【解決手段】光源装置1は、励起光を出射する励起光源10と、励起光源10から出射された励起光を反射する反射層30fと、励起光を蛍光光に変換する蛍光体層30eとが周方向に並設された回転制御可能な蛍光板30と、励起光及び蛍光光を表示素子3に導くためのダイクロイックミラー43とを備えている。反射層30fの表面側には励起光の偏光方向を変える偏光変換層が設けられている。ダイクロイックミラー43は、励起光源10から出射された励起光を蛍光板30に向けて反射し、当該反射の後に蛍光体層30eで変換された蛍光光を透過するとともに、偏光変換層を通過して反射層30fで反射されることで位相が変換された励起光も透過する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0009】
図1は投影装置100の平面図である。
投影装置100は光源装置(時分割光発生装置、シーケンシャルカラー発生装置)1、光源側光学系2、表示素子3及び投影光学系4等を備える。
【0010】
光源装置1は、出射光を互いに異なる複数色の光に時間で分割して、それら複数色の光を順次出射する。具体的には、光源装置1は赤色光、緑色光及び青色光を所定の順序で繰り返し出射するものである。光源装置1は、1周期あたり赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ少なくとも一回照射する。1周期は、表示素子3によって1フレームのカラー映像が生成される期間である。
【0011】
光源側光学系2は、光源装置1から出射された赤色光、緑色光及び青色光を表示素子3に投射する。光源側光学系2はインテグレータ光学素子2a、レンズ2b、光軸変換ミラー2c、レンズ群2d、照射ミラー2e及びフィールドレンズ2fを有する。このうちフィールドレンズ2fは光源側光学系2と投影光学系4に兼用される。
【0012】
インテグレータ光学素子2aは例えばライトトンネル又はライトロッドである。インテグレータ光学素子2aは、光源装置1によって出射された赤色光、緑色光及び青色光を側面で複数回反射又は全反射させることで、赤色光、緑色光及び青色光の強度分布(光軸に垂直な面内における強度分布)を均一にする。レンズ2bは、インテグレータ光学素子2aによって強度が均等分布化された赤色光、緑色光及び青色光を光軸変換ミラー2cに向けて投射するとともに、集光する。光軸変換ミラー2cは、レンズ2bによって投射された赤色光、緑色光及び青色光をレンズ群2dに向けて反射させる。レンズ群2dは、光軸変換ミラー2cによって反射された赤色光、緑色光及び青色光を照射ミラー2eに向けて投射するとともに、集光する。照射ミラー2eは、レンズ群2dによって投射された光を表示素子3に向けて反射させる。フィールドレンズ2fは、照射ミラー2eによって反射された光を表示素子3へ投射する。
【0013】
表示素子3は空間光変調器であり、光源側光学系2によって照射された赤色光、緑色光及び青色光を各画素で変調することによって映像が生成される。表示素子3が1周期当たりに1フレームのカラー映像を生成し、1フレームのカラー映像が赤色映像、緑色映像及び青色映像に時間で分割される。つまり、表示素子3が1周期当たりに赤色映像、緑色映像及び青色映像をそれぞれ少なくとも一回生成し、1周期に形成された赤色映像、緑色映像及び青色映像を時間で合成したものが1フレームのカラー映像に相当する。
【0014】
表示素子3の周期と光源装置1の周期とが等しい。表示素子3の周期は、1フレームのカラー映像が生成される周期に相当する。つまり、表示素子3の周期は、表示素子3によって赤色映像、緑色映像及び青色映像がそれぞれ少なくとも一回生成される周期に相当する。
光源装置1によって赤色光が出射される期間に同期して、表示素子3が赤色の映像を生成する。光源装置1によって緑色光が出射される期間に同期して、表示素子3が緑色の映像を生成する。光源装置1によって青色光が出射される期間に同期して、表示素子3が青色の映像を生成する。
【0015】
表示素子3は、二次元アレイ状に配列された複数の可動マイクロミラー等を有するデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)である。表示素子3はドライバーによって駆動される。つまり、赤色光が表示素子3に照射されている時に、表示素子3の各可動マイクロミラーが制御(例えば、PWM制御)されることで、赤色光が投影光学系4に向けて反射される時間比(デューティー比)が可動マイクロミラー毎に制御される。これにより、表示素子3によって赤色の映像が生成される。緑色光や青色光が表示素子3に照射されている際も、同様である。
【0016】
なお、表示素子3が反射型の空間光変調器ではなく、透過型の空間光変調器(例えば、液晶シャッターアレイパネル:いわゆる液晶表示器)であってもよい。表示素子3が透過型の空間光変調器である場合、光源側光学系2の光学設計を変更し、光源側光学系2によって照射される赤色光、緑色光及び青色光の光軸が後述の投影光学系4の光軸に重なるようにして、投影光学系4と光源側光学系2との間に表示素子3を配置する。
【0017】
投影光学系4は複数枚のレンズからなるレンズ列である。投影光学系4は表示素子3に対向するように設けられ、投影光学系4の光軸が前後に延びて表示素子3に交差する。投影光学系4は、表示素子3によって反射された光を前方に投射することによって、表示素子3によって生成された映像をスクリーンに投影する。この投影光学系4は可動レンズ群4a及び固定レンズ群4b等を備える。投影光学系4は、可動レンズ群4aの移動によって、焦点距離が変更可能であるとともに、フォーカシングが可能である。
【0018】
以下、光源装置1について具体的に説明する。光源装置1は、励起光源10と、スピンドルモーター20と、蛍光板30と、光路光学系40とを備える。
励起光源10は、平行光であるS偏光の青色光(励起ビーム)を発する例えば青色レーザーダイオード等の半導体発光素子である。励起光源10によって発せられた青色光は、互いに平行に進行する複数の青色光線の束である。励起光源10によって発せられた青色光は、後述の蛍光体層30eを励起するものである。
【0019】
蛍光板30が円板状に設けられ、蛍光板30の中心がスピンドルモーター20の駆動軸に連結されている。蛍光板30は、スピンドルモーター20によって回転制御が可能となっている。
【0020】
図2は蛍光板30の概略構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2に示すように、蛍光板30は周方向に沿う3つのセグメント、第一セグメント30aと第二セグメント30bと第三セグメント30cとに分けられている。ここで、第一セグメント30a及び第二セグメント30bが蛍光領域であり、第三セグメント30cが光拡散透過領域である。
【0021】
蛍光板30には、蛍光体層30e及び反射層30f等が設けられている。蛍光板30の形状を大づかみに捉えた際の蛍光板30の骨格的形状は円板である。蛍光板30の中心にスピンドルモーター20の駆動軸が直結されている。スピンドルモーター20の駆動軸がインテグレータ光学素子2aの光軸に対して平行であり、蛍光板30がインテグレータ光学素子2aの光軸に対して直交する。
【0022】
蛍光体層30e及び反射層30fは、蛍光板30の表面で周方向に並設されている。なお、周方向とは、スピンドルモーター20の駆動軸を中心とした円周方向をいい、軸方向とは、スピンドルモーター20の駆動軸が延びる方向をいう。
【0023】
蛍光体層30eは、励起光源10によって発せられた青色光によって励起され、蛍光光を発するものである。蛍光体層30eは蛍光板30の表側の面に形成されている。
そして、蛍光体層30eと蛍光板30の接合界面が鏡面仕上げされ、蛍光体層30eから発した蛍光光の利用効率が向上している。
【0024】
軸方向に見て、蛍光体層30e及び反射層30fは周方向に延びるように円弧帯状に形成されている。蛍光体層30eと反射層30fが周方向に並設され、蛍光体層30eと反射層30fとが同一回転軌道上にある。つまり、軸方向に見て、蛍光体層30eと反射層30fとは、スピンドルモーター20の駆動軸を中心とした同一円周上に配置されている。この蛍光体層30eが形成された部位が第一セグメント30a及び第二セグメント30bに相当する。
【0025】
また、反射層30fの表面側には拡散透過板からなる拡散層30gと、1/4波長板からなる1/4波長層(偏光変換層)30hとが積層されている。拡散層30gが反射層30f側であり、1/4波長層30hが表面側に配置されている。この拡散層30g及び1/4波長層30hが積層された反射層30fが第三セグメント30cに相当する。
励起光源10が点灯している時に第三セグメント30cが青色光の光軸を通過すると、青色光は、1/4波長層30hで波長の位相が1/4だけ変換された状態で拡散層30gを通過して拡散され反射層30fで反射される。反射された青色光は、さらに拡散層30gを通過して拡散され、1/4波長層30hを通過することでさらに波長の位相が1/4だけ変換される。つまり、S偏光の青色光は第三セグメント30cを往復通過することで波長の位相が1/2変換され、P偏光の青色光となることになる。
【0026】
また、蛍光体層30eのうち、第一セグメント30aに相当する部分は緑色蛍光体層であり、青色光によって励起され緑色光を発する。また、蛍光体層30eのうち、第二セグメント30bに相当する部分は赤色蛍光体層であり、青色光によって励起され赤色光を発する。
【0027】
光路光学系40は、励起光源10から照射された青色光を蛍光板30に向け、蛍光板30から発せられた赤色光、緑色光及び青色光を同一光路に合成する。
【0028】
光路光学系40は、レンズ41,42と、ダイクロイックミラー43を有する。
レンズ41は、当該レンズ41の光軸がインテグレータ光学素子2aの光軸と同軸となるように蛍光板30とダイクロイックミラー43との間に設けられている。
また、レンズ42は、当該レンズ42の光軸がインテグレータ光学素子2aの光軸と同軸となるようにダイクロイックミラー43とインテグレータ光学素子2aとの間に配置されている。
【0029】
ダイクロイックミラー43は、励起光源10の光軸上であって、インテグレータ光学素子2aの光軸上に配置されている。ダイクロイックミラー43は、所定帯域の光(青色光)を反射し、その所定帯域外の光(赤色光、緑色光)を透過させる。つまり、ダイクロイックミラー43は、励起光源10から出射されたS偏光の光の50%以上を反射し、1/4波長層30hを通過して反射層30fで反射されることで位相が変換されたP偏光の光の50%以上を透過する。
【0030】
図3は、ダイクロイックミラー43の分光特性を示す説明図である。
ダイクロイックミラー43のS偏光反射率R1とP偏光反射率R2とは
図3に示す通りである。このため、ピーク波長が445nmの青色光BがS偏光である場合にはダイクロイックミラー43は青色光Bを反射し、波長445nmの青色光BがP偏光である場合にはダイクロイックミラー43は青色光Bを透過する。そして、赤色光や緑色光は青色光Bよりも波長が大幅に長いために、これらの色光はS偏光或いはP偏光であってもダイクロイックミラー43を透過する。
つまり、ダイクロイックミラー43は、励起光源10から出射された励起光(S偏光の青色光)を蛍光板30に向けて反射し、当該反射の後に蛍光体層30eで変換された蛍光光(赤色光及び緑色光)を透過するとともに、1/4波長層30hを通過して反射層30fで反射されることで位相が変換された励起光(P偏光の青色光)も透過する。
【0031】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、励起光源10から照射されダイクロイックミラー43に到達したS偏光の青色光B1は、ダイクロイックミラー43により反射されてレンズ41及び蛍光板30に向かって進行する。
蛍光板30に到達した青色光B1のうち、第一セグメント30aに到達した光は当該第一セグメント30aを励起して緑色光Gとなってレンズ41及びダイクロイックミラー43に向かって進行する。ダイクロイックミラー43では、緑色光Gは透過されて、後段の光学系を通過して表示素子3に到達する。
また、蛍光板30に到達した青色光B1のうち、第二セグメント30bに到達した光は当該第二セグメント30bを励起して赤色光Rとなってレンズ41及びダイクロイックミラー43に向かって進行する。ダイクロイックミラー43では、赤色光Rは透過されて、後段の光学系を通過して表示素子3に到達する。
ここで、第一セグメント30a及び第二セグメント30bに到達した光は、励起されることなくその表面でS偏光の青色光B1のまま反射されるが、ダイクロイックミラー43ではS偏光の青色光B1は透過されないために後段の光学系に向かうことはなく、緑色光Gや赤色光Rに青色光B1が混入してしまうことが抑制される。
【0032】
他方、蛍光板30に到達した青色光B1のうち、第三セグメント30cに到達した光は、1/4波長層30hで波長の位相が1/4だけ変換された状態で拡散層30gを通過して拡散され反射層30fで反射される。反射された青色光は、さらに拡散層30gを通過して拡散され、1/4波長層30hを通過することでさらに波長の位相が1/4だけ変換されP偏光の青色光B2となることになる。
P偏光の青色光B2は、レンズ41及びダイクロイックミラー43に向かって進行する。ダイクロイックミラー43では、P偏光の青色光B2は透過されて、後段の光学系を通過して表示素子3に到達する。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、反射層30fの表面側に1/4波長層30hが設けられているので、反射の前後で1/4波長層30hを往復通過した励起光は、その位相が1/2変換されることになる。なお、蛍光体層30eと第三セグメント30cの裏面側全面が反射板であれば、反射層30fは無くても構わない。
そして、ダイクロイックミラー43では、蛍光光(緑色光G及び赤色光R)とともに、位相が1/2変換された励起光(P偏光の青色光B2)も透過されるが、蛍光体層30eの表面で反射し、位相が変換されていないS偏光の青色光B1はダイクロイックミラー43を透過しない。したがって、緑色光Gや赤色光Rに青色光B1が混入してしまうことが抑制され、色再現性を向上させることができる。
【0034】
また、蛍光体層30eには、赤色蛍光体層(第二セグメント30b)と緑色蛍光体層(第一セグメント30a)とが周方向に並設して設けられているので、1つの蛍光板30で青色光B1を赤色光R及び緑色光Gに変換することができる。
【0035】
また、反射層30fと1/4波長層30hとの間に、透過する光を拡散する拡散層30gが介在しているので、この拡散層30gを通過する励起光を拡散させることができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0037】
〔付記〕
<請求項1>
励起光を出射する励起光源と、
前記励起光源から出射された前記励起光を反射する反射層と、前記励起光を蛍光光に変換する蛍光体層と、が周方向に並設された回転制御可能な蛍光板と、
前記励起光及び前記蛍光光を表示素子に導くためのダイクロイックミラーと、
を備え、
前記反射層の表面側には、前記励起光の偏光方向を変える偏光変換層が設けられており、
前記ダイクロイックミラーは、
前記励起光源から出射された励起光を前記蛍光板に向けて反射し、当該反射の後に前記蛍光体層で変換された前記蛍光光を透過するとともに、前記偏光変換層を通過して前記反射層で反射されることで位相が変換された前記励起光も透過することを特徴とする光源装置。
<請求項2>
請求項1記載の光源装置において、
前記偏光変換層は1/4波長層であり、
前記励起光源は、前記ダイクロイックミラーに対して主たる偏光成分がS偏光となる励起光源を出射し、
前記ダイクロイックミラーは、
前記励起光源から出射されたS偏光の光の50%以上を反射し、
前記偏光変換層を通過して前記反射層で反射されることで位相が変換されたP偏光の光の50%以上を透過することを特徴とする光源装置。
<請求項3>
請求項1又は2記載の光源装置において、
前記蛍光体層には、赤色蛍光体層と緑色蛍光体層が周方向に並設して設けられていることを特徴とする光源装置。
<請求項4>
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記反射層と前記偏光変換層との間には、透過する光を拡散する拡散層が介在していることを特徴とする光源装置。
<請求項5>
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記表示素子と、
前記ダイクロイックミラーを透過した光を前記表示素子に導光する光源側光学系と、
前記表示素子から出射された画像をスクリーンに投影する投影光学系とを備えることを特徴とする投影装置。