(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-227936(P2015-227936A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/04 20060101AFI20151120BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20151120BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
G03G15/04
G02B26/10 F
B41J2/47 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-113073(P2014-113073)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】益田 宜尚
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 丈嗣
【テーマコード(参考)】
2C362
2H045
2H076
【Fターム(参考)】
2C362AA03
2C362AA43
2C362AA44
2C362AA45
2C362AA46
2C362BA04
2C362BB03
2H045DA02
2H045DA04
2H076AB05
2H076AB09
2H076AB12
2H076AB81
2H076EA05
(57)【要約】
【課題】温度変化の大きい環境においても、印刷精度を維持することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】実施形態の画像形成装置は、光走査装置と、作像ユニットとを有する。また光走査装置は、筐体と、保持部と、接合部と、光学系とを有する。筐体は、レーザダイオードを側壁に有し、樹脂製である。保持部は、筐体よりも線膨張係数の小さい材料で形成されており、筐体の前記レーザダイオードが固定されている側壁に固定されて、レーザダイオードからの照射光を入光するコリメータレンズを固定する。接合部は、筐体と保持部とを接合する。光学系は、レーザダイオードから照射される光を、コリメータレンズを経由して感光体まで導く。また作像ユニットは、光走査装置からの光により感光体に形成される像を、シート上に形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードを有する、樹脂製の筐体と、
前記筐体よりも線膨張係数の小さい材料で形成されており、前記筐体の壁に設けられ、前記レーザダイオードからの照射光を入光するコリメータレンズを固定する保持部と、
前記筐体と前記保持部とを接合する接合部と、
を有する光走査装置と、
前記光走査装置からの光により前記感光体に形成される像を、シート上に形成する作像ユニットと、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記保持部は、前記コリメータレンズを固定する部位が上方に向けて開口しており、前記コリメータレンズと固着する先端部が、外側に広がっており、斜め下方向から前記コリメータレンズを支持する。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記保持部は、前記筐体の材料よりも反射率の高い材料である。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記保持部は、アルミニウム製である。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記筐体は、前記保持部の固定位置を定めるための孔部を有し、
前記保持部は、前記孔部に嵌合する、位置決め用の突出部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、感光体にレーザ照射することで、シート上に像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置内に設置される光走査装置のレーザユニットを保持する保持部は、部品コストの低減を図るため、樹脂製となっている。従来のレーザユニットは、樹脂筐体と一体となって製造される保持部に、レーザダイオードからのレーザ光を入光するコリメータレンズが固定されている。コリメータレンズは、接着剤の接着力により保持部に固着されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
筐体材料を樹脂とする場合、通常、保持部も含めてフィラー等で強化された樹脂を材料に用いる。の製造時には通常、射出成型が用いられるので、材料流動により生じるフィラー配向に起因した異方性や、成形密度のかたよりなどが生じる。これにより、実際の筐体の線膨張係数が材料のカタログ値の線膨張整数と異なってしまう。樹脂筐体および保持部が温度に応じて収縮、膨張すると、レーザダイオードとコリメータレンズとの間の距離が変化する。すなわち、低温環境では保持部の収縮により、レーザダイオードとコリメータレンズとの間の距離が狭まる。一方、高温環境では、保持部が膨張するためレーザダイオードとコリメータレンズとの間の距離が広がる。よって、筐体と保持部を樹脂とする場合、レーザダイオードとコリメータレンズ間の距離の温度による変化が、光学設計段階で想定しているレーザダイオードとコリメータレンズ間の距離の変化許容を超えてしまう。このことから、光走査装置の組立調整が行われる環境との温度差が大きい環境では、必要な光学性能を得ることができない。
【0004】
実施形態は、温度変化の大きい環境においても、印刷精度を維持することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の画像形成装置は、光走査装置と、作像ユニットとを有する。また光走査装置は、筐体と、保持部と、接合部と、光学系とを有する。筐体は、レーザダイオードを側壁に有し、樹脂製である。保持部は、筐体よりも線膨張係数の小さい材料で形成されており、筐体のレーザダイオードが固定されている側壁に固定されており、レーザダイオードからの照射光を入光するコリメータレンズが接着固定されている。接合部は、筐体と保持部とを接合する。光学系は、レーザダイオードから照射される光を、コリメータレンズを経由して感光体まで導く。また作像ユニットは、光走査装置からの光により感光体に形成される像を、シート上に形成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】実施形態の光走査装置の構成例を示す図である。
【
図4】実施形態のレーザユニットの断面図および平面図である。
【
図5】実施形態の保持部の組み込み方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本実施形態における画像形成装置(MFP:Multi-Function Peripheral)の縦断面図である。画像形成装置100は、画像読取部110および画像形成部120を備える。画像読取部110は、シート原稿およびブック原稿の画像をスキャンして読み取る。画像形成部120は、画像読取部110により原稿から読み取られた画像や、外部機器から画像形成装置100に送信された画像データ等に基づいて、シートに現像剤像を形成する。
【0008】
画像読取部110は、自動原稿搬送装置(ADF、Automatic Document Feeder)111を備える。画像読取部110は、自動原稿搬送装置111によって搬送される原稿や、原稿台に載置される原稿の画像を読み取る。画像形成部120は、給紙カセット121、作像ユニット122、定着器123、排紙トレイ124および光走査装置1を備える。
【0009】
画像形成部120の動作について説明する。給紙カセット121に収納されたシートは、ピックアップローラや搬送ローラによって、作像ユニット122に搬送される。作像ユニット122は、給紙カセット121から搬送されたシートに対して、現像剤像を形成する。具体的には、まず、作像ユニット122に含まれる感光体が、光走査装置1からの光ビームによって露光されることにより、感光体の感光面上に静電潜像が形成される。
【0010】
次に、感光体に現像剤を供給することにより、静電潜像が顕像化される。感光体の感光面には現像剤像が形成され、感光面上の現像剤像は、給紙カセット121から搬送されたシートに転写される。現像剤像が転写されたシートは、定着器123に搬送される。定着器123は、シートを加熱することにより、現像剤像をシートに定着する。定着器123を通過したシートは、排紙トレイ124に搬送され、排紙トレイ124に積載される。
【0011】
図1に示す画像形成装置100の構成は、一例であり、シートに現像剤像を形成することができる装置であれば、いかなる構成であってもよい。
【0012】
次に、光走査装置1の構成について説明する。
図2は、光走査装置1の斜視図である。光走査装置1は、樹脂筐体11に固定されているレーザユニット10はレーザダイオード12を有する。この構成に関しては
図3などの説明にて後述する。レーザダイオード12から射出した光ビームは、コリメータレンズ13に入射する。レーザダイオード12から射出した光ビームは発散光であり、コリメータレンズ13は、レーザダイオード12からの発散光を略平行光に変換する。
【0013】
コリメータレンズ13を通過した光ビームは、絞り板50を通過する。絞り板50は、
図2に示すように開口部50aを有しており、コリメータレンズ13からの光ビームは、この開口部50aを通過する。絞り板50は、プレートを型抜きすることによって形成することができる。絞り板50は、樹脂筐体11に保持、固定されている。絞り板50は、開口部50aの中心が光軸上に位置するように配置される。絞り板50は、コリメータレンズ13からの光ビームのうち、開口部50aに向かわない光成分を遮蔽する。
【0014】
絞り板50の開口部50aを通過した光ビームは、第1ミラー51で反射し、シリンドリカルレンズ52に入射する。シリンドリカルレンズ52は、絞り板50からの光ビームを副走査方向において収束させる。シリンドリカルレンズ52は、樹脂筐体11に固定されている。
【0015】
シリンドリカルレンズ52を通過した光ビームは、ポリゴンミラー(偏向器に相当する)53に到達する。ポリゴンミラー53は、樹脂筐体11に固定されており、回転する。ポリゴンミラー53は、シリンドリカルレンズ52を通過した光を第1fθレンズ54に向けて反射する。ポリゴンミラー53は、Z軸方向を軸にして回転することにより、レーザダイオード12によって照射された光ビームを主走査方向に偏向する。
【0016】
ポリゴンミラー53によって反射した光ビームは、第1fθレンズ54を経て、第2fθレンズ55に入射する。第1fθレンズ54および第2fθレンズ55は、主走査方向に延びており、ポリゴンミラー53からの反射光を感光体上の主走査方向位置に収束する。
【0017】
第2fθレンズ55を出射した光ビームは、防塵ガラス(不図示)を透過して、
図1に示す作像ユニット122に向かう。光ビームが作像ユニット122の感光体に照射されることにより、感光体面に静電潜像が形成される。以上が、光走査装置1の構成である。このように、レーザダイオード12から照射される光は、コリメータレンズ13を経由して、さらに光学部(具体的には、第1ミラー51、シリンドリカルレンズ52、ポリゴンミラー53、第1fθレンズ54、第2fθレンズ55)を介して感光体まで導かれる。
【0018】
尚、
図2には、大文字XYZ表記の座標系と小文字xyz表記の座標系がある。大文字表記の座標系は、
図1および
図2に記されており、X軸、Y軸、Z軸の方向は各図面で一致する。一方、小文字表記の座標系は、
図2および以降の各図面に記されており、x軸、y軸、z軸の方向は各図面で一致する。尚、x軸は、レーザダイオード12からの光ビームの射出方向、y軸はレーザダイオード12付近の樹脂筐体11の延伸方向、z軸は画像形成装置100や光走査装置1の設置時の上向き方向となる。
【0019】
従来のレーザユニットにおける保持部は、上述のように樹脂製となっており、樹脂筐体および保持部の実際の線膨張係数が、カタログ値の線膨張整数と大きく異なる場合がある。樹脂筐体および保持部が温度に応じて収縮、膨張すると、レーザダイオードとコリメータレンズとの間の距離が変化してしまう。
【0020】
このことより、本実施形態では、組立調整が行われた環境と温度差のある環境で使用する場合でも、レーザダイオードとコリメータレンズ間の距離の変化量が小さく、かつ材料の代表値から求められた変化に近い材料を、保持部に採用する。このような材料として、本例では金属を採用し、例えば20〜100℃の環境温度での線膨張係数が24(×10
-6/℃)程度のアルミニウムを採用する。尚、保持部として、少なくとも樹脂製の筐体よりも線膨張係数が小さく、かつ異方性が小さく、値が安定している樹脂材料で成形したものを用いてもよい。
【0021】
実施形態のレーザユニットの斜視図を
図3に示し、側面図を
図4(A)に、上方視認による平面図を
図4(B)に示す。レーザユニット10は、発光源であるレーザダイオード12を有し、レーザダイオード12は樹脂筐体11の壁に直接圧入固定されている。レーザダイオード12の固定は、ネジによる固定でもよく、接着固定であってもよい。
【0022】
コリメータレンズ13を固定する保持部15は、アルミニウム等の板金のプレス品で非常に安価に製造可能である。保持部15は、樹脂筐体11の壁に設けられ、樹脂筐体11の底には接しておらず、保持部15と樹脂筐体11の底面の間には空間が形成されている。これにより、熱による膨張の影響を受けない。保持部15は、x軸方向から視認した場合に上方が開口しているU字形状になっており、必要な強度を確保している。保持部15は、レーザダイオード12が圧入された樹脂筐体11の壁に、ネジ16(接合部)により固定されている。固定方法はネジによる固定に限定されることはなく、例えば接着による固定等でもよい。
【0023】
保持部15は、コリメータレンズ13を先端部15aで固定する。この位置は、レーザダイオード12からの照射光を入光可能な位置である。本実施形態では、接着剤14によって先端部15aにコリメータレンズ13を固着させる。
【0024】
保持部15の先端部15aは、屈曲しており、x軸方向から視認した場合に上方に開いた形状(先端が外側方向に向いた形状)になっている。屈曲せずに垂直壁にコリメータレンズ13の両端部を接着する場合、接着剤14の液だれやコリメータレンズ13の下方向へのズレが生じる。また、屈曲せずに、2つの先端部15aの最先端水平面でコリメータレンズ13を下支えする構成としても、塗布面積や接着面積を確保するのが困難となる。本実施形態のように屈曲させることで、斜め下側からコリメータレンズ13を支えるとともに、接着に際し、接着剤14の塗布位置のバラつきを吸収することができ、また塗布面積や、コリメータレンズ13と保持部15との接着面積を大きく設けることができる。コリメータレンズ13は、光軸調整、焦点調整等の光学調整を行った後、接着剤14を用いて保持部15に接着固定される。
【0025】
また、UV光で接着剤14を硬化させる際に、アルミニウム材がUV光を反射する。接着剤14に直接照射されるUV光に加え、間接的な反射光を利用することで、照射されるUV光を増やすとともに、死角になりやすい下方からの照射も増加させることができる。よって、保持部15にアルミニウム材などの反射率の高い材料を使用することで、効率よく接着剤14にUV光を当て、硬化させることができる。本実施形態では、少なくとも樹脂筐体11よりも反射率の高い材料を保持部15に適用する。
【0026】
保持部15のコリメータレンズ13との接着部と、コリメータレンズ13とのギャップを一定にするため、本実施形態では、保持部15の端部を樹脂筐体11の壁の孔に差し込み、位置決めする構成になっている。この構成について、
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、保持部15の装着前の斜視図であり、
図6は、上方平面図である。本実施形態では、保持部15の突出部15bを、樹脂筐体11の側壁に形成される孔部17に差し込み、位置決めする構成となる。樹脂筐体11において、レーザダイオード12の固定位置下側には、孔部17が形成されている。保持部15は、U字型状の下端に突出部15bを有している。孔部17を形成する孔端部17aと、突出部15bの両端部とが接触し、嵌合することで、位置決めされる。
【0027】
本実施形態では、コリメータレンズを接着固定する保持部の材料として、実際の線膨張係数とカタログ値との差が小さく、かつ安価なアルミニウムとした。また、レーザダイオードを圧入固定した樹脂筐体の壁に、保持部を固定する構成とした。
【0028】
本実施形態の構成により、温度変化によるレーザダイオードとコリメータレンズ間の距離の変化が、設計値と大きく異ならないようにすることができ、わずかなコストで、必要な光学性能を広い温度範囲で得られるようにする。
【0029】
尚、本実施形態では、材料の膨張率を示す指標を線膨張係数としたが、熱膨張係数、線膨張率、体積膨張率なども、概念上含まれる。
【0030】
以上に詳説したように、温度変化のある環境においても、レーザダイオードとコリメータレンズとの間隔を、光学性能上必要な範囲に収めることができるため、印刷品質の低下を抑制することができる。
【0031】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0032】
1 光走査装置、11 樹脂筐体、10 レーザユニット、12 レーザダイオード、
13 コリメータレンズ、14 接着剤、15 保持部、15a 先端部、
15b 突出部、16 ネジ、17 孔部、17a 孔端部、50 絞り板、
50a 開口部、51 第1ミラー、52 シリンドリカルレンズ、
53 ポリゴンミラー、54 第1fθレンズ、55 第2fθレンズ、
100 画像形成装置、110 画像読取部、111 自動原稿搬送装置、
120 画像形成部、121 給紙カセット、122 作像ユニット、
123 定着器、124 排紙トレイ。