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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227655(P2015-227655A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/08 20060101AFI20151120BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20151120BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20151120BHJP
   F01M 9/10 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   F01M1/08 D
   F02F1/24 G
   F02F1/24 F
   F01M1/06 D
   F01M9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-114559(P2014-114559)
(22)【出願日】2014年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 真明
(72)【発明者】
【氏名】田中 重一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 泉
(72)【発明者】
【氏名】福島 慎哉
【テーマコード(参考)】
3G024
3G313
【Fターム(参考)】
3G024AA01
3G024AA19
3G024BA23
3G024DA01
3G024DA06
3G024DA09
3G024DA18
3G024EA01
3G024FA07
3G313AA05
3G313AA07
3G313BA02
3G313BC13
3G313BC18
3G313BD07
3G313BD15
3G313BD64
3G313BD65
3G313FA06
3G313FA08
(57)【要約】
【課題】潤滑に供されたオイルを粘度が低い高温状態のまま回収することができる動弁室の潤滑油回収構造を提供する。
【解決手段】動弁室17に収容され、吸気弁10及び排気弁11を駆動する動弁機構18と、動弁機構18の摺動部(21a、22a、23a)にオイルを供給する潤滑油供給通路24と、シリンダヘッド3の動弁室底面3cに開口し、動弁室17内のオイルを回収するオイル回収通路34とを備える内燃機関Eの動弁室17の潤滑油回収構造において、動弁室17内のオイルを捕捉するバッフル(30)をシリンダヘッド3の動弁室底面3cとの間に隙間を形成するように動弁室17内に設け、捕捉したオイルをバッフル(30)の排出口32aからオイル回収通路34に流下させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの上部に締結され、燃焼室の上縁を画成するシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの上部に締結され、前記シリンダヘッドと共に動弁室を画成するヘッドカバーと、
前記燃焼室に連通するように前記シリンダヘッドに形成された吸気ポート及び排気ポートと、
前記シリンダヘッドに摺動可能に取り付けられ、記吸気ポート及び前記排気ポートを開閉する吸気弁及び排気弁と、
前記動弁室に収容され、前記吸気弁及び前記排気弁を駆動する動弁機構と、
前記動弁機構の摺動部にオイルを供給する潤滑油供給通路と、
前記シリンダヘッドの動弁室底面に開口し、前記動弁室内のオイルを回収するオイル回収通路と
を備える内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造であって、
前記シリンダヘッドの動弁室底面との間に隙間を形成するように前記動弁室内に設けられ、前記動弁室内のオイルを捕捉するバッフルを更に備え、
前記バッフルが、捕捉したオイルを前記オイル回収通路に流下させる排出口を有することを特徴とする内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項2】
前記動弁機構が、前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方を開閉させる動弁カムが形成されたカムシャフトを有し、
前記シリンダヘッドには、前記カムシャフトを回転可能に支持する複数のカムホルダが設けられ、
前記バッフルが、互いに隣接する2つのカムホルダ間に当該カムホルダに近接あるいは当接するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項3】
前記シリンダヘッドには、シリンダ軸線に対して斜めに延在して前記燃焼室に至る点火プラグ挿入孔が形成され、
前記バッフルが、前記点火プラグ挿入孔を画成する壁の傾斜面に前記シリンダヘッドの動弁室底面よりも高い位置で取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項4】
前記潤滑油供給通路が、オイルを供給することで前記排気弁を冷却する冷却油供給手段を更に備え、
前記バッフルが、前記排気弁を冷却したオイルの少なくとも一部を捕捉するように設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項5】
前記冷却油供給手段が、前記排気弁のステムエンド近傍に取り付けられたリテーナに向けてオイルを供給し、
前記バッフルが、前記リテーナから飛散するオイルの少なくとも一部を捕捉するように、前記排気弁が閉弁位置にあるときの前記リテーナよりも下方に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項6】
前記排気弁には、両端が当該排気弁の外面に開口する排気弁冷却通路が形成され、
前記冷却油供給手段が前記排気弁冷却通路にオイルを供給し、
前記バッフルが、前記排気弁冷却通路から排出されるオイルの少なくとも一部を捕捉するように、前記排気弁が閉弁位置にあるときの前記排気弁冷却通路の排出側開口よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項7】
前記動弁機構が、前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方を開閉させる動弁カムが形成されたカムシャフトを有し、
前記バッフルは前記動弁カムの回転軌跡に沿って上面を凹ませた窪み部を有しており、
前記バッフルの前記排出口が前記オイル回収通路の内部又は上方に配置され、
前記バッフルの前記窪み部から延出して前記排出口に至る第1延出部が、前記排出口に向けて下り勾配に傾斜しているか又は下り階段状となっていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項8】
前記内燃機関が前記シリンダの前記燃焼室側を一方に傾斜させた状態で設置され、
前記オイル回収通路が前記シリンダヘッドの動弁室底面における前記一方側に開口し、
前記バッフルの前記排出口が、当該バッフルの前記一方側の端部に設けられ、
前記動弁機構が、前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方を開閉させる動弁カムが形成されたカムシャフトを有し、
前記バッフルが、前記カムシャフトの回転軌跡に沿って下方に凹んだ半円筒状の窪み部と、前記窪み部から前記排出口に至る第1延出部と、前記窪み部から他方側に延出する第2延出部とを有するプレート部材からなり、
前記第1延出部が、前記第2延出部に対して低い位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【請求項9】
前記第1延出部及び前記第2延出部が前記排出口に向けて共に下り勾配に傾斜しており、前記第1延出部の勾配が前記第2延出部の勾配より小さいことを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の動弁室の潤滑油回収構造に関し、詳しくは、動弁室内のオイルを捕捉するバッフルを設けることで粘度が低い高温状態のままオイルを回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドに吸気ポート又は排気ポートが形成される内燃機関では、ポートの開閉弁として、弁体である傘部と傘部を移動させる軸体であるステムとを有するポペットバルブが一般的に用いられる。これらの吸気弁又は排気弁は、シリンダヘッドの上面(動弁室底面)からステムエンドを突出させるようにシリンダヘッドに摺動可能に設けられ、吸排気弁を駆動する動弁機構を収容するように、シリンダヘッドの上面側に動弁室が設けられる。
【0003】
動弁機構の各摺動部はオイル等で潤滑される必要がある。例えば、シリンダ軸線を傾斜させて設置される内燃機関に設けられる動弁機構の潤滑構造として、DOHC型動弁機構の上側に位置するカム軸の下方に、カムノーズの回転軌跡を下方から覆う潤滑油溜め部材をシリンダヘッドと下側カム軸受とに一体に設けた構造が公知となっている(特許文献1参照)。
【0004】
同様に、シリンダ軸線を傾斜させて設置される内燃機関に適用される動弁機構の潤滑構造として、SOHC型動弁機構の上側に位置するロッカシャフトとロッカアームとの摺動部又は上側に位置するロッカシャフトとカムホルダ(ロッカシャフトの軸受部)との摺動部から飛散するオイルを集めて動弁カムの摺動面に導入するための導入壁をカムホルダの側面に設けた構造が公知となっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2911463号公報
【特許文献2】実公平6−3130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の動弁機構の潤滑構造では、動弁室内で飛散するオイルの一部を集めることができる。しかしながら、大部分のオイルは動弁室の底壁面に落下して溜まり、一定量のオイルが溜まると動弁室の底壁(シリンダヘッド)に設けられたオイル落とし孔から下方に配置されたオイルパンに回収されることになる。
【0007】
ところが、一般的にシリンダヘッドの内部には、燃焼ガスや排気ガスによる温度上昇を防止するために冷却水通路が形成されている。また、冷却水通路が形成されていないとしても、シリンダヘッドは比較的大きな熱容量を持っており、シリンダヘッドに奪われる熱量は大きい。そのため、オイルがシリンダヘッドの上面に溜まると、オイルは冷やされてその粘度が高くなる。
【0008】
オイルの粘度が高いと、軸受部や各摺動部においてせん断抵抗が高くなり、またポンプの仕事量も増えるため、内燃機関の機械損失が増加して熱効率が悪くなってしまう。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑み、潤滑に供されたオイルを粘度が低い高温状態のまま回収することができる動弁室の潤滑油回収構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、少なくとも1つのシリンダ(1)を有するシリンダブロック(2)と、前記シリンダブロックの上部に締結され、燃焼室(6)の上縁を画成するシリンダヘッド(3)と、前記シリンダヘッドの上部に締結され、前記シリンダヘッドと共に動弁室(17)を画成するヘッドカバー(4)と、前記燃焼室に連通するように前記シリンダヘッドに形成された吸気ポート(7)及び排気ポート(8)と、前記シリンダヘッドに摺動可能に取り付けられ、記吸気ポート及び前記排気ポートを開閉する吸気弁(10)及び排気弁(11)と、前記動弁室に収容され、前記吸気弁及び前記排気弁を駆動する動弁機構(18)と、前記動弁機構の摺動部(21a、22a、23a)にオイルを供給する潤滑油供給通路(24)と、前記シリンダヘッドの動弁室底面(3c)に開口し、前記動弁室内のオイルを回収するオイル回収通路(34)とを備える内燃機関(E)の動弁室の潤滑油回収構造であって、前記シリンダヘッドの動弁室底面との間に隙間を形成するように前記動弁室内に設けられ、前記動弁室内のオイルを捕捉するバッフル(30)を更に備え、前記バッフルが、捕捉したオイルを前記オイル回収通路に流下させる排出口(32a)を有する構成とする。
【0011】
この構成によれば、動弁機構の摺動部に供給されて潤滑に供された後のオイルをバッフルでシリンダヘッドの動弁室底面に接触させることなく捕捉し、捕捉した比較的高温のオイルを排出口からオイル回収通路に排出することで、オイルがシリンダヘッドの動弁室底面に接触することを抑制できるので、冷間時にも高温かつ粘度が低い状態のままオイルを回収することができる。また、粘度の低い状態で再度オイルポンプから潤滑部位へオイルを供給することができるため、各摺動部の抵抗を減らし、オイルポンプの仕事量を軽減することで、内燃機関の熱効率を向上させることができる。
【0012】
また、上記の発明において、前記動弁機構(18)が、前記吸気弁(10)及び前記排気弁(11)の少なくとも一方を開閉させる動弁カム(19a)が形成されたカムシャフト(19)を有し、前記シリンダヘッド(3)には、前記カムシャフトを回転可能に支持する複数のカムホルダ(23)が設けられ、前記バッフル(30)が、互いに隣接する2つのカムホルダ間に当該カムホルダに近接あるいは当接するように配置されている構成とすることができる。
【0013】
この構成によれば、潤滑のためにオイルが供給及び排出されるカムホルダに当接あるいは近接するようにバッフルが配置されたことにより、カムホルダ間でシリンダヘッドの動弁室底面を覆うように設けられたバッフルによって動弁室内のオイルを確実に捕捉でき、動弁室内に貯留されるオイルの量が低減するため、オイルの回収効率が向上する。
【0014】
また、上記の発明において、前記シリンダヘッド(3)には、シリンダ軸線(1X)に対して斜めに延在して前記燃焼室(6)に至る点火プラグ挿入孔(29)が形成され、前記バッフル(30)が、前記点火プラグ挿入孔を画成する壁の傾斜面(3e)に前記シリンダヘッドの動弁室底面(3c)よりも高い位置で取り付けられている構成とすることができる。
【0015】
この構成によれば、シリンダヘッドの動弁室底面から突出した傾斜面にバッフルが取り付けられることで、特別な取付部を新たに設けることなく、バッフルをシリンダヘッドの動弁室底面に接触させないように設けることができる。また、バッフルが傾斜面に取り付けられるため、鉛直面に取り付ける場合に比べて取付作業が行いやすい。
【0016】
また、上記の発明において、前記潤滑油供給通路(24)が、オイルを供給することで前記排気弁(11)を冷却する冷却油供給手段(26)を含み、前記バッフル(30)が、前記排気弁を冷却したオイルの少なくとも一部を捕捉するように設けられている構成とすることができる。
【0017】
燃焼室に直接面するうえに燃焼後の排気が流通する排気ポートに配設される排気弁は、高温に晒され劣化しやすい。そこで、このような構成とすることにより、冷却油供給手段から排気弁に供給されるオイルによって排気弁の熱劣化を抑制することができる。また、排気弁の熱を吸収したオイルをも高温のままバッフルで捕捉することができる。
【0018】
また、上記の発明において、前記冷却油供給手段(26)が、前記排気弁(11)のステムエンド近傍に取り付けられたリテーナ(15)に向けてオイルを供給し、前記バッフル(30)が、前記リテーナから飛散するオイルの少なくとも一部を捕捉するように、前記排気弁が閉弁位置にあるときの前記リテーナよりも下方に配置されている構成とすることができる。
【0019】
この構成によれば、簡単な構成のバッフルで、オイルに排気弁の熱を吸収させ、排気弁の熱を吸収したオイルを捕捉することができる。
【0020】
また、上記の発明において、前記排気弁には、両端が当該排気弁の外面に開口する排気弁冷却通路(11d)が形成され、前記冷却油供給手段(26)が前記排気弁冷却通路にオイルを供給し、前記バッフル(30)が、前記排気弁冷却通路から排出されるオイルの少なくとも一部を捕捉するように、前記排気弁が閉弁位置にあるときの前記排気弁冷却通路の排出側開口(11j)よりも下方に配置されている構成とすることができる。
【0021】
この構成によれば、排気弁の内部を流通することで効率的に排気弁の熱を吸収したオイルが、一層高温かつ粘度が低い状態のまま回収される。
【0022】
また、上記の発明において、前記動弁機構(18)が、前記吸気弁(10)及び前記排気弁(11)の少なくとも一方を開閉させる動弁カム(19a)が形成されたカムシャフト(19)を有し、前記バッフル(30)は前記動弁カムの回転軌跡に沿って上面を凹ませた窪み部(31)を有しており、前記バッフルの前記排出口(32a)が前記オイル回収通路(34)の内部又は上方に配置され、前記バッフルの前記窪み部から延出して前記排出口に至る第1延出部(32)が、前記排出口に向けて下り勾配に傾斜しているか又は下り階段状となっている構成とすることができる。
【0023】
この構成によれば、バッフルに動弁カムの回転軌跡に沿った窪み部を形成することで、動弁室内のオイルを捕捉できるバッフルを動弁室の容量を変えずに設置することができる。また、第1延出部が排出口に向けてオイルを流下させやすい形状とされたことで、オイルをバッフル上に溜めることなくオイル回収通路に向けて排出できるようになり、オイル回収率が向上する。
【0024】
また、上記の発明において、前記内燃機関が前記シリンダの前記燃焼室側を一方に傾斜させた状態で設置され、前記オイル回収通路が前記シリンダヘッドの動弁室底面における前記一方側に開口し、前記バッフルの前記排出口が、当該バッフルの前記一方側の端部に設けられ、前記動弁機構が、前記吸気弁及び前記排気弁の少なくとも一方を開閉させる動弁カムが形成されたカムシャフトを有し、前記バッフルが、前記動弁カムの回転軌跡に沿って下方に凹んだ半円筒状の窪み部(31)と、前記窪み部から前記排出口(32a)に至る第1延出部(32)と、前記窪み部から他方側に延出する第2延出部(33)とを有するプレート部材からなり、前記第1延出部が、前記第2延出部に対して低い位置に配置されている構成とすることができる。
【0025】
この構成によれば、プレート部材からなるバッフルに、動弁室の小型化のために動弁カムの回転軌跡に沿った窪み部を形成した場合、窪み部内にオイルが溜まって動弁機構の駆動時の抵抗となるが、第1延出部が第2延出部に対して低い位置に配置されたことにより、バッフル上に溜まったオイルが動弁機構の駆動時の抵抗となることが抑制される。また、バッフル上にオイルが溜まりにくくなるため、オイル回収効率が向上する。
【0026】
また、上記の発明において、前記第1延出部(32)及び前記第2延出部(33)が前記排出口(32a)に向けて共に下り勾配に傾斜しており、前記第1延出部の勾配が前記第2延出部の勾配より小さい構成とすることができる。
【0027】
この構成によれば、第1延出部と窪み部との連結位置がより低くなるため、窪み部内にオイルが溜まることが抑制され、オイル回収効率が向上する。
【発明の効果】
【0028】
このように本発明によれば、潤滑に供されたオイルを粘度が低い高温状態のまま回収することができる内燃機関の動弁室の潤滑構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る内燃機関の要部断面図
図2】ヘッドカバーを外した状態の図1中のII方向矢視図
図3】ヘッドカバーを外した状態の図1中のIII方向矢視図
図4図1に示すシリンダヘッドを斜め上方から見た斜視図
図5図1に示すシリンダヘッドの断面斜視図
図6】第2実施形態に係る内燃機関の要部断面図
図7図6に示す排気弁の断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明に係る内燃機関Eの動弁室の潤滑油構造について、いくつかの実施形態を挙げて詳細に説明する。以下では、内燃機関Eが自動車に搭載された状態を基準として図1に示す上下の方向に従って説明する。
【0031】
≪第1実施形態≫
まず、図1図5を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、内燃機関Eは、直列多気筒の自動車用ガソリンエンジンであり、図示しないピストンが収容される複数のシリンダ1を備えたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に締結されたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に締結されたヘッドカバー4とを備えている。
【0032】
シリンダ1は、それぞれ略上下方向に延在し、互いに平行かつ一列となるようにシリンダブロック2に形成されている。以下、列設された複数のシリンダ1の配列方向をシリンダ列方向という。各シリンダ1は、上端がシリンダブロック2の上端面2aに開口し、下端がシリンダブロック2の下部に形成されたクランク室(図示しない)に開口している。シリンダブロック2のシリンダ1の側部には、各シリンダ1の側周部を一体に囲むようにブロック冷却液通路5が形成されている。ブロック冷却液通路5は、各シリンダ1の側周部に沿うように湾曲しており、ブロック冷却液通路5の上端はシリンダブロック2の上端面2aに開口している。ブロック冷却液通路5は、冷却水やオイル、冷媒などの冷却液を流通させるべく、シリンダブロック2の成型時に砂型などによって空洞として形成される。
【0033】
シリンダヘッド3の下面3aの各シリンダ1に対向する部分には、曲面状の窪みである燃焼室凹部3bが形成されている。各燃焼室凹部3bは、各シリンダ1のピストンよりも上方の部分と共に燃焼室6を画成する。つまり、シリンダヘッド3が燃焼室6の上縁を画成している。
【0034】
シリンダヘッド3の内部には、一端がシリンダ列方向に沿う一側面に開口し、他端が各燃焼室凹部3bの壁面に開口する吸気ポート7と、一端がシリンダヘッド3のシリンダ列方向に沿う他側面に開口し、他端が燃焼室凹部3bの壁面に開口する排気ポート8とが、各シリンダ1につき2本ずつ形成されている。燃焼室凹部3bを基準として吸気ポート7が設けられた側を吸気側、排気ポート8が設けられた側を排気側とする。内燃機関Eは、シリンダ1の上側(燃焼室6側)を吸気側に傾斜させた状態で自動車に搭載され、シリンダヘッド3の下面3aは吸気側において排気側よりも低くなっている。
【0035】
シリンダヘッド3の上面(上向き面)におけるヘッドカバー4よりも排気側には、シリンダ軸線1Xに対して斜めに延在して燃焼室6に連通する点火プラグ挿入孔29(図5参照)が形成され、この点火プラグ挿入孔29に図示しない点火プラグが挿入される。
【0036】
また、シリンダヘッド3の内部には、燃焼室6内や排気ポート8内の燃焼ガスからの熱伝搬による温度上昇を抑制するために、燃焼室凹部3b、吸気ポート7及び排気ポート8の周辺にヘッド冷却液通路9(9a、9b、9c、9d等)が形成されている。ヘッド冷却液通路9も、冷却水やオイル、冷媒などの冷却液を流通させるべく、シリンダヘッド3の成型時に砂型などによって空洞として形成される。
【0037】
ヘッド冷却液通路9は、主冷却液通路9a、上排気側冷却液通路9b、下排気側冷却液通路9c、図示しない排気側連結通路、吸気側冷却液通路9d、及び図示しない吸気側連結通路等を有している。主冷却液通路9aは、複数の燃焼室凹部3bの上方近傍を通過するようにシリンダヘッド3のシリンダ列方向(長手方向)に延在している。上排気側冷却液通路9b及び下排気側冷却液通路9cは、排気ポート8を上下から互いに挟み合うように配置され、それぞれシリンダヘッド3の長手方向に延在している。排気側連結通路は、主冷却液通路9aと上排気側冷却液通路9b及び下排気側冷却液通路9cとを連通する。吸気側冷却液通路9dは、吸気ポート7の下方に配置され、シリンダヘッド3の長手方向に延在している。吸気側連結通路は、主冷却液通路9aと吸気側冷却液通路9dとを連通する。主冷却液通路9a、上排気側冷却液通路9b、下排気側冷却液通路9c及び吸気側冷却液通路9dでは、冷却液がシリンダ列方向に流通する。
【0038】
シリンダヘッド3には、各吸気ポート7及び排気ポート8を開閉する吸気弁10及び排気弁11が各シリンダ1につき2本ずつ設けられている。吸気弁10及び排気弁11はそれぞれ、シリンダヘッド3に嵌合されたバルブガイド12、12によって摺動可能に支持され、各吸気ポート7及び排気ポート8を横切るように配置された棒状のステム10a、11aと、ステム10a、11aの下端に一体に形成され、各吸気ポート7及び排気ポート8と燃焼室凹部3bとの接続部分に設けられた円環状のバルブシート13、13に着座する弁体である傘部10b、11bとを有するポペットバルブである。傘部10b、11bの外周部分には、バルブシート13、13に当接する円錐台形のバルブフェース10c、11c(シール面)が形成されている。
【0039】
本実施形態では、吸気弁10は耐熱性のステンレス鋼によって中実に形成されている。排気弁11は、同じくステンレス鋼によって、傘部11bからステム11aに到る図示しない空洞部が内部に形成された中空構造とされている。この空洞部は、排気弁11が開弁位置にあるときにシリンダヘッド3の上面よりも上方(後述する動弁室17内)に延びている。空洞部の内部には熱伝導率の高い冷媒が封入され、冷媒が傘部11bで燃焼ガスから受け取った熱をステム11aで放出することで、排気弁11が効果的に冷却される。冷媒としては例えばナトリウムを用いることができる。
【0040】
バルブガイド12は、グラファイトを含む潤滑性に優れた焼結材により略円筒形状に形成されている。バルブガイド12は、シリンダヘッド3の吸気側及び排気側の上面からそれぞれ燃焼室6に向けてシリンダ軸線1Xに対して斜めに延在して吸気ポート7及び排気ポート8に連通するように形成された円形断面の貫通孔に圧入され、シリンダヘッド3の上面から更に上方(後述する動弁室17内)に突出する状態でシリンダヘッド3に固定される。
【0041】
各バルブガイド12のシリンダヘッド3の上面から突出する部分には、円盤形状のばね座14、14が、バルブガイド12の軸線に直交し、かつシリンダヘッド3の上面に当接するように嵌着される。一方、吸気弁10及び排気弁11の上端をなすステムエンド近傍には円盤形状のリテーナ15、15がそれぞれ固定されており、各リテーナ15とばね座14との間にはバルブスプリング16、16が縮設されている。これにより、吸気弁10及び排気弁11は、常時上向き(閉弁方向)に付勢されて傘部10b、11bがバルブシート13、13に着座し、吸気ポート7及び排気ポート8の燃焼室6側の端部を閉塞する。吸気弁10及び排気弁11に対して設けられたバルブガイド12、ばね座14、リテーナ15及びバルブスプリング16は、それぞれ共通部材とされている。各リテーナ15は、吸気弁10又は排気弁11が閉弁位置にあるときにシリンダヘッド3の上端面3dと概ね同じ高さに配置されている。
【0042】
シリンダヘッド3とヘッドカバー4との間には、両者によって動弁室17が画成されている。動弁室17には、吸気弁10及び排気弁11を開弁駆動する動弁機構18が収容される。動弁機構18は、シリンダヘッド3に回転可能に取り付けられるカムシャフト19、カムシャフト19の上方に配置されるロッカシャフト20、ロッカシャフト20により揺動可能に支持される吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22等を備えている。カムシャフト19には、それぞれ一対の吸気弁10及び排気弁11を駆動する4つの動弁カム19aがシリンダ1毎に形成されている。
【0043】
シリンダヘッド3の上面のうち、ヘッドカバー4が締結される上端面3dは、シリンダヘッド3の下面3aと平行に形成されている。シリンダヘッド3の上端面3dには、動弁室17の下部を画成する凹部が形成され、シリンダヘッド3の上面のうち、この凹部の底部分が動弁室17の底面となっている(以下、この部分を動弁室底面3cと称する)。この動弁室底面3cには、シリンダ列方向と直交する方向に延在し、シリンダ列方向から各シリンダ1を挟む位置に配置されてカムシャフト19を回転可能に支持する複数のカムホルダ23(図4参照)が突出形成されている。
【0044】
各カムホルダ23は、シリンダヘッド3と一体に形成され、軸受下部が形成されたロアカムホルダと、軸受上部が形成され、ロアカムホルダにボルトで締結されたアッパカムホルダとにより構成される。動弁機構18の摺動部となるカムシャフト19を軸支する軸受部23a(図5)には軸受面に開口する潤滑油供給通路24の第1分岐路24a(図5)から潤滑油が供給される。潤滑に供されて高温となったオイルは軸受隙間からカムホルダ23の外部に排出される。
【0045】
各カムホルダ23の上部には、ロッカシャフト20を支持するロッカホルダ25がアッパカムホルダと共通のボルトによってシリンダヘッド3に共締めされている。各カムホルダ23の上縁は、シリンダヘッド3の上端面3dと同一平面となっている。したがって、カムシャフト19は、動弁室17内でシリンダヘッド3の上端面3dよりも下側に配置され、ロッカシャフト20は動弁室17内でシリンダヘッド3の上端面3dよりも上側に配置される。
【0046】
吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22は、それぞれロッカシャフト20に対して揺動可能に取り付けられている。吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22は、それぞれ軸受部21a、22aと、軸受部21a、22aから対応する吸気弁10又は排気弁11方向に延び、吸気弁10又は排気弁11のステムエンドに当接するスクリュアジャスタ21b、22bが取り付けられた一端と、軸受部21a、22aに対して一端と相反する側に延び、動弁カム19aに転接するローラ21c、22cが取り付けられた他端とを有している。動弁機構18の摺動部となる吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22の軸受部21a、22aには、ロッカシャフト20内に形成された潤滑油供給通路24の第2分岐路24bから潤滑油が供給される。潤滑に供されて高温となったオイルは軸受隙間から吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22の外部に排出される。
【0047】
カムシャフト19が図示しない動力伝達機構を介してクランクシャフトの2分の1の回転速度をもって回転駆動されると、ローラ21c、22cを介して動弁カム19aに転接する吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22がそれぞれ所定のタイミングで揺動する。これにより、吸気弁10及び排気弁11がバルブスプリング16の付勢力に抗して下向き(開弁方向)に駆動されて傘部10b、11bがバルブシート13、13から離間し、吸気ポート7及び排気ポート8が開放されて燃焼室6と連通する。
【0048】
図2及び図3に併せて示すように、ロッカホルダ25の上部には、オイルを供給することで排気弁11を冷却するオイルジェット装置26(バルブクーリングジェット装置)が取り付けられている。オイルジェット装置26は、カムホルダ23上でシリンダ列方向に延在して内部にジェットオイルギャラリ27a(図1)を形成する分配管27と、各排気弁11に対応する位置で分配管27から排気側に延出し、内部に潤滑油供給通路24の第3分岐路24c(図3)を形成するとともに、オイルを噴出するノズル28aが先端に形成された分岐管28とを有している。各分岐管28は、排気弁11のステムエンドに対応する位置で下方に向けて湾曲し、ノズル28aを下方に向けている。
【0049】
より詳細には、各シリンダ1に対して排気弁11と同様に対に設けられた分岐管28は、シリンダ列方向について一対の排気弁11、11の中心からそれぞれ内側にオフセットした位置に設けられ、排気弁11が閉弁位置にある状態で排気側ロッカシャフトよりも上方においてノズル28aをリテーナ15に向けて配置している。したがって、図3に示すように、ノズル28aから噴射されるオイルは、リテーナ15に衝突してリテーナ15の熱を吸収すると共にリテーナ15で跳ね返って動弁室17内を飛散する。
【0050】
図1に示すように、動弁室17内において、シリンダヘッド3の動弁室底面3cは、吸気側及び排気側においてばね座14を面で支持すべく、シリンダヘッド3の下面3aに対してそれぞれ吸気側及び排気側に下り勾配に傾斜した斜面となっている。両斜面の間では、シリンダヘッド3の動弁室底面3cはカムシャフト19を受容すべく凹面となっている。また、排気側の斜面の更に排気側において、前述した点火プラグ挿入孔29(図5)を画成する壁の外面によって吸気側に傾斜する傾斜面3eが形成されている。一方、吸気側の斜面の更に吸気側では、吸気側に傾斜する斜面を延長させるようにシリンダヘッド3の動弁室底面3cが続いており、その端部でシリンダヘッド3の上端面3dからの深さが最も深くなっている。この最も深い部分は、内燃機関Eが吸気側に傾斜していることからも、動弁室17の底面のなかで最も低い部分となる。
【0051】
動弁室17の下部には、動弁室17内のオイルを捕捉するためのバッフル(隔壁)であるバッフルプレート30がカムシャフト19を下方から包み込むように設けられている。バッフルプレート30は、後述する固定部を除いてシリンダヘッド3の動弁室底面3cとの間に隙間を形成するように設置される。
【0052】
図4及び図5に併せて示すように、バッフルプレート30は、互いに隣接配置された一対のカムホルダ23間に当該一対のカムホルダ23に近接あるいは当接するように配置され、動弁カム19aの回転軌跡に沿って上面を下方に凹ませた半円筒状の(断面凹形状の)窪み部31と、窪み部31から吸気側に延出し、一対の吸気弁10、10の間を通過した後にシリンダ列方向に屈曲或いは湾曲し、吸気側の先端部にオイルを流下させる排出口32aが形成された第1延出部32と、窪み部31から排気側に延出し、一対の排気弁11、11の間を通ってシリンダヘッド3の傾斜面3eに至る第2延出部33とを有している。本実施形態では、バッフルプレート30はプレス成形によって一枚の鋼板から形成される。
【0053】
また、バッフルプレート30は、上縁が、シリンダヘッド3の上端面3dよりも低く(すなわち排気弁11のリテーナ15よりも低く)、かつカムホルダ23の軸受部23aの高さ方向の中央よりも若干低い位置で、シリンダヘッド3の上端面3dと略平行な平面上に延在するような形状及び配置とされている。これにより、カムホルダ23の軸受部23a並びに吸気ロッカアーム21及び排気ロッカアーム22(図1)の軸受部21a、22aで潤滑に供され、高温になってこれらの部分から排出されるオイルや、排気弁11のリテーナ15に供給され、高温になって飛散するオイルの大部分が、バッフルプレート30によって捕捉される。
【0054】
図4及び図5に示すように、第1延出部32及び第2延出部33は、U字状断面を呈する溝構造とされており、それぞれ窪み部31との連結部側において、その両側方に配置された一対のバルブスプリング16(図1)の輪郭に沿って湾曲状に幅広となる形状とされている。また、第1延出部32及び第2延出部33は、排気側から吸気側へ、すなわち排出口32aに向けて共に下り勾配に傾斜しており、捕捉されたオイルが排出口32aに向けて流下しやすくなっている。或いは、第1延出部32及び第2延出部33が排出口32aに向けて下り階段状となる形態としてもよく、このような形態とした場合にも、捕捉されたオイルが排出口32aに向けて流下しやすくなる。
【0055】
第1延出部32の延出端は開放されており、これにより延出端が排出口32aを構成している。第1延出部32と窪み部31との連結部の底壁には貫通孔30aが形成されており、図示しないビスがこの底壁の貫通孔30aに挿通されてシリンダヘッド3に螺着されることにより、当該連結部がシリンダヘッド3の動弁室底面3cに対して若干の接触面積をもって固定される。なお、ビスが取り付けられる部分は、第1延出部32の下流側部分に比べて幅広であるため、ビスが底壁から突出していてもオイルの排出口32aへの流下は阻害されない。
【0056】
一方、第2延出部33の延出端は端壁33aにより閉塞されており、この端壁33aにも貫通孔30aが形成されている。図示しないビスがこの端壁33aの貫通孔30aに挿通されてシリンダヘッド3に螺着されることにより、第2延出部33の延出端がシリンダヘッド3の動弁室底面3cよりも高い位置で傾斜面3eに固定される。
【0057】
図4に示すように、シリンダヘッド3の内部には、動弁室17内のオイルをオイルパンに回収するためのオイル回収通路34が、シリンダヘッド3の動弁室底面3cに開口するようにシリンダ1毎に形成されている。オイル回収通路34は、シリンダヘッド3の動弁室底面3cにおいて動弁室17内で最も低くなる吸気側端部に上端を開口させ、シリンダブロック2を通ってクランク室に連通する。
【0058】
第1延出部32の最低位に形成された排出口32aは、オイル回収通路34の上端開口の近傍に配置されている。これにより、バッフルプレート30により捕捉されたオイルはオイル回収通路34の上端開口の近傍に流下し、オイル回収通路34に回収される。本実施形態では、排出口32aがオイル回収通路34の上端開口の鉛直上方向の近傍に配置されている。或いは、排出口32aが上端開口からオイル回収通路34の内部に突入する形態としてもよい。このような形態とした場合には、捕捉されたオイルが排出口32aからオイル回収通路34に一層回収されやすくなる。
【0059】
前述したように第1延出部32及び第2延出部33は共に排出口32aに向けて下り勾配に傾斜しているが、第2延出部33の勾配は第1延出部32の勾配よりも大きくなっている。また、図5に示すように、第1延出部32と窪み部31との連結部は、第2延出部33と窪み部31との連結部よりも低い位置に配置されている。つまり、第1延出部32が第2延出部33に対して低い位置に配置されている。
【0060】
以上のように構成された動弁室17の潤滑油回収構造では、図4に示すように、動弁室17内のオイルを捕捉するバッフルプレート30がシリンダヘッド3の動弁室底面3cとの間に隙間を形成するように動弁室17内に設けられ、バッフルプレート30が、捕捉したオイルをオイル回収通路34の上端開口の近傍に流下させる排出口32aを有している。そのため、動弁機構18の摺動部に供給されて潤滑に供された後のオイルがバッフルプレート30によってシリンダヘッド3の動弁室底面3cに接触することなく捕捉され、捕捉された比較的高温のオイルがバッフルプレート30の排出口32aからオイル回収通路34に排出される。これにより、オイルがシリンダヘッド3の動弁室底面3cに接触することが抑制され、冷間時にも高温かつ粘度が低い状態のままオイルが回収されるため、オイルの速やかなオイルパンへの回収が可能になる。また、粘度の低い状態で再度オイルポンプから潤滑部位へオイルを供給することが可能になるため、摺動部の抵抗及びオイルポンプの仕事量が軽減され、内燃機関Eの熱効率が向上する。
【0061】
また、動弁室17の潤滑油回収構造では、図1に示すように、動弁機構18が吸気弁10及び排気弁11の少なくとも一方を開閉させる動弁カム19aを備えたカムシャフト19を有し、カムシャフト19を回転可能に支持する複数のカムホルダ23がシリンダヘッド3に設けられている。そして本実施形態では、図4に示すように、オイルが供給及び排出されるカムホルダ23間に当該カムホルダ23に近接あるいは当接するようにバッフルプレート30が配置されている。そのため、バッフルプレート30がカムホルダ23間でシリンダヘッド3の動弁室底面3cを覆い、動弁室17内のオイルが確実にバッフルプレート30によって捕捉される。これにより、動弁室17内に貯留させるオイルの量が低減するため、回収効率が向上する。
【0062】
更に本実施形態では、図5に示すように、燃焼室6に至る点火プラグ挿入孔29がシリンダ軸線1Xに対して斜めに延在してシリンダヘッド3に形成され、シリンダヘッド3の動弁室底面3cよりも高い位置で点火プラグ挿入孔29を画成する壁の傾斜面3eにバッフルプレート30が取り付けられている。そのため、特別な取付部を新たに設けることなく、バッフルプレート30をシリンダヘッド3の動弁室底面3cに接触させないように設けることが可能になっている。また、バッフルプレート30が傾斜面3eに取り付けられるため、鉛直面に取り付ける場合に比べて取付作業が行いやすい。
【0063】
図1に示すように、吸気弁10及び排気弁11は燃焼室6に面するように設けられ、特に排気弁11は燃焼後の排気が流通する排気ポート8に配設される。そのため、排気弁11は高温に晒されて劣化しやすい。そこで、本実施形態では、動弁室17の潤滑油回収構造が、オイルを供給することで排気弁11を冷却する冷却油供給手段としてのオイルジェット装置26を更に備えており、バッフルプレート30は、排気弁11を冷却したオイルの少なくとも一部を捕捉するように設けられている。そのため、オイルジェット装置26によって排気弁11に供給されるオイルによって排気弁11の熱劣化が抑制される。また、排気弁11の熱を吸収したオイルをも高温のままバッフルプレート30で捕捉することが可能である。
【0064】
そして本実施形態では、図2及び図3に示すように、オイルジェット装置26は、排気弁11のステムエンド近傍に取り付けられたリテーナ15に向けてオイルを供給しており、図1に示すように、バッフルプレート30は、リテーナ15から飛散するオイルの少なくとも一部を捕捉するように、排気弁11が閉弁位置にあるときのリテーナ15よりも下方に配置されている。これにより、排気弁11の熱を吸収したオイルを簡単な構成のバッフルプレート30で捕捉することが可能になっている。
【0065】
また本実施形態では、図1図4及び図5に示すように、バッフルプレート30が動弁カム19aの回転軌跡に沿って上面を凹ませた窪み部31を有し、窪み部31から延出してオイル回収通路34の内部又は上方に配置された排出口32aに至る第1延出部32が、排出口32aに向けて下り勾配に傾斜しているか又は下り階段状となっている。そのため、動弁室17内のオイルを捕捉できるバッフルプレート30を動弁室17の容量を変えずに設置可能になっている。また、第1延出部32が排出口32aに向けてオイルを流下させやすい形状とされたことで、オイルがバッフルプレート30上に溜まることなくオイル回収通路34に向けて排出されるようになり、オイル回収率が向上する。
【0066】
一方、プレート部材からなるバッフルプレート30に、動弁室17の小型化のために動弁カム19aの回転軌跡に沿った窪み部31を形成した場合、窪み部31内にオイルが溜まって動弁機構18の駆動時の抵抗となり得る。そこで本実施形態では、図1に示すように、内燃機関Eがシリンダ1の燃焼室6側を吸気側に傾斜させた状態で自動車に搭載され、図4に示すように、オイル回収通路34がシリンダヘッド3の動弁室底面3cにおける吸気側に開口し、バッフルプレート30の排出口32aがバッフルプレート30の吸気側の端部に設けられている。更に、プレート部材からなるバッフルプレート30が、動弁カム19aの回転軌跡に沿って下方に凹んだ半円筒状の窪み部31と、窪み部31から排出口32aに至る第1延出部32と、窪み部31から排気側に延出する第2延出部33とを有しており、図1及び図5に示すように、第1延出部32が、第2延出部33に対して低い位置に配置されている。これにより、バッフルプレート30上に溜まったオイルが動弁機構18の駆動時の抵抗となることが抑制される。また、バッフルプレート30上にオイルが溜まりにくいため、オイル回収効率が向上する。
【0067】
加えて、第1延出部32及び第2延出部33が排出口32aに向けて共に下り勾配に傾斜しており、第1延出部32の勾配が第2延出部33の勾配より小さくなっているため、第1延出部32と窪み部31との連結位置をより低くすることが可能になっている。これにより、窪み部31内にオイルが溜まることが抑制され、オイル回収効率が向上する。
【0068】
≪第2実施形態≫
次に、図6及び図7を参照しながら本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の部材や部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
図6に示すように、本実施形態では、オイルジェット装置26の分岐管28が第1実施形態と異なっている。具体的には、各分岐管28は、シリンダ列方向について排気弁11に対してオフセットしない同一位置で分配管27から排気側に延出し、排気弁11のステムエンドよりも排気側で湾曲して下方に延びた後、シリンダ軸線1X方向において排気弁11のステムエンドと概ね同一位置で再度湾曲して吸気側に延び、ノズル28aを吸気側に向けている。
【0070】
排気弁11は、図7に示すように、その内部に排気弁冷却通路11dを画成している。排気弁冷却通路11dは、傘部11bに形成された冷却室11eと、冷却室11eに連通するようにステム11aに形成された冷却供給通路11f及び冷却排出通路11gとから構成されている。冷却供給通路11fは、ステムエンドの近傍かつリテーナ15取付用の環状溝11hよりも上方でステム11aの外周面の一方側に供給側開口11iを形成している。冷却排出通路11gは、ステムエンドの近傍かつ環状溝11hの上方でステム11aの外周面の他方側に排出側開口11jを形成している。前述した分岐管28のノズル28aは、排気弁11が閉弁位置にあるときの一方の冷却供給通路11fの供給側開口11iに向けてオイルを噴射する。
【0071】
冷却供給通路11fに供給されたオイルは冷却室11eに送られ、燃焼ガスの熱を吸収して高温になった後、冷却排出通路11gを通って排出側開口11jから排気弁11の外部に排出される。図6に示すように、バッフルプレート30は、排気弁11が閉弁位置にあるときの排出側開口11jよりも下方に上縁が位置するように配置されている。したがって、排気弁11から排出されるオイルは、ステムエンドの近傍かつリテーナ15の上方から吸気側に噴出され、その大部分がバッフルプレート30の窪み部31により捕捉される。
【0072】
第1実施形態では、排気弁11が、傘部11bで燃焼ガスから受け取った熱をステム11a及びリテーナ15で放出しており、バルブガイド12及びシリンダヘッド3を介してヘッド冷却液通路9に放熱していたが、本実施形態では、排気弁11が、主に排気弁冷却通路11dを流通するオイルに放熱する。そのため、排気弁11の熱を効率的に吸収したオイルを、一層高温かつ粘度が低い状態のまま回収することが可能である。
【0073】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明に係る動弁室17の潤滑油構造は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として自動車用の内燃機関Eに動弁室17の潤滑油構造を適用しているが、鉄道車両や船舶、航空機等にも広く適用することができる。また、上記実施形態では、内燃機関Eが直列多気筒のガソリンエンジンとされているが、単気筒エンジンやディーゼルエンジンなどであってもよい。また、上記実施形態では、動弁機構18が動弁室17に1本のカムシャフト19を有するSOHC型とされているが、2本のカムシャフト19を有するDOHC型とされてもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、素材等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 シリンダ
1X シリンダ軸線
2 シリンダブロック
2a 上端面
3 シリンダヘッド
3a 下面
3c 動弁室底面
3e 傾斜面
4 ヘッドカバー
6 燃焼室
7 吸気ポート
8 排気ポート
10 吸気弁
11 排気弁
11d 排気弁冷却通路
11j 排出側開口
15 リテーナ
17 動弁室
18 動弁機構
19 カムシャフト
19a 動弁カム
21a 軸受部(摺動部)
22a 軸受部(摺動部)
23 カムホルダ
23a 軸受部(摺動部)
24 潤滑油供給通路
24a 第1分岐路
24b 第2分岐路
24c 第3分岐路
26 オイルジェット装置(冷却油供給手段)
29 点火プラグ挿入孔
30 バッフルプレート(バッフル)
31 窪み部
32 第1延出部
32a 排出口
33 第2延出部
34 オイル回収通路
E 内燃機関
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7