特開2015-229737(P2015-229737A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229737(P2015-229737A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】UV硬化型コート剤用プライマー
(51)【国際特許分類】
   C09D 123/00 20060101AFI20151124BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20151124BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20151124BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   C09D123/00
   B32B27/32 Z
   C09D5/00 D
   C09D167/00
   C09D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-117154(P2014-117154)
(22)【出願日】2014年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 剛正
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 大輔
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04
4F100AK04J
4F100AK07
4F100AK07J
4F100AK09J
4F100AK25
4F100AK41A
4F100AK42
4F100AK48
4F100AK48B
4F100AL01
4F100AL05A
4F100AL07A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH46A
4F100EH46C
4F100GB41
4F100JB05A
4F100JB14A
4F100JB14C
4F100JB16B
4F100JL11
4F100YY00A
4J038CB001
4J038CB141
4J038CG141
4J038DD001
4J038GA13
4J038JA17
4J038JA20
4J038JA25
4J038JA32
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA14
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB08
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂基材、特に、ポリオレフィン樹脂基材やナイロン樹脂基材に塗布するプライマーであって、基材との密着性に優れるとともに、UV硬化型コート層との充分な密着性を有するプライマーを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂(A)、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)および水性媒体を含有し、(A)と(B)との質量比(A/B)が100/1〜100/50であることを特徴とするUV硬化型コート剤用プライマー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)および水性媒体を含有し、ポリオレフィン樹脂(A)とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)との質量比(A/B)が100/1〜100/50であることを特徴とするUV硬化型コート剤用プライマー。
【請求項2】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)がスルホイソフタル酸成分を含有していることを特徴とする請求項1記載のUV硬化型コート剤用プライマー。
【請求項3】
熱可塑性樹脂基材と、請求項1または2記載のUV硬化型コート剤用プライマーから得られるプライマー層と、UV硬化型コート層とがこの順に積層されてなることを特徴とする積層体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂基材が、ポリオレフィン樹脂基材またはナイロン樹脂基材であることを特徴とする請求項3記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂と、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂とを特定の割合で含有したUV硬化型コート剤用プライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やアクリル樹脂からなる成形体を光学用途に使用する場合、意匠性を付与したり、傷つきを防止して表面を保護するため、成形体の表面には、施工性が良好なUV硬化型コート剤が塗布され、コート層が形成されている。そして、UV硬化型コート剤を、PET樹脂基材やアクリル樹脂基材に塗布する際のプライマーとして、アクリル系プライマーやウレタン系プライマーが用いられている。たとえば、引用文献1には、アクリル系プライマーが開示されている。
近年、要求性能が多様化、高度化することによって、他の熱可塑性樹脂基材、特に、ポリオレフィン樹脂基材に、UV硬化型コート剤を塗布する検討が始められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−102359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載されたアクリル系プライマーは、ポリカーボネート樹脂などの基材との密着性は良好であるが、基材がポリオレフィン樹脂であると、充分な密着性を得ることができないものであった。また、アクリル系プライマーは、乾燥に要する時間が非常に長く、作業性に問題があった。
また、ウレタン系プライマーも同様に、ポリオレフィン樹脂基材との密着性が充分でなかった。
本発明の課題は、熱可塑性樹脂基材、特に、ポリオレフィン樹脂基材やナイロン樹脂基材に塗布するプライマーであって、基材との密着性に優れるとともに、UV硬化型コート層との充分な密着性を有するプライマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂と、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂とを特定の割合で含有するプライマーは、UV硬化型コート層との密着性に優れるとともに、乾燥時間を短くしても、ポリオレフィン樹脂基材やUV硬化型コート層との密着性に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリオレフィン樹脂(A)、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)および水性媒体を含有し、ポリオレフィン樹脂(A)とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)との質量比(A/B)が100/1〜100/50であることを特徴とするUV硬化型コート剤用プライマー。
(2)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)がスルホイソフタル酸成分を含有していることを特徴とする(1)記載のUV硬化型コート剤用プライマー。
(3)熱可塑性樹脂基材と、(1)または(2)記載のUV硬化型コート剤用プライマーから得られるプライマー層と、UV硬化型コート層とがこの順に積層されてなることを特徴とする積層体。
(4)熱可塑性樹脂基材が、ポリオレフィン樹脂基材またはナイロン樹脂基材であることを特徴とする(3)記載の積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のUV硬化型コート剤用プライマーによれば、熱可塑性樹脂基材とUV硬化型コート層に良好な密着性を有するプライマー層が得られる。特に、従来は適用が困難であったポリオレフィン樹脂基材やナイロン樹脂基材においてもUV硬化型コート層との良好な密着性を有するプライマー層が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のUV硬化型コート剤用プライマーは、ポリオレフィン樹脂(A)と、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)と、水性媒体とを含有する。
【0009】
ポリオレフィン樹脂(A)を構成するオレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のアルケンや、ノルボルネン等のシクロアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。中でもエチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンが特に好ましい。また、2種類以上のオレフィン成分が共重合されていてもよい。
ポリオレフィン樹脂(A)におけるオレフィン成分の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。オレフィン成分の含有量が50質量%未満では、基材密着性等のポリオレフィン樹脂由来の特性が失われてしまうことがある。
【0010】
ポリオレフィン樹脂(A)は、樹脂の水性化(液状化)の点から、また塗膜と基材との密着性の点から、不飽和カルボン酸成分を含有して、酸変性されていることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(A)における不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1〜25質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、無水マレイン酸がより好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0011】
ポリオレフィン樹脂(A)は、熱可塑性樹脂基材、特にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂基材との密着性を向上させる理由から、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(A)における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、様々な熱可塑性樹脂フィルム基材との良好な密着性を持たせるために、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが最も好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が40質量%を超えると、オレフィン由来の樹脂の性質が失われ、基材との密着性が低下することがある。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、基材フィルムとの密着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。(なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)
【0012】
また、上記成分以外に他の成分をポリオレフィン樹脂(A)全体の10質量%以下程度、含有していてもよい。他の成分としては、ジエン類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、一酸化炭素、二酸化硫黄などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
【0013】
ポリオレフィン樹脂(A)の具体例としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、中でもエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。
【0014】
ポリオレフィン樹脂(A)が、エチレン(a1)−アクリル酸エステル(a4)−無水マレイン酸(a5)共重合体である場合、質量比(a1/a4/a5)は、95/4/1〜55/40/5であることが好ましく、94/5/1〜60/36/4であることがより好ましく、92/7/1〜62/35/3であることが特に好ましい。
また、プロピレン(a2)−ブテン(a3)−無水マレイン酸(a5)共重合体である場合、質量比(a2/a3/a5)は、95/4/1〜53/40/7であることが好ましく、94/5/1〜60/34/6であることがより好ましく、92/7/1〜62/33/5であることが特に好ましい。
また、プロピレン(a2)−エチレン(a1)−ブテン(a3)−無水マレイン酸(a5)共重合体である場合、質量比(a2/a1/a3/a5)は、95/3/1/1〜50/15/28/7であることが好ましい。
【0015】
ポリオレフィン樹脂(A)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜500g/10分であることが好ましく、0.1〜400g/10分であることがより好ましく、1〜300g/10分であることがさらに好ましく、5〜200g/10分であることが特に好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化が困難となることがある。一方、ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートが500g/10分を超えると、得られる塗膜は硬くてもろくなる傾向にあり、塗膜の割れによる密着性が低下しやすい。
【0016】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを主成分とする高分子であって、スルホン酸基を含有するものであり、スルホン酸基は、多塩基酸成分または多価アルコール成分の一部に結合していることが好ましい。
【0017】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)を構成する多塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸及びその無水物、テトラヒドロフタル酸およびその無水物等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0018】
多塩基酸成分として、3官能以上の酸成分を少量用いてもよく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等を使用することもできる。
【0019】
上記した酸成分のなかでも、加水分解され難い芳香族エステル結合が樹脂骨格に占める割合が多くなり、また塗膜の耐水性が向上することから、芳香族多塩基酸が好ましく、特に工業的に多量に生産されているので安価であることからテレフタル酸とイソフタル酸が好ましい。
【0020】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)を構成する多価アルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等の脂肪族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル結合含有グリコール;2,2−ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA等)およびそのエチレンオキシド付加体、ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS等)およびそのエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0021】
さらに、多価アルコール成分として、3官能以上の多価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が含まれていてもよい。
【0022】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)におけるスルホン酸基は、多塩基酸成分に結合していることが好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸に結合していることがさらに好ましく、イソフタル酸に結合していることがより好ましい。またスルホン酸基は、塩を形成していることが好ましい。スルホン酸基が結合し、塩を形成している多塩基酸成分としては、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、5−スルホイソフタル酸アンモニウム、5−スルホイソフタル酸カリウム、4−スルホイソフタル酸ナトリウム、4−スルホイソフタル酸メチルアンモニウム、4−スルホイソフタル酸カリウムなどのスルホイソフタル酸塩成分や、2−スルホテレフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウムなどのスルホテレフタル酸塩成分などを挙げることができる。
【0023】
スルホン酸基が結合している多塩基酸成分の含有量は、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)を構成する全多塩基酸成分に対して、1〜30モル%であることが好ましく、2〜25モル%であることがより好ましく、4〜20モル%であることがさらに好ましく、5〜15モル%であることが最も好ましい。スルホン酸基が結合している多塩基酸成分の含有量が1モル%未満では、UV硬化型コート剤との密着性が低く、30モル%を超えると水への溶解性が向上するため、耐水性が低下することがある。
【0024】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、前記した成分を公知の方法により重縮合させることにより製造することができる。例えば、全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下で180〜260℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて重縮合触媒の存在下、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の酸価や水酸基価を制御するために、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価アルコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合をおこなう方法等を採用することができる。特に、解重合の際に、トリメリット酸、無水トリメリット酸等の3官能以上の多塩基酸を使用すると、解重合によるポリエステル樹脂の分子量低下を抑えながら、より耐水性の優れたポリエステル樹脂を得ることができる。
【0025】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は1,000以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。数平均分子量が1,000未満では、樹脂被膜の密着性に劣る傾向にある。なお、数平均分子量の上限については特に限定されないが、耐水性の点から、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は20,000以下であることが好ましい。
【0026】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は、特に限定されないが、耐ブロッキング性、密着性が良好な観点から、−40〜100℃が好ましく、耐ブロッキング性向上の点から20〜100℃がより好ましい。
【0027】
ポリオレフィン樹脂(A)とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)との質量比(A/B)は100/1〜100/50であることが必要であり、UV硬化型コート剤との密着性や耐水性の点から、100/2〜100/40であることが好ましく、100/5〜100/30であることがより好ましく、100/5〜100/25であることがさらに好ましく、100/5〜100/20が特に好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対するスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の含有量が1質量部未満の場合には、UV硬化型コート剤との密着性が低下し、50質量部を超える場合には、耐水性や基材との密着性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明のUV硬化型コート剤用プライマーを構成する水性媒体は、作業者や作業環境への安全性の観点から、水であることが最も好ましいが、ポリオレフィン樹脂(A)やスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の水性化や、乾燥負荷低減などの目的のために、水性媒体としての特徴を逸脱しない範囲であれば、水以外に、親水性の有機溶剤を含有してもよい。
このような有機溶剤として、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトン等のケトン類、プロパノ−ル、ブタノ−ル、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル類、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール誘導体などが挙げられる。これらの有機溶剤が水性分散体全量に占める量は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、水性媒体には、後述のようにポリオレフィン樹脂(A)を水性化する際に添加する塩基性化合物を含む場合もある。
【0029】
本発明のプライマーには、乳化剤等の不揮発性の水性化助剤を含有してもよいが、耐水性、密着性の観点から、最終的なプライマーの5質量%以下とすることが好ましく、含有しないことが最も好ましい。なお、後述する製造方法を用いれば、不揮発性の水性化助剤を添加することなしに、微細かつ安定なポリオレフィン樹脂粒子を含有する水性分散体が得られ、これを使用して本発明のプライマーを調製することができる。なお、不揮発性の水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
【0030】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0031】
本発明のUV硬化型コート剤用プライマーの製造方法を説明する。
本発明のプライマーの製造方法としては、ポリオレフィン樹脂(A)とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)が水性媒体中に均一に混合されて、それらを分散または溶解可能な方法であれば、特に限定されるものではないが、次の2つの例が挙げられる:(ア)それぞれ予め調製された、ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の水性分散体とを混合する方法;(イ)ポリオレフィン樹脂(A)とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)とを同時に水性分散化する方法。このうち、(ア)の方法が、より簡単に、多様なポリオレフィン樹脂(A)とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)との組み合わせからなる水性分散体を調製することができる。
【0032】
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体の製造方法を説明する。
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができる。このとき、水性化に用いられる樹脂の形状は特に限定されないが、水性化速度を高めるという点から、粒子径1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることが好ましい。
【0033】
容器としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂との混合物を適度に撹拌できるものであればよい。そのような装置としては、公知の固/液撹拌装置や乳化機を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置が好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。
【0034】
この装置の槽内に各原料を投入した後、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を50〜200℃、好ましくは60〜200℃の温度に保ちつつ、5〜120分間攪拌を続けることにより樹脂を十分に水性化させ、その後、攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が50℃未満の場合は、樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が200℃を超える場合には、樹脂の分子量が低下するおそれがある。
【0035】
ポリオレフィン樹脂(A)が不飽和カルボン酸成分を有する場合には、水性化の際に、塩基性化合物を添加することが好ましい。塩基性化合物により不飽和カルボン酸成分がアニオン化され、電気的反発によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。塩基性化合物の添加量は、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基(酸無水物基1モルはカルボキシル基2モルとみなす)に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量であることがより好ましく、1.0〜2.0倍当量であることがさらに好ましい。塩基性化合物の添加量が0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると、塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水分散液が着色する場合がある。
【0036】
ここで添加される塩基性化合物としては、塗膜の耐水性の面からは塗膜形成時に揮発する化合物が好ましく、アンモニアまたは各種の有機アミン化合物が好ましい。
有機アミン化合物の沸点は250℃以下であることが好ましい。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。
【0037】
また、ポリオレフィン樹脂(A)の水性化の際には、水性化速度の向上および樹脂粒子の小粒径化の点から、有機溶剤を添加することが好ましい。
有機溶剤の添加量はポリオレフィン樹脂の水性分散体中1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることがさらに好ましい。なお、有機溶剤は、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱することで、その一部を系外へ除去(ストリッピング)することができ、最終的には、ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体中1質量%以下とすることもできる。
有機溶剤の具体例としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられ、より低温での乾燥を行える点から、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールが特に好ましい。
【0038】
水性分散体中のポリオレフィン樹脂(A)粒子の数平均粒子径は、水性分散体の安定性、塗布した際の表面平滑性、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)と混合して得られる塗膜の透明性や密着性の点から、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.15μm以下であることが特に好ましい。重量平均粒子径についても0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましい。
【0039】
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の水性分散体または水溶液の製造方法としては、(1)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、このスルホン酸基含有ポリエステル樹脂溶液に水を添加して水性分散体を得る方法、(2)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂を有機溶剤と水の混合溶媒に溶解させる方法が挙げられる。
【0040】
上記方法によって、ポリオレフィン樹脂(A)やスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の水性分散体や水溶液を製造することができるが、市販品を使用してもよい。ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体としては、例えば、住友精化社製「ザイクセン」シリーズ、三井化学社製「ケミパール」シリーズを挙げることができる。またスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の水溶液としては、例えば、互応化学工業社製「プラスコートZ」シリーズなどが挙げられる。
【0041】
本発明のプライマーは、熱可塑性樹脂基材に塗布後、水性媒体を除去することで、基材との密着性が良好なプライマー層を形成させることができる。また、このプライマー層上にUV硬化型コート層を積層することができる。
【0042】
本発明のプライマーは、ポリオレフィン樹脂やナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂基材やアルミニウム等の金属基材との密着性に優れたプライマー層を形成することができる。
熱可塑性樹脂基材の形状としては、フィルム、シートや射出成形体などが挙げられ、特に限定されない。フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されない。また、フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1〜500μmであればよい。さらに、未延伸フィルムに本発明のプライマーを塗布し、その後コートフィルムを延伸する、いわゆるインラインコートを行ってプライマー層を形成してもよい。
【0043】
本発明のプライマーを基材に塗布する方法は特に限定されるものではないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。
プライマーの塗布量については、基材によって適宜、決定すればよい。塗膜の厚さは、基材が熱可塑性樹脂フィルムの場合、密着性を十分高めるためには、0.1μmより厚いことが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましく、0.2〜8μmであることがさらに好ましく、0.3〜7μmであることが特に好ましい。
【0044】
熱可塑性樹脂基材に塗布後、プライマーの水性媒体を除去するための乾燥温度は、特に限定されず、基材の耐熱温度等によって適宜、決定すればよいが、通常、50〜150℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましく、70〜90℃であることがさらに好ましい。乾燥温度が50℃未満の場合、水性媒体を十分、揮発させることができず、また揮発させるのに時間を要するため、良好な密着性能を発現させることが困難になる。一方、乾燥温度が150℃を超えると基材との密着性が低下する傾向がある。
【0045】
UV硬化型コート層を構成する樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、UV硬化型のものであれば特に限定はされない。プラマー層上に、各種のUV硬化型コート剤を塗布し、UV照射することによりUV硬化型コート層を形成することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種特性については以下の方法によって測定または評価した。
【0047】
1.樹脂の特性
(1)樹脂の構成
H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。ポリオレフィン樹脂(A)は、オルトジクロロベンゼン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。またスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、クロロホルム(d)またはトリフルオロ酢酸(d)を溶媒とし、室温で測定した。
H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含むスルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
【0048】
(2)ポリオレフィン樹脂の融点
樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線から融点を求めた。
【0049】
(3)ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート
JIS 6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
【0050】
(4)ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
【0051】
2.水性分散体の特性
(1)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0052】
(2)水性分散体中のポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径(mn)および重量平均粒子径(mw)を求めた。ここで、粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
【0053】
3.塗膜の特性
以下の特性の評価においては、基材として、ポリエチレン樹脂フィルム(タマポリ社製LC−2、厚み50μm、以下、PEフィルム)、延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、厚み20μm、以下、OPPフィルム)、ナイロン樹脂フィルム(ユニチカ社製、厚み16μm、以下、Nyフィルム)、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット、厚み25μm、以下、PETフィルム)を用いた。
なお、プライマーとしてアクリル樹脂系UV反応型水性分散体(C−1)を使用した比較例5、6では、プライマーをフィルムに塗布、乾燥後に、UV照射して塗膜を形成した。
(1)耐水性
プライマーを、PEフィルムのコロナ処理面に、乾燥後の膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、100℃で2分間、乾燥させた。得られた積層フィルムを室温で1日放置後、塗膜を、水で濡らした布で数回擦り、塗膜の状態を目視して、次の基準で耐水性を評価した。
○:変化なし
△:塗膜がくもる
×:塗膜が完全に溶解
【0054】
(2)基材との密着性(テープ剥離試験)
プライマーを、PEフィルム、OPPフィルム、Nyフィルムのそれぞれのコロナ処理面に、乾燥後の膜厚が1μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、100℃で2分間、乾燥させた。得られた積層フィルムを室温で1日放置後、塗膜表面にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視して、次の基準で密着性を評価した。評価が△以上であるものを合格とした。
○:全く剥がれなし
△:一部、剥がれた
×:全て剥がれた
【0055】
(3)UV硬化型コート層との密着性
プライマーを、PEフィルム、PPフィルム、Nyフィルム、PETフィルムのそれぞれのコロナ処理面に、乾燥後の膜厚が1μmになるようにマイヤーバーを用いて塗布した後、100℃で2分間、乾燥させた。
得られた積層フィルムの塗膜をプライマー層とし、その表面に、UV硬化型コート剤として、UVインキ(十条ケミカル社製、レイキュアCPO 6300)、またはUVハードコート(大日精化社製、セイカビームEXU−01CO)を、それぞれ3μm塗布し、UV照射機にて、積算照射量を300mJとして、UV照射して、UV硬化コート層を形成して、基材フィルム、プライマー層、UV硬化型コート層からなる積層体を得た。
積層体のUV硬化型コート層にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視して、次の基準で、UV硬化型コート層との密着性を評価した。評価が△以上であるものを合格とした。
○:全く剥がれなし
△:一部、剥がれた
×:全て剥がれた
【0056】
ポリオレフィン樹脂(A)、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)およびそれらの水性分散体は、以下の方法によって製造した。
1.ポリオレフィン樹脂(A)の製造
(1)ポリオレフィン樹脂A−1
プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/1−ブテン=80/20質量%)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリプロピレン樹脂A−1を得た。
【0057】
2.ポリオレフィン樹脂(A)水性分散体の製造
(1)ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(アルケマ社製、ボンダインHX−8290、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸=80/18/2質量%)、60.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.8倍当量)のトリエチルアミン(以下、TEA)および175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
【0058】
(2)ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのプロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン/無水マレイン酸=60.7/22.4/10.6/6.3質量%)、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、6.9gのN,N−ジメチルエタノールアミン(以下、DMEA)および188.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。
【0059】
(3)ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂A−1(プロピレン/ブテン/無水マレイン酸=76.5/19.2/4.3質量%)、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのDMEAおよび137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのDMEAおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−3を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
【0060】
得られたポリオレフィン樹脂水性分散体の特性とその製造に用いたポリオレフィン樹脂の特性を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
3.スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)の製造
(1)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−1
テレフタル酸1312g(79モル%)、イソフタル酸166g(10モル%)、スルホイソフタル酸ナトリウム295g(11モル%)、エチレングリコール435g(70モル%)、ジエチレングリコール425g(40モル%)、トリエチレングリコール300g(20モル%)、ポリテトラメチレングリコール30.0g(0.3モル%)および重合触媒として酢酸亜鉛二水和物1.3gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し、溶融させた。反応器内温度が250℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を、260℃にし系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10−5Pa)に到達してから、さらに3.0時間重合反応を進行させた。系を窒素ガスで常圧にした後、解重合剤としてトリメリット酸無水物38g(2モル%)を投入し、260℃で2時間攪拌しながら解重合反応をおこない、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−1を得た。
【0063】
(2)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−2
テレフタル酸996g(60モル%)、イソフタル酸166g(10モル%)、スルホイソフタル酸ナトリウム804g(30モル%)、エチレングリコール435g(70モル%)、ジエチレングリコール434g(40モル%)、トリエチレングリコール424g(20モル%)、ポリテトラメチレングリコール30.0g(0.3モル%)および重合触媒として酢酸亜鉛二水和物1.3gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し、溶融させた。反応器内温度が250℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を、260℃にし系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10−5Pa)に到達してから、さらに3.0時間重合反応をおこない、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−2を得た。
【0064】
(3)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−3
テレフタル酸1412g(85モル%)、イソフタル酸166g(10モル%)、スルホイソフタル酸ナトリウム134g(5モル%)、エチレングリコール434g(70モル%)、ジエチレングリコール424g(40モル%)、トリエチレングリコール300g(20モル%)、ポリテトラメチレングリコール30.0g(0.3モル%)および重合触媒として酢酸亜鉛二水和物1.3gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し、溶融させた。反応器内温度が250℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を、260℃にし系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10−5Pa)に到達してから、さらに3.0時間重合反応を進行させた。系を窒素ガスで常圧にした後、解重合剤としてトリメリット酸無水物38g(2モル%)を投入し、260℃で2時間攪拌しながら解重合反応をおこない、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−3を得た。
【0065】
(4)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−4
テレフタル酸1445g(87モル%)、イソフタル酸166g(10モル%)、スルホイソフタル酸ナトリウム80g(3モル%)、エチレングリコール434g(70モル%)、ジエチレングリコール424g(40モル%)、トリエチレングリコール300g(20モル%)、ポリテトラメチレングリコール30.0g(0.3モル%)および重合触媒として酢酸亜鉛二水和物1.3gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し、溶融させた。反応器内温度が250℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を、260℃にし系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10−5Pa)に到達してから、さらに3.0時間重合反応を進行させた。系を窒素ガスで常圧にした後、解重合剤としてトリメリット酸無水物38g(2モル%)を投入し、260℃で2時間攪拌しながら解重合反応をおこない、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−4を得た。
【0066】
(5)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−5
テレフタル酸830g(50モル%)、イソフタル酸166g(10モル%)、スルホイソフタル酸ナトリウム1072g(40モル%)、エチレングリコール434g(70モル%)、ジエチレングリコール424g(40モル%)、トリエチレングリコール300g(20モル%)、ポリテトラメチレングリコール30.0g(0.3モル%)および重合触媒として酢酸亜鉛二水和物1.3gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。そして、これらの原料を1000rpmで撹拌しながら、反応器を245℃で加熱し、溶融させた。反応器内温度が250℃に到達してから、3時間エステル化反応を進行させた。3時間経過後、系内の温度を、260℃にし系内を減圧した。系内が高真空(圧力:0.1〜10−5Pa)に到達してから、さらに3.0時間重合反応をおこない、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−5を得た。
【0067】
(6)ポリエステル樹脂P−6
テレフタル酸2492g(60モル%)、イソフタル酸415g(10モル%)、セバシン酸1516g(30モル%)、エチレングリコール1210g(50モル%)、ネオペンチルグリコール1484g(50モル%)からなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加した後、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、265℃になったところでトリメリット酸無水物29g(0.6モル%)を添加し、265℃で2時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、払い出し室温で放冷後、ポリエステル樹脂P−6を得た。
【0068】
4.スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)水性分散体の製造
(1)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−1
3Lのポリエチレン製容器に、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−1を400g、メチルエチルケトン(以下、MEK)を600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−1をMEKに完全に溶解させ、固形分濃度40質量%のスルホン酸基含有ポリエステル樹脂溶液を得た。
次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記スルホン酸基含有ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物として28質量%のアンモニア水を2.5g添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水497.5gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%、有機溶剤の含有率が3質量%以上であるスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
得られた有機溶剤の含有率が3質量%以上であるスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体800gと、蒸留水52.3gとを2Lフラスコ入れ、常圧で蒸留をおこなうことで有機溶剤を除去した。蒸留は留去量が約360gになったところで終了し、室温まで冷却後、250メッシュ(目開き0.071mm)のステンレスフィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加した。このようにして得られたスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度は30.2質量%であった。有機溶剤の含有率は0.01質量%以下であった。
得られた有機溶剤の含有率は0.01質量%以下であるスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体500gを攪拌しながら、2.6gのトリエチルアミンと997.4gの蒸留水を添加して、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−1を得た。
【0069】
(2)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−2
3Lのポリエチレン製容器に、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−2を100g、IPAを90g、水を810g投入し、約80℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−2を、水とIPAの混合溶媒に完全に溶解させ、固形分濃度10質量%のスルホン酸基含有ポリエステル樹脂溶液を得た。
スルホン酸基含有ポリエステル樹脂溶液を攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン5gを添加し、続いて100g/minの速度で蒸留水162gを添加した。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が8.6質量%、有機溶剤の含有率が7質量%以上であるスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体を得た。
得られた有機溶剤の含有率が7質量%以上であるスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体1162gを2Lフラスコ入れ、常圧で蒸留をおこなうことで有機溶剤を除去した。蒸留は留去量が約162gになったところで終了し、室温まで冷却後、250メッシュ(目開き0.071mm)のステンレスフィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が10質量%になるように蒸留水を添加した。このようにして得られたスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−2の有機溶剤の含有率は0.01質量%以下であった。
【0070】
(3)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−3、T−4
上記スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−1の製造において、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−1の代わりに、P−3、P−4を使用した以外は、同様におこない、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−3、T−4を得た。
【0071】
(4)スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−5
上記スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−2の製造において、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−1の代わりに、P−5を使用した以外は、同様におこない、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−5を得た。
【0072】
(5)ポリエステル樹脂水性分散体T−6
上記スルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−1の製造において、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂P−1の代わりに、P−6を使用した以外は、同様におこない、ポリエステル樹脂水性分散体T−6を得た。
【0073】
得られたスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度とその製造に用いたスルホン酸基含有ポリエステル樹脂の組成を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1
ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体T−1とをポリオレフィン樹脂100質量部に対してスルホン酸基含有ポリエステル樹脂が1質量部となるように室温にてメカニカルスターラーで攪拌(100rpm)、混合し、UV硬化型コート剤用プライマーを調製した。
【0076】
実施例2〜22、比較例1〜7
表3に示すように、ポリオレフィン樹脂水性分散体とスルホン酸基含有ポリエステル樹脂水性分散体の種類および樹脂成分の混合比を変えた以外は、実施例1と同様の操作を行ってUV硬化型コート剤用プライマーを得た。なお、比較例5、6では、アクリル樹脂系UV反応型水性分散体(C−1)として、DSM社製、NeoCrylE−200(固形分濃度30質量%、水分70質量%)を使用した。
【0077】
実施例1〜22、比較例1〜7で得られたUV硬化型コート剤用プライマーの評価結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例1〜22では、プライマーから得られる塗膜(プライマー層)は、ポリオレフィン樹脂やナイロン樹脂基材との密着性が良好であり、またUVインキやUVハードコートとの密着性が良好であり、しかもスルホイソフタル酸塩を含有しているにも関わらず、耐水性を維持していた。実施例21、22では、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂(B)において、スルホン酸基の含有量が好ましい範囲から外れていたため、塗膜は、耐水性や、UVインキまたはUVハードコートとの密着性に低下がみられた。
【0080】
これに対し、比較例1、2は、プライマーがスルホン酸基含有ポリエステル樹脂を含有していないため、UVインキまたはUVハードコートとの密着性が劣っていた。また、比較例3、4は、スルホン酸基含有ポリエステル樹脂の含有量が本発明で規定する範囲外であるため、塗膜は、耐水性、基材との密着性、UVインキまたはUVハードコートとの密着性が劣っていた。比較例5は、アクリル系プライマーを使用したため、UVハードコートとの密着性は良好であったものの、ポリオレフィン樹脂基材やナイロン樹脂基材との密着性が劣っていた。比較例6は、アクリル系プライマーにスルホン酸基含有ポリエステル樹脂を含有させたが、ポリオレフィン樹脂基材などへの密着性が劣っていた。比較例7は、ポリエステル樹脂にスルホン酸基を含有していないため、塗膜は、UVインキやUVハードコートとの密着性が劣っていた。