【実施例】
【0041】
以下の実施例等により本発明を具体的に説明する。
実施例で使用した評価方法を以下に説明する。
【0042】
[安全性の評価]
(応答の型)
応答の型は以下に分類される。
I型の応答(爆轟):火薬事象の最も烈しい型。超音速分解反応(爆轟)がエネルギ物質中を伝播して周囲の媒体(例えば、空気、水)には強い衝撃を発生し、金属容器には超高速塑性変形とそれに伴う多くの破片生成を生じる。また、砲弾のあった地面または近くの地面には大きいクレータが見られ、隣接金属プレートの貫通孔、塑性変形、破片生成、近隣構造物の爆風過圧損傷、等の効果もある。
II型の応答(部分爆轟):火薬事象の2番目に烈しい型。エネルギ物質の全部ではないがその一部がI型の応答を起す。強い衝撃が起きて、容器の一部が壊れて小さい破片になり、地面にクレータができ得、隣接金属プレートにI型の応答と同じ損傷を生じ得、近隣構造物に爆風過圧損傷を生じる。II型の応答は、烈しい圧力破裂(脆性破壊)に似る、大きい容器破片を生じ得る。I型の応答と比較しての損傷の程度は、物質の爆轟した比律に依存する。
III型の応答(爆発):火薬事象の3番目に烈しい型。密閉されたエネルギ物質の発火と迅速燃焼が高い局部圧力上昇を発生して密閉構造に烈しい圧力破裂を誘起する。金属容器は大きい破片になり(脆性破壊)、遠くに飛ぶこともある。未反応エネルギ物質も飛散し、中には燃えながら飛ぶものもある。空気衝撃(air shock)が発生するので、これが近隣構造物を損傷することもある。火災と発煙の危害がある。爆風と高速破片が地面に小さいクレータを、隣接金属プレートに損傷(分割、裂け、溝状キズ)をつくり得る。爆風圧はI型やII型の応答よりも低い。
IV型の応答(爆燃):火薬事象の4番目に烈しい型。密閉されたエネルギ物質の発火と燃焼が、低強度容器や容器壁の通気口(差し込み口の隙間、点火カプセル、等々)に、弱い圧力放出を誘起する。容器は破裂するが、破片にはならない、オリフィス付き蓋が外れて未燃焼エネルギ物質が飛散して、中には燃えながら飛ぶものもある、火が広がる。圧力開放が固定されていない試験アイテムを推進させて二次危害を生じることもある。周囲に爆風効果や著しい破片損傷を生じることはなく、被害はエネルギ物質燃焼による熱と煙の被害だけである。
V型の応答(燃焼):火薬事象の最下位の烈しい型。エネルギ物質が発火して推進することなく燃える。容器は穏やかに裂けるが、熔融または弱化して燃焼ガスがゆっくり開放できるようになり、容器の蓋は内圧によって開く。殆どの残骸は火災現場に残る。残骸が兵員に致死的負傷を負わせることも、有害な破片が15m(49フィート)を超えて飛ぶことも考えられない。
反応なし。
【0043】
(スロークックオフ試験)
図6に示すように、実施例の安全性評価としては、装薬が銃撃されたこと場合を想定した反応性評価である銃撃感度試験を使用した。かかる銃撃感度試験は、STANAGに準拠した条件で実施した。
【0044】
(安全性評価の試験手順)
図7に示すように、金属容器に発射装薬を入れ、金属容器を固定し、金属容器の内部に圧力計を設置し、金属容器の中央を12.7mm弾で射撃した。
【0045】
(安全性の評価)
図8に示すように、最終反応後の破片数に応じて、以下の評価基準で安全性を評価した:
○:0個
△:1個
×:2個以上
(爆発圧の評価)
金属容器に発射装薬を入れ、底部にデジタル出力ができる圧力計を設置し、反応前後の最大圧力値を評価した。爆発圧は、比較例1を100%基準として、評価した。
図8に、試験結果の一例を示す。
火薬の燃焼速度は、組成(ニトログリセリン量等)や形状(表面積)で、使用用途に応じて調整されている。そのため、火薬の組成や形状を考慮して、燃焼速度シミュレーションを行い、容器内に発生する内圧を想定した。内装する発射装薬として、組成(トリプルベース)、形状(粒状)を用いた。
【0046】
[容器落下強度の評価]
(落下試験)
内容物の入った包装容器を規定の高さから自然落下させる試験を実施した。具体的には、包装容器の中に発射装薬を入れ、I-TOPによる既定の高さ(12m,2.1m,1.5m)と規定の角度(水平、垂直、斜め)になるように包装容器をセットして自然落下させ、落下後の状況を判断した。落下する地面はコンクリートに厚さ20mmの鉄板を敷いたものを使用した。落下後の装薬の運用性を判断した。例えば、長孔が長い包装容器は、変形し装薬が破壊され変形した箇所から内容物(火薬)が放出され危険である。弾薬用包装容器は、様々な条件下でも、安全に装薬を運搬できる構造でなければならない。落下試験は、運搬時の取扱い性の評価指標であり、以下の3つの基準がある:
12m落下によって、包装容器から内容物が飛散しないこと
2.1m落下後も、発射装薬を取りだすことができ、かつ安全に射撃ができること
1.5m落下後も、包装容器に所定の気密性(0.02MPaで空気リークなし)を有すること
(容器落下強度の評価)
以下の評価基準に従い、容器強度を評価した:
◎:上記3つの基準を十分に満足する
○:上記3つのいずれかの基準を満足するが、満足しない基準がある
×:基準を満足しないものがある
【0047】
[気密性の評価]
表1に示す予察試験では、気密性を強調評価するため、レーザー切削により隙間0.1mm〜3.0mmで、直線状に50mmの長孔を加工し、該長孔部に各種封止剤を入れ、容器に蓋をし、内圧を加え、封止部分から空気が漏れないことを確認した。表2に示す実施例では、レーザー切削により隙間0.1mmに表2に示す様々な脆弱部を加工し、該脆弱部に各種封止剤を入れ、容器に蓋をし、内圧を加え、封止部分から空気が漏れないことを確認した。以下の評価基準で気密性を評価した:
◎:0.3MPaでリークがないこと
○:0.02MPaでリークがないこと
△:0.02MPaで一部リークあり
×:常圧で剥れがある(常圧でも気密性がない)
【0048】
[運搬性の評価]
金属缶を車両に乗せる際、所定の治具を用いて積載し車両にて運搬する。更に車両から積み下ろし使用場所まで手動で運搬する。移動後金属缶から内容物を取り出す動作を実施し、既存品の運搬に対して違いがないか確認し評価した。
○:既存品と同様に運搬・運用が可能
△:既存品とは違う運搬治具が必要、又は運搬時接触等の注意が必要
【0049】
アルミテープとシリコン(接着剤)を以下の実施例で用いたが、以下の各種封止剤:ウレタン(系接着剤)、セルロース(系接着剤(セメダイン(登録商標))、エポキシ(系接着剤)、塗装剤を予め検討した。
【表1】
【0050】
[比較例1]
容器本体の筒部に長さ400mm隙間0.1mmの長孔を中央部リムを隔てて2個設けアルミテープで封止し、非開放式蓋で封止した容器の安全性、爆発圧、落下強度、気密性、運搬性を、低燃薬を用い上記評価試験により評価した。結果を以下の表2に示す。また、比較例1における爆発圧を100%基準とした。長孔の隙間は、0.8mm程度に広がり気密性が低下するがアルミテープにより補強封止されるため気密性は○、運搬時は、封止部がアルミテープであるため、接触に注意が必要となり運搬性は△、中央部リムが落下衝撃を吸収したため落下強度は○、安全性は○であった。
【0051】
[比較例2]
脆弱部の長さを150mmに代えたことを除き、比較例1と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。爆発圧が270%となり、気密性は○、運搬性は△、落下強度は〇、蓋部の飛翔及び、一部破片が発生したため安全性は△であった。
【0052】
[比較例3]
開放式蓋に代えたことを除き、比較例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。爆発圧が280%となり、気密性は○、運搬性は△、落下強度は〇、蓋部の飛散が抑えられ安全性は○であった。
【0053】
[実施例1]
容器本体の筒部に長さ400mm隙間0.1mmのスティッチ状脆弱部を中央部リムを隔てて2個設け、それぞれのスティッチ状脆弱部に、長孔1個当たりの長さ20mm、長孔間の接合部長さ1mmの長孔を線状に穿設したことを除き、比較例1と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。着弾の衝撃でスティッチ状脆弱部の接合部が破断し、比較例1同様の長孔を形成した後、内部反応が進行したため、爆発圧は100%であり、接合部を設けた事で、長孔の隙間が広がらないため、表1同様に気密性は◎、落下強度は◎となり、運搬性は△、安全性は比較例同様に〇であった。比較例1に比べ、気密性と落下強度が向上した。
【0054】
[実施例2]
封止剤をアルミテープからシリコン接着剤に代えたことを除き、実施例1と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。着弾の衝撃でスティッチ状脆弱部の接合部が破断したため、爆発圧は100%と変わらず、気密性は◎、運搬性は○、落下強度は◎、安全性は○であった。実施例1に比べて、運搬性が向上することが分かった。
【0055】
[実施例3]
スティッチ状脆弱部の接合部長さを1mmから2mmに高めたことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。着弾の衝撃でスティッチ状脆弱部の接合部が破断したため、爆発圧は変わらず、気密性は◎、落下強度は◎、安全性は○であり、運搬性が改善され○となった。
【0056】
[実施例4]
スティッチ状脆弱部の接合部長さを1mmから3mmに高めたことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。着弾の衝撃でスティッチ状脆弱部の接合部が破断したため、実施例2に比べて、爆発圧が100%と変わらず、実施例2同様の結果となった。
【0057】
[実施例5]
スティッチ状脆弱部の接合部長さを1mmから5mmに高めたことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。着弾の衝撃では、スティッチ状脆弱部の接合部が破断しなかったため、実施例2に比べて、爆発圧270%と増加し、蓋体が飛散したため、安全性が△となった。
【0058】
[実施例6]
蓋体を非開放式から開放式(ネジ式)の蓋体に代えたことを除き、実施例5と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。着弾の衝撃でスティッチ状脆弱部の接合部が破断しないため、爆発圧280%となるが、蓋体の飛散が抑制されたため、安全性が○となった。
【0059】
[実施例7]
スティッチ状脆弱部の長孔1個当たりの長さ60mm、長孔間の接合部長さ5mmの長孔を線状に穿設したことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。弾着の着弾の衝撃でスティッチ状脆弱部の接合部が破断しないが、実施例6に比べ接合部長さの合計が短いため、接合部に加わる応力が集中し破断しやすくなるため、爆発圧が125%に低下し、安全性が○となった。
【0060】
[実施例8]
スティッチ状脆弱部の長さを900mmに延長したことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。実施例2に比べて、爆発圧が95%に低下した。
【0061】
[実施例9]
中央リムを外したことを除き、実施例8と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。実施例8に比べて、圧力開放口が大きく開いたことで、爆発圧が80%に低下し、リムを外したことで落下強度が△に低下した。
【0062】
[実施例10]
本体スティッチ状脆弱部と同じ箇所の中央リムに本体同様の脆弱部を設けたことを除き、実施例8と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。実施例8に比べて、爆発圧が85%に低下した。
【0063】
[実施例11]
長孔の形状を直線から曲線に代えたことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。結果は実施例2と同様であった。
【0064】
[実施例12]
長孔の形状を直線からL字に代えたことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。結果は実施例2と同様であった。
【0065】
[実施例13]
長孔の形状を直線から斜めに代えたことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。結果は実施例2と同様であった。
【0066】
[実施例14]
スティッチ状脆弱部の両端の長孔の形状を直線から
図3のY字に代えたことを除き、実施例2と同様に試験した。結果を以下の表2に示す。実施例2に比べて、低圧力から圧力開放されたことで、爆発圧は70%に低下した。
【0067】
【表2】