伴って飛散した潤滑油の前記空間部S内への侵入を阻止するようになっている。
【0037】
前記カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有していると共に、前端部に前記フランジ部2aが一体に設けられていると共に、該フランジ部2aを含めた軸方向の一端部内に、後述するカムボルト10の軸部10b先端部に形成された雄ねじ部10cが螺着される雌ねじ孔2eが穿設されている。
【0038】
前記フランジ部2aは、
図1に示すように、外径が後述する従動部材9の固定端部9aの外径よりも僅かに大きく設定されて、各構成部品の組み付け後に、前端面の外周部が前記大径ボールベアリング43の内輪43bの軸方向外端面に当接配置されるようになっている。
【0039】
前記フランジ部2aの前端面2fが、従動部材9の後述する固定端部9aの後端面9cに軸方向から当接した状態でカムボルト10によって軸方向から結合されている。
【0040】
さらに、前記フランジ部2aの外周には、
図4に示すように、前記保持プレート61のストッパ凸部61bが係入するストッパ凹溝2bが円周方向に沿って形成されている。このストッパ凹溝2bは、円周方向へ所定長さの円弧状に形成されて、この長さ範囲で回動したストッパ凸部61bの両端縁が周方向の対向縁2c、2dにそれぞれ当接することによって、タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の最大進角側あるいは最大遅角側の相対回転位置を規制するようになっている。
【0041】
前記カムボルト10は、
図1に示すように、頭部10aの端面が小径ボールベアリング37の内輪を軸方向から支持していると共に、軸部10bの先端部外周に前記雄ねじ部10cが形成されている。
【0042】
前記従動部材9は、鉄系金属によって一体に形成され、
図1に示すように、後端側(カムシャフト2側)に形成された円板状の固定端部9aと、該固定端部9aの内周前端面から軸方向へ突出した円筒部9bと、前記固定端部9aの外周部に一体に形成されて、複数の転動体であるローラ48を保持する保持部材である円筒状の保持器41と、から構成されている。
【0043】
前記固定端部9aは、後端面9cが前記フランジ部2aの前端面2fに当接配置されて、前記カムボルト10の軸力によってフランジ部2aに軸方向から圧接固定されている。
【0044】
前記固定端部9aと円筒部9bの内部中央に、前記カムボルト10の軸部10bが挿通されるボルト挿通孔9d(カムボルト挿通孔)が貫通形成されていると共に、円筒部9bの外周には軸受部材であるニードルベアリング38が設けられている。
【0045】
前記保持器41は、
図1に示すように、前記固定端部9aの外周部前端から前方へ断面ほぼL字形状に折曲されて、前記円筒部9bと同方向へ突出した有底円筒状に形成されている。
【0046】
この保持器41の筒状先端部41aは、前記雌ねじ形成部12eと前記延出部12dとの間に形成された円環凹状の収容空間44を介してモータハウジング12の隔壁12b方向へ延出している。また、前記筒状先端部41aの周方向のほぼ等間隔位置には、
図1及び
図2に示すように、前記複数のローラ48をそれぞれ転動自在に保持するほぼ長方形状に切り欠かれた複数のローラ保持孔41bが周方向の等間隔位置に形成されている。このローラ保持孔41b(ローラ48)は、その全体の数が前記内歯構成部19の内歯19aの全体の歯数よりも少なくなっている。これによって、減速比を得るようになっている。
【0047】
前記位相変更機構4は、前記従動部材9の円筒部9bの前端側に配置された前記電動モータ5と、該電動モータ5の回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機構8と、から主として構成されている。
【0048】
前記電動モータ5は、
図1及び
図2に示すように、ブラシ付きのDCモータであって、前記タイミングスプロケット1と一体に回転する前記モータハウジング12と、該モータハウジング12の内部に回転自在に設けられたモータ出力軸13と、モータハウジング12の内周面に固定されたステータである4つの永久磁石14と、を備えている。
【0049】
前記モータハウジング12は、
図1に示すように、有底筒状に形成されたハウジング本体12aと、該ハウジング本体12aの前端開口を封止する給電プレート11と、を備えている。
【0050】
前記ハウジング本体12aは、薄板状のステンレス材(S10C)をプレス成形にすることによって形成されてヨークとして機能し、軸方向の後端側に円板状の底壁である隔壁12bを有している。この隔壁12bは、モータハウジング12の内部と減速機構8の内部を隔成するものであって、ほぼ中央に後述する偏心軸部39が挿通される大径な軸挿通孔12cが形成されていると共に、該軸挿通孔12cの孔縁にカムシャフト2の軸方向へ突出した円筒状の延出部12dが一体に設けられている。また、前記隔壁12bの外周側には、前述した環状の雌ねじ形成部12eが一体に設けられている。
【0051】
前記モータ出力軸13は、段差円筒状に形成されてアーマチュアとして機能し、軸方向のほぼ中央位置に形成された段差部13cを介してカムシャフト2側の大径部13aと、その反対側の小径部13bと、から構成されている。前記大径部13aは、外周に鉄心ロータ17が固定されていると共に、後端側に減速機構8の一部を構成する偏心軸部39が一体に形成されている。
【0052】
一方、前記小径部13bは、外周に円環部材20が圧入固定されていると共に、該円環部材20の外周面に後述するコミュテータ21が軸方向から圧入固定されて前記段差部13cの外面によって軸方向の位置決めがなされている。前記円環部材20は、その外径が前記大径部13aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、軸方向の長さが小径部13bよりも僅かに短く設定されている。
【0053】
前記小径部13bの内周面には、モータ出力軸13や偏心軸部39内に供給されて前記各ベアリング37,38を潤滑するための潤滑油の外部への漏洩を抑制する栓体55が圧入固定されている。
【0054】
前記鉄心ロータ17は、複数の磁極を持つ磁性材によって形成され、外周側がコイル18のコイル線を巻回させるスロットを有するボビンとして構成されている。
【0055】
一方、前記コミュテータ21は、導電材によって円環状に形成されて、前記鉄心ロータ17の極数と同数に分割された各セグメントに前記コイル18の引き出されたコイル線の端末が電気的に接続されている。
【0056】
前記各永久磁石14は、周方向で4分割されてそれぞれ円弧状に形成されて全体が円筒状を呈し、各外周面が前記ハウジング本体12aの内周面12gに接着剤15によってそれぞれ固着されている。また、永久磁石14は、円周方向の両端部に複数のN,Sの磁極を有していると共に、その軸方向の位置が前記鉄心ロータ17の軸方向の中心に対して前記給電プレート11側にオフセット配置されている。これによって、前記永久磁石14の前端部が、径方向で前記コミュテータ21や給電プレート11に設けられた後述する切換用ブラシ25a、25bなどとオーバーラップするように配置されている。
【0057】
前記給電プレート11は、
図1、
図5に示すように、鉄系金属材からなる芯材としての円盤状の剛性プレート部16と、該剛性プレート部16の前後両側面にモールドされた円板状の樹脂部22と、から構成されている。
【0058】
前記剛性プレート16は、前記樹脂部22に覆われていないで露出した外周部16aが前記モータハウジング12の前端部内周に形成された円環状の段差状の凹溝12eにかしめによって位置決め固定されていると共に、中央部にはモータ出力軸13の一端部などが挿通される軸挿通孔16bが貫通形成されている。また、剛性プレート16は、
図5に示すように、前記軸挿通孔16bの内周縁に連続した所定の位置に異形状の2つの保持孔16c、16dが打ち抜きにより形成されており、この各保持孔16c、16dの位置に、後述するブラシホルダ23a、23bが配置固定されている。
【0059】
なお、前記外周部16aの周方向の所定位置には、前記ハウジング本体12aに対して図外の治具を介して円周方向の位置決めを行う3つのU字溝16eが形成されている。
【0060】
また、前記給電プレート11には、
図1、
図5に示すように、前記剛性プレート16の各保持孔16c、16dの内側に配置されて、前記樹脂部22に複数のリベット40により固定された銅材からなる一対のブラシホルダ23a、23bと、該各ブラシホルダ23a、23bの内部に径方向に沿って摺動自在に収容配置されて、コイルスプリング24a、24bのばね力で円弧状の各先端面が前記コミュテータ21の外周面に径方向から弾接する整流子である一対の切換用ブラシ25a、25bと、前記樹脂部22の前端部に、それぞれの前端面を露出した状態でモールド固定された内外二重の給電用スリップリング26a,26bと、前記各切換用ブラシ25a、25bと各スリップリング26a,26bを電気的に接続する導線である一対のピグテールハーネス27a、27bと、が設けられている。
【0061】
前記内周側の小径なスリップリング26aと外周側の大径なスリップリング26bは、銅材からなる薄板をプレスによって円環状に打ち抜き形成されていると共に、
図5に示すように、モータハウジング12の内部に臨む後端面の一部26c、26dが樹脂部22から露出している。
【0062】
前記カバー部材3のカバー本体3aには、合成樹脂材によって一体的にモールドされた保持部材28が組み付けられている。
【0063】
この保持部材28は、
図1、
図2及び
図6に示すように、側面視ほぼクランク形状に形成され、前記カバー部材3の保持用孔3dに挿入されるほぼ有底円筒状のブラシ保持部28aと、該ブラシ保持部28aと反対側に有する電源用のコネクタ部28bと、前記ブラシ保持部28aの一側面から一体に突設されて、前記カバー本体3aにボルト固定されるブラケット部28cと、内部に一部が埋設されたコネクタ端子である一対の給電用端子片31、31と、から主として構成されている。
【0064】
前記ブラシ保持部28aは、
図6に示すように、ほぼ水平方向(軸方向)に延設されて、内部の上下位置に形成された貫通孔内に角筒状のブラシホルダ29a、29bが固定されていると共に、該各ブラシホルダ29a、29bの内部に、各先端面が前記各スリップリング26a、26bに軸方向からそれぞれ当接する給電用ブラシ30a、30bが軸方向へ摺動自在に保持されている。また、ブラシ保持部28cの円形状の底壁28fの外周縁には、後述するキャップ36が嵌合して係止固定される円環状の突起部28gが一体に設けられている。
【0065】
また、前記底壁28fの外側には、前記突起部28gによって周囲が隔成された円形状の空間S1が形成されており、この空間部S1は、前記各給電用ブラシ30a、30bがブラシホルダ29a、29b内で後退移動した際に、後述する各ピグテールハーネス33、33が撓み変形して吸収される深さに設定されている。この空間S1は、軸方向の一端開口が合成樹脂材によって形成された円板状の前記キャップ36によって液密的に閉止されている。このキャップ30は、外周部に形成された断面コ字形状の環状溝30aが前記突起部28gに嵌合してブラシ保持部28aに被嵌状に係止固定されている。
【0066】
前記各給電用ブラシ30a、30bは、ほぼ角柱状に形成されて、後端面と前記底壁28fとの間に弾装されたコイルスプリング32a、32bのばね力によって各先端面がそれぞれ前記各スリップリング26a、26b方向に弾接している。
【0067】
また、前記各給電用ブラシ30a、30bの後端部と後述する一方側端子31a、31aとの間に、可撓性を有する一対の導線であるピグテールハーネス33、33が結合されて両者を電気的に接続している。このピグテールハーネス33、33は、その長さが前記給電用ブラシ30a、30bが前記各コイルスプリング32a、32bによって最大に進出した際に(
図6参照)、前記各ブラシホルダ29a、29bから脱落しないように、その最大摺動位置を規制する長さに設定されている。
【0068】
また、前記ブラシ保持部28aの基部側外周に形成された円環状の嵌着溝内に、環状シール部材64が嵌着保持されている。
【0069】
前記コネクタ部28bは、上端部に図外の雄型端子が挿入される前述の嵌合溝28dに臨む一対の給電用端子片31、31の後述する他方側(上側)の端子31b、31bが前記雄型端子を介してコントローラである図外のコントロールユニットに電気的に接続されるようになっている。
【0070】
前記ブラケット部28cは、
図2及び
図7に示すように、斜め逆U形状に形成されて、両側部にボルト挿通孔28e、28eが貫通形成されている。この各ボルト挿通孔28e、28eには、前記カバー本体3aに形成された図外の一対の雌ねじ孔に螺着する各ボルトが挿通されて各ブラケット部28cを介して前記保持部材28全体がカバー本体3aに固定されるようになっている。
【0071】
前記給電用端子片31,31は、
図1に示すように、上下方向に沿って平行かつクランク状に形成されて、一方側(下側)の各端子31a、31aが前記ブラシ保持部28aの円形状の底壁28f外面上に露出状態で配置されている一方、他方側(上側)の各端子31b、31bが前記コネクタ部28bの雌型嵌合溝28d内に突設されている。
【0072】
前記各一方側端子31a、31aは、
図7,
図8に示すように、それぞれほぼL字形状にそれぞれ折曲形成されて、レイアウトの関係上、ブラシ保持部28aの底壁28f外面上で互いに内側が向き合うように配置されている。一方、前記他方側端子31b、31bは、図外の雄端子を介してバッテリー電源に電気的に接続されている。
【0073】
前記一方側端子31a、31aに対する前記ピグテールハーネス33,33の具体的な接続構造や取り回し構造については、後述する。
【0074】
前記モータ出力軸13と偏心軸部39は、
図1に示すように、前記カムボルト10の軸部10b外周面に設けられた小径ボールベアリング37と、前記従動部材9の円筒部9bの外周面に設けられて小径ボールベアリング37の軸方向側部に配置された前記ニードルベアリング38とによって回転自在に支持されている。
【0075】
前記ニードルベアリング38は、偏心軸部39の内周面に圧入された円筒状のリテーナ38aと、該リテーナ38aの内部に回転自在に保持された複数の転動体であるニードルローラ38bと、から構成されている。このニードルローラ38bは、前記従動部材9の円筒部9bの外周面を転動している。
【0076】
前記小径ボールベアリング37は、内輪が前記従動部材9の円筒部9bの前端縁とカムボルト10の頭部10aとの間に挟持状態に固定されている一方、外輪が前記偏心軸部39の段差拡径状の内周面に圧入固定されていると共に、前記内周面に形成された段差縁に当接して軸方向の位置決めがなされている。
【0077】
また、前記モータ出力軸13(偏心軸部39)の外周面と前記モータハウジング12の延出部12dの内周面との間には、減速機構8の内部から電動モータ5内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシール46が設けられている。このオイルシール46は、電動モータ5と減速機構8とをシール機能をもって隔成するものである。
【0078】
前記コントロールユニットは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサなど各種のセンサ類から情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出し、これに基づいて機関制御を行うと共に、前記給電用ブラシ30a、30bや各スリップリング26a,26b、切換用ブラシ25a、25b、コミュテータ21などを介してコイル18に通電してモータ出力軸13の回転制御を行い、減速機構8によってカムシャフト2のタイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
【0079】
前記減速機構8は、
図1〜
図3に示すように、偏心回転運動を行う前記偏心軸部39と、該偏心軸部39の外周に設けられた中径ボールベアリング47と、該中径ボールベアリング47の外周に設けられた前記ローラ48と、該ローラ48を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する前記保持器41と、該保持器41と一体の前記従動部材9と、から主として構成されている。なお、前記偏心軸部39と中径ボールベアリング47によって偏心回転体が構成されている。
【0080】
前記偏心軸部39は、外周面に形成されたカム面39aの回転中心Yがモータ出力軸13の回転軸心Xから径方向へ僅かに偏心している。
【0081】
前記中径ボールベアリング47は、前記ニードルベアリング38の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置され、内輪47aと外輪47b及び該両輪47a、47bとの間に介装されたボール47cとから構成されている。前記内輪47aは、前記偏心軸部39の外周面に圧入固定されているのに対して、前記外輪47bは、軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。つまり、この外輪47bは、軸方向の電動モータ5側の一端面がどの部位にも接触せず、また軸方向の他端面がこれに対向する保持器41の内側面との間に微小な第1隙間Cが形成されてフリーな状態になっている。
【0082】
また、この外輪47bの外周面には、前記各ローラ48の外周面が転動自在に当接していると共に、この外輪47bの外周側には、円環状の第2隙間C1が形成されて、この第2隙間C1によって中径ボールベアリング47全体が前記偏心軸部39の偏心回転に伴って径方向へ移動可能、つまり偏心動可能になっている。
【0083】
前記各ローラ48は、鉄系金属によって中実円柱状に形成され、外径の大きさが全て均一に形成されている。また、この各ローラ48は、前記中径ボールベアリング47の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ前記内歯構成部19の内歯19aに嵌入すると共に、保持器41のローラ保持孔41bの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向に揺動運動させるようになっている。
【0084】
前記減速機構8の内部には、潤滑油供給手段によって潤滑油が供給されるようになっている。この潤滑油供給手段は、前記シリンダヘッド01の軸受02の内部に形成されて、図外のメインオイルギャラリーから潤滑油が供給される油供給通路51と、前記カムシャフト2の内部軸方向に形成されて、前記油供給通路51にグルーブ溝52aを介して連通した油供給孔52と、前記従動部材9の後端面9cに形成されて、前記油供給孔52の先端開口52aが臨む潤滑油溝である第2グルーブ溝53と、前記従動部材9の内部軸方向に貫通形成されて、一端部が前記第2グルーブ溝53に開口し、他端部が前記ニードルベアリング38や中径ボールベアリング47の付近に開口した連通孔54と、同じく従動部材9に貫通形成された図外のオイル排出孔と、から構成されている。
【0085】
したがって、オイルポンプから圧送された潤滑油が前記潤滑油供給手段を介して前記収容空間44内に強制的に供給されて滞留し、ここから中径ボールベアリング47や各ローラ48を潤滑すると共に、さらには偏心軸部39とモータ出力軸13の内部に流入してニードルベアリング38や小径ボールベアリング37などの可動部の潤滑に供されるようになっている。なお、前記収容空間44内に滞留した潤滑油は、前記小径オイルシール46によってモータハウジング12内へのリークが抑制されている。
【0086】
そして、前述した各一方側端子31a,31aは、
図7及び
図8中、水平方向に延びた各一端部に、前記各ピグテールハーネス33、33の一端部33a、33a側が挿通されるハーネス挿通孔31c、31cが貫通形成されていると共に、図中垂直方向へ延びた各他端部の上面には各ピグテールハーネス33、33の他端部33b、33bの先端部である固定部33c、33cに接続端子である圧着端子34、34がそれぞれ結合されている。前記各一方側端子31a、31aの中央の屈曲部位の内側には、前記各ピグテールハーネス33、33を一方側端子31a、31aの形状に沿って屈曲案内するガイド部35、35がそれぞれ一体に設けられている。
【0087】
前記各ハーネス挿通孔31cは、
図9に示すように、外側孔縁に面取り状のアール面31dが形成されている。このアール面31dは、半径が0.1〜0.5mmに設定されており、これによって前記各ピグテールハーネス33が貫通孔方向へ直角ではなく僅かに鈍角状に折り曲げられながら当接することになる。これによって、前記当接圧が分散されて折れ荷重を低減するようになっている。
【0088】
前記各圧着端子34は、
図10A、Bに示すように、銅板材をパイプ状に折り曲げて円筒状に形成されたもので、軸方向の前端部34aの開口部34bから各ピグテールハーネス他端部33bの細線を束ねてなる固定部33cを内部軸方向に挿通して圧着固定するようになっている。
【0089】
また、この各圧着端子34は、
図10Bにも示すように、前端部34a(開口部34b)がラッパ状に拡径形成されて、この開口部34bの領域ではピグテールハーネス他端部33bの固定部33cの一部(固定端33d)が圧着されずにフリーな状態になっている。
【0090】
また、この各圧着端子34は、前記前端部34aを含む外周面の一部が軸方向に沿って平坦状に形成されて、この平坦面が前記各一方側端子31aの上面に超音波接合によって固定されている。
【0091】
前記各ガイド部35は、
図1、
図7及び
図11に示すように、前記ブラシ保持部28aの底壁28fの外面に一体に突設され、つまり、同じ合成樹脂材によってほぼ円柱状に突設され、これらの形成位置は、各一方側端子31aのL字形状の角部の内側、すなわち、前記各ハーネス挿通孔31cと各圧着端子34との間の90°角の内側の位置に配置されている。
【0092】
また、各ガイド部35は、
図11及び
図12に示すように、直径Dがそれぞれ約3.5mmの均一な外径に形成されていると共に、両方のガイド部35,35の軸心P、P間の離間長さWが約11.6mm、各軸心Pと各圧着端子34の軸線までの長さLが2.8mmに形成されている。
【0093】
さらに、
図12に示すように、各ガイド部35の軸心Pからピグテールハーネス33の他端部33bに対して直交する径方向の交線Qと、前記圧着端子34の前端部34aの前端縁までの長さL1は約0.8mm以上に設定されている。この長さL1を0.8mm以上に設定した理由は、本願発明者が行った実験結果によって得たもので、具体的な説明は後述する。
【0094】
なお、各ガイド部35の軸方向の長さは、前記空間S1の高さよりも僅かに小さく形成されて前記キャップ36の閉塞に支障を来すことはない長さに設定されている。
【0095】
そして、前記保持部材28がカバー部材3のブラシ保持部28aに組み付けられる前(出荷時)には、
図6に示すように、前記各給電用ブラシ30a、30bが、コイルスプリング32a、32bのばね力で前方に付勢されて、各先端部がブラシホルダ29a、29bから前方へ突出している。この状態では、ピグテールハーネス33は、コイルスプリング32a、32bのばね力で引っ張られることから、
図7及び
図8に示すように、前記ガイド部35の外周面35aに弾接しながらほぼく字形状に屈曲される。
【0096】
一方、前記保持部材28がカバー部材3のブラシ保持部28aに組み付けられる(機関への搭載時)と、
図1に示すように、前記各給電用ブラシ30a、30bの各先端面が各スリップリング26a、26bに弾接しつつコイルスプリング32a、32bのばね力に抗して後退移動する。このため、前記各ピグテールハーネス33,33は、各コイルスプリング32a、32bによる引っ張り力が解除されて、
図11及び
図12に示すように、空間S1内で僅かに撓み変形して屈曲部が各ガイド部35の外周面35aから離間しつつほぼ直角状に折り曲げられるようになっている。
〔本実施形態の作動〕
以下、本実施形態の作動について説明すると、まず、機関のクランクシャフトの回転駆動に伴ってタイミングチェーンを介してタイミングスプロケット1が回転して、その回転力が内歯構成部19と雌ねじ形成部12eを介してモータハウジング12に伝達されて、該モータハウジング12が同期回転する。一方、前記内歯構成部19の回転力が、各ローラ48から保持器41及び従動部材9を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2のカムが吸気弁を開閉作動させる。
【0097】
そして、機関始動後の所定の機関運転時には、前記コントロールユニットから各端子片31,31、各ピグテールハーネス及び給電用ブラシ30a、30bや各スリップリング26a,26bなどを介して電動モータ5のコイル18に通電される。これによって、モータ出力軸13が回転駆動され、この回転力が減速機構8を介してカムシャフト2に減速された回転力が伝達される。
【0098】
すなわち、前記モータ出力軸13の回転に伴い偏心軸部39が偏心回転すると、各ローラ48がモータ出力軸13の1回転毎に保持器41の各ローラ保持孔41bで径方向へガイドされながら前記内歯構成部19の一つの内歯19aを乗り越えて隣接する他の内歯19aに転動しながら移動し、これを順次繰り返しながら円周方向へ転接する。この各ローラ48の転接によって前記モータ出力軸13の回転が減速されつつ前記従動部材9に回転力が伝達される。このときの減速比は、前記内歯19aの数とローラ48の数の差によって任意に設定することが可能である。
【0099】
これにより、カムシャフト2がタイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換されて、吸気弁の開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御するのである。
【0100】
前記タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の正逆相対回転の最大位置規制(角度位置規制)は、前記ストッパ凸部61bの各側面が前記ストッパ凹溝2bの各対向面2c、2dのいずれか一方に当接することによって行われる。
【0101】
したがって、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ最大に変換されて、機関の燃費や出力の向上が図れる。
【0102】
そして、本実施形態では、前記保持部材28側の各ピグテールハーネス33は、各他端部33bの固定部33cを一方側端子31aに対して、単に半田付けによって接続するのではなく、前記各圧着端子34を利用して接続したため、カムシャフトの交番トルクなどに起因した振動が各他端部33bに伝達されても、該他端部33bと圧着端子34との接続箇所に集中応力が作用することがない。
【0103】
特に、本実施形態では、前述したように、
図7に示す前記保持部材28がカバー部材3に組み付けられる前の出荷時において、各ピグテールハーネス33は、各ガイド部35の外周面35aにコイルスプリング32a、32bのばね力によって弾接してほぼく字形状に屈曲して癖つけられる。
【0104】
その後、前記保持部材28がカバー部材3に組み付けられると、各ピグテールハーネス33は、
図11に示すように、各ガイド部35から離間しつつほぼ直角状に屈曲形成されて、各他端部33bが前記各圧着端子34の軸線に対してほぼ直線状になってほぼ同軸上に接続される。したがって、前記各圧着端子34の前端部34a端縁に位置する前記他端部33bの根元部である固定端33dに対しての集中応力の発生を抑制できる。
【0105】
つまり、各ピグテールハーネス33の他端部33bが各圧着端子34に対して大きく傾斜した状態で接続された場合は、折れ曲がった固定端33dに集中応力が発生しやすくなるが、本実施形態では、この固定端33dが直線状になっていることから、集中応力の発生を抑制できるのである。ここで、直線状とは、若干の角度を有する場合も含む。
【0106】
また、各圧着端子34が円筒状に形成され、各ピグテールハーネス33の他端部33bが各圧着端子34の円筒状の軸方向に沿ってほぼ直線状に延出していることから、前記他端部33bの固定端33dに作用する集中応力をより軽減することができる。
【0107】
しかも、前述したように、各ガイド部35の軸心Pからピグテールハーネス33の他端部33bに対して直交する径方向の交線Qと、前記圧着端子34の前端部34aの前端縁までの長さL1を約0.8mm以上に設定したことによって、前記固定端33dに対する集中応力をさらに低減できる。換言すれば、ピグテールハーネス33の他端部33bが直線状となる距離であるL1が長くなり、集中応力を低減できるのである。
【0108】
すなわち、本願の発明者は、前記L1の長さと前記他端部33bの固定端33dに作用する集中応力(最大主応力)との関係を実験し、この結果を
図13のグラフに示した。
【0109】
この実験グラフによると、前記長さL1を−0.1mmから漸次延ばして行くと、この−0.1mmでは最大主応力(MPa)が最も大きくなり、この−0.1mmから0.8mmまで延ばすと、この長さ範囲では最大主応力が急激に低減し、その後、2.0mmまで延ばすと、最大主応力がなだらかに下降していくのが分かった。
【0110】
したがって、前記L1の長さ寸法を0.8mm以上に設定することによって、他端部33bの固定端33dに対する集中応力を、−0.1mmに設定した場合に比較して約30%以上低減させることができる。
【0111】
これは、前記他端部33b側の直線性がさらに確保できるからであると考えられる。
【0112】
よって、各ピグテールハーネス33の他端部33bの圧着端子34との固定端33dでの、たとえば断線などの発生が抑制されて各ピグテールハーネス33の耐久性が向上する。
【0113】
しかも、前記各圧着端子34は、前端部34a側がラッパ状に形成されて開口部34bが拡径状になっていることから、該開口部34bに位置するピグテールハーネス33の他端部33bの部位33dがフリーな状態となっている。このため、ピグテールハーネス33の他端部33b側の撓み変形を開口部34b内で吸収することができることから、この点でも前記他端部33bの固定端33dでの集中応力を抑制することが可能になり、耐久性をさらに向上できる。
【0114】
また、前記各ピグテールハーネス33の一端部33a側では、ハーネス挿通孔31cの外側孔縁がアール面31dになっていることから、ここの部位での曲げ応力の発生を抑制することができる。
〔第2実施形態〕
図14は第2実施形態を示し、各一方側端子31aの屈曲部の外周部に各ピグテールハーネス33の他端部33bを保持する保持壁62が設けられていると共に、ガイド部63の構造を変更したものである。
【0115】
前記保持壁62は、
図15にも示すように、ブラシ保持部28aと一体に形成されて、前記一方側端子31aの他端部側の外側部を覆うように設けられ、内壁面62aが前記ガイド部63の外側面側から一方側端子31aの他端部(圧着端子34)方向に亘って案内溝を形成するように円弧−直線状に形成されている。
【0116】
前記ガイド部63は、
図16に示すように、前記ブラシ保持部28aの底壁28fに一体に形成された基端部63aと、該基端部63aの上端に一体に設けられた突出片63bと、から構成されている。
【0117】
前記基端部63aは、ほぼ円柱状に形成されて、外側面63cがほぼ円弧状に形成されている。一方、前記突出片63bは帽子の鍔状に形成されて前記一方側端子31aの一端部とほぼ直交する方向(他端部と平行)へ延出されている。
【0118】
したがって、前記各ピグテールハーネス33は、ブラシ保持部28aがカバー部材3に組み付けられる前は、前述と同じくガイド部63の基端部63aの外側面63cに弾接しながらほぼく字形状に折り曲げられ、カバー部材3に組み付けられた状態では、
図14に示すように、僅かに撓み変形して外側面63cから離間しつつほぼ直角状に屈曲形成される。
【0119】
また、ここで、ピグテールハーネス33は、ガイド部63に沿って屈曲された部位付近の直線状一端部33aが前記突出片63aの下面によって上方への撓み変形が規制される。一方、前記各ピグテールハーネス33の他端部33b側が前記保持壁62の内壁面62aに沿って保持されている。
【0120】
したがって、この実施形態によれば、各ピグテールハーネス33の他端部33b側が前記保持壁62の内壁面62aによって形状が保持されて、各圧着端子34の軸線に沿ったほぼ直線状に保持されるため、前記圧着端子34との固定端33dに対する機関振動に起因した集中応力の発生が効果的に抑制される。
【0121】
しかも、前記ピグテールハーネス33の屈曲部も各ガイド部63の突出片63aによって上方への撓み変形が規制されることから、前記他端部33bの保持壁62による直線性をより確実に確保することができる。これによって、固定端33dに対する集中応力の発生を十分に抑制できる。
【0122】
なお、他の構成は、第1実施形態と同様であるから、同様の作用効果が得られることは勿論である。
【0123】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、前記ピグテールハーネス33の他端部33b側に、該他端部33bを嵌合状態に保持する保持溝を形成することも可能である。
【0124】
また、前記圧着端子34の開口部34bを拡径する方法としては、前端部34a全体を押し広げて形成するのではなく、開口部34bの内周面を円錐状に切り欠いて形成することも可能である。
【0125】
また、前記他端部33b側での前記L1の長さを、
図13に示す0.8mm以上の例えば1.6mmや2.0mmなどに設定することも可能であり、このようにすれば、固定端33dでの集中応力の抑制効果をさらに高めることが可能になる。
【0126】
さらに、前述した各部の寸法D、L、L1、Wは、バルブタイミング制御装置の仕様や大きさなどによって任意に変更可能である。
【0127】
また、本発明のバルブタイミング制御装置を吸気側の他に、排気側に設けることも可能である。
【0128】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕
請求項3に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記圧着端子は、ほぼ円筒状に形成されて、軸方向の一端開口部から内部に挿通された前記固定部の先端部から軸方向所定長さまで部位を圧着保持すると共に、前記一端開口部側の部位を圧着保持しないことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項b〕
請求項3、4またはaのいずれか一項に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記圧着端子は、前記ピグテールハーネスが挿通される一端部の開口部が拡径状に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項c〕
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記ガイド部は、円柱状に形成されていると共に、先端側にフランジ状の突出片が設けられていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項d〕
請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記ピグテールハーネスの一端部は、前記屈曲部を介して直線状に配置された他端部に対してほぼ直角方向へ延出していることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項e〕
請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記保持部材は、前記給電用ブラシが摺動自在に保持される保持孔を有すると共に、該保持孔と対応するコネクタ端子の部位に前記ピグテールハーネスの一端部が挿通するハーネス挿通孔が形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項f〕
請求項eに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記ハーネス挿通孔は、外側孔縁に面取り状のアール面が形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
〔請求項g〕
請求項fに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記ハーネス挿通孔のアール面は、半径が0.1〜0.5mmに形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。