【実施例1】
【0012】
図1乃至
図5に、本発明のスイッチギヤの実施例1を示す。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施例のスイッチギヤは、正面扉12と背面扉14を有する筐体13と、この筐体13の内部に収納され、正面仕切り板1に支持されて電流の投入及び遮断を行う上段引出型遮断器11A及び下段引出型遮断器11Bと、各列盤に電流を供給する母線9と、母線9に対して上段引出型遮断器11A及び下段引出型遮断器11Bと反対側に設置された母線室仕切り板3と、母線室仕切り板3に支持されている導体固定用碍子6と、導体固定用碍子6に支持され、各負荷へ電流を供給する上段導体4及び下段導体5と、上段導体4及び下段導体5に接続され、上下方向に引出し可能なケーブル15、16とから概略構成されている。
【0014】
そして、本実施例では、ケーブル15、16の引出方向(上から引出すか、下から引出すか)に対応して上段引出型遮断器11A及び下段引出型遮断器11Bの位置が上下に移動可能構成され、その上段引出型遮断器11A及び下段引出型遮断器11Bの移動位置に応じて母線9、母線室仕切り板3、導体固定用碍子6及び上段導体4及び下段導体5が配置されていることを特徴とする。以下、その詳細を説明する。
【0015】
先ず、母線部について
図3を用いて説明する。
【0016】
該図に示す如く、母線9は、異なる相とは絶縁を確保すべく間隔を有して高さ方向に3相配置されており、母線固定用碍子7により碍子取付金具17に取り付けられている。碍子取付金具17は、母線室仕切り板3に固定されている。母線室仕切り板3は、筐体13の両側面に固定されている。
【0017】
本実施例では、母線室仕切り板3は枠状体であり、筐体13の背面側(
図1及び
図2の紙面左側)から見ると、母線9が見える状態にある。なお、母線室仕切り板3は、安全性を向上させる観点から枠状体でなく、枠の内部も埋めた板状体にしても良い。
【0018】
また、母線室仕切り板3は、碍子取付金具17が固定されている側とは反対側先端に曲げ部を有しており、それにより強度を向上させている。各相の母線9は、系統側等から給電される役割を有するが、略水平方向に伸延し、隣接するスイッチギヤの同相の母線と接続等されている。また、各相の母線9は、母線固定用碍子7とは反対側、言い換えると盤の正面側(
図1及び
図2の紙面右側)で各相の分岐導体8と接続されており、更に、分岐導体8に接続されるブッシング10を介して上段引出型遮断器11A及び下段引出型遮断器11Bと接続されている。
【0019】
また、ブッシング10は、断路部仕切り板2の前後方向に貫いて配置されており、分岐導体8は上下でブッシング10に接続されており、各上下のブッシング10は、各々上段引出型遮断器11A及び下段引出型遮断器11Bと接続されている。
【0020】
上段引出型遮断器11A及び下段引出型遮断器11Bの詳細については省略するが、例えば、真空インタラプタなどが配置されており、投入・遮断を行うことができる。真空インタラプタを介して他端側から出されるブッシングは、断路部仕切り板2の前後方向に貫いて配置されており、各々上段導体4や下段導体5と接続されている。上段導体4や下段導体5は、導体固定用碍子6で支持されてケーブル15、16へと接続される。上下の各導体固定用碍子6は、母線室仕切り板3に設けられた曲げ部に設けられている。
【0021】
ところで、上段導体4や下段導体5には、短時間通電時に大きな電磁力が生じる。よって、この電磁力に耐えるべく、従来は碍子を介して筐体の天井にボルト等を用いて固定させる等していた。また、この固定位置は、ケーブルの引出し方向に応じて変更していた。しかし、盤の天井には他のボルト等の固定部材も設けられており、作業者が誤って碍子を外す可能性があった。誤って碍子を外さない様にするには、特殊なボルト等を用いることで、簡単に外せない様にするなどの対策が必要であるが、そうすると専用部品が別途必要になる。
【0022】
一方で本実施例では、上下の各導体固定用碍子6は母線室仕切り板3に設けられた曲げ部に設けられている。これによって、従来の天井などとは異なり、他の固定部材が配置されないので、作業者が取り違えて固定部材を外すことがない。また、そもそも盤内部に位置するので誤って外すことも生じにくい。
【0023】
また、本実施例では、特に上下の各導体固定用碍子6は、母線室仕切り板3に設けられた曲げ部に設けている。曲げ部を設けることで強度を向上させた箇所に、各導体固定用碍子6を配置することで短時間通電に耐えられるようになる。
【0024】
更に、本実施例のように天井などを介さないようにすることで、
図1及び
図2に示すケーブル15、16を上方又は下方のいずれの方向に引き出す場合であっても、上段導体4や下段導体5の形状自体を変える必要がない。
【0025】
なお、取り付け時にケーブル15、16への接続部(これは図示される様に引出し方向に屈曲されているが)の向きを変える必要はある。しかし、これは単なる向きの変更に留まり、上段導体4や下段導体5の形状自体を変更するものではない。
【0026】
また、本実施例では、ブッシング10に近い側に上下の曲げ部を設けているが、上側の曲げ部は従来の母線室仕切り板3よりも上方に、下側の曲げ部は従来の母線室仕切り板3よりも下方に設けることで曲げ部を形成するスペースを確保している。
【0027】
更に、本実施例では、曲げ部は断路部仕切り板2と離隔して配置されている。即ち、断路部仕切り板2と母線室仕切り板3の間には空間が生じ(形成され)、この空間部分を放熱に用いることもできる。
【0028】
この放熱効果は、母線室仕切り板3を中空の枠状体でなく中実の板状体にした際に特に顕著になる。即ち、断路部仕切り板2と母線室仕切り板3の間に上下に空気が通り抜けられる流路を確保することができる。通電時には断路部仕切り板2と母線室仕切り板3の間に囲まれる部位は導体の発熱により温度が上昇するので、流路を確保できることは冷却性の観点から特に好適である。また、その流路が上下方向になることで、自然対流を促すことができ、一層冷却性向上に寄与する。
【0029】
従来のスイッチギヤは、母線の位置を主回路引出し方向がいずれの場合も同一とすることで筐体の共通化をはかり、その他の部品を変更してきたが、上述したように各部が構成されること、
図1に示す主回路上引出し(ケーブル15、16が上から引出されること)のスイッチギヤと
図2に示す主回路下引出し(ケーブル15、16が下から引出されること)のスイッチギヤのように、主回路(ケーブル15、16)引出し方向により母線9の高さ方向の位置を変更すること、筐体13以外の使用部品は、上段導体4及び下段導体5の入れ替えをすることで共通化できる。筐体13の各部品においても共通化できる部品は勿論存在する。
【0030】
以上のように、母線室仕切り板3へ導体固定用碍子6を取付けることで、短時間耐電流による電磁力に耐える位置は対応できるが、導体の曲げ加工削減に対応するには、母線室仕切り板3を上下方向に広げる必要があり、広げるにはブッシング10が弊害となっている。
【0031】
そこで、本実施例では、ブッシング10が当たらないように、母線室仕切り板3を断路部仕切り板2から切り離した。しかし、母線室仕切り板3の強度が不完全なため、母線室仕切り板3の先端に、分岐導体8との絶縁距離を確保して曲げ部を追加している。
【0032】
これにより、強度も十分確保でき、絶縁性能も確保、また、母線室上下が開放されることで熱的にも向上する。
【0033】
しかも、上記構造と主回路(ケーブル15、16)引出し方向毎に母線9の高さ方向の位置を変更することで、筐体13以外の使用部品は主回路(ケーブル15、16)の上引出しと下引出しのいずれの場合も、上段導体4及び下段導体5の入れ替えをすることで共通化できる。
【0034】
よって、本実施例によれば、主回路(ケーブル15、16)の引出し方向に関係なく同一の内蔵部品を使用することができ、作業性が向上したスイッチギヤを構成することができる。
【0035】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施例の構成の一部について、構成の追加・削除・置換をすることが可能である。