特開2015-229568(P2015-229568A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-229568ロータリソレノイドを使用した張力設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229568(P2015-229568A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】ロータリソレノイドを使用した張力設定方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 59/38 20060101AFI20151124BHJP
   H01F 7/18 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   B65H59/38 Y
   H01F7/18 H
   H01F7/18 V
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-116811(P2014-116811)
(22)【出願日】2014年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝雄
【テーマコード(参考)】
3F111
【Fターム(参考)】
3F111AA01
3F111AB09
3F111CA15
3F111CA20
3F111DC01
3F111DC06
(57)【要約】
【課題】高速で高精度の張力設定が可能なロータリソレノイドを使用した張力設定方法を提供する。
【解決手段】ロータリソレノイド11を備える張力付与機構10を使用した張力設定方法であって、ロータリソレノイド11の電流値により、張力付与機構10により付与される張力を設定する。予め求めた張力と電流値との関係を非線形近似することにより、張力に応じた電流値を設定することが好ましい。張力付与機構10は、光ファイバ等の線条体Lに張力を付与することが好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリソレノイドを備える張力付与機構を使用した張力設定方法であって、
前記ロータリソレノイドの電流値により、前記張力付与機構により付与される張力を設定することを特徴とする張力設定方法。
【請求項2】
予め求めた前記張力と前記電流値との関係を非線形近似することにより、前記張力に応じた前記電流値を設定することを特徴とする請求項1に記載の張力設定方法。
【請求項3】
前記張力付与機構は、線条体に張力を付与することを特徴とする請求項1または2に記載の張力設定方法。
【請求項4】
前記線条体が、光ファイバであることを特徴とする請求項3に記載の張力設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリソレノイドを使用した張力設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線条体や帯状体などの長尺物を巻き取る場合、長尺物の張力を適切に設定する必要がある。例えば、特許文献1,2には、ダンサローラにバネを取り付けて張力を制御する装置および方法が記載されている。また、特許文献3、4には、ダンサローラに錘を取り付けて張力を制御する装置および方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2904312号公報
【特許文献2】特開2002−228900号公報
【特許文献3】特開平7−291532号公報
【特許文献4】特開2004−175472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バネは変位自体が張力変動になり、錘及び空気圧等を使用する従来の張力設定方法は、応答性が悪く、高速で高精度の張力設定が難しい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高速で高精度の張力設定が可能なロータリソレノイドを使用した張力設定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ロータリソレノイドを備える張力付与機構を使用した張力設定方法であって、前記ロータリソレノイドの電流値により、前記張力付与機構により付与される張力を設定することを特徴とする張力設定方法を提供する。
【0007】
予め求めた前記張力と前記電流値との関係を非線形近似することにより、前記張力に応じた前記電流値を設定することが好ましい。
【0008】
前記張力付与機構は、線条体に張力を付与することが好ましい。
前記線条体が、光ファイバであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロータリソレノイドを用いることにより、高速で高精度の張力設定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】張力と電流値との関係を線形近似する場合の説明図である。
図2】張力と電流値との関係を非線形近似する場合の説明図である。
図3】ロータリソレノイドを備える張力付与機構の一例を示す概略図である。
図4】電流値の制御回路の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づき、本発明を説明する。
【0012】
張力付与機構は、線条体等の長尺物を搬送する際に、長尺物の張力を適切に設定するために用いられる。長尺物の張力を変化させる方法としては、例えば長尺物がプーリ、ローラ等のガイドに沿って搬送されるときに、1または2以上のガイドを変位させる方法が挙げられる。
【0013】
ロータリソレノイドは、通電により磁場を発生することが可能なソレノイドと、ソレノイドにより発生した磁場のエネルギーを回転運動に変換する機構を備える。一般に、ロータリソレノイドは、ソレノイドに近接して、永久磁石や鉄片などの磁性体(硬磁性体または軟磁性体)を含む可動部を備える。ソレノイドに磁場が発生すると、ソレノイドと可動部との間で吸引力または反発力が生じる。
【0014】
磁性体が鉄片などの軟磁性体である場合、ソレノイドに磁場が発生すると、磁性体はソレノイドに向けて吸引される。磁性体が永久磁石などの硬磁性体である場合、ソレノイドに磁場が発生したときに吸引力または反発力のいずれが生じるかは、磁極の組み合わせに依存する。異種の磁極は引き合い、同種の磁極は反発し合う。電磁力(吸引力または反発力)は直線的に作用するが、可動部の運動方向を斜面、軸、溝等で規制することにより、回転運動を得ることができる。通電を停止すると、電磁力は消滅する。可動部をもとの位置に復帰させるため、スプリングやバネ等が用いられる場合もある。
【0015】
ロータリソレノイドは、動作範囲(ストローク、回転角)は小さいものの、電流の変化に対して高速で軸トルクに変換し、大きなトルクが容易に得られるという利点を有する。このため、ロータリソレノイドによって張力付与機構を駆動すると、張力の変更をより高速で行うことができる。
【0016】
ロータリソレノイドに流す電流値と張力付与機構により線条体等に付与される張力との関係は、ロータリソレノイド及び張力付与機構の構造、線条体の特性等に依存し、一般に非線形の関係になる。図1に示すように、張力と電流値との関係を基づいて必要な張力を得るための電流値を求めるとき、必要な張力に対して線形的に電流値を求めると、誤差が大きい。これは主にロータリソレノイドの構造に起因する。
【0017】
例えば、図1の実線に示す実際の張力と電流値との関係に対して、破線に示すように線形的に近似した場合を考察する。このとき、線形近似によれば、張力Ta,Tb,Tcに対してそれぞれ電流値Ia,Ib,Icが対応するが、電流値Ibを流しても張力Tbは得られない。近似により求めた電流値Ibを、実際に張力Tbが得られる電流値と比較すると、図1に示す誤差が生じる。
【0018】
そこで、図2に示すように、予め求めた張力と電流値との関係を非線形近似することにより、張力に応じた電流値を設定することが好ましい。図2では、実線に示す実際の張力と電流値との関係を、破線に示すように非線形近似する。これにより、近似により求めた電流値と、実際に必要な張力が得られる電流値との誤差を小さくすることができる。
【0019】
図2の非線形近似では、張力Taに対して電流値Ia、張力Tbに対して電流値Ib、張力Tcに対して電流値Icがそれぞれ対応する。非線形近似の具体例としては、折れ線近似、階段近似、二次式近似、多項式近似、累乗近似、対数近似、指数近似、あるいはこれらの2種以上の組み合わせ等が挙げられる。
【0020】
折れ線近似および階段近似は、定義域を2以上の区間に分け、各区間で異なる関係式を使用する。各区間に用いられる関係式は、定数関数、一次関数などの線形関数でもよく、二次関数、多項式関数、累乗関数、対数関数、指数関数などの非線形関数でもよい。各区間の関係式が連続につながる場合は折れ線近似であり、各区間の関係式が不連続である場合は階段近似である。折れ線近似は、一般(狭義)には、各区間の関係式が一次関数であるが、本明細書ではこれに限定されない。階段近似は、一般(狭義)には、各区間の関係式が定数関数であるが、本明細書ではこれに限定されない。
【0021】
図3に、ロータリソレノイド11を備える張力付与機構10の一例を示す。この張力付与機構10は、線条体Lを案内するダンサプーリ16を変位させるため、ロータリソレノイド11の駆動力を利用する。ロータリソレノイド11とダンサプーリ16との間には、両端部にそれぞれ軸13,15を有するアーム14が設けられている。
【0022】
ロータリソレノイド11の出力軸とアーム14の軸13との間はカップリング12により連結されている。アーム14の軸15はダンサプーリ16に連結されている。ロータリソレノイド11は、電流量に応じてアーム14の回転角を変化させる。アーム14の回転によりダンサプーリ16が変位し、線条体Lの張力が変化する。
【0023】
図4に、ロータリソレノイドの電流量を制御するための制御回路の一例を示す。この制御回路のうち、電流フィードバック回路20の部分は、電流量を一定に制御する場合に使用される構成を示す。ロータリソレノイド21の電流量は、抵抗値が既知の電流検出抵抗器22と、電流検出抵抗器22における電圧降下に基づき電流量を測定する電流検出器23を用いて測定される。電流検出抵抗器22の一端は、ロータリソレノイド21に接続され、その反対側の一端は接地されている。そこで、電流検出抵抗器22がロータリソレノイド21に接続された側において電位を測定すれば、電流検出抵抗器22における電圧降下を測定することができる。
【0024】
電流検出器23により検出された電流量は、アナログ電気信号として駆動回路24に供給される。駆動回路24は、トランジスタ25を通じて、ロータリソレノイド21の電流量を制御する。図4に示す例では、トランジスタ25としてPNP型のバイポーラトランジスタが使用されている。駆動回路24は、トランジスタ25のベースに接続されている。ロータリソレノイド21は、トランジスタ25のコレクタに接続されている。トランジスタ25のエミッタには、図示しない電源装置が接続される。駆動回路24によりベース・エミッタ間電圧を変化させることで、ロータリソレノイド21に供給されるコレクタ電流を変化させる(制御する)ことができる。
【0025】
電流量を一定に制御する場合は、電流フィードバック回路20の部分を使用して、電流検出器23により検出された電流量を目標の電流量と比較して、差が低減するように駆動回路24を動作させればよい。張力を所望の値(設定値)に制御する場合には、目標の電流量が一定ではないので、図4の制御回路には、目標の電流量を補正する回路が付属している。
【0026】
図4の制御回路では、補正回路を構成するため、A/D変換器26とCPU27とD/A変換器28とが設けられている。電流検出器23により検出された電流量を表す信号(検出信号)は、A/D変換器26によりデジタル信号に変換されてCPU27に供給される。CPU27は、外部から入力された張力の値に基づき、目標の電流量を変更するための補正量を決定する。D/A変換器28は、CPU27から供給されたデジタル信号をアナログの補正信号に変換する。
【0027】
端子29では、D/A変換器28から供給される補正信号が、電流検出器23から供給される検出信号と合成される。このように補正された信号を駆動回路24に供給することにより、電流フィードバック回路20の部分を変更することなく、目標の電流量を任意に変更することができる。電流フィードバック回路20は、所望の張力の設定値に応じた電流量がロータリソレノイド21に流れるように、常時(運転中は)フィードバックを継続する。
【0028】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0029】
上述の実施形態では、ダンサプーリの変位により線条体の張力を変化させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。線条体の張力を変化させる手法として、プーリ間を走行する線条体にガイド部材を接触させ、押し込み量の変化により線条体の張力を変化させる構成、プーリ上の線条体に押圧部材を接触させ、プーリと押圧部材との間の押圧力の変化により線条体の張力を変化させる構成等が挙げられる。
【0030】
本発明の張力設定方法を利用した張力設定装置は、ロータリソレノイドと張力付与機構を備え、張力付与機構により付与される張力を、ロータリソレノイドの電流値により設定する構成とすることができる。
【0031】
この張力設定装置は、予め求めた張力と電流値との関係を非線形近似することにより、張力に応じた電流値を設定する制御部を有することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、巻取装置、製造装置、試験装置等の各種装置、及び巻取方法、製造方法、試験方法等の各種方法に利用することができる。これらの装置及び方法の対象となる長尺物は、線条体(線状体)、帯状体などである。線条体(線状体)は、特に限定されないが、光ファイバ、ガラスファイバ、ワイヤ、金属線材、テープ等が挙げられる。帯状体としては、フィルム、シート、紙、積層体等が挙げられる。
【符号の説明】
【0033】
10…張力付与機構、11…ロータリソレノイド、12…カップリング、13…軸、14…アーム、15…軸、16…ダンサプーリ、20…電流フィードバック回路、21…ロータリソレノイド、22…電流検出抵抗器、23…電流検出器、24…駆動回路、25…トランジスタ、26…A/D変換器、27…CPU、28…D/A変換器、29…端子。
図1
図2
図3
図4