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特開2015-229270補修システム、補修データ提供装置及び補修データ生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229270(P2015-229270A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】補修システム、補修データ提供装置及び補修データ生成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20060101AFI20151124BHJP
【FI】
   B29C67/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-115809(P2014-115809)
(22)【出願日】2014年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八木田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 由衣
(72)【発明者】
【氏名】石川 博章
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 潤
(72)【発明者】
【氏名】江刺 弘之
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AM23
4F213AM32
4F213WA25
4F213WA94
4F213WB01
4F213WL29
4F213WL55
4F213WL67
4F213WL87
4F213WL96
4F213WM01
4F213WM03
4F213WM07
(57)【要約】
【課題】補修対象物を欠損面の状態によらず良好に補修することが可能な、立体補修装置を用いた補修システムを提供する。
【解決手段】補修データ提供装置及び立体補修装置を備えた補修システムであって、補修データ提供装置は、スキャナによって取得した補修対象物の立体データと、補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定部12と、補修対象物の欠損面の状態に応じて、補修対象物の欠損箇所のみの補修を行う第1補修モードか、補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードかを選択するモード選択部14と、モード選択部によって選択された補修モードに対応する立体補修データを生成する補修データ生成部16と、を有することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材を積層して補修対象物の欠損箇所を補修する立体補修装置と、前記補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを前記立体補修装置に提供する補修データ提供装置と、備えた補修システムであって、
前記立体補修装置は、前記補修対象物を立体スキャンして該補修対象物の立体データを取得するスキャナを有し、
前記補修データ提供装置は、
前記スキャナによって取得した前記補修対象物の立体データと、前記補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して、前記補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定部と、
前記補修対象物の欠損面の状態に応じて、前記補修対象物の欠損箇所のみの補修を行う第1補修モードと、前記補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択するモード選択部と、
前記モード選択部によって選択された補修モードに対応する前記立体補修データを生成する補修データ生成部と、
を有することを特徴とする補修システム。
【請求項2】
前記立体補修装置は、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を溶解する溶解手段を更に備え、
前記溶解手段は、前記第2補修モードが前記モード選択部によって選択されると前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を溶解することを特徴とする請求項1に記載の補修システム。
【請求項3】
前記溶解手段は、前記第2補修モードにおいて、前記補修対象物の欠損面の状態に応じて前記欠損箇所の周囲を溶解する深さ又は範囲を調節することを特徴とする請求項2に記載の補修システム。
【請求項4】
前記立体補修装置は、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を切削する切削手段を更に備え、
前記切削手段は、前記第2補修モードにおいて、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を前記造形材の積層前に切削することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の補修システム。
【請求項5】
前記切削手段は、前記第2補修モードにおいて、前記補修対象物の欠損面の状態に応じて前記欠損箇所の周囲を切削する深さを又は範囲を調節することを特徴とする請求項4に記載の補修システム。
【請求項6】
前記立体補修装置は、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を切削する切削手段を更に備え、
前記スキャナは、前記溶解手段により前記欠損箇所の周囲を溶解した後に前記補修対象物を再度立体スキャンし、
前記切削手段は、前記スキャナにより取得した溶解後の前記補修対象物の立体データに基づいて切削を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の補修システム。
【請求項7】
前記立体補修装置は、前記溶解手段及び/または前記切削手段により取り除かれた造形材を貯留する貯留タンクを更に有し、前記貯留タンクに貯留した当該造形材を前記補修対象物の補修に利用することを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載の補修システム。
【請求項8】
前記立体補修装置又は前記補修データ提供装置は、前記補修対象物の補修対象箇所をマニュアルで指定可能に構成された補修対象箇所指定部を更に有し、
前記欠損箇所特定部は、前記補修対象箇所指定部によって指定した前記補修対象箇所の範囲内で前記欠損箇所を特定することを特徴とする請求項2〜7の何れか1項に記載の補修システム。
【請求項9】
補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを提供する補修データ提供装置であって、
補修対象物を立体スキャンすることにより取得した立体データと、前記補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して、前記補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定部と、
前記補修対象物の欠損面の状態に応じて、前記補修対象物の欠損箇所のみ補修を行う第1補修モードと、前記補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択するモード選択部と、
前記モード選択部によって選択された補修モードに対応する前記立体補修データを生成する補修データ生成部と、
を有することを特徴とする補修データ提供装置。
【請求項10】
補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを生成する補修データ生成方法であって、
補修対象物を立体スキャンすることにより取得した立体データと、前記補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して、前記補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定工程と、
前記補修対象物の欠損面の状態に応じて、前記補修対象物の欠損箇所のみ補修を行う第1補修モードと、前記補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択する選択工程と、
前記選択工程によって選択された補修モードに対応する前記立体補修データを生成する生成工程と、
を有することを特徴とする補修データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体補修装置を用いた補修システム、補修データ提供装置及び補修データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、造形材を積層して立体造形を行う立体造形装置が注目を集めている。特許文献1には、顧客による商品の注文のみならず商品の受領も商品販売者の地理的位置に依存しないで済むようにすることを目的とした商品製造支援方法が記載されている。
特許文献1に記載の商品製造支援方法では、顧客のクライアント・コンピュータと、製造データに基づいて商品を製造する製造装置を制御する製造用コンピュータと、その製造装置により商品を製造して販売する商品販売者のサーバ・コンピュータとが互いに接続された通信システムにおいて、サーバ・コンピュータが、クライアント・コンピュータからの顧客の注文に応じた商品を製造するための製造データを製造用コンピュータに送信する。この製造用コンピュータは、商品の製造装置およびクライアント・コンピュータと共に、顧客にとって身近な場所、例えば、自宅に設置されている。製造データを受信した製造用コンピュータは、顧客からの注文に応じた商品を製造装置に製造させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4617573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立体造形装置の利用形態として、商品全体を新たに製造する形態以外に、補修対象物の欠損箇所の補修を行う形態が考えられる。立体補修装置を用いて補修対象物の欠損箇所の補修を行う場合、補修対象物全体を新たに製造する場合と比較して、造形材の使用量を節約することができる。しかしながら、欠損箇所の周囲には少なからず歪みやひび等が残っているため、補修対象物の欠損面の状態によっては、欠損箇所のみの補修では補修対象物を良好に補修することができない場合があった。
この点に関し、特許文献1に記載の商品製造支援方法では、商品全体を新たに製造する形態が想定されており、補修対象物の補修を行う形態におけるこのような問題については何ら言及されていない。
本発明の少なくとも一実施形態に係る目的は、補修対象物を欠損面の状態によらず良好に補修することを可能とする補修システム、補修データ提供装置及び補修データ生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の幾つかの実施形態に係る補修システムは、造形材を積層して補修対象物の欠損箇所を補修する立体補修装置と、前記補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを前記立体補修装置に提供する補修データ提供装置と、備えた補修システムであって、前記立体補修装置は、前記補修対象物を立体スキャンして該補修対象物の立体データを取得するスキャナを有し、前記補修データ提供装置は、前記スキャナによって取得した前記補修対象物の立体データと、前記補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して、前記補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定部と、前記補修対象物の欠損面の状態に応じて、前記補修対象物の欠損箇所のみの補修を行う第1補修モードと、前記補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択するモード選択部と、前記モード選択部によって選択された補修モードに対応する前記立体補修データを生成する補修データ生成部と、を有することを特徴とする。
【0006】
上記(1)に記載の補修システムによれば、補修対象物の欠損面の状態によらず、補修対象物の欠損箇所を良好に補修することが可能となる。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の補修システムにおいて、前記立体補修装置は、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を溶解する溶解手段を更に備え、
前記溶解手段は前記第2補修モードが前記モード選択部によって選択されると前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を溶解することを特徴とする。
【0008】
上記(2)に記載の補修システムによれば、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、補修対象物の欠損箇所を良好に補修することが可能となる。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の補修システムにおいて、
前記溶解手段は、前記第2補修モードにおいて、前記補修対象物の欠損面の状態に応じて前記欠損箇所の周囲を溶解する深さ又は範囲を調節することを特徴とする。
【0010】
上記(3)に記載の補修システムによれば、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、欠損箇所を更に良好に補修することができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の補修システムにおいて、前記立体補修装置は、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を切削する切削手段を更に備え、前記切削手段は、前記第2補修モードにおいて、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を前記造形材の積層前に切削することを特徴とする。
【0012】
上記(4)に記載の補修システムによれば、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、補修対象物の欠損箇所を良好に補修することが可能となる。
【0013】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の補修システムにおいて、前記切削手段は、前記第2補修モードにおいて、前記補修対象物の欠損面の状態に応じて前記欠損箇所の周囲を切削する深さ又は範囲を調節することを特徴とする。
【0014】
上記(5)に記載の補修システムによれば、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、欠損箇所を更に良好に補修することができる。
【0015】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の補修システムにおいて、前記立体補修装置は、前記補修対象物における前記欠損箇所の周囲を切削する切削手段を更に備え、前記スキャナは、前記溶解手段により前記欠損箇所の周囲を溶解した後に前記補修対象物を再度立体スキャンし、前記切削手段は、前記スキャナにより取得した溶解後の前記補修対象物の立体データに基づいて切削を行うことを特徴とする。
【0016】
上記(6)に記載の補修システムによれば、欠損箇所の周囲を溶解手段によって溶解してから切削手段による切削を行うことにより、精度よく切削を行うことが可能となり、欠損箇所を更に良好に補修することができる。
【0017】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(6)の何れか1項に記載の補修システムにおいて、前記立体補修装置は、前記溶解手段または前記切削手段により取り除かれた造形材を貯留する貯留タンクを更に有し、前記貯留タンクに貯留した当該造形材を前記補修対象物の補修に利用することを特徴とする。
【0018】
上記(7)に記載の補修システムによれば、溶解や切削により取り除かれた造形材を再利用することが可能となり、補修対象物の補修に用いる造形材の使用量を低減することができる。
【0019】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(7)の何れか1項に記載の補修システムにおいて、前記立体補修装置又は前記補修データ提供装置は、前記補修対象物の補修対象箇所をマニュアルで(手動で)指定可能に構成された補修対象箇所指定部を更に有し、前記欠損箇所特定部は、前記補修対象箇所指定部によって指定した前記補修対象箇所の範囲内で前記欠損箇所を特定することを特徴とする。
【0020】
上記(8)に記載の補修システムによれば、補修対象物における所望の補修対象箇所を指定した上で、指定した範囲内で欠損箇所を補修することができる。
【0021】
(9)本発明の幾つかの実施形態に係る補修データの提供装置は、補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを立体補修装置に提供する補修データ提供装置であって、補修対象物を立体スキャンすることにより取得した立体データと、前記補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して、前記補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定部と、前記補修対象物の欠損面の状態に応じて、前記補修対象物の欠損箇所のみ補修を行う第1補修モードと、前記補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択するモード選択部と、前記モード選択部によって選択された補修モードに対応する前記立体補修データを生成する補修データ生成部と、を有することを特徴とする。
【0022】
上記(9)に記載の補修データの提供装置によれば、補修対象物の欠損面の状態によらず、補修対象物の欠損箇所を良好に補修することが可能な立体補修データを提供することができる。
【0023】
(10)本発明の幾つかの実施形態に係る補修データの生成方法は、補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを生成する補修データ生成方法であって、補修対象物を立体スキャンすることにより取得した立体データと、前記補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して、前記補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定工程と、前記補修対象物の欠損面の状態に応じて、前記補修対象物の欠損箇所のみ補修を行う第1補修モードと、前記補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択する選択工程と、前記選択工程によって選択された補修モードに対応する前記立体補修データを生成する生成工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
上記(10)に記載の補修データの生成方法によれば、補修対象物の欠損面の状態によらず、補修対象物の欠損箇所を良好に補修することが可能な立体補修データを生成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、補修対象物の欠損面の状態によらず、補修対象物を良好に補修することを可能とする補修システム、補修データ提供装置及び補修データ生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】幾つかの実施形態に係る補修システムを示す全体模式図である。
図2】(a)はスキャナによって取得した補修対象物の立体データと、補修対象物のオリジナルの立体データとの比較を示す図であり、(b)は補修対象物の欠損箇所を特定した状態を説明するための図である。
図3】モード選択部による補修モードの選択手法を説明するための図であり、(a)は第1補修モードを選択する場合の例を示す図であり、(b)は第2補修モードを選択する場合の例を示す図である。
図4】補修対象物における欠損箇所の周囲を示す図であり、(a)は補修対象物の斜視図であり、(b)は補修対象物のAA断面図である。
図5】幾つかの実施形態に係る補修システムを示す全体模式図である。
図6】幾つかの実施形態に係る補修システムを示す全体模式図である。
図7】幾つかの実施形態に係る補修データ提供装置側通信部及び立体補修装置側通信部の構成を示すブロック図である。
図8】立体補修データ生成後における、立体補修装置及び補修データ提供装置の動作シーケンスの一例を示す図である。
図9】幾つかの実施形態に係る立体補修データの分割手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0028】
図1は、幾つかの実施形態に係る補修システム1を示す全体模式図である。補修システム1は、造形材を積層して補修対象物の欠損箇所を補修する立体補修装置2と、補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを立体補修装置2に提供する補修データ提供装置4と、を有しており、立体補修装置2と補修データ提供装置4とがネットワーク6を介して通信可能に構成されている。
【0029】
立体補修装置2は、補修対象物を立体スキャンして補修対象物の立体データを取得するためのスキャナ8と、造形材を積層する所謂積層造形法によって造形処理を行う造形手段10とを少なくとも備えている。積層造形法について更に詳述すれば、液化した合成樹脂等を噴射して積層するインクジェット方式、光硬化性樹脂を紫外線等により硬化させて積層する光造形方式、ABS樹脂やPLA樹脂等の熱可塑性樹脂を高温で溶かして積層する熱溶解積層方式、素材粉末を層状に敷き詰めて高出力のレーザービームなどで焼結する粉末焼結積層方式、シートを積層させるシート積層法等を好適に用いることができる。なお、一実施形態では、造形手段10は、補修のための造形処理のほかに、補修ではない新規造形を行う立体造形機能を備えていてもよい。
補修データ提供装置4は、補修対象物の欠損箇所を特定する欠損箇所特定部12と、補修対象物の欠損面の状態に応じて補修モードを選択するモード選択部14と、モード選択部14によって選択された補修モードに対応する立体補修データを生成する補修データ生成部16と、を少なくとも備えている。
【0030】
欠損箇所特定部12は、図2(a)に示すように、スキャナ8によって取得した補修対象物の立体データと、補修対象物のオリジナルの立体データとを比較して、図2(b)に示すように補修対象物の欠損箇所を特定する(欠損箇所を示す立体データを算出する)よう構成されている。なお、補修対象物のオリジナルの立体データの保管場所は、補修データ提供装置4が備える記憶部18であってもよいし、補修データ提供装置4の外部に設けられた不図示の記憶部であってもよい。すなわち、欠損箇所特定部12によって補修対象物の欠損箇所を特定する際に読み出し可能な場所に保管されていればよい。
【0031】
モード選択部14は、欠損箇所特定部12によって特定された欠損箇所に対応する欠損面の状態に応じて、補修対象物の欠損箇所のみの補修を行う第1補修モードと、補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択するよう構成されている。以下、モード選択部14による補修モードの選択手法の具体例について図3を用いて説明する。
【0032】
図3は、幾つかの実施形態に係るモード選択部14による補修モードの選択手法の例を説明するための図である。モード選択部14は、幾つかの実施形態では、図3(a)に示すように、補修対象物の欠損面の状態が所定の水準より滑らかな状態である場合には第1補修モードを選択し、図3(b)に示すように、所定の水準より滑らかな状態でない場合には、第2補修モードを選択するよう構成してもよい。なお、ここでの「所定の水準」は、例えば表面粗さ(十点平均粗さや算術平均粗さ等)によって規定してもよい。すなわち、欠損面の表面粗さが所定値未満の場合に第1補修モードを選択し、欠損面の表面粗さが所定値以上の場合に第2補修モードを選択してもよい。また、「所定の水準」は、例えば欠損面に生じている個々のひび割れ等の大きさ(長さ、幅、深さの少なくとも一つ)を考慮して定めてもよい。
【0033】
補修データ生成部16は、モード選択部14よって選択された補修モードに対応する立体補修データを生成するよう構成されている。例えば、モード選択部14によって第1補修モードが選択されれば、補修対象物の欠損箇所のみの補修を行うための立体補修データを生成し、モード選択部14によって第2補修モードが選択されれば、補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行うための立体補修データを生成する。すなわち、第1補修モードに対応する立体補修データは、補修対象物の欠損箇所を示す立体データを少なくとも含んでおり、第2補修モードに対応する立体補修データは、補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い補修範囲を示す立体データを少なくとも含んでいる。
【0034】
補修データ生成部16によって生成された立体補修データは補修データ提供装置4が備える補修データ提供装置側通信部20から立体補修装置2が備える立体補修装置側通信部22に送信され、該立体補修データに基づいて立体補修装置2による欠損箇所の補修が行われる。
【0035】
以上のように、モード選択部14は、補修対象物の欠損面の状態に応じて、補修対象物の欠損箇所のみの補修を行う第1補修モードと、補修対象物の欠損箇所を含み該欠損箇所よりも広い範囲の補修を行う第2補修モードとのいずれかを選択するよう構成されている。したがって、補修対象物の欠損面の状態によらず、欠損箇所を良好に補修することができる。
【0036】
なお、図1に示す立体補修装置2は、補修対象物の欠損箇所よりも広い範囲の補修を行うために、補修対象物における欠損箇所の周囲(欠損面及びその周囲;図4(a)及び(b)参照)を溶解する溶解手段24を更に備えている。溶解手段24は、第2補修モードがモード選択部14によって選択されると、補修対象物における欠損箇所の周囲を溶解するよう構成されている。これにより、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、欠損箇所を良好に補修することができる。なお、溶解手段24として、粉末焼結積層方式の場合における粉末焼結用レーザーや、金属粉末溶融用の赤外線レーザーを転用してもよい。
【0037】
また、溶解手段24は、第2補修モードにおいて、補修対象物の欠損面の状態に応じて欠損箇所の周囲を溶解する深さ(欠損面からの深さ;図4(a)及び(b)参照)又は範囲を調節するよう構成してもよい。これにより、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、欠損箇所を更に良好に補修することができる。なお、溶解手段24によって補修対象物における欠損箇所の周囲を溶解する場合には、補修データ生成部16は、補修対象物において溶解すべき範囲を示す立体データを含んだ立体補修データを生成する。
【0038】
また、図5に示すように、溶解手段24の代わりに、補修対象物における欠損箇所の周囲を削る切削手段26を備えていてもよい。図5に示す補修システム1は、切削手段26以外の構成は図1に示す補修システム1と同様である。この場合、切削手段26は、第2補修モードにおいて、補修対象物における欠損箇所の周囲を造形材の積層前に削る。これにより、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、欠損箇所を良好に補修することができる。
【0039】
また、切削手段は、第2補修モードにおいて、補修対象物の欠損面の状態に応じて欠損箇所の周囲を削る深さ又は範囲を調節するよう構成してもよい。これにより、補修対象物における欠損箇所の周囲に欠損に伴う歪みやひび等が残っていた場合であっても、欠損箇所を更に良好に補修することができる。なお、切削手段26によって補修対象物における欠損箇所の周囲を削る場合には、補修データ生成部16は、補修対象物において削るべき範囲を示す立体データを含んだ立体補修データを生成する。
【0040】
なお、補修データ提供装置側通信部20は、補修対象物の欠損箇所を補修するための立体補修データを立体補修装置側通信部22に一括して送信するよう構成してもよいが、立体補修データの機密性を高める観点から、補修データ提供装置側通信部20及び立体補修装置側通信部22は、以下のように構成することが望ましい。
【0041】
また、図6に示すように、幾つかの実施形態に係る補修システム1の立体補修装置2は、溶解手段24と切削手段26の両方を備えていてもよい。この場合、一実施形態では、スキャナ8は、溶解手段24により欠損箇所の周囲を溶解した後に補修対象物を再度立体スキャンし、切削手段26は、スキャナ8により取得した溶解後の補修対象物の立体データに基づいて切削を行うよう構成してもよい。このように、欠損箇所の周囲を溶解手段24によって溶解してから切削手段26による切削を行うことにより、精度よく切削を行うことが可能となり、欠損箇所を更に良好に補修することができる。
【0042】
また、図6に示すように、幾つかの実施形態に係る補修システム1の立体補修装置2は、溶解手段24及び/又は切削手段26により取り除かれた造形材を貯留する貯留タンク29を有しており、貯留タンク29に貯留した当該造形材を補修対象物の補修に利用するよう構成されてもよい。これにより、溶解や切削により取り除かれた造形材を再利用することが可能となり、補修対象物の補修に用いる造形材の使用量を低減することができる。
【0043】
また、図6に示すように、幾つかの実施形態に係る補修システム1の立体補修装置2は、補修対象物の補修対象箇所をマニュアル(手動)で指定可能に構成された補修対象箇所指定部31を有していてもよい。この場合、欠損箇所特定部12は、補修対象箇所指定部31によって指定した補修対象箇所の範囲内で欠損箇所を特定するよう構成される。これにより、補修対象物における所望の補修対象箇所を指定した上で、指定した範囲内で欠損箇所を補修することができる。なお、図6では補修対象箇所指定部31が立体補修装置2に設けられる場合を例示したが、補修対象箇所指定部31は、補修データ提供装置4に設けられてもよい。
【0044】
図7は、幾つかの実施形態に係る補修データ提供装置側通信部20及び立体補修装置側通信部22の構成を示すブロック図である。
【0045】
補修データ提供装置側通信部20は、立体補修データをn個(ただし、nは2以上の自然数)の送信データに分割する分割手段27と、n個の送信データを立体補修装置側通信部22に順次送信するデータ送信手段28と、立体補修装置側通信部22から後述の削除信号を受信する削除信号受信手段30と、を備えている。
【0046】
立体補修装置側通信部22は、データ送信手段28から送信された送信データの各々を受信するためのデータ受信手段32を備えており、造形手段10(図1参照)は、データ受信手段32によって受信した送信データの各々に基づいて造形処理(造形材を積層する補修処理)を行うよう構成されている。
【0047】
立体補修装置側通信部22は、データ削除手段34及び削除信号送信手段36を更に備えている。データ削除手段34は、造形手段10(図1参照)によって送信データの各々に基づいて造形処理を行う毎に、送信データの各々を削除するよう構成されている。削除信号送信手段36は、データ削除手段34によって送信データの各々を削除する毎に、送信データの各々が削除されたことを示す削除信号を削除信号受信手段30に送信するよう構成されている。
【0048】
図8は、図1に示した補修データ提供装置4が立体補修データを生成した後の、立体補修装置2及び補修データ提供装置4の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0049】
図8に示す立体補修装置2及び補修データ提供装置4は、以下のように動作する。まずS101では、分割手段27が、補修データ生成部16によって生成された立体補修データをn個の送信データに分割する。S102では、データ送信手段28が、n個の送信データのうち第1送信データを立体補修装置2のデータ受信手段32に送信する。S103では、造形手段10が第1送信データに基づく造形処理(造形材の積層)を実行する。なお、S103において、造形手段10による造形処理の前に、上述した溶解手段24による溶解及び/又は切削手段26による切削を行ってもよい。S104では、データ削除手段34が第1送信データを削除する。S105では、第1送信データが削除されたことを示す削除信号を、削除信号送信手段36が削除信号受信手段30に送信する。S106では、データ送信手段28が、第1送信データが削除されたことを示す削除信号を削除信号受信手段30によって受信したことを確認する。S107では、S106において削除信号の受信が確認されたことを条件として、データ送信手段28が第2送信データをデータ受信手段32に送信する。以下、同様の動作を繰り返し、第n送信データが削除されたことを示す削除信号を削除信号受信手段30が確認して、補修システム1における補修動作が完了する。なお、造形手段10による造形処理を行う前に上述した溶解手段24による溶解及び/又は切削手段26による切削を行うかどうかは、分割された送信データ毎に決定されてもよい。
【0050】
以上のように、データ送信手段28は、n個の送信データのうちi番目(ただし、iはn未満の自然数)の送信データ(第i送信データ)が削除されたことを示す削除信号を削除信号受信手段30によって受信したことを確認してから、n個の送信データのうちi+1番目の送信データ(第i+1送信データ)を立体補修装置2のデータ受信手段32に送信するよう構成されている。これにより、立体補修データ全体を立体補修装置2が同時に保持する状態を回避することができる。したがって、立体補修データ全体が立体補修データ送信側の意に反して複製されることを抑制することができる。
【0051】
次に、図7に示した分割手段27における立体補修データの分割手法について、図9を用いて説明する。
図9は、幾つかの実施形態に係る立体補修データの分割手法を説明するための図である。幾つかの実施形態に係る分割手段27は、図7に示すように、立体補修データを、積層される造形材の1層単位に分割するよう構成される。すなわち、分割手段27は、n個の送信データの各々が補修部分を構成する各層に対応するように(第i送信データが補修部分のi層目に対応するように)立体補修データを分割する。この場合、データ送信手段28は、補修部分のi層目に対応する第i送信データが削除されたことを示す削除信号を削除信号受信手段30によって受信したことを確認してから、補修部分のi+1層目に対応する第i+1送信データを立体補修装置2のデータ受信手段32に送信するよう構成される。これにより、立体補修データ全体が立体補修データ送信側の意に反して複製されることを抑制することができる。なお、分割手段27は、立体補修データを、積層される造形材の複数層単位に分割してもよく、この場合、1層単位に分割する場合に比して送信データの送信回数を低減することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 補修システム
2 立体補修装置
4 補修データ提供装置
6 ネットワーク
8 スキャナ
10 造形手段
12 欠損箇所特定部
14 モード選択部
16 補修データ生成部
18 記憶部
20 補修データ提供装置側通信部
22 立体補修装置側通信部
24 溶解手段
26 切削手段
27 分割手段
28 データ送信手段
29 貯留タンク
30 削除信号受信手段
31 補修対象箇所指定部
32 データ受信手段
34 データ削除手段
36 削除信号送信手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9