【解決手段】板状部材361は、接触部3611と補強部3612とを有する。接触部3611は、第1材料で構成され、移動する像保持体31に接触してこの像保持体31を清掃する。補強部3612は、第1材料よりも硬度が高い第2材料で構成され、接触部よりも像保持体31が移動する方向の上流側でこの像保持体31と向かい合う位置に設けられてこの板状部材361を補強する。この板状部材3611は、接触部3611よりも像保持体31が移動する方向の下流側で、支持部材362により支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、板状部材において像保持体と接触する接触部が、他の部分を形成する材質と同じ材質か、その材質よりも硬度が高い材質で形成されている場合に比べて、その接触部の塑性変形を抑えるとともに、板状部材全体の弾性変形を抑えた清掃部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る清掃部材は、第1材料で構成され、移動する像保持体に接触して当該像保持体を清掃する接触部と、前記第1材料よりも硬度が高い第2材料で構成され、前記接触部よりも前記像保持体が移動する方向の上流側で当該像保持体と向かい合う位置に設けられて当該位置の表面を補強する補強部と、を備え、前記接触部よりも前記像保持体が移動する方向の下流側で支持部材により支持される。
【0006】
本発明の請求項2に係る清掃部材は、請求項1に記載の態様において、前記補強部は、前記接触部を有する板の表面のうち、当該接触部よりも前記上流側で前記像保持体に向かい合う位置の表面を前記第2材料で被覆して形成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項3に係る清掃部材は、請求項2に記載の態様において、前記補強部は、前記接触部を有する板の表面のうち、当該接触部よりも前記上流側で前記像保持体に向かい合わない位置の表面まで延びていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項4に係る清掃部材は、請求項1に記載の態様において、前記接触部の位置に前記第1材料を、前記補強部の位置に前記第2材料をそれぞれ配置して成型されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、上述の清掃部材と、前記清掃部材を、前記接触部よりも前記像保持体が移動する方向の下流側で支持する支持部材と、接触された部位に付着した物質を前記清掃部材によって清掃される像保持体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1、5に係る発明によれば、板状部材において像保持体と接触する接触部の塑性変形を抑えるとともに、板状部材全体の弾性変形を抑えることができる。
請求項2に係る発明によれば、補強部を被覆することで形成することができる。
請求項3に係る発明によれば、板状部材の接触角を大きくた場合にも、接触部の塑性変形を抑えるとともに、板状部材全体の弾性変形を抑えることができる。
請求項4に係る発明によれば、接触部の塑性変形を抑えるとともに、板状部材全体の弾性変形を抑えた板状部材を一体成型することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態
1−1.画像形成装置の全体構成
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構造を説明する。図において、画像形成装置1の各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、−y方向、z軸方向、+z方向、−z方向を定義する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、現像部13と、転写部14と、定着部15と、搬送部16とを有している。
搬送部16は、容器と搬送ロールとを有する。容器には媒体としての用紙Pが収容される。容器に収容されている用紙Pは、図示しない制御部の指示により搬送ロールによって1枚ずつ取り出され、用紙搬送路を経由して転写部14へと搬送される。なお、媒体は用紙に限らず、例えば樹脂製のシートなどであってもよい。要するに、媒体は、表面に画像を記録し得るものであればよい。
【0014】
現像部13は、像保持体31と、帯電器32と、露光装置33と、現像装置34と、一次転写ロール35と、ドラムクリーナ36とを有している。像保持体31は、電荷発生層や電荷輸送層を有する感光体ドラムであり、図示しない駆動部により
図1のx軸方向に沿って配置された軸を中心に矢線D13の方向に回転させられる。帯電器32は像保持体31の表面を帯電させる。露光装置33はレーザ発光源やポリゴンミラーなど(いずれも図示せず)を有し、図示しない制御部の制御の下、画像データに応じたレーザ光を、帯電器32により帯電させられた後の像保持体31に向けて照射する。これにより、像保持体31には潜像が保持される。
【0015】
なお、上記の画像データは、画像形成装置1が図示しない通信部を介して外部装置から取得したものであってもよい。外部装置とは、例えば原画像を読み取る読取装置や画像を示すデータを記憶した記憶装置などである。現像装置34は現像剤を像保持体31に供給する。これにより像保持体31には、画像が形成(現像)される。
【0016】
一次転写ロール35は転写部14の中間転写ベルト41が像保持体31と対向する位置において予め定めた電位差を生じさせ、この電位差によって中間転写ベルト41に画像を転写する。ドラムクリーナ36は、画像の転写後に像保持体31の表面に残留している未転写のトナーを取り除き、像保持体31の表面を除電する。
【0017】
転写部14は、中間転写ベルト41と、二次転写ロール42と、ベルト搬送ロール43と、バックアップロール44と、ベルトクリーナ49とを有しており、現像部13によって形成された画像を用紙Pに転写する。ベルト搬送ロール43およびバックアップロール44は
図1のx軸方向に沿って配置された軸を中心に回転可能にそれぞれ配置されている。中間転写ベルト41は無端のベルト部材であり、ベルト搬送ロール43およびバックアップロール44によって張架される。
【0018】
ベルト搬送ロール43およびバックアップロール44の少なくとも1つには駆動部(図示せず)が備えられており、中間転写ベルト41を
図1の矢印D14方向に移動させる。なお、駆動部を有しないベルト搬送ロール43またはバックアップロール44は、中間転写ベルト41の移動に伴って回転する。中間転写ベルト41が
図1の矢印D14方向に移動して回転することにより、中間転写ベルト41上の画像は、二次転写ロール42とバックアップロール44とに挟まれる領域に移動させられる。
【0019】
二次転写ロール42は、中間転写ベルト41との電位差によって、中間転写ベルト41上の画像を搬送部16から搬送されてきた用紙Pに転写させる。ベルトクリーナ49は、中間転写ベルト41の表面に残留している未転写のトナーを取り除く。そして、転写部14または搬送部16は、画像が転写された用紙Pを定着部15へと搬送する。定着部15は、加熱によって用紙Pに転写された画像を定着させる。
【0020】
1−2.ドラムクリーナの構成
図2は、ドラムクリーナ36の構成を示す図である。
図2に示すように、ドラムクリーナ36は、ケース360、板状部材361、および支持部材362を有する。ドラムクリーナ36は、他に像保持体31の表面を除電する機構やその表面に潤滑剤を供給する機構などを有していてもよい。
【0021】
ケース360は、像保持体31に対向する側に開口部3600を有する筐体であり、支持部材362を有する。支持部材362は、一端をケース360内部に固定されており、その自由端で板状部材361の一端を支持し、当該板状部材361の他端がケース360の開口部3600から露出される。支持部材362に支持される板状部材361は、決められた圧力および決められた角度(以下、接触角度θという)で像保持体31に対して接触する。
【0022】
図3は、板状部材361の構造を説明するための図である。板状部材361が像保持体31に接触する点は接触点P0である。接触点P0は、像保持体31の表面のどこであってもよいが、ここでは最も+y方向の点とする。接触角度θは、像保持体31の接触点P0における接平面F0と、板状部材361が伸びる方向との角度である。接触角度θは鋭角、すなわち直角よりも小さい角度である。
【0023】
接触点P0から伸びる接平面F0の法線Nは、接触点P0が像保持体31の表面のうち最も+y方向の点であるため、+y方向に沿った線である。法線Nは、ドラムクリーナ36の配置された領域を、像保持体31の回転方向である矢線D13の上流側の領域R1と、下流側の領域R2とに区分する。接触点P0において、矢線D13は+z方向であるため、領域R1は、接触点P0よりも−z方向にあり、領域R2は、接触点P0よりも+z方向にある。
【0024】
板状部材361は、本発明における清掃部材の一例である。板状部材361は、板状のクリーニングブレードであり、接触部3611と、補強部3612と、被支持部3613とを有する。接触部3611と被支持部3613とは一枚の板を構成する。この板は、熱硬化性樹脂などの材料のうち異なる材料を鋳型に収容し、決められた温度と圧力をかけることによって成型されている。接触部3611を構成する材料を第1材料という。
【0025】
接触部3611は、接触点P0で像保持体31に接触して像保持体31の表面に付着したトナーなどの物質を除去する。板状部材361の接触部3611によって掻き落とされた上記の物質はケース360に収容されメンテナンスの際に画像形成装置1から取り除かれる。接触部3611は、第1材料で構成され、移動する像保持体に接触してこの像保持体を清掃する接触部の一例である。
【0026】
被支持部3613は、上述した板のうち接触部3611を除く部位であり、支持点P2において支持部材362により支持される。支持点P2は、接触点P0よりも像保持体31の回転方向の下流側である領域R2に位置する。
図3において支持点P2は、板状部材361の表面のうち、像保持体31に向かい合わない側の表面(以下、背面F3という)にある。
【0027】
なお、支持点P2は、領域R2に存在するのであれば、
図3に破線で示すように、板状部材361の表面のうち、像保持体31に向かい合う側の表面(以下、表面F2という)にあってもよい。つまり、板状部材361は、接触部3611よりも像保持体31が移動する方向の下流側で支持部材362により支持されればよい。
また、支持部材362は、板状部材361を、x軸方向の全てにわたって支持しなくてもよい。例えば、支持部材362は、x軸方向の両端においてyz平面上における支持点P2と重なる2点を支持してもよい。
【0028】
支持点P2が領域R2にあるため、支持点P2から接触点P0に向かうベクトルには、接触点P0において矢線D13に対抗する成分(この場合、−z方向の成分)が含まれる。支持点P2が支持部材362により支持されて、板状部材361の接触部3611がこのベクトルに沿って像保持体31の表面の接触点P0を押すため、板状部材361は、いわゆるカウンター方式で像保持体31の表面を清掃する。
【0029】
補強部3612は、上述した板の表面の一部をコーティングしたものである。具体的に、補強部3612は、この板の先端側の面であって、接触点P0よりも矢線D13の上流側に設けられている。補強部3612の材料は、接触部3611の材料である第1材料よりも硬度が高い第2材料である。すなわち、補強部3612は、上述した板の表面のうち、接触部3611よりも上流側で像保持体31と向かい合う位置の表面(以下、表面F1という)を、第1材料よりも硬度の高い第2材料で被覆して形成される。第2材料は例えば樹脂である。
【0030】
補強部3612は、決められた温度で液状となった第2材料を表面F1に塗布し、昇温して乾燥、固化させることで形成される。上述した板のうち、矢線D13における最も上流側の点を端点P1という。
図3において、補強部3612は、表面F1を端点P1まで被覆している。
【0031】
なお、上述した被支持部3613を構成する第3材料は、硬度が第2材料よりも低いものでよい。また、補強部3612は、表面F1にのみ形成されていたが、
図3に破線で示すように、表面F1から端点P1を超えて背面F3にまで延びていてもよい。
【0032】
1−3.従来のドラムクリーナとの比較
本発明の画像形成装置1が有するドラムクリーナ36と、従来のドラムクリーナとを比較する。
図4は、従来のドラムクリーナの構造を説明するための図である。このドラムクリーナは、板状部材961と支持部材962とを有する。支持部材962は、板状部材961を支持することを除き、本発明の支持部材362と共通する構成である。板状部材961は、単一の材質で構成された一枚の板である。
【0033】
板状部材961は、像保持体31と接触点P0で接触しており、摩擦力によって接触している部位が矢線D13の下流側へ引っ張られる。板状部材961は、表面F1に補強部3612を有していない。そのため、表面F1は、補強部3612により被覆されている場合に比べて延び易く、板状部材961は、
図4に示すように変形することがある。この変形を「捲り」という。
【0034】
板状部材961に捲りが生じると、板状部材961によって清掃される、像保持体31の部位が不安定になり、像保持体31の汚れが取りきれなかったり、清掃の程度にムラが生じたりすることとなる。また、異音が発生したり、像保持体31の表面が傷ついたりする不具合が生じる可能性もある。
【0035】
図5は、板状部材の捲りについて説明するための図である。
図5において、破線は変形前を表し、実線は変形後を表す。
図5(a)に示すように、補強部3612を有しない板状部材961は、先端の表面F1のうち、他の部材によって補強されていない部分の長さである「自由長」がL91である。一方、補強部3612を有する板状部材361は、上記の「自由長」が補強部3612によって補強された部分を除くためL1である。L91はL1よりも長い。
【0036】
そのため、各板状部材が像保持体31に接触する部位における弾性変形を比較すると、従来の板状部材961の方が、本発明に係る板状部材361よりも大きく変形すると推察される。像保持体31により+z方向に力が働いて、従来の板状部材961では、自由長がL91であるため、z軸方向に沿って変形する変形量はL92となる。一方、本発明に係る板状部材361の場合、自由長がL91よりも短いL1であるから、z軸方向に沿って変形する変形量は、L92よりも短いL2となると考えられる。すなわち、補強部3612を有することにより、本発明に係る板状部材361は、全体として弾性変形が抑えられるため、従来に比べて捲りが生じ難く、上述した不具合が生じる可能性が抑制される。
【0037】
また、板状部材361は、像保持体31と接触する接触部3611は、第2材料よりも硬度の低い第1材料で形成されているため、第2材料を使用した場合に比べて塑性変形が少なく、クリーニング力が低下し難い。
【0038】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0039】
2−1.変形例1
上述した実施形態において、画像形成装置1は、現像部13を1つだけ有していたが、複数の現像部13を有していてもよい。この場合、画像形成装置1は、複数の現像部13のそれぞれに、対応する像保持体31と、帯電器32と、露光装置33と、現像装置34と、一次転写ロール35と、ドラムクリーナ36とを有していればよい。また、複数の現像部13は、それぞれ異なる色のトナー像を形成してもよい。この場合、中間転写ベルト41に異なる色のトナー像が重ねて転写され、用紙Pなどの媒体にカラー画像が形成される。
【0040】
2−2.変形例2
上述した実施形態において、板状部材361は、ドラムクリーナ36に用いられていたが、ベルトクリーナ49に用いられてもよい。この場合、板状部材361は、像保持体31に代えて中間転写ベルト41に付着した物質を除去すればよい。なお、像保持体31および中間転写ベルト41は、いずれも媒体に形成される像を保持する像保持体の一例である。
【0041】
2−3.変形例3
上述した実施形態において、接触部3611と被支持部3613とは異なる材料で構成されていたが、共通の材料で構成されていてもよい。要するに、接触部3611を構成する第1材料よりも硬度が高い第2材料で補強部3612が構成されていればよい。
【0042】
2−4.変形例4
上述した実施形態において、補強部3612が設けられるx軸方向の位置について言及していないが、補強部3612は、板状部材361のx軸方向の全面に設けられていなくてもよい。例えば、予め、像保持体31の表面のうち、x軸方向においてトナーが残りやすい部分に対応する板状部材361の表面F1に設けられてもよい。
【0043】
2−5.変形例5
上述した実施形態において、補強部3612と接触部3611とは、別体として形成されていたが、一体として成型されてもよい。
図6は、補強部と接触部とを一体として成型された板状部材(清掃部材)の一例を示す図である。
図6に示す板状部材361aは、接触部3611a、補強部3612a、および被支持部3613aを有する。支持部材362は、板状部材361aを支持点P2において支持する。
【0044】
板状部材361aは、
図6に示す接触部3611aの位置に第1材料を、補強部3612aの位置に第2材料をそれぞれ配置して一体として成型されている。この場合でも、補強部3612aは、表面F1を端点P1まで被覆しているので、この補強部3612aを有しない場合に比べて、上述した「自由長」が短いから、像保持体31に接触する部位における弾性変形は、小さくなることが推察される。