【実施例1】
【0023】
図1は、本発明のガス滅菌器1の実施例1を示す概略図である。本実施例のガス滅菌器1は、エチレンオキサイドガス滅菌、過酸化水素ガス滅菌およびホルマリンガス滅菌の三種の滅菌を、択一的に実行可能な複合滅菌器である。
【0024】
本実施例のガス滅菌器1は、被滅菌物が収容される滅菌槽2と、この滅菌槽2内の気体を外部へ吸引排出して滅菌槽2内を減圧する減圧手段3と、減圧された滅菌槽2内へ空気を導入して滅菌槽2内を復圧する復圧手段4と、滅菌槽2内へ蒸気を供給する給蒸手段5と、前記三種の滅菌用のガスの内から選択した滅菌ガスを滅菌槽2内へ供給するガス供給手段6と、滅菌槽2内の圧力を検出する圧力センサ7と、滅菌槽2内の温度を検出する温度センサ8と、これらセンサの検出信号や経過時間などに基づき前記各手段を制御する制御手段(図示省略)とを備える。なお、被滅菌物は、特に問わないが、典型的には医療器具である。
【0025】
滅菌槽2は、内部空間の減圧に耐える中空容器であり、典型的には、略矩形の中空ボックス状に形成され、扉で開閉可能とされる。なお、滅菌槽2の正面と背面とに扉を設け、一方の扉を、滅菌前の被滅菌物を滅菌槽2内に入れるための搬入扉とし、他方の扉を、滅菌後の被滅菌物を滅菌槽2外に取り出すための搬出扉としてもよい(パススルー仕様)。
【0026】
滅菌槽2には、滅菌槽2内を加熱する加熱手段(図示省略)を設けるのが好ましい。たとえば、加熱手段として、滅菌槽2の外壁に電気ヒータを設け、この電気ヒータを作動させて、滅菌槽2内を外側から温める。あるいは、加熱手段として、滅菌槽2の外壁に温水ジャケットを設け、この温水ジャケットに温水を入れて、滅菌槽2内を外側から温める。
【0027】
滅菌槽2には、滅菌槽2内の圧力を検出する圧力センサ7と、滅菌槽2内の温度を検出する温度センサ8とが設けられる。その他、滅菌槽2には、所望により、滅菌ガスの濃度センサや、滅菌槽2内の湿度センサが設けられてもよい。
【0028】
減圧手段3は、滅菌槽2内の気体を外部へ吸引排出して、滅菌槽2内を減圧する手段である。本実施例では、滅菌槽2内からの排気路9に、排気弁10と真空ポンプ11とが順に設けられる。排気弁10を開けた状態で、真空ポンプ11を作動させると、滅菌槽2内を減圧することができる。
【0029】
滅菌槽2内からの排気路9には、真空ポンプ11よりも下流に、滅菌ガスを無害化する触媒反応器12を設けるのが好ましい。触媒反応器12は、通される滅菌ガスを分解するための触媒と、その際、所望により作動されて滅菌ガスを触媒燃焼させるヒータとを備える。なお、真空ポンプ11から触媒反応器12へのガスには、所望により希釈空気を混入可能とされ、この希釈空気の供給の有無は切替え可能とされるのがよい。また、触媒反応器12のヒータの加熱目標温度は、滅菌ガスに応じて変更可能とされてもよい。
【0030】
復圧手段4は、減圧された滅菌槽2へ空気を導入して、滅菌槽2内を復圧する手段である。本実施例では、滅菌槽2内への給気路13に、無菌フィルタ(HEPAフィルタ)14と給気弁15とが順に設けられる。滅菌槽2内が減圧された状態で給気弁15を開くと、滅菌槽2の内外の差圧により、浄化した空気を滅菌槽2内へ導入して、滅菌槽2内を復圧することができる。
【0031】
給蒸手段5は、滅菌槽2内へ蒸気を供給する手段である。本実施例では、水供給源(たとえば貯水タンク)16からの水を水用気化器17で気化した後、水蒸気として滅菌槽2内へ供給可能とされる。水供給源16と水用気化器17との通水路18には、通水弁19が設けられる。一方、水用気化器17から滅菌槽2への給蒸路20には、給蒸弁21が設けられる。なお、水用気化器17は、たとえば、ヒータを備え、そのヒータにより水を加熱して気化させる。
【0032】
ガス供給手段6は、本実施例では、三種の滅菌ガス(エチレンオキサイドガス、過酸化水素ガス、ホルマリンガス)の内、いずれかの滅菌ガスを択一的に滅菌槽2内へ供給する手段である。本実施例では、三種の滅菌ガスそれぞれについて、液化ガスを貯留したガス供給源(たとえばカートリッジまたはボンベ)22〜24と、このガス供給源内の液化ガスを気化させる気化器25〜27とを備える。なお、ガス供給源22〜24内には、滅菌ガスが所定ガスとの混合液化状態で、所定濃度で貯留されていてもよい。また、気化器25〜27は、たとえば、ヒータを備え、そのヒータにより液化ガスを加熱して気化させる。
【0033】
具体的には、エチレンオキサイドガス用の第一気化器25と、過酸化水素ガス用の第二気化器26と、ホルマリンガス用の第三気化器27とが、それぞれガス路28〜30を介して滅菌槽2に接続される。エチレンオキサイドガス用の第一気化器25から滅菌槽2への第一ガス路28には、第一ガス弁31が設けられ、過酸化水素ガス用の第二気化器26から滅菌槽2への第二ガス路29には、第二ガス弁32が設けられ、ホルマリンガス用の第三気化器27から滅菌槽2への第三ガス路30には、第三ガス弁33が設けられる。また、エチレンオキサイドガス用の第一ガス供給源22と第一気化器25との第一連通路34には、第一連通弁35が設けられ、過酸化水素ガス用の第二ガス供給源23と第二気化器26との第二連通路36には、第二連通弁37が設けられ、ホルマリンガス用の第三ガス供給源24と第三気化器27との第三連通路38には、第三連通弁39が設けられる。なお、第一ガス路28、第二ガス路29および第三ガス路30は、滅菌槽2の側(各ガス弁31〜33より下流)において共通管路とされてもよい。
【0034】
ところで、ガス供給源22〜24と気化器25〜27との間に、濃縮器を設け、一旦濃縮したものを気化器25〜27で気化させてもよい。たとえば、過酸化水素ガス用の第二ガス供給源23には、過酸化水素濃度がたとえば約60%の水溶液として貯留されており、それを濃縮器でたとえば約80〜95%に濃縮した後、第二気化器26にて気化させてもよい。予め濃縮して気化させることで、気化ガス中に含まれる水蒸気の量を少なくして、過酸化水素ガスによる滅菌効果を向上することができる。もちろん、予め適切な濃度でガス供給源に貯留されているのであれば、濃縮器の設置は省略することができる。
【0035】
逆に、ガス供給源22〜24と気化器25〜27との間に、希釈器を設け、一旦希釈したものを気化器25〜27で気化させてもよい。たとえば、ホルマリンガス用の第三ガス供給源24には、ホルマリン濃度がたとえば約37%で貯留されており、それを希釈器で蒸留水と混合してたとえば約2%に希釈した後、第三気化器27にて気化させてもよい。もちろん、予め適切な濃度でガス供給源に貯留されているのであれば、希釈器の設置は省略することができる。
【0036】
制御手段は、前記各センサの検出信号や経過時間などに基づき、前記各手段を制御する制御器(図示省略)である。具体的には、滅菌槽2の電気ヒータ、排気弁10、真空ポンプ11、触媒反応器12(特にそのヒータ)、給気弁15、水用の気化器17と給蒸弁21と通水弁19、エチレンオキサイドガス用の第一気化器25と第一ガス弁31と第一連通弁35、過酸化水素ガス用の第二気化器26と第二ガス弁32と第二連通弁37、ホルマリンガス用の第三気化器27と第三ガス弁33と第三連通弁39の他、圧力センサ7や温度センサ8などは、制御器に接続される。さらに、制御器には、滅菌方法(滅菌ガスの種類)を選択する設定器(たとえばタッチスクリーン)や、運転開始を指示する操作ボタンなどが接続される。なお、設定器では、滅菌方法(滅菌ガスの種類)の他、所望により、滅菌条件(たとえば滅菌温度、滅菌時間、エアレーション時間)を設定可能とされる。そして、制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、滅菌槽2内の被滅菌物の滅菌を図る。
【0037】
以下、本実施例のガス滅菌器1の運転方法の一例について具体的に説明する。
運転開始に先立ち、滅菌槽2内には被滅菌物を収容し、滅菌槽2の扉を気密に閉じる。また、前述したとおり、設定器を用いて、滅菌方法などが設定される。少なくとも、エチレンオキサイドガス滅菌、過酸化水素ガス滅菌およびホルマリンガス滅菌の内、いずれの滅菌を実行するのかが設定される。その後、運転開始が指示されると、設定された滅菌方法で、被滅菌物の滅菌を実行する。
【0038】
運転内容は、特に限定されるものではないが、次のように実行すれば、滅菌ガスの種類に関わらず、運転内容をパターン化することができる。すなわち、減圧手段3により滅菌槽2内を減圧すると共に、加熱手段による加熱および/または給蒸手段5による加湿を行った後、ガス供給手段6により滅菌槽2内へいずれかのガスを供給して被滅菌物を滅菌し、その後の後処理工程において、減圧手段3による減圧と復圧手段4による復圧とを繰り返すか、減圧手段3による減圧と給蒸手段5による給蒸とを繰り返す。ここで、滅菌槽2内へ供給するガスの種類に応じて、前記後処理工程では、減圧手段3による減圧と復圧手段4による復圧とを繰り返すか、減圧手段3による減圧と給蒸手段5による給蒸とを繰り返すかが切り替えられると共に、触媒反応器12への希釈空気の供給の有無と、触媒反応器12のヒータの作動の有無とが切り替えられるのがよい。
【0039】
以下、エチレンオキサイドガス滅菌、過酸化水素ガス滅菌およびホルマリンガス滅菌のそれぞれについて、具体的な運転内容(典型的には低温滅菌)の一例について説明する。
【0040】
≪エチレンオキサイドガス滅菌≫
エチレンオキサイドガス滅菌の場合、前処理工程として、減圧手段3により滅菌槽2内を設定圧力まで減圧する。具体的には、排気弁10を開けた状態で、真空ポンプ11を作動させればよい。この際、排気弁10以外の弁は、閉じられた状態にある。滅菌槽2内を設定圧力まで減圧すると、排気弁10を閉じて真空ポンプ11を停止させる。
【0041】
このような減圧と並行して(あるいはこのような減圧の後)、加熱手段により滅菌槽2内を設定温度(たとえば55℃)まで加熱する。具体的には、電気ヒータを作動させて、滅菌槽2内が設定温度になるまで加熱して維持する。このような加熱は、滅菌工程の終了まで継続される。
【0042】
滅菌槽2内を減圧後、給蒸手段5により滅菌槽2内へ蒸気を供給して、滅菌槽2内を所望に加湿する。具体的には、通水弁19を開いて水用気化器17に水を供給して気化させ、給蒸弁21を開いて滅菌槽2内へ蒸気を供給すればよい。滅菌槽2内へ所望量の蒸気を供給すれば、水用気化器17を停止すると共に、給蒸弁21および通水弁19を閉じればよい。滅菌槽2内への給蒸により、滅菌槽2内が多少復圧するが、適宜減圧手段3を用いて、滅菌槽2内は設定圧力に維持される。
【0043】
その後の滅菌工程では、ガス供給手段6により滅菌槽2内へエチレンオキサイドガスを供給して、被滅菌物を滅菌する。具体的には、エチレンオキサイドガス用の第一連通弁35を開いて第一気化器25に液化ガスを供給して気化させ、第一ガス弁31を開いて滅菌槽2内へエチレンオキサイドガスを供給すればよい。滅菌槽2内へ所望量のエチレンオキサイドガスを供給すれば、第一気化器25を停止すると共に、第一ガス弁31および第一連通弁35を閉じればよい。滅菌槽2内を滅菌圧力で滅菌時間だけ保持した後、滅菌工程を終了する。なお、滅菌工程では、場合により、滅菌槽2内の減圧と、滅菌槽2内への滅菌ガス供給による復圧とを含む工程を繰り返してもよい。
【0044】
その後の後処理工程(エアレーション)では、減圧手段3による減圧と復圧手段4による復圧とを繰り返す。具体的には、排気弁10を開けた状態で真空ポンプ11を作動させて、滅菌槽2内を所定圧力まで減圧した後、排気弁10を閉じる(さらに真空ポンプ11を停止させてもよい)代わりに給気弁15を開けて、滅菌槽2内を規定圧力まで復圧する操作を繰り返す。滅菌槽2内からの滅菌ガスは、触媒反応器12に通され、無害化される。この際、真空ポンプ11から触媒反応器12へのガスには希釈空気が混入されると共に、触媒反応器12のヒータを作動させる。所定の終了条件を満たすと、復圧手段4により滅菌槽2内を大気圧まで復圧して、滅菌槽2内から被滅菌物を取り出すことができる。なお、以上の一連の各工程を、大気圧未満の陰圧で処理することが望ましい。
【0045】
≪過酸化水素ガス滅菌≫
過酸化水素ガス滅菌の場合も、基本的には上述したエチレンオキサイドガス滅菌の場合と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、同様の箇所については説明を省略する。なお、圧力、温度および時間などのパラメータは、適宜変更可能である。
【0046】
前処理工程では、エチレンオキサイドガス滅菌の場合と同様に、減圧手段3により滅菌槽2内を設定圧力まで減圧する。また、エチレンオキサイドガス滅菌の場合と同様に、所望により滅菌槽2内の加熱を行ってもよいが、加湿を行う必要はない。
【0047】
その後の滅菌工程では、ガス供給手段6により滅菌槽2内へ過酸化水素ガスを供給して、被滅菌物を滅菌する。具体的には、過酸化水素ガス用の第二連通弁37を開いて第二気化器26に液化ガスを供給して気化させ、第二ガス弁32を開いて滅菌槽2内へ過酸化水素ガスを供給すればよい。滅菌槽2内へ所望量の過酸化水素ガスを供給すれば、第二気化器26を停止すると共に、第二ガス弁32および第二連通弁37を閉じればよい。滅菌槽2内を滅菌圧力で滅菌時間だけ保持した後、滅菌工程を終了する。なお、滅菌工程では、場合により、滅菌槽2内の減圧と、滅菌槽2内への滅菌ガス供給による復圧とを含む工程を繰り返してもよい。
【0048】
その後の後処理工程では、減圧手段3による減圧と復圧手段4による復圧とを、所定だけ繰り返す。滅菌槽2内からの滅菌ガスは、触媒反応器12に通され、分解される。この際、真空ポンプ11から触媒反応器12へのガスに希釈空気を混入する必要はないし、触媒反応器12のヒータを作動させる必要もない。所定だけ減復圧を繰り返した後、復圧手段4により滅菌槽2内を大気圧まで復圧して、滅菌槽2内から被滅菌物を取り出すことができる。
【0049】
≪ホルマリンガス滅菌≫
ホルマリンガス滅菌の場合も、基本的には上述したエチレンオキサイドガス滅菌の場合と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、同様の箇所については説明を省略する。なお、圧力、温度および時間などのパラメータは、適宜変更可能である。
【0050】
前処理工程では、エチレンオキサイドガス滅菌の場合と同様に、減圧手段3により滅菌槽2内を設定圧力まで減圧する。また、エチレンオキサイドガス滅菌の場合と同様に、所望により、滅菌槽2内の加熱および/または加湿を行ってもよい。
【0051】
その後の滅菌工程では、ガス供給手段6により滅菌槽2内へホルマリンガスを供給して、被滅菌物を滅菌する。具体的には、ホルマリンガス用の第三連通弁39を開いて第三気化器27に液化ガスを供給して気化させ、第三ガス弁33を開いて滅菌槽2内へホルマリンガスを供給すればよい。滅菌槽2内へ所望量のホルマリンガスを供給すれば、第三気化器27を停止すると共に、第三ガス弁33および第三連通弁39を閉じればよい。滅菌槽2内を滅菌圧力で滅菌時間だけ保持した後、滅菌工程を終了する。なお、滅菌工程では、場合により、滅菌槽2内の減圧と、滅菌槽2内への滅菌ガス供給による復圧とを含む工程を繰り返してもよい。
【0052】
その後の後処理工程では、減圧手段3による減圧と給蒸手段5による給蒸(復圧)とを、所定だけ繰り返す。滅菌槽2内からの滅菌ガスは、触媒反応器12に通され、分解される。この際、真空ポンプ11から触媒反応器12へのガスに希釈空気を混入する必要はないが、触媒反応器12のヒータを作動させるのがよい。所定だけ減復圧を繰り返した後、復圧手段4により滅菌槽2内を大気圧まで復圧して、滅菌槽2内から被滅菌物を取り出すことができる。
【0053】
ところで、一般に、エチレンオキサイドガス滅菌は、浸透性がよく、どのような被滅菌物も滅菌できるが、滅菌に要する時間が長く(たとえば滅菌2時間+エアレーション8〜16時間)、しかもエチレンオキサイドガスは毒ガスであるから使用を控えたい場合がある。一方、過酸化水素ガス滅菌は、滅菌に適さない被滅菌物(PA、PUR、ABS樹脂、セルロースなど)があるものの、滅菌時間が短く(たとえば1時間程度以内)、OHラジカルが強い酸化力をもっているので低濃度で十分な滅菌が可能であり、しかも過酸化水素H
2O
2は分解するとH
2OとO
2になるので環境にもやさしい。また、ホルマリンガス滅菌は、エチレンオキサイドガス滅菌と過酸化水素ガス滅菌との中間程度の処理時間(たとえば4時間半程度)を要する。そこで、このような各ガス滅菌の利点と欠点とを考慮して、どの滅菌方法で運転するかを選択すればよい。
【0054】
以上に説明したとおり、本実施例のガス滅菌器1によれば、エチレンオキサイドガス滅菌、過酸化水素ガス滅菌およびホルマリンガス滅菌の内、いずれかの滅菌を択一的に実行することができる。従って、たとえば、滅菌に要する時間や、被滅菌物の材質などに応じて、所望の滅菌方法に切り替えて運転することができる。一台の滅菌器で複数種のガス滅菌を可能とすることで、省スペースを図ることができると共に、構成の共通化を図ることもできる。
【0055】
たとえば、日中は、処理時間が比較的短い過酸化水素ガス滅菌(または過酸化水素ガス滅菌よりも処理時間が長いがエチレンオキサイドガス滅菌よりも処理時間が短いホルマリンガス滅菌)を用い、夜間は、処理時間が比較的長いエチレンオキサイドガス滅菌(またはエチレンオキサイドガス滅菌よりも処理時間が短いが過酸化水素ガス滅菌よりも処理時間が長いホルマリンガス滅菌)を用いることができる。また、過酸化水素ガス滅菌に適さない被滅菌物の場合は、エチレンオキサイドガス滅菌(またはホルマリンガス滅菌)を用いることができる。このようにして、一台の滅菌器で、効率よく、あらゆる被滅菌物の滅菌を行うことができる。
【実施例2】
【0056】
図2は、本発明のガス滅菌器1の実施例2を示す概略図である。本実施例2のガス滅菌器1も、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、同様の箇所については説明を省略する。また、前記実施例1と対応する箇所には、同一の符号を付して説明する。
【0057】
本実施例2のガス滅菌器1が前記実施例1と異なる点は、水の気化器17と、各滅菌ガスの気化器25〜27とを共通化した点にある。つまり、水と各滅菌ガスの気化器として、共通気化器40を備え、この共通気化器40に、前記三種の滅菌ガスの内のいずれかの液化ガス、または水が切り替えられて供給可能とされる。
【0058】
具体的には、共通気化器40は、共通ガス路41を介して滅菌槽2と接続され、その共通ガス路41には共通ガス弁42が設けられる。また、共通気化器40には、水供給源16からの水が通水路18を介して、第一ガス供給源22からの液化エチレンオキサイドガスが第一連通路34を介して、第二ガス供給源23からの液化過酸化水素ガスが第二連通路36を介して、第三ガス供給源24からの液化ホルマリンガスが第三連通路38を介して、供給可能とされる。通水路18には通水弁19が、第一連通路34には第一連通弁35が、第二連通路36には第二連通弁37が、第三連通路38には第三連通弁39が設けられる。なお、通水路18、第一連通路34、第二連通路36および第三連通路38は、共通気化器40の側(通水弁19および各連通弁35,37,39より下流)で共通管路とされている。
【0059】
このような構成の場合、滅菌槽2内へ蒸気を供給するには、各連通弁35,37,39を閉じた状態で、通水弁19を開いて共通気化器40に水を供給して気化させ、共通ガス弁42を開いて滅菌槽2内へ蒸気を供給すればよい。また、滅菌槽2内へエチレンオキサイドガスを供給するには、通水弁19、第二連通弁37および第三連通弁39を閉じた状態で、第一連通弁35を開いて共通気化器40に液化エチレンオキサイドガスを供給して気化させ、共通ガス弁42を開いて滅菌槽2内へエチレンオキサイドガスを供給すればよい。エチレンオキサイドガスに代えて過酸化水素ガスを供給するには、第一連通弁35に代えて第二連通弁37を開ければよいし、エチレンオキサイドガスに代えてホルマリンガスを供給するには、第一連通弁35に代えて第三連通弁39を開ければよい。その他の構成(制御を含む)は、前記実施例と同様のため、説明を省略する。
【0060】
ところで、実施例1における給蒸手段5の水の気化器17と、ガス供給手段6の各滅菌ガスの気化器25〜27とは、実施例2では共通気化器40として統一したが、一部の気化器は、共通気化器40とは別個に構成してもよい。たとえば、
図2において、給蒸手段5の水の気化器17は、共通気化器40とは別個に構成してもよい。つまり、
図2において、水供給源16を通水路18により共通気化器40に接続するのを止めて、その代わりに
図1における給蒸手段5と同様に、水供給源16を通水路18により水用気化器17に接続し、その水用気化器17を給蒸路20により滅菌槽2に接続してもよい。この場合、
図1における給蒸手段5と同様に、通水路18には通水弁19が設けられ、給蒸路20には給蒸弁21が設けられる。そして、給蒸手段5は前記実施例1と同様に制御され、ガス供給手段6は前記実施例2と同様に制御される。
【0061】
本発明のガス滅菌器1は、前記各実施例の構成(制御を含む)に限らず、適宜変更可能である。特に、エチレンオキサイドガス滅菌、過酸化水素ガス滅菌およびホルマリンガス滅菌の内、少なくとも二種類のガス滅菌を択一的に実行可能であれば、その他の構成は適宜に変更可能である。たとえば、前記各実施例では、エチレンオキサイドガス滅菌、過酸化水素ガス滅菌およびホルマリンガス滅菌の三種類のガス滅菌を実行可能としたが、この内、いずれかのガス滅菌を実行する構成は省略可能である。具体的には、以下の(a)〜(d)の態様がある。
【0062】
(a)エチレンオキサイドガス滅菌と過酸化水素ガス滅菌とを択一的に実行可能な滅菌器
(b)エチレンオキサイドガス滅菌とホルマリンガス滅菌とを択一的に実行可能な滅菌器
(c)過酸化水素ガス滅菌とホルマリンガス滅菌とを択一的に実行可能な滅菌器
(d)エチレンオキサイドガス滅菌と過酸化水素ガス滅菌とホルマリンガス滅菌とを択一的に実行可能な滅菌器(前記各実施例の滅菌器)
【0063】
ところで、たとえば前記(a)のとおり、ホルマリンガス滅菌を省略して、エチレンオキサイドガス滅菌と過酸化水素ガス滅菌とを択一的に実行可能な滅菌器とする場合、実施例1(
図1)において、ホルマリンガス用の第三ガス供給源24、第三連通路38、第三連通弁39、第三気化器27、第三ガス路30、第三ガス弁33の設置を省略すればよいし、あるいは、実施例2(
図2)において、ホルマリンガス用の第三ガス供給源24、第三連通路38、第三連通弁39の設置を省略すればよい。同様に、前記(b)のとおり、過酸化水素ガス滅菌を省略する場合には、過酸化水素ガスの滅菌槽2内への供給に関する構成を省略すればよく、前記(c)のとおり、エチレンオキサイドガス滅菌を省略する場合には、エチレンオキサイドガスの滅菌槽2内への供給に関する構成を省略すればよい。
【0064】
また、前記各実施例およびその変形例において、給蒸手段5は、滅菌槽2内へ蒸気を供給する手段としたが、場合により、滅菌槽2内に水を供給して滅菌槽2内で蒸気化する手段としてもよい。つまり、水用気化器17を滅菌槽2内に配置し、前記各実施例と同様に、その水用気化器17に水を供給して滅菌槽2内で蒸気化するようにしてもよい。その場合、滅菌槽2内で蒸気化する関係上、前記各実施例における給蒸路20および給蒸弁21の設置を省略可能である。