【解決手段】 複数の安全ドライブ装置における1の安全ドライブ装置3Aはマスタ安全装置3A−3を有し、他の安全ドライブ装置3B、3Cは、スレーブ安全装置を有する。マスタ安全装置およびスレーブ安全装置の各々は、コントローラ1が出力する同期信号φに同期し、かつ、同期信号の周期のk倍(kは2以上の整数)の処理周期で周期的に安全制御を行う。マスタ安全装置は、当該装置の処理周期を同期させている同期信号の発生タイミングを示すマルチキャスト信号MCを送信する。スレーブ安全装置は、マルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φに当該装置の処理周期を同期させる。
前記周期タイミング補正手段は、前記処理周期の制御により前記処理周期の開始タイミングを前記同期指示信号の発生タイミングの所定範囲内に移動させる第1の処理と、前記処理周期の開始タイミングが前記同期指示信号の発生タイミングの所定範囲内にある状態において、前記処理周期の制御により前記処理周期の開始タイミングを前記同期信号の発生タイミングの所定範囲内に移動させる第2の処理とを実行することを特徴とする請求項1に記載の同期システム。
前記第1の処理では、前記スレーブ装置の処理周期の開始タイミングの直前の同期信号の発生タイミングにおける前記周期タイマのタイマ値である第1のタイマ値と前記同期指示信号の発生タイミングにおける前記周期タイマのタイマ値である第2のタイマ値との差分の絶対値が閾値を越えている場合に、前記周期タイマに計時させる処理周期を規定値から所定方向に所定量だけ変化させることにより、前記処理周期の開始タイミングを前記同期指示信号の発生タイミングに接近させることを特徴とする請求項3に記載の同期システム。
前記第2の処理では、前記第1のタイマ値と前記第2のタイマ値との差分の絶対値が前記閾値以内になった状態において、前記第1のタイマ値に基づいて、前記周期タイマに計時させる処理周期を増減させることにより、前記処理周期の開始タイミングを前記同期信号の発生タイミングに接近させることを特徴とする請求項4に記載の同期システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
図1はこの発明による同期システムの一実施形態である安全ドライブシステムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この安全ドライブシステムは、コントローラ1と、サーボ、インバータなどの安全ドライブ装置3A〜3Cと、安全ドライブ装置3A〜3Cに各々接続された制御対象機器であるモータ4A〜4Cを有する。図示の例では、3台の安全ドライブ装置が安全ドライブシステムに設けられているが、3台以外の安全ドライブ装置を設けてもよい。コントローラ1と安全ドライブ装置3A〜3Cとの間にはネットワーク2が介在している。コントローラ1は、ネットワーク2を介して一定周期Tの同期信号φを安全ドライブ装置3A〜3Cに供給する。また、コントローラ1と安全ドライブ装置3A〜3Cの各々は、ネットワーク2を介してデータの授受を行う。
【0013】
図1に示すように、安全ドライブ装置3Aは、通信装置3A−1と、ドライブ装置3A−2と、安全装置3A−3を有する。
【0014】
通信装置3A−1は、コントローラ1と、ネットワーク2を介して通信するための装置である。この通信装置3A−1は、コントローラ1から受信した同期信号φや通信データをドライブ装置3A−2または安全装置3A−3に振り分ける。また、通信装置3A−1は、ドライブ装置3A−2または安全装置3A−3から与えられた通信データをコントローラ1に送信する。
【0015】
ドライブ装置3A−2は、例えばコントローラ1からネットワーク2、通信装置3A−1を経由して受信したドライブ指令に基づいてモータ4Aを制御する。ドライブ装置3A−2は、モータ4Aの制御を、コントローラ1からネットワーク2、通信装置3A−1を経由して受信される同期信号φに同期して実行する。
【0016】
安全装置3A−3は、例えばコントローラ1からネットワーク2、通信装置3A−1を経由して受信した安全指令に基づいてモータ4Aを安全停止させる等の安全処理を実行する。さらに詳述すると、安全装置3A−3は、この安全処理をコントローラ1からネットワーク2、通信装置3A−1を経由して受信される同期信号φに同期し、かつ、同期信号φの周期Tのk倍(kは2以上の整数)の処理周期kTで繰り返す。
【0017】
以上が安全ドライブ装置3Aの構成である。安全ドライブ装置3Bおよび3Cも、安全ドライブ装置3Aと基本的に同様な構成を有しているが、安全ドライブ装置3Aと安全ドライブ装置3Bおよび3Cとでは安全装置の機能が異なっている。すなわち、安全ドライブ装置3Aの安全装置3A−3はマスタ安全装置として機能するのに対し、安全ドライブ装置3Bおよび3Cの安全装置3B−3および3C−3(図示略)はスレーブ安全装置として機能する。
【0018】
図2はマスタ安全装置3A−3の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、マスタ安全装置3A−3は、周期タイマ3A−3−1と、同期信号取得手段3A−3−2と、周期タイミング補正手段3A−3−3と、マルチキャスト送信手段3A−3−4とを有する。
【0019】
周期タイマ3A−3−1は、予め与えられた開始値からタイムアップ値までのカウントを繰り返すことによりマスタ安全装置3A−3の安全処理の処理周期kTの計時を繰り返すアップカウンタである。また、同期信号取得手段3A−3−2は、コントローラ1からの同期信号φの受信時の周期タイマ3A−3−1のタイマ値をキャプチャする。
【0020】
周期タイミング補正手段3A−3−3およびマルチキャスト送信手段3A−3−4は、周期タイマ3A−3−1のタイマ値がタイムアップ値に到達する都度起動される手段である。
【0021】
周期タイミング補正手段3A−3−3は、起動される都度、その時点において同期信号取得手段3A−3−2にキャプチャされたタイマ値を確認し、タイマ値に応じて周期タイマ3A−3−1のタイムアップ値を変化させ、周期処理を変える。具体的には、タイムアップ値をTUとした場合、タイマ値が例えばTU/2〜TU−α(αは十分に小さな所定値)の間の値であればタイムアップ値TUを規定値から所定値ΔTUだけ小さくし、タイマ値が例えばα〜TU/2の間の値であればタイムアップ値TUを規定値から所定値ΔTUだけ大きくする。
【0022】
周期タイミング補正手段3A−3−3は、このような処理をタイムアップの都度繰り返すことにより、周期タイマ3A−3−1のタイマ値が開始値となるタイミングを同期信号φの受信タイミングに接近させ、マスタ安全装置3A−3の処理周期を同期信号φに同期させる。
【0023】
マルチキャスト送信手段3A−3−4は、起動される都度、マルチキャスト信号MCを通信装置3A−1を介して2のネットワークに送出する。上述したようにマルチキャスト送信手段3A−3−4は、周期タイマ3A−3−1のタイマ値がタイムアップ値に到達する都度起動される。従って、マルチキャスト送信手段3A−3−4が送信するマルチキャスト信号MCは、マスタ安全装置3A−3の処理周期の開始タイミングを示す同期指示信号としての役割を果たす。
【0024】
図3はスレーブ安全装置3B−3の構成を示すブロック図である。なお、ここではスレーブ安全装置3B−3の構成を例示するが、スレーブ安全装置3C−3の構成も、このスレーブ安全装置3B−3と同様である。
【0025】
図3に示すように、スレーブ安全装置3B−3は、周期タイマ3B−3−1と、同期信号取得手段3B−3−2と、マルチキャスト取得手段3B−3−4と、周期タイミング補正手段3B−3−3とを有する。
【0026】
周期タイマ3B−3−1は、マスタ安全装置3A−3の周期タイマ3A−3−1と同様、予め与えられた開始値からタイムアップ値までのカウントを繰り返すことによりスレーブ安全装置3B−3の安全処理の処理周期kTの計時を繰り返すアップカウンタである。
【0027】
同期信号取得手段3B−3−2は、コントローラ1からの同期信号φの受信時の周期タイマ3B−3−1のタイマ値T1をキャプチャする。マルチキャスト取得手段3B−3−4は、ネットワーク2から通信装置3B−1を介してマルチキャスト信号MCを取得し、その時点における周期タイマ3B−3−1のタイマ値T2をキャプチャする。
【0028】
周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1がタイムアップする都度起動される手段である。この周期タイミング補正手段3B−3−3は、起動される都度、その時点におけるタイマ値T1およびT2を確認し、その結果に基づいて、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を制御する。そして、周期タイミング補正手段3B−3−3は、このタイマ値T1およびT2に基づくタイムアップ値の制御を繰り返すことにより、周期タイマ3B−3−1のタイマ値が開始値となるタイミングをマルチキャスト信号MCの発生タイミングの所定範囲内において発生する同期信号φのタイミングに同期させる。
【0029】
図4はスレーブ安全装置3B−3の動作の概略を示すタイムチャートである。この例において、同期信号φの周期はT、マスタ安全装置3A−3およびスレーブ安全装置3B−3の処理周期の長さは4Tとなっている。そして、マスタ安全装置3A−3のマルチキャスト送信手段3A−3−4は、マスタ安全装置3A−3の処理周期の開始タイミングPmにおいて、マルチキャスト信号MCをネットワーク2に送出する。
【0030】
スレーブ安全装置3B−3の周期タイミング補正手段3B−3−3は、マルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φにスレーブ安全装置3B−3の処理周期の開始タイミングPsを同期させるための同期化処理を実行する。周期タイミング補正手段3B−3−3は、この同期化処理を2段階に分けて行う。
【0031】
まず、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1が計時する処理周期の開始タイミングPsをマルチキャスト信号MCの発生タイミングの前後所定範囲内に接近させる第1の処理を行う。この第1の処理の内容は次の通りである。
【0032】
まず、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1がタイムアップとなって起動された時点において、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値を確認する。
【0033】
ここで、周期タイマ3B−3−1が計時する処理周期の開始タイミングPsがマルチキャスト信号MCの発生タイミングに接近しており、マルチキャスト信号MCの発生タイミングから処理周期の開始タイミング(すなわち、周期タイミング補正手段3B−3−3の起動タイミング)までの間に同期信号φが発生しないような場合、周期タイミング補正手段3B−3−3の起動タイミングにおいてタイマ値T1およびT2は極めて接近した値になる。
【0034】
一方、周期タイマ3B−3−1が計時する処理周期の開始タイミングPsがマルチキャスト信号MCの発生タイミングから離れており、マルチキャスト信号MCの発生タイミングから処理周期の開始タイミングPsまでの間に例えば1〜3回に亙って同期信号φが発生しているような場合、周期タイミング補正手段3B−3−3の起動タイミングにおいてタイマ値T1およびT2間の差分は大きな値(例えばTより大きな値)となる。
【0035】
そこで、周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理において、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値を確認し、この絶対値が所定の閾値より大きい場合に、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定方向に所定量だけ変化させ、周期タイマ3B−3−1が計時する処理周期の開始タイミングPsをマルチキャスト信号MCの発生タイミングに接近させるのである。
【0036】
図4に示す例では、周期タイミング補正手段3B−3−3が起動された時刻t1において、タイマ値T1およびT2の差分が閾値よりも大きかったため、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定値ΔTaだけ減少させている。このため、スレーブ安全装置の処理周期は4TよりもΔTaだけ短くなり、時刻t2において周期タイミング補正手段3B−3−3が起動される。
【0037】
この時刻t2では、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値が閾値以下となっている。従って、時刻t2では、周期タイマ3B−3−1の処理周期の開始タイミングPsがマルチキャスト信号の発生タイミングの前後所定範囲内に接近した状態になっているといえる。そこで、周期タイミング補正手段3B−3−3は、時刻t2では第1の処理を実行せず、第2の処理を実行する。
【0038】
次に第2の処理について説明する。周期タイミング補正手段3B−3−3は、この第2の処理において、タイマ値T1に基づいて、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定値ΔTbだけ増減させ、周期タイマ3B−3−1が計時する処理周期の開始タイミングPsを発生する同期信号φの発生タイミングに接近させる。
【0039】
ここで、ΔTbはΔTaよりも小さな値である。また、タイムアップ値を規定値から増加させるか減少させるかは、タイマ値T1に基づいて決定する。具体的には、タイムアップ値をTUとした場合、例えばタイマ値T1がTU/2〜TU−α(αは十分に小さな所定値)の間の値であればタイムアップ値TUを規定値から所定値ΔTUだけ小さくし、タイマ値T1が例えばα〜TU/2の間の値であればタイムアップ値TUを規定値から所定値ΔTUだけ大きくする。
【0040】
図4に示す例では、周期タイミング補正手段3B−3−3が起動された時刻t2において、タイマ値T1およびT2の差分が閾値以下であり、タイマ値T1がTU/2〜TU−αの間の値となっている。このため、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定値ΔTbだけ減少させている。この結果、スレーブ安全装置の処理周期は4TよりもΔTbだけ短くなり、時刻t3において周期タイミング補正手段3B−3−3が起動される。このようにして周期タイマ3B−3−1が計時する処理周期の開始タイミングPsがマルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングにさらに接近する。
【0041】
しかし、周期タイミング補正手段3B−3−3が起動される時刻t3において、タイマ値T1は、依然としてTU/2〜TU−αの間の値である。そこで、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定値ΔTbだけ減少させている。
【0042】
この結果、周期タイミング補正手段3B−3−3は、時刻t4において起動される。この時刻t4において、タイマ値T1は、例えばTU−α〜TUの間の値である。そこで、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値とする。
【0043】
このように第2の処理が繰り返されることにより周期タイマ3B−3−1が計時する処理周期の開始タイミングPsがマルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングに同期する。
以上がスレーブ安全装置3B−3の動作の概略である。
【0044】
次に
図5〜
図8を参照し、本実施形態の詳細な動作を説明する。
図5はスレーブ安全装置3B−3の同期信号取得手段3B−3−2が実行するルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
図5に示すように、同期信号取得手段3B−3−2は、常時、コントローラ1からの同期信号φが受信されるか否かの判定を行っている(ステップS11)。そして、同期信号φの受信を検知した場合、同期信号取得手段3B−3−2は、その時点における周期タイマ3B−3−1のタイマ値をキャプチャし、タイマ値T1として保持する(ステップS12)。
【0045】
図6はスレーブ安全装置3B−3のマルチキャスト取得手段3B−3−4が実行するルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
図6に示すように、マルチキャスト取得手段3B−3−4は、常時、マスタ安全装置3A−3からのマルチキャスト信号MCが受信されるか否かの判定を行っている(ステップS21)。そして、マルチキャスト信号MCの受信を検知した場合、マルチキャスト取得手段3B−3−4は、その時点における周期タイマ3B−3−1のタイマ値をキャプチャし、タイマ値T2として保持する(ステップS22)。
【0046】
図7はスレーブ安全装置3B−3の周期タイミング補正手段3B−3−3が実行するルーチンの処理内容を示すフローチャートである。周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップにより起動されると、まず、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値ΔTを算出する(ステップS31)。次に周期タイミング補正手段3B−3−3は、この絶対値ΔTが閾値T/3以下か否かを判断する(ステップS32)。この判断結果が「NO」である場合、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定量だけ減少させる第1の処理を実行し(ステップS33)、このルーチンを終了する。
【0047】
一方、ステップS32の判断結果が「YES」である場合、周期タイミング補正手段3B−3−3は、以下説明するように第2の処理を実行する。まず、周期タイミング補正手段3B−3−3は、タイマ値T1が同期範囲内の値か否かを判断する(ステップS34)。具体的には、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値をTUとした場合、タイマ値T1がTU−α〜TUの間の値または0〜αの間の値であるか否かを判断する。
【0048】
この判断結果が「NO」である場合、周期タイミング補正手段3B−3−3は、上述したようにタイマ値T1に基づいて周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から増加させ、または減少させる(ステップS35)。そして、
図7に示すルーチンを終了する。
【0049】
これに対し、ステップS34の判断結果が「YES」である場合、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値とし(ステップS36)、
図7に示すルーチンを終了する。
【0050】
図8(a)および(b)は本実施形態の動作例を示すタイムチャートである。
図8(a)および(b)にはコントローラ1が出力する同期信号φと、マスタ安全装置3A−3が出力するマルチキャスト信号MCと、スレーブ安全装置3B−3の周期タイマ3B−3−1のタイマ値TCの波形が示されている。また、
図8(a)および(b)において、タイムアップ値の規定値は4Tである。
【0051】
図8(a)に示す例では、時刻t11において周期タイミング補正手段3B−3−3が起動されたとき、タイマ値T1およびT2間の差分の絶対値はTであり、閾値T/3より大きい。このため、時刻t11において周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理を実行し、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTa=T/2だけ減少させ、タイムアップ値を4T−T/2としている。この第1の処理が実行されると、周期タイマ3B−3−1のタイムアップのタイミングがマルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングに近づく。この例では、マルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングの後、後続の同期信号φが発生する前の時刻t12において、周期タイマ3B−3−1がタイムアップし、周期タイミング補正手段3B−3−3が起動される。
【0052】
この時刻t12では、タイマ値T1およびT2間の差分の絶対値は閾値T/3以下(図示の例ではほぼ0)となっている。そこで、周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理を実行せず、第2の処理を実行する。この第2の処理において、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTbだけ減少させ、タイムアップ値を4T−ΔTbとしている。
【0053】
その後、時刻t13、時刻t14においても、タイマ値T1が同期範囲内の値でないことから、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTbだけ減少させ、タイムアップ値を4T−ΔTbとしている。この処理が繰り返されることにより、周期タイマ3B−3−1のタイムアップのタイミングがマルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングに近づいてゆく。そして、タイマ値T1が同期範囲内の値になった場合、周期タイミング補正手段3B−3−3は、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値4Tとする。
【0054】
図8(b)に示す例では、時刻t21において周期タイミング補正手段3B−3−3が起動されたとき、タイマ値T1およびT2間の差分の絶対値は2Tであり、閾値T/3より大きい。このため、時刻t21において周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理を実行し、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTa=T/2だけ減少させている。この第1の処理が実行されると、周期タイマ3B−3−1のタイムアップのタイミングがマルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングに近づく。
【0055】
次に時刻t22において周期タイマ3B−3−1のタイムアップにより周期タイミング補正手段3B−3−3が起動されたとき、タイマ値T1およびT2間の差分の絶対値はTとなっており、依然として閾値T/3より大きい。このため、時刻t22において周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理を実行し、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTa=T/2だけ減少させている。
【0056】
次に時刻t23において周期タイマ3B−3−1のタイムアップにより周期タイミング補正手段3B−3−3が起動されたとき、タイマ値T1およびT2間の差分は依然としてTとなっており、閾値T/3より大きい。このため、時刻t23において周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理を実行し、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTa=T/2だけ減少させている。
【0057】
次に時刻t24において周期タイマ3B−3−1のタイムアップにより周期タイミング補正手段3B−3−3が起動されたとき、タイマ値T1およびT2間の差分の絶対値は閾値以下(図示の例ではほぼ0)となっている。このため、時刻t23において周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理を実行せず、第2の処理を実行し、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTbだけ減少させている。
【0058】
その後、時刻t25において周期タイマ3B−3−1のタイムアップにより周期タイミング補正手段3B−3−3が起動されたときも、第2の処理が実行される。
【0059】
このようにして周期タイマ3B−3−1のタイムアップのタイミングがマルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングに近づいてゆく。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、コントローラ1からの同期信号φの周期Tよりもマスタ安全装置およびスレーブ安全装置の処理周期が長い場合であっても、マスタ安全装置の処理周期を同期信号φに同期させ、かつ、スレーブ安全装置の処理周期をマスタ安全装置の処理周期に同期させることができる。従って、例えば故障発生時に複数の安全ドライブ装置を、ほとんど時間ロス無く、同時に安全停止させることや、順番に停止させることが可能になり、安全性を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態においてスレーブ安全装置の周期タイミング補正手段3B−3−3は、第1の処理により、処理周期の開始タイミングをマルチキャスト信号MCの発生タイミングの前後所定範囲内に移動させた状態において、第2の処理により処理周期の開始タイミングを同期信号に同期させる制御を行う。このように本実施形態では、最終的に処理周期の開始タイミングを同期信号に同期させるため、処理周期の開始タイミングのジッタを少なくし、処理周期の同期化制御を安定化させることができる。さらに詳述すると、マスタ安全装置は、当該マスタ安全装置の処理周期を可変制御することにより処理周期を同期信号に同期させているため、この処理周期の開始タイミングにジッタが生じる。このため、マスタ安全装置の処理周期の開始タイミングを示すマルチキャスト信号の発生タイミングにもジッタが生じる。従って、仮にスレーブ安全装置の処理周期をマルチキャスト信号MCに同期させたとすると、スレーブ装置の処理周期の開始タイミングに大きなジッタが生じ、処理周期の同期化制御が不安定になる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、上述のように最終的には第2の処理によりスレーブ安全装置の処理周期の開始タイミングを同期信号に同期させる。従って、スレーブ安全装置の処理周期の開始タイミングのジッタを少なくし、同期化制御を安定化させることができる。
【0062】
また、本実施形態においてスレーブ安全装置の周期タイミング補正手段3B−3−3は、起動される都度、常にタイマ値T1およびT2の差分の絶対値を確認し、絶対値が閾値よりも大きい場合に、処理周期の開始タイミングをマルチキャスト信号MCの発生タイミングの前後所定範囲内に移動させる第1の処理を行う。従って、例えば同期信号が一時的にスレーブ安全装置に届かなくなって同期外れが発生し、スレーブ安全装置の処理周期の開始タイミングがマルチキャスト信号の発生タイミングから大きく離れたとしても、同期信号の供給再開後、直ちに第1の処理により処理周期の開始タイミングをマルチキャスト信号MCの発生タイミングの前後所定範囲内に移動させることができる。従って、本実施形態によれば、スレーブ安全装置を同期外れから迅速に復帰させることができる。
【0063】
<他の実施形態>
以上、この発明の一実施形態を説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0064】
(1)上記実施形態における周期タイミング補正手段3B−3−3は、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値が閾値より大きい場合に、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTaだけ減少させた。しかし、このようにする代わりに、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値が閾値より大きい場合に、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTaだけ増加させてもよい。すなわち、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値が閾値より大きい期間は、規定値からの変化の方向を固定し、常に一定方向に変化させれば、マルチキャスト信号MCとともに発生する同期信号φの発生タイミングから所定範囲内に周期タイマ3B−3−1のタイムアップのタイミングを接近させることが可能である。
【0065】
(2)上記実施形態における周期タイミング補正手段3B−3−3は、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値が閾値より大きい場合に、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値からΔTaだけ減少させた。しかし、このようにする代わりに、タイマ値T2とタイムアップ値TUとの差分の絶対値が閾値より大きい場合(すなわち、マルチキャスト信号の発生タイミングから処理周期の開始タイミングまでの時間差が所定値より大きい場合)に、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値TUを規定値から所定方向に所定量だけ変化させてもよい。
【0066】
(3)上記実施形態における周期タイミング補正手段3B−3−3は、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値が閾値以下であり、かつ、タイマ値T1が同期範囲内でない場合に、常に周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定量だけ増減した。しかし、そのようにする代わりに、周期タイマ3B−3−1のタイムアップ値を規定値から所定量だけ増減した後は、一旦、タイムアップ値を規定値に戻し、その後、依然としてタイマ値T1が同期範囲内でない場合には、タイムアップ値を規定値から所定量だけ増減するようにしてもよい。この態様によれば、タイマ値T1およびT2の差分の絶対値が閾値以下になった後の処理周期の変動を少なくし、スレーブ安全装置の動作をより安定化することができる。