(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227669(P2015-227669A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】円筒ころ軸受の挿抜治具、分解方法、および組立方法
(51)【国際特許分類】
F16C 43/04 20060101AFI20151120BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
F16C43/04
F16C19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-112379(P2014-112379)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 浩二
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117AA04
3J117AA10
3J117HA04
3J701AA13
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701BA80
3J701FA46
(57)【要約】
【課題】大きく重い円筒ころ軸受であっても、ころ付き保持器を容易に挿抜することが可能な挿抜治具、分解方法、および組立方法を提供する。
【解決手段】円筒ころ軸受の挿抜治具100であって、円筒ころ軸受200をその軸が略水平になる姿勢に設置する台座110と、部分円筒形状の薄板からなり円筒ころ軸受200の円筒ころ206と外輪202の間に挿入される挿入板130と、挿入板130を円筒ころ軸受200の軸を中心に回転させる回転機構とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒ころ軸受の挿抜治具であって、
円筒ころ軸受をその軸が略水平になる姿勢に設置する台座と、
部分円筒形状の薄板からなり前記円筒ころ軸受の円筒ころと外輪の間に挿入される挿入板と、
前記挿入板を前記円筒ころ軸受の軸を中心に回転させる回転機構とを有することを特徴とする円筒ころ軸受の挿抜治具。
【請求項2】
前記挿入板の先端の両端に、部分円筒形状の角を切り欠いた形状の傾斜を有することを特徴とする請求項1に記載の円筒ころ軸受の挿抜治具。
【請求項3】
円筒ころ軸受の分解方法であって、
円筒ころ軸受をその軸が略水平になる姿勢とし、保持器に複数の円筒ころを組み付けたころ付き保持器において上側の円筒ころを下方に落下させた状態で、
部分円筒形状の薄板からなる挿入板を上側の円筒ころと外輪の間に挿入し、
前記挿入板および円筒ころ軸受を、該挿入板が下側になるまで回転させ、
前記ころ付き保持器を前記挿入板に乗せた状態で、該挿入板を前記外輪から抜き取ることを特徴とする円筒ころ軸受の分解方法。
【請求項4】
円筒ころ軸受の組立方法であって、
部分円筒形状の薄板からなる挿入板に、保持器に複数の円筒ころを組み付けたころ付き保持器を乗せて、
円筒ころ軸受の外輪およびころ付き保持器をその軸が略水平となる姿勢として、前記挿入板にのせた前記ころ付き保持器を前記外輪に挿入し、
前記挿入板および円筒ころ軸受を、該挿入板が上側になるまで回転させ、
前記ころ付き保持器を前記外輪の中に残して前記挿入板を前記外輪から抜き取ることを特徴とする円筒ころ軸受の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒ころ軸受のころ付き保持器を挿抜するための挿抜治具、分解方法、および組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒ころ軸受にあっては、複数の円筒ころを保持して、円筒ころの姿勢および間隔を維持するための保持器が用いられている。この種のころ軸受は、円筒ころの安定した回転を維持するとともに、組立が容易であるほか、保守・点検時に軸受を分解することも容易となるため、鉄道車両の主電動機や車輪用の軸受として古くから使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、保持器に複数のポケットを設け、各ポケットに転動体(円筒ころ)を保持することにより、転動体を転動自在に、かつ保持器の径方向に移動可能に保持した転がり軸受が記載されている。なお特許文献1に記載の保持器では、隣り合う第1のポケットと第2のポケットで、転動体を保持する径方向の位置を異ならせている。これにより、転動体を保持器に押しこむ際に、転動体の脱落を防止するための抑え片が、隣りのポケットに収容された転動体によって逆方向に押圧されることがない。したがって比較的軽い力で抑え片を弾性変形させて転動体を押し込むことができるとともに、抑え片と転動体との当接圧も小さくなって転動体の表面を傷つけにくくなると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3261813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円筒ころ軸受の外輪には、円筒ころの軸方向の移動を規制するつば(フランジ)が設けられている場合がある。また、外輪の開口端に円筒ころを抑えるラビリンスシールが取り付けられている場合もある。このような外輪を用いた円筒ころ軸受の分解・組立をする場合には、円筒ころを保持器の径方向内側に寄せた状態で、ころ付き保持器を外輪に対して挿抜する必要がある。特に分解する際に、外輪の内部にあるつば付き保持器においてすべての円筒ころを内側に寄せることは難しい。従来は確立された分解方法がなく、外輪と保持器の間にヘラをさしこんで円筒ころを内側に寄せたり、軸受を寝かせて(軸方向を上下にして)振れ回したりすることによって円筒ころを内側に寄せている。
【0006】
しかしながら、外輪と保持器の間にヘラを差し込む場合は、これらの隙間がわずかであるため、慎重な作業が必要となり作業効率が悪い。また軸受を振れ回して円筒ころを内側に寄せる場合は、小さな軽い軸受であれば容易であるが、大きな重い軸受では作業が困難である。
【0007】
そこで本発明は、大きく重い円筒ころ軸受であっても、ころ付き保持器を容易に挿抜することが可能な挿抜治具、分解方法、および組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、円筒ころ軸受の挿抜治具であって、円筒ころ軸受をその軸が略水平になる姿勢に設置する台座と、部分円筒形状の薄板からなり円筒ころ軸受の円筒ころと外輪の間に挿入される挿入板と、挿入板を円筒ころ軸受の軸を中心に回転させる回転機構とを有することを特徴とする。
【0009】
なお、本発明にかかる挿抜治具が対象としている円筒ころ軸受は、外周面に軌道を有する内輪と、内周面に軌道を有する外輪と、各軌道の間を転動自在に介在する複数の円筒ころと、各円筒ころを円周方向に離間して転動自在に保持する保持器とを備え、保持器は、径方向の両側が開口する複数のポケット内に円筒ころを1個ずつ保持するものであり、かつ、円筒ころはポケット内で径方向に移動可能になっているものである。
【0010】
上記構成によれば、ころ付き保持器の上側の円筒ころは自重で下方に移動し、外輪と保持器の間に隙間ができる。したがって、円筒ころを傷つけることなく挿入板を上側の円筒ころと外輪との間に挿入することができる。そして挿入板および円筒ころ軸受を回転させることによって挿入板にころ付き保持器を乗せることができ、容易にころ付き保持器を外輪から抜き取ることができる。また円筒ころ軸受を組み立てる際にも、ころ付き保持器を挿入板に乗せればすべての円筒ころが径方向内側に移動していることから、容易に外輪に挿入することができる。
【0011】
また、挿入板の先端の両端に、部分円筒形状の角を切り欠いた形状の傾斜を有することが好ましい。
【0012】
これにより、特に斜め上方の円筒ころが径方向内側に移動していなかったとしても、傾斜によって内側に移動させることができるため、円滑に挿入板を差し込むことが可能となる。
【0013】
本発明の他の代表的な構成は、円筒ころ軸受の分解方法であって、円筒ころ軸受をその軸が略水平になる姿勢とし、保持器に複数の円筒ころを組み付けたころ付き保持器において上側の円筒ころを下方に落下させた状態で、部分円筒形状の薄板からなる挿入板を上側の円筒ころと外輪の間に挿入し、挿入板および円筒ころ軸受を、該挿入板が下側になるまで回転させ、ころ付き保持器を挿入板に乗せた状態で、挿入板を外輪から抜き取ることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、ころ付き保持器の上側の円筒ころは自重で下方に移動し、外輪と保持器の間にも隙間ができるため、挿入板を円筒ころと外輪との間に容易に挿入することができる。そして挿入板および円筒ころ軸受を、該挿入板が下側になるまで回転させることにより、ころ付き保持器の上側になった円筒ころも落下するため、すべての円筒ころを径方向内側に移動させることができる。このようにして挿入板によってころ付き保持器をすくい上げることができる。この状態で挿入板を外輪から抜き取ることにより、容易にころ付き保持器を外輪から抜き取ることができる。
【0015】
本発明の他の代表的な構成は、円筒ころ軸受の組立方法であって、部分円筒形状の薄板からなる挿入板に、保持器に複数の円筒ころを組み付けたころ付き保持器を乗せて、円筒ころ軸受の外輪およびころ付き保持器をその軸が略水平となる姿勢として、挿入板にのせたころ付き保持器を外輪に挿入し、挿入板および円筒ころ軸受を、該挿入板が上側になるまで回転させ、ころ付き保持器を外輪の中に残して挿入板を外輪から抜き取ることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、ころ付き保持器を挿入板に乗せたとき、上側の円筒ころは自重によって径方向内側に移動し、下側の円筒ころは挿入板に押されて径方向内側に移動する。したがって、すべての円筒ころが径方向内側に移動していることから、容易にころ付き保持器を外輪に挿入することができる。そして挿入板を回転させてころ付き保持器を外輪の中に落としこむことにより、容易に組立を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる円筒ころ軸受の挿抜治具、分解方法、および組立方法によれば、大きく重い円筒ころ軸受であっても、ころ付き保持器を容易に挿抜することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】円筒ころ軸受の挿抜治具の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】円筒ころ軸受の概略構成を説明する部分断面分解図である。
【
図4】円筒ころ軸受の分解方法について説明する図である。
【
図5】円筒ころ軸受の分解方法について説明する図である。
【
図6】円筒ころ軸受の分解方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0020】
図1は円筒ころ軸受の挿抜治具100の全体構成を示す斜視図、
図2は挿抜治具100の分解斜視図である。
【0021】
図1(a)および
図2に示すように、本実施形態にかかる挿抜治具100は、大別すると、台座110と、反転軸120と、挿入板130を備えている。
【0022】
台座110は、底板となるベース112に、ハウジング114を立設している。ハウジング114には、反転軸120を回転可能に嵌合させるための回転穴114aが設けられている。またベース112の上面に沿って、ハウジング114の前方側に、2本のローラ116が配置されている。ローラ116は後述する円筒ころ軸受200(
図3参照)を乗せるためにある。ローラ116の上では、円筒ころ軸受200を回転させる操作と、円筒ころ軸受200をローラ116の軸方向(挿入板130に対して離接する方向)にすべらせる操作が行われる。
【0023】
図2に示すように、反転軸120は、ハウジング114の回転穴114aに回転可能に嵌合するスリーブ122と、スリーブ122の後方端に設けられたフランジ124、および反転軸120を回転させるための取っ手126から構成されている。フランジ124の外径は回転穴114aの内径よりも大きく形成されていて、反転軸120はハウジング114の前方側に脱落しない。またフランジ124の後方側に配置される抑え蓋118がハウジング114に締結固定されていて、反転軸120はハウジングの後方側にも脱落しない。
【0024】
ハウジング114の後方側には切り欠き114bが設けられていて、ハウジング114に反転軸120と抑え蓋118と取り付けたとき、取っ手126が切り欠き114bの中で移動可能となっている。切り欠き114bは、回転穴114aの中心に対して180°切り欠かれている。したがって
図1(a)(b)に示すように、取っ手126を180°回転させることができ、これに伴って反転軸120が180°回転する。すなわち、ハウジング114と120によって、挿入板130を台座110に対して円筒ころ軸受200の軸を中心に回転させる回転機構が構成されている。
【0025】
反転軸120のスリーブ122の先端(前方側)には、挿入板130が取り付けられている。挿入板130は部分円筒形状の薄板からなり、後述する円筒ころ206と外輪202の間に挿入される。部分円筒形状とは、円筒を軸方向に(縦に)分割した形状である。本実施形態において挿入板130は、スリーブ122の中心に対して180°の部分円筒形状となっている。また挿入板130はスリーブ122の外周面に沿う形状(半径)となっていて、スリーブ122よりも前方に突出している。挿入板130の先端130aの両端には、部分円筒形状の角を切り欠いた形状の傾斜130bを有している。換言すれば、傾斜130bは、先端130aの端部に行くに従って後退する切り欠きである。
【0026】
図3は円筒ころ軸受200の概略構成を説明する部分断面分解図である。
図3(a)に示すように、円筒ころ軸受200は複列のころであって、ころ付き保持器230を2組有している。ころ付き保持器230とは、保持器210にあらかじめ複数の円筒ころ206を組み付けたアセンブリである。円筒ころ軸受200は、内周面に軌道202a、202bを有する外輪202と、外周面に軌道204aを有する内輪204を備える。円筒ころ206は、軌道輪である外輪202、内輪204の各軌道202a、202b、204a間に転動自在に介在する。
【0027】
外輪202の内周面の中央には、2列の円筒ころ206の軸方向の移動を規制するために、内径側に突出する外輪中つば202cが設けられている。内輪204の軸方向の一端には外径側に突出するつば204bが設けられている。内輪204の他端には、内輪204をころ付き保持器230の中に挿入するために、つばを設けることができない。そこで他端側には、外輪202にころ止めのラビリンスシール232が取り付けられる(
図4参照)。
【0028】
保持器210は、各円筒ころ206を円周方向に離間して転動自在に保持する。保持器210は、円筒ころ206を保持するポケット220が円周方向に所定の間隔で複数形成された環状の保持器本体212と、この保持器本体212の軸方向片側にあてられた円環蓋228から構成されている。保持器本体212は、ポケット220を形成する柱部214と、柱部214を接続する円環部216から構成されている。ポケット220は、円筒ころ206を1個ずつ回転自在に保持する。保持器本体212に円環蓋228があてられていない状態では、ポケット220は軸方向に開口する。円環蓋228は、リベット228aによって保持器本体212の柱部214に固定される。
【0029】
また
図3(b)に示すように、ポケット220は径方向の両側が開口している。ポケット220の外周側の開口幅w1および内周側の開口幅w2は、円筒ころ206の直径Dよりも狭く形成されている。これにより円筒ころ206は保持器210から脱落することなく、ポケット220内で転動自在に、かつ径方向に移動可能に保持されている。
【0030】
次に、挿抜治具100を用いて円筒ころ軸受200からころ付き保持器230を分離する分解方法について説明する。
図4、
図5、および
図6は円筒ころ軸受の分解方法について説明する図である。
【0031】
まず、
図4(a)に示すように、円筒ころ軸受200を台座110のローラ116の上に、その軸が略水平になる姿勢(縦置き)に設置する。このとき円筒ころ軸受200は、片側(挿入板130側)を開放していて、複列のころ付き保持器230のうち1つを抜き取っている。円筒ころ軸受200の開放した端部と、挿入板130は対向している。円筒ころ軸受200の他方側(
図4(a)の紙面手前側)にはころ止めのラビリンスシール232が取り付けられていて、内部に1組のころ付き保持器230が収容されている。挿抜治具100においては、取っ手126を操作して反転軸120を回転させ、挿入板130を上側に位置させている。
【0032】
図4(b)および
図5は挿抜治具100および円筒ころ軸受200の断面図である。
図4(b)に示すように、円筒ころ軸受200に収容されたころ付き保持器230は、外側はラビリンスシール232によって、内側は外輪中つば202cによって移動を規制されている。したがって従来は、ラビリンスシール232を分解して取り外さなくては、中にあるころ付き保持器230を取り出すことができなかった。
【0033】
そこで本実施形態では、円筒ころ軸受200をローラ116上でスライドさせて、挿入板130を外輪202の中に挿入する。このとき、円筒ころ軸受200を台座110に縦置きに設置しているため、ころ付き保持器230の上側の円筒ころ206は自重によって下方(径方向内側)に落下し、円筒ころ206と外輪中つば202cとの間に隙間ができる。したがって
図5(a)に示すように、円筒ころ206を傷つけることなく、挿入板130を円筒ころ206と外輪中つば202cの間に容易に挿入することができる。
【0034】
なおころ付き保持器230において、真上にある円筒ころ206は自重によって下方に落下するが、斜め上にある円筒ころ206は必ずしも落下しない場合がある。しかし挿入板130の先端130aに形成された傾斜130bにより、挿入板130を挿入する動作に伴って、斜め上にある円筒ころ206も径方向内側に寄せられる。このように、円筒ころ206が径方向内側に移動していなかったとしても、円滑に挿入板130を差し込むことができる。なお、挿入板130の先端130aのうちどの程度を傾斜130bにするかについては適宜である。目安として、ころ付き保持器230において上から45°程度あたりから円筒ころ206が落下しにくくなるため、挿入板130(本実施形態では180°)の中心から左右45°(合計90°)より外側を傾斜130bにするとよい。
【0035】
そして
図5(b)に示すように、取っ手126を操作して反転軸120を回転させ、挿入板130を下側に移動させる。このとき、円筒ころ軸受200も反転軸120と共に回転させる。すなわちころ付き保持器230と挿入板130は相対的には回転しない。これにより、挿入板130の上にころ付き保持器230を乗せた状態となる。すると、回転によってころ付き保持器230の上側になった円筒ころ206は重力によって下方に落下するため、結果的にすべての円筒ころを径方向内側に移動させることができる。
【0036】
この状態で、
図6に示すように、外輪202をローラ116上でスライドさせて引くことにより、挿入板130を外輪202から抜き取る。するところ付き保持器230は挿入板130の上に残るため、容易にころ付き保持器230と外輪202とを分離させることができる。
【0037】
円筒ころ軸受200の組立方法は、上記の分解方法を逆の手順で実行することにより実施することができる。
【0038】
すなわち、まず
図6に示されているように、挿入板130にころ付き保持器230を乗せる。次に、外輪202をその軸が略水平となる姿勢として、台座110のローラ116の上に乗せる。そして外輪202をスライドさせて、
図5(b)のように挿入板130にのせたころ付き保持器230を外輪202に挿入する。それから
図5(a)のように、取っ手126を操作して挿入板130を円筒ころ軸受200の軸を中心に上側まで回転させる。このとき、円筒ころ軸受200も反転軸120と共に回転させる。するところ付き保持器230の下方の円筒ころ206が外輪202の中に落下するので、円筒ころ206の端面が外輪中つば202cに引っかかるようになる。そして
図4(b)のように外輪202を引くことにより、
図4(a)のように外輪202の中にころ付き保持器230を残して、挿入板130のみが抜き取られる。
【0039】
このように、ころ付き保持器230を挿入板130に乗せたとき、上側の円筒ころ206は自重によって径方向内側に移動し、下側の円筒ころ206は挿入板130に押されて径方向内側に移動する。すべての円筒ころ206が径方向内側に移動していることから、ころ付き保持器230を外輪202に容易に挿入することができ、簡単に円筒ころ軸受200の組立を行うことができる。
【0040】
なお、上記実施形態においては複列の軸受を例に挙げて説明したが、単列の軸受であっても同様に本発明を適用可能である。また、円筒ころ軸受200をスライドさせるように説明したが、挿入板130の方を移動させて円筒ころ軸受200に挿入してもよい。また、挿入板130の回転機構を、手動ではなくモーター駆動としてもよい。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、円筒ころ軸受のころ付き保持器を挿抜するための挿抜治具、分解方法、および組立方法に関する。
【符号の説明】
【0043】
100…挿抜治具、110…台座、112…ベース、114…ハウジング、114a…回転穴、114b…切り欠き、116…ローラ、118…抑え蓋、120…反転軸、122…スリーブ、124…フランジ、126…取っ手、130…挿入板、130a…先端、130b…傾斜、200…円筒ころ軸受、202…外輪、202a…軌道、202b…軌道、202c…外輪中つば、204…内輪、204a…軌道、204b…つば、206…円筒ころ、210…保持器、212…保持器本体、214…柱部、216…円環部、220…ポケット、228…円環蓋、228a…リベット、230…ころ付き保持器、232…ラビリンスシール