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特開2015-229723エレベーター装置用のワイヤロープおよびこれを用いたエレベーター装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229723(P2015-229723A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】エレベーター装置用のワイヤロープおよびこれを用いたエレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/00 20060101AFI20151124BHJP
   C10M 171/04 20060101ALI20151124BHJP
   C10M 105/04 20060101ALI20151124BHJP
   C10M 159/04 20060101ALI20151124BHJP
   C10M 143/10 20060101ALI20151124BHJP
   C10M 119/06 20060101ALI20151124BHJP
   B66B 7/06 20060101ALI20151124BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20151124BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20151124BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20151124BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20151124BHJP
   C10N 40/32 20060101ALN20151124BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20151124BHJP
【FI】
   C10M169/00
   C10M171/04
   C10M105/04
   C10M159/04
   C10M143/10
   C10M119/06
   B66B7/06 A
   C10N20:00 A
   C10N20:00 Z
   C10N20:04
   C10N30:00 Z
   C10N30:06
   C10N40:32
   C10N50:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-116345(P2014-116345)
(22)【出願日】2014年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】布重 純
(72)【発明者】
【氏名】太田 亮
(72)【発明者】
【氏名】安部 貴
(72)【発明者】
【氏名】中山 真人
【テーマコード(参考)】
3F305
4H104
【Fターム(参考)】
3F305BB02
3F305BB14
4H104BA02A
4H104CA01B
4H104CA07C
4H104DA02B
4H104EA01Z
4H104EA03C
4H104EA04Z
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA37
4H104QA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高トラクションと耐摩耗性を両立する潤滑剤組成物(グリース)を使用したエレベーター装置用のワイヤロープの提供。
【解決手段】複数の鋼線10をより合わせたストランド9を、繊維の心綱8を中心に複数本より合わせたワイヤロープ4において、一般式(1)で表わされる少なくとも1種の化合物を含む基油と、平均分子量が1,000〜100,000の増粘剤とを含む混合油(グリース)11をワイヤロープ4に被覆又は含浸させたエレベーター装置用のワイヤロープ4。

【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼線をより合わせたストランドを、繊維の心綱を中心に複数本より合わせたワイヤロープにおいて、一般式(1)で表わされる少なくとも1種の化合物を含む基油と、平均分子量が1,000以上100,000以下の増粘剤とを含む混合油を前記ワイヤロープに被覆または含浸させたことを特徴とするエレベーター装置用のワイヤロープ。
【化1】
(式中、nは0〜4の整数を表す。X、X’、X’’は単環もしくは架橋構造を有する環状炭化水素、R、R’は直接結合もしくは炭素数が1〜3のアルキレン基、Qは水素原子、炭素数1〜3のアルキレン基もしくは環状炭化水素を示す。X、X’、X’’、R、R’、Qは側鎖に炭素数1〜3のアルキル基もしくは環状炭化水素を持っても良く、それぞれ独立に選択される。)
【請求項2】
請求項1において、前記混合油に増ちょう剤が混合され、混和ちょう度が200〜475であるグリースを前記ワイヤロープに被覆または含浸させたことを特徴とするエレベーター装置用のワイヤロープ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記基油は、一般式(2)〜(7)で表わされる少なくとも1種の化合物であることを特徴とするエレベーター装置用のワイヤロープ。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(式中、R1〜R7は一般式(8)〜(10)で表される炭化水素基からなり、式中R1’〜R12’は水素、炭素数1から3のアルキル基、単環シクロヘキシル基または架橋構造を有するシクロヘキシル基からそれぞれ独立に選択される。n1〜n15は環状炭化水素の構造に応じて0〜9または0〜11の整数を表し、Q1〜Q15は炭素数1から3のアルキル基、単環シクロヘキシル基または架橋構造を有するシクロヘキシル基からそれぞれ独立に選択され、n1〜n15が2以上の整数である場合は、複数のQ1〜Q15について、それぞれ独立に選択される。Q1’〜Q3’は水素原子、炭素数1から3のアルキル基、単環シクロヘキシル基または架橋構造を有するシクロヘキシル基からそれぞれ独立に選択される。)
【請求項4】
請求項1または2において、前記心綱に前記混合油を含浸させ、前記ストランドに前記グリースを被覆または含浸させたことを特徴とするエレベーター装置用のワイヤロープ。
【請求項5】
請求項1または2において、前記増粘剤は、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、多環ナフテン、芳香族炭化水素からなり、前記基油に対して前記増粘剤を1〜40wt%含むことを特徴とするエレベーター装置用のワイヤロープ。
【請求項6】
請求項2において、前記増ちょう剤は、鉱油系炭化水素ワックスまたは合成炭化水素ワックスからなり、前記混合油に対して前記増ちょう剤を1〜20wt%含み、前記グリースの滴点が30℃以上110℃以下であることを特徴とするエレベーター装置用のワイヤロープ。
【請求項7】
請求項1または2のワイヤロープと、前記ワイヤロープを巻上げる巻上機と、前記ワイヤロープと接続されたカウンターウェイトと、前記ワイヤロープが巻上げられることにより駆動される乗りかごとを備えることを特徴とするトラクション式エレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置用のワイヤロープおよびこれを用いたエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中低層建造物向けのエレベーターについて、機械室レスのトラクション式エレベーターが用いられている。トラクション式エレベーターは、機械室レス化によってエレベーター搭の設計レイアウトの自由度が高められ、従来は設置が難しかった狭小スペースにも設置できる。そのため、装置の新設および更新の際に普及が進んでいる。
【0003】
図1にトラクション式エレベーターの一例を示す。1は乗りかご、2はカウンターウェイト(つり合いおもり)、3は巻上機に接続したシーブ、4はワイヤロープ、5a、5bはそれぞれ乗りかご、カウンターウェイトを吊持する吊り滑車、6は頂部に固定された滑車、7は昇降路である。ワイヤロープの一端は昇降路の頂部に固定され、乗りかごの吊り滑車、頂部滑車、シーブ、滑車、カウンターウェイトの吊り滑車の順で引廻され、もう一端が昇降路の頂部で固定されている。ワイヤロープを介して、乗りかごとカウンターウェイトによって発生する張力の差と、ワイヤロープとシーブの間に生じる摩擦力とが釣り合っている。
【0004】
エレベーター用ワイヤロープは、例えばJIS G 3525に規定されたワイヤロープが一般的である。ワイヤロープは、合成繊維または天然繊維からなる心綱の周りに、6本または8本程度のストランドを配置し、これらを撚った構造である。またストランドは複数本の鋼線を撚り合わせたものである。ワイヤロープに張力が加わると、鋼線ストランドが心綱を圧縮する方向に力が作用する。また、鋼線同士の擦れや摩耗抑制、およびロープ−シーブ間の油膜形成のために、ワイヤロープ表面には粘性を持った油もしくはグリース状の油が塗布されている。図1のエレベーターにおいて、ワイヤロープとシーブの接触部における接触面圧(ヘルツ面圧)が高くなるようにワイヤロープの張力を上げると、ワイヤロープの油は接触部で弾性流体潤滑膜を形成し、巻上機の動力は接触部を通じてワイヤロープに伝達される。これはトラクションドライブと呼ばれる駆動方式の1種で、ワイヤロープが動くことで乗りかごとカウンターウェイトが駆動し、エレベーターの昇降が起こるようになる。
【0005】
最近ではロープ径の小さいワイヤロープの適用が検討されている。ワイヤロープが細径化することで、シーブの直径および巻付き角度が小さくなり、エレベーター装置の一層の小型化が可能となる。一方で、ワイヤロープの細径化は、ロープ−シーブ間の接触面積が小さくなり、ワイヤロープの動力伝達(トラクション)低下につながる。トラクションによって生じたワイヤロープの駆動力(トラクション力)は、ワイヤロープとシーブの接触面圧と油(油膜)のトラクション係数の積で表される。接触面積の狭小化に対しトラクション力を得るには、ロープ−シーブ接触部の接触面圧を高めるか、トラクション係数の高い油への変更が必要となる。
【0006】
ここで、ロープ細線化によって、接触部の接触面圧は上昇する一方、ワイヤロープの引張り強度は低下する。接触面圧は乗りかごなどを重くすることで増加するが、ワイヤロープへの負荷も高くなることから、ワイヤロープの安全率を考慮して調整する必要がある。また、装置の小型化に加えて、省エネルギー化および長寿命化の観点から、乗りかごなどの軽量化も検討されており、接触面圧を高める方法には技術的な制約が多い。そこで、接触面積の狭小化に対して優れたトラクションが得られるような油、およびグリースが求められている。
【0007】
高トラクションロープを用いたエレベーター装置の例としては、特許文献1に半流動性またはグリース状にした液状ポリイソブチレンをワイヤロープに用いる技術が開示されている。また、特許文献2にも高トラクション油および高トラクション油を用いたグリースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−176298号公報
【特許文献2】特開2000−8058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のグリースに含まれる液状ポリイソブチレンはトラクション特性に優れるが、ロープの接触表面で摩耗が進行しやすく、ロープ寿命が汎用の鉱油系トラクショングリースを用いた場合よりも短くなる。
【0010】
また、特許文献2のグリースは工作機械や変速機などの変速装置として用いられ、200℃以上の高温領域で使用されるものであるため、このような高温でなければトラクション性能を発揮できない。即ち室温〜100℃程度で動作するエレベーターのワイヤロープに用いても高いトラクション性能を発揮できない。
【0011】
本発明の目的は、高トラクションと耐摩耗性を両立しうるエレベーター装置用のワイヤロープと、それを用いたエレベーター装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、請求項に記載の発明により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高トラクションと耐摩耗性を両立しうるエレベーター装置用のワイヤロープと、それを用いたエレベーター装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トラクション式エレベーターの模式図である。
図2】ワイヤロープの断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面を用いて説明する。本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
【0016】
本実施形態のワイヤロープは、複数の鋼線をより合わせて構成される鋼線ストランドを、合成繊維または天然繊維からなる心綱を中心に複数本より合わせてなる。図2にワイヤロープの断面の模式図を示す。ワイヤロープ4は、合成繊維または天然繊維からなる心綱8の周りに、6本または8本程度のストランド9を配置し、これらを撚った構造である。ストランド9は複数本の鋼線10を撚り合わせたものである。図2では、ストランド9表面にグリース11が存在している場合を示す。心綱とストランドには、基油と増粘剤とを含む混合油、またはこの混合油に増ちょう剤を混合したグリースの少なくとも1種類以上をロープ表面に被覆させるか内部に含浸させる。
【0017】
基油は、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種類の化合物である。増粘剤は、平均分子量が1,000以上100,000以下のものである。グリースは、混合油に増ちょう剤を配合して混和ちょう度を200〜475とする。
【0018】
【化1】
【0019】
一般式(1)中、nは0〜4の整数を表す。X、X’、X’’は単環もしくは架橋構造を有する環状炭化水素、R、R’は直接結合もしくは炭素数が1〜3のアルキレン基、Qは水素原子、炭素数1〜3のアルキレン基もしくは環状炭化水素を示す。X、X’、X’’、R、R’、Qは側鎖に炭素数1〜3のアルキル基もしくは環状炭化水素を持っても良く、それぞれ独立に選択される。
【0020】
一般式(1)で表される化合物は、シクロヘキシル骨格などの環状炭化水素を複数有し、環同士が炭化水素もしくは直接結合することで非常にかさ高い分子構造を有する(立体障害が大きい)化合物である。当該化合物を基油とすることで、トラクション特性に優れたロープ油またはグリースを調製可能である。
【0021】
一方で、化合物単独での粘度は低いため、重量平均分子量が1,000以上100,000以下の増粘剤を基油に添加する。これにより、ロープ−シーブ間の接触に対して十分な油膜厚さを持ち、エレベーター装置のように高い接触面圧を受けるワイヤロープでもロープ油のダメージを低減できるので、粘性を保ち張り付き性にも優れる。従ってトラクション特性にも優れたロープ油を得ることができる。
【0022】
さらに、グリース作動温度条件に適した増ちょう剤を加えることで、高粘度油からなるグリース状の油とし、ロープ油に替えて、またロープ油に加えて用いることができる。
【0023】
以下、本明細書では基油および増粘剤からなる油を「ロープ油」、基油、増粘剤および増ちょう剤からなるグリース状の油を「グリース」と称する。
【0024】
ロープ油またはグリースをワイヤロープ(心綱およびストランド)に配することで、エレベーター装置のロープ−シーブ間の接触に対して十分な油膜厚さと張り付き性を有し、トラクション特性にも優れたワイヤロープを得ることができる。ロープ油またはグリースを心綱およびストランドの表面に被覆すればトラクション性能を発揮することができるが、心綱の内部にもロープ油またはグリースを含浸させることで、ワイヤロープ使用時に油がストランド表面へ逐次供給され、長期にわたりワイヤロープの性能を維持することができる。またストランド内部にもロープ油またはグリースを含浸させれば、更に多くのロープ油またはグリースを保持しておくことができるので、更に長期にわたりワイヤロープの性能を維持することができる。
【0025】
また、心綱にはロープ油を含浸させ、ストランドにはロープ油よりも粘性の高いグリースを被覆または含浸させることで、流動性の高いロープ油を効率的にストランドへ供給することができ、外部装置と接触するストランドには高い張り付き性を付与することができるので、心綱とストランドとでロープ油とグリースとを使い分けると良い。
【0026】
本実施形態で用いたロープ油およびグリースに用いた、基油の最良の形態は一般式(2)〜(7)で表される少なくとも1種の化合物からなることを特徴とする。
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
式中、R1〜R7は一般式(8)〜(10)で表される炭化水素基からなり、式中R1’〜R12’は水素、炭素数1から3のアルキル基、単環シクロヘキシル基または架橋構造を有するシクロヘキシル基からそれぞれ独立に選択される。n1〜n15は環状炭化水素の構造に応じて0〜9または0〜11の整数を表し、Q1〜Q15は炭素数1から3のアルキル基、単環シクロヘキシル基または架橋構造を有するシクロヘキシル基からそれぞれ独立に選択される。n1〜n15が2以上の整数である場合は、複数のQ1〜Q15について、それぞれ独立に選択される。Q1’〜Q3’は水素原子、炭素数1から3のアルキル基、単環シクロヘキシル基または架橋構造を有するシクロヘキシル基からそれぞれ独立に選択される。
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
一般式(2)〜(7)の化合物において、式中R1’〜R12’およびQ1〜Q15のアルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびi−プロピル基である。R1’〜R12’は、より好ましくは水素またはメチル基であり、特に好ましくはシクロヘキシル基に隣接する炭素原子がメチル化されているものである。一般式(2)〜(7)の化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、任意の組合せおよび割合で混合したものを使用してもよい。
【0038】
一般式(2)〜(7)の好ましい例としては、環状化合物を2〜4個含む化合物であり、具体的にはビシクロヘキシル、1,2−ジシクロヘキシルプロパン、1,2−ジシクロヘキシル−2−メチルプロパン、2,3−ジシクロヘキシルブタン、2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルブタン、2,3−ジシクロヘキシル−2,3−ジメチルブタン、1,3−ジシクロヘキシルブタン、1,3−ジシクロヘキシル−3−メチルブタン、2,4−ジシクロヘキシルペンタン、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン、2,4−ジシクロヘキシル−2,4−ジメチルペンタン、1,3−ジシクロヘキシル−2−メチルブタン、2,4−ジシクロヘキシル−2,3−ジメチルブタン、2,4−ジシクロヘキシル−2,3−ジメチルペンタン、2,4,6−トリシクロヘキシル−2,4−ジメチルヘプタン、2,4,6−トリシクロヘキシル−2−メチルヘキサン、2,4,6−トリシクロヘキシル−2,4,6−トリメチルヘプタン、2,4,6,8−テトラシクロヘキシル−2,4,6,8−テトラメチルノナン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,2−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−4−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−4−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,4−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−3,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−2,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−3,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−2,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−メチレン−3,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−2,2−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、2−メチレン−3−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−メチレン−2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−メチル−3−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0039】
一般式(2)〜(7)で示す化合物は、いずれも脂環式炭化水素を複数含む分子構造であり、環同士が直接結合もしくは炭化水素により架橋された構造を持つ。そのため、分子の立体障害が大きいため、高い圧力を受けても変形が起こりにくくなり、ロープ−シーブ間の接触に対して十分な厚さの油膜を形成する。一方で基油単独では粘性が低いものもあり、接触部への油の張り付きは弱いため、シーブからの動力伝達時に油膜切れを起こしてロープの摩耗が発生する。そのため、接触部では油膜の構造を維持する必要があり、基油の粘性を高めるような施策が必要となる。
【0040】
一般式(2)〜(7)の化合物の製法は特に限定されず、公知もしくは任意の方法が採用される。例えばα−メチルスチレンやスチレンなどを2量化反応もしくは3量化反応ののち、水素化により作製する方法や、ナフテン系合成潤滑油を製造する方法が挙げられる。また、製造の過程で生成する四量体化合物などを含んでいてもよいが、分子量の大きい多量体は固体として得られる場合があるため、二量体もしくは三量体化合物の方がより望ましい。
【0041】
基油成分の配合量は、少なすぎるとトラクション係数が低下し、多すぎるとワイヤロープへの張り付き性などが確保できない。ロープ油の最適な配合比は約40〜90wt%、より好ましくは約50〜85wt%である。
【0042】
増粘剤は、ノルマルパラフィン、ポリ−α−オレフィンなどのイソパラフィン、シクロペンタジエン系石油樹脂などの多環ナフテン、芳香族炭化水素、およびこれらの共重合体などを用いることができる。重量平均分子量が1,000以上100,000以下で、油に溶解もしくは分散するものあればよい。特に、シクロペンタジエンなどの多環ナフテンやポリイソブチレンなどのイソパラフィンは、トラクション特性に優れているため、より好ましい。
【0043】
一般に、分子量が大きい増粘剤ほど増粘効果は大きく、少量の添加で粘性が増加するが、高い接触面圧を受けると分子の主鎖が切れやすくなる。そのため、当該技術分野において分子量の大きい増粘剤はあまり用いられない。しかし、本実施形態における基油は立体障害が大きく、油膜も厚くなると考えられる。これにより、油膜が緩衝材となって増粘剤へのダメージが低減されるので、分子量を大きくすることができる。一方で、分子量の大きい増粘剤ほど溶解性が下がることから、増粘剤の望ましい重量平均分子量は5,000以上50,000以下であり、更に望ましくは8,000以上30,000以下の増粘剤である。また、ロープ油の最適な配合比は約10〜60wt%、より好ましくは約15〜50wt%である。
【0044】
ロープ油に求められる基油の粘性を鋭意検討した結果、40℃の動粘度で40mm2/s以上であることが望ましく、より望ましくは50〜1,000mm2/sである。ロープ油の粘性が高くなると、張り付き性が高まる一方で心綱からストランドへのロープ油の供給が起こりにくくなるため、ワイヤロープやエレベーターの仕様に合わせて適宜選定する。ロープ油をワイヤロープに適用する方法としては、心綱やワイヤロープに対してロープ油を浸漬、塗布、吹き付けすることで行うことができる。また、エレベーターロープのメンテナンス油として、常温でもワイヤロープに直接給油することも可能である。
【0045】
増ちょう剤は、ロープ油を半固体状もしくは固化できれば特に制限なく用いることができる。増ちょう剤の例としては、鉱油系ワックス(マイクロワックス、パラフィンワックス等)、合成炭化水素ワックス(石炭の分解ガスをフィッシャートロプッシュ法で合成したもの)、オレフィン誘導体のポリマーワックス(ポリエチレンワックス、α−オレフインワックス)、脂肪酸誘導体のワックス(アマイドワックス、ケトンワックス)、鉱物系ワックス(モンタン酸ワックス)、動物系ワックス(密ロウ、鯨)および植物系ワックス(カルナウバロウ、ホロウ)等がある。これらのワックスの種類および配合比は、トラクション係数への影響および、ワイヤロープへの張り付き性を考慮して決定する必要がある。ワックス類の最適な配合比は、ロープ油に対して約5〜25wt%、より好ましくは約10〜20wt%である。融点の高いワックスほど、少量で油を固化しやすくなるため、トラクション係数への影響、グリース製造のしやすさを考慮して、融点60℃以上110℃以下のワックスを用いることがより望ましい。また、グリースの混和ちょう度はワイヤロープへの加工性および長期付着性を考慮して、混和ちょう度が200〜475、滴点が30〜110℃とすることが望ましい。
【0046】
当該増ちょう剤を用いたグリースは加熱により液化、冷却により固化する性質を持つ。グリースをワイヤロープに適用する方法としては、グリースを加熱溶融することで、ロープ油と同様に心綱や鋼線ストランド、ワイヤロープに対してロープ油を浸漬、塗布、吹き付けすることで行うことができる。また、ワイヤロープ作製時に、心綱と鋼線ストランドのより合わせ口(ボイス口)において、加熱溶融することでグリースをワイヤロープに含浸塗布できる。
【0047】
また、前述のロープ油、グリースには、トラクション係数を低下させない限り防錆、酸化防止、摩耗抑制などの機能を付与するため、添加剤を添加できる。防錆剤の例としては、例えばスルホン酸化合物の金属塩やアミン類がある。酸化防止剤の例としては、例えば2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、アルキル化ジフェニルアミンなどのアミン系酸化防止剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などの有機硫黄系酸化防止剤がある。摩耗抑制剤の例としては、例えば微粒グラファイト、二硫化モリブテン、四フッ化エチレン粉末などがある。
【0048】
以上の各成分からなる本実施形態のワイヤロープは、エレベーター装置において動力を伝達すると共に、ロープ油およびグリースを介在することでシーブとの直接接触を防止できる。また、トラクション係数が高いため、従来のエレベーター装置と比較して、装置の小型化、ロープ細線化が可能となる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記に、ロープ油およびグリースの評価方法について記載する。
【0050】
(1)動粘度、ちょう度、および滴点の測定
油の動粘度(40,100℃)はJIS規格(JIS K2283)により行った。グリースのちょう度(混和ちょう度)および滴点の測定方法はJIS規格(JIS K2220)により行った。
【0051】
(2)トラクション係数測定
トラクション係数測定は、ボールオンディスク試験装置を用いて行った。本試験装置はボールおよびディスク双方が回転する機構を有し、すべり速度、転がり速度を任意に変更できる。測定条件は、荷重30N(ヘルツ面圧:0.82GPa)、転がり速度:500mm/s、温度30℃、すべり速度:0〜1000mm/sとし、すべり速度を変化させてトラクション係数を測定し、その最大値(μmax)を試料のトラクション係数とした。
【0052】
回転体の材質にはJIS規格(JIS G 4805:2008)の高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2鋼材)を用いた。
【0053】
(3)ファレックス摩耗試験
油の極圧試験はファレックス摩擦摩耗試験装置を用い、ASTM-D2670を参考にして行った。試験片の材質は炭素鋼(ジャーナルピン(φ6.35mm):ニッケルクロム鋼鋼材(SAE3135)、Vブロック:硫黄快削鋼(AISI1137))であり、油で浸漬した試験片について、一定速度および荷重条件下(回転速度:290min-1、温度:70℃、ならし運転:89N, 5min、本測定:445N, 3h)で行った。摩耗量は負荷機構のラチェットの目盛り変化からピンとブロックの合計の摩耗深さを計算により求めた。
【0054】
(4)ゲル濾過クロマトグラフィ測定
増粘剤などの重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィ(GPC)装置(溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準)により測定した。
(参考例1)
10リットル(以下、リットルを「L」と記す)のガラス製反応容器に、α−メチルスチレン5kgと、触媒として12−タングステン酸100gとを入れ、50℃で1時間加熱、攪拌して反応させた後、20℃の水浴にて冷却し、固体触媒を濾別した。この濾液を200Lオートクレーブに入れ、さらにシクロヘキサン100kgと、Pdを含む活性炭担体の水添触媒(5wt% Pd担持)(以下、この触媒を「Pd/C水添触媒」と記す)500gを入れ、密閉後、水素圧60kg/cm2(G)、180℃で8時間水素化を行い、室温まで放冷し、触媒を濾別した。
【0055】
得られた生成物をゲルろ過クロマトグラフィにより分析したところ、二量体成分(2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン:基油1)が48.2wt%、三量体成分(2,4,6−トリシクロヘキシル−2,4−ジメチルヘプタン:基油2)が32.3wt%、四量体成分(基油3)が9.7wt%が生成した。
【0056】
全反応液をロータリーエバポレーターにかけて単量体(シクロヘキサン)および軽質分を留去し、次いで減圧蒸留により各成分を分取した。
(参考例2)
α−メチルスチレン二量体1000g、シクロヘキサン5000g、Pd/C水素添加触媒10gを、攪拌機付き10Lオートクレーブに入れ密封した。オートクレーブ内を水素で0.1MPaに保ち、室温(25℃)で18時間攪拌した。その後、オートクレーブを開封し、Pd/C水素添加触媒を濾別後、シクロヘキサンを留去し、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタン1125gを得た。
次に、この2−メチル−2,4−ジフェニルペンタン1000gと、AlCl3 100gを塩化カルシウム管、冷却管、および滴下漏斗を取り付けた10Lの三口反応容器に入れた。攪拌しながら、滴下漏斗よりジイソブチレン2000gを30分かけて滴下後、60℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応容器を氷浴で冷却しながら、蒸留水3000gを30分かけて滴下し、AlCl3を分解した。その後、静置して有機層を分離し、無水Na2SO4による脱水を行うことにより、2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンのアルキル化体と、ジイソブチレンの多量体を含む混合物を3000g得た。
この反応液全量、シクロヘキサン30000g、N−113ニッケル系水添触媒300gをオートクレーブに入れ、密封し、水素圧6.1MPa、200℃で2時間核水素化を行い、冷却後、触媒を濾別し、シクロヘキサンを留去した。反応液を減圧蒸留にて蒸留し、2mmHg、165〜180℃で留分1600g(2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンのアルキル化体の水添化合物:基油4)を得た。
(参考例3)
2Lのステンレス製オートクレーブに、クロトンアルデヒド561g及びジシクロペンタジエン352gを仕込み、170℃で3時間攪拌して反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、ラネーニッケル触媒18gを加え、水素圧9kg/cm2(G)、150℃で4時間水素化を行った。冷却後、触媒を濾別した後、濾液を減圧蒸留し、105℃/20mmHg留分 500gを得た。
【0057】
次に、γ−アルミナ20gを入れ、反応温度285℃で脱水反応を行い、450gの生成物を得た。更に、1Lの四つ口フラスコに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体8g、及び脱水反応生成物400gを入れ、攪拌しながら、20℃で4時間二量化反応を行った。この反応混合物を希NaOH水溶液と飽和食塩水で洗浄した後、1リットルオートクレーブに水素化用Ni/ケイソウ土触媒12gを加え、水素圧30kg/cm2(G),反応温度250℃,反応時間6時間で水素化反応を行った。反応終了後、濾過により触媒を除き、濾液を減圧で蒸留することにより、目的とする二量体水素化物200gの混合物(基油5)を得た。(基油成分4:exo−2−メチル−exo−3−メチル−endo−2−〔(endo−3−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−exo−2−イル)メチル〕ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン:基油A、exo−2−メチル−exo−3−メチル−endo−2−〔(endo−2−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−exo−3−イル)メチル〕ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン:基油B、endo−2−メチル−exo−3−メチル−exo−2−〔(exo−3−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−exo−2−イル)メチル〕ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン:基油C、endo−2−メチル−exo−3−メチル−exo−2−〔(exo−2−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−exo−3−イル)メチル〕ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン:基油D、基油A+基油B:20wt%、基油C+基油D:60wt%)
(実施例1〜7)
基油1〜5、およびビシクロヘキシル(基油6)について、増粘剤として固体ポリイソブチレン(重量平均分子量9,000)を添加したロープ油を調製した。表1にロープ油の組成および諸物性の測定値を示す。いずれも優れたトラクション係数を示し、ロープ油として優れた性能を示した。また、増粘剤の分子量、添加量を変えることで、ロープ油の粘度を任意に調整できる。
【0058】
また、実施例7について、基油1と増粘剤としてスチレンエラストマ(スチレン−エチレン共重合体、スチレン共重合比=約70%、重量平均分子量80,000)を用いたロープ油を調製し、表1にロープ油の組成および物性の測定値を示す。分子構造の異なる増粘剤を使用した場合においても、高トラクション特性を維持した。
【0059】
【表1】
(比較例1)
実施例にて用いたロープ油との比較を目的として、ポリイソブテン油(重量平均分子量700)を用いた。
(実施例8)
本発明の実施例1に挙げたロープ油と、参考例1に挙げた基油1、および比較例1のポリイソブテン油について、表2に物性の測定値を示す。ここで、実施例1のロープ油と比較例1のポリイソブテン油は、いずれもISO 粘度グレード(ISO 3448)におけるVG100となる油を選定した。いずれの油についてもトラクション係数は高い値を示したが、ファレックス摩耗試験結果より、実施例1と比較して参考例1は焼付きによる装置停止、比較例1では2倍以上の摩耗が起こった。
【0060】
参考例1は実施例1のロープ油の基油であるが、単体では油の粘性が低いため試験片の界面への張り付き性が低く、油膜切れにより焼付きが発生したと推定する。そのため、面圧に対して安定かつ強固に油膜を維持するには、ロープ油の粘性を高めることが必須である。一方、比較例1のポリイソブテン油は粘性を持っているにも関わらず、摩耗量が大きくなった。ポリイソブテン油は界面への張り付き性を示すものの、油膜は実施例1よりも薄いと考えられる。そのため、面圧の高い条件では油膜が切れやすく、摩耗量が大きくなった。
【0061】
以上の結果より、実施例に示すような基油を用いたロープ油は、高トラクションと耐摩耗性に優れた性能を示す。
【0062】
【表2】
(実施例9〜15、比較例2)
実施例1、5、6に示したロープ油の配合をベースとして、増ちょう剤(ワックス)を添加してグリースを作製した。表3にグリースの組成および物性の測定値を示す。パラフィンワックス(融点69℃)、マイクロワックス(融点88℃)、合成炭化水素ワックス(融点102℃)、ポリエチレンワックス(融点110℃)、アマイドワックス(融点143℃)、モンタン酸ワックス(融点100℃)について、ロープ油と共に所定量混合して調製した。
【0063】
また、比較例2として一般的なエレベーター用ワイヤロープ用グリースである、赤ロープグリースを用いた。実施例に示したグリースは、比較例のいずれも優れたトラクション係数を示し、ワイヤロープ用グリースとして優れた性能を示した。また、増粘剤の分子量、添加量を変えることで、ロープ油の粘度を任意に調整可能である。
【0064】
【表3】
【0065】
また、上記実施例に示したロープ油、およびグリースに配したワイヤロープについて、図1に示したエレベーター装置に用いることができる。ワイヤロープは一端を昇降路の頂部に固定され、乗りかごの吊り滑車、頂部に固定した滑車、巻上機に接続したシーブ、頂部に固定した滑車、カウンターウェイトに接続した吊り滑車の順でワイヤロープが引廻され、もう一端が昇降路の頂部で固定された構造を有する。これは、巻上機が回転することで、シーブを通じてワイヤロープが駆動し、カウンターウェイトおよび乗りかごが駆動する機構を有する、トラクション式エレベーター装置である。ワイヤロープは高トラクションと耐摩耗性を両立した性能を示すことから、特に、ワイヤロープの細線化に伴うトラクションの低下や、摩耗によるロープ寿命の低下に対して優れた性能を有する。
【0066】
更に、ロープ油およびグリースのトラクション係数に影響を与えない範囲で添加剤を加えることで、防錆、酸化防止、摩耗抑制などの機能を付与することができ、装置の小型化、省メンテナンス化などの要求性能を満たすことが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1:乗りかご、2:カウンターウェイト(つり合いおもり)、3:巻上機に接続したシーブ、4:ワイヤロープ、5a:乗りかごを吊持する吊り滑車、5b:カウンターウェイトを吊持する吊り滑車、6:頂部に固定された滑車、7:昇降路、8:心綱、9:ストランド、10:鋼線、11:グリース(鋼線の表面)
図1
図2