【解決手段】センサプローブ1は、被験者の指尖部を取り巻くように形成されたフレキシブル基板20と、フレキシブル基板20の内面に実装されて指尖部から被験者の生体情報を取得するセンサ10と、フレキシブル基板20の外面を被覆する筐体30と、フレキシブル基板20と筐体30との間に設けられて指尖部を圧迫するカフ40と、を有する。フレキシブル基板20は、指の先端に近い側が各々独立した複数の面状部材(例えば、上面部材、下面部材、左側面部材、及び、右側面部材の4面)として分割されている。
前記センサは、前記指尖部に光を照射する発光部と、前記指尖部からの反射光または透過光を検出する受光部と、を含むことを特徴とする請求項6に記載のセンサプローブ。
前記フレキシブル基板は、前記センサが電気的に接続されたセンサ配線と、前記センサ配線と電気的に絶縁された電磁シールド配線と、を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のセンサプローブ。
前記制御基板には、前記センサの測定信号に各種の信号処理を施すフィルタ部と、前記センサプローブ全体の動作を統括的に制御する制御部と、前記センサの測定信号をホストに送信する通信部と、前記カフを膨張または収縮させるポンプ部と、前記センサプローブの各部に電力を供給する電源部と、が実装されていることを特徴とする請求項15に記載のセンサプローブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、指尖部に装着されるセンサプローブの構造については、加圧測定の安定性や検出精度を高める上で、さらなる改善の余地があった。
【0007】
本発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、より安定的かつ高精度に加圧測定を行うことのできるセンサプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るセンサプローブは、被験者の指尖部を取り巻くように形成されたフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の内面に実装されて前記指尖部から前記被験者の生体情報を取得するセンサと、前記フレキシブル基板の外面を被覆する筐体と、前記フレキシブル基板と前記筐体との間に設けられて前記指尖部を圧迫するカフと、を有し、前記フレキシブル基板は、指の先端に近い側が各々独立した複数の面状部材として分割されている構成(第1の構成)とされている。
【0009】
第1の構成から成るセンサプローブにおいて、前記フレキシブル基板は、指の根元に近い側が全周連続した環状部材として形成されている構成(第2の構成)にするとよい。
【0010】
第1または第2の構成から成るセンサプローブにおいて、前記面状部材は、その先端が先細る面形状とされている構成(第3の構成)にするとよい。
【0011】
第1〜第3の構成から成るセンサプローブにおいて、前記面状部材は、その先端を前記指尖部側に屈曲させた先端屈曲部を備えた構成(第4の構成)にするとよい。
【0012】
第1〜第4の構成から成るセンサプローブは、前記複数の面状部材として、上面部材、下面部材、右側面部材、および、左側面部材を含む構成(第5の構成)にするとよい。
【0013】
第5の構成から成るセンサプローブにおいて、前記センサは、前記上面部材及び前記下面部材の少なくとも一方に搭載される構成(第6の構成)にするとよい。
【0014】
第6の構成から成るセンサプローブにおいて、前記センサは、前記指尖部に光を照射する発光部と、前記指尖部からの反射光または透過光を検出する受光部と、を含む構成(第7の構成)にするとよい。
【0015】
第7の構成から成るセンサプローブにおいて、前記発光部及び前記受光部は、前記上面部材及び前記下面部材の一方に集約して搭載された構成(第8の構成)にするとよい。
【0016】
第7の構成から成るセンサプローブにおいて、前記発光部及び前記受光部は、前記上面部材及び前記下面部材の双方に分離して搭載された構成(第9の構成)にするとよい。
【0017】
第1〜第9の構成から成るセンサプローブにおいて、前記フレキシブル基板は、前記センサと電気的に接続されたセンサ配線と、前記センサ配線と電気的に絶縁された電磁シールド配線と、を含む構成(第10の構成)にするとよい。
【0018】
第10の構成から成るセンサプローブにおいて、前記電磁シールド配線は、前記センサ配線よりも外層にベタ形成されている構成(第11の構成)にするとよい。
【0019】
第10もしくは第11の構成から成るセンサプローブにおいて、前記電磁シールド配線は、前記センサ配線と同層にベタ形成されている構成(第12の構成)にするとよい。
【0020】
第10〜第12の構成から成るセンサプローブにおいて、前記電磁シールド配線は、電気的にグラウンドまたはオープンである構成(第13の構成)にするとよい。
【0021】
第10〜第13の構成から成るセンサプローブにおいて、前記フレキシブル基板には、前記センサ配線を敷設した突起状部材が形成される構成(第14の構成)にするとよい。
【0022】
第1〜第14の構成から成るセンサプローブは、前記筐体に搭載された制御基板をさらに有する構成(第15の構成)にするとよい。
【0023】
第15の構成から成るセンサプローブにおいて、前記制御基板には、前記センサの測定信号に各種の信号処理を施すフィルタ部と、前記センサプローブ全体の動作を統括的に制御する制御部と、前記センサの測定信号をホストに送信する通信部と、前記カフを膨張または収縮させるポンプ部と、前記センサプローブの各部に電力を供給する電源部と、が実装されている構成(第16の構成)にするとよい。
【0024】
第1〜第16の構成から成るセンサプローブにおいて、前記筐体は、電磁シールド機能を備えている構成(第17の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、より安定的かつ高精度に加圧測定を行うことのできるセンサプローブを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<脈波測定の原理>
図1は、指尖部での脈波測定の原理を説明するための模式図であり、
図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。
【0028】
容積脈波法による脈波測定では、例えば、
図1で示したように、測定窓に押し当てられた生体の一部(
図1では指尖部)に向けて発光部(LED[light emitting diode]やLD[laser diode]など)から光が照射され、生体内を透過して生体外に出てくる反射光または透過光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、
図2で示したように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO
2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用して、末梢動脈の吸光度変化を測定することにより、非侵襲で容積脈波を測定することができる。
【0029】
<脈波から分かること>
なお、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被験者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被験者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被験者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被験者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被験者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
【0030】
<センサプローブ>
以下では、被験者の指尖部に装着されて種々の生体情報を取得するセンサプローブについて、
図3〜
図7を適宜参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図3は、センサプローブ1を左面側(やや上方)から見たときの外観図(細破線による透過的な描写を含む)である。また、
図4及び
図5は、いずれも、センサプローブ1を背面側(指を挿入するための開口端側)から見たときの外観図である。なお、
図4はフレキシブル基板20が装着済みの状態を示しており、
図5はフレキシブル基板20が未装着の状態を示している。また、
図6は、センサプローブ1を左面側(
図3よりもさらに上方)から見たときの外観図である。また、
図7は、センサプローブ1(主に制御基板60)の機能ブロック図である。
【0032】
本構成例のセンサプローブ1は、光センサ10と、フレキシブル基板20と、筐体30と、カフ40と、フレキシブルフラットケーブル50と、制御基板60と、を有する。
【0033】
光センサ10は、フレキシブル基板20の内面に実装されており、筐体30に挿入された指尖部2から被験者の生体情報を取得する。より具体的に述べると、光センサ10は、発光部10Aから指尖部2に光を照射し、指尖部2からの反射光(または透過光でも可)を受光部10Bで検出することにより、受光強度に応じた電流信号を生成する。本構成例のセンサプローブ1において、光センサ10は、発光部10Aと受光部10Bが指尖部2を挟んで互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、
図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部10Aと受光部10Bが指尖部2に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、
図1の実線矢印を参照)とされている。なお、光センサ10の検出方式(反射型/透過型)と実装位置との関係については、後ほど詳述する。
【0034】
フレキシブル基板20は、筐体30に挿入された被験者の指尖部2を取り巻くように形成された可撓性のあるプリント配線基板である。フレキシブル基板20の内面(光センサ10の実装面)には、光センサ10と電気的に接続されたセンサ配線20L(信号配線や電源配線など)が敷設されている。センサ配線20Lは、フレキシブルフラットケーブル50(フレキシブル基板20の一部)を介して、制御基板60にも電気的に接続されている。従って、光センサ10と制御基板60との間における各種の信号伝達や、制御基板60から光センサ10への電力供給は、センサ配線20Lとフレキシブルフラットケーブル50を介して実現される。なお、フレキシブル基板20は、その構造に種々の特徴を有するが、これについては後ほど詳述する。
【0035】
筐体30は、フレキシブル基板20の外面を被覆して担持する高剛性部材(例えばプラスチック部材)である。筐体30は、指尖部2の挿入に適した円筒形状とされている。筐体30の一端(指の根元側)は、指尖部2を挿入するために開口されているが、筐体30の他端(指の先端側)は、光センサ10に外来光が漏れ入らないように閉口されている。なお、筐体30の先端部分(閉結部分)は、センサプローブ1の安全性やデザイン性を高めるために、丸みを持たせた形状としておくことが望ましい。
【0036】
カフ40は、フレキシブル基板20と筐体30との間に設けられており、気体や液体の注入によって膨張し、排出によって収縮する伸縮性の袋状部材である。カフ40の膨張時には、筐体30に挿入された指尖部2が圧迫される。本構成例のセンサプローブ1において、カフ40は、フレキシブル基板20を上下から挟み込む位置に設けられているが、その配設位置はこれに限定されるものではない。なお、指尖部2の圧迫時(カフ40の膨張時)におけるフレキシブル基板20の変形作用については、後ほど詳細に説明する。
【0037】
フレキシブルフラットケーブル50は、フレキシブル基板20と制御基板60との電気的な導通経路であり、その表面上には先述のセンサ配線20Lが敷設されている。なお、フレキシブルフラットケーブル50は、フレキシブル基板20の一部(突起状部材26)として一体的に形成されているが、この点については後ほど詳述する。
【0038】
制御基板60は、筐体30の上部に搭載されたプリント配線基板である。制御基板60は、図中の細一点鎖線で示したカバー部材によって被覆しておくことが望ましい。なお、制御基板60には、フィルタ部61と、制御部62と、通信部63と、ポンプ部64と、電源部65と、が実装されている。
【0039】
フィルタ部61は、光センサ10の測定信号(電流信号)に各種の信号処理(電流/電圧変換処理、検波処理、フィルタ処理、増幅処理など)を施して制御部62に出力する。
【0040】
制御部62は、センサプローブ1全体の動作を統括的に制御するほか、フィルタ部61の出力信号に各種の信号処理を施すことにより、種々の生体情報(脈拍数、脈拍変動、経皮的血中酸素飽和度(SpO
2)、血圧、脈波の揺らぎ、加速度脈波、血管年齢など)を取得する。なお、制御部62としては、CPU[central processing unit]などを好適に用いることができる。
【0041】
通信部63は、センサプローブ1の測定データを外部のホスト機器3(パソコンや医療機器など)に無線または有線で送信する。特に、センサプローブ1の測定データをホスト機器3に無線で送信する構成であれば、センサプローブ1とホスト機器3とを有線で接続する必要がなくなるので、例えば、被験者の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。また、センサプローブ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。なお、無線送信方式を採用する場合、通信部63としては、Bluetooth(登録商標)無線通信モジュールICなどを好適に用いることができる。
【0042】
ポンプ部64は、制御部62からの指示に応じて、カフ40に対する気体や液体の注入及び排出を行う。より具体的に述べると、ポンプ部64は、加圧時にはカフ40に気体や液体を注入してカフ40を膨張させ、除圧時にはカフ40から気体や液体を排出してカフ40を収縮させる。
【0043】
電源部65は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換してセンサプローブ1の各部に供給する。このように、バッテリ駆動方式のセンサプローブ1であれば、脈波の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。なお、上記のバッテリとしては、繰り返して充電を行うことが可能な二次電池(リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど)を用いることが望ましい。このように、バッテリとして二次電池を用いる構成であれば、煩わしい電池交換作業が不要となるので、センサプローブ1の利便性を高めることができる。また、バッテリ充電時における外部からの電力供給方式としては、USB[universal serial bus]ケーブルなどを用いる接触給電方式であってもよいし、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触給電方式であってもよい。ただし、センサプローブ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、外部からの電力供給方式として非接触給電方式を採用することが望ましい。
【0044】
上記のように、円筒形状の筐体30に挿入された指尖部2から生体情報を取得するセンサプローブ1であれば、フリー構造(光センサ10上に指尖部2を置くだけの構造)と比べて、指尖部2と光センサ10との相対位置を固定しやすいので、安定した測定を行うことが可能となる。
【0045】
なお、指尖部2で計測される脈波信号の振幅は、指尖部2に対する光センサ10の圧着力によって変化する。上記の圧着力が最適であれば、脈波信号の振幅が大きくなるので、精度の高い測定を行うことが可能となる。最適な圧着力は、指の太さや血管の硬さにより異なるので、被験者毎に圧着力を最適化する必要がある。また、センサプローブ1では、血圧の測定や自律神経の活性化検査(生活ストレス判断、感性や感情の捕捉、病状の把握など)を行うときにも、指尖部2に対する加圧処理(圧迫処理)が実施される。
【0046】
ところで、筐体30に挿入されるフレキシブル基板20を仮に単純な円筒形状とした場合には、カフ40による加圧時に撓みや皺を生じて不安定(不規則)な形状となるので、指尖部2の加圧状態が不均一となり、加圧測定の安定性や検出精度が損なわれてしまう。
【0047】
そこで、本構成例のセンサプローブ1では、より安定的かつ高精度に加圧測定を行うべく、フレキシブル基板20の構造にも種々の創意工夫が凝らされている。
【0048】
<フレキシブル基板>
まず、
図8〜
図15を適宜参照しながら、フレキシブル基板20の構造について詳述する。
図8は、フレキシブル基板20を左面側(やや前方かつ下方)から見たときの外観図である。また、
図9は、フレキシブル基板20を背面側(指を挿入する開口端側)から見たときの外観図である。また、
図10は、フレキシブル基板20を外面側から見たときの展開図であり、
図11及び
図12は、フレキシブル基板20を内面側から見たときの展開図である。なお、
図11は光センサ10が未搭載の状態を示しており、
図12は光センサ10が搭載済みの状態を示している。
【0049】
本構成例のフレキシブル基板20は、指の先端に近い側が各々独立した複数の面状部材(上面部材21、下面部材22、右側面部材23、及び、左側面部材24)として分割されている。すなわち、フレキシブル基板20は、単純な円筒形状ではなく、その先端部分が4面に分割されている。このような構成とすることにより、カフ40による加圧時に撓みや皺を生じ難くなるので、指尖部2の加圧状態を均一化して、加圧測定の安定性や検出精度を向上することが可能となる。なお、面状部材の分割数については、上記に限定されるものではない。
【0050】
また、本構成例のフレキシブル基板20は、指の根元に近い側が全周連続した環状部材25として形成されている。すなわち、複数の面状部材(上面部材21、下面部材22、右側面部材23、及び、左側面部材24)は、それぞれ、第1端部(先端側)が自由端とされており、第2端部(根元側)が環状部材25に連結した固定端とされている。このような構成とすることにより、フレキシブル基板20の形状安定性を確保することが可能となる。なお、環状部材25となる捲回部分には、周方向の接着しろ(糊しろ)として機能するタブ領域25a(
図10〜
図12を参照)が形成されている。
【0051】
また、本構成例のフレキシブル基板20には、センサ配線20Lを敷設した突起状部材26が形成されている。突起状部材26は、先出のフレキシブルフラットケーブル50として機能する。このような構成とすることにより、別途のケーブルを要することなく、制御基板60との接続を容易に行うことが可能となる。
【0052】
また、本構成例のフレキシブル基板20(下面部材22の内面側)には、光センサ10を直接実装するための光センサ搭載領域27が設けられている(
図11を参照)。光センサ搭載領域27には、光センサ10の外部端子(測定信号出力端子、駆動信号入力端子、電源端子、及び、接地端子)をそれぞれ半田付けするためのパッド27a〜27dが形成されている。パッド27a〜27dは、それぞれ、フレキシブル基板20に敷設されたセンサ配線20La〜20Ldと電気的に接続されており、延いては、突起状部材26(フレキシブルフラットケーブル50)を介して制御基板60と電気的に接続されている。なお、光センサ搭載領域27は、光センサ10の実装後、端子間ショートなどを防止するために絶縁樹脂27xで被覆される。このように、フレキシブル基板20に光センサ10を直接実装することにより、指尖形状に合わせた光センサ10と指尖部2との密着性を向上することが可能となる。
【0053】
また、フレキシブル基板20には、先出のセンサ配線20Lだけでなく、センサ配線20L(特に測定信号を伝達するための信号配線)と電気的に絶縁された電磁シールド配線20X及び20Yが形成されている。より具体的に述べると、フレキシブル基板20は、多層構造(詳細は後述)とされており、電磁シールド配線20Xは、フレキシブル基板20の外面側(センサ配線20Lよりも外層)にベタ形成されている(
図10を参照)。また、電磁シールド配線20Yは、フレキシブル基板20の内面側(センサ配線20Lと同層)にベタ形成されている(
図11を参照)。なお、電磁シールド配線20X及び20Yは、いずれも電気的にグラウンドまたはオープンとしておけばよい。このような構成とすることにより、外来の電磁ノイズが光センサ10の測定信号に重畳し難くなるので、測定信号のS/Nを向上して生体情報の精度を高めることが可能となる。
【0054】
なお、本構成例のフレキシブル基板20は、光センサ10が搭載され得る上面部材21や下面部材22(詳細は後述)だけでなく、右側面部材23と左側面部材24を備えている。従って、上方や下方からのノイズ侵入だけでなく、左右からのノイズ侵入についても効果的に抑制することが可能である。
【0055】
さらに、本構成例のフレキシブル基板20において、上面部材21と下面部材22は、各々の先端を指尖部2側に屈曲させた先端屈曲部21a及び21bを備えている。このような構成とすることにより、前方からのノイズ侵入も効果的に抑制することができる。
【0056】
なお、より徹底的なノイズ対策を施す必要がある場合には、フレキシブル基板20を被覆している筐体30にも電磁シールド機能を付与することが望ましい。一例としては、筐体30そのものを金属素材(アルミニウムなど)で形成したり、筐体30に金属メッキ処理を施したり、或いは、筐体30に金属メッシュを編み込んだりすることが考えられる。
【0057】
次に、
図13を参照しながら、光センサ10の検出方式(反射型/透過型)と実装位置との関係について詳細な説明を行う。なお、
図13のA欄には反射型の光センサ10の実装位置が示されており、B欄には透過型の光センサ10の実装位置が示されている。
【0058】
光センサ10が反射型である場合、光センサ10は、例えば、下面部材22の内面側に搭載される。なお、反射型の光センサ10には、発光部10Aと受光部10Bが並べて配置されている。従って、発光部10Aと受光部10Bは、下面部材22の一方に集約して搭載される形となる。なお、光センサ10は、上面部材21の内面側に搭載してもよい。
【0059】
一方、光センサ10が透過型である場合、
図13のB欄で示したように、光センサ10の発光部10Aと受光部10Bは、上面部材21及び下面部材22の双方に分離して搭載される形となる。なお、発光部10Aと受光部10Bの位置関係は、逆でも構わない。
【0060】
次に、
図14を参照しながら、加圧測定時におけるフレキシブル基板20の変形作用について詳細に説明する。なお、
図14のA欄には非加圧時の様子が描写されており、B欄には加圧時の様子が描写されている。本図で示したように、カフ40の膨張時(加圧時)には、上面部材21と下面部材22が上下方向から挟み込まれる形で、指尖部2に押し付けられる。
【0061】
このとき、複数分割された面状部材(上面部材21、下面部材22、右側面部材23、及び、左側面部材24)は、それぞれ独立して変形することができるので、カフ40による加圧時にも撓みや皺を生じ難くなる。
【0062】
また、各面状部材(特に、右側面部材23と左側面部材24)は、各々の先端が先細る面形状(略三角形状)とされている。このような構成とすることにより、上面部材21及び下面部材22と、右側面部材23及び左側面部材24との干渉(重なり)を避けることができるので、指尖部2の加圧状態を均一化して、加圧測定の安定性や検出精度を向上することが可能となる。
【0063】
次に、
図15を参照しながら、フレキシブル基板20の縦断面構造について詳細に説明する。本構成例のフレキシブル基板20は、導電性素材(銅箔など)で形成された導電層L11及びL12と、絶縁性素材(ポリイミドなど)で形成された絶縁層L21〜L23と、を交互に積層した多層構造とされている。
【0064】
導電層L11は、フレキシブル基板20の内面側に形成されている。導電層L11の表面(フレキシブル基板20の内面に相当)は、絶縁層L21によって被覆されている。なお、導電層L11には、先出のセンサ配線20Lや電磁シールド配線20Yが形成されている。また、絶縁層L21に開口部を設けて導電層L11を一部露出させることにより、光センサ搭載領域27(パッド)が形成されている。光センサ搭載領域27(パッド)には、半田27yによって光センサ10が実装されている。
【0065】
導電層L12は、フレキシブル基板20の外面側に形成されている。導電層L11と導電層L12との間は、絶縁層L22によって絶縁されている。また、導電層L12の表面(フレキシブル基板20の外面に相当)は、絶縁層L23により被覆されている。なお、導電層L12には、先出の電磁シールド配線20Xが形成されている。
【0066】
なお、先にも述べたように、電磁シールド配線20X及び20Yは、いずれも電気的にグラウンドまたはオープンとしておけばよい。
【0067】
このように、フレキシブル基板20を多層構造とし、外面側の導電層L12を電磁シールド配線20X(
図10を参照)としてベタ形成することにより、従来の単層構造と比べて外来の電磁ノイズに対する耐性を高めることが可能となる。
【0068】
また、内面側の導電層L11においても、センサ配線20Lの形成領域を除いて電磁シールド配線20Y(
図11及び
図12を参照)をベタ形成することにより、外来の電磁ノイズに対する耐性をさらに高めることが可能となる。
【0069】
<出力波長についての考察>
実験では、いわゆる反射型の脈波センサにおいて、発光部の出力波長をλ1(赤外:940nm)、λ2(緑:630nm)、及び、λ3(青:468nm)とし、発光部の出力強度(駆動電流値)を1mA、5mA、10mAに変化させたときの挙動を各々調査した。その結果、およそ波長600nm以下の可視光領域において、酸素化ヘモグロビンHbO
2の吸収係数が大きくなり、測定される脈波のピーク強度が大きくなるため、脈波の波形を比較的取得しやすいことが分かった。
【0070】
なお、動脈血の酸素飽和度を検出するパルスオキシメータでは、酸素化ヘモグロビンHbO
2の吸収係数(実線)と脱酸素化ヘモグロビンHbの吸収係数(破線)との差違が最大となる近赤外領域の波長(700nm前後)が発光部の出力波長として広く一般的に用いられているが、脈波センサ(特に、いわゆる反射型の脈波センサ)としての利用を考えた場合には、上記の実験結果で示したように、波長600nm以下の可視光領域を発光部の出力波長として用いることが望ましいと言える。
【0071】
ただし、単一の光センサを用いて、脈波と血中酸素飽和度の両方を検出する場合には従前と同様、近赤外領域の波長を用いても構わない。
【0072】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示された種々の発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。