特開2015-229304(P2015-229304A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229304(P2015-229304A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】成形治具及び成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/32 20060101AFI20151124BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20151124BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20151124BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20151124BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20151124BHJP
   B29L 31/30 20060101ALN20151124BHJP
【FI】
   B29C43/32
   B29C43/12
   B29C67/14 J
   B29K105:08
   B29L9:00
   B29L31:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-116929(P2014-116929)
(22)【出願日】2014年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕一
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC03
4F204AD16
4F204AG03
4F204AH31
4F204AM28
4F204AR07
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN17
4F204FQ37
4F204FQ40
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG03
4F205AH31
4F205AR07
4F205HA09
4F205HA23
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK05
4F205HK23
4F205HK31
(57)【要約】
【課題】より良好な品質で複合材の被成形品を製造することが可能な成形治具を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る成形治具は、第1の剛体部及び第2の剛体部を有する。第1の剛体部は、互いに法線方向が異なる第1の面、第2の面及び第3の面を少なくとも有する複合材であって、前記第2の面が前記第1の面及び前記第3の面と連結された形状を少なくとも一部に有する前記複合材の前記第1の面に圧力を負荷する。第2の剛体部は、前記第2の面に圧力を負荷する。前記第2の剛体部に、前記第3の面からの、圧力の負荷方向の変化を軽減するための、前記第1の面に平行でない面を形成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに法線方向が異なる第1の面、第2の面及び第3の面を少なくとも有する複合材であって、前記第2の面が前記第1の面及び前記第3の面と連結された形状を少なくとも一部に有する前記複合材の前記第1の面に圧力を負荷するための第1の剛体部と、
前記第2の面に圧力を負荷するための第2の剛体部とを有し、
前記第2の剛体部に、前記第3の面からの、圧力の負荷方向の変化を軽減するための、前記第1の面に平行でない面を形成した成形治具。
【請求項2】
前記第2の剛体部に、前記第2の面に対して傾斜する面を形成した請求項1記載の成形治具。
【請求項3】
前記第2の剛体部に、前記第3の面に対して連続的かつ平行な面を形成した請求項1又は2記載の成形治具。
【請求項4】
前記第1の剛体部と前記第2の剛体部との間にバギング用のフィルムの向きを変えるための凹部を形成した請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形治具。
【請求項5】
前記第1の剛体部は前記第1の面に水平方向の成分を有する圧力を負荷するための面を有し、
前記第2の剛体部は前記第2の面に鉛直方向の成分を有する圧力を負荷するための面と、チャンファーを形成する前記第3の面からの、前記圧力の負荷方向の変化を軽減するための面とを有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成形治具。
【請求項6】
前記第1の剛体部及び前記第2の剛体部を含む第1の治具をセットすることが可能な形状を有する第2の治具であって、複数のシート状のプリプレグを各端部をずらして積層することによって前記各端部により前記第3の面を形成するための、前記第3の面に対応する剛体の面を有する前記第2の治具を更に有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形治具。
【請求項7】
前記剛体の面に、前記プリプレグの適切な積層枚数を確認するためのメモリを設けた請求項6記載の成形治具。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形治具を用いて被成形品を製造する成形方法。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形治具を用いて複合材をセットするステップと、
セットされた前記複合材及び前記成形治具をフィルムで密閉し、前記フィルムと前記複合材及び前記成形治具との間を真空にすることによって前記複合材及び前記成形治具に圧力を負荷するステップと、
前記圧力が負荷された前記複合材を加熱硬化するステップと、
を有する成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は成形治具及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機部品の代表的な素材としてガラス繊維強化プラスチック(GFRP: Glass fiber reinforced plastics)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics)等の複合材が挙げられる。複合材を用いて航空機の部品を製造するためには、複合材の加熱硬化による成形加工が必要である。
【0003】
また、航空機の部品が有する典型的な構造の1つとしてパネルにストリンガー(縦通材)を取付けた構造が挙げられる。そこで、従来、複合材で構成されるパネルに複合材で構成されるストリンガーをセットした状態で同時に硬化させる成形方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、成形後の形状に合わせたマンドレルと呼ばれる治具を用いてパネル用の複合材の上にストリンガー用の複合材がセットされる。続いて、バギングフィルムで複合材を密閉した状態で真空引きが行われる。そして、大気圧が負荷された状態で複合材がオートクレーブ装置内に搬入され、複合材の加熱硬化による成形が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−19024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より良好な品質で複合材の被成形品を製造することが可能な成形治具及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る成形治具は、第1の剛体部及び第2の剛体部を有する。第1の剛体部は、互いに法線方向が異なる第1の面、第2の面及び第3の面を少なくとも有する複合材であって、前記第2の面が前記第1の面及び前記第3の面と連結された形状を少なくとも一部に有する前記複合材の前記第1の面に圧力を負荷する。第2の剛体部は、前記第2の面に圧力を負荷する。前記第2の剛体部に、前記第3の面からの、圧力の負荷方向の変化を軽減するための、前記第1の面に平行でない面を形成した。
また、本発明の実施形態に係る成形方法は、前記成形治具を用いて被成形品を製造するものである。
また、本発明の実施形態に係る成形方法は、前記成形治具を用いて複合材をセットするステップと、セットされた前記複合材及び前記成形治具をフィルムで密閉し、前記フィルムと前記複合材及び前記成形治具との間を真空にすることによって前記複合材及び前記成形治具に圧力を負荷するステップと、前記圧力が負荷された前記複合材を加熱硬化するステップとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係る成形治具及び成形方法によれば、より良好な品質で複合材の被成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る成形治具の構成を示す横断面図。
図2図1に示す成形治具の上面図。
図3図1に示す成形治具の正面図。
図4図1に示す成形治具の端部における斜視図。
図5図1に示すマンドレルに負荷される圧力の分布を、横断面の形状が矩形である従来のマンドレルに負荷される圧力の分布と比較して示す図。
図6図5に示すような圧力分布を被成形品に負荷することによって改善される不具合を示す図。
図7図1に示すマンドレルの形状の変形例を示す図。
図8図1に示す成形治具を用いた成形方法の流れを示す図。
図9図8に示すプリプレグの積層用の第2の治具に形成される剛体の面に、プリプレグの適切な積層枚数を確認するためのメモリを設けた例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る成形治具及び成形方法について添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る成形治具の構成を示す横断面図、図2図1に示す成形治具の上面図、図3図1に示す成形治具の正面図、図4図1に示す成形治具の端部における斜視図である。
【0012】
成形治具1は、加熱硬化の対象となるGFRPやCFRP等の複合材で構成される被成形品Wに圧力を負荷するための治具である。圧力を負荷する対象となる被成形品Wは、互いに法線方向が異なる第1の面S1、第2の面S2及び第3の面S3を少なくとも有し、かつ第2の面S2が第1の面S1及び第3の面S3と連結された形状を少なくとも一部に有する複合材とされる。以降では、横断面の形状が逆T字状であるT型ストリンガーW1を外板スキン等のパネルW2上に載置した航空機部品用の複合材を被成形品Wとして説明する。
【0013】
但し、横断面の形状がL字状やZ字状等のT字状以外の形状を有するストリンガーを被成形品Wとしても良い。また、ストリンガーに限らず、フレーム、リブ(小骨)、スパー(桁)等の様々な構造を有する複合材を被成形品Wとすることができる。もちろん、パネル上に設置されないストリンガー、フレーム、リブ、スパー等の構造を有する複合材単体を被成形品Wとしても良い。
【0014】
図示されるように、T型ストリンガーW1は、鉛直方向に切り立つ第1の板状の部分と、パネルW2に沿う第2の板状の部分とを有する。また、パネルW2に沿う第2の板状の部分の両端部には、チャンファー(C面取りが施された面)C1が形成される。従って、T型ストリンガーW1の第1の板状の部分の両側には、それぞれ法線方向が水平方向となる第1の面S1が形成される。また、T型ストリンガーW1の第2の板状の部分のパネルW2と逆側には、第1の板状の部分を挟んでそれぞれ法線方向が鉛直方向となる2つの第2の面S2が形成される。更に、第1の板状の部分の両側(第2の板状の部分の両端部)に設けられるチャンファーC1として2つの第3の面S3が形成される。
【0015】
そして、第1の板状の部分の両側において、それぞれ第1の面S1が第2の面S2とR面取りを形成する曲面によって連結される。更に、第1の板状の部分の両側において、それぞれ第2の面S2が稜線(エッジ)を形成するように第3の面S3と連結される。
【0016】
尚、加熱硬化によって複合材を得るための、繊維に樹脂を含浸した加熱硬化前のシート状の中間材料は、プリプレグと呼ばれる。複合材は、プリプレグを積層して加熱硬化することによって得られるが、ここでは加熱硬化前における積層されたプリプレグについても複合材と称して説明する。
【0017】
上述したような被成形品Wをセットして圧力を負荷するために、成形治具1は、定盤2、マンドレル3、溶着防止フィルム4Aやブリーザー4B等の様々な目的を有するシート、バギングフィルム5、真空口金6及び固定用治具7を有する。定盤2は、パネルW2を含む被成形品Wを設置するための治具である。マンドレル3は、T型ストリンガーW1の第1の板状の部分の両側に形成される2か所の第1の面S1及び第2の面S2にそれぞれ圧力を負荷するための治具である。従って、T型ストリンガーW1の横断面が線対称であれば、面対称な構造を有する2つのマンドレル3が準備される。マンドレル3の詳細構造については後述する。
【0018】
溶着防止フィルム4Aは、加熱硬化の際にバギングフィルム5がマンドレル3及び被成形品W側に溶着することを防止するための離型フィルムである。従って、溶着防止フィルム4Aは、加熱硬化の際に溶融しない程度の耐熱性を有する材料で構成される。溶着防止フィルム4Aの厚さ、枚数及び材質は、加熱硬化の条件に応じて調整することができる。溶着防止フィルム4Aの具体例としては、フッ素樹脂で構成されるFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)フィルムが挙げられる。図示された例では、溶着防止フィルム4Aがブリーザー4Bとマンドレル3及び被成形品Wとの間に挿入されている。
【0019】
一方、ブリーザー4Bは、主にバギングフィルム5で囲まれた領域内の空気を抜き易くすることを目的として挿入されるシートである。このため、ブリーザー4Bは、溶着防止フィルム4Aとバギングフィルム5との間や溶着防止フィルム4Aと定盤2との間などに挿入される。ブリーザー4Bは、加熱硬化用のオートクレーブ装置内において使用できるように不織ポリエステル又はナイロン繊維によって構成される。
【0020】
バギングフィルム5は、真空引きを行うことによって大気圧を負荷する領域を形成するためのバギング用のフィルムである。大気圧を負荷する対象は、マンドレル3及び被成形品Wである。従って、バギングフィルム5によってマンドレル3及び被成形品Wが密閉される。そのために、バギングフィルム5の端部は、シーラント8によって定盤2に接着される。また、バギングフィルム5の任意の位置には、真空引き用の配管を連結するための真空口金6が設けられる。
【0021】
そして、真空装置とバギングフィルム5で囲まれた領域とを配管によって接続し、真空装置の駆動によってバギングフィルム5で囲まれた領域を、大気圧よりも圧力が低い真空状態とすることができる。
【0022】
固定用治具7は、マンドレル3を定盤2に固定するための治具である。そのため、例えば、図示されるように、2つの固定用治具7で、マンドレル3の長手方向の両側を定盤2に固定することができる。
【0023】
次にマンドレル3の詳細構造例について説明する。
【0024】
マンドレル3は、バギングフィルム5内に設置されることによって、T型ストリンガーW1に形成される第1の面S1及び第2の面S2にそれぞれ圧力を負荷する治具である。すなわち、マンドレル3は、T型ストリンガーW1に自重を負荷するとともに、バギングフィルム5内における圧力と大気圧との差に相当する圧力を受けてT型ストリンガーW1に圧力を負荷するための治具である。従って、マンドレル3は、剛体の治具である。
【0025】
具体的には、マンドレル3は、T型ストリンガーW1を構成する複合材の第1の面S1に圧力を負荷するための第1の剛体部3Aと、複合材の第2の面S2に圧力を負荷するための第2の剛体部3Bとを有する。尚、図示されるように第1の剛体部3Aと第2の剛体部3Bを一体物とすることが成形治具1の部品点数の削減に寄与する。但し、製造が容易となるように第1の剛体部3Aと第2の剛体部3Bを別々の部品として組立ててもよい。
【0026】
一方、複合材のチャンファーC1を形成する第3の面S3には、マンドレル3からではなく、バギングフィルム5、FEPフィルム4A及びブリーザー4B等の副資材を介してバギングフィルム5内における圧力と大気圧との差に相当する圧力が負荷される。従って、第1の剛体部3Aと第2の剛体部3Bとを有するマンドレル3は複合材の第3の面S3には接触しない形状を有する。
【0027】
但し、マンドレル3の形状は、T型ストリンガーW1のチャンファーC1が形成された部分と、チャンファーC1が形成された部分の近傍におけるパネルW2の、加熱硬化後における理想形状からの乖離が低減又は回避されるような形状とされる。具体的には、マンドレル3の横断面の形状は矩形とされず、図示されるように必要な面取りを施した矩形部にT型ストリンガーW1のチャンファーC1の角度に応じた凸部3Cを合成した形状とされる。立体的には、マンドレル3は、例えば、面取りが施された直方体の1つの稜線に、横断面が概ね三角形の凸部3Cを結合した形状とすることができる。
【0028】
図5は、図1に示すマンドレル3に負荷される圧力の分布を、横断面の形状が矩形である従来のマンドレルに負荷される圧力の分布と比較して示す図である。
【0029】
図5(A)は横断面の形状が矩形である従来のマンドレル9に負荷される圧力の分布を示し、図5(B)は図1に示すマンドレル3に負荷される圧力の分布を示す。
【0030】
図5(A)に示すように、チャンファーC1を避けてT型ストリンガーW1の形状にフィットするように設計された横断面の形状が矩形である従来のマンドレル9には、垂直方向の圧力と、水平方向の圧力が負荷される。これに対して、T型ストリンガーW1のチャンファーC1には、斜め方向の圧力が負荷される。従って、従来のマンドレル9とT型ストリンガーW1のチャンファーC1とが近接する部分には、圧力の負荷方向が不連続かつ局所的に変化する箇所が生じる。
【0031】
これに対して図5(B)に示すように、マンドレル3の第2の剛体部3Bに、少なくとも第1の面S1に平行でない面を形成すれば、チャンファーC1を形成する第3の面S3からの、圧力の負荷方向の変化を軽減することができる。具体例として、第2の剛体部3Bに、第2の面S2に対して傾斜する面を形成することによって、チャンファーC1と第2の剛体部3Bとの間における圧力の負荷方向の変化を小さくすることができる。特に、第2の剛体部3Bに、第3の面S3に対して連続的かつ平行な面、すなわちチャンファーC1と同じ角度を有する傾斜面を形成すれば、圧力の負荷方向の変化を実質的にゼロにすることができる。
【0032】
T型ストリンガーW1の成形を行う場合には、第1の剛体部3Aには、T型ストリンガーW1の第1の面S1に水平方向の成分を有する圧力を負荷するための面が形成される。他方、第2の剛体部3Bには、T型ストリンガーW1の第2の面S2に鉛直方向の成分を有する圧力を負荷するための面が形成される。加えて、第2の剛体部3Bには、T型ストリンガーW1のチャンファーC1を形成する第3の面S3からの、圧力の負荷方向の変化を軽減するための面が形成される。その結果、第1の剛体部3Aと第2の剛体部3Bとの間にバギングフィルム5の向きを変えるための凹部3Dが形成される。
【0033】
このため、バギングフィルム5、FEPフィルム4A、ブリーザー4B等の副資材は、第1の剛体部3Aと第2の剛体部3Bとの間に形成されたマンドレル3の凹部3Dにおいて曲がることとなる。他方、チャンファーC1と第2の剛体部3Bとの境界部分には、副資材を曲げずに面で接触させることができる。その結果、被成形品Wの品質を向上させることができる。
【0034】
図6は、図5に示すような圧力分布を被成形品Wに負荷することによって改善される不具合を示す図である。
【0035】
図6(A)は図5(A)に示す圧力分布を被成形品Wに負荷した場合に生じ得る不具合の例を示している。一方、図6(B)は図5(B)に示す圧力分布を被成形品Wに負荷することによって実際に得られた加熱硬化後における複合材の形状の一例を示している。
【0036】
不連続な圧力分布を複合材に負荷した状態で複合材の加熱硬化を行うと、図6(A)に示すように、T型ストリンガーW1の端部とパネルW2とが重なった部分において圧力差に起因する繊維のうねり10が生じる場合がある。また、樹脂が溶着防止フィルム等の副資材とマンドレルとの隙間に流れ込むことによって、チャンファーC1に凹み11が生じたり、バリ12が生じたりする場合がある。更に、樹脂に限らず繊維のバリ12が生じる場合もある。図6(A)に示すような不具合が生じた場合には、バリ12を除去するための仕上げ削りや樹脂の塗布による表面仕上げが必要となる。
【0037】
これに対して、図5(B)に示すようにチャンファーC1とマンドレル3との境界部分において局所的な変化のない圧力分布を複合材に負荷した状態で複合材の加熱硬化を行った結果、図6(B)に示すように良好な品質で被成形品Wを得られることが確認できた。具体的には、繊維のうねり10及びチャンファーC1の凹み11が顕著に低減され、かつバリ12の無い被成形品Wを得ることができた。
【0038】
図7は、図1に示すマンドレル3の形状の変形例を示す図である。
【0039】
図7(A)に示すように、T型ストリンガーW1のチャンファーC1とマンドレル3とのなす角度を、180度とせずに、鈍角としてもよい。T型ストリンガーW1のチャンファーC1とマンドレル3とのなす角度を鈍角とする場合には、図7(A)に示すようにT型ストリンガーW1のチャンファーC1とマンドレル3との間に凹部を形成する場合に限らず、凸部を形成するようにしてもよい。
【0040】
また図7(B)に示すように、マンドレル3にR面取りのような曲面を形成し、マンドレル3の曲面とT型ストリンガーW1のチャンファーC1との間がマンドレル3とチャンファーC1との境界となるようにしてもよい。もちろん、図1又は図7(A)に示すようなチャンファーC1の角度に応じた平らな傾斜面をマンドレル3に設ける場合においても、マンドレル3の傾斜面と法線方向が水平方向の面との間にR面取り等の曲面を形成することができる。
【0041】
更に、別の例として、図7(C)に示すように、厚さが十分に薄い板状の部分をマンドレル3に設けてもよい。すなわち、パネルW2に沿うT型ストリンガーW1の第2の板状の部分に形成される、法線方向が鉛直方向の第2の面S2と平行又は概ね平行な面を、チャンファーC1との境界を形成するマンドレル3の部分に形成する場合であっても、チャンファーC1との境界を形成するマンドレル3の部分が十分に薄ければ、チャンファーC1に局所的な変化のない圧力分布を負荷することができる。
【0042】
次に成形治具1を用いて被成形品Wを製造する成形方法の具体的な手順について説明する。
【0043】
図8は、図1に示す成形治具1を用いた成形方法の流れを示す図である。
【0044】
初めに成形治具1を用いて加熱硬化前の複合材がセットされる。具体的には、図8(A)に示すように第1工程において、第1の剛体部3A及び第2の剛体部3Bを含む第1の治具(マンドレル)3並びに第2の治具20を用いて複数のシート状のプリプレグPが積層される。第2の治具20は、第1の治具3をセットすることが可能な形状を有する。
【0045】
図8(A)に示す例では、T型ストリンガーW1のチャンファーC1の角度に合わせたマンドレル3の面を、面で支持することができるようにC面取りC2が施された第2の治具20が、プリプレグPの積層用に用いられている。より具体的には、直方体の1つの稜線の部分にT型ストリンガーW1のチャンファーC1及びマンドレル3の傾斜面と同じ傾斜を有するC面取りC2を施した形状を有する第2の治具20が、C面取りC2を上側に向けて設置される。
【0046】
そうすると、1つのマンドレル3を加熱硬化時における向きに対して逆さまにした状態で第2の治具20にセットすることができる。そして、マンドレル3がセットされた第2の治具20に、横断面がL字となるように複数枚のプリプレグPを積層することができる。
【0047】
また、第2の治具20のC面取りC2は、マンドレル3をセットした状態において、マンドレル3から突出する大きさで形成される。このため、複数のシート状のプリプレグPの各端部が、それぞれ第2の治具20のC面取りC2に接触するように、プリプレグPの各端部をずらして積層することができる。これにより、プリプレグPの各端部によって、T型ストリンガーW1のチャンファーC1となる第3の面S3を形成することができる。つまり、第2の治具20のC面取りC2は、T型ストリンガーW1のチャンファーC1を形成するための、チャンファーC1に対応する剛体の面として機能する。
【0048】
図9は、図8に示すプリプレグPの積層用の第2の治具20に形成される剛体の面に、プリプレグPの適切な積層枚数を確認するためのメモリを設けた例を示す図である。
【0049】
図9に示すように、第2の治具20のC面取りC2によって形成される剛体の面に、T型ストリンガーW1の厚さに対応するプリプレグPの適切な積層枚数を確認するためのメモリMを設けることができる。これにより、プリプレグPの積層作業を容易にすることができる。尚、図9に示す例では、鉛直方向の複数の線が所定の間隔で罫書かれたメモリMが示されているが、水平方向又は剛体の面に対する法線方向の複数の線によってメモリを作成してもよい。
【0050】
2つのマンドレル3の数及び形状に合わせて面対称な2つの第2の治具20を用いると、図8(A)に示すように、横断面がL字状で面対称な2組のプリプレグPの積層体PL1を準備することができる。
【0051】
但し、プリプレグPの積層体PL1は横断面がL字状となるように曲がっている。このため、横断面がL字状となった2つのプリプレグPの積層体PL1を突き合わせると、2つのプリプレグPがそれぞれ水平方向かつ逆向きに折曲がる部分に隙間が生じる。そこで、2つのプリプレグPの隙間を埋めるための、三角柱状のプリプレグPの積層体PL2が別途準備される。
【0052】
そして、横断面がL字状となった2つのプリプレグPの積層体PL1に加えて横断面が三角形状となったプリプレグPの積層体PL2を組合わせた状態で、図8(B)に示すように1対の第2の治具20の傾斜する剛体の面に沿って更に幅が徐々に変化する、横断面の形状が等脚台形であるプリプレグPの積層体PL3が組合わせられる。これにより、T型ストリンガーW1の形状を有するプリプレグPの積層体が逆さまになった状態で得られる。
【0053】
次に、第2の治具20を取り外し、1対のマンドレル3に挟まれてセットされたプリプレグPの積層体を上下方向に反転させると、図8(C)に示すようにT型ストリンガーW1の形状を有し、かつ2つのマンドレル3をセットしたプリプレグPの積層体PL4を準備することができる。
【0054】
一方、図8(D)に示すように定盤2上に、パネルW2用のプリプレグPの積層体PL5が設置される。そして、図8(E)に示すように、パネルW2用のプリプレグPの積層体PL5の上に、マンドレル3をセットしたT型ストリンガーW1用のプリプレグPの積層体PL4が設置される。そして、図4に例示されるような固定用治具7を用いてパネルW2用のプリプレグPの積層体PL5及びマンドレル3をセットしたT型ストリンガーW1用のプリプレグPの積層体PL4が定盤2上に固定される。
【0055】
次に、第2工程においてプリプレグPの積層体PL4、PL5、すなわち加熱硬化前の複合材に対して真空引きによる加圧が実行される。具体的には、図8(F)に示すようにセットされた加熱硬化前の複合材及びマンドレル3がバギングフィルム5で密閉される。また、加熱時におけるバギングフィルム5の溶着を防止するために、バギングフィルム5により密閉される領域の内側には、FEPフィルム4Aやブリーザー4B等の溶着防止フィルム4が挿入される。バギングフィルム5の端部は、シーラント8によって定盤2に接着される。これにより、バギングフィルム5の内側に真空引きの対象となる閉空間が形成される。
【0056】
バギングフィルム5には、予め真空口金6が取付けられており、真空ポンプと接続された配管が真空口金6に取付けられる。そして、真空ポンプの駆動によってバギングフィルム5で囲まれた領域から空気が排出される。これにより、バギングフィルム5で囲まれた領域が真空状態となり、加熱硬化前の複合材及びマンドレル3が加圧される。すなわち、バギングフィルム5と加熱硬化前の複合材及びマンドレル3との間を真空にすることによって複合材及びマンドレル3に圧力が負荷される。
【0057】
次に、第3工程において、圧力が負荷された複合材が加熱硬化される。具体的には、バギングフィルム5で覆われた加熱硬化前の複合材及びマンドレル3がオートクレーブ装置に搬入される。そして、オートクレーブ装置による加熱によって、複合材が硬化する。その結果、図8(G)に示すような、パネルW2上にT型ストリンガーW1を取付けた加熱硬化後における複合材の被成形品Wを製造することができる。
【0058】
つまり以上のような成形治具1は、T型ストリンガーW1の板状の部分に形成されるチャンファーC1のように、マンドレル3が設置されない部分における理想形状からの変形を防止するために、マンドレル3が設置されない部分に局所的かつ不連続な圧力が負荷されないような形状及び構造を有するマンドレル3を構成要素とするものである。
【0059】
このため、成形治具1によれば、局所的かつ不連続な圧力の負荷に起因する樹脂の流れによる凹み、バリの発生、繊維のうねり等の品質の劣化要因となる現象を低減又は回避することができる。その結果、バリを除去するための仕上げ削りや樹脂の塗布による表面仕上げを低減又は不要にすることができる。
【0060】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0061】
1 成形治具
2 定盤
3 マンドレル(第1の治具)
3A 第1の剛体部
3B 第2の剛体部
3C 凸部
3D 凹部
4A 溶着防止フィルム
4B ブリーザー
5 バギングフィルム
6 真空口金
7 固定用治具
8 シーラント
9 従来のマンドレル
10 うねり
11 凹み
12 バリ
20 第2の治具
S1 第1の面
S2 第2の面
S3 第3の面
W 被成形品
W1 T型ストリンガー
W2 パネル
C1 チャンファー
C2 C面取り
P プリプレグ
PL1、PL2、PL3、PL4、PL5 積層体
M メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9