【解決手段】スイッチング電源装置10は、一次巻線N1と二次巻線N2とを有するトランスTrと、一次巻線N1への入力電圧の印加をオンオフするNチャネル型の電界効果トランジスタQ4と、トランスTrの二次側の出力電圧に応じたフィードバック信号を生成するフィードバック部と、フィードバック信号に基づいて電界効果トランジスタQ4を制御する電源制御IC12と、を備え、フィードバック部はシャントレギュレータS1と、トランスTrの二次側に配置されてシャントレギュレータS1に流入する電流を可変する電流可変部11とを有する。
前記電流可変部は、第1抵抗を有して前記シャントレギュレータに接続される第1電流通路と、第1抵抗の一端側で第1電流通路から分岐して第1抵抗の他端側で第1電流通路に合流する第2電流通路とを備え、
第2電流通路は第2抵抗と、第2電流通路の導通と遮断とを切り替えるスイッチとを有することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
駆動対象を駆動する駆動回路と前記駆動回路を制御する駆動制御回路とに接続可能に構成され、前記駆動制御回路から前記駆動回路へ出力される制御信号に基づいて前記スイッチがオンオフされることを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
前記駆動対象の駆動時に前記スイッチがオンされるとともに、前記駆動対象の駆動待機時に前記スイッチがオフされることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
表示パネルと、前記表示パネルを照明する照明装置と、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスイッチング電源装置とを備え、前記スイッチング電源装置の出力電圧に基づいて前記照明装置を駆動させることを特徴とする表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のスイッチング電源装置では電流検出抵抗の抵抗値を固定しているため、重負荷時には電流検出抵抗でのロスが大きくなる問題があった。
【0007】
本発明は、重負荷時のロスを低減できるとともに軽負荷時のトランスの唸り音を低減できるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のスイッチング電源装置は、
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
前記一次巻線への入力電圧の印加をオンオフするスイッチング素子と、
前記トランスの二次側の出力電圧に応じたフィードバック信号を生成するフィードバック部と、
前記フィードバック信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する制御部と、
を備え、前記フィードバック部はシャントレギュレータと、前記トランスの二次側に配置されて前記シャントレギュレータに流入する電流を可変する電流可変部とを有することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、フィードバック部により出力電圧が一定に維持される。また、電流可変部によって例えば軽負荷時にはシャントレギュレータに流入する電流を制限し、重負荷時には電流制限を解除する。
【0010】
また本発明は、上記構成のスイッチング電源装置において、前記電流可変部は、第1抵抗を有して前記シャントレギュレータに接続される第1電流通路と、第1抵抗の一端側で第1電流通路から分岐して第1抵抗の他端側で第1電流通路に合流する第2電流通路とを備え、第2電流通路は第2抵抗と、第2電流通路の導通と遮断とを切り替えるスイッチとを有すると好ましい。
【0011】
この構成によれば、スイッチをオフにすると第2電流通路が遮断されて、シャントレギュレータに流入する電流が制限される。一方、スイッチをオンにすると第2電流通路が導通し、シャントレギュレータに流入する電流の制限が解除される。
【0012】
また本発明は、上記構成のスイッチング電源装置において、駆動対象を駆動する駆動回路と前記駆動回路を制御する駆動制御回路とに接続可能に構成され、前記駆動制御回路から出力される制御信号に基づいて前記スイッチをオンオフすると好ましい。
【0013】
この構成によれば、駆動制御回路から駆動回路へ送信される制御信号に基づいてスイッチがオンオフされ、第2電流通路の導通と遮断とが切り替えられる。
【0014】
また本発明は、上記構成のスイッチング電源装置において、前記駆動対象の駆動時に前記スイッチをオンするとともに、前記駆動対象の駆動待機時に前記スイッチをオフすると好ましい。
【0015】
この構成によれば、駆動制御回路から駆動回路へ出力される制御信号により駆動対象が駆動制御される。駆動対象の駆動時(重負荷時)に、制御信号によりスイッチがオンされて第2電流通路が導通する。駆動制御回路から駆動回路へ制御信号が出力されていない場合(軽負荷時)にはスイッチはオフされて第2電流通路は遮断される。
【0016】
また本発明の表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルを照明する照明装置と、上記構成のスイッチング電源装置とを備え、前記スイッチング電源装置の出力電圧に基づいて前記照明装置を駆動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シャントレギュレータに流入する電流を可変する電流可変部を備えている。これにより、軽負荷時にはシャントレギュレータに流入する電流を制限してトランスの唸り音を低減することができる。また、重負荷時にはシャントレギュレータに流入する電流の制限を解除してロスを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は第1実施形態のテレビジョン受像装置を示す正面図である。テレビジョン受像装置1(表示装置)はラック70等に設置される設置部20により支持される本体部2を有し、TV放送信号を受信する。本体部2の前面には表示部3及び音声出力部4が設けられる。
【0020】
表示部3は液晶表示パネル3a(表示パネル)及びバックライト3b(照明装置)を有する。バックライト3bは複数の棒状の冷陰極管(CCFL)から成り、液晶表示パネル3aの長手方向に延びて液晶表示パネル3aよりも後方に配される。バックライト3bが点灯され、液晶表示パネル3aにTV放送局から受信した映像信号に基づく映像が表示される。なお、冷陰極管に替えて、基板に実装したLEDによりバックライト3bを構成してもよい。音声出力部4はスピーカから成り、音声等を出力する。
【0021】
本体部2の上面や側面には複数の操作ボタン(不図示)が配され、各操作ボタンの操作により本体部2への電源投入、チャンネルの変更、音声出力部4から出力される音量の調節等を行うことができる。
【0022】
また、本体部2はリモートコントローラ50と赤外線やBluetооth(登録商標)規格に従った無線通信を行い、リモートコントローラ50によって遠隔操作される。
【0023】
テレビジョン受像装置1において、通常動作時(重負荷時)にはバックライト3bが駆動されて液晶表示パネル3aにTV放送信号に基づいた映像が表示され、音声出力部4から音声が出力される。これにより、使用者は放送番組を視聴することができる。
【0024】
また、テレビジョン受像装置1は高速起動スタンバイモード(軽負荷モード)を有する。高速起動スタンバイモードでは、主電源がオンされた状態でバックライト3b及び音声出力部4の駆動が停止された駆動待機状態になっている。高速起動スタンバイモード時に、使用者が本体部2の操作ボタンやリモートコントローラ50を操作すると、通常動作に素早く移行する。
【0025】
図2はスイッチング電源装置の回路構成図を示している。フライバック方式のスイッチング電源装置10は本体部2に設けられ、本体部2に配されたバックライト駆動回路20(駆動回路)及びメイン回路30(駆動制御回路)に出力電圧Voutを供給する。バックライト駆動回路20はバックライト3bを駆動し、メイン回路30はバックライト駆動回路20を制御する。
【0026】
スイッチング電源装置10は、トランスTr、Nチャネル型の電界効果トランジスタQ4(スイッチング素子)、電源制御IC12(制御部)、フォトカプラP1、シャントレギュレータS1、電流可変部11、抵抗R5及び抵抗R7を有する。フォトカプラP1、シャントレギュレータS1、電流可変部11、抵抗R5及び抵抗R7はフィードバック部を構成する。
【0027】
トランスTrは一次側及び二次側にそれぞれ一次巻線N1及び二次巻線N2を有する。一次巻線N1の一端には直流電源Bが接続されて直流電圧である入力電圧Vinが入力され、他端には電界効果トランジスタQ4のドレインが接続される。二次巻線N2の一端は接地され、他端はダイオードD1のアノードに接続される。ダイオードD1のカソードには電解コンデンサC1の正極及び出力端子T1が接続され、電解コンデンサC1の負極は接地される。出力端子T1はバックライト駆動回路20及びメイン回路30に接続され、出力電圧Voutを出力する。
【0028】
電界効果トランジスタQ4のソースは抵抗R9を介して接地され、ゲートは電源制御IC12の出力端子OUTに接続される。
【0029】
電源制御IC12はPWM回路から成り、OUT端子、FB(フィードバック)端子及びGND端子を有する。FB端子はフォトカプラP1のフォトトランジスタのコレクタに接続され、GND端子は接地線を介してフォトカプラP1のフォトトランジスタのエミッタに接続される。電源制御IC12はFB端子に入力されるフィードバック信号の電圧レベルに応じてパルス幅変調されたパルス信号を電界効果トランジスタQ4への駆動信号としてOUT端子から出力する。
【0030】
電解コンデンサC1と出力端子T1との間には、分圧用の抵抗R5と抵抗R7が直列接続され、抵抗R7の一端は接地される。抵抗R5と抵抗R7との接続点には、シャントレギュレータS1のリファレンス端子が接続される。シャントレギュレータS1のカソード端子はフォトカプラP1の発光ダイオードのカソードに接続され、シャントレギュレータS1のアノード端子は接地される。
【0031】
また、シャントレギュレータS1のカソード端子はコンデンサC2の一端に接続され、コンデンサC2の他端には抵抗R6の一端が接続されるとともに抵抗R6の他端は抵抗R5及び抵抗R7に接続される。これにより、コンデンサC2と抵抗R6とは直列接続される。
【0032】
抵抗R7と抵抗R5との接続点には抵抗R8の一端が接続され、抵抗R8の他端にはトランジスタQ3のコレクタが接続される。トランジスタQ3のベースはメイン回路30に接続され、エミッタは接地される。
【0033】
電流可変部11は、第1電流通路11a及び第2電流通路11bを有する。第1電流通路11aの一端(上流側)は出力端子T1に接続され、他端(下流側)はシャントレギュレータS1のカソード端子に接続される。第1電流通路11aは直列接続される抵抗R2(第1抵抗)及び抵抗R3(第1抵抗)を有する。抵抗R2と抵抗R3との接続点にはフォトカプラP1の発光ダイオードのアノードが接続される。
【0034】
第2電流通路11bは抵抗R2の一端側(上流側)で第1電流通路11aから分岐して抵抗R3の他端側(下流側)で第1電流通路11aに合流する。第2電流通路11bは抵抗R1(第2抵抗)及びトランジスタQ1(スイッチ)を有する。これにより、抵抗R1は抵抗R2と抵抗R3と並列接続される。トランジスタQ1のエミッタは第1電流通路11aに接続されるとともにコレクタは抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端は抵抗R3の他端側(下流側)に接続される。
【0035】
トランジスタQ1のベースは抵抗R4の一端に接続され、抵抗R4の他端にはトランジスタQ2のコレクタが接続される。トランジスタQ2のベースはメイン回路30に接続され、エミッタは接地される。後述のように、トランジスタQ2のオンオフによりトランジスタQ1がオンオフし、トランジスタQ1のオンオフにより第2電流通路11bの導通と遮断とが切り替えられる。
【0036】
上記構成のスイッチング電源装置10において、直流電源Bをオンにすると、入力電圧VinはトランスTrの一次巻線N1と電界効果トランジスタQ4に入力される。これにより、電界効果トランジスタQ4は、電源制御IC12のOUT端子からの出力によりオン/オフ制御される。
【0037】
電源制御IC12からの駆動信号により電界効果トランジスタQ4はスイッチング動作する。電界効果トランジスタQ4のスイッチング動作によりトランスTrの二次巻線N2に誘起された電圧は、ダイオードD1及び電解コンデンサC1によって整流・平滑化された後に出力電圧Voutとなる。出力電圧Voutは出力端子T1から出力され、バックライト駆動回路20及びメイン回路30へ供給される。
【0038】
また、出力電圧Voutは抵抗R5と抵抗R7とにより分圧され、シャントレギュレータS1のリファレンス端子に入力される。そして、シャントレギュレータS1は、抵抗R5と抵抗R7とによる出力電圧Voutの分圧値と、シャントレギュレータS1の内部の基準電圧値とを比較し、その差に応じた電流を流す。
【0039】
これにより、出力電圧Voutに応じてフォトカプラP1の発光ダイオードを流れる電流値が変化し、この電流値に対応する光が発光ダイオードから出射される。発光ダイオードの出射光は、フォトカプラP1のフォトトランジスタに入射される。この入射光に対応する電流がフォトトランジスタを流れ、フィードバック信号として電源制御IC12のFB端子に与えられる。
【0040】
例えば、出力電圧Voutが上昇すると、抵抗R5と抵抗R7との接続点の電圧が上昇し、シャントレギュレータS1への入力電圧が上昇し、より多くの電流を流そうとする。シャントレギュレータS1に流れる電流が増えると、フォトカプラP1の発光ダイオードに流れる電流も増え、発光ダイオードからの発光量も増える。発光ダイオードからの発光量が増えると、フォトカプラPCのフォトトランジスタを流れる電流も増える。
【0041】
電源制御IC12は、発振周波数の三角波を内部で作成し、その三角波とFB端子に与えられたフィードバック信号の電圧とを比較し、その比較結果に基づいてPWM信号を生成する。PWM信号(駆動信号)が電源制御IC12のOUT端子から出力される。このように、電界効果トランジスタQ4のスイッチング動作により、上昇した出力電圧Voutが低下して出力電圧Voutが一定に維持される。
【0042】
また、出力電圧Voutが低下した場合には、電界効果トランジスタQ4のスイッチング動作により、低下した出力電圧Voutが上昇して出力電圧Voutが一定に維持される。
【0043】
次に、電流可変部11の動作について説明する。電流可変部11は通常動作時(重負荷時)と高速起動スタンバイ時(軽負荷時)とで動作が異なっている。
【0044】
通常動作時において、メイン回路30からバックライト駆動回路20への制御信号BL‐SWがHighとなって、トランジスタQ2に入力される。これにより、トランジスタQ2がオンされるとともにトランジスタQ1もオンされて、第2電流通路11bは導通される。
【0045】
したがって、通常動作時において、電流は第1電流通路11a及び第2電流通路11bの両方を通過することができる。これにより、シャントレギュレータS1のカソード端子には第1電流通路11a及び第2電流通路11bの両方を通過した電流が流入する。
【0046】
高速起動スタンバイ時には、メイン回路30からバックライト駆動回路20への制御信号BL‐SWはLowとなる。このため、トランジスタQ1、Q2はオフになり、第2電流通路11bには電流は流れない。すなわち、第2電流通路11bは遮断される。
【0047】
以上のように、通常動作時には電流は第1電流通路11a及び第2電流通路11bの両方を通過し、高速起動スタンバイ時には第2電流通路11bを通過せずに第1電流通路11aを通過する。ここで、抵抗R1〜R3の抵抗値をそれぞれRa〜Rcとすると、第1電流通路11aの合成抵抗値はRb+Rcとなり、第1電流通路11a及び第2電流通路11bの合成抵抗値はRa(Rb+Rc)/(Ra+Rb+Rc)となる。すなわち、電流通路11aの合成抵抗値は、第1電流通路11a及び第2電流通路11bの合成抵抗値よりも大きい。電圧は一定であることから、高速起動スタンバイ時にシャントレギュレータS1のカソード端子に流入する電流(バイアス電流)は、通常動作時のシャントレギュレータS1のカソード端子に流入する電流よりも少なくなる。すなわち、電流可変部11は抵抗値を変えることにより、高速起動スタンバイ時にシャントレギュレータS1のカソード端子に流入する電流を制限する。
【0048】
図3は、シャントレギュレータS1のバイアス電流と伝達利得との関係を示す図である。縦軸は、シャントレギュレータS1のリファレンス端子とカソード端子との間の伝達利得の大きさを示す。シャントレギュレータS1のカソード端子側及びリファレンス端子側の電圧をそれぞれVc及びVrとすると、伝達利得はΔVc/ΔVrで表される。横軸は、シャントレギュレータS1のカソード端子に流入するバイアス電流の大きさを示す。
【0049】
図3に示すように、シャントレギュレータS1のカソード端子に流入するバイアス電流が小さくなるほど、シャントレギュレータS1のリファレンス端子とカソード端子との間の伝達利得は小さくなる。したがって、高速起動スタンバイ時には電流可変部11によって通常動作時よりも伝達利得が小さくなる。
【0050】
図4は、制御系の開ループ伝達関数の周波数特性を示すボード線図である。ここで、制御系の開ループ伝達関数とは、フィードバック部によるフィードバック制御系の一巡伝達関数を示す。縦軸は開ループ伝達利得の大きさを示し、横軸は周波数の大きさを示している。実線A及び実線Bはそれぞれ通常動作時及び高速起動スタンバイ時の開ループ伝達利得の変化を示している。
【0051】
また、矢印X及び矢印Yは、それぞれ高速起動スタンバイ時及び通常動作時に有効に制御できる周波数帯域を示している。なお、フィードバック部はフィードバック制御系のため、通常動作時の開ループ伝達利得が0dBの時の周波数(実線Aと横軸との交点)までが通常動作時に有効に制御できる周波数帯域Yとなり、高速起動スタンバイ時の開ループ伝達利得が0dBの時の周波数(実線Bと横軸との交点)までが高速起動スタンバイ時に有効に制御できる周波数帯域Xとなる。
【0052】
図3に示すように、シャントレギュレータS1のカソード端子に流入するバイアス電流が減少するのに従って、シャントレギュレータS1のリファレンス端子とカソード端子との間の伝達利得が減少する。すなわち、前述したように、高速起動スタンバイ時には電流可変部11によって通常動作時よりもシャントレギュレータS1のカソード端子に流入するバイアス電流が小さくなり、シャントレギュレータS1のリファレンス端子とカソード端子との間の伝達利得が小さくなる。
【0053】
そして、シャントレギュレータS1のリファレンス端子とカソード端子との間の伝達利得が減少すると、
図4に示すように制御系(フィードバック制御系)の開ループ伝達利得も減少する。すなわち、
図4の実線Bの高速起動スタンバイ時には実線Aの通常動作時よりも開ループ伝達利得が小さくなる。この結果、高速起動スタンバイ時に有効に制御できる周波数帯域Xは、通常動作時に有効に制御できる周波数帯域Yよりも狭くなる。
【0054】
図5Aは通常動作時の電源制御IC12のフィードバック信号の波形を示し、
図5Bは
図5AのG部の拡大図を示している。
図5CはトランスTrのコアに発生する磁歪力の波形を示している。
図4に示すように、通常動作時の有効に制御できる周波数帯域Yは高速起動スタンバイ時よりも広くなる。このため、通常動作時には電源制御IC12のフィードバック信号の波形は矩形になるとともに、トランスTrのコアに発生する磁歪力の波形も矩形になる。これにより、トランスTrのコアに発生する磁歪力はフィードバック信号の周期に合わせて可聴周波数で間歇的に繰り返して発生し、一次巻線N1及びコアを振動させる。これにより、トランスTrに唸り音が発生する。
【0055】
図6は、通常動作時のトランスTrのコアに発生する磁歪力の周波数成分とエネルギーとの関係を示す図である。縦軸はトランスTrのコアに作用するエネルギーの大きさを示し、横軸は周波数を示している。エネルギーが大きくなるほど、磁歪によるコアの収縮が大きくなる。矢印Eは各周波数成分におけるエネルギーの大きさを示し、実線Cは周波数成分に対するエネルギーの大きさの変化を示している。周波数が大きくなるほどエネルギーは減少する。
【0056】
図7Aは高速起動スタンバイ時の電源制御IC12のフィードバック信号の波形を示し、
図7Bは
図7AのH部の拡大図を示している。
図7CはトランスTrのコアに発生する磁歪力の波形を示している。
【0057】
図4に示すように、フィードバック部において高速起動スタンバイ時に有効に制御できる周波数帯域Xは、通常動作時に有効に制御できる周波数帯域Yよりも狭くなる。すなわち、電流可変部11により高速起動スタンバイ時には有効に制御できる周波数帯域の狭小化が生じる。この時、一部の周波数成分は周波数帯域の狭小化に追従できない。このため、通常動作時とは異なり、高速起動スタンバイ時には
図7Aに示すように電源制御IC12のフィードバック信号の波形は矩形波の角部分を丸ませた波形(矩形波を鈍らせた波形)になる。同様に、
図7Cに示すように、高速起動スタンバイ時にはトランスTrのコアに発生する磁歪力の波形も矩形波の角部分を丸ませた波形(矩形波を鈍らせた波形)になる。
【0058】
図8は、高速起動スタンバイ時のトランスTrのコアに発生する磁歪力の周波数成分とエネルギーとの関係を示す図である。縦軸はトランスTrのコアに作用するエネルギーの大きさを示し、横軸は周波数を示している。エネルギーが大きくなるほど、磁歪によるコアの収縮が大きくなる。矢印Fは各周波数成分におけるエネルギーの大きさを示し、破線Dは周波数成分に対するエネルギーの大きさの変化を示している。
【0059】
通常動作時(
図6参照)と同様に、高速起動スタンバイ時にも周波数が大きくなるほどエネルギーが減少する。また、高速起動スタンバイ時(破線D)では、通常動作時(実線C)よりも磁歪力の高調波成分が減少する。これにより、人体の耳に聞こえやすい周波数帯域(2kHz〜3kHz)のノイズ成分を減少させることができる。したがって、高速起動スタンバイ時のトランスTrの唸り音を低減することができる。その結果、高速起動スタンバイ時のように比較的静かな環境において、トランスTrの唸り音による不快感を軽減することができる。
【0060】
なお、通常動作時には、音声出力部4から音声が出力されているため、トランスTrの唸り音はマスクされる。このため、通常動作時にトランスTrの唸り音を低減しなくとも大きな支障はない。また、通常動作時には電流可変部11によって第1電流通路11a及び第2電流通路11bの両方に電流を流すことができるため、抵抗によるロスを低減することができる。
【0061】
本実施形態によると、トランスTrの一次巻線N1への入力電圧Vinの印加をオンオフする電界効果トランジスタQ4(スイッチング素子)と、トランスTrの二次側の出力電圧Voutに応じたフィードバック信号を生成するフィードバック部と、フィードバック信号に基づいて電界効果トランジスタQ4を制御する電源制御IC12とを備える。これにより、出力電圧Voutを一定にすることができる。したがって、メイン回路30及びバックライト駆動回路20に安定して出力電圧Voutを供給することができる。
【0062】
また、シャントレギュレータS1に流入する電流を可変する電流可変部11を設けている。これにより、電流可変部11によりシャントレギュレータS1に流入する電流を少なくする(制限する)と、トランスTrのコアの振動の周波数の高調波成分が減少する。したがって、トランスTrの唸り音を低減することができる。
【0063】
一方、電流可変部11によりシャントレギュレータS1に流入する電流を多くすると、シャントレギュレータS1に流入する電流を少なくする(制限する)場合よりも抵抗によるロスを低減することができる。したがって、電流効率の高いスイッチング電源装置10を容易に実現することができる。
【0064】
また、電流可変部11は、直列接続された抵抗R2(第1抵抗)及び抵抗R3(第1抵抗)を有してシャントレギュレータS1に接続される第1電流通路11aと、抵抗R2の上流側で第1電流通路11aから分岐して抵抗R3の下流側で第1電流通路11aに合流する第2電流通路11bとを備え、第2電流通路11bは抵抗R1(第2抵抗)と、第2電流通路11bの導通と遮断とを切り替えるトランジスタQ1(スイッチ)とを有する。
【0065】
これにより、シャントレギュレータS1に流入する電流を制限する場合にはトランジスタQ1をオフにすると、第2電流通路11bが遮断される。シャントレギュレータS1に流入する電流の制限を解除する場合にはトランジスタQ1をオンにすると、第2電流通路11bが導通される。したがって、シャントレギュレータS1に流入する電流の制限及び制限解除を容易に行うことができる。
【0066】
また、メイン回路30からバックライト駆動回路20へ出力される制御信号BL−SWに基づいてトランジスタQ1がオンオフされる。これにより、シャントレギュレータS1に流入する電流の制限及び制限解除を簡単な構成で実現することができる。
【0067】
また、バックライト3b(駆動対象)の駆動待機時(高速起動スタンバイ時)にトランジスタQ1がオフされるため、シャントレギュレータS1に流入する電流を容易に制限することができる。一方、バックライト3bの駆動時(通常動作時)にはトランジスタQ1がオンされる。これにより、通常動作時にはシャントレギュレータS1に流入する電流の制限を容易に解除することができる。
【0068】
また、バックライト駆動回路20はスイッチング電源装置10に接続されているため、安定してバックライト3bを駆動させることができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図9は第2実施形態のスイッチング電源装置の回路構成を示している。説明の便宜上、前述の
図1〜
図8に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態のスイッチング電源装置10はトランスTrの二次側の回路トポロジーが第1実施形態とは異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0070】
本実施形態のスイッチング電源装置10はフォワード方式により回路構成されている。
トランスTrの二次巻線N2の一端はダイオードD1のアノードに接続され、他端は接地される。ダイオードD1のカソードはダイオードD2のカソード及び磁心入りコイルL1の一端に接続され、磁心入りコイルL1の他端は電解コンデンサC1の正極及び出力端子T1に接続されるとともに電解コンデンサC1の負極は接地される。
【0071】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、スイッチング電源装置10をフォワード方式により構成するため、小電力から大電力まで幅広い用途に使用することができる。また、低電圧・大電流の用途に適用した場合でも高い変換効率を得ることができる。
【0072】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図10は第3実施形態のスイッチング電源装置の回路構成を示している。説明の便宜上、前述の
図1〜
図8に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態のスイッチング電源装置10は電流可変部11の構成が第1実施形態とは異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態の電流可変部11は第1電流通路11a及び第2電流通路11bに加えて、第3電流通路11cを有する。第3電流通路11cは抵抗R2の上流側で第1電流通路11aから分岐して抵抗R3の下流側で第1電流通路11aに合流する。この時、第2電流通路11b及び第3電流通路11cは並列に設けられる。
【0074】
第3電流通路11cは直列接続される抵抗R10及びトランジスタQ5を有する。抵抗R10の一端はトランジスタQ5のコレクタに接続され、他端は抵抗R1に接続される。トランジスタQ5のエミッタは電解コンデンサC1に接続されるとともにベースは抵抗R11の一端に接続され、抵抗R11の他端はトランジスタQ6のコレクタに接続される。トランジスタQ6のベースはメイン回路30に接続され、エミッタは接地される。
【0075】
上記構成のスイッチング電源装置10において、メイン回路30からの信号によりトランジスタQ5、Q6はオンオフされる。トランジスタQ6がオンされるとトランジスタQ5がオンして第3電流通路11cは導通する。トランジスタQ6がオフされるとトランジスタQ5がオフされて第3電流通路11cは遮断される。これにより、通常動作時には第1電流通路11a〜第3電流通路11cに電流を流すとともに、高速起動スタンバイ時には第2電流通路11b及び第3電流通路11cを遮断して第1電流通路11aに電流を流し、他の状態(例えば、表示部3の液晶表示パネル3aが非表示の状態で、録画装置で放送番組等を録画している場合等)では例えば第2電流通路11bを遮断して第1電流通路11a及び第3電流通路11cに電流を流すことができる。これにより、上記他の状態では電流可変部11によって通常動作時よりもシャントレギュレータS1に流入する電流を制限してトランスTrの唸り音を低減することができる。
【0076】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、電流可変部11は第2電流通路11bと並列に接続される第3電流通路11cを有し、第3電流通路11cはトランジスタQ5、Q6のオンオフにより導通と遮断とが切り替えられる。これにより、通常動作時と高速起動スタンバイ時との間の中間状態(例えば、表示部3の液晶表示パネル3aが非表示の状態で、録画装置で放送番組等を録画している場合等)でもトランスTrの唸り音を低減することができる。