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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227688(P2015-227688A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 29/04 20060101AFI20151120BHJP
【FI】
   F16H29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-113312(P2014-113312)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰彦
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA01
3J062AA18
3J062AB01
3J062AB29
3J062AB31
3J062AB33
3J062AC03
3J062AC07
3J062BA26
3J062CB06
3J062CB14
3J062CB22
3J062CB32
3J062CB44
3J062CC13
3J062CG64
3J062CG82
(57)【要約】
【課題】トルク伝達時に生じるコネクティングロッドの倒れを矯正し、NVHの向上を図ること。
【解決手段】車両用動力伝達装置は、駆動源に接続された入力軸(2)の回転を出力軸(3)に伝達する伝達ユニット(20)を備える。伝達ユニット(20)を構成する揺動リンク(18)の揺動端部(18a)は、コネクティングロッド(15)の小径環状部(15b)を軸方向で挟むように所定の間隔を有して突出した一対の突辺(18b)が設けられている。一対の突辺(18b)は、向かい合う側面の一部が周方向内周側になるにつれて間隔を狭めるように形成された傾斜面(51)を備え、傾斜面(51)は小径環状部(15b)の一部と接触可能な位置に形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に接続された入力軸(2)の回転を出力軸(3)に伝達する伝達ユニット(20)を備えた車両用動力伝達装置であって、
前記伝達ユニット(20)は、
前記出力軸(3)に対して揺動可能に支持された揺動リンク(18)と、
前記出力軸(3)および前記揺動リンク(18)の間に配置され、前記揺動リンク(18)が一方向側に揺動したときに、前記出力軸(3)に対して前記揺動リンク(18)を固定し、前記揺動リンク(18)が他方向側に揺動したときに前記出力軸(3)に対して前記揺動リンク(18)を空転させるワンウェイクラッチ(17)と、
前記入力軸(2)と一体に偏心回転する偏心ディスク(6)と、
前記偏心ディスク(6)と前記揺動リンク(18)とを接続し、前記偏心回転により前記揺動リンク(18)を揺動するコネクティングロッド(15)と、を備え、
前記コネクティングロッド(15)は、
前記偏心ディスク(6)の外周面に設けられた軸受(16)に圧入される大径環状部(15a)と、
前記揺動リンク(18)の揺動端部(18a)に対して所定のクリアランスを有する状態でピン(19)を介して接続される小径環状部(15b)と、
前記大径環状部(15a)および前記小径環状部(15b)を連結する連結部と、を備え、
前記揺動リンク(18)の揺動端部(18a)は、
前記小径環状部(15b)を軸方向で挟むように所定の間隔を有して突出した一対の突辺(18b)が設けられ、
前記一対の突辺(18b)は、向かい合う側面の一部が周方向内周側になるにつれて前記間隔を狭めるように形成された傾斜面(51)を備え、
前記傾斜面(51)は前記小径環状部(15b)の一部と接触可能な位置に形成されていることを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記小径環状部(15b)の一部は前記傾斜面(51)と接触可能な位置に前記傾斜面(51)と同様の傾斜角を備えた傾斜部(52)を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記傾斜面(51)は前記揺動リンク(18)の中心と前記小径環状部(15b)の中心とを結ぶ直線に対して、前記揺動リンク(18)が揺動する方向のうち前記一方向側の領域に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
前記傾斜面(51)は、前記一対の突辺(18b)の向かい合う側面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項5】
前記伝達ユニット(20)は、前記入力軸(2)および前記出力軸(3)の軸方向に並置するように複数設けられ、
前記入力軸(2)および前記出力軸(3)はそれぞれ軸方向に複数の軸受で支持され(40A、40B、50A、50B、)、
前記複数設けられた伝達ユニット(20)のそれぞれにおいて、前記傾斜面(51)は、前記一対の突辺(18b)の向かい合う側面のうち、いずれか一方の側面にのみ設けられ、
前記一方の側面は、前記傾斜面(51)が設けられる伝達ユニット(20)から最も近い位置に配置されている前記出力軸(3)の軸受に対して向かい合う突辺(18b)に対し、軸方向において前記所定の間隔を有する位置に配置されている突辺(18b)の側面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四節リンク機構型の車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、四節リンク機構型の車両用動力伝達装置が記載されている。車両用動力伝達装置は、例えば、図11(a)に示すようにエンジンに接続された入力軸120の回転をコネクティングロッド115の往復運動に変換し、コネクティングロッドの往復運動をワンウェイクラッチ117によって出力軸113の回転運動に変換する。揺動リンク118はワンウェイクラッチ117を介して出力軸113に連結される。
【0003】
図11(b)は、図11(a)のBB断面の概略構成を示す図であり、コネクティングロッド115の入力軸側の大径環状部115aはベアリング116により回転可能に支持されている。また、コネクティングロッド115の出力軸側の小径環状部115bは、揺動リンク118の揺動端部118aに設けられている突辺118bに対して、連結ピン119により回転可能に連結されている。コネクティングロッド115が円滑な往復運動を行うために、コネクティングロッド115の大径環状部115aとベアリング116との間には所定量のクリアランスが設けられている。また、同様にコネクティングロッド115の小径環状部115bと連結ピン119との間、および、小径環状部115bの側面と突辺118bの内側側面との間には所定量のクリアランスが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−1048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、コネクティングロッド115が往復運動によりトルクを伝達する際に、クリアランスの影響でコネクティングロッド115に、がたつきが生じ得る。また、トルク伝達の反力により入力軸120において捩じれや撓みが生じると、例えば、図11(c)のようにクリアランス分だけコネクティングロッド115には倒れが生じ得る。
【0006】
コネクティングロッド115の倒れによるクリアランスの拡大または縮小により、小径環状部115bと連結ピン119との接触部、あるいは、小径環状部115bと揺動端部118aの突辺118bの内側側面との接触部は離間や接触を繰り返す。接触部における離間や接触の繰り返しは、衝突音を発生させることとなり、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の低下の原因となる。
【0007】
がたつきを低減させるためにクリアランスを詰めるように車両用動力伝達装置を構成した場合、接触部におけるフリクションの増加により円滑なコネクティングロッド115の往復運動は妨げられる。
【0008】
本発明は、トルク伝達時に生じるコネクティングロッドの倒れを矯正し、NVHの向上を図ることが可能な車両用動力伝達装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された本発明は、駆動源に接続された入力軸(2)の回転を出力軸(3)に伝達する伝達ユニット(20)を備えた車両用動力伝達装置であって、
前記伝達ユニット(20)は、
前記出力軸(3)に対して揺動可能に支持された揺動リンク(18)と、
前記出力軸(3)および前記揺動リンク(18)の間に配置され、前記揺動リンク(18)が一方向側に揺動したときに、前記出力軸(3)に対して前記揺動リンク(18)を固定し、前記揺動リンク(18)が他方向側に揺動したときに前記出力軸(3)に対して前記揺動リンク(18)を空転させるワンウェイクラッチ(17)と、
前記入力軸(2)と一体に偏心回転する偏心ディスク(6)と、
前記偏心ディスク(6)と前記揺動リンク(18)とを接続し、前記偏心回転により前記揺動リンク(18)を揺動するコネクティングロッド(15)と、を備え、
前記コネクティングロッド(15)は、
前記偏心ディスク(6)の外周面に設けられた軸受(16)に圧入される大径環状部(15a)と、
前記揺動リンク(18)の揺動端部(18a)に対して所定のクリアランスを有する状態でピン(19)を介して接続される小径環状部(15b)と、
前記大径環状部(15a)および前記小径環状部(15b)を連結する連結部と、を備え、
前記揺動リンク(18)の揺動端部(18a)は、
前記小径環状部(15b)を軸方向で挟むように所定の間隔を有して突出した一対の突辺(18b)が設けられ、
前記一対の突辺(18b)は、向かい合う側面の一部が周方向内周側になるにつれて前記間隔を狭めるように形成された傾斜面(51)を備え、
前記傾斜面(51)は前記小径環状部(15b)の一部と接触可能な位置に形成されていることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0010】
また、請求項2に記載された本発明は、請求項1の構成に加え、前記小径環状部(15b)の一部は前記傾斜面(51)と接触可能な位置に前記傾斜面(51)と同様の傾斜角を備えた傾斜部(52)を備えることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0011】
また、請求項3に記載された本発明においては、請求項1または2の構成に加え、前記傾斜面(51)は前記揺動リンク(18)の中心と前記小径環状部(15b)の中心とを結ぶ直線に対して、前記揺動リンク(18)が揺動する方向のうち前記一方向側の領域に設けられていることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0012】
また、請求項4に記載された本発明においては、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構成に加え、前記傾斜面(51)は、前記一対の突辺(18b)の向かい合う側面にそれぞれ設けられていることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0013】
また、請求項5に記載された本発明においては、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構成に加え、前記伝達ユニット(20)は、前記入力軸(2)および前記出力軸(3)の軸方向に並置するように複数設けられ、
前記入力軸(2)および前記出力軸(3)はそれぞれ軸方向に複数の軸受で支持され(40A、40B、50A、50B、)、
前記複数設けられた伝達ユニット(20)のそれぞれにおいて、前記傾斜面(51)は、前記一対の突辺(18b)の向かい合う側面のうち、いずれか一方の側面にのみ設けられ、
前記一方の側面は、前記傾斜面(51)が設けられる伝達ユニット(20)から最も近い位置に配置されている前記出力軸(3)の軸受に対して向かい合う突辺(18b)に対し、軸方向において前記所定の間隔を有する位置に配置されている突辺(18b)の側面であることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、請求項4の構成によれば、トルク伝達時に生じるコネクティングロッドの倒れを矯正し、NVHの向上を図ることが可能になる。
【0015】
請求項2の構成によれば、請求項1の効果に加えて、傾斜面と接触する際の面圧を低下させつつ、コネクティングロッドの倒れを低減することが可能になる。
【0016】
また請求項3、請求項5の構成によれば、請求項1または2の効果に加えて、加工領域を最適化することで加工工数、加工の際の作業者の手間を削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の車両用動力伝達装置の構造を示す断面図。
図2図1の車両用動力伝達装置の偏心量調節機構、コネクティングロッド及び揺動リンクを軸方向から見た図。
図3図1の車両用動力伝達装置の偏心量調節機構による偏心量の変化を示す図。
図4】本実施形態の偏心量調節機構による偏心量の変化と、揺動リンクの揺動運動の揺動角度範囲の関係を示す図。
図5】本実施形態の揺動リンクの揺動端部およびコネクティングロッドの小径環状部の構造を示す図。
図6】本実施形態の伝達ユニットを軸方向に並置した構成を示す図。
図7】本実施形態の入力軸の変形特性を考慮した傾斜面と傾斜部の構成を説明する図。
図8】本実施形態の入力軸の変形特性を考慮した傾斜面と傾斜部の構成を説明する図。
図9】本実施形態の車両用動力伝達装置において、プッシュ方式でトルク伝達を行う場合のコネクティングロッドの小径環状部と揺動リンクとの接続部の構成例を示す図。
図10】本実施形態の車両用動力伝達装置において、プル方式でトルク伝達を行う場合のコネクティングロッドの小径環状部と揺動リンクとの接続部の構成例を示す図。
図11】従来の車両用動力伝達装置の構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0019】
<車両用動力伝達装置の構造>
まず、図1および図2を参照して、本実施形態の車両用動力伝達装置の構造について説明する。本実施形態の車両用動力伝達装置1は、変速比i(i=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる変速機、いわゆるIVT(Infinity Variable Transmission)の一種である。
【0020】
本実施形態の車両用動力伝達装置1は、入力軸2と、出力軸3と、6つの偏心量調節機構4とを備える。入力軸2、出力軸3、偏心量調節機構4は、変速機ケース100の内部に収容されている。変速機ケース100は、入力軸2および出力軸3の軸方向に離間して配置される第1の側壁部101と、第2の側壁部102とを備える。入力軸2から見ると、第1の側壁部101がエンジンから駆動力が入力される上流側、第2の側壁部102が下流側となる。反対に、出力軸3から見ると、第1の側壁部101がエンジンから駆動力が出力される下流側、第2の側壁部102が上流側となる。
【0021】
入力軸2の上流側の一端部は、第1の側壁部101に第1の入力軸受40Aを介して回転自在に支持され、入力軸2の下流側の他端部は、第2の側壁部102に第2の入力軸受40Bを介して回転自在に支持されている。入力軸2は中空の部材からなり、エンジンやモータ等の走行駆動源からの駆動力を受けて回転中心軸線P1を中心として回転駆動される。
【0022】
また、出力軸3の下流側の一端部は、第1の側壁部101に第1の出力軸受50Aを介して回転自在に支持され、出力軸3の上流側の他端部は、第2の側壁部102に第2の出力軸受50Bを介して回転自在に支持されている。出力軸3は、入力軸2とは水平方向に離れた位置に入力軸2に平行に配置され、前後進切替機構やデファレンシャルギヤ等を介して自動車の車軸に駆動力を伝達する。
【0023】
偏心量調節機構4はそれぞれ駆動力入力部であり、入力軸2の回転中心軸線P1を中心として回転するように設けられ、カム部としてのカムディスク5と、偏心部材としての偏心ディスク6と、ピニオンシャフト7とを有する。回転半径調節機構(4〜7)は、回転半径を調節自在であり入力軸2の回転中心軸線を中心として回転可能に構成されている。
【0024】
カムディスク5は、円盤形状であり、入力軸2の回転中心軸線P1から偏心して入力軸2と一体的に回転するように入力軸2に2個1組で設けられている。各1組のカムディスク5は、それぞれ位相を60°異なるように設定され、6組のカムディスク5で入力軸2の周方向を一回りするように配置されている。
【0025】
偏心ディスク6は、円盤形状であり、その中心P3から偏心した位置に受入孔6aが設けられ、その受入孔6aを挟むように、1組のカムディスク5が回転可能に支持されている。偏心ディスク6は、入力軸2と一体に偏心回転する。
【0026】
偏心ディスク6の受入孔6aは、その中心が、入力軸2の回転中心軸線P1からカムディスク5の中心P2(受入孔6aの中心)までの距離Raとカムディスク5の中心P2から偏心ディスク6の中心P3までの距離Rbとが同一となるように形成されている。また、偏心ディスク6の受入孔6aには、1組のカムディスク5に挟まれた内周面に、内歯6bが形成されている。
【0027】
ピニオンシャフト7は、入力軸2の中空部内に、入力軸2と同心に配置され、ピニオン軸受7bを介して入力軸2の内周面に相対回転可能に支持されている。また、ピニオンシャフト7の外周面には、外歯7aが設けられている。さらに、ピニオンシャフト7には、差動機構8が接続されている。
【0028】
入力軸2における1組のカムディスク5の間には、カムディスク5の偏心方向に対向する箇所に内周面と外周面とを連通させる切欠孔2aが形成されており、この切欠孔2aを介して、ピニオンシャフト7の外歯7aは、偏心ディスク6の受入孔6aの内歯6bと噛合している。
【0029】
差動機構8は、遊星歯車機構であり、サンギヤ9と、入力軸2に連結された第1リングギヤ10と、ピニオンシャフト7に連結された第2リングギヤ11と、サンギヤ9及び第1リングギヤ10と噛合する大径部12aと、第2リングギヤ11と噛合する小径部12bとからなる段付きピニオン12を自転及び公転可能に軸支するキャリア13とを有している。また、差動機構8のサンギヤ9は、ピニオンシャフト7駆動用の電動機からなる偏心量調節用駆動源14の回転軸14aに連結されている。
【0030】
そして、この偏心量調節用駆動源14の回転速度を入力軸2の回転速度と同一にした場合、サンギヤ9と第1リングギヤ10とが同一速度で回転することとなり、サンギヤ9、第1リングギヤ10、第2リングギヤ11及びキャリア13の4つの要素が相対回転不能なロック状態となって、第2リングギヤ11と連結するピニオンシャフト7が入力軸2と同一速度で回転する。
【0031】
また、偏心量調節用駆動源14の回転速度を入力軸2の回転速度よりも遅くした場合、サンギヤ9の回転数をNs、第1リングギヤ10の回転数をNR1、サンギヤ9と第1リングギヤ10のギヤ比(第1リングギヤ10の歯数/サンギヤ9の歯数)をjとすると、キャリア13の回転数が(j・NR1+Ns)/(j+1)となる。また、サンギヤ9と第2リングギヤ11のギヤ比((第2リングギヤ11の歯数/サンギヤ9の歯数)×(段付きピニオン12の大径部12aの歯数/小径部12bの歯数))をkとすると、第2リングギヤ11の回転数が{j(k+1)NR1+(k−j)Ns}/{k(j+1)}となる。
【0032】
したがって、偏心量調節用駆動源14の回転速度を入力軸2の回転速度よりも遅くした場合であって、カムディスク5が固定された入力軸2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とが同一である場合には、偏心ディスク6はカムディスク5と共に一体に回転する。一方で、入力軸2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とに差がある場合には、偏心ディスク6はカムディスク5の中心P2を中心にカムディスク5の周縁を回転する。
【0033】
図2に示すように、偏心ディスク6は、カムディスク5に対して、P1からP2までの距離RaとP2からP3までの距離Rbとが同一となるように偏心されている。そのため、偏心ディスク6の中心P3を入力軸2の回転中心軸線P1と同一線上に位置させて、入力軸2の回転中心軸線P1と偏心ディスク6の中心P3との距離、すなわち、偏心量R1を「0」にすることもできる。
【0034】
偏心ディスク6の外縁部には、コネクティングロッド15が回転可能に支持されている。コネクティングロッド15は、一方の端部に大径の大径環状部15aを有し、他方の端部に小径の小径環状部15bを有している。コネクティングロッド15の棹部(連結部)は大径環状部15aおよび小径環状部15bを連結する。コネクティングロッド15の大径環状部15aは、コンロッド軸受16を介して偏心ディスク6の外縁部に支持されている。大径環状部15aはコンロッド軸受16に圧入された状態で偏心ディスク6の外縁部に支持されている。コネクティングロッド15は、偏心ディスク6と揺動リンク18とを接続し、偏心ディスク6の偏心回転により揺動リンク18を揺動する。
【0035】
出力軸3には、一方向回転阻止機構としてのワンウェイクラッチ17を介して、揺動リンク18が連結されている。揺動リンク18は出力軸3に対して揺動可能に支持されている。ワンウェイクラッチ17は、出力軸3の回転中心軸線P4を中心として一方向側に回転(揺動)しようとする場合に出力軸3に対して揺動リンク18を固定し、他方向側に回転(揺動)しようとする場合に出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる。
【0036】
揺動リンク18には、揺動端部18aが設けられ、揺動端部18aには、小径環状部15bを軸方向で挟み込むことができるように形成された一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、小径環状部15bの内径に対応する貫通孔18cが穿設されている。貫通孔18c及び小径環状部15bに連結ピン19が挿入されることによって、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが連結されている。また、揺動リンク18には、環状部18dが設けられている。小径環状部15bは、揺動リンク18の揺動端部18aに対して所定のクリアランスを有する状態で連結ピン19を介して接続される。
【0037】
<てこクランク機構(伝達ユニット)>
次に、図2図4を参照して、本実施形態の車両用動力伝達装置のてこクランク機構20(伝達ユニット)について説明する。図2に示すように、本実施形態の車両用動力伝達装置1において、偏心量調節機構4を含む回転半径調節機構(4〜7)と、コネクティングロッド15と、ワンウェイクラッチ17(一方向回転阻止機構)と、揺動リンク18とが、てこクランク機構20(四節リンク機構による伝達ユニット)を構成している。てこクランク機構20(伝達ユニット)は、駆動源(エンジン)に接続された入力軸2の回転を出力軸3に伝達する。
【0038】
てこクランク機構20によって、入力軸2の回転運動は、出力軸3の回転中心軸線P4を中心とする揺動リンク18の揺動運動に変換される。本実施形態の車両用動力伝達装置1は、図1に示すように、合計6個(No.1〜No.6)のてこクランク機構20(伝達ユニット)を備えている。
【0039】
てこクランク機構20では、偏心量調節機構4の偏心量R1が「0」でない場合に、入力軸2とピニオンシャフト7を同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が60度ずつ位相を変えながら、入力軸2と出力軸3との間で出力軸3側に押したり、入力軸2側に引いたりを交互に繰り返して、揺動リンク18を揺動させる。
【0040】
そして、揺動リンク18と出力軸3との間にはワンウェイクラッチ17が設けられているので、揺動リンク18が押された場合には、揺動リンク18が固定されて出力軸3に揺動リンク18の揺動運動によるトルクが伝達されて出力軸3が回転し、揺動リンク18が引かれた場合には、揺動リンク18が空回りして出力軸3に揺動リンク18の揺動運動によるトルクが伝達されない。6つの偏心量調節機構4は、それぞれ60度ずつ位相を変えて配置されているので、出力軸3は6つの偏心量調節機構4により順に回転駆動される。
【0041】
また、本実施形態の車両用動力伝達装置1では、図3に示すように、偏心量調節機構4によって偏心量R1が調節可能である。
【0042】
図3(a)は、偏心量R1を「最大」とした状態を示し、入力軸2の回転中心軸線P1とカムディスク5の中心P2と偏心ディスク6の中心P3とが一直線に並ぶように、ピニオンシャフト7と偏心ディスク6とが位置する。この場合の変速比iは最小となる。図3(b)は、偏心量R1を図3(a)よりも小さい「中」とした状態を示し、図3(c)は、偏心量R1を図3(b)よりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比iは、図3(b)では図3(a)の変速比iよりも大きい「中」となり、図3(c)では図3(b)の変速比iよりも大きい「大」とした状態を示している。図3(d)は、偏心量R1を「0」とした状態を示し、入力軸2の回転中心軸線P1と、偏心ディスク6の中心P3とが同心に位置する。この場合の変速比iは無限大(∞)となる。
【0043】
図4は、本実施形態の偏心量調節機構4による偏心量R1の変化と、揺動リンク18の揺動運動の揺動角度範囲の関係を示している。
【0044】
図4(a)は偏心量R1が図3(a)の「最大」である場合(変速比iが最小である場合)、図4(b)は偏心量R1が図3(b)の「中」である場合(変速比iが中である場合)、図4(c)は偏心量R1が図3(c)の「小」である場合(変速比iが大である場合)の、偏心量調節機構4の回転運動(回転角度θ1)に対する揺動リンク18の揺動範囲θ2を示している。ここで、出力軸3の回転中心軸線P4からコネクティングロッド15と揺動端部18aの連結点、すなわち、連結ピン19の中心P5までの距離が、揺動リンク18の長さR2である。
【0045】
図4から明らかなように、偏心量R1が小さくなるのに伴い、揺動リンク18の揺動角度範囲θ2が狭くなり、偏心量R1が「0」になった場合には、揺動リンク18は揺動しなくなる。
【0046】
<小径環状部15bおよび揺動端部18aの構造>
次に、コネクティングロッド15の倒れを矯正するための構成について説明する。入力軸2側でコネクティングロッド15の大径環状部15aに倒れ(傾き角Θ)が生じた場合、コネクティングロッド15の長さ(Lc)により倒れの傾き角が拡大され(Lc×Θ)、小径環状部15b側で倒れが大きくなって現れる。小径環状部15bは大径環状部15aに比べて形状が小さく、小径環状部15bに倒れを矯正するための構成を設けたとしても、重量増加分は小さい。また、てこクランク機構20(伝達ユニット)の動作により揺動リンク18とコネクティングロッド15との幾何学的な位置関係は変化し、トルク伝達の際にコネクティングロッド15の倒れが生じ得る。
【0047】
これらの点を考慮して、小径環状部15bおよび揺動リンク18の揺動端部18a側にコネクティングロッド15の倒れを矯正するための構成を設けることが効果的である。以下、コネクティングロッド15の倒れを矯正するための構成として、小径環状部15bおよび揺動端部18aの構造について説明する。
【0048】
図5図2のAA断面における揺動リンク18の揺動端部18aとコネクティングロッド15の小径環状部15bの断面形状を示す図である。
【0049】
ワンウェイクラッチ17を介して出力軸3と連結する揺動リンク18には揺動端部18aが設けられ、揺動端部18aにはコネクティングロッド15の小径環状部15bを軸方向で挟み込むことができるように形成された一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、小径環状部15bの内径に対応する穴部が形成されており、穴部と小径環状部15bに連結ピン19が挿入されることによりコネクティングロッド15は揺動リンク18に対して回転可能に連結される。
【0050】
コネクティングロッド15が円滑な往復運動を行うために、小径環状部15bの内径と連結ピン19との間、及び小径環状部15bの側面と突片18bの内側側面との間、及び連結ピン19と穴部との間には所定量のクリアランス(C1、C2、C3)が設けられている。
【0051】
図5(a)は、トルク伝達無の状態を示す図である。揺動リンク18の揺動端部18aは、小径環状部15bを軸方向で挟むように所定の間隔を有して突出した一対の突辺18bが設けられている。一対の突片18bは、向かい合う側面の一部が周方向内周側になるにつれて間隔を狭めるように形成された傾斜面51を備える。傾斜面51は小径環状部15bの一部と接触可能な位置に形成されている。また、コネクティングロッド15の小径環状部15bの一部は傾斜面51と接触可能な位置に、傾斜面51の傾斜角と同様の傾斜角を有する傾斜部52を備える。小径環状部15bの一部が傾斜部52を備えることにより、傾斜面51と接触する際の面圧を低下させつつ、コネクティングロッドの倒れを低減することが可能になる。
【0052】
図5(a)において、左側の突片18bに形成されている傾斜面を傾斜面51aとし、右側の突片18bに形成されている傾斜面を傾斜面51bとする。傾斜面51a、bを総称して傾斜面51として示す。
【0053】
また、コネクティングロッド15の小径環状部15bの一部は、突片18bに形成された傾斜面51と接触可能な位置に、傾斜面と同様の傾斜角を備えた傾斜部52を備える。図5(a)において、小径環状部15bの左側端面の一部には、傾斜面51aと接触可能な位置に、傾斜面51aと同様の傾斜角を備えた傾斜部52aが形成されている。また、小径環状部15bの右側端面の一部には、傾斜面51bと接触可能な位置に、傾斜面51bと同様の傾斜角を備えた傾斜部52bが形成されている。傾斜部52a、bを総称して傾斜部52として示す。傾斜面51aの傾斜角Θaと傾斜部52aの傾斜角Θaとが等しくなるように構成されている。また、傾斜面51bの傾斜角Θbと傾斜部52bの傾斜角Θbとが等しくなるように構成されている。尚、左右の傾斜角Θa、Θbを同一としてもよいし、異なる傾斜角を設定することも可能である。
【0054】
図5(b)は、トルク伝達開始直前の状態を例示的に示す図であり、コネクティングロッド15は矢印55で示す方向に移動して、右側の突辺18bの傾斜面51bと小径環状部15bの右側端面の一部に形成された傾斜部52bとが接触し始める状態となる。傾斜面51bと傾斜部52bとの接触により、コネクティングロッド15は傾斜面51bおよび傾斜部52bの傾斜角に倣い、倒れることなく矢印55の方向に移動することが可能である。
【0055】
図5(c)は、トルク伝達中の状態を例示的に示す図であり、コネクティングロッド15は矢印55で示す方向に更に移動していき、右側の突辺18bの傾斜面51bと小径環状部15bの右側端面の傾斜部52aとが接触し、かつ、左側の突辺18bの傾斜面51aと小径環状部15bの左側端面の一部に形成された傾斜部52aとが接触した状態となる。
【0056】
傾斜面51aと傾斜部52aとの接触、および、傾斜面51bと傾斜部52bとの接触により、コネクティングロッド15は傾斜角に倣い、倒れることなく矢印55の方向に移動し、トルク伝達を行うことが可能である。突辺18bの傾斜面51a、bおよび小径環状部15bの傾斜部52a、bは、コネクティングロッドの倒れを矯正する倒れ矯正部として機能する。トルク伝達中においてコネクティングロッド15や入力軸2等に負荷が作用する状態であっても、傾斜面51bと傾斜部52bとの接触、および、傾斜面51aと傾斜部52aとの接触により、コネクティングロッド15の倒れを矯正することができる。
【0057】
コネクティングロッド15の倒れを矯正(抑制)することにより、小径環状部15bと連結ピン19との接触部、あるいは、小径環状部15bと揺動端部18aの突辺18bの内側側面との接触部等が離間や接触を繰り返すことによる衝突音の発生を抑制することができるので、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の向上を図ることが可能になる。
【0058】
<入力軸の変形特性を考慮した小径環状部および揺動端部の構造>
図6は、図1に示した6個のてこクランク機構20(伝達ユニット)が、入力軸2および出力軸3の軸方向に並置するように複数設けられた状態を概略的に示す図である。図1のエンジン側を動力が入る上流側(TOP)として示し、偏心量調節用駆動源14側をエンジンに対する下流側(BTM)として示す。図6において、6個のてこクランク機構20(伝達ユニット)を、それぞれ、No.1〜No.6として示している。
【0059】
図6では、エンジンに対して最も上流側(TOP)に配置されている、てこクランク機構20をNo.1(第1のてこクランク機構20)として示している。また、エンジンに対して最も下流側(BTM)に配置されている、てこクランク機構20をNo.6(第6のてこクランク機構20)として示している。第1のてこクランク機構20と第6のてこクランク機構20との間に、第2〜第5のてこクランク機構20が入力軸2および出力軸3の軸方向に並置されている。
【0060】
入力軸2は、複数の軸受(第1の入力軸受40Aおよび第2の入力軸受40B)により支持されている。また、出力軸3は、複数の軸受(第1の出力軸受50Aおよび第2の出力軸受50B)により支持されている。
【0061】
偏心量調節機構4と、コネクティングロッド15と、揺動リンク18とが、てこクランク機構20(四節リンク機構の伝達ユニット)を構成するが、図6では、コネクティングロッド15の倒れを説明するため、てこクランク機構20の構成のうち、コネクティングロッド15、大径環状部15a、小径環状部15bが連結する揺動リンク18を代表として示している。
【0062】
図6(a)は、てこクランク機構20によるトルク伝達は行われていない、無負荷の状態を示している。図6(b)は、第2のてこクランク機構20(No.2)がトルク伝達中の状態を示している。図6(b)において、第2のてこクランク機構20(No.2)の大径環状部15a近傍の入力軸2にトルク伝達の反力として負荷が作用すると、入力軸2が撓み、大径環状部15aが傾斜した状態になる。図5で説明したような小径環状部15bの傾斜部52aや突辺18bの傾斜面51aが形成されていない場合、トルク伝達中の第2のてこクランク機構20(No.2)におけるコネクティングロッド15は、入力軸2の撓み(傾斜)によりエンジンに対して上流側(TOP側)に倒れる傾向を示す。
【0063】
また、図6(c)は、第5のてこクランク機構20(No.5)がトルク伝達中の状態を示している。図6(c)において、第5のてこクランク機構20(No.5)の大径環状部15a近傍の入力軸2にトルク伝達の反力として負荷が作用すると、入力軸2が撓み、大径環状部15aが傾斜した状態になる。図5で説明したような小径環状部15bの傾斜部52bや突辺18bの傾斜面51bが形成されていない場合、トルク伝達中の第5のてこクランク機構20(No.5)におけるコネクティングロッド15は、入力軸2の撓み(傾斜)によりエンジンに対して下流側(BTM側)に倒れる傾向を示す。
【0064】
図6(b)を例として、第1の入力軸受40Aおよび第2の入力軸受40Bの間(軸受間)の入力軸2の長さをL1とし、第1の入力軸受40Aおよび第2の入力軸受40Bの間の中央位置をMで示す。軸受(第1の入力軸受40A、第2の入力軸受40B)から中央位置Mまでの入力軸2の長さをL2(=L1/2)とする。
【0065】
図6(b)、(c)で示したような入力軸2の変形特性により、第1の入力軸受40Aから中央位置Mまでの間に配置されている、第1のてこクランク機構20〜第3のてこクランク機構20(No.1〜No.3の)のコネクティングロッド15はTOP側に倒れる傾向を示す。また、第2の入力軸受40Bから中央位置Mの間に配置されている、第4のてこクランク機構20〜第6のてこクランク機構20(No.4〜No.6の)のコネクティングロッド15はBTM側に倒れる傾向を示す。
【0066】
図7図8は、入力軸2の変形特性を考慮した傾斜面51と傾斜部52の構造を説明する図である。図5で説明した構成では、小径環状部15bの左右に傾斜部52を形成し、左右の突片18bに対しても傾斜面51を形成した構成を説明したが、入力軸2の変形特性を考慮し、コネクティングロッド15の倒れる方向を特定することができる場合、いずれか一方側に傾斜面51および傾斜部52を設ければよい。すなわち、複数設けられたてこクランク機構20(伝達ユニット)のそれぞれにおいて、傾斜面51は、一対の突辺18bの向かい合う側面のうち、いずれか一方の側面にのみ設ければよい。
【0067】
ここで、傾斜面51が設けられる一方の側面は、てこクランク機構20から最も近い位置に配置されている出力軸3の軸受に対して向かい合う突辺18bに対し、軸方向において所定の間隔を有する位置に配置されている突辺18bの側面である。
【0068】
例えば、傾斜面51が設けられるてこクランク機構が、第2のてこクランク機構20(No.2)である場合、第2のてこクランク機構20(No.2)から最も近い位置に配置されている出力軸3の軸受は、第1の出力軸受50Aである。第1の出力軸受50Aに対して向かい合う突辺18bは、一対の突辺のうち右側の突辺18bである。そして、右側の突辺18bに対して、軸方向において所定の間隔を有する位置に配置されている突辺は、左側の突辺18bであり、傾斜面51が設けられる一方の側面は、左側の突辺18bとなる。
【0069】
図7はTOP側に倒れるコネクティングロッド15を矯正するために、傾斜面51aと傾斜部52aが設けられた構成を示す図である。図7(a)は、トルク伝達無の状態を示す図であり、左側の突片18bに傾斜面51aが形成されている。右側の突片18bの下端部53bは直角に構成されており、傾斜面は形成されていない。また、コネクティングロッド15の小径環状部15bの左側端面の一部には、傾斜面51aと接触可能な位置に、傾斜面51aと同様の傾斜角を備えた傾斜部52aが形成されている。小径環状部15bの右側端面の角部54bは直角に構成されており、傾斜部は形成されていない。図5(a)と同様に、小径環状部15bの内径と連結ピン19との間、および、小径環状部15bの側面と突片18bの内側側面との間、連結ピン19と穴部との間には所定量のクリアランス(C1、C2、C3)が設けられている。
【0070】
図7(b)は、トルク伝達開始直前の状態を例示的に示す図であり、コネクティングロッド15は矢印55で示す方向に移動して、左側の突辺18bの傾斜面51aと小径環状部15bの左側端面の一部に形成された傾斜部52aとが接触し始める状態となる。
【0071】
図7(c)は、トルク伝達中の状態を例示的に示す図であり、コネクティングロッド15は矢印55で示す方向に更に移動していき、左側の突辺18bの傾斜面51aと小径環状部15bの左側端面の傾斜部52aとが接触した状態となる。例えば、図6(b)に示すようにトルク伝達中の第2のてこクランク機構20(No.2)のコネクティングロッド15がTOP側に倒れる場合に、傾斜面51aと傾斜部52aとの接触により、コネクティングロッド15は傾斜面51aおよび傾斜部52aの傾斜角に倣い、倒れることなく矢印55の方向に移動し、トルク伝達を行うことが可能である。コネクティングロッド15がTOP側に倒れる場合、小径環状部15bの右側端面の角部54bが、右側の突辺18bと接触することはないため、図5(a)のように傾斜面51b及び傾斜部52bを設ける必要はない。
【0072】
図8はBTM側に倒れるコネクティングロッド15を矯正するために、傾斜面51bと傾斜部52bが設けられた構成を示す図である。図8(a)は、トルク伝達無の状態を示す図であり、右側の突片18bに傾斜面51bが形成されている。左側の突片18bの下端部53aは直角に構成されており、傾斜面は形成されていない。また、コネクティングロッド15の小径環状部15bの右側端面の一部には、傾斜面51bと接触可能な位置に、傾斜面51bと同様の傾斜角を備えた傾斜部52bが形成されている。小径環状部15bの左側端面の角部54aは直角に構成されており、傾斜部は形成されていない。図5(a)と同様に、小径環状部15bの内径と連結ピン19との間、および、小径環状部15bの側面と突片18bの内側側面との間、連結ピン19と穴部との間には所定量のクリアランス(C1、C2、C3)が設けられている。
【0073】
図8(b)は、トルク伝達開始直前の状態を例示的に示す図であり、コネクティングロッド15は矢印55で示す方向に移動して、右側の突辺18bの傾斜面51bと小径環状部15bの右側端面の一部に形成された傾斜部52bとが接触し始める状態となる。
【0074】
図8(c)は、トルク伝達中の状態を例示的に示す図であり、コネクティングロッド15は矢印55で示す方向に更に移動していき、右側の突辺18bの傾斜面51bと小径環状部15bの右側端面の傾斜部52bとが接触した状態となる。例えば、図6(c)に示すようにトルク伝達中の第5のてこクランク機構20(No.5)のコネクティングロッド15がBTM側に倒れる場合に、傾斜面51bと傾斜部52bとの接触により、コネクティングロッド15は傾斜面51bおよび傾斜部52bの傾斜角に倣い、倒れることなく矢印55の方向に移動し、トルク伝達を行うことが可能である。コネクティングロッド15がBTM側に倒れる場合、小径環状部15bの左側端面の角部54aが、左側の突辺18bと接触することはないため、図5(a)のように傾斜面51a及び傾斜部52aを設ける必要はない。
【0075】
図7図8に示した構成によれば、コネクティングロッド15が倒れる方向に合わせて、傾斜面51および傾斜部52を形成するための加工領域を、コネクティングロッドの倒れを矯正するために必要とされる範囲に限定することができる。図7図8に示した構成では、左側または右側のいずれか一方に、傾斜面51、傾斜部52を形成ればよいので、左右両方に傾斜面51、傾斜部52を形成する場合(図5)に比べて、加工工数は1/2となる。加工領域の範囲を必要とされる範囲に限定した最適な範囲とすることで、加工工数を削減し、加工に伴う手間、作業者の負担を軽減することが可能になる。
【0076】
<プッシュ方式でトルク伝達を行う場合の揺動端部18aの構造>
次に、てこクランク機構がプッシュ方式またはプル方式でトルク伝達を行う場合の揺動端部18aの構造について説明する。図9は、プッシュ方式でトルク伝達を行う場合の小径環状部15bと揺動リンク18aとの接続部の構成例を示す図である。プッシュ方式では、コネクティングロッド15が矢印90の方向に揺動リンク18aを押すときに、ワンウェイクラッチ17(一方向回転阻止機構)は出力軸3にトルクを伝達する。矢印90の方向とは逆方向にコネクティングロッド15が揺動リンク18aを引くときに、ワンウェイクラッチ17は出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる。
【0077】
図9の構成では、コネクティングロッド15が揺動リンク18aを押すときにトルクが出力軸3に伝達されるので、トルク伝達時のコネクティングロッド15の倒れによりコネクティングロッド15の小径環状部15bと接触可能な突片18bの側面領域S1に傾斜面51を形成すればよい。揺動リンクの中心P4と小径環状部15bの中心P5(連結ピン19の中心)とを結ぶ直線に対して、コネクティングロッド15の押し動作により揺動リンク18aが揺動する方向側の突片18bの側面領域S1に傾斜面51を形成すればよい。
【0078】
プッシュ方式でトルク伝達を行う場合、コネクティングロッド15の引き動作では、トルク伝達によるコネクティングロッド15の倒れは生じないので、揺動リンクの中心P4と小径環状部15bの中心P5(連結ピン19の中心)とを結ぶ直線に対して、側面領域S1と線対称の領域には傾斜面51を形成する必要はない。
【0079】
<プル方式でトルク伝達を行う場合の揺動端部18aの構造>
次に、てこクランク機構20がプル方式でトルク伝達を行う場合の揺動端部18aの構造について説明する。図10は、プル方式でトルク伝達を行う場合の小径環状部15bと揺動リンク18aとの接続部の構成例を示す図である。プル方式では、コネクティングロッド15が矢印95の方向に揺動リンク18aを引くときに、ワンウェイクラッチ17(一方向回転阻止機構)は出力軸3にトルクを伝達する。矢印95の方向とは逆方向にコネクティングロッド15が揺動リンク18aを押すときに、ワンウェイクラッチ17は出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる。
【0080】
図10の構成では、コネクティングロッド15が揺動リンク18aを引くときにトルクが出力軸3に伝達されるので、トルク伝達時のコネクティングロッド15の倒れによりコネクティングロッド15の小径環状部15bと接触可能な突片18bの側面領域S2に傾斜面51を形成すればよい。揺動リンクの中心P4と小径環状部15bの中心P5(連結ピン19の中心)とを結ぶ直線に対して、コネクティングロッド15の引き動作により揺動リンク18aが揺動する方向側の突片18bの側面領域S2に傾斜面51を形成すればよい。
【0081】
プル方式でトルク伝達を行う場合、コネクティングロッド15の押し動作では、トルク伝達によるコネクティングロッド15の倒れは生じないので、揺動リンクの中心P4と小径環状部15bの中心P5(連結ピン19の中心)とを結ぶ直線に対して、側面領域S2と線対称の領域には傾斜面51を形成する必要はない。
【0082】
図9図10に示した構成によれば、プッシュ方式でトルク伝達を行う場合、または、プル方式でトルク伝達を行う場合に応じて、コネクティングロッド15の小径環状部15bと接触可能な突片18bの側面領域(S1またはS2)に傾斜面51を加工する領域を限定することができる。
【0083】
図9図10に示した構成では、てこクランク機構によるトルク伝達の方式(プッシュ方式、またはプル方式)に応じて、突辺18bの側面領域S1または側面領域S2のいずれか一方に、傾斜面51を形成ればよいので、側面領域S1およびS2の両方に傾斜面51を形成する場合(図5)に比べて、加工工数は1/2となる。
【0084】
先に説明した図7図8に示した構成では、てこクランク機構が配置される位置、例えば、図6(a)のNo.1〜No.3に対応する位置であるか、No.4〜No.6に対応する位置、に応じて、左側または右側のいずれか一方に、傾斜面51、傾斜部52を形成する加工領域を限定することができる。左側または右側のいずれか一方に、傾斜面51、傾斜部52を形成する場合の加工工数は、左右両方に傾斜面51、傾斜部52を形成する場合(図5)の加工工数に比べて1/2となる。
【0085】
てこクランク機構20の配置位置に基づく加工領域の制限と、てこクランク機構によるトルク伝達の方式に基づく加工領域の制限とを組み合わせることによる加工工数は、左右両方に傾斜面51、傾斜部52を形成し、かつ、突辺18bの側面領域S1およびS2に傾斜面51を形成する場合の加工工数に比べて1/4となる。
【0086】
本実施形態の構成によれば、トルク伝達時に生じるコネクティングロッドの倒れを矯正し、NVHの向上を図ることが可能になる。また、加工領域の範囲を必要とされる範囲に限定した最適な範囲とすることで、加工工数を削減し、加工に伴う手間、作業者の負担を軽減することが可能になる。
【符号の説明】
【0087】
1…車両用動力伝達装置、2…入力軸、3…出力軸、4…偏心量調節機構、5…カムディスク、6…偏心ディスク、6a…受入孔、6b…内歯、7…ピニオンシャフト、7a…外歯、7b…ピニオン軸受、14…偏心量調節用駆動源、14a…回転軸、15…コネクティングロッド、15a…大径環状部、15b…小径環状部、16…コンロッド軸受、17…ワンウェイクラッチ、18…揺動リンク、20…てこクランク機構(伝達ユニット)、40A…第1の入力軸受、40B…第2の入力軸受、50A…第2の出力軸受、50B…第2の出力軸受、100…変速機ケース、101…第1の側壁部、102…第2の側壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11