【課題】風合い及び伸縮性に優れる伸縮性不織布を備えると共に、工程通過性に優れる積層体、風合い及び伸縮性に優れる伸縮性不織布、並びに、安定した生産が連続して可能な積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、通気性のある平板状の基材からなる基材層1と、該基材層1の表面に直接融着された伸縮性不織布からなる不織布層2と、を備え、伸縮性不織布がプロピレン−エチレンランダム共重合体を含み、JIS−L1096に準じて測定した基材層1の通気性が10〜1000cc/cm
・秒であり、JIS−L1913に準じて測定した基材層1の破断伸度が10〜200%であり、JIS−L1913に準じて測定した不織布層2の破断伸度が100〜600%であり、JIS−L1913に準じて測定した全体の引張強度が10〜2000N/5cmであり、基材層1が不織布層2から剥離可能となっている積層体Sである。
JIS−B0601に準じて測定した前記基材層の前記不織布層側の表面における算術平均粗さ(Ra)が0.01〜200である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3記載の伸縮性不織布においては、ポリプロピレン添加量が多い場合、伸縮性や不織布の風合いが悪くなるという欠点があり、一方で、ポリプロピレンの添加量が少ない場合、伸縮性には優れるが、形態安定性が劣るという欠点がある。なお、形態安定性が劣ると、伸縮性不織布の後加工を行う場合、各工程、若しくは、各工程間を通過する際の工程通過性が悪くなる。
【0008】
一方、伸縮性不織布の製造においては、一般に、伸縮性を付与するための原料が高タック性(粘着性)であるので、メルトブロー法で伸縮性不織布を製造する場合、原料がネットコンベアに付着して剥がれ難くなったり、巻き取り工程で伸びてしまい、安定して連続生産ができないという問題がある。
また、後加工を行う場合、伸縮性不織布の繰り出し時に伸縮性不織布同士がくっ付いて剥がれ難くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、風合い及び伸縮性に優れる伸縮性不織布を備えると共に、工程通過性に優れる積層体、風合い及び伸縮性に優れる伸縮性不織布、並びに、安定した生産が連続して可能な積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、所定の破断伸度を有する伸縮性不織布からなる不織布層に、所定の破断伸度及び通気性を有する基材からなる基材層を貼着し、基材層を不織布層から剥離可能な積層体とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、(1)通気性のある平板状の基材からなる基材層と、該基材層の表面に直接融着された伸縮性不織布からなる不織布層と、を備え、伸縮性不織布がプロピレン−エチレンランダム共重合体を含み、JIS−L1096に準じて測定した基材層の通気性が10〜1000cc/cm
2・秒であり、JIS−L1913に準じて測定した基材層の破断伸度が10〜200%であり、JIS−L1913に準じて測定した不織布層の破断伸度が100〜600%であり、JIS−L1913に準じて測定した全体の引張強度が10〜2000N/5cmであり、基材層が不織布層から剥離可能となっている積層体に存する。
【0012】
本発明は、(2)JIS−L1913に準じて測定した全体の通気性が5〜500cc/cm
2・秒である上記(1)記載の積層体に存する。
【0013】
本発明は、(3)基材が非オレフィン系の熱可塑性樹脂からなる上記(1)又は(2)に記載の積層体に存する。
【0014】
本発明は、(4)伸縮性不織布がホモポリプロピレン樹脂を更に含み、該ホモポリプロピレン樹脂の含有割合が4.0質量%以下である上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の積層体に存する。
【0015】
本発明は、(5)基材層に対する不織布層の剥離強度が0.1〜20N/5cmである上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の積層体に存する。
【0016】
本発明は、(6)JIS−B0601に準じて測定した基材層の不織布層側の表面における算術平均粗さ(Ra)が0.01〜200である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の積層体に存する。
【0017】
本発明は、(7)基材層の厚みが0.05〜5.0mmである上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の積層体に存する。
【0018】
本発明は、(8)上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の積層体の基材層から剥がした伸縮性不織布に存する。
【0019】
本発明は、(9)上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の積層体の製造方法であって、ネットコンベアの上面に平板状の基材を敷設し、該基材上でプロピレン−エチレンランダム共重合体を含む原料の溶融紡糸を行う積層体の製造方法に存する。
【0020】
本発明は、(10)ネットコンベアの下側から吸引しながら、溶融紡糸を行う上記(9)記載の積層体の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の積層体においては、伸縮性不織布を、プロピレン−エチレンランダム共重合体を含むものとすることにより、風合い及び伸縮性に優れるものとすることができる。
また、基材層が不織布層から剥離可能となっているので、用途に応じて、伸縮性不織布を基材から剥がして用いることができる。このとき、基材層が所定の通気性を有するので、伸縮性不織布を、容易に剥がすことができる。
【0022】
本発明の積層体は、伸縮性に優れる伸縮性不織布を備えていても、伸縮性不織布が所定の通気性及び伸度を有する基材に融着されており、且つ全体が所定の引張強度を有するので、形態が安定する。その結果、工程通過性が優れるものとなる。すなわち、当該積層体を用いて後加工を行う場合、後加工工程における積層体の取り扱いが容易となる。
このとき、JIS−L1913に準じて測定した全体の通気性が5〜500cc/cm
2・秒であると、積層体を巻き取った場合に、シワになりにくいという利点がある。
また、接着剤等を用いずに、不織布層が基材層に直接融着されているので、伸縮性不織布が不作為に剥がれることなく、一方で、作為的には剥がし易くなる。
【0023】
本発明の積層体においては、基材が非オレフィン系の熱可塑性樹脂からなるものであると、オレフィン系であるプロピレン−エチレンランダム共重合体とは相溶性が悪くなるので、互いに強固に融着することが抑制される。
なお、基材が熱可塑性樹脂からなるので、基材層を剥がした後、加熱することにより、基材層を再度不織布層に融着することも可能である。
【0024】
本発明の積層体においては、基材層に対する不織布層の剥離強度が0.1〜20N/5cmである場合、伸縮性不織布が基材から不作為に剥がれることなく、一方で、作為的には、伸縮性不織布を基材から皺になることなく綺麗に剥がすことができる。
ここで、剥離強度は、基材層及び不織布層の端部を剥離させて、基材層及び不織布層をそれぞれ別方向へ引張り、JIS−L1913に準じて測定される。
【0025】
本発明の積層体においては、基材層と不織布層との接着性の観点から、JIS−B0601に準じて測定した基材層の不織布層側の表面における算術平均粗さ(Ra)が0.01〜200であることが好ましい。
【0026】
本発明の積層体においては、伸縮性不織布がホモポリプロピレン樹脂を更に含む場合、タック性を抑えることができる。
また、同様に、原料のタック性も抑えることができるので、取り扱い易くなる。なお、風合いの良さを維持する観点から、ホモポリプロピレン樹脂の含有割合は4.0質量%以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の積層体においては、基材層の厚みが0.05〜5.0mmである場合、積層体を巻き取った場合に、シワになりにくいという利点がある。
【0028】
本発明の伸縮性不織布は、上述した積層体の基材層から剥がして得られるので、オレフィン系であるプロピレン−エチレンランダム共重合体を含む。このため、風合い及び伸縮性に優れるものとなる。
【0029】
本発明の積層体の製造方法においては、ネットコンベアの上面に、敢えて平板状の基材を敷設して、該基材上で溶融紡糸を行うので、プロピレン−エチレンランダム共重合体を含む、高タック性の原料がネットコンベアに付着することを防止できる。これにより、原料がネットコンベアに付着して剥がれ難くなる問題を解決できるので、安定した生産が連続して可能となる。なお、原料がホモポリプロピレン樹脂を更に含むと、原料のタック性を抑えることができる。
【0030】
本発明の積層体の製造方法においては、ネットコンベアの下側から吸引しながら、溶融紡糸を行うと、吸引によってプロピレン−エチレンランダム共重合体の延伸が助長され、細い繊維径の伸縮性不織布を製造することが可能となる。これにより、伸縮性不織布の風合いが向上する。なお、吸引の度合いを調整することにより、基材と伸縮性不織布との融着度合いの調整することができる。
また、プロピレン−エチレンランダム共重合体の冷却効果を高めるため、製造過程上で発生しやすい溶融樹脂塊(ショット)の発生を防止することができる。
【0031】
このとき、JIS−L1913に準じて測定した基材の通気性が10〜1000cc/cm
2・秒であると、プロピレン−エチレンランダム共重合体が基材に均等に付与されると共に、得られる伸縮性不織布と基材との接着性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0034】
図1は、本実施形態に係る積層体の一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る積層体Sは、基材層1と、該基材層1の表面に積層された不織布層2と、を備える。すなわち、積層体Sは、接着剤等を用いずに、不織布層2の全面が基材層1に直接融着された2層構造となっている。
積層体Sは、不織布層2が基材層1に直接融着されているので、伸縮性不織布が不作為に剥がれることなく、一方で、作為的には剥がし易くなる。
【0035】
積層体Sにおいては、不織布層2が基材層1に直接融着されているものの、作為的には不織布層2を基材層1から剥がせるようになっている。すなわち、積層体Sの基材層1から剥がすことにより、伸縮性不織布が得られるようになっている。
かかる伸縮性不織布は、後述するように、オレフィン系であるプロピレン−エチレンランダム共重合体を含むので、風合い及び伸縮性に優れるものとなる。
【0036】
積層体Sにおいては、JIS−L1913に準じて測定した全体の引張強度が10〜2000N/5cmである。
引張強度が10N/5cm未満であると、破れ易いので、取り扱い難くなる欠点があり、引張強度が2000N/5cmを超えると、必然的に厚みが増加して、重くなる欠点がある。
【0037】
積層体Sにおいては、JIS−L1913に準じて測定した全体の通気性が5〜500cc/cm
2・秒であることが好ましい。この場合、積層体を巻き取った場合に、シワになりにくいという利点がある。
また、全体の通気性が5cc/cm
2・秒未満であると、全体の通気性が上記範囲内にある場合と比較して、巻き取り時に空気が抜けづらく、シワの原因となったり、伸縮性が低下するという欠点があり、全体の通気性が500cc/cm
2・秒を超えると、全体の通気性が上記範囲内にある場合と比較して、積層体の強度が低下し、巻き取り難くなる欠点がある。
【0038】
積層体Sにおいては、基材層1に対する不織布層2の剥離強度が0.1〜20N/5cmであることが好ましい。この場合、伸縮性不織布が基材から不作為に剥がれることなく、一方で、作為的には、伸縮性不織布を基材から皺になることなく綺麗に剥がすことができる。
また、剥離強度が0.1N/5cm未満であると、剥離強度が上記範囲内にある場合と比較して、不織布層2が剥がれ易いので、巻き取り等が困難となる傾向にあり、剥離強度が20N/5cmを超えると、剥離強度が上記範囲内にある場合と比較して、剥がす際に伸縮性不織布が伸びてしまい、残留ひずみが発生し易くなる。
【0039】
基材層1は、通気性のある平板状の基材からなる。
当該基材の形態としては、特に限定されず、不織布、紙、織物、編物等の通気性のあるものが挙げられる。これらの中でも、通気性、強度及び後工程での取り扱い易さの観点から、不織布、特にスパンボンド製不織布であることが好ましい。
【0040】
基材の材質は、非オレフィン系の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。この場合、後述するプロピレン−エチレンランダム共重合体はオレフィン系であるので、基材と当該プロピレン−エチレンランダム共重合体との相溶性が悪くなる。その結果、基材層1と不織布層2とが互いに強固に融着することが抑制される。
また、基材が熱可塑性樹脂からなるので、基材層1を剥がした後、加熱することにより、基材層1を再度不織布層2に融着することも可能である。
【0041】
かかる非オレフィン系の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、シリコーン、フッ素樹脂(PTFE)、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。これらの中でも、非オレフィン系の熱可塑性樹脂は、プロピレン−エチレンランダム共重合体との接着性、取扱いの容易性の観点から、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0042】
基材層1は、目付が10〜100g/m
2であることが好ましく、15〜50g/m
2であることがより好ましい。基材層1の目付が10g/m
2未満であると、基材層1の目付が上記範囲内にある場合と比較して、強度が不十分となったり、シワになりやすいという欠点があり、基材層1の目付が100g/m
2を超えると、基材層1の目付が上記範囲内にある場合と比較して、硬くなるので巻き取り難くなったり、伸縮性不織布との融着度合をコントロールし難くなるという欠点がある。
【0043】
基材層1は、厚みが0.05〜5.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることが好ましい。この場合、積層体を巻き取った場合に、シワになりにくいという利点がある。
また、基材層1の厚みが0.05mm未満であると、基材層1の厚みが上記範囲内にある場合と比較して、不織布層2を基材層1から剥がし難くなる欠点があり、基材層1の厚みが5.0mmを超えると、基材層1の厚みが上記範囲内にある場合と比較して、重量が大きくなるので、取り扱い難くなる欠点がある。
【0044】
基材層1は、JIS−B0601に準じて測定した基材層1の不織布層2側の表面における算術平均粗さ(Ra)が0.01〜200であることが好ましく、0.01〜100であることがより好ましい。
基材層1の表面粗さが0.01未満であると、基材層1の表面粗さが上記範囲内にある場合と比較して、不織布層2が基材層1に十分に融着されない場合があり、基材層1の表面粗さが200を超えると、基材層1の表面粗さが上記範囲内にある場合と比較して、基材層1の凹凸に不織布層2が入り込んで、剥がれ難くなる欠点がある。
【0045】
基材層1は、JIS−L1096に準じて測定した通気性が10〜1000cc/cm
2・秒であり、10〜100cc/cm
2・秒であることが好ましい。
基材層1の通気性が10cc/cm
2・秒未満であると、不織布層2と基材層1とが融着され難く剥がれ易くなるという欠点があり、基材層1の通気性が1000cc/cm
2・秒を超えると、強度が不十分となり、伸縮性不織布の融着の際には、プロピレン−エチレンランダム共重合体を含む原料が基材層1を通過して、ネットコンベア等に付着する恐れがある。
【0046】
基材層1は、JIS−L1913に準じて測定した基材層1の破断伸度が10〜200%であり、10〜100%であることが好ましい。
基材層1の破断伸度が10%未満であると、破れ易いという欠点があり、基材層1の破断伸度が200%を超えると、伸び過ぎて取り扱い難いという欠点がある。
【0047】
不織布層2は、基材層1の表面に積層された伸縮性不織布からなる。
当該伸縮性不織布は、オレフィン系熱可塑性樹脂のプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる。
ここで、ランダム共重合体とは、モノマーの配列に秩序のない共重合をいう。すなわち、プロピレン−エチレンランダム共重合体は、プロピレンモノマーとエチレンモノマーとを、配列に秩序なく共重合したものである。
【0048】
伸縮性不織布は、プロピレン−エチレンランダム共重合体に加え、ホモポリプロピレン樹脂を更に含むことが好ましい。この場合、風合い及び伸縮性に優れるものとすることができる。また、伸縮性不織布の強度が向上するので、取り扱い性が向上する。さらに、積層体の製造時においては、プロピレン−エチレンランダム共重合体自体のタック性を抑えることができる。
【0049】
このとき、プロピレン−エチレンランダム共重合体と、ホモポリプロピレン樹脂との配合割合は、得られる伸縮性不織布の伸縮性及び風合いを阻害しない観点から、全量に対して、ホモポリプロピレン樹脂が20質量%以下含まれていることが好ましく、4.0質量%以下含まれていることがより好ましく、1.0〜4.0質量%含まれていることが更に好ましい。
なお、伸縮性不織布には、これらの他にも、着色剤、可塑剤、滑剤、相溶化剤、強化剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0050】
不織布層2は、目付が10〜500g/m
2であることが好ましく、20〜200g/m
2であることがより好ましい。不織布層2の目付が10g/m
2未満であると、不織布層2の目付が上記範囲内にある場合と比較して、破れ易くなる欠点があり、不織布層2の目付が500g/m
2を超えると、不織布層2の目付が上記範囲内にある場合と比較して、伸縮性及び風合いが悪くなる欠点がある。
【0051】
不織布層2は、JIS−L1913に準じて測定した不織布層2の破断伸度が100〜600%であり、200〜500%であることが好ましい。不織布層2の破断伸度が100%未満であると、風合いが悪くなる欠点があり、不織布層2の破断伸度が600%を超えると、不織布層2を基材層1から剥がし難くなる欠点がある。
【0052】
本実施形態に係る積層体Sは、伸縮性に優れる伸縮性不織布を備えていても、伸縮性不織布からなる不織布層2が所定の通気性及び伸度を有する基材からなる基材層1に融着されており、且つ全体が所定の引張強度を有するので、形態が安定する。その結果、工程通過性が優れるものとなる。すなわち、当該積層体Sを用いて後加工を行う場合、後加工工程における積層体の取り扱いが容易となる。
【0053】
一方で、伸縮性不織布は、積層体Sの基材層1から不織布層2を剥がすことにより得られる。
このとき、上述したように、基材層1が所定の通気性を有するので、伸縮性不織布を、容易に剥がすことができる。
【0054】
伸縮性不織布は、用途に応じて、基材層1から剥がして用いられる。
伸縮性不織布は、伸縮性を要する分野に幅広く用いることができる。例えば、手袋、フェイスマスク、オムツウェットギャザー、救急絆創膏用基布、経皮吸収薬基布、貼布用基材、創傷保護材等に好適である。
【0055】
次に、積層体Sの製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る積層体の製造方法に用いられる不織布製造装置を示す概略側面図であり、
図3は、本実施形態に係る積層体の製造方法に用いられる製造装置の一部を示す概略斜視図である。
図2又は
図3に示すように、本実施形態に係る積層体Sの製造方法は、不織布製造装置100を用いて行われる。
【0056】
不織布製造装置100は、原料が投入される押出器11と、該押出器11にて溶融された熱可塑性樹脂が噴射される口金11aと、該口金11aから噴射された熱可塑性樹脂の糸条群Pが捕集され、上面で伸縮性不織布(不織布層2)が形成される基材(基材層1)と、基材を搬送するネットコンベア15と、ネットコンベア15の押出器11とは反対側に取り付けられた吸引装置18と、基材層1及び不織布層2からなる積層体Sを巻き取るワインダー17と、からなる。
本実施形態に係る積層体Sの製造方法は、上述した不織布製造装置100を用いる、いわゆる紡糸直結型の不織布の製造方法である。
【0057】
不織布製造装置100においては、ネットコンベア15の上面に、基材を沿わせて移動するようにしている。なお、かかる基材は、ネットコンベア15の移動と同期して、移動するようになっている。すなわち、ネットコンベア15と同体となって基材が移動することで、製造される伸縮性不織布が搬送されるようになっている。
【0058】
本実施形態に係る積層体の製造方法においては、まず、原料が押出器11に投入される。これにより、原料が押出器11内で溶融温度以上に加熱され、流動化される。
原料には、プロピレン−エチレンランダム共重合体が主成分として含まれており、必要に応じて、上述した配合割合でホモポリプロピレン樹脂が更に含まれている。
【0059】
原料は、MI値が2〜100g/10minであることが好ましく、5〜30g/10minであることがさらに好ましい。なお、MI値とは、JIS−K7210で規定されるメルトフローインデックス測定により得られた値を意味する。
MI値が2g/10minを以下であると流動性が悪くなり、細い繊維を形成しにくくなる。また、100g/10minを超えると、ショット(樹脂塊)が発生しやすくなったり、充分な伸縮性が発元しにくくなる欠点がある。
【0060】
次いで、口金11aから流動化された糸条群Pが下方に噴射されると、瞬間的に空冷され、凝固した糸条群Pがネットコンベア15に敷設された基材上にて捕集される。
このように、積層体Sの製造方法においては、ネットコンベア15の上面に、敢えて、平板状の基材を敷設し、当該基材上で原料の溶融紡糸が行われる。このため、プロピレン−エチレンランダム共重合体を含む、高タック性の原料がネットコンベア15に直接付着することを防止できる。その結果、原料がネットコンベア15に付着して剥がれ難くなる問題を解決できるので、安定した生産が連続して可能となる。
【0061】
なお、溶融紡糸とは、熱可塑性樹脂を加熱して溶融温度以上にし、流動化させて、所望の太さの紡糸口金から押し出して冷却固化する工程である。溶融紡糸により、フィラメントの集合体からなる不織布(不織布層2)が得られる。
【0062】
ここで、基材は、上述したように、JIS−L1096に準じて測定した通気性が10〜1000cc/cm
2・秒であり、10〜100cc/cm
2・秒であることが好ましい。この場合、プロピレン−エチレンランダム共重合体からなる原料が基材に均等に付与されると共に、得られる伸縮性不織布と基材との接着性が向上する。
【0063】
また、基材は、上述したように、基材と原料との接着性の観点から、JIS−B0601に準じて測定した基材の原料が付与される面側における算術平均粗さ(Ra)が0.01〜200であることが好ましい。
さらに、基材は、取り扱い性の観点から、上述したように、目付が10〜100g/m
2であることが好ましく、厚みが0.05〜5.0mmであることが好ましく、破断伸度が10〜200%であることが好ましい。
【0064】
積層体の製造方法において、糸条群Pを形成するフィラメントの太さは、1〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。なお、糸条群Pの太さは、口金のサイズ、製造条件によって調整することができる。
糸条群Pを形成するフィラメントの太さが1μm未満であると、太さが上記範囲内にある場合と比較して、強度が不十分となる傾向にあり、糸条群Pを形成するフィラメントの太さが50μmを超えると、太さが上記範囲内にある場合と比較して、伸縮性が不十分であったり、風合いが悪化する傾向にある。
なお、フィラメントの太さは、SEM写真でランダムに選択したフィラメント100本の太さの平均値とした。
【0065】
積層体の製造方法において、ネットコンベア15の押出器11とは反対側には吸引装置18が取り付けられている。
吸引装置18は、ネットコンベア15の下側から矢印の方向に負圧で吸引している。すなわち、吸引装置18は、ネットコンベア15を介して、基材の裏側から、基材の表側の糸条群Pを下方に吸引していることになる。これにより、プロピレン−エチレンランダム共重合体の延伸が助長され、細い繊維径の伸縮性不織布を製造することが可能となり、伸縮性不織布の風合いが向上する。なお、吸引の度合いを調整することにより、基材と伸縮性不織布との融着度合いの調整することができる。
また、プロピレン−エチレンランダム共重合体の冷却効果を高めるため、製造過程上で発生しやすい溶融樹脂塊(ショット)の発生を防止することができる。
そして、基材からなる基材層1上に伸縮性不織布からなる不織布層2が融着された積層体Sが得られる。
【0066】
その後、積層体Sは、ワインダー17によって巻き取られる。このとき、積層体Sは、上述したように、伸縮性不織布が基材に融着されているので、巻き取りの際に、シワになったり、縮んだりすることを抑制することができる。
また、積層体Sをワインダー17に巻きつけることで、搬送が容易であり、直ぐに後加工を行うことも可能となる。
なお、かかる後加工としては、例えば、染色やラミネート等が挙げられる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0068】
例えば、本実施形態に係る積層体の製造方法においては、ネットコンベア15の下側から吸引装置18で吸引しながら、基材上で原料の溶融紡糸を行っているが、必ずしも吸引する必要はない。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
原料としてプロピレン−エチレンランダム共重合体97質量%(MFR:20g/10min)とホモポリプロピレン樹脂3質量%(MFR:24g/10min)との混合物を用い、基材(基材層1)としてポリエチレンテレフタレートからなる目付40g/m
2のスパンボンド不織布を用いて、
図2及び
図3に示す不織布製造装置100により、積層体を得た。
【0071】
(実施例2)
基材としてポリエチレンテレフタレートからなる湿式不織布(目付25g/m
2、つぶし加工あり)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0072】
(実施例3)
基材としてポリエチレンテレフタレートからなる目付10g/m
2のスパンボンド不織布を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0073】
実施例1〜3で得られた積層体、並びに、それを構成する伸縮性不織布及び基材の物性を表1に示す。
(表1)
【0074】
(評価)
実施例1〜3で得られた積層体に対し、以下の評価を行った。
1.風合い試験
風合い試験は、得られた積層体から伸縮性不織布を剥離させ、該伸縮性不織布の初期弾性率を測定することにより評価した。すなわち、伸縮性不織布を破断するまで引っ張った際の50%伸長時の強度を測定した。なお、値が小さい程、柔らかいことを意味する。
2.伸縮性試験
伸縮性試験は、得られた積層体から伸縮性不織布を剥離させ、該伸縮性不織布の100%伸長後の残留ひずみを測定することにより評価した。すなわち、伸縮性不織布を100%まで引っ張ったのち、0%まで戻し、再度引っ張った時の応力がかかり始める伸長率を測定した。
3.工程通過性試験
工程通過性試験は、製造した積層体に対し、シワ、外観不良のものを除外した歩留り率により評価した。
4.剥離試験
剥離試験は、積層体を500m製造し、その中に生じた皺の数を測定することにより評価した。
5.印刷試験
積層体の伸縮性不織布側の面に対し、赤色顔料を用いてグラビア印刷を行った。そして、付与された赤色顔料の均一性を目視にて評価した。なお、評価は、均一なものを「◎」、一部に印刷抜けが確認できるものを「△」、印刷抜けが多いものを「×」とした。
【0075】
上記評価にて得られた結果を表2に示す。
(表2)
【0076】
表2に示す結果より、実施例1〜3の積層体は、風合い及び伸縮性に優れる伸縮性不織布を備えると共に、工程通過性に優れることが確認された。