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特開2015-227760給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227760(P2015-227760A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20151120BHJP
   F22D 5/32 20060101ALI20151120BHJP
   F22D 5/28 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   F22B37/38 C
   F22D5/32 Z
   F22D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-114071(P2014-114071)
(22)【出願日】2014年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 則俊
(72)【発明者】
【氏名】森 光義
(72)【発明者】
【氏名】越智 一喜
(57)【要約】
【課題】給水ポンプ能力低下の判断をより正確に行うことのできる給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラを提供する。
【解決手段】蒸気を発生するボイラ1、ボイラ1への給水を通す給水配管3、給水配管途中に設けた給水ポンプ2、給水の流量を計測する流量計測装置4、蒸気圧力を計測する圧力計測装置9、給水ポンプ能力低下の判断を行う運転制御装置5を持ったボイラにおいて、運転制御装置5では、一定の期間内における前記圧力計測装置9によって計測している蒸気圧力の最高値と、蒸気圧力が最高値である場合での前記流量計測装置4にて計測している瞬時給水量の最小値を保存領域に保存するものであり、保存しておいた瞬時給水量を蒸気圧力の最高値によって換算することで所定条件下での換算瞬時給水量を算出し、この算出した換算瞬時給水量に基づいて給水ポンプの能力低下を判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ水を加熱することで蒸気を発生するボイラ本体、ボイラ本体への給水を通す給水配管、給水配管途中に設けておりボイラ内への給水を加圧する給水ポンプ、給水配管を通して送られる給水の流量を計測する流量計測装置、ボイラ内の蒸気圧力を計測する圧力計測装置、前記給水ポンプの能力低下が発生した場合に給水ポンプ能力低下の判断を行う運転制御装置を持ったボイラにおいて、運転制御装置では、一定の期間内における前記圧力計測装置によって計測している蒸気圧力の最高値と、蒸気圧力が最高値である場合での前記流量計測装置にて計測している瞬時給水量の最小値を保存領域に保存するものであり、保存しておいた瞬時給水量の値を保存しておいた蒸気圧力の値によって換算することで所定条件下での換算瞬時給水量を算出し、この算出した換算瞬時給水量に基づいて給水ポンプの能力低下を判断するものであることを特徴とする給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラにおいて、給水配管を通して送られる給水の温度を計測する給水温度計測装置を設けており、運転制御装置では、前記圧力計測装置によって計測している蒸気圧力が最高値を更新した時、また蒸気圧力が最高値であって前記流量計測装置にて計測している瞬時給水量が最小値となった時には、そのときの瞬時給水量の値と蒸気圧力の値に加えて、給水温度の値を保存領域に更新保存するようにしておき、保存しておいた瞬時給水量の換算は、保存しておいた蒸気圧力の値と給水温度の値によって換算することで所定条件下における換算瞬時給水量を算出し、この算出した換算瞬時給水量に基づいて給水ポンプの能力低下を判断するものであることを特徴とする給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラにおいて、運転制御装置は、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力値を超えていた場合は、保存領域の保存データを更新し、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力未満であれば保存データの更新は行わないものであって、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力値と同じ場合には、計測した瞬時給水量と保存領域の瞬時給水量を比較し、計測した瞬時給水量が保存領域の瞬時給水量以下であれば保存領域の保存データを更新、計測した瞬時給水量が保存領域の瞬時給水量を超えていた場合には保存データの更新は行わないものであることを特徴とする給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラにおいて、運転制御装置には、瞬時給水量の異常を判断するための閾値を設定しておき、前記換算瞬時給水量が前記閾値を下回った場合に給水ポンプの能力低下との判断を行うとともに、前日以前の換算瞬時給水量との比較を行い、前記換算瞬時給水量が前日以前の値に比べて急激に低下している場合に給水ポンプの能力低下との判断を行うものであることを特徴とする給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開昭59−9411に記載があるように、ボイラでは缶内水位を一定の範囲内に保つための給水制御手段を有している。ボイラの運転中は、ボイラ水は蒸気となって取り出され、またブローによる排水も行われているため、給水を行わないとボイラ内の水位は低下し続ける。そのためにボイラの運転中はボイラ内の水位を検出し、一定の水位を保つように給水ポンプの作動を制御する。給水制御手段では、ボイラ内水位が給水開始水位まで低下すると給水ポンプの作動を行ってボイラへの給水を行い、給水によってボイラ内水位が給水停止水位まで上昇すると給水ポンプの作動を停止するように、断続的に給水ポンプの運転を行う。もし仮に、給水ポンプの能力が低下し、給水ポンプの作動を行ってもボイラ内の水位を上昇させることができなくなると、ボイラ内の水位を一定の範囲内に保つことができなくなる。そのためにボイラでは、給水ポンプの能力を監視することが行われている。
【0003】
特開昭59−9411に記載の発明では、ボイラ給水の流量を計測して流量信号を出力する流量計測手段、ボイラ内の蒸気圧を計測する蒸気圧計測手段、さらに蒸気圧に対応する給水の参照流量信号を出力する参照流量検索手段を設けておき、流量信号と参照流量信号の大小関係に基づいて給水ポンプの性能を判断するようにしている。この場合、「給水ポンプによる現実の給水量と、蒸気圧とこれに対応する参照流量との関係を表すテーブルに従って検索される現実の蒸気圧に対応する参照流量との大小関係に基づいて、給水ポンプの性能を判断するように構成されているので、ボイラ系の運転を停止させることなく、蒸気圧による大きな負荷を課した状態下で給水ポンプの性能判定を行うことができ、而して、給水ポンプの流量〜水頭曲線上、性能劣化に伴って特性が大幅に変化する動作領域にて、性能判定を行うことができる。」となっている。しかしこの場合、給水ポンプの能力低下時に現れる給水量の低下幅は蒸気圧力によって変化するものであるため、参照流量の設定は簡単ではなく、高い精度は期待しにくいものであった。
【0004】
また、給水ポンプの給水量は給水温度によっても変化する。ボイラの給水は、ドレン回収等によって温度が上昇した水を使用することがよく行われているが、給水ポンプ内を流れる給水の温度が高いと、給水ポンプ内でキャビテーションが発生して給水量の減少を招くことがある。この場合、給水ポンプ自体は正常であっても給水量が減少するために、能力低下の判断に影響を与えることになっていた。それらの要因により、能力の低下は発生していないにもかかわらず給水ポンプの能力が低下しているとの誤った判断を行うことや、給水ポンプの能力低下の判断が遅れ、ボイラの稼働に影響するまで給水ポンプの能力低下を検出できないということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−9411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、給水ポンプ能力低下の判断をより正確に行うことのできる給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ボイラ水を加熱することで蒸気を発生するボイラ本体、ボイラ本体への給水を通す給水配管、給水配管途中に設けておりボイラ内への給水を加圧する給水ポンプ、給水配管を通して送られる給水の流量を計測する流量計測装置、ボイラ内の蒸気圧力を計測する圧力計測装置、前記給水ポンプの能力低下が発生した場合に給水ポンプ能力低下の判断を行う運転制御装置を持ったボイラにおいて、運転制御装置では、一定の期間内における前記圧力計測装置によって計測している蒸気圧力の最高値と、蒸気圧力が最高値である場合での前記流量計測装置にて計測している瞬時給水量の最小値を保存領域に保存するものであり、保存しておいた瞬時給水量の値を保存しておいた蒸気圧力の値によって換算することで所定条件下での換算瞬時給水量を算出し、この算出した換算瞬時給水量に基づいて給水ポンプの能力低下を判断するものであることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記の給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラにおいて、給水配管を通して送られる給水の温度を計測する給水温度計測装置を設けており、運転制御装置では、前記圧力計測装置によって計測している蒸気圧力が最高値を更新した時、また蒸気圧力が最高値であって前記流量計測装置にて計測している瞬時給水量が最小値となった時には、瞬時給水量の値と蒸気圧力の値に加えて、そのときの給水温度を保存領域に更新保存するようにしておき、保存しておいた瞬時給水量は保存しておいた蒸気圧力の値と給水温度の値によって換算することで所定条件下における換算瞬時給水量を算出し、この算出した換算瞬時給水量に基づいて給水ポンプの能力低下を判断するものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記の給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラにおいて、運転制御装置は、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力値を超えていた場合は、保存領域の保存データを更新し、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力未満であれば保存データの更新は行わないものであって、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力値と同じ場合には、計測した瞬時給水量と保存領域の瞬時給水量を比較し、計測した瞬時給水量が保存領域の瞬時給水量以下であれば保存領域の保存データを更新、計測した瞬時給水量が保存領域の瞬時給水量を超えていた場合には保存データの更新は行わないものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記の給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラにおいて、運転制御装置には、瞬時給水量の異常を判断するための閾値を設定しておき、前記換算瞬時給水量が前記閾値を下回った場合に給水ポンプの能力低下との判断を行うとともに、前日以前の換算瞬時給水量との比較を行い、前記換算瞬時給水量が前日以前の値に比べて急激に低下している場合に給水ポンプの能力低下との判断を行うものであることを特徴とする給水ポンプ能力低下検出装置を持ったボイラ。
【発明の効果】
【0011】
一日単位などでデータを集約し、その期間内での最も圧力が高くかつ瞬時給水量の少ない状態での瞬時給水量で比較するものであるため、常に一定条件における瞬時給水量を比較することができ、蒸気圧力や給水温度に左右されずに正確な判断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施しているボイラのフロー図
図2】本発明の一実施例での給水ポンプ能力低下判断用データ収集のフローチャート
図3】本発明の一実施例での瞬時給水量算出のタイミング説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施しているボイラのフロー図である。ボイラ1への給水は給水ポンプ2を設けている給水配管3を通して行う。給水配管3は、給水ポンプ2の他に給水流量を計測するための流量計測装置4と、給水温度を計測する給水温度計測装置10を設けている。流量計測装置4は、一定量の給水が行われることにパルス信号を発するものであり、パルス信号はボイラの運転を制御する運転制御装置5へ出力する。給水温度計測装置10で計測した給水温度も運転制御装置5へ出力するようにしておく。
【0014】
ボイラには排ガスの熱によってボイラ給水の予熱を行う給水予熱装置6を設けており、ボイラの給水は給水予熱装置6にて予熱を行ってからボイラの本体部へ供給する。ボイラ1ではボイラ水の加熱を行い、蒸気を発生させる。ボイラの本体部で発生した蒸気は、ボイラ1の上部に設けている気水分離器7にて蒸気とボイラ水に分離し、蒸気のみを取り出す。気水分離器7で分離したボイラ水はボイラ本体部の下部へ戻す。ボイラの外側には気水分離器7とボイラ本体の下部に接続している水位検出装置8を設けておき、水位検出装置8内の水位に基づいてボイラの給水制御を行う。水位検出装置8では、給水開始水位と給水停止水位での水の有無を検出するようにしており、水位の信号は運転制御装置5へ出力する。また、ボイラ内の圧力を検出する圧力計測装置9を設けておき、圧力計測装置9にて検出したボイラ内圧力の値も運転制御装置5へ出力する。
【0015】
運転制御装置5では、ボイラに設けている各機器の作動を制御することでボイラの運転を行う。運転制御装置5で行うボイラの給水制御は、水位検出装置8で検出しているボイラ内水位に基づいて行う。運転制御装置5では水位検出装置8から給水開始水位で水がないことの信号が入力されると、給水を行うことでボイラ内の水位を上昇させる。運転制御装置5が給水ポンプ2に対して作動指令の出力を行うと、給水ポンプ2は作動し、ボイラ給水をボイラへ押し込む。給水ポンプ2による給水速度は、ボイラ内の圧力によって異なる。ボイラでの運転は行っておらず、ボイラ内の圧力は低い状態で給水ポンプ2の作動を行った場合、単位時間当たりの給水量は多くなる。ボイラでは運転を行っており、蒸気の発生によって減少した水位を回復させる給水を行うという場合は、ボイラ内の圧力は高いために時間当たりの給水量は低下する。
【0016】
給水配管3を通して送られる給水量は流量計測装置4にて検出している。流量計測装置4は一定量の給水が行われることにパルス信号を発するものであるため、発信されたパルス信号の数をカウントすることによって積算での給水量を算出することができる。さらにパルス信号の発信間隔からは瞬時給水量を算出することもできる。瞬時給水量の算出は、例えば第1番目のパルス信号が発せられた時から、3番目のパルス信号が発せられるまでのパルス2回分の時間を計測しておき、計測した時間から瞬時の給水量を求める。給水1Lごとにパルス信号を発するものであって、1番目のパルス信号が発せられてから3番目のパルス信号が発せられるまでの時間が2秒であったとすれば、{60秒/(2秒/2回)}×1L=60であるため、この時間内における瞬間給水量は60L/分であると算出することができる。
【0017】
また、運転制御装置5では給水ポンプ2の能力低下を判断することも行っている。給水ポンプ2の能力低下の判断は、瞬時給水量、蒸気圧力、給水温度を計測し、計測した瞬時給水量を蒸気圧力と給水温度によって一定条件の瞬時給水量に換算しておき、換算瞬時給水量が閾値以下になっている場合、もしくは換算瞬時給水量が急激に低下している場合に給水ポンプの能力低下と判断する。ここで使用する瞬時給水量、蒸気圧力、給水温度の計測値は、一定の期間内において、蒸気圧力が最高値を更新した場合、また蒸気圧力が最高値であって瞬時給水量が最小となった時における瞬時給水量・蒸気圧力・給水温度の計測値とする。
【0018】
図2は一実施例での給水ポンプ能力低下判断を行うために使用する日間における瞬時給水量・蒸気圧力・給水温度を収集して保存するデータ収集プログラムのフローチャート、図3は本発明の一実施例での瞬時給水量算出のタイミングを説明するためのものである。
図2のフローチャートにおいて、最初のステップであるステップS1では、給水ポンプの作動を確認する。ここで給水ポンプが作動していない場合は、データの収集は行わない。なお、データ収集を行わない期間は、給水ポンプの作動開始直後であって給水ポンプの出力が安定していない場合も含むものであり、データ収集は瞬時給水量が安定した以降に行う。また、データの収集を行っている途中で給水ポンプの作動が停止した場合にもデータの収集は中止する。そのため、ステップS1で給水ポンプがON以外であれば、サブルーチン(1)に移り、サブルーチン(1)での処理にてパルス信号回数とタイマを初期化する。パルス信号回数はここで0回とし、タイマは停止するとともにタイマのクリアを行う。
【0019】
ステップS1にて給水ポンプが作動しており、給水が行われている場合には、給水ポンプ能力低下の判断を行うためのデータ収集に進み、次のステップであるステップS2で給水パルスのHトリガ(パルス信号の立ち上がり)を検出する。ここでHトリガ以外の場合はプログラム最初の(2)に戻ることでHトリガを待つ。Hトリガのタイミングに当たった場合はステップS3に進み、パルスのカウントを行う。パルスの回数は、これ以前でのパルス回数が0であれば1に増加、1であれば2に増加、2であれば3に増加する。またタイマが作動していなければステップS4でタイマをスタートさせておく。次のステップS5にてパルスのカウント数を確認し、パルスカウントが3回よりも小さい場合にはプログラム最初の(2)に戻る。パルスカウントが3回であった場合はステップS6に進む。
【0020】
ステップS6ではパルス回数を1回に変更する。ここでパルス回数を1回にするのは、図3に記載しているようにこのパルスを今回の流量測定での終点にすると同時に、次の流量測定での起点とするためである。このプログラムでは、1回目のパルスを発した時から3回目のパルスを発するまでの時間を計測するようにしているため、ここでパルス回数を1回に変更することで、この時のパルスが今回の流量測定での終点であって、かつ次回流量測定での起点となる。
【0021】
次のステップS7にて、パルスの1回目からパルスの3回目の間における瞬時給水量を算出する。流量の算出はタイマがミリ秒単位で計測するものであれば、瞬時給水量は「3600000/(タイマ時間/2)×1パルス分の給水量」によって、1時間当たりの流量を算出することができる。ステップS7にて瞬時給水量を算出するとステップS8にてタイマのクリアを行う。この場合もタイマの作動自体は継続しているため、タイマは一旦0になった後にカウントが進む。
【0022】
次のステップであるステップS9では、圧力計測装置9で検出している現蒸気圧力と保存領域に保存していた保存蒸気圧力の比較を行う。現蒸気圧力が保存蒸気圧力より小さいものであればデータの更新は行わず、プログラム最初の(2)に戻る。ここで現蒸気圧力と保存蒸気圧力が同じ、又は現蒸気圧力が保存蒸気圧力より大きいものであれば、次のステップであるステップS10に移る。
【0023】
ステップS10では、現状気圧力と保存蒸気圧力が同じ値であれば次はステップS11、そうでない、つまり現蒸気圧力が保存蒸気圧力より大きいものであればステップS12へ分岐する。
【0024】
ステップS11は、瞬時給水量を比較するものである。先のステップS7にて算出した瞬時給水量(流量)が保存しておいた瞬時給水量(保存流量)よりも大きいものであるかの比較を行う。算出瞬時給水量が保存瞬時給水量より大きいものであれば、データの更新は行わずにプログラムの最後まで進み、プログラムの最初の(2)に戻る。ここで算出瞬時給水量が保存瞬時給水量以下であれば、次のステップであるステップS12に移る。
【0025】
ステップS12では、ステップS7にて算出した瞬時給水量と現在の蒸気圧力をそれぞれ瞬時給水量と蒸気圧力として保存領域に更新保存する。ステップS12を実行するのは、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力値を超えていた場合と、計測した蒸気圧力値が保存領域の蒸気圧力値と同じであって、計測した瞬時給水量が保存領域の瞬時給水量以下であった場合となる。そのため、ここで保存する蒸気圧力は、それまで保存していた蒸気圧力以上の値となっている。蒸気圧力が高くなれば給水量は減少するため、蒸気圧がそれまで保存していた蒸気圧よりも高い場合には、瞬時給水量もそれまで保存していた値よりも小さくなっている。
【0026】
また、蒸気圧が同じであった場合には、瞬時給水量がより小さい値になった場合に保存しているため、その場合に保存する瞬時蒸気量も、それまで保存していた瞬時給水量以下の値となる。そのため、ここに保存される値は、集計期間での蒸気圧力の最高値であって瞬時給水量の最小値となる。データを1日単位で集計をするものとすれば、日間における最高蒸気圧力時での最小瞬時給水量を保存することになる。またステップS12では、給水温度の保存も行っている。この給水温度は保存データの更新を行った時、つまり最高蒸気圧力時での最小瞬時給水量となった時の給水温度となる。
【0027】
保存領域に保存したデータは、日替わり時など一定の周期で保存領域から判断用領域に移動させ、保存領域のデータはクリアする。保存データの初期値は、瞬時給水量は最大値、蒸気圧力と給水温度は0としており、データの移動後は初期値に戻す。
【0028】
給水ポンプの能力低下の判断は、判断用領域に移動させたデータに基づいて行う。ここで保存している瞬時給水量は、蒸気圧力が高いと低くなり、給水温度が高い場合にも低くなる。そのため、瞬時給水量の値は、蒸気圧力の値と給水温度の値を加味して換算した換算瞬時給水量を算出しておく。
【0029】
運転制御装置5には給水ポンプの能力低下を判断するための閾値を設定しておく。運転制御装置5は、先に算出した換算瞬時給水量がこの閾値以下になった場合には、給水ポンプの能力低下が発生していると判断する。また運転制御装置5では、当日の換算瞬時給水量と前日の換算瞬時給水量を比較することでも給水ポンプの能力低下を判断する。当日の換算瞬時給水量が前日の換算瞬時給水量に比べて、所定幅以上の急激な低下をしている場合にも給水ポンプの能力低下が発生していると判断する。運転制御装置5では給水ポンプ2の能力低下を検出すると、給水ポンプの能力が低下していることの報知を行う。
【0030】
このように給水ポンプの能力低下の判断は、最高蒸気圧力時での最小瞬時給水量によって行うようにし、給水温度でも補正するようにしていることで、一定の条件で給水ポンプの能力低下を判断することができる。そのため、蒸気圧力や給水温度に左右されずに瞬時給水量を比較することができ、正確な判断が可能である。
【0031】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ボイラ
2 給水ポンプ
3 給水配管
4 流量計測装置
5 運転制御装置
6 給水予熱装置
7 気水分離器
8 水位検出装置
9 圧力計測装置
10 給水温度計測装置
図1
図2
図3