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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-228731(P2015-228731A)
(43)【公開日】2015年12月17日
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
   H02K 24/00 20060101AFI20151120BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20151120BHJP
【FI】
   H02K24/00
   G01D5/20 110H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-113060(P2014-113060)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】大河原 広樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊史
(72)【発明者】
【氏名】涌井 泰邦
(72)【発明者】
【氏名】中里 憲一
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 学
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA20
2F077AA47
2F077CC02
2F077FF34
2F077PP26
2F077QQ03
2F077TT38
(57)【要約】
【課題】ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致に起因する検出角度誤差を低減するレゾルバを提供する。
【解決手段】i番目のティース11に巻かれる余弦相コイル17の巻数と巻き方向、並びに、正弦相コイル19の巻数と巻き方向が、Tc,i=TSmaxcos(msξi2)+T2ccos(meξi1)、Ts,i=TSmaxsin(msξi2)+T2scos(meξi1)で設定されているレゾルバ。ただし、TSmax:余弦相コイルと正弦相コイルの第一基準巻数、T2c:余弦相コイルの第二基準巻数、T2s:正弦相コイルの第二基準巻数、mx:軸倍角、me:励磁コイルの極対数、ms:余弦相コイルと正弦相コイルの極対数、θ1:励磁コイルの位相、θ2:余弦相コイルと正弦相コイルの位相、ξi:i番目のティースの機械角、N:ティースの総数。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1相励磁/2相出力のレゾルバであって、
ティースの総数をN(ただし、Nは偶数とする)とし、iは1以上N以下の各整数を表すとして、
i番目のティースに巻かれる余弦相コイルの巻数と巻き方向が
【数24】

で設定され、
i番目のティースに巻かれる正弦相コイルの巻数と巻き方向が
【数25】

で設定されている(ただし、
TSmax:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の第一の基準巻数
T2c:余弦相コイルの第二の基準巻数
T2s:正弦相コイルの第二の基準巻数
mx:軸倍角
me:励磁コイルの極対数
ms:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の極対数
θ1:励磁コイルの位相
θ2:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の位相
ξi:i番目のティースの機械角(=2π(i-1)/N)
とし、ms±me±mx=0、且つ、|mx|≠|2me|が成立し、余弦相コイルの巻数はTc,iの絶対値で表され、余弦相コイルの巻き方向はTc,iの符号で定まり、正弦相コイルの巻数はTs,iの絶対値で表され、正弦相コイルの巻き方向はTs,iの符号で定まる)、
ことを特徴とするレゾルバ。
【請求項2】
請求項1に記載のレゾルバであって、
上記余弦相コイルの第二の基準巻数T2cと上記正弦相コイルの第二の基準巻数T2sは、αを0<|α|<1を満たすロータギャップ変化率とし、η1とη2をそれぞれ0<η1<1、0<η2<1を満たす予め定められた定数値として、事前に見込まれるレゾルバの検出角度誤差の最大振幅Amaxの値をη1倍した値と最大位相誤差μmaxの値をη2倍した値の逆位相に基づいて、
【数26】

で得られる値であることを特徴とするレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角センサの一種であるレゾルバに関わり、より詳しくは、ステータの軸ずれまたはロータの軸ずれに起因する検出角度誤差を低減するレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルバは、トランスの原理を応用して、物理的な回転角に応じたアナログ信号を出力するセンサであり、典型的には、磁性体で構成されたステータの内側に磁性体で構成されたロータが配置されている構成を持つ。このような従来のレゾルバの一例として、ステータの内側に設けられている複数のティースとロータとの間のギャップパーミアンスの変化を利用してロータの物理的な回転角に応じたアナログ信号を出力する、1相励磁/2相出力のバリアブルリラクタンス型レゾルバ100の概略構成図を図1に示す。
【0003】
<構造>
例示するバリアブルリラクタンス型レゾルバ100は、図1に示すように、円筒状のステータ10と、柱状のロータ20とを含んでいる。
【0004】
円筒状のステータ10の内壁には複数のティース11が一巡りするように等間隔で配列されている。この一巡配列を含む断面領域において、複数のティース11のロータ20に向かう端面11aによって仮想円筒50の壁面が構成されるように、各ティース11がステータ10の内壁から突出している。以下、仮想円筒50の中心軸線を、ステータ10の中心軸線12あるいは単に中心軸線12と呼称する。図1では、見易さを考慮して、一部のティースと一部の端面にのみ符号を附している。図1に示す例ではティース11の数は16個である。
【0005】
この例では、ロータ20は、電動機や発電機などの回転機械に含まれる部品の回転運動と連動して回転するシャフト(図示せず)と連結されており、回転軸線21を中心として回転する。ロータ20は、ステータ10の内部空間であってティース11と対向する位置に、各ティース11と接触しないように、且つ、ロータ20の回転軸線21がステータ10の中心軸線12に一致するように、配置されている。このように、バリアブルリラクタンス型レゾルバ100は、ステータ10の内部空間でロータ20が自由に回転できる構成を有している。
【0006】
ロータ20の外周形状は、ロータ20が回転したときに各ティース11とロータ20とが接触しない形状であって、バリアブルリラクタンス型レゾルバ100の軸倍角をmxとしたときにティース11とロータ20との間のギャップパーミアンスがロータ20の外周の一周でmxサイクルの正弦波状あるいは余弦波状の変化を伴うような形状である。具体的には、ロータ20の回転軸線21の方向に沿った任意の位置でのロータ20の垂直断面において、便宜的に、ロータ20の回転軸線21が特異点(直交座標系における原点に相当する)を通る円座標系の動径rによって回転軸線21からロータ20の外周上の任意の点までの距離を表すとし、偏角σによって円座標系上で任意に定められた半直線(始線)と動径rとが成す特異点回りの角度を表すとすると、ロータ20の外周形状は式(1)で与えられる。ただし、mxは軸倍角(つまり、ロータの極対数)、r0は基準半径、δ0はσ=π/2mx[rad]における仮想円筒50とロータ20とのギャップ、δ1はσ=0[rad]における仮想円筒50とロータ20とのギャップ、α=(δ01)-1(ただし、0<|α|<1である)はロータギャップ変化率を表す。なお、基準半径r0はロータの外周を規定する半径であり、δ0/(1-|α|)よりもある程度大きく設定され、通常は、ロータ20の回転軸線21からティース11の端面11aまでの距離(つまり、仮想円筒50の半径)とされる。図1に示すロータ20は、mx=2の場合のロータである。
【数1】
【0007】
<磁気回路のためのコイル構成>
各ティース11には励磁コイル15が所定の巻数と巻き方向で巻かれており、これらの励磁コイル15は直列接続されている。励磁コイル15の直列接続で構成される回路部には励磁電源(図示せず)から交流電圧Veが印加される。各ティース11での励磁コイル15の巻数と巻き方向は上記交流電圧Veが印加されたときに正弦波状または余弦波状の励磁磁束分布を得られるような巻数と巻き方向である。なお、歪が少ない良好な励磁磁束分布を得るために、隣り合うティース11で励磁コイル15の巻き方向は逆になっていることが好ましい。具体的には、励磁コイル15の極対数をmeとし、励磁コイル15の基準巻数をTEmaxとし、複数のティース11のうち任意に定められた基準となるティース11(以下、基準ティース11Sと呼称する)と任意のティース11とが成す中心軸12周りの角度(以下、機械角と呼称する)をξとすると、機械角ξに対応するティース11に巻かれている励磁コイル15の巻数と巻き方向は式(2)のTeで与えられる。つまり、巻数は|Te|であり、巻き方向はTeの極性が正であれば時計回り、Teの極性が負であれば反時計回りである。ここで、「時計回り」と「反時計回り」は、例えば、中心軸12からティース11を見たときの巻き方向とする(以下、同様である)。なお、基準ティース11Sの位置が機械角ξ=0[rad]である。また、ティース11の総数をNとするとme=N/2である。図1では、見易さを考慮して、一部の励磁コイルにのみ符号を附している。
【数2】
【0008】
さらに、ティース11には2相の検出用コイルが巻かれている。一方の検出用コイルを余弦相コイル17と呼称し、他方の検出用コイルを正弦相コイル19と呼称する。これらの余弦相コイル17は直列接続されており、これらの正弦相コイル19も直列接続されている。
【0009】
各ティース11には、各励磁コイル15の極性を考慮しつつ、余弦相コイル17の直列接続で構成される回路部にステータ10の内周の一周(つまり、機械角で0[rad]から2π[rad]の範囲)でmxサイクルの余弦波状出力電圧が生じるような巻数と巻き方向で、余弦相コイル17が巻かれている。具体的には、機械角ξに対応するティース11に巻かれている励磁コイル15の巻数と巻き方向を式(2)で表されるTeとし、検出用コイルの極対数をmsとし、検出用コイルの基準巻数をTSmaxとすると、機械角ξに対応するティース11に巻かれている余弦相コイル17の巻数と巻き方向は式(3)のTcで与えられる。つまり、巻数は|Tc|であり、巻き方向はTcの極性が正であれば時計回り、Tcの極性が負であれば反時計回りである。ただし、正確を期すと、|Tc|=0となるときの機械角ξに対応するティース11には余弦相コイル17は巻かれていない。図1では、見易さを考慮して、一部の余弦相コイルにのみ符号を附している。
【数3】
【0010】
また、各ティース11には、各励磁コイル15の極性を考慮しつつ、正弦相コイル19の直列接続で構成される回路部にステータ10の内周の一周(つまり、機械角で0[rad]から2π[rad]の範囲)でmxサイクルの正弦波状出力電圧が生じるような巻数と巻き方向で、正弦相コイル19が巻かれている。具体的には、機械角ξに対応するティース11に巻かれている励磁コイル15の巻数と巻き方向を式(2)で表されるTeとし、検出用コイルの極対数をmsとし、検出用コイルの基準巻数をTSmaxとすると、機械角ξに対応するティース11に巻かれている正弦相コイル19の巻数と巻き方向は式(4)のTsで与えられる。つまり、巻数は|Ts|であり、巻き方向はTsの極性が正であれば時計回り、Tsの極性が負であれば反時計回りである。ただし、正確を期すと、|Ts|=0となるときの機械角ξに対応するティース11には正弦相コイル19は巻かれていない。図1では、見易さを考慮して、一部の正弦相コイルにのみ符号を附している。
【数4】
【0011】
なお、バリアブルリラクタンス型レゾルバ100では、ロータ20はコイルを備えていない。
【0012】
上述の構成では、励磁コイル15に流れる交流電流によって誘導される変動磁界においてロータ20が回転すると、ロータ20の回転角に応じた電圧振幅を持つ余弦相の出力電圧Vcosが余弦相コイル17で構成される回路部に生じ、ロータ20の回転角に応じた電圧振幅を持つ正弦相の出力電圧Vsinが正弦相コイル19で構成される回路部に生じることから、これら2相の出力電圧からロータ20の回転角が検出可能になる。
【0013】
このようなレゾルバは、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013-53890号公報
【特許文献2】特開平10-239010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の構成では、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致(図2参照)は、ティース11とロータ20との間のギャップに影響を及ぼし、この結果、ティース11とロータ20との間のギャップパーミアンスの変化が理想的な正弦波形あるいは余弦波形でなくなってしまう。ギャップパーミアンスの変化は2相の出力電圧のぞれぞれの電圧振幅に現れるので、ギャップパーミアンスの変化の乱れは回転角の検出角度誤差に直結する。つまり、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致は回転角の検出精度を劣化させてしまう。
【0016】
ここでは、バリアブルリラクタンス型レゾルバを例にして説明したが、ブラシレスレゾルバなど一般的なレゾルバの構成においても同様の問題が生じる。
【0017】
そこで、本発明は、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致つまりステータの軸ずれまたはロータの軸ずれに起因する検出角度誤差を低減するレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のレゾルバは、1相励磁/2相出力のレゾルバであって、ティースの総数をN(ただし、Nは偶数とする)とし、iは1以上N以下の各整数を表すとして、i番目のティースに巻かれる余弦相コイルの巻数と巻き方向が
【数5】

で設定され、i番目のティースに巻かれる正弦相コイルの巻数と巻き方向が
【数6】

で設定されている。ただし、
TSmax:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の第一の基準巻数
T2c:余弦相コイルの第二の基準巻数
T2s:正弦相コイルの第二の基準巻数
mx:軸倍角
me:励磁コイルの極対数
ms:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の極対数
θ1:励磁コイルの位相
θ2:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の位相
ξi:i番目のティースの機械角(=2π(i-1)/N)
とし、ms±me±mx=0、且つ、|mx|≠|2me|が成立する。余弦相コイルの巻数はTc,iの絶対値で表され、余弦相コイルの巻き方向はTc,iの符号で定まり、正弦相コイルの巻数はTs,iの絶対値で表され、正弦相コイルの巻き方向はTs,iの符号で定まる。
【0019】
余弦相コイルの第二の基準巻数T2cと正弦相コイルの第二の基準巻数T2sは、例えば、αを0<|α|<1を満たすロータギャップ変化率とし、η1とη2をそれぞれ0<η1<1、0<η2<1を満たす予め定められた定数値として、事前に見込まれるレゾルバの検出角度誤差の最大振幅Amaxの値をη1倍した値と最大位相誤差μmaxの値をη2倍した値の逆位相に基づいて、
【数7】

で得られる値とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に拠れば、余弦相コイルの巻数と巻き方向をT2ccos(meξi1)で表される巻数と巻き方向で調整し、正弦相コイルの巻数と巻き方向をT2scos(meξi1)で表される巻数と巻き方向で調整してあるため、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致に起因する検出角度誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のバリアブルリラクタンス型レゾルバ100の概略構成図。
図2】ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致を説明する図。
図3】ロータの基準位置と回転角を説明する図。
図4】従来の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がない場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数10、軸倍角1)。
図5】従来の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がある場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数10、軸倍角1)。
図6】実施形態(具体例1)の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がない場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数10、軸倍角1)。
図7】実施形態(具体例1)の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がある場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数10、軸倍角1)。
図8】従来の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がない場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数16、軸倍角2)。
図9】従来の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がある場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数16、軸倍角2)。
図10】実施形態(具体例2)の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がない場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数16、軸倍角2)。
図11】実施形態(具体例2)の巻数と巻き方向で、ロータの回転軸線とステータの中心軸線との不一致がある場合の機械角と検出角度誤差との関係を示す図(ティース総数16、軸倍角2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
バリアブルリラクタンス型レゾルバを例にして本発明の実施形態を説明する。この実施形態のバリアブルリラクタンス型レゾルバの構造は従来技術として説明した1相励磁/2相出力のバリアブルリラクタンス型レゾルバ100の構造と同じであり、また、磁気回路のためのコイル構成も、余弦相コイルと正弦相コイルのそれぞれの巻数と巻き方向を除き、バリアブルリラクタンス型レゾルバ100におけるコイル構成と同じであるから、巻数と巻き方向の説明以外の全ての上記説明をここに援用する。従来技術と共通の構成要素には同じ符号を割り当てて重複説明を省略し、本発明の実施形態と従来技術との差異を説明する。
【0023】
《課題の分析》
上述の従来的なバリアブルリラクタンス型レゾルバ100の構成に基づき、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致に起因する回転角の検出角度誤差を検討する。
【0024】
基準ティース11Sを1番目のティースとして、基準ティース11Sから数えて反時計回りにi番目(i=1,2,…,N)のティース11の機械角ξをξiとすると、ξi=2π(i-1)/N[rad]であり、既述のように、i番目のティース11に巻かれる励磁コイル15と余弦相コイル17と正弦相コイル19のそれぞれの巻数と巻き方向は式(5)で決めることができる。なお、ここでは、励磁コイル15の位相θ1と検出用コイルの位相θ2を考慮している。
Te,i:i番目のティースに巻かれる励磁コイルの巻数と巻き方向
Tc,i:i番目のティースに巻かれる余弦相コイルの巻数と巻き方向
Ts,i:i番目のティースに巻かれる正弦相コイルの巻数と巻き方向
TEmax:励磁コイルの基準巻数
TSmax:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の基準巻数
me:励磁コイルの極対数
ms:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の極対数
θ1:励磁コイルの位相
θ2:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の位相
ξi:i番目のティースの機械角(=2π(i-1)/N)
N:ティースの総数(ただし、Nは偶数とする)
【数8】
【0025】
このとき、図3に示すように、ロータ20の基準位置を上記偏角σの0[rad](すなわち、ギャップがδ1となる位置)と上記機械角ξの0[rad](すなわち、基準ティース11Sの位置)とが一致するように定めると、ロータ20がその回転軸線21を中心として反時計回りに基準位置から回転角θ[rad]だけ回った位置に在るときの余弦相の出力電圧と正弦相の出力電圧は式(6)で表される。なお、この式では、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致によって各相の出力電圧に誤差が生じることを考慮している。
Vcos:余弦相の出力電圧
Vsin:正弦相の出力電圧
ie:励磁電流
A1:各相(余弦相、正弦相)の最大振幅
A2c:余弦相の出力電圧の誤差
A2s:正弦相の出力電圧の誤差
mx:軸倍角(ロータの極対数)
θ0:励磁電圧と2相出力電圧との位相差
ただし、A2cおよびA2sのそれぞれの符号は軸ずれ方向に応じて決まる。
【数9】
【0026】
このとき、例えばトラッキングループ方式のレゾルバ/デジタル変換器では、レゾルバ/デジタル変換器の出力角(ただし電気角[=軸倍角×機械角]として表す)をmxθ'[rad e]とすると、式(7)で表される制御偏差εがゼロになるように制御される。トラッキングループ方式については例えば参考文献1を参照されたい。
(参考文献1)中里憲一他、「レゾルバーデジタル(R/D)コンバータの開発」、航空電子技報No.32、航空電子工業株式会社、2009.03.
【数10】
【0027】
よって、式(8)が成立する。
【数11】
【0028】
mxθ'≒mxθ+θ0であり、sin(mx(θ'-θ)-θ0)≒mx(θ'-θ)-θ0に注意すると、検出角度誤差(電気角誤差ともいう)mxθerrについて式(9)が成立する。
【数12】
【0029】
このように、余弦相の出力電圧の誤差A2cと正弦相の出力電圧の誤差A2sは、検出角度誤差mxθerrの振幅と位相誤差に現れる。
【0030】
従来技術によると、例えば、ティース総数Nが10のステータで軸倍角mxが1のレゾルバを構成するためには、所与の設計値をTEmax=20,TSmax=210,me=5,ms=4,mx=1,α=0.5とすると、各コイルの巻数と巻き方向は表1に示すとおりに設定される。
【表1】
【0031】
θ0=0とすると、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerr図4に示すとおりであり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対してξ=-π/2[rad]の方向つまり図2に示すx軸の矢印の向きに+15μmずれているときの検出角度誤差mxθerr図5に示すとおりである。なお、図4図5だけでなく図4図11に示すグラフでは、縦軸を検出角度誤差mxθerrとし(ただし、単位は電気角を表す[rad e]とし、ラベルを「電気角誤差」と表示している)、横軸を機械角(ただし、単位は[°]としている)としている。ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)はほぼ0[rad e]であり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対して図2に示すx軸の矢印の向きに+15μmずれているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)は約0.03[rad e]である。
【0032】
《本発明》
このように、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致に起因する回転角の検出角度誤差mxθerrは機械角で0[rad]から2π[rad]の範囲でmxサイクルの正弦波状に変化することが理解できる。よって、各ティース11に巻かれる2相の検出用コイルの巻数と巻き方向を調整することによって、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致に起因する回転角の検出角度誤差mxθerrを低減できる。
【0033】
そこで、i番目のティース11に巻かれる励磁コイル15と余弦相コイル17と正弦相コイル19のそれぞれの巻数と巻き方向を以下の式(10)で設定する。ここでは、検出用コイルの巻数と巻き方向の調整の程度は励磁コイル15の作る磁界の影響に基づくとしている。また、励磁コイル15の位相θ1と検出用コイルの位相θ2を考慮している。
Te,i:i番目のティースに巻かれる励磁コイルの巻数と巻き方向
Tc,i:i番目のティースに巻かれる余弦相コイルの巻数と巻き方向
Ts,i:i番目のティースに巻かれる正弦相コイルの巻数と巻き方向
TEmax:励磁コイルの基準巻数
TSmax:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の第一の基準巻数
T2c:余弦相コイルの第二の基準巻数
T2s:正弦相コイルの第二の基準巻数
me:励磁コイルの極対数
ms:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の極対数
θ1:励磁コイルの位相
θ2:検出用コイル(余弦相コイル、正弦相コイル)の位相
ξi:i番目のティースの機械角(=2π(i-1)/N)
N:ティースの総数(ただし、Nは偶数とする)
【数13】
【0034】
この場合、ロータ20の回転角がθ[rad]のときに、i番目のティース11に発生する余弦相出力電圧Vcos,iは以下の式(11)で表される。
ie:励磁電流
P:ギャップパーミアンスの平均値
mx:軸倍角
α:ロータギャップ変化率
【数14】
【0035】
同様に、ロータ20の回転角がθ[rad]のときに、i番目のティース11に発生する正弦相出力電圧Vsin,iは以下の式(12)で表される。
【数15】
【0036】
よって、ms±me±mx=0(つまり、ms+me+mx=0、ms+me-mx=0、ms-me+mx=0、ms-me-mx=0のうちいずれか一つ)、且つ、|me|≠|ms|、且つ、|mx|≠|2me|、|ms|≠0、|me|≠0、|mx|≠0の場合(ただし、記号|・|は絶対値を表す)、Nが偶数であることに注意すると、余弦相出力電圧Vcosと正弦相出力電圧Vsinは以下の式(13)で表される。
【数16】
【0037】
θ0=±θ1±θ2として式(6)と式(13)とを比較することによって、式(14)が成立する。
【数17】
【0038】
よって、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致に起因する2相の出力電圧のそれぞれの誤差A2cとA2sを解消するためには、式(15)が成立するようにT2cとT2sを定めれば良いことがわかる。誤差A2cとA2sの解消は、式(14)と式(15)を比較して異なる部分、つまり式(15)中の負号に表れている。
【数18】
【0039】
T2cとT2sの具体的な決定方法について説明を加える。もし、検出用コイルの最大振幅A1と、余弦相の出力電圧の誤差A2cと、正弦相の出力電圧の誤差A2sのそれぞれが検出可能であれば、この検出値に基づいて、式(16)によってT2cとT2sを定めることができる。
【数19】
【0040】
しかし、バリアブルリラクタンス型レゾルバ100は、通常、レゾルバ/デジタル変換器に接続されるから、トラッキングループ方式のレゾルバ/デジタル変換器であれば上述の検出角度誤差mxθerrに基づいてT2cとT2sを定めることができる。
【0041】
式(9)と式(14)を参酌すると、検出角度誤差mxθerrについて式(17)が成立する。
【数20】
【0042】
式(17)から、誤差A2cとA2sに由来する検出角度誤差mxθerrの振幅Aと位相誤差μは式(18)で与えられる。
【数21】
【0043】
よって、回転角の検出角度誤差mxθerrが予め分かっている場合に、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との不一致に起因する2相の出力電圧のそれぞれの誤差A2cとA2sを解消するためには、誤差A2cとA2sに由来する検出角度誤差mxθerrの振幅Aと位相誤差μに基づいて式(19)が成立するようにT2cとT2sを定めれば良いことがわかる。誤差A2cとA2sの解消は式(19)中の逆位相に表れている。
【数22】
【0044】
ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との相対的な軸ずれ量と軸ずれ方向が予め分かっている場合であれば、回転角の検出角度誤差mxθerrに基づいて、あるいは、検出用コイルの最大振幅A1と余弦相の出力電圧の誤差A2cと正弦相の出力電圧の誤差A2sに基づいて、つまり式(16)あるいは式(19)に基づいて、T2cとT2sを求めることができる。しかし、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との相対的な軸ずれ量と軸ずれ方向を予め知ることは現実的ではなく、また、レゾルバの使用環境によって軸ずれ量と軸ずれ方向は変化しえるので、特定の軸ずれ量および軸ずれ方向を前提として事前にT2cとT2sを決定することが必ずしも有意義とは言えない。また、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との許容限界を超える不一致が必ずしも発生するとは限らない。このような事情を勘案すると、式(16)に基づく場合には、例えば、事前に見込まれる余弦相出力電圧誤差A2cの最大値A2c,maxをγ1倍した値と、事前に見込まれる正弦相出力電圧誤差A2sの最大値A2s,maxをγ2倍した値に基づいて、式(20)によってT2cとT2sを定めればよい。γ1とγ2は、事前に定められた0<γ1<1、0<γ2<1を満たす定数値であり、例えばγ12=0.5である。あるいは、式(19)に基づく場合には、例えば、事前に見込まれる検出角度誤差mxθerrの最大振幅Amaxの値をη1倍した値と最大位相誤差μmaxの値をη2倍した値の逆位相に基づいて、式(21)によってT2cとT2sを定めればよい。η1とη2は、事前に定められた0<η1<1、0<η2<1を満たす定数値であり、例えばη12=0.5である。
【数23】
【0045】
なお、式(16)、式(19)、式(20)、式(21)のいずれかで得られるT2cとT2sの値が非整数値である場合には、当該値を切り捨て、または、切り上げ、または、四捨五入することによって整数値とすればよい。
【0046】
なお、少なくとも|T2c|≠0または|T2s|≠0であると、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerrが従来技術に比べて大きくなる。しかし、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12との相対的な軸ずれ量が大きいときには、この軸ずれに起因する検出角度誤差を低減することができ、想定される軸ずれ量の範囲内での検出角度誤差の変化量を小さくすることができる。回転角センサの一種であるロータリーエンコーダと比較して振動や衝撃などが想定される悪環境でレゾルバが使用されることを考えると、このようなトレードオフの関係はむしろ有利な効果といえる。
【0047】
<具体例1>
上記表1に示す例の場合に、事前に見込まれる検出角度誤差mxθerrの最大振幅Amaxの値を0.03[rad e]とし、最大位相誤差μmaxの値を0[rad]とし、θ0=0,η12=0.5とすると、式(21)から、T2c≒0.8,T2s=0を得る。よって、本発明の実施形態によると、各コイルの巻数と巻き方向は表2に示すとおりに設定される。
【表2】
【0048】
この場合、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerr図6に示すとおりであり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対してξ=-π/2[rad]の方向つまり図2に示すx軸の矢印の向きに+15μmずれているときの検出角度誤差mxθerr図7に示すとおりである。ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)は約0.016[rad e]であり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対して図2に示すx軸の矢印の向きに+15μmずれているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)は0.015[rad e]である。
【0049】
<具体例2>
従来技術によると、例えば、ティース総数Nが16のステータで軸倍角mxが2のレゾルバを構成するためには、所与の設計値をTEmax=20,TSmax=210,me=8,ms=6,mx=2,α=0.5とすると、各コイルの巻数と巻き方向は表3に示すとおりに設定される。
【表3】
【0050】
θ0=0とすると、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerr図8に示すとおりであり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対してξ=-π/2[rad]の方向つまり図2に示すx軸の矢印の向きに+0.25mmずれているときの検出角度誤差mxθerr図9に示すようになる。ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)はほぼ0[rad e]であり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対して図2に示すx軸の矢印の向きに+0.25mmずれているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)は0.034[rad e]である。
【0051】
これを参考に、事前に見込まれる検出角度誤差mxθerrの最大振幅Amaxの値を0.034[rad e]とし、最大位相誤差μmaxの値を0[rad]とし、θ0=0,η12=0.5とすると、式(21)から、T2c≒0.9,T2s=0を得る。よって、本発明の実施形態によると、各コイルの巻数と巻き方向は表4に示すとおりに設定される。
【表4】
【0052】
この場合、ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerr図10に示すとおりであり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対してξ=-π/2[rad]の方向つまり図2に示すx軸の矢印の向きに+0.25mmずれているときの検出角度誤差mxθerr図11に示すとおりである。ロータ20の回転軸線21とステータ10の中心軸線12とが一致しているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)は約0.034[rad e]であり、ステータ10の中心軸線12がロータ20の回転軸線21に対して図2に示すx軸の矢印の向きに+0.25mmずれているときの検出角度誤差mxθerrの幅(peak-to-peak)は0.018[rad e]である。
【0053】
本発明の要諦は、各ティースに巻かれる余弦相コイルと正弦相コイルのそれぞれの巻数と巻き方向の決定にあり、このような巻数と巻き方向は、バリアブルリラクタンス型レゾルバに限らず、ブラシレスレゾルバなど一般的な1相励磁/2相出力のレゾルバに適用できる。また、本発明を適用可能なレゾルバに含まれるステータとロータのそれぞれの形状に限定はない。ステータの形状は、上述の円筒状ではなく、例えば、平座金のような形状でもよい。この場合であっても、形状以外の構造に係る上記技術事項(例えばティースの配列やティースの構成など)が妥当する。また、ロータの形状は、上述の柱状ではなく、薄い板状でもよい。この場合であっても、形状以外の構造に係る上記技術事項(例えばロータの外周形状やステータ内部におけるロータの配置など)が妥当する。この他、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 ステータ
11 ティース
11a ティース端面
11S 基準ティース
12 中心軸線
15 励磁コイル
17 余弦相コイル
19 正弦相コイル
20 ロータ
21 回転軸線
50 仮想円筒
100 バリアブルリラクタンス型レゾルバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11