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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229603(P2015-229603A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】ケミカルルーピング燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/20 20060101AFI20151124BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   C01B31/20 A
   B01J8/24 301
   C01B31/20 B
   B01J8/24 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-115177(P2014-115177)
(22)【出願日】2014年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 豊
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉廻 秀久
【テーマコード(参考)】
4G070
4G146
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB06
4G070BB32
4G070CA06
4G070CA07
4G070CA09
4G070CA10
4G070CA13
4G070CA26
4G070CB15
4G070DA21
4G146JA02
4G146JB05
4G146JC03
4G146JC22
4G146JC33
4G146JD03
4G146JD05
(57)【要約】
【課題】COの需要変動に合わせたCO回収率の変更が可能なCLCを提供する。
【解決手段】燃料反応器2、揮発分反応器3、空気反応器1、CO回収手段23を備え、燃料反応器2に供給するCOと水蒸気を成分とするガス化剤27の供給量調整により、CO回収手段23でのCO回収率を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料をガス化させる移動層式燃料反応器と、
前記燃料反応器から生成したガス成分を金属粒子で酸化する流動層式揮発分反応器と、
前記ガス成分の酸化により還元された前記金属粒子を空気により酸化する流動層式空気反応器と、
前記空気反応器から排出される前記金属粒子と前記ガス成分を分離するサイクロンと、
前記揮発分反応器から排出される二酸化炭素を分離・回収する二酸化炭素回収手段を備えて、
前記金属粒子が循環するように、前記燃料反応器と前記揮発分反応器と前記空気反応器と前記サイクロンをニューマティックバルブと配管でループ状に接続したケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記燃料反応器に供給する二酸化炭素もしくは水蒸気、あるいは二酸化炭素と水蒸気の両方を成分とするガス化剤の供給量の調整により、前記二酸化炭素回収手段での二酸化炭素の回収率を制御する構成になっていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項2】
請求項1に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記固体燃料が石炭を含む固体燃料であって、
前記固体燃料の固定炭素モル量に対する前記ガス化剤モル量の比(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αと、前記燃料反応器で生成するチャーのガス化率との関係を予め求めておき、
前記制御する二酸化炭素の回収率に対応した前記チャーのガス化率と前記(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αの関係に基づいて、前記ガス化剤の供給量を調整することを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記ガス化剤の供給量の調整により二酸化炭素の回収率を制御する構成が、
前記燃料反応器に前記ガス化剤を供給するガス化剤供給管と、
前記ガス化剤供給管に付設された弁と、
前記二酸化炭素の回収率に応じて前記弁の開度調整を指示する二酸化炭素回収率変更指示手段を備えていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記燃料反応器に供給するガス化剤として、前記揮発分反応器からの排気ガスの一部を使用する構成になっていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記燃料反応器に供給するガス化剤として、前記二酸化炭素回収手段で回収した二酸化炭素の一部を使用する構成になっていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記揮発分反応器の排気ガス出口側に設けた熱交換器または/および前記サイクロンの排気ガス出口側に設けた熱交換器で生成した水蒸気の一部を、前記燃料反応器に供給するガス化剤として使用する構成になっていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記燃料反応器とその燃料反応器の上に設けられた前記揮発分反応器の間に、前記揮発分反応器内の前記金属粒子の流動化を促進するための二酸化炭素もしくは水蒸気、あるいは二酸化炭素と水蒸気の両方を成分とするアシスタントガスを供給するアシスタントガス供給手段を設けたことを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項8】
請求項7に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記燃料反応器に供給する前記ガス化剤の一部を前記アシスタントガスとして前記揮発分反応器に供給する構成になっていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項9】
請求項7に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記揮発分反応器に供給する前記アシスタントガスとして、前記二酸化炭素回収手段で回収した二酸化炭素の一部を使用する構成になっていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項10】
請求項7に記載のケミカルルーピング燃焼システムにおいて、
前記揮発分反応器の排気ガス出口側に設けた熱交換器または/および前記サイクロンの排気ガス出口側に設けた熱交換器で生成した水蒸気の一部を、前記揮発分反応器に供給する前記アシスタントガスとして使用する構成になっていることを特徴とするケミカルルーピング燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化問題となる二酸化炭素(以下、COと略記することもある)の排出削減技術に係り、特に化石燃料ボイラ発電などで使用する化石燃料を燃焼することによって発生するCOの分離回収技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、主な産業用COの供給源である製油所の統廃合が進み、CO販売業者は新たなCO供給元を探索中である。その中で、石炭火力発電所から排出されるCOが新たな産業用COの供給元として注目されている。
【0003】
石炭燃料を使用するボイラ設備に適用可能なCO回収技術として化学吸収システム、酸素燃焼システム、ケミカルルーピング燃焼システム(CLC:Chemical Looping Combustion)などがある。
【0004】
特に最近、CLC技術が注目されている。CLCとは、空気を燃料に直接接触させずに、酸素キャリアである金属酸化物(MeO)で燃料を酸化反応させ、還元された金属(Me)は空気で酸化して再度金属酸化物(MeO)として利用する技術である。結局、このシステムでの反応生成物はCOと水分であり、COの回収が容易となる技術である。
CLCの特長は、化学吸収システムでの液再生エネルギーや酸素燃焼システムにおける酸素製造装置の駆動エネルギーが不要であるため、これらの技術に比べて消費エネルギーを大幅に低減し、発電効率の低下を抑制できる可能性がある。
【0005】
図4は、一般的な2塔式CLCの原理を説明するための図である。CLCは同図に示すように空気反応器1と燃料反応器2で構成され、その間を金属粒子(MeO)4と金属粒子(Me)5が循環流動するシステムになっている。
空気反応器1では、金属粒子(Me)5が空気6中の酸素と反応して金属粒子(MeO)4となる。
【0006】
Mey−1+0.5O→Me (1)
酸化した金属粒子(MeO)4はサイクロン(図示せず)でNやOなどの反応後ガス36と分離され、燃料反応器2へ送られる。
燃料反応器2では高温の金属粒子(MeO)4と固体燃料(例えば石炭)7が接触して、金属粒子(MeO)4の酸素と固体燃料7が反応する。このとき固体燃料7を酸化した金属粒子(MeO)4は還元されて金属粒子(Me)5となり、空気反応器1へ戻る循環ループを形成する。
【0007】
(2n+m) Me+C2m
(2n+m) Mey−1+mHO+nCO (2)
空気反応器1からは窒素や残存酸素を含んだ反応後ガス36が放出され、燃料反応器2からはCOガス9やHO(水蒸気) 10などが排出される。これらのガスは高温のため、排熱回収ボイラ(図示せず)で熱回収して、発電に利用する(非特許文献1参照)。
固定燃料である石炭は、水分、灰分、揮発分ならびに固定炭素などの成分から構成されており、800℃以上の高温場に石炭が投入されると、熱分解し、気体成分(水分と揮発分)と固体成分(固定炭素と灰分)に瞬時に分離される。一般に、気体成分を揮発分、固体成分をチャーと呼んでいる。
【0008】
CLCシステムに関する先行技術として、例えば下記のような特許文献1〜4、非特許文献1,2などを挙げることができる。
【0009】
図5は、本出願人が先に提案した3塔式CLCの基本構成を説明するための概念図である(特許文献4参照)。
この3塔式CLCでは、石炭の酸化反応をチャー反応と揮発分反応に分割し、チャーの反応時間確保による未反応物を低減することを目的として、図4で示した燃料反応器を、燃料反応器2と揮発反応器3の2塔に分けたものである。この理由は、チャーのガス化反応阻害要因である揮発分を分離し、チャーのガス化反応を効率よく進行させるためである(非特許文献2参照)。
【0010】
従って図5に示すように、固体燃料 (例えば石炭)7は、固体成分のチャーと揮発分からなる生成ガス11に分離する。チャー(図示せず)はそのまま燃料反応器2の内部でガス化反応し、チャーのガス化反応阻害要因である揮発分主体の生成ガス11は燃料反応器2の上部に配置されている揮発反応器3へ順次移動し、燃料反応器2内部から排除する。
図6は、この3塔式CLCの具体例を示す概略系統図である。
【0011】
同図に示すように3塔式CLCは、空気反応器1と燃料反応器2と揮発反応器3の3塔を主体に構成されており、これらにサイクロン13、熱交換器15、空気予熱器16、除塵装置17、熱交換器19、脱硝装置20、除塵装置21、脱硫装置22、CO圧縮液化装置23および空気ブロア35などが図に示すように配置、接続されている。
【0012】
この3塔式CLCでは、空気反応器1−サイクロン13−揮発反応器3−燃料反応器2−空気反応器1の間は、金属粒子(MeO)4と金属粒子(Me)5が循環できるように、ガスシール機能を有するニューマチックバルブの種類であるLバルブ24,25,26と配管でループ状に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−016873号公報
【特許文献2】特開2011−178572号公報
【特許文献3】米国特許第7767191号明細書
【特許文献4】特開2013−194213号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】吉田,小野崎:ケミカルルーピング燃焼技術 季報 エネルギー総合工学研究所 vol33,No.1,pp29−35,2010,4
【非特許文献2】林:次世代高効率石炭ガス化技術の開発 CCT Workshop 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
国内産業用COは主に溶接用シールガスや冷却用ドライアイスに使用するため、製造業の景気や夏場の気温で、COの需要が変動する。従って、石炭火力発電所から排出されるCOを利用する場合、産業用COの需要に合わせる必要がある。
【0016】
しかし、石炭火力発電所からCO回収を行う従来の酸素燃焼法やCLC法では、CO回収率の変更に伴って石炭投入熱負荷を変更する必要があり、その結果、蒸気量と発電量も変化するといった課題がある。
【0017】
化学吸収法ではCO回収率の変更は可能であるが、吸収液の再生熱にシステム内蒸気を使用するため、他の技術と同様に発電量が変化するといった課題がある。
【0018】
このように従来のCO回収技術では、産業用COの需要変動に合わせたCO回収率の変更ができなかった。なお、前記特許文献4には、COの需要変動に合わせてCOの回収率を変更するという技術については開示されていない。
【0019】
本発明の目的は、このような背景においてなされたものであり、産業用などのCOの需要変動に合わせたCO回収率の変更が可能なケミカルルーピング燃焼システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
固体燃料をガス化させる移動層式燃料反応器と、
前記燃料反応器から生成したガス成分を金属粒子で酸化する流動層式揮発分反応器と、
前記ガス成分の酸化により還元された前記金属粒子を空気により酸化する流動層式空気反応器と、
前記空気反応器から排出される前記金属粒子と前記ガス成分を分離するサイクロンと、
前記揮発分反応器から排出される二酸化炭素を分離・回収する例えば二酸化炭素圧縮液化装置などの二酸化炭素回収手段を備えて、
前記金属粒子が循環するように、前記燃料反応器と前記揮発分反応器と前記空気反応器と前記サイクロンをニューマティックバルブと配管でループ状に接続したケミカルルーピング燃焼システムを対象とするものである。
そして本発明の第1の手段は、
前記燃料反応器に供給する二酸化炭素もしくは水蒸気、あるいは二酸化炭素と水蒸気の両方を成分とするガス化剤の供給量の調整により、前記二酸化炭素回収手段での二酸化炭素の回収率を制御する構成になっていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記固体燃料が例えば石炭の単独、あるいは石炭と植物由来バイオマスの併用など石炭を含む固体燃料であって、
前記固体燃料の固定炭素モル量に対する前記ガス化剤モル量の比(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αと、前記燃料反応器で生成するチャーのガス化率との関係を予め求めておき、
前記制御する二酸化炭素の回収率に対応した前記チャーのガス化率と前記(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αの関係に基づいて、前記ガス化剤の供給量を調整することを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、
前記ガス化剤の供給量の調整により二酸化炭素の回収率を制御する構成が、
前記燃料反応器に前記ガス化剤を供給するガス化剤供給管と、
前記ガス化剤供給管に付設された弁と、
前記二酸化炭素の回収率に応じて前記弁の開度調整を指示する二酸化炭素回収率変更指示手段を備えていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第4の手段は前記第1ないし第3の手段いずれかの手段において、
前記燃料反応器に供給するガス化剤として、前記揮発分反応器からの排気ガスの一部を使用する構成になっていることを特徴とするものである。
本発明の第5の手段は前記第1ないし第3の手段いずれかの手段において、
前記燃料反応器に供給するガス化剤として、前記二酸化炭素回収手段で回収した二酸化炭素の一部を使用する構成になっていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第6の手段は前記第1ないし第3の手段いずれかの手段において、
前記揮発分反応器の排気ガス出口側に設けた熱交換器または/および前記サイクロンの排気ガス出口側に設けた熱交換器で生成した水蒸気の一部を、前記燃料反応器に供給するガス化剤として使用する構成になっていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第7の手段は前記第1ないし第6の手段いずれかの手段において、
前記燃料反応器とその燃料反応器の上に設けられた前記揮発分反応器の間に、前記揮発分反応器内の前記金属粒子の流動化を促進するための二酸化炭素もしくは水蒸気、あるいは二酸化炭素と水蒸気の両方を成分とするアシスタントガスを供給する例えばアシスタントガス供給配管と弁からなるアシスタントガス供給手段を設けたことを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第8の手段は前記第7の手段において、
前記燃料反応器に供給する前記ガス化剤の一部を前記アシスタントガスとして前記揮発分反応器に供給する構成になっていることを特徴とするものである。
【0027】
本発明の第9の手段は前記第7の手段において、
前記揮発分反応器に供給する前記アシスタントガスとして、前記二酸化炭素回収手段で回収した二酸化炭素の一部を使用する構成になっていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の第10の手段は前記第7の手段において、
前記揮発分反応器の排気ガス出口側に設けた熱交換器または/および前記サイクロンの排気ガス出口側に設けた熱交換器で生成した水蒸気の一部を、前記揮発分反応器に供給する前記アシスタントガスとして使用する構成になっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明は前述のような構成になっており、産業用などのCOの需要変動に合わせたCO回収率の変更が可能なケミカルルーピング燃焼システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例1に係るケミカルルーピング燃焼システムの具体例を示した概略系統図である。
図2】本発明の実施例2に係るケミカルルーピング燃焼システムの具体例を示した概略系統図である。
図3】固定炭素モル量に対するガス化剤モル量の比(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αをパラメータとして、チャーのガス化率とαの関係を示した特性図である。
図4】一般的な2塔式CLCの原理を説明するための図である。
図5】本出願人が先に提案した3塔式CLCの基本構成を説明するための概念図である。
図6】この3塔式CLCの具体例を示す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の各実施例を図面と共に説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は、本発明の実施例1に係るケミカルルーピング燃焼システムの具体例を示した概略系統図である。
図1に示すように3塔式CLCは、空気反応器1と燃料反応器2と揮発反応器3の3塔を主体に構成されており、これらにサイクロン13、熱交換器15、空気予熱器16、除塵装置17、熱交換器19、脱硝装置20、除塵装置21、脱硫装置22、CO圧縮液化装置23および空気ブロア35などが図に示すように配置、接続されている。
【0033】
この3塔式CLCでは、空気反応器1−サイクロン13−揮発反応器3−燃料反応器2−空気反応器1の間は、金属粒子(MeO)4と金属粒子(Me)5が循環できるように、ガスシール機能を有するニューマチックバルブの種類であるLバルブ24,25,26と配管でループ状に連結されている。
【0034】
燃料反応器2内には、高温の金属粒子(MeO)4と金属粒子(Me)5が混在した移動層(図示せず)が形成されている。ここで、固体燃料(例えば石炭)7は800℃以上の高温場で熱分解し、固体成分のチャー12と揮発分が主体の生成ガス11に分離し、生成ガス11は燃料反応器2の上部に配置された揮発反応器3へ即座に移動する。また、燃料反応器2からは、還元された金属粒子(Me)5と生成したチャー12が適量排出される。
排出されたチャー12と金属粒子(Me)5はLバルブ26を通過して、空気反応器1へ移送される。空気反応器1には、空気予熱器16を通過した高温の空気30が導入されており、空気予熱器16の内部では空気30がチャー12を燃焼する。
【0035】
それと同時に、空気30は金属粒子(Me)5と酸化反応して、金属粒子(MeO)4を生成する。この金属粒子(MeO)4は燃焼排気ガス(N,O,CO,飛灰など)8と共にサイクロン13に移動され、比重差により固体の金属粒子(MeO)4と気体の燃焼排気ガス8に分離される。
【0036】
金属粒子(MeO)4は、重力でサイクロン13の下部に落下し、Lバルブ24を通過して、揮発反応器3へ移動する。燃料反応器2から送られてきた揮発分13が、揮発反応器3内の金属粒子(MeO)4を浮遊流動させながら金属粒子(MeO)4と反応する。その結果、COガスとHO(水蒸気)が生成する。
【0037】
また、金属粒子(MeO)4は生成ガス11との反応により還元されて金属粒子(Me)5となり、その金属粒子(Me)5と未反応の金属粒子(MeO)4は、Lバルブ25通過して、燃料反応器2へ移動する。
【0038】
このようにしてCLCでは、金属粒子4,5が燃料反応器2→空気反応器1→揮発反応器3→燃料反応器2→・・・を循環流動しながら固体燃料(例えば石炭)7と反応する。金属粒子4,5を搬送するLバルブ24,25,26に使用する金属粒子搬送ガス28,29には、システム内で生成したCOガス、HO(水蒸気)あるいはNが使用される。
【0039】
揮発反応器3内で生成したCOガス9とHO(水蒸気)10は熱交換器19に送られて冷却され、熱交換器19で得られた水蒸気は図示しない発電設備に送られる。その後、COガス9とHO(水蒸気)10は脱硝装置20、除塵装置21、脱硫装置22などを経て脱水と不純物の除去がなされ、CO圧縮液化装置23でCOガス9の圧縮液化による回収が行われる。
【0040】
サイクロン13で分離された燃焼排気ガス8は熱交換器15で冷却され、さらに空気予熱器16で空気6と熱交換されて、最後に除塵装置17で飛灰が除去されて大気中へ排気18される。
【0041】
前記熱交換器15で得られた水蒸気は、図示しない発電設備に送られる。また、空気予熱器16で加熱された高温の空気30は、空気ブロア35によって昇圧され、弁33で流量調整されて、空気反応器1の下部から供給される。なお、空気反応器1の内周部には水冷壁14が設置されて、空気反応器1内での熱回収を行っている。
【0042】
本発明の3塔式CLCでは、燃料反応器2内でのチャー12の滞留時間を確保するために、燃料反応器2内は流動層を形成している。金属粒子(Me)5が連続的に供給され、砂時計の如く、金属粒子(Me)5は充填されたままゆっくりと下方へ移動する。一方、燃料反応器2の下部から供給されたガス化剤(CO、HO)27は移動する金属粒子(Me)5の隙間を通って上方へ移動し、チャー12はその移動層内でガス化反応する。
【0043】
一方、揮発分反応器3は流動層とし、流動化ガスとして燃料反応器2で生成した生成ガス11を利用することで、酸素キャリアである金属粒子(MeO)4との接触を良好に行い、反応性を高める効果がある。
【0044】
次に、本発明の特徴である任意に変更できるCO回収率の変更手段について詳細に説明する。
図3は、固定炭素モル量に対するガス化剤モル量の比(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αをパラメータとして、チャーのガス化率とαの関係を示した特性図である。
固定炭素とは、石炭の工業分析で得られる揮発分と水分と灰分を除いた固体の炭素分である。例えばガス化時間(チャー12が燃料反応器2内に滞留する時間)が15分に設計されている場合、図3に示すようにα=1.2ではガス化率は約98%、α=0.5ではガス化率は30%と、αが減少するのに伴いチャーのガス化率が低下する傾向にある。
【0045】
この固定炭素モル量に対するガス化剤モル量の比であるαは、ガス化剤27(図1参照)の供給量で変更できるため、チャー12のガス化率の制御が可能となる。その結果、未反応のチャー12を空気反応器1へ移動して燃焼することは、揮発分反応器3から排出されるCO量は未反応チャー12の量だけ減少することを意味している。すなわち、ガス化剤27の供給量変更⇒チャー12のガス化率変更⇒COガスの生成量変更⇒CO回収率の変更となる。
【0046】
また、未反応のチャー12は空気反応器1で燃焼するため、チャー12の持つ熱量は空気反応器1で熱回収されるので、システム全体の回収熱は変化しない。
このように本発明では、CO回収率の調整をチャー12のガス化剤27の供給量の制御によって行うことを特徴としている。
【0047】
次に図1を用いて、CO回収率の変更方法について説明する。
図1に示すように揮発分反応器3から排出されたCOガス9とHO(水蒸気)10の高温混合ガスは、それを熱交換器19に通すことにより低温化される。この混合ガスの一部をガス化剤27として用いるため、熱交換器19の出口側から燃料反応器2の下部側に延びたガス化剤供給配管40を設け、そのガス化剤供給配管40の途中に循環ブロア34と弁32を設ける。
【0048】
また、弁32の開度は、例えばキーボードなどで構成されているCO回収率変更指示手段31によってコントロールされるようになっている。
産業用COの需要変化に伴ってCO回収率を変更する場合、初めにCO回収率変更指示手段31に希望するCO回収率を入力する。この入力に基づいて、弁32の開度が調整され、循環ブロア34によって送られてくるガス化剤27の供給流量がコントロールされる。
【0049】
そして未反応のチャー12が金属粒子(Me)5と共に空気反応器1へ移動する。この結果、燃焼排気ガス8中のCO量が変化し、同時に揮発分反応器3から排出されるCOガス9とHO(水蒸気)10の量も変化し、希望するCO回収率に変更される。
【0050】
それと同時に、燃焼排気ガス8のガス温度が変化するため、所定のガス温度になるように、熱交換器15に流す水量を変更し、蒸気としての排気ガス顕熱を回収する。同様に揮発分反応器3から排出されるガス温度も変化するため、所定のガス温度になるように、熱交換器19に流す水量を変え、蒸気としての排気ガス顕熱を回収する。これにより、CO回収率を変更しても、蒸気流量は変わらない。
【0051】
ガス化剤27の供給量を調整するには、図3の(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αとチャーのガス化率の関係を利用して、弁32の開度を調整する。
例えば、燃料反応器2をチャー12の滞留する時間が15分になるように設計していた場合、CO回収率を98%から30%に変更するには、図3よりガス化時間15分におけるチャーガス化率98%から30%に変更したときの、(ガス化剤モル量/固定炭素モル量)αに設定する。この場合、αが1.2から0.5へ変更することになる。
【0052】
そこで、弁32の開度を広げ、循環ブロア34からガス化剤27の供給量を前記αの値が0.5になるように増加させる。その結果、チャーは30%がガス化して揮発分反応器3へ移動して産業用COとして回収され、残りの未反応のチャー12は空気反応器1で燃焼する。
【0053】
ガス化剤としては、COガスあるいはHO(水蒸気)、もしくはCOガスとHO(水蒸気)の両方を使用することができる。また、COガスあるいはHO(水蒸気)、もしくはCOガスとHO(水蒸気)の両方を、図1に示す実施例よりも別の系統から供給することもできる。
【0054】
COガスの供給元として、図1に示すCO圧縮液化装置23で回収したCOの再利用でもよい。
また,水蒸気の供給元として、図1に示す熱交換器15,19から生成した水蒸気を利用してもよい。
【0055】
さらに、ガス化剤としてCOガスとHO(水蒸気)の混合ガスを使用する場合は、本実施例のように揮発分反応器3から排出される混合ガスの一部を循環ブロア34で再循環して使用すれば、ランニングコストを低く抑えることが可能である。
【0056】
金属粒子(MeO)4としては、例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)などの酸化物が使用される。特に酸化鉄は、無公害で安価なためCLCに好適である。
金属粒子(MeO)4として酸化鉄を使用した場合の、還元/酸化反応式を下記に示す。
【0057】
還元反応:C(例えば石炭)+6Fe⇒4Fe+CO−吸熱 (3)
酸化反応:4Fe+O(空気)⇒6Fe+発熱 (4)
金属粒子(MeO)4として酸化鉄を使用した場合、金属粒子(MeO)4はFe3、金属粒子(Me)5はFeに相当する。そして空気反応器1では前記式(4)で示すFeと空気の酸化反応が生じ、燃料反応器2と揮発分反応器3では前記式(3)で示すFeの還元反応が生じる。
【0058】
図1に示す生成ガス11の主成分はCHとCOとHであり、揮発分反応器3では生成ガス11と金属粒子(MeO)4であるFeの間で下記の反応が生じる
CH+6Fe⇒CO+HO+4Fe (5)
CO+3Fe⇒CO+2Fe (6)
+3Fe⇒HO+2Fe (7)
【0059】
また、一般に循環流動層では粒子搬送用ガスシールバルブとしてメカニカルバルブまたはLバルブなどのニューマティックバルブが用いられている。メカニカルバルブでは600℃以上でシール部が破損するため、Lバルブなどのニューマティックバルブを採用する。LバルブとはL字型配管で、エアーレーションを行うことで粒子層を流動化して駆動し、粒子搬送流量を制御するものである。
【実施例2】
【0060】
図2は、本発明の実施例2に係るケミカルルーピング燃焼システムの具体例を示した概略系統図である。
【0061】
ケミカルルーピング燃焼システムの起動時や低負荷運転時では、燃料反応器2からの生成ガス11の量が少ないため、揮発分反応器3内の金属粒子4,5の良好な流動化ができないことがある。流動化しないと金属粒子4,5がLバルブ25にオーバーフローして移動できないため、揮発分反応器3内に金属粒子4,5が溜まり、揮発分反応器3の圧力損失が増加する。
【0062】
この揮発分反応器3の粒子層圧がLバルブ25の圧力よりも大きくなると、ガスシールができなくなる。この結果、燃料反応器2からの生成ガス11はLバルブ25から流れ、揮発分反応器3の循環流動化が停止するという課題がある。
また、金属粒子(MeO)4が撹拌されないため、生成ガス11との反応性が低下する。
【0063】
この対策として本実施例では、図2に示されているように、燃料反応器2と揮発分反応器3の間、すなわち揮発分反応器3の下部に流動化用のアシストガス37を供給するアシストガス供給管41を接続して、アシストガス供給管41に弁38を付設している。
【0064】
そしてシステムの起動時や低負荷運転時などのように、燃料反応器2から所定の生成ガス11の量が得られないときには、アシストガス供給管41から流動化用のアシストガス37を供給して、揮発分反応器3内の金属粒子4,5の流動化をアシストガス37で促進する。
【0065】
アシストガス37には、COガスやHO(水蒸気)、もしくはCOガスとHO(水蒸気)の混合ガスを使用することができる。
本実施例では図2に示すように、ガス化剤供給配管40上の循環ブロア34と弁32の間から揮発分反応器3の下部に向けてアシストガス供給管41を分岐し、そのアシストガス供給管41上に弁38を付設して、弁38に例えばキーボードなどで構成されているアシストガス供給指示手段42を接続している。
【0066】
システムの起動時や低負荷運転時などのように、燃料反応器2から所定の生成ガス11の量が得られないときには、アシストガス供給指示手段42からの指示により弁38を開いて、所定量のアシストガス37を揮発分反応器3の下部から供給して、揮発分反応器3内の金属粒子4,5の流動化を促進する。
【0067】
揮発分反応器3内の金属粒子4,5の流動化がスムーズに行われるようになると、アシストガス供給指示手段42からの指示により弁38を閉じる。
本実施例のように、揮発分反応器3から排出されるCOガスやHO(水蒸気)をガス化剤供給配管40から分岐してアシストガス37として供給すれば、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0068】
また、COガスやHO(水蒸気)を別系統から供給することもできる。
さらにCOガスの供給元として、CO圧縮液化装置23で回収したCOを再利用しても良い。さらにまた、HO(水蒸気)の供給元として、熱交換器15,19から生成した水蒸気を利用しても良い。
【0069】
この実施例のようにアシストガス37を利用すれば、ケミカルルーピング燃焼システムの起動時や低負荷運転時でも金属粒子4,5が移動できるため、システム内の圧力バランスが維持でき、良好な循環流動状態が保たれる。
【0070】
図2では説明上、CO回収率変更指示手段31とアシストガス供給指示手段42を別々に設けた構成になっているが、実際には1つの指示手段でCO回収率変更ならびにアシストガス供給の指示を行うことになる。
【0071】
この実施例におけるCLCの他の構成や機能などは図1に示す実施例1と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0072】
産業用COの需要に合わせたCO回収率は化学吸収法でも可能であるが、エネルギー損失が大きく、蒸気量が変動し、安定した発電量が得られないという課題がある。
【0073】
これに対して本発明のケミカルルーピング燃焼システムは、産業用COの需要に対応したCO回収率を任意に選択でき、その際、システム全体で得られる熱は略同じであるため、必要な蒸気量が得られ、発電量は低下しないことを特長としている。
【0074】
また、石炭火力発電所から回収した多量のCOの処分方法は解決されておらず、実用化が困難であると見られている。一方、国内外では天然ガス火力発電所並みのCO発生レベルであれば、許容される見通しである。石炭火力発電所からのCO回収率を100%から50%にすることで、天然ガス火力発電所並みのCO排出量に抑制でき、石炭火力発電所でも燃焼排気ガスからのCOを分離・回収して貯留する技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)に十分対応可能である。
【0075】
さらに本発明は、産業用COのだけでなく、事業用CCS分野へも適用可能である。
【0076】
前記実施例では固体燃料として石炭を使用したが、例えば石炭と植物系由来のバイオマスを併用する固定燃料でも適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1:空気反応器、
2:燃料反応器、
3:揮発分反応器、
4:金属粒子(MeO)、
5:金属粒子(Me)、
6:空気、
7:固体燃料、
8:燃焼排気ガス、
9:COガス、
10:HO(水蒸気)、
11:生成ガス、
12:チャー、
13:サイクロン、
15,19:熱交換器、
23:CO圧縮液化装置、
24,25,26:Lバルブ、
27:ガス化剤、
30:空気、
31:CO回収率変更指示手段、
32,38:弁、
37:アシストガス、
40:ガス化剤供給配管、
41:アシストガス供給配管、
42:アシストガス供給指示手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6