【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
[転写定着ベルト]
本実施形態に係る転写定着ベルトは、導電性と、600nm以上1000nm以下の少なくとも一部の波長領域の赤外線(以下、単に「赤外線」と称する場合がある。)に対する透過性と、を有して構成されている。ここで、「赤外線に対して透過性を有する」とは、赤外線の透過率が80%以上(好ましくは90%以上)であることをいう。
【0018】
図1は、本実施形態に係る転写定着ベルトの一例を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示す転写定着ベルトの厚さ方向の断面の一部を示す概略図である。
【0019】
本実施形態に係る転写定着ベルト15は導電性を有するため、像保持体の表面からトナー像を該転写定着ベルト15の外周面に静電的に一次転写して保持することができる。
一方、本実施形態に係る転写定着ベルト15は赤外線に対して透過性を有するため、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像に対し、例えば、転写定着ベルト15の内周面側から赤外線のレーザ光(以下「赤外線レーザ光」と称する場合がある)を照射しても赤外線レーザ光が転写定着ベルト15を透過してトナー像が効率的に加熱され、用紙面への定着と搬送による記録媒体へのトナー像の二次転写と定着が実現される。
【0020】
なお、本実施形態に係る転写定着ベルト15は、600nm以上1000nm以下の少なくとも一部の波長領域の赤外線に対して透過性(少なくとも80%の透過率)を有していればよい。例えば赤外線レーザとして808nmの赤外線レーザ光を発する半導体レーザを用いる場合は、808nmの赤外線レーザ光に対して透過性を有していればよく、例えば800nm以上810nm以下の波長領域の赤外線に対して透過性を有していてもよく、780nm以上820nm以下の波長領域の赤外線に対して透過性を有していてもよい。
【0021】
以下、本実施形態に係る転写定着ベルト15の構成について具体的に説明する。
【0022】
(基材)
基材21は、無端のベルト状であり、導電性と、赤外線に対する透過性(前記赤外線の透過率が80%以上)を有するものであれば特に限定されない。
【0023】
本実施形態に係る転写定着ベルトの基材21は、樹脂及び導電剤を含んで構成される。
基材21に含まれる樹脂材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトンスルホンサン(PPSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)等の透明性の優れる樹脂材料が挙げられる。
【0024】
前記ポリイミドとしては、例えば、脂肪族ポリイミド、環状ポリイミド、含フッ素ポリイミド(フッ素置換ポリイミド、芳香族ポリイミドの置換フッ化アルキル誘導体)、及び同種構成のポリアミドイミド、ポリエーテルイミド類などが挙げられる。
前記ポリエチレンナフタレートとしては、例えば、ポリエチレンナフタレート及びそのポリカーボネート誘導体などが挙げられる。
前記ポリエーテルスルホンとしては、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレン及びそのフッ素誘導体が挙げられる。
前記ポリアリレートとしては、例えば芳香族ポリアリレート及び脂肪族ポレアリレートが挙げられる。
前記ポリエステルとしては、例えば、延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリ乳酸等が挙げられ、ポリエステルとポリプロピレンとの混合物やポリエステルとポリカーボネートとの混合物又はそのコポリマーであってもよい。
前記ポリカーボネートとしては、例えば、芳香族ポリカーボネート類及び脂肪族ポリカーボネート類が挙げられる。
基材21に用いられる材料は、前記の中でも、難燃性及び耐熱性の観点から、ポリエーテルスルホンが好ましい。
【0025】
また、
図2に示すように転写定着ベルト15が基材21のみで構成されている場合は、離型性の観点から、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、PEEK等が好ましい。
さらに残留トナーの低減から該基材表面への離型処理や、そのブレードやブラシクリーニング適性の向上から透明な弾性層の付与により、画像の転写性や、厚紙、エンボス紙等への定着を上げることへの対応が、より定着性能面での向上を提供できる。
【0026】
基材21に含まれる導電剤としては、赤外線の透過率の低下が抑制される導電剤が好ましく、イオン導電剤が好適である。
【0027】
前記イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、各種イオン液体やフッ素系帯電防止剤などが挙げられる。
イオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
基材21に含まれるイオン導電剤の含有量は、例えば、樹脂材料100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下の範囲であることがよく、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。
樹脂材料100質量部に対してイオン導電剤を0.01質量部以上配合することで十分な除電性が得られ、回転転写による電荷蓄積が発生し難い。
一方、樹脂材料100質量部に対して10質量部以下の配合で基材樹脂との相溶性が高く、白化、不透明化し難く、かつ導電化によるベルト帯電性の低下が抑制される。
【0028】
基材21は、例えば体積抵抗率が10
6Ωcm以上10
14Ωcm以下となるように導電剤が含まれる。
また、本実施形態に係る転写定着ベルトは、例えば体積抵抗率が10
5Ωcm以上10
13Ωcm以下である。
【0029】
基材21は、赤外線の透過性を妨げない範囲で、さらに、透明な繊維(フッ素樹脂粉末、ポリエステル、ポリアミド、ガラス繊維等)やフィラー(シリカなどの無機粒子)を配合して補強したものであってもよい。
【0030】
基材21の弾性率としては、転写定着ベルト15の形状を保ちながら回転させる観点から、例えば1GPa以上、好ましくは2GPa以上4GPa以下が挙げられる。
なお、弾性率の測定は、JIS−K7162(1994、1BA形、速度1mm/min)に準拠する。
【0031】
基材21の厚みとしては、例えば、20μm以上1000μm以下が挙げられ、50μm以上200μm以下が好ましく、60μm以上150μm以下がより好ましい。
また、透明性を有し、ベルト剛性の低下を抑制し、かつ回転使用による端部疲労によるクラックの発生の防止、及び座屈や脆化を抑制する観点より、膜厚バラツキは10%以下に抑えることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る転写定着ベルト15は、基材21のみで構成されていてもよいが、基材21上に他の層が配置された積層構造を有してもよい。
図3は、本実施形態に係る転写定着ベルトの他の例について厚さ方向の断面の一部を示す概略図である。
図3に示す転写定着ベルト25は、基材21と、基材21上に最外層として配置された離型層22を有している。
本実施形態に係る転写定着ベルトを後述する転写定着ユニットや画像形成装置に適用する場合、最外層として離型層22を有する転写定着ベルト25は、基材21のみで構成された転写定着ベルト15に比べて、転写定着ベルト25の外周面に保持されたトナー像が記録媒体に転写し易く、且つ、赤外線レーザ光による画像の定着を実現しつつ、定着画像に光沢性が付与され易い。
【0033】
(離型層)
離型層22は、例えば、フッ素含有樹脂を含み、赤外線に対して透過性(例えば赤外線の透過率が80%以上)を有するものであれば特に限定されない。
前記フッ素含有樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が挙げられ、赤外線の透過性の観点から、PFA、PVDF、全フッ化環状エーテルポリマー等が好適である。
さらにフッ素系の離型コーティング材やシリコン系の無機コーティング材などもその表面性や平滑性付与の観点から使用してもよい。
【0034】
離型層22の外周面における表面自由エネルギーは、トナーの離型性の観点から、例えば40mN/m以下であり、30mN/m以下が好ましく、25mN/m以下がより好ましい。
ここで、表面自由エネルギーの測定は、例えば、接触角計CAM−200(KSV社製)を用い、Zisman法を用いた装置内蔵のプログラム計算にて算出する。
また離型層22の屈折率は、トナーの屈折率よりも低い方が、離型層22と記録媒体に転写された未定着トナー像との界面における赤外線レーザ光Iの反射が抑制される点で望ましい。
【0035】
離型層22の厚みとしては、例えば10μm以上50μm以下が挙げられ、12μm以上30μm以下が好ましい。
【0036】
本実施形態に係る転写定着ベルト15は、基材21と離型層22との間に、弾性層、接着層等の他の層をさらに有していてもよい。
【0037】
弾性層は、赤外線に対して透過性(例えば赤外線の透過率が90%以上)を有するものであれば特に限定されない。
赤外線に対して透過性を有する弾性層に用いられる材料としては、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、及びオレフィンゴム等の弾性材料が挙げられる。
【0038】
赤外線を透過するシリコーンゴムとしては、例えば、付加重合タイプの2液ポリジメチルシロキサン類とその誘導体、及び光硬化タイプのアクリル変性シリコーンゴム等が挙げられる。
赤外線を透過するポリウレタンゴムとしては、例えば、ポリエーテルウレタン、ポリエステル系ウレタン類及びアクリル変性光硬化タイプのウレタン樹脂等が挙げられる。
赤外線を透過するオレフィンゴムとしては、例えば、EPDM、ポリプロピレンゴム、ブチルゴム、シクロオレフィン類、ノルボルネンゴム等が挙げられる。
【0039】
弾性層に用いられる材料は、前記の中でも、100℃以上の耐熱性を有するものが望ましい。
ここで、「100℃以上の耐熱性を有する」とは、100℃以上に加熱した後でも、弾性(すなわち100Pa以下の外部圧力印加により変形しても、もとの形状に復元する性質)を損なわないことを言う。
弾性層に用いられる材料が100℃以上の耐熱性を有するものであることにより、赤外線レーザ光で加熱されても用紙走行性と剥離性を損なわない弾性が得られる。そのため、ニップ形状を用紙幅全域に渡って維持して加熱定着することにより、圧接時の圧力ムラが軽減され、かつ、連続加熱走行による加温時での弾性と形状が維持されることにより、転写定着ベルト15の外周面と記録媒体の表面との界面における密着性が安定化し、シワの発生などが抑制される。
前記耐熱性は、100℃以上が望ましく、150℃以上がより望ましく、180℃以上がさらに望ましい。
前記耐熱性の測定は、例えば以下の方法で行う。具体的には、DSC,DGA、TMAなどの熱分析装置による溶融温度および熱重量測定、機械的強度評価による100℃以下でその変化の少ない弾性層が望ましい。
【0040】
前記赤外線を透過する弾性材料のうち、100℃以上の耐熱性を有するものとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、オレフィンゴム、シクロオレフィンゴム等が挙げられる。
【0041】
弾性層の厚みとしては、例えば50μm以上500μm以下が挙げられ、150μm以上450μm以下が好ましい。
【0042】
また、前記接着層を設ける場合も赤外線に対して透過性を有する接着層を用いる。
赤外線に対して透過性を有する接着層に用いられる材料としては、例えば、シランカプラー、シリコーン系接着剤、またはウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0043】
なお、基材21上に設ける層にも、転写定着ベルト15全体の赤外線の透過性を妨げない範囲(透過率が80%以上となる範囲)でイオン導電剤等の導電剤を含有させてもよい。
【0044】
転写定着ベルト15の全体の厚みとしては、例えば80μm以上1550μm以下が挙げられ、100μm以上1000μm以下が好ましく、200μm以上500μm以下がより好ましい。
【0045】
また、転写定着ベルト15の外周面における表面A硬度は、例えば10度以上90度以下が挙げられる。例えば、転写定着ベルト15の外周面にアスカーJA型硬度計(高分子計器社製)の押針を接触させ、4.9N(2sec)加重の条件にて表面A硬度が測定される。
【0046】
[転写定着ユニット]
次に、前記本実施形態に係る転写定着ベルトを用いた転写定着ユニットについて説明する。
本実施形態に係る転写定着ユニットは、前記本実施形態に係る転写定着ベルトと、前記転写定着ベルトの外周面に接触して周方向に回転することにより前記転写定着ベルトとの間に記録媒体を挟んで搬送する回転部材と、前記転写定着ベルトを挟んで前記回転部材の反対側で前記転写定着ベルトの内周面に接触し、前記赤外線のレーザ光に対する透過性を有する赤外線透過部材と、像保持体の表面から前記転写定着ベルトの外周面に一次転写されたトナー像に、前記赤外線透過部材及び前記転写定着ベルトを介して前記赤外線のレーザ光を照射することにより前記転写定着ベルトと前記回転部材との接触部に搬送された前記記録媒体に前記トナー像を二次転写するとともに定着させる赤外線レーザ光照射装置と、を備えて構成されている。
【0047】
<第1実施形態>
図4は、本実施形態に係る転写定着ユニットの構成の一例(第1実施形態)を示す概略構成図である。
図4に示す転写定着ユニット60は、前記本実施形態に係る無端状の転写定着ベルト15と、転写定着ベルト15の外周面に接触して周方向に回転する二次転写ロール36と、転写定着ベルト15を挟んで二次転写ロール36の反対側で転写定着ベルト15の内周面に接触し、赤外線レーザ光に対する透過性を有する赤外線透過部材30と、転写定着ベルト15と二次転写ロール36との接触部80に向けて赤外線レーザ光Iを照射する赤外線レーザ光照射装置70と、を備えている。
【0048】
−赤外線レーザ光照射装置−
赤外線レーザ光照射装置70は、転写定着ベルト15の内側(内周面側)に配置され、波長が600nm以上1000nm以下の赤外線レーザ光を発する装置が使用される。具体的には、例えば、半導体レーザや固体レーザ等の光源を備えるレーザ光照射装置等が挙げられる。
赤外線レーザ光の照射強度としては、例えば、接触部80において10mW/cm
2以上100mW/cm
2以下となる強度が挙げられる。また未定着トナー像Tへの赤外線照射量としては、例えば、50mJ/cm
2以上5000mJ/cm
2以下が挙げられる。
【0049】
赤外線透過部材30は、回転自在に支持された管状の保護部材71と、赤外線レーザ光照射装置70から発せられた赤外線レーザ光Iを集光するレンズ部材72と、転写定着ベルト15を挟んで二次転写ロール36に対向する位置においてレンズ部材72と保護部材71との間に配置された摺動部材74と、を含んで構成されている。
また、保護部材71の内周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材76と、レンズ部材72、摺動部材74、及び潤滑剤供給部材76を支持する支持部材78とが設けられている。
【0050】
−保護部材−
保護部材71は、内側に配置されているレンズ部材72を保護する管状の部材であり、赤外線を透過するガラス又は樹脂によって成形されている。
保護部材71を構成する樹脂材料としては、フッ素含有樹脂を含み、赤外線に対して透過性(例えば前記赤外線の透過率が80%以上)を有するものであれば特に限定されない。
前記フッ素含有樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が挙げられ、PFA、ポリビニリデンフルオライド、全フッ化環状エーテルポリマー等が好ましい。
また、レンズ部材72を保護する保護部材71を設ける代わりに、転写定着ベルト15の表面保護層としてコーティング材を付与してもよい。フッ素系コート材としてルミフロン系共重合フッ素樹脂ポリマーや、シリコン系の無機ナノグラスコート等の離型性コーティングをスプレー塗布、ディップ塗装により表面保護層を設けることが好ましい。
【0051】
−レンズ部材−
レンズ部材72は、波長が600nm以上1000nm以下の赤外線に対して透過性を有し、赤外線レーザ光を集光するものであれば限定されない。レンズ部材72に用いられる材料としては、例えば、ガラス、PMMA等のアクリル樹脂等が挙げられる。
レンズ部材72は、例えば、接触部80に赤外線レーザ光の焦点が来る焦点距離を有するものを選択してもよく、レンズ部材72及び赤外線レーザ光照射装置70の位置を調整することで前記焦点の位置を制御してもよい。
【0052】
−摺動部材−
摺動部材74は、保護部材71の回転時に保護部材71の内周面とレンズ部材72とが直接接触してこれらの部材の表面が傷つくことを防ぎ、例えばレンズ部材72の表面に傷がつくことによる赤外線の透過率低下等を防ぐための部材である。
摺動部材74としては、波長が600nm以上1000nm以下の赤外線に対して透過性を有し、保護部材71に対して摩擦係数が小さく耐摩耗性に優れた材質で構成されたものが適している。
摺動部材74の材質としては、例えば、赤外線に対して透過性を有する樹脂(具体的には、例えばPTFE等の潤滑性フィラーを分散させたウレタンゴム、オレフィンゴム等)、ガラス等の繊維によって補強されたPFA樹脂、シリコーンオイル、及びシリコン系界面活性剤等で含浸又は表面処理された透明液状シリコーンゴム等が挙げられる。
また摺動部材74の厚みとしては、例えば、0.01mm以上1mm以下が挙げられる。
さらに摺動部材74の内部に、ワックスやシリコーンオイル等を含浸させた発泡部材を設けることで潤滑性を向上させ、保護部材71が回転するときにおける摺動部材74と保護部材71との摩擦抵抗及び擦れを軽減させ、これらの部材に対する影響を軽減させてもよい。
【0053】
−潤滑剤供給部材−
潤滑剤供給部材76は、潤滑剤を保持し、保護部材71の内周面に潤滑剤を供給する部材である。
潤滑剤としては、例えばシリコーンオイル、パラフィンオイル、フッ素オイル、その他固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース、ワックス等が挙げられる。
なお、本実施形態では潤滑剤を保護部材71の内周面に供給する形態であるが、潤滑剤を用いない形態でもよい。
【0054】
−二次転写ロール−
二次転写ロール36は、転写定着ベルト15の外側(外周面側)に配置され、転写定着ベルト15と接触部80を形成し、転写定着ベルト15との間に記録媒体Pを挟んで搬送する回転部材である。二次転写ロール36は、転写定着ベルト15との間で記録媒体Pを挟み込む形状のものであれば特に限定されない。二次転写ロール36の具体例としては、例えば、円柱状芯金と、円柱状芯金の外周面に設けられた透明弾性層とを有する加圧ロール等が挙げられる。該弾性層の外周面に離型層を設けてもよい。
弾性層を構成する材料としては、ウレタンやオレフィン、NBR等の発泡導電ゴム材料を用いてもよい。
【0055】
芯金は、例えば鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。また、弾性層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴム、ウレタン系イオン導電ゴム等で形成され、体積抵抗率が10
7.5Ωcm以上10
8.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0056】
二次転写ロール36の外周面における表面A硬度としては、例えば10度以上95度以下が挙げられる。
【0057】
転写定着ベルト15と二次転写ロール36との接触部80の幅としては、例えば0.01mm以上30mm以下が挙げられ、0.5mm以上5mm以下が望ましい。
【0058】
本実施形態に係る転写定着ユニット60は、転写定着ベルト15が矢印B方向に回転(移動)し、転写定着ベルト15の外周面と接触する二次転写ロール36は、転写定着ベルト15の回転に従動して転写定着ベルト15の回転方向Bと反対の周方向Cに回転する。一方、転写定着ベルト15の内周面に接触する保護部材71は、転写定着ベルト15の回転に従動して転写定着ベルト15の回転方向Bと同じ周方向Rに回転する。
【0059】
像保持体(不図示)の表面に形成されたトナー像が転写定着ベルト15の外周面に一次転写され、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像Tが転写定着ベルト15と二次転写ロール36との接触部80へと搬送される。
なお、転写定着ベルト15に一次転写されたトナー像Tは、例えば、赤外線吸収剤(赤外線を吸収し、熱としてエネルギーを放出する成分)を内添剤又は外添剤として含んだトナーを用いて形成されたものが使用される。
【0060】
一方、転写定着ベルト15の内側に設けられた赤外線レーザ光照射装置70から、接触部80に向かって赤外線レーザ光Iが照射される。赤外線レーザ光照射装置70から発せられた赤外線レーザ光Iは、赤外線透過部材30(保護部材71、レンズ部材72、及び摺動部材74)及び転写定着ベルト15を透過し、接触部80に到達する。
そして接触部80には記録媒体Pが搬送され、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像が転写定着ベルト15と記録媒体Pとに挟み込まれた状態で赤外線レーザ光Iが照射されることでトナー像Tに含有される赤外線吸収剤が赤外線レーザ光Iを吸収したのちに熱を放出する。未定着トナー像Tは、転写定着ベルト15及び二次転写ロール36によって圧力がかけられつつ瞬間的に温度が上昇して溶融し二次転写及び定着(二次転写定着)が実現され、用紙面上に定着画像Fとなる。
【0061】
なお、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像Tを記録媒体(用紙)Pにより確実に二次転写させるため、トナー像Tを用紙P上に静電的に二次転写させてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、その加熱加圧時間(すなわち、未定着トナー像Tが温度上昇により溶融し、転写定着ベルト15の圧接により平坦化される時間)が数msecと短く、高速定着でき、かつ、高エネルギーの赤外線レーザ光により未定着トナー像Tが加熱されるため、用紙を温めずに未定着トナー像Tの定着が行われる。そのため、両面定着時の定着性も安定しており、用紙剥離性も変化しないことにより、薄紙から厚紙、エンボス紙、連張紙、塗工紙、PETフィルム、シュリングフィルム等までの非浸透メディアなど広範囲の用紙適応性が得られる。
【0063】
また、本実施形態に係る転写定着ユニット60では、赤外線レーザ光によって二次転写定着を行うことで、画像形成装置の小型化とともに、トナー画像の転写及び定着の高速化が実現される。
【0064】
<第2実施形態>
次に、本実施形態に係る転写定着ベルトを用いた第2実施形態の転写定着ユニットについて説明する。
図5は、本実施形態に係る転写定着ユニットの他の一例(第2実施形態)を示す概略構成図である。
図5に示す転写定着ユニット90は、転写定着ベルト15に面する側が円弧状に形成されたレンズ部材72と摺動部材74を備え、転写定着ベルト15は二次転写ロール36との接触により内側に変形して円弧状の接触部80が形成されている。なお、第1実施形態に係る転写定着ユニットと同様の構成については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0065】
第2実施形態に係る転写定着ユニット90は、導電性及び赤外線に対する透過性を有する無端ベルト状の転写定着ベルト15と、転写定着ベルト15と円弧状の接触部80を形成する二次転写ロール36と、転写定着ベルト15の内側に設けられた赤外線レーザ光照射装置70と、赤外線透過部材として、赤外線レーザ光照射装置70から発せられた赤外線レーザ光を透過するレンズ部材72と、転写定着ベルト15の内周面とレンズ部材72との間に設けられた摺動部材74と、を備えて構成されている。
【0066】
また、転写定着ベルト15の内側で互いに間隔を持って設けられた押しつけロール86及び押しつけロール87が、転写定着ベルト15を二次転写ロール36に押し付けることで、転写定着ベルト15における押しつけロール86と押しつけロール87との間の領域が内側に変形し、接触部80が形成されている。
【0067】
レンズ部材72は、転写定着ベルト15の内側において、転写定着ベルト15を介して二次転写ロール36に加圧される状態で配置されている。また、摺動部材74は、転写定着ベルト15の内周面とレンズ部材72との摺動抵抗を小さくし、転写定着ベルト15の内周面とレンズ部材72とが直接接触することによる傷の発生を防ぐため、レンズ部材72における転写定着ベルト15に対向する円弧状の曲面に設けられている。
【0068】
転写定着ベルト15は、矢印B方向に回転し、それに伴って二次転写ロール36が転写定着ベルト15の回転方向と反対の方向Cへ回転する。一方、レンズ部材72及び摺動部材74は不図示の支持部材によって固定されており、転写定着ベルト15が回転してもレンズ部材72及び摺動部材74は静止したままである。
また、摺動部材74が転写定着ベルト15の内周面とレンズ部材72との間に設けられていることによって、摺動部材74が転写定着ベルト15の内周面に接触した状態で転写定着ベルト15が回転する。
【0069】
そして、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像Tが、転写定着ベルト15の回転に伴って矢印B方向に搬送され、接触部80において転写定着ベルト15と記録媒体Pとの間に挟み込まれるとともに、赤外線レーザ光照射装置70から接触部80に向かって発生された赤外線レーザ光Iがレンズ部材72及び摺動部材74を透過してトナー像Tに照射されることで、トナー像Tが記録媒体Pに二次転写されるともに定着されて定着画像Fとなる。
【0070】
第2実施形態における接触部80の幅(ニップ幅)としては、例えば0.005cm以上1cm以下が挙げられる。接触部80の幅を長くすると、例えば赤外線レーザ光を照射してから記録媒体に定着されるまでの時間が比較的長いトナーを用いても、良好な定着性が得られる。
【0071】
[画像形成装置]
次に、本実施形態に係る転写定着ベルトを用いた画像形成装置について説明する
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記本実施形態に係る転写定着ベルトと、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記転写定着ベルトの外周面に一次転写する一次転写装置と、前記転写定着ベルトの外周面に一次転写された前記トナー像に、前記転写定着ベルトを介して前記赤外線のレーザ光を照射することにより前記トナー像を記録媒体に二次転写するとともに定着させる二次転写定着装置と、を備えて構成されている。
【0072】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を概略的に示している。
図6に示す画像形成装置100は、
図4に示した転写定着ユニットを備えた一般にタンデム型と呼ばれる画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を転写定着ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、転写定着ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させるとともに、転写定着ベルト15の内側に配置されている赤外線レーザ光照射装置70から、転写定着ベルト15を介して赤外線のレーザ光Iを照射することにより重畳トナー像を用紙Pに定着させる二次転写定着部20と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0073】
転写定着ベルト15は、既述の第1実施形態に係る転写定着ベルト15であるが、第2実施形態に係る転写定着ベルト25であってもよい。
【0074】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0075】
感光体11の周囲には、帯電装置の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成装置の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0076】
また、感光体11の周囲には、現像装置の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて転写定着ベルト15に転写する一次転写装置の一例として、一次転写ロール16が設けられている。
【0077】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16および感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、転写定着ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0078】
転写定着ベルト15は、各種ロールによって
図6に示すB方向に定められた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて転写定着ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる転写定着ベルト15を支持する支持ロール32、転写定着ベルト15に対して一定の張力を与えると共に転写定着ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写定着部20に設けられる赤外線透過部材30、転写定着ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0079】
一次転写部10には、転写定着ベルト15を挟んで感光体11に対向して一次転写ロール16が配置されている。一次転写ロール16は、例えば、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10
7.5Ωcm以上10
8.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0080】
一次転写ロール16は転写定着ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が転写定着ベルト15に順次、静電吸引され、転写定着ベルト15の外周面において重畳されたトナー像が形成されて保持されるようになっている。
【0081】
二次転写定着部20には、赤外線レーザ光照射装置70、赤外線透過部材30、及び二次転写ロール36が配置されている。
【0082】
二次転写ロール36は転写定着ベルト15を挟んで赤外線透過部材30を加圧するように対向配置されている。
【0083】
二次転写定着部20の下流側には、二次転写定着後の転写定着ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、転写定着ベルト15の表面をクリーニングする転写定着ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
なお、ベルトクリーナ35の形態はチ特に限定されず、ブラシ、ブレード、静電的なクリーニングロール、発泡パッドが挙げられる。
【0084】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、転写定着ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0085】
更に、本実施形態に係る画像形成装置では、用紙Pを搬送する搬送手段として、用紙Pを収容する用紙収容部50、用紙収容部50に集積された用紙Pを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写定着部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写定着部20においてトナー像が二次転写定着された用紙Pを搬送する搬送ベルト55、用紙Pを排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に導くガイド56を備えている。
【0086】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0087】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0088】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0089】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と転写定着ベルト15とが接触する一次転写部10において、転写定着ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により転写定着ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を転写定着ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0090】
トナー像が転写定着ベルト15の表面に順次一次転写された後、転写定着ベルト15は移動してトナー像が二次転写定着部20に搬送される。トナー像が二次転写定着部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写定着部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Pが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写定着部20に到達する。この二次転写定着部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された転写定着ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0091】
二次転写定着部20では、転写定着ベルト15を介して、二次転写ロール36が赤外線透過部材30に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、転写定着ベルト15と二次転写ロール36との間に挟み込まれる。その際に、転写定着ベルト15と二次転写ロール36との接触部に向けて、赤外線レーザ光照射装置70から赤外線レーザ光Iが照射される。そして、転写定着ベルト15の外周面に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール36と赤外線透過部材30とによって加圧される二次転写定着部20において、用紙P上に一括して静電転写(二次転写)されるとともに定着される。
【0092】
なお、転写定着ベルト15の外周面に保持されたトナー像を記録媒体(用紙)Pにより確実に二次転写させるため、例えば、二次転写ロール36は接地されて赤外線透過部材30との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写定着部20に搬送される用紙P上にトナー像を静電的に二次転写させてもよい。
中間転写ベルト上のトナー像を用紙に転写した後、定着装置によって定着を行う装置では、用紙の膜厚、粗さ、抵抗、表面物性の影響を受けやすく、画像劣化(ブラー、画像乱れ、スミヤ、スマッジ等)をより受けやすい。一方、本実施形態に係る転写定着ベルト15によって転写定着を行う画像形成装置では、用紙の上記影響を受け難く、搬送ベルトとしても機能するため高速での画像形成に適している。
【0093】
トナー像が二次転写定着された用紙Pは、二次転写ロール36によって転写定着ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール36の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。さらに、搬送ベルト55では、用紙Pを画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0094】
一方、用紙Pへの転写が終了した後、転写定着ベルト15上に残った残留トナーは、転写定着ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34および転写定着ベルトクリーナ35によって転写定着ベルト15上から除去される。
【0095】
本実施形態に係る画像形成装置100では、転写定着ベルト15の内側に赤外線レーザ光照射装置70とレンズ部材72が設けられ、赤外線レーザ光照射装置70からの赤外線レーザ光の照射によって転写定着ベルト15から記録媒体Pにトナー像が二次転写されるとともに定着されるため、画像形成装置の小型化並びにトナー画像の転写及び定着の高速化が実現される。
【0096】
また、本実施形態に係る画像形成装置100では、記録媒体Pに転写された未定着トナー像が定着装置を通過せずに二次転写定着が行われるため、未定着トナー像を記録媒体Pに二次転写した後、定着装置を通過させて定着を行う場合に比べ、画像の劣化が抑制される。
【0097】
以上、本実施形態に係る画像形成装置について説明したが、本実施形態は上記の態様に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良を行ってもよい。
例えば、
図5に示した転写定着ユニット90を備えた画像形成装置としてもよい。
また、転写定着ベルトを挟んで赤外線透過部材に対向する回転部材として二次転写ロールを備える場合について説明したが、ロールに限らず、例えばベルト状の回転部材(駆動、テンション、寄り止め蛇行防止ロール等)を備えてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0099】
[転写定着ベルトAの製造]
(基材1の製造)
以下のようにして、ベルト状の基材1を製造した。
具体的には、BASF社製 6010pポリエーテルスルホン100質量部に和光純薬工業社製、ベンジルトリメチルアンモニウム塩を1質量部添加して相溶させ、これを押し出し成形し、φ60mm、長さ369mmの透明チューブを作製した。
上記方法により赤外線を透過する樹脂の基材1を得た。
得られた基材1の厚みは78μmであった。
【0100】
基材1について、600nm以上1000nm以下の赤外線の透過スペクトルを測定したところ、後述する半導体レーザが発する赤外線レーザ光の波長(808nm)における透過率が87%であり、かつ、780nm以上820nm以下の波長領域全体にわたって透過率が85%以上であることがわかった。
なお、前記赤外線の透過スペクトルは、測定装置として紫外可視分光光度計(日本分光社製、型番:JASCO−V560)を用い、350nmから950nm領域での測定条件において測定した。
【0101】
また、基材1の弾性率を前述の方法で測定したところ、2.3GPaであることが分かった。
また、基材1の外周面における表面自由エネルギーを前述の方法で測定したところ、33mN/mであった。
また、転写定着ベルトAの外周面における表面A硬度を前述の方法で測定したところ、65度であった。
【0102】
[転写定着ベルトBの製造]
(弾性層及1び離型層1の形成)
基材1の外周面に直接、以下のようにして弾性層1及び離型層1を形成し、転写定着ベルトBを得た。
具体的には、信越化学工業社製 シリコーンゴムKE1606を用い、ロールコーターで380μmの厚みに塗布し、150℃、1時間焼成し、PFAチューブ(Duppont社製)を押し出し成形で作製した。基材1の外周面にシリコーンゴム層を塗布し、ついで該PFAチューブ(厚み33μm)を同径のアルミマンドレルに装着し、圧入被覆処理し、3層構成の転写ベルトを作製した。
上記方法により基材1上にシリコーンゴムの弾性層1と赤外線を透過するフッ素含有樹脂の離型層1を形成し、転写定着ベルトBを得た。
【0103】
離型層1の厚みは33μmであり、転写定着ベルトB全体の厚みは、391μmであった。
転写定着ベルトBについて600nm以上1000nm以下の赤外線の透過スペクトルを測定したところ、後述する半導体レーザが発する赤外線レーザ光の波長(808nm)における透過率が88%であり、転写定着ベルトBが赤外線に対して透過性を有することがわかった。
また、転写定着ベルトBの外周面における表面A硬度を前述の方法で測定したところ、102度であった。
【0104】
[実施例1]
図4に示す転写定着ユニット60を備えた
図6に示す画像形成装置100において、転写定着ベルトとして、上記得られた転写定着ベルトA、転写定着ベルトBを用い、赤外線吸収剤を含むトナーを用いて定着画像(ソリッド画像)の形成を行った(プロセス速度:300mm/sec)。
転写定着ベルトの内側には、レンズ部材72と、レンズ部材72を保護する保護部材71としてガラス管(内径:25mm、外径:28mm)を設けた。
保護部材71は、転写定着ベルトの内周面に接触し、転写定着ベルトの周方向への移動に伴って回転するように支持し、レンズ部材は、赤外線レーザ光が転写定着ベルトと記録媒体との接触部(用紙ニップ方向)全体にわたって照射されるように固定して、記録媒体の表面に集光させ使用した。
【0105】
二次転写ロール36については、アルミニウム製の円柱状芯金の外周面に、ベンガラの粒子及び酸化鉄の粒子を内部に分散させたシリコーゴム(厚みが2mm)の層(弾性層)を形成し、カーボンブラックを分散させた導電性PFAチューブ(厚みが30μm)をシリコーンオイルに含浸させたものを前記弾性層の外周面に被覆し、φ30mmで成形処理することにより得られた、弾性層を有する二次転写ロールを用いた。得られた二次転写ロールの表面A硬度は65度であった。また接触部80の幅は2mmであり、定着時にかける力は8kgfとした。
【0106】
赤外線レーザ光照射装置70としては、半導体レーザ(エネオプチック社製、赤外線レーザ光の波長:808nm)を用いた。接触部80における赤外線照射強度は100W/cm
2であり、未定着トナー像Tへの赤外線照射量は200mJ/cm
2とした。
レンズ部材72としてはシリンドリカルレンズ(シグマ光機社製、型番:BK7)を用いた。
トナーとしては、赤外線吸収剤としてスクアリリウム系顔料を含むトナーを用いた。
【0107】
(光沢性の評価)
得られた定着画像について、以下のようにして光沢性の評価を行った。具体的には、グロスメーター(BYK マイクロトリグロス光沢計(20+60+85゜)、ガードナー社製)を用いて、60°の角度における光沢度を指標とした。評価結果を表1に示す。
【0108】
(定着率の評価)
定着率の評価は、テープ剥離試験により行った。具体的には、定着画像に粘着テープ(スコットメンディングテープ;3M社製)を軽く貼り、円柱ブロックを円周方向に転がすことにより、250g/cmの線圧にて該テープを画像面に密着させ、しかる後、該テープを引き剥がし、下式で表されるテープ引き剥がし前後の画像の光学濃度比を定着率とした。評価結果を表1に示す。
【0109】
式:定着率(%)=(テープ剥離後の画像濃度/テープ剥離前の画像濃度)×100
ここで、定着画像の画像濃度は、分光測色計(CM−3700d;ミノルタ社製)を使用して波長域400nm〜800nmの反射光を測定し、吸光度が最も大きくなる波長での吸光度値を光学濃度とした。
【0110】
【表1】