【課題】各種調整に要する工数の増大を抑えることができ、携帯機が車室内外境界面近傍にあるかどうかに拘わらず精度良く携帯機の位置判定を行うことが可能な車両用通信ステムを提供する。
【解決手段】車両用通信システムは、車両Cに設けられた複数の送信アンテナ(3)から信号を送信する車載機1と、該車載機1から送信された信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する携帯機2とを備える。携帯機2は、複数の送信アンテナ(3)からそれぞれ送信された信号の受信信号強度を測定し、各信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する。車載機1は、携帯機2から送信された応答信号を受信し、応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機2が、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する。そして、車載機1は携帯機2が全領域の内側にあるか否かを判定する。
車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する車載機と、該車載機から送信された信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する携帯機とを備える車両用通信システムであって、
前記携帯機は、
前記複数のアンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度を測定する測定部と、
該測定部が測定した各信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する送信部と
を備え、
前記車載機は、
前記携帯機から送信された応答信号を受信する車載受信部と、
該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、前記携帯機が、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する領域内外判定部と、
前記携帯機が全領域の内側にあるか否かを判定する判定部と
を備える車両用通信システム。
車両に設けられた複数のアンテナから送信され、携帯機が受信した信号の受信信号強度に基づいて、該携帯機が車室内にあるか否かをコンピュータに判定させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記受信信号強度に基づいて、前記携帯機が、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する領域内外判定部と、
前記携帯機が全領域の内側にあるか否かを判定する判定部と
して機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0019】
(1)本発明の一態様に係る車両用通信システムは、車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する車載機と、該車載機から送信された信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する携帯機とを備える車両用通信システムであって、前記携帯機は、前記複数のアンテナからそれぞれ送信された信号の受信信号強度を測定する測定部と、該測定部が測定した各信号の受信信号強度を含む応答信号を送信する送信部とを備え、前記車載機は、前記携帯機から送信された応答信号を受信する車載受信部と、該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、前記携帯機が、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する領域内外判定部と、前記携帯機が全領域の内側にあるか否かを判定する判定部とを備える。
【0020】
本願にあっては、車載機は車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する。該信号は、携帯機の位置を判定するための信号である。携帯機は、各アンテナから送信された信号を受信し、各信号の受信信号強度を測定し、測定して得た受信信号強度を含む応答信号を車載機へ送信する。各信号の受信信号強度は、車両に対する携帯機の位置によって変化する。
車載機は、携帯機から送信された応答信号を受信する。車載機の領域内外判定部は、携帯機が相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する。以下領域内外判定部による前記判定を内外判定と言う。前記複数の領域は共通の車室内空間を包含しており、各領域の境界の一部は内外判定を行いたい領域の一部の境界に精度よく沿うが、各領域の境界は車室内空間の境界と完全には一致していない。このため各領域において携帯機が境界面の内側、外側に位置するかを判定するためのパラメータ作成に要する工数は抑えられる。
本願の判定部では、携帯機が全領域の内側にあるか否かを判定する。例えば携帯機が共通の車室内空間の内側にある場合、該携帯機は前記複数の領域での内外判定において全て内側にあると判定される。携帯機が共通の車室内空間の外側にある場合、該携帯機は前記複数の領域の内、少なくとも一つの領域の外側にあると判定される。前記複数の領域は、全てを組み合わせると、携帯機が車室の内側にあるか外側にあるかの判定を行いたい領域の境界に精度良く沿う様に作成されているため、当該判定を行いたい領域において、携帯機が内側又は外側のいずれに位置するかを精度良く判定することが可能となる。以下、判定部による携帯機の位置の判定を車室内外判定と言う。
なお、本願の車室内空間は車室の空間と完全に一致している必要は無く、車室全体を漏れなく包含している必要は無い。
また、車室内空間の内外境界の全てにおいて、精度良く携帯機の車室内外判定を行う必要は無く、問題が無ければ、前記内外境界の一部に車室内外判定精度が悪い部分が存在する実施態様も本願の実施態様に含まれる。
【0021】
(2)前記複数の領域の少なくとも一つは車室の内側面の一部に倣う境界面を有する構成が好ましい。
【0022】
本願にあっては、前記複数の領域の少なくとも一つは、車室の内側面の一部に倣う境界面を有する。従って、該領域における携帯機の内外判定を行うことによって、少なくとも前記内側面の一部の近傍における車室内外判定を、他の部分に比べて精度良く行うことができる。
なお、該境界面は、車室の内側面に完全に一致している必要は無い。例えば、境界面は、車室を構成する側壁の内部にあっても良いし、該側壁の外面に沿った面であっても良い。
【0023】
(3)前記車載機は、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づく第1統計値と、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づく第2統計値とを記憶する記憶部を備え、前記領域内外判定部は、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度並びに前記記憶部が記憶する前記第1統計値及び第2統計値に基づいて、前記携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定する。
【0024】
本願にあっては、第1統計値及び第2統計値を用いて、携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定する。
第1統計値は、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記共通の車室内空間を前記領域内に漏れなく包含させるためのものである。また、第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該内側面の一部に対応する境界面を規定するためのものである。
第2統計値は、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第2統計値の算出に利用される標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該一部に対応する領域の境界面を規定するためのものである。
第1統計値及び第2統計値を算出するための標本群として、前記標本群を用いることにより、無作為に膨大な標本群を作成する場合に比べて、前記領域における携帯機の内外判定を行うための統計値の作成に要する工数を効果的に抑えることができる。
【0025】
(4)前記第1統計値は、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、並びに該内側面の一部に対向する他部の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいている構成が好ましい。
【0026】
本願にあっては、第1統計値及び第2統計値を用いて、携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定する。
第1統計値は、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群、並びに前記内側面の一部に対向する他部の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記他部の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記他部を前記領域内に漏れなく包含させるためのものである。また、第1統計値の算出に利用される標本群の内、前記内側面の一部の車室内側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該内側面の一部に対応する境界面を規定するためのものである。
第2統計値は、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群に基づいて算出される値である。第2統計値の算出に利用される標本群は、前記内側面の一部における車室内外判定を精度良く行えるように該一部に対応する領域の境界面を規定するためのものである。
第1統計値及び第2統計値を算出するための標本群として、前記標本群を用いることにより、無作為に膨大な標本群を作成する場合に比べて、前記領域における携帯機の内外判定を行うための統計値の作成に要する工数を効果的に抑えることができる。
【0027】
(5)前記第1統計値及び第2統計値は受信信号強度の平均及び逆分散共分散行列を含み、前記車載機は、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記第1統計値に係る標本群の統計距離と、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度及び前記第2統計値に係る標本群の統計距離とを算出する距離算出部を備え、前記領域内外判定部は、各統計距離を比較することによって、前記携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定する構成が好ましい。
【0028】
本願によれば、車載機は、第1統計値を用いることによって、前記領域の内側を特徴付ける標本群と、携帯機が測定した受信信号強度との統計距離を算出する。また、車載機は、第2統計値を用いることによって、前記領域の外側を特徴付ける標本群と、携帯機が測定した受信信号強度との統計距離を算出する。車載機の領域内外判定部は、算出された各統計距離を比較することによって、携帯機が前記領域の内側又は外側のいずれに位置するかを判定する。前記領域の内側を特徴付ける標本群との統計距離の方が、前記領域の外側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、携帯機は前記領域の内側にあると判定される。逆に、前記領域の外側を特徴付ける標本群との統計距離の方が、前記領域の内側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、携帯機は前記領域の外側にあると判定される。
【0029】
(6)前記車載機は、前記領域の内側にある前記携帯機の前記測定部が測定する受信信号強度と、前記領域の外側にある前記携帯機の前記測定部が測定する受信信号強度とを判別するための判別式を記憶する記憶部を備え、前記領域内外判定部は、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度と、前記記憶部が記憶する判別式に基づいて、前記携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定する構成が好ましい。
【0030】
本願によれば、車載機は携帯機が領域の内側又は外側のいずれにあるかを、記憶部が記憶する判別式を用いて判定する。前記複数の領域各々は、携帯機が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを判定するためのものとしては不十分である。しかし、前記領域の境界面の精度が低いため、前記領域を規定する判別式の作成に要する工数は抑えられる。例えば、前記領域の境界面を規定する低次の多項式による近似式によって判別式を作成することが可能である。
より具体的には、本願における判別式は、車室内標本群と、車室外標本群との統計距離が等しくなる複数の点を求め、全体集合とする。ここで、車室内標本群は、車室の内側面の一部に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群を含む。また、車室外標本群は、前記内側面の一部の車室外側に沿う複数箇所で測定される受信信号強度の標本群を含む。
そして、全体集合から、携帯機の内外判定に寄与する部分集合を抽出し、抽出した部分集合を用いて、該部分集合を表す近似曲線を最小自乗法により求める。
例えば、2つのアンテナから送信された信号の受信信号強度を含む2次元の標本を用いる場合、車室内標本群と、車室外標本群との統計距離が等距離となる点は2次元平面上にプロットすることができ、この形状は、双曲線、放物線、楕円となる。当該形状が楕円状となる様なアンテナの組み合わせは使用せず、例えば当該形状が双曲線となる場合には携帯機の内外判定に寄与する曲線上にある複数の点で構成される部分集合を抽出する。当該部分集合を表す曲線の当該形状は放物線となるため、最小自乗法を用いて低次の多項式に精度よく近似させることが可能である。
本判別式は領域の境界面近傍の内外の受信信号強度を測定すれば良いため、各領域において携帯機が境界面の内側、外側に位置するかを判定するためのパラメータ作成に要する工数は抑えられる。
なお、ここで説明した判別式の具体例は一例であり、本願の判別式の作成方法、次元が特に限定されるものでは無い。
【0031】
(7)前記複数の領域の少なくとも一つは車室の右内側面に倣う境界面を有し、他の前記領域は車室の左内側面に倣う境界面を有する構成が好ましい。
【0032】
本願によれば、車室の右内側面に倣う境界面を有する領域と、左内側面に倣う境界面を有する領域とを用いることによって、車室の右側面及び左側面における携帯機の車室内外判定を精度良く行うことができる。なお、各領域の境界面は、車室の右側面及び左側面に完全に一致している必要は無い。
【0033】
(8)前記複数の領域の少なくとも一つは車室の後側の内面に倣う境界面を有する構成が好ましい。
【0034】
本願によれば、車室の後側の内面に倣う境界面を有する領域を用いることによって、車室の後面における携帯機の車室内外判定を精度良く行うことができる。なお、前記領域の境界面は、車室の後面に完全に一致している必要は無い。
【0035】
(9)前記複数の領域の少なくとも一つは車室の前側の内面に倣う境界面を有する構成が好ましい。
【0036】
本願によれば、車室の前側の内面に倣う境界面を有する領域を用いることによって、車室の前面における携帯機の車室内外判定を精度良く行うことができる。なお、前記領域の境界面は、車室の前面に完全に一致している必要は無い。
【0037】
(10)前記領域内外判定部は、前記車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度の一部に基づいて、前記携帯機が前記領域の内側にあるか否かを判定するようにしてあり、判定に用いる受信信号強度は前記複数の領域毎に異なる構成が好ましい。
【0038】
本願によれば、領域内外判定部は、携帯機が測定する受信信号強度の一部に基づいて、携帯機が領域の内側又は外側のいずれにあるかを判定する。一般的に前記領域における携帯機の内外判定を効果的に行うために必要な受信信号強度は領域毎に異なる。従って、前記領域内外判定部は、領域毎に異なる受信信号強度を用いて、携帯機の内外判定を行う。各領域における携帯機の内外判定に用いる受信信号強度の数を抑えることにより、携帯機の車室内外判定精度を損なうこと無く、前記領域を規定するデータ、つまり携帯機が前記領域の内側又は外側のいずれにあるかを判定するためのデータの作成に要する工数を抑えることができる。
【0039】
(11)本発明の一態様に係る車載機は、車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信し、該信号に応じて外部機器から送信された応答信号を受信する車載機であって、前記複数のアンテナからそれぞれ送信された信号の前記外部機器における受信信号強度を含む応答信号を受信する車載受信部と、該車載受信部が受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、前記外部機器が、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する領域内外判定部と、前記外部機器が全領域の内側にあるか否かを判定する判定部とを備える。
【0040】
本願にあっては、車載機は車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する。そして、車載機は、前記複数のアンテナからそれぞれ送信された信号の外部機器における受信信号強度を含む応答信号を受信する。
車載機の領域内外判定部は、外部機器が相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する。前記複数の領域は共通の車室内空間を包含しており、各領域の境界の一部は車室内外判定を行いたい領域の一部の境界に精度よく沿うが、各領域の境界は車室内空間の境界と完全には一致していない。従って、実施態様(1)と同様、このため各領域において携帯機が境界面の内側、外側に位置するかを判定するためのパラメータ作成に要する工数は抑えられる。
本願の判定部では、外部機器が全領域の内側にあるか否かを判定する。例えば外部機器が共通の車室内空間の内側にある場合、該外部機器は前記複数の領域での判定において全て内側にあると判定される。外部機器が共通の車室内空間の外側にある場合、該外部機器は前記複数の領域の内、少なくとも一つの領域の外側にあると判定される。前記複数の領域は、全てを組み合わせると車室内外判定を行いたい領域の境界に精度良く沿う様に作成されているため、車室内外判定を行いたい領域において、外部機器が内側又は外側のいずれに位置するかを精度良く判定することが可能となる。
【0041】
(12)本発明の一態様に係る携帯機は、車両から送信される複数の信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する携帯機であって、前記複数の信号の受信信号強度を測定する測定部と、該測定部が測定した受信信号強度に基づいて、自身が共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する領域内外判定部と、自身が全領域の内側にあるか否かを判定する判定部とを備える。
【0042】
本願にあっては、測定部は、車両から送信される複数の信号の受信信号強度を測定する。携帯機の領域内外判定部は、自身が相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する。前記複数の領域は共通の車室内空間を包含しており、各領域の境界は車室内空間の境界と完全には一致していない。従って、実施態様(1)と同様、携帯機が前記領域の内側又は外側のいずれに位置するかを判定するためのデータの作成に要する工数は抑えられる。
携帯機の判定部は、自身が全領域の内側にあるか否かを判定する。携帯機が車室内空間の内側にある場合、該携帯機は全領域の内側にあると判定される。複数の各領域における携帯機の内外判定を行うことによって、一つの領域を用いる場合に比べ、携帯機が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを精度良く判定することが可能である。
【0043】
(13)本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、車両に設けられた複数のアンテナから送信され、携帯機が受信した信号の受信信号強度に基づいて、該携帯機が車室内にあるか否かをコンピュータに判定させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記受信信号強度に基づいて、前記携帯機が、共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する領域内外判定部と、前記携帯機が全領域の内側にあるか否かを判定する判定部として機能させる。
【0044】
コンピュータは、車両に設けられた複数のアンテナから送信され、携帯機が受信した信号の受信信号強度に基づいて、該携帯機が相異なる複数の領域それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する。前記複数の領域は共通の車室内空間を包含しており、各領域の境界は車室内空間の境界と完全には一致していない。従って、実施態様(1)と同様、携帯機が前記領域の内側又は外側のいずれに位置するかを判定するためのデータの作成に要する工数は抑えられる。
コンピュータは、携帯機が全領域の内側にあるか否かを判定する。携帯機が車室内空間の内側にある場合、該携帯機は全領域の内側にあると判定される。複数の各領域における携帯機の内外判定を行うことによって、一つの領域を用いる場合に比べ、携帯機が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを精度良く判定することが可能である。
【0045】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る車両用通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る車両用通信システムの一構成例を示すブロック図である。本実施形態1に係る車両用通信システムは、車両Cに設けられた複数の送信アンテナ(3)及び受信アンテナ4を用いて各種信号を送受信する車載機1と、該車載機1との間で信号を送受信する携帯機2とを備える。
複数の送信アンテナ(3)は、例えば、運転席側のピラーに設けられた第1送信アンテナ31、助手席側のピラーに設けられた第2送信アンテナ32、バックドアに設けられた第3送信アンテナ33、車両Cの前部に設けられた第4送信アンテナ34を含む。受信アンテナ4は車両Cの適宜箇所に設けられている。なお、本実施形態1においては車両Cの進行方向右側が運転席側、進行方向左側が助手席側である。
車載機1は、携帯機2の位置を判定するための信号を複数の送信アンテナ(3)から無線信号を用いて順次送信する。携帯機2は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信し、受信した各信号の受信信号強度を測定する。携帯機2は、測定された受信信号強度を含む応答信号を無線信号を用いて車載機1へ送信する。車載機1は携帯機2から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機2の車室内外判定を行い、判定結果に応じた所定処理を実行する。例えば、車載機1は、車両ドアの施錠又は解錠、エンジン始動、車両ドアの施錠忘れの警告等の処理を実行する。
【0046】
図2は車載機1の一構成例を示すブロック図である。車載機1は、該車載機1の各構成部の動作を制御する制御部11を備える。制御部11には、車載受信部12、車載送信部13、切替器13a、記憶部14が設けられている。
【0047】
制御部11は、例えば一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース、タイマ等を有するマイコンである。制御部11のCPUは入出力インタフェースを介して車載受信部12、車載送信部13及び記憶部14に接続している。制御部11は記憶部14に記憶されている後述のコンピュータプログラム10aを実行することにより、各構成部の動作を制御し、携帯機2の車室内外判定、車室内外判定に応じた所定処理を実行する。
【0048】
記憶部14は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部14は、制御部11が車載機1の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の車室内外判定を実行するためのコンピュータプログラム10aを記憶している。また、記憶部14は携帯機2の車室内外判定を行うための各種統計値を記憶している。統計値の詳細は後述する。なお、
図2では制御部11及び記憶部14を別体の構成部として図示しているが、制御部11の内部に記憶部14を備えても良い。
本実施形態1に係るコンピュータプログラム10aは、記録媒体10にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部14は、図示しない読出装置によって記録媒体10から読み出されたコンピュータプログラム10aを記憶する。記録媒体10はCD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等の光ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、半導体メモリ等である。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから本実施形態1に係るコンピュータプログラム10aをダウンロードし、記憶部14に記憶させても良い。
【0049】
車載受信部12には、受信アンテナ4が接続されている。車載受信部12は、携帯機2から無線により送信される応答信号等を、受信アンテナ4を通じて受信する。車載受信部12は、受信した応答信号等から搬送波の成分を除去して受信信号を抽出し、抽出された受信信号を制御部11へ出力する回路である。搬送波としては300MHz〜3GHzのUltra High Frequency帯(UHF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0050】
車載送信部13は、搬送波を用いて、制御部11から出力された信号を無線信号に変調し、当該無線信号を制御部11と切替器13aによって選択された一の送信アンテナ(3)から携帯機2へ送信する回路である。搬送波としては30kHz〜300MHzのLow Frequency帯(LF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0051】
また、車載機1の制御部11には、図示しない車両ドアリクエストスイッチの操作状態に応じたリクエスト信号が入力する。制御部11は入力したリクエスト信号に基づいて、車両ドアリクエストスイッチの操作状態を認識することができる。車両ドアリクエストスイッチは、例えば、運手席側又は助手席側の車両ドアを施錠又は開錠するためのスイッチであり、運転席外側又は助手席外側のドアハンドルに設けられている。なお、押しボタンに代えて、ドアハンドルに対する使用者の手の接触を検出する接触センサを設けても良い。また、制御部11は、車両ドアリクエストスイッチの操作に対応したリクエスト信号を直接取得しても良いし、ドアECU(Electronic Control Unit)、その他のECU等を介して取得しても良い。
制御部11は、車両ドアリクエストスイッチの操作状態、携帯機が車室内にあるか否かと言った状況に応じて、車両ドアの解錠又は施錠を制御するための車両ドア制御指令を、図示しないドアECUへ出力する。ドアECUは、制御部11からの車両ドア制御指令に従って、車両ドアを施錠し又は解錠する。また、制御部11は、前記状況に応じて、必要があれば、警告指令を図示しない警告装置へ出力する。例えば、携帯機2が車室内にある状態で車両ドアリクエストスイッチが操作されたような場合、制御部11は警告指令を警告装置へ出力する。警告装置は、警告指令に従って、音又は光等を用いて車両の使用者に対して所定の警告を行う。
【0052】
更に、車載機1の制御部11には、図示しないエンジンスタートスイッチの操作状態に応じたエンジンスタート信号が入力する。制御部11は入力したエンジンスタート信号に基づいて、エンジンスタートスイッチの操作状態を認識することができる。制御部11は、エンジンスタートスイッチの操作状態、携帯機2が車室内にあるか否かと言った状況に応じて、エンジンを始動又は停止させるためのエンジン制御指令を、図示しないエンジンECUへ出力する。エンジンECUは、制御部11からのエンジン制御指令に従って、エンジンを始動し又は停止する。
【0053】
図3は携帯機2の一構成例を示すブロック図である。携帯機2は、該携帯機2の各構成部の動作を制御する制御部21を備える。制御部21には、受信部23、信号強度測定部23b、切替器23c、送信部22及び記憶部24が設けられている。
【0054】
制御部21は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、タイマ等を有するマイコンである。制御部21のCPUは入出力インタフェースを介して送信部22及び受信部23に接続されている。制御部21は記憶部24に記憶されている制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、携帯機2の車室内外判定に必要な情報を車載機1へ送信する各種処理を実行する。
【0055】
記憶部24は、記憶部14と同様の不揮発性メモリである。記憶部24は、制御部21が携帯機2の各構成部の動作を制御することにより、携帯機2の車室内外判定を行うための制御プログラムを記憶している。制御プログラムによって制御部21は、車室内外判定に必要な情報を含む応答信号等を車載機1へ送信する処理を実行する。また、記憶部24は、携帯機2を識別するための携帯機識別子を記憶している。
図3では制御部21及び記憶部24を別体の構成部として図示しているが、制御部21の内部に記憶部24を備えても良い。
【0056】
受信部23には、3つのコイルを互いに直交する方向に向けて配置した3軸アンテナ23aが切替器23cを介して接続されている。受信部23は、車載機1から送信される無線信号を、3軸アンテナ23a及び切替器23cを通じて受信する。3軸アンテナ23にて受信した3つの無線信号は切替器23cに入力する。切替器23cは、制御部21の制御に従って、一つの無線信号を選択する。受信部23は、切替器23cによって選択された無線信号から搬送波の成分を除去して受信信号を抽出し、抽出された受信信号を制御部21へ出力する回路である。搬送波としては30kHz〜300MHzのLow Frequency帯(LF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0057】
また携帯機2は車載機1から送信される無線信号を、3軸アンテナ23aを通じて受信し、切替器23cにより選択した無線信号の受信信号強度を測定し、測定された受信信号強度を制御部21へ出力する信号強度測定部23bを備える。
制御部21は車載機1から信号強度測定用の無線信号が送信されるタイミングに合わせて、3軸アンテナ23aからの3つの無線信号をそれぞれ選択し、選択された無線信号の受信信号強度を信号強度測定部23bによって測定する。つまり、制御部21は、車載機1から送信される無線信号の振幅方向における受信信号強度ではなく、3軸アンテナ23aの直交する3つの方向における該受信信号強度の成分を測定する。制御部21は、測定された受信信号強度の成分からベクトル計算を行い、車載機1から送信される無線信号の振幅方向における受信信号強度を算出する。従って、制御部21は、車両Cに対する携帯機2の向き又は姿勢に拘わらず一定の受信信号強度を得ることが可能となる。以下では、特に断らない限り、ベクトル計算によって算出された受信信号強度を、受信信号強度と呼ぶ。
なお、ここでは制御部21が受信信号強度を算出する例を説明したが、3軸アンテナ23aを通じて受信した各信号の受信信号強度を携帯機2から車載機1へ送信し、車載機1の制御部11が受信信号強度の算出を行っても良い。
【0058】
送信部22は、制御部21により入力された応答信号等を、搬送波を用いて変調し、送信アンテナ22aを通じて無線信号を送信する回路である。搬送波としては30kHz〜300MHzのLow Frequency帯(LF帯)を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0059】
次に車載機1の記憶部14が記憶している統計値について説明する。記憶部14は共通の車室内空間を包含する相異なる複数の領域を規定する統計値を記憶する。本実施形態1では、4つの領域として記憶部14は第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域を規定する統計値を記憶している。
【0060】
図4は第1領域61を示す概念図である。
図4Aは第1領域61の平面図、
図4Bは第1領域61の立面図である。第1領域61は3次元の空間であり、
図4に示すように車室の右内側面に倣う境界面を有し、共通の車室内空間を包含する形状である。従って、車室を構成する左側壁、後壁及びフロントガラス部分も第1領域61に包含されている。
図4中、ハッチングを付した部分が前記共通の車室内空間である。前記共通の車室内空間は、例えば車室内に居る使用者によって、携帯機2を配置させることが可能な空間である。
第1領域61の境界面と、車室の内側面とは完全には一致していないため、第1領域61における携帯機2の内外判定を行っても、携帯機2の車室内外判定を正確に行うことができない。しかし、少なくとも第1領域61の境界面の一部は、車室の右内側面と略一致しているため、携帯機2が車両Cの右側壁近傍にある場合に限れば、携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0061】
図5は第1領域61に係る標本抽出箇所を示す概念図である。第1領域61を規定する統計値は、車両用通信システムの製造工程において算出され、記憶部14は算出された統計値を記憶する。統計値は、複数の送信アンテナ(3)から送信された各信号を受信した携帯機2によって測定される受信信号強度の標本値に基づいて算出される。なお、受信信号強度の標本値を測定する装置は必ずしも携帯機2である必要は無く、携帯機2によって測定される受信信号強度に対応する信号の強度を測定できる測定機器であれば、特に限定されることは無い。
【0062】
受信信号強度の標本値は、携帯機2を車両Cの内外の特定箇所に配置して受信信号強度を測定することによって得られる。以下、複数箇所で測定された受信信号強度の集合を標本群と呼ぶ。記憶部14は第1領域61を規定する統計値として、第1領域61の内側を特徴付ける標本群に基づく第1統計値と、第1領域61の外側を特徴付ける標本群に基づく第2統計値とを記憶する。
【0063】
図5Aは第1統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の右側面の車室内側に沿う複数箇所並びに左側面の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第1統計値を算出する。破線の楕円は携帯機2を配置すべき箇所を示している。
本実施形態1における送信アンテナ(3)は4本であるため、1箇所で携帯機2が測定する受信信号強度は4つである。従って各箇所で得られる受信信号強度の標本はベクトル量であり、標本群はベクトルである標本の群である。4つの受信信号強度を成分として有するベクトルを受信信号強度ベクトルと呼ぶ。
ところで第1領域61の内側を特徴付ける標本群であるにも拘わらず、
図5Aに示すように該標本群の中に車室外で測定された受信信号強度の標本値が含まれている。これは第1領域61が車室内空間全体を包含するようにするためである。標本群の中に、左側面の車室内側及び車室外側で測定される標本値が含まれていない場合、該標本群は車両Cの右側面で測定される受信信号強度の標本値に偏重してしまう。標本群が車両Cの右側面で測定される標本値に偏重していると、該標本群によって特徴付けられる第1領域61の範囲から、車両Cの左側部分が外れてしまう。そこで、本実施形態1では、
図5Aに示すような箇所に携帯機2を配置し、受信信号強度の標本値を収集している。
【0064】
第1統計値は、例えば、第1領域61の内側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。標本群の平均ベクトルは下記式(1)及び(2)で表される。
図5Aに示す黒丸は前記平均ベクトルの概念的な位置を示している。
【0066】
第1領域61の内側を特徴付ける標本群の分散共分散行列は下記式(3)及び(4)で表される。逆分散共分散行列は、下記式(3)で表される分散共分散行列の逆行列であり、記憶部14は逆分散共分散行列を記憶している。
【0068】
図5Bは第2統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の右側面の車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第2統計値を算出する。第2統計値は、第1領域61の外側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。第2統計値である平均ベクトル及び逆分散共分散行列は、第1統計値と同様、上記式(1)〜(4)で表される。
図5Bに示す黒丸は、前記標本群の平均ベクトルの概念的な位置を示している。
【0069】
図6は第2領域62を示す概念図である。
図6Aは第2領域62の平面図、
図6Bは第2領域62の立面図である。第2領域62は3次元の空間であり、
図6に示すように車室の左側面に倣う境界面を有し、前記共通の車室内空間を包含する形状である。従って、車室を構成する右側壁、後壁及びフロントガラス部分も第2領域62に包含されている。
図6中、ハッチングを付した部分が前記共通の車室内空間である。
【0070】
記憶部14は第2領域62を規定する統計値として、第2領域62の内側を特徴付ける標本群に基づく第1統計値と、第2領域62の外側を特徴付ける標本群に基づく第2統計値とを記憶する。
【0071】
図7は第2領域62に係る標本抽出箇所を示す概念図である。第2領域62を規定する第1統計値及び第2統計値を算出するための受信信号強度の標本値は、
図7A及び
図7Bに示す車両Cの内外の特定箇所に携帯機2を配置して受信信号強度を測定することによって得られる。
【0072】
図7Aは第1統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の左側面の車室内側に沿う複数箇所並びに右側面の車室内側及び車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第1統計値を算出する。第1統計値は、第2領域62の内側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。
【0073】
図7Bは第2統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の左側面の車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第2統計値を算出する。第2統計値は、第1統計値と同様、第2領域62の外側を特徴付ける標本群の平均ベクトル及び逆分散共分散行列である。
【0074】
図8は第3領域63及び第4領域64を示す概念図である。第3領域63及び第4領域64は3次元の空間である。第3領域63は
図8Aに示すように車室の後側の内面に倣う境界面を有し、共通の車室内空間全体を包含するような形状である。第4領域64は
図8Bに示すように車室の前側の内面に倣う境界面を有し、共通の車室内空間全体を包含するような形状である。
【0075】
図9は車室内空間に対応する領域を示す概念図である。
図9中、ハッチングで示した範囲が車室内空間に対応する領域である。第1領域乃至第4領域61,62,63,64は共通の車室内空間を包含しており、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の境界面はそれぞれ車室の右側面、左側面、後面及び前面に倣っているため、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の全ての内側にある空間は車室内空間と略一致する。
【0076】
図10は、操作要求に対する処理の手順を示すフローチャートである。外部から操作要求があった場合、車載機1及び携帯機2は以下の処理を実行する。操作要求とは、例えば車両ドアリクエストスイッチの操作による車両ドアの施錠又は解錠の要求、エンジンスタートスイッチの操作によるエンジンの始動又は停止の要求等である。例えば、車両ドアリクエストスイッチの操作に応じたリクエスト信号が車載機1に入力した場合、エンジンスタートスイッチの操作に応じたエンジンスタート信号が携帯機1に入力した場合、車載機1は処理を開始する。
【0077】
車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、送信アンテナ(3)からウェイクアップ信号を送信させる(ステップS101)。
【0078】
ウェイクアップ信号を受信部23にて受信した携帯機2の制御部21は、スリープ状態からアクティブ状態へ起動し、自身の携帯機識別子を送信部22にて車載機1へ送信する(ステップS102)。
【0079】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された携帯機識別子を車載受信部12にて受信する。そして、制御部11は、受信した携帯機識別子を用いて認証用のデータを作成し、該データを含むチャレンジ信号を車載送信部13によって、送信アンテナ(3)から送信させる(ステップS103)。
【0080】
制御部21は、チャレンジ信号を受信部23にて受信し、受信したチャレンジ信号に含まれるデータを用いて車載機1の正当性を確認し、車載機1が正当であると確認された場合、車載機1が携帯機2を認証するためのデータを作成し、該データを含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する(ステップS104)。
【0081】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信し、受信した応答信号に含まれるデータを用いて携帯機2の認証を行う(ステップS105)。認証に成功したと判定した場合(ステップS105:YES)、制御部11は、携帯機2の車室内外判定処理のサブルーチンを実行する(ステップS106)。つまり、制御部11は、携帯機2が車室内にあるか、車室外にあるかの判定を行う。車室内外判定の結果は数値で表される。例えば携帯機2が車室内にある場合、車室内外判定結果の数値は1、車室外にある場合、車室内外判定結果の数値は0であるものとする。
【0082】
次いで、制御部11は、車室内外判定の結果と、操作要求の内容によって予め定められている期待値とが整合しているか否かを判定する(ステップS107)。例えば、車両ドアリクエストスイッチの操作によって車両ドアを解錠する操作に対する期待値は0であり、エンジンスタートの操作に対する期待値は1である。
【0083】
車室内外判定の結果と、期待値とが整合していると判定した場合(ステップS107:YES)、制御部11は、操作要求を受領し、操作要求に応じた処理を実行する(ステップS108)。例えば、車両ドアリクエストスイッチの操作が行われた場合、車両ドアの施錠又は解錠を指示する車両ドア制御信号をドアECUへ出力する処理を実行する。エンジンスタートスイッチの操作が行われた場合、エンジンを始動又は停止させるためのエンジン制御指令をエンジンECUへ出力する処理を実行する。
【0084】
車室内外判定の結果と、期待値とが整合していないと判定した場合(ステップS107:NO)、又は携帯機2の認証に失敗したと判定した場合(ステップS105:NO)、制御部11は、操作要求を棄却し、要求棄却に係る処理を実行し(ステップS109)、処理を終える。要求棄却に係る処理は、例えばエンジンスタートスイッチ操作が行われた場合であって、携帯機2が車室内に無い場合に警告音を発する等の処理である。なお、要求棄却に係る処理は必須では無い。
【0085】
図11は実施形態1における車室内外判定サブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。車載機1の制御部11は、車載送信部13によって、複数の各送信アンテナ(3)から車室内外判定のための受信信号強度測定用の信号を順次送信させる(ステップS111)。
【0086】
携帯機2の制御部21は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信部23にて受信し、信号強度測定部23bが測定した各信号の受信信号強度を取得する。そして、制御部21は、測定した受信信号強度を含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する。
【0087】
車載機1の制御部11は、携帯機2から送信された応答信号を車載受信部12にて受信する(ステップS112)。次に制御部11は、車載受信部12が受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機2が、第1領域乃至第4領域61,62,63,64それぞれの内側にあるか否かを領域毎に判定する処理をステップS113〜ステップS118にて実行する。ステップS113〜ステップS118の処理は第1領域乃至第4領域61,62,63,64毎に実行される処理であるが、主に第1領域61に係る処理を代表的な例として説明する。
【0088】
制御部11は第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内、一の領域の統計値、即ち第1統計値及び第2統計値を記憶部14から読み出す(ステップS113)。例えば、制御部11は第1領域61の第1統計値及び第2統計値を記憶部14から読み出す。
【0089】
そして、制御部11は、ステップS112で受信した応答信号に含まれる受信信号強度、及びステップS113で読み出した第1統計値に基づいて、前記受信信号強度と、該第1統計値に係る標本群との統計距離を算出する(ステップS114)。ステップS113で第1領域61の第1統計値を読み出した場合、制御部11は、応答信号に含まれる受信信号強度と、第1領域61の内側を特徴付ける標本群との統計距離を算出する。統計距離は例えばマハラノビス距離である。マハラノビス距離は下記式(5)により表される。
【0092】
次いで、制御部11は、ステップS112で受信した応答信号に含まれる受信信号強度、及びステップS113で読み出した第2統計値に基づいて、前記受信信号強度と、該第2統計値に係る標本群との統計距離を算出する(ステップS115)。ステップS113で第1領域61の第2統計値を読み出した場合、制御部11は、応答信号に含まれる受信信号強度と、第1領域61の外側を特徴付ける標本群との統計距離を算出する。統計距離は例えばマハラノビス距離である。
【0093】
そして、制御部11は、ステップS114で算出した統計距離と、ステップS115で算出した統計距離とを比較することによって、携帯機2が前記一の領域の内側にあるか否かを判定する(ステップS116)。例えば、第1領域61の内側を特徴付ける標本群との統計距離が、第1領域61の外側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、制御部11は携帯機2が第1領域61の内側にあると判定する。第1領域61の外側を特徴付ける標本群との統計距離が、第1領域61の内側を特徴付ける標本群との統計距離より短い場合、制御部11は携帯機2が第1領域61の外側にあると判定する。
【0094】
携帯機2が前記一の領域の外側にあると判定した場合(ステップS116:NO)、制御部11は、携帯機2が車室外にあると判定し(ステップS117)、サブルーチンの処理を終える。
携帯機2が前記一の領域の内側にあると判定した場合(ステップS116:YES)、制御部11は、全領域における携帯機2の内外判定を終了したか否かを判定する(ステップS118)。つまり、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を全て終了したか否かを判定する。携帯機2の内外判定を終了していない領域があると判定した場合(ステップS118:NO)、制御部11は処理をステップS113へ戻し、内外判定が行われていない他の領域における携帯機2の内外判定処理を実行する。
【0095】
全領域における携帯機2の内外判定を終了したと判定した場合(ステップS118:YES)、制御部11は、携帯機2が車室内にあると判定し(ステップS119)、サブルーチンの処理を終える。
【0096】
図12は受信信号強度の分布を示すグラフである。横軸は第1送信アンテナ31から送信された信号の受信信号強度を示し、縦軸は第2送信アンテナ32から送信された信号の受信信号強度を示す。説明を簡単にするために
図12は、2次元の受信信号強度の分布を示している。
図12は特に第1領域61及び第2領域62における複数箇所に携帯機2を配置し、第1送信アンテナ31及び第2送信アンテナ32から送信された信号を携帯機2が受信して測定した受信信号強度をプロットしたグラフである。グラフの下側は運転席側の車室外、左側は助手席側の車室外、中央部分及び右上部分は車室内にそれぞれ対応している。
なお、ここでは2次元グラフを用いて説明を簡単化するために、第1領域61及び第2領域62の内側及び外側で得られた標本が2つの受信信号強度、つまり運転席側の送信アンテナ31からの受信信号強度と、助手席側の送信アンテナ32からの受信信号強度を含むものとして説明するが、本発明の態様は言うまでもなく、2つの受信信号強度を用いた処理に限定されるものでは無い。
【0097】
G1outは、運転席側の車室外に配された携帯機2が測定し得る受信信号強度の範囲を示し、G1inは、運転席側の車室内に配された携帯機2が測定し得る受信信号強度の範囲を示している。
G2outは、助手席側の車室外に配された携帯機2が測定し得る受信信号強度の範囲を示し、G2inは、助手席側の車室内に配された携帯機2が測定し得る受信信号強度の範囲を示している。
【0098】
[運転席側領域の説明]
上下に凸の破線は、第1領域61の内側の標本群と、外側の標本群との統計距離が等しくなる受信信号強度の集合であり、携帯機2が第1領域61の内側及び外側のいずれに位置するかは当該集合により区別される。2本の破線で挟まれた範囲は第1領域61の内側に対応している。
図12に示すように破線によって、運転席側の車室内で測定される受信信号強度の範囲G1inは内側、運転席側の車室外で測定される受信信号強度の範囲G1outは外側として正確に区分けされている。ただし、内側としては、助手席側の車室内で測定されるG2inと、助手席側の車室外で測定されるG2outとが含まれている。つまり、第1領域61は共通の車室内空間を包含しており、
図4A及び
図4Bに示す様に内外を区別している。
【0099】
[助手席側領域の説明]
左右に凸の点線は、第2領域62の内側の標本群と、外側の標本群との統計距離が等しくなる受信信号強度の集合であり、携帯機2が第2領域62の内側及び外側のいずれに位置するかは当該集合により区別される。2本の点線で挟まれた範囲は、第2領域62の内側に対応している。
図12に示すように点線によって、助手席側の車室内で測定される受信信号強度の範囲G2inは内側、助手席側の車室外で測定される受信信号強度の範囲G2outは外側と正確に区分けされている。ただし、内側として、運転席側の車室内で測定されるG1inと、運転席側の車室外で測定されるG1outとが含まれている。つまり、第2領域62は共通の車室内空間を包含しており、
図6A及び
図6Bに示す様に内外を区別している。
【0100】
[第1領域と第2領域]
ステップ118及びステップS119において携帯機2が共通の車室内空間の内側に存在すると判定されるためには、領域1での内外判定と領域2での内外判定で内側と判定される必要がある。従って、ステップ118及びステップS119によって、携帯機2が「共通の車室内空間」の内側及び外側のいずれにあるかの車室内外判定を、運転席側側面境界及び助手席側側面境界において精度良く実現することが可能である。
【0101】
[第3領域と第4領域]
上記により、運転席側側面と助手席側側面の境界において携帯機1の車室内外判定を精度良く行えることを説明したが、必要があれば同様の手法で他の境界における内外判定を加えることも可能である。例えば車両後方境界及び車両前方境界に倣う第3領域63及び第4領域64を加えて、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を行うように構成しても良い。この場合、携帯機2が「共通の車室内空間」の内側及び外側のいずれにあるかの車室内外判定を、運転席側側面境界、助手席側側面境界、車両後方境界、車両前方境界において精度良く実現することが可能である。
【0102】
次に比較例を挙げて、本実施形態1に係る車両用通信システムの効果を説明する。
図13は第1領域61の比較例に係る標本抽出箇所を示す概念図である。第1領域61の比較例の領域を規定する第1統計値及び第2統計値を算出するための受信信号強度の標本値は、
図13A及び
図13Bに示す車両Cの内外の特定箇所に携帯機2を配置して受信信号強度を測定することによって得られる。第1領域61の比較例を第1比較例領域と呼ぶ。
【0103】
図13Aは第1統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の右側面の車室内側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第1統計値を算出する。
図13Bは第2統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の右側面の車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第2統計値を算出する。
【0104】
図14は第1比較例領域161を示す概念図である。
図14Aは第1比較例領域161の平面図、
図14Bは第1比較例領域161の立面図である。
図14中、ハッチングを付した部分が本実施形態1における前記共通の車室内空間である。第1比較例領域161は3次元の空間であり、
図14A及び
図14Bに示すように車室の右側面に倣う境界面を有するが、車室内空間全体を包含しない形状である。つまり、
図14Bに示すように、車室内と判定される第1比較例領域161は、前記共通の車室内空間を包含しない形状である。
【0105】
図15は第2領域62の比較例に係る標本抽出箇所を示す概念図である。第2領域62の比較例の領域を規定する第1統計値及び第2統計値を算出するための受信信号強度の標本値は、
図15A及び
図15Bに示す車両Cの内外の特定箇所に携帯機2を配置して受信信号強度を測定することによって得られる。第2領域62の比較例を第2比較例領域と呼ぶ。
【0106】
図15Aは第1統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の左側面の車室内側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第1統計値を算出する。
図15Bは第2統計値を算出する元になる標本値を得るための携帯機2の配置を示している。具体的には、車室の左側面の車室外側に沿う複数箇所に携帯機2を配置し、それぞれの箇所で携帯機2が受信する信号の受信信号強度を測定する。そして、測定された受信信号強度の標本値に基づいて第2統計値を算出する。
【0107】
図16は第2領域62の比較例を示す概念図である。
図16Aは第2比較例領域162の平面図、
図16Bは第2比較例領域162の立面図である。
図16中、ハッチングを付した部分が本実施形態1における前記共通の車室内空間である。第2比較例領域162は3次元の空間であり、
図16A及び
図16Bに示すように車室の左側面に倣う境界面を有するが、車室内空間全体を包含しない形状である。つまり、
図16Bに示すように、車室内と判定される第2比較例領域162は、前記共通の車室内空間を包含しない形状である。
【0108】
図17は比較例に係る受信信号強度の分布を示すグラフである。
図17のグラフは
図12と同様のグラフであり、G1out,G1in,G2out,G2inの範囲も
図12で説明した範囲と同様である。
図17に示す部分集合1〜4については実施形態2において説明する。
【0109】
図17Aに示す曲線は、第1比較例領域161の内側の標本群と、外側の標本群との統計距離が等しくなる受信信号強度を結んだ曲線である。2本の曲線で挟まれた範囲は、第1比較例領域161の内側に対応している。ところが、
図17Aに示す曲線によって挟まれる範囲の外側に、助手席側の車室内で測定される受信信号強度の範囲G2inの一部がはみ出ている。楕円で示す範囲が、範囲G2inの一部がはみ出している部分である。従って、第1比較例領域161によって車室内外判定を正確に行うことはできない。
【0110】
図17Bに示す曲線は、第2比較例領域162の内側の標本群と、外側の標本群との統計距離が等しくなる受信信号強度を結んだ曲線である。2本の曲線で挟まれた範囲は、第2比較例領域162の内側に対応している。ところが、
図17Bに示す曲線によって挟まれる範囲の外側に、運転席側の車室内で測定される受信信号強度の範囲G1inの一部がはみ出ている。楕円で示す範囲が、範囲G1inの一部がはみ出している部分である。従って、第2比較例領域162によって車室内外判定を正確に行うことはできない。
【0111】
また仮に第1比較例領域161及び第2比較例領域162の双方を用いた内外判定を行ったとしても、車室内で測定される受信信号強度の範囲G1in,G2inと、車室外で測定される受信信号強度G1out,G2outとを判別することはできない。
【0112】
上述の比較例に対して本実施形態1によれば、
図12に示すような第1領域61及び第2領域62における携帯機2の内外判定をそれぞれ行い、全領域の内側にあるか否かを判定することにより、携帯機2の車室内外判定を正確に行うことができる。
【0113】
以上の通り、本実施形態1に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を行うことにより、携帯機2が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを精度良く判定することができる。
【0114】
また、本実施形態1によれば、第1領域乃至第4領域61,62,63,64は車室の内側面の一部に倣う境界面を有する。従って、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を行うことによって、前記車室の前記一部における車室内外判定を精度良く行うことができる。
なお、本実施形態1では第1領域乃至第4領域61,62,63,64を用いて車室内外判定を行う例を説明したが、かかる実施形態に限定されるものでは無く、第1領域61及び第2領域62の2つの領域を用いて携帯機2の車室内外判定を行っても良い。また、第1領域乃至第3領域61,62,63の3つの領域を用いて携帯機2の車室内外判定を行っても良い。更に、第1領域乃至第4領域61,62,63,64から任意に選択される2つ若しくは3つの領域、又は図示しない5つ以上の領域を用いて携帯機2の車室内外判定を行っても良い。
【0115】
更に、車室の右内側面に倣う境界面を有する第1領域61と、左内側面に倣う境界面を有する第2領域62とを用いることによって、車室の右側面及び左側面における携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0116】
更にまた、車室の後側の内面に倣う境界面を有する第3領域63を用いることによって、車室の後面における携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0117】
更にまた、車室の前側の内面に倣う境界面を有する第4領域64を用いることによって、車室の前面における携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0118】
更に、車載機1は、第1領域61及び第2領域62の内側及び外側をそれぞれ特徴付ける第1統計値及び第2統計値を用いて携帯機2の車室内外判定を行う。第1統計値及び第2統計値は、
図5及び
図7に示すように、車両Cの右内側面及び左内側面の車室内側及び車室外側に沿った複数箇所で測定された受信信号強度の標本群に基づいて算出される。第1統計値及び第2統計値を算出するための標本群として、前記標本群を用いることにより、無作為に膨大な標本群を作成する場合に比べて、第1領域61及び第2領域62における携帯機2の内外判定を行うための統計値の作成に要する工数を効果的に抑えることができる。
【0119】
なお、本実施形態1では、第1領域61及び第2領域62の内側及び外側をそれぞれ特徴付ける第1統計値及び第2統計値を算出する元になる標本群の受信信号強度を、
図5及び
図7に示した箇所で測定する例を説明したが、かかる測定箇所は一例である。例えば第1領域61に係る第1統計値を算出する元になる標本群は、少なくとも車室の右側面の車室内側に沿う複数箇所と、車室外側に沿う複数箇所とで受信信号強度を測定し、該第1領域61が共通の車室内空間を包含するようにすれば十分である。また第2領域62、第3領域63及び第4領域64についても同様である。
このようにして得られた第1統計値及び第2統計値を用いた場合も、上述の車両用通信システムと同様の効果を奏する。
【0120】
更にまた、車載機1は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内側及び内側を特徴付ける標本群との統計距離を、第1統計値及び第2統計値に基づいて算出し、算出された統計距離を比較することによって、車載機1の車室内外判定を行うことができる。具体的には、マハラノビス距離の算出、及び各マハラノビス距離の比較といった簡単な演算によって、携帯機2の車室内外判定を精度良く行うことができる。
【0121】
(変形例1)
本実施形態1では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を説明したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例1に係る車両用通信システムの構成は、実施形態1の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。変形例1の携帯機2は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64を規定する第1統計値及び第2統計値、並びに本願のコンピュータプログラムを記憶部24に記憶している。
変形例1の車両用通信システムでは、
図11で説明したステップS111〜ステップS119の処理を携帯機2の制御部11が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。具体的な処理手順は以下の通りである。
【0122】
車載機1は、複数の各送信アンテナ(3)から信号を順次送信する。携帯機2の制御部21は、各送信アンテナ(3)から送信された信号を受信部23にて受信し、信号強度測定部23bが測定した各信号の受信信号強度を取得する。次いで、制御部21は第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内、一の領域の第1統計値及び第2統計値を記憶部24から読み出す。
【0123】
そして、制御部21は、測定した受信信号強度と、第1統計値に係る標本群との統計距離を算出する。また、制御部21は、測定した受信信号強度と、第2統計値に係る標本群との統計距離を算出する。そして、制御部21は、算出した各統計距離とを比較することによって、携帯機2が前記一の領域の内側にあるか否かを判定する。
次いで、制御部21は、全領域における携帯機2の内外判定を終了したか否かを判定する。携帯機2の内外判定を終了していない領域があると判定した場合、制御部21は、内外判定が行われていない他の領域における携帯機2の内外判定処理を実行する。制御部21は、携帯機2が全ての領域の内側にあると判定した場合、携帯機2が車室内にあると判定する。また、制御部21は、複数の流域のいずれか一つの外側にあると判定した場合、携帯機2は車室外にあると判定する。そして、携帯機2の制御部21は、携帯機2の車室内外判定結果を含む応答信号を送信部22にて車載機1へ送信する。
車載機1は携帯機2から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる車室内外判定結果に応じて、所定処理を実行する。例えば、車載機1は車両ドアの施錠又は解錠処理を実行する。
【0124】
変形例1によれば、実施形態1と同様、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を行うことにより、携帯機2が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを精度良く判定することができる。その他の効果も実施形態1と同様である。
【0125】
なお、本実施形態1及び変形例1では主に運転席リクエストスイッチ51が操作された場合における携帯機2の車室内外判定を例示したが、携帯機2の車室内外判定を要する各種処理に本発明を適用することができる。例えば、原動機始動時に携帯機2が車室内にあるかどうかの確認、原動機動作中に携帯機2車室内にあるか否かの確認、携帯機2が車室内に閉じこめられることを防止するための携帯機2の位置確認等の各種処理に本発明を適用することができる。
【0126】
また、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内外判定をマハラノビス距離によって行う例を説明したが、マハラノビス距離は統計距離の一例であり、測定された受信信号強度と、特定の標本群との近似度を判定できれば、他の任意の統計距離、類似度等の統計値を用いても良い。
【0127】
更に、車室内外判定を第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内外判定によって行う例を説明したが、第1領域乃至第4領域61,62,63,64は一例であり、車室内空間の内面の一部に倣う境界面を有する領域を用いた内外判定を行う構成であれば、車両用通信システムの任意の変形が可能である。例えば、第1領域乃至第4領域61,62,63,64のいずれか2つ、又は3つを用いて、携帯機2の車室内外判定を行っても良い。また、本実施形態2とは形状が異なる2つ以上の他の領域を用いて携帯機2の車室内外判定を行っても良い。
【0128】
更にまた、本実施形態1の車両用通信システムでは、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内側及び外側を特徴付ける統計値として、平均ベクトル及び逆分散共分散行列を記憶部14が記憶している例を説明したが、各領域の内外判定を可能にする情報であれば、その内容及び記憶方法は特に限定されない。例えば、記憶部14が平均ベクトル及び分散共分散行列を記憶していても良いし、標本群自体を記憶しても良い。また、統計値等の情報はコンピュータプログラム10aと別形態の情報であっても良いし、コンピュータプログラム10aに組み込まれた情報であっても良い。
【0129】
更にまた、
図5及び
図7に示した標本群の抽出箇所は一例であり、車室内空間の内面の一部に倣う境界面を有し、車室内空間全体を包含する領域を規定できれば、他の箇所で測定された受信信号強度の標本群を用いて、該領域の統計値を算出しても良い。
【0130】
(実施形態2)
本実施形態2に係る車両用通信システムは、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における内外判定を、統計値に代えて判別式を用いて行うものである。実施形態2に係る車両用通信システム及びコンピュータプログラムは、車載機1の記憶部14が記憶している情報の内容と、制御部11の処理手順が実施形態1と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0131】
車載機1の記憶部14は、複数の送信アンテナ(3)から送信された信号の受信信号強度によって、携帯機2が第1領域61の内側にあるか外側にあるかを判別するための判別式を記憶している。受信信号強度は、実施形態1と同様、携帯機2の受信信号測定部23bによって測定されるものである。第1領域61は制御部11によって携帯機2の内外判定が行う一つの領域であり、携帯機2が内側にあるか外側にあるか判定をしたい「共通の車室内空間」を包含する。
言い換えると、記憶部14は、運転席側の車室外で測定される受信信号強度と、それ以外の箇所で測定される受信信号強度とを判別する判別式を記憶している。判別式は、例えば、第1領域61の内側を特徴付ける標本群と、第1領域61の外側を特徴付ける標本群とのマハラノビス距離が等しくなる受信信号強度を結ぶ曲線の近似式である。
【0132】
前記判別式の作成方法の概要は次の通りである。まず、車両Cの右側面の内側の標本群と、車両Cの右側面の外側の標本群との統計距離が等距離となる点の全体集合を特定する。そして、携帯機2が車室内にあるか車室外にあるか判定をしたい「共通の車室内空間」を包含させることが可能な部分集合を前記全体集合から抽出する。そして、抽出された部分集合の近似曲線を最小自乗法により多項式で近似する。詳細は以下の通りである。
【0133】
携帯機2が第1領域61の内側にあるか、外側にあるかを判別するための多項式の作成には、まず第1領域61の内側を特徴付ける標本群と、第1領域61の外側を特徴付ける標本群を用いて、各標本群との統計距離が等しくなる点の全体集合を求める。この際2次元平面上に全体集合をプロットできる様に、第1領域61の内側及び外側で得られる標本は2つの受信信号強度を含む2次元の標本とする。前記全体集合には
図17Aに示す2本の曲線上にある点の部分集合1及び部分集合2が含まれる。
【0134】
部分集合1及び部分集合2からなる全体集合によって区分けされる領域は、
図17Aに示す統計距離が等しい点の集合により、
図14A及び
図14Bに示す様な領域となる。
図14に示すように前記領域において点線で囲まれる領域が内と判定され、点線で囲まれる領域の外側が外と判定される。
図14A及び
図14Bにおいて、ハッチングが付された部分は共通の車室内空間である。
図14Bで顕著な様に内と判定される領域に、共通の車室内空間の一部が含まれないことが判る。これは
図17に示す部分集合1の内外判別により引き起こされるものである。
【0135】
第1領域61に携帯機2の車室内外判定を行いたい「共通の車室内空間」を包含させるために、
図17Aに示す統計距離が等しい点の集合である部分集合1及び部分集合2から、部分集合2だけを抽出する。部分集合2により区分けされる領域は、
図4A及び
図4Bの様になり、該領域は最終的に携帯機2が内にあるか外にあるかを判定したい「共通の車室内空間」を含む第1領域61になる。
【0136】
図17Aから抽出した部分集合2の多項式を最小自乗法により求め、第1領域61の内外を判定するための多項式とする。第1領域61における携帯機2の内外判定を行う場合の判別式は下記式(7)によって表される。
【0138】
また、記憶部14は、複数の送信アンテナ(3)から送信された信号の受信信号強度によって、携帯機2が第2領域62の内側にあるか外側にあるかを判別するための判別式を記憶している。第2領域62は制御部11によって携帯機2の内外判定が行う一つの領域であり、携帯機2が車室内にあるか車室外にあるか判定をしたい「共通の車室内空間」を包含する。
【0139】
第2領域62の判別式の作成方法は第1領域61に係る判別式の作成方法と同様である。
【0140】
前記判別式の作成方法の概要は次の通りである。まず、車両Cの左側面の内側の標本群と、車両Cの左側面の外側の標本群との統計距離が等距離となる点の全体集合を特定する。そして、携帯機2が車室内にあるか車室外にあるか判定をしたい「共通の車室内空間」を包含させることが可能な部分集合を前記全体集合から抽出する。そして、抽出された部分集合の近似曲線を最小自乗法により多項式で近似する。詳細は以下の通りである。
【0141】
携帯機2が第2領域62の内側にあるか、外側にあるかを判別するための多項式の作成には、まず第2領域62の内側を特徴付ける標本群と、第2領域62の外側を特徴付ける標本群を用いて、各標本群との統計距離が等しくなる点の全体集合を求める。この際2次元平面上に全体集合をプロットできる様に、第2領域62の内側及び外側で得られる標本は2つの受信信号強度を含む2次元の標本とする。前記全体集合は
図17Bに示す2本の曲線上にある点の部分集合3及び部分集合4が含まれる。
【0142】
第2領域62に携帯機2の車室内外判定を行いたい「共通の車室内空間」を包含させるために、
図17Bに示す統計距離が等しい点の集合である部分集合3及び部分集合4から、部分集合3だけを抽出する。部分集合3により区分けされる領域は、
図6A及び
図6Bの様になり、該領域は最終的に携帯機2が内にあるか外にあるかを判定したい「共通の車室内空間」を含む第2領域62になる。
【0143】
図17Bから抽出した部分集合3の多項式を最小自乗法により求め、第2領域62の内外を判定するための多項式とする。第2領域62における携帯機2の内外判定を行う場合の判別式は上記式(7)によって表される。
【0144】
図18は実施形態2における車室内外判定サブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。車載機1は、受信信号強度の測定、応答信号の受信に係る実施形態1と同様の処理(ステップS111〜ステップS112)を、ステップS211〜ステップS212で実行する。
【0145】
次いで、車載機1の制御部11は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内、一の領域の判別式を記憶部14から読み出す(ステップS213)。そして、制御部11は、受信した応答信号に含まれる受信信号強度と、ステップS215で読み出した判別式とを用いて、前記一の領域における携帯機2の内外判定を行う(ステップS214)。例えば、受信信号強度ベクトルが2次元である場合、応答信号に含まれる一の受信信号強度を上記式(7)のχ1に代入して得られる関数値Yと、該応答信号に含まれる他の受信信号強度とを比較することによって、内外判定を行うことができる。
【0146】
以下、各領域における携帯機2の内外判定、車室内外判定に係る実施形態1と同様の処理(ステップS117〜ステップS119)を、ステップS215〜ステップS217で実行する。
【0147】
図19は実施形態2に係る判定式の曲線及び受信信号強度の分布を示すグラフである。
図19のグラフは
図12と同様のグラフであり、G1out,G1in,G2out,G2inの範囲も
図12で説明した範囲と同様である。
細線は、第1領域61に係る判別式の多項式により内外が区別される境界であり、細線より下側が第1領域61の外側であり、細線より上側が第1領域61の内側である。該細線に対応する近似曲線によって、運転席側の車室外及び車室内で測定される受信信号強度の範囲G1out,G1inが正確に区分けされている。
太線は、第2領域62に係る判定式の多項式により内外が区別される境界であり、太線より左側が第2領域62の外側であり、太線より右側が第2領域62の内側である。該太線に対応する近似曲線によって、助手席側の車室外及び車室内で測定される受信信号強度の範囲G2out,G2inが正確に区分けされている。
前記細線及び太線に対応する判別式の多項式によれば、車室内で測定される受信信号強度の範囲G1in,G2inと、車室外で測定される受信信号強度G1out,G2outとを判別することが可能である。
【0148】
以上の通り、本実施形態2に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、第1領域61及び第2領域62における携帯機2の内外判定を各領域に共通の室内空間を含ませる様に調整した多項式を用いて行うため、携帯機2が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを実施形態1よりも精度良く判定することができる。また、実施形態1と同様、判別式の作成に要する工数を抑えることができる。
【0149】
なお、本実施形態2に係る判別式の次元及び形式は特に限定されるものでは無い。
上記により、運転席側側面と助手席側側面の境界において携帯機1の車室内外判定を精度良く行えることを説明したが、必要があれば同様の手法で他の境界における内外判定を加えることも可能である。例えば車両後方境界及び車両前方境界に倣う第3領域63及び第4領域64を加えて、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を行うように構成しても良い。この場合、携帯機2が「共通の車室内空間」の内側及び外側のいずれにあるかの車室内外判定を、運転席側側面境界、助手席側側面境界、車両後方境界、車両前方境界において精度良く実現することが可能である。
【0150】
(変形例2)
本実施形態2では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を説明したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例2に係る車両用通信システムの構成は、実施形態2の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。変形例2の携帯機2は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を行うための判別式、並びに本願のコンピュータプログラムを記憶部24に記憶している。変形例2の車両用通信システムでは、
図18で説明したステップS211〜ステップS217の処理を携帯機2の制御部11が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。
【0151】
変形例2によれば、本実施形態2と同様、第1領域61及び第2領域62における携帯機2の内外判定を行うことにより、携帯機2が車室内空間の内側又は外側のいずれに位置するかを精度良く判定することができる。その他の効果は実施形態1及び2と同様である。
【0152】
(実施形態3)
本実施形態3に係る車両用通信システムは、応答信号に含まれる受信信号強度の内、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内外判定に適した一部の受信信号強度を用いて、実施形態1と同様の車室内外判定を行うものである。実施形態3に係る車両用通信システム及びコンピュータプログラムは、車載機1の記憶部14が記憶している統計値の内容と、制御部11の処理手順が実施形態1と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0153】
記憶部14は、実施形態1と同様、第1領域乃至第4領域61,62,63,64それぞれの第1統計値及び第2統計値を記憶している。但し、各統計値の算出に用いられる標本群の受信信号強度が、領域毎に異なる。例えば、受信信号強度ベクトルは4つの受信信号強度を有するが、第1領域61における携帯機2の内外判定の精度を向上させる受信信号強度もあれば、影響しない受信信号強度、内外判定精度を悪化させる受信信号強度もある。そこで、第1領域乃至第4領域61,62,63,64毎に異なる受信信号強度を用いて算出された第1統計値及び第2統計値を記憶部14は記憶している。例えば、第1領域61に関しては第2送信アンテナ32、第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34から送信される信号の受信信号強度を用いて第1統計値及び第2統計値を算出する。第2領域62に関しては、第1送信アンテナ31、第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34から送信される信号の受信信号強度を用いて第1統計値及び第2統計値を算出する。また、記憶部14は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64毎に、4つの受信信号強度の内、いずれの受信信号強度を領域の内外判定に用いるかを示した情報を記憶している。
【0154】
図20は実施形態3における車室内外判定サブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。車載機1及び携帯機2は、受信信号強度の測定、応答信号の受信、統計値の読み出しに係る実施形態1と同様の処理(ステップS111〜ステップS113)を、ステップS311〜ステップS313で実行する。
【0155】
次いで、車載機1の制御部11は、応答信号に含まれる受信信号強度の内、判定対象の領域における携帯機2の内外判定を行うために用いるべき成分を選択する(ステップS314)。以下、ステップS314で選択された受信信号強度を用いて、各領域における携帯機2の内外判定、車室内外判定に係る実施形態1と同様の処理(ステップS114〜ステップS119)を、ステップS311〜ステップS321で実行する。
【0156】
以上の通り、本実施形態3に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、受信信号強度ベクトルの成分の一部を用いて、各領域の内外判定を行う構成であるため、効率的に携帯機2の車室内外判定を行うことができる。また、利用する受信信号強度ベクトルの成分を削減することによって、携帯機2の車室内外判定精度を損なうこと無く、各領域における携帯機2の内外判定を行う統計値の作成工数を抑えることができる。
【0157】
(変形例3)
本実施形態3では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を説明したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例3に係る車両用通信システムの構成は、実施形態3の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。変形例3の携帯機2は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64を規定する第1統計値及び第2統計値、並びに本願のコンピュータプログラムを記憶部24に記憶している。変形例3の車両用通信システムでは、
図20で説明したステップS315〜ステップS321の処理を携帯機2の制御部11が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。
【0158】
変形例3によれば、実施形態3と同様、受信信号強度ベクトルの成分の一部を用いて、各領域の内外判定を行う構成であるため、効率的に携帯機2の車室内外判定を行うことができる。その他の効果は実施形態1及び実施形態3と同様である。
【0159】
(実施形態4)
本実施形態4に係る車両用通信システムは、応答信号に含まれる受信信号強度の内、第1領域乃至第4領域61,62,63,64の内外判定に適した一部の受信信号強度を用いて、実施形態2と同様の車室内外判定を行うものである。実施形態4に係る車両用通信システム及びコンピュータプログラムは、車載機1の記憶部14が記憶している判別式の内容と、制御部11の処理手順が実施形態2と異なるため、以下、主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態2と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0160】
記憶部14は、実施形態2と同様、第1領域乃至第4領域61,62,63,64それぞれに対応する判別式を記憶している。但し、各判別式の算出に用いられる標本群の受信信号強度が領域毎に異なり、第1領域乃至第4領域61,62,63,64毎に異なる受信信号強度を用いて算出された判別式を記憶部14は記憶している。例えば、第1領域61に関しては第2送信アンテナ32、第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34から送信される信号の受信信号強度を用いて第1領域61に係る判別式を算出する。第2領域62に関しては、第1送信アンテナ31、第3送信アンテナ33及び第4送信アンテナ34から送信される信号の受信信号強度を用いて第2領域62に係る判別式を算出する。また、記憶部14は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64毎に、4つの受信信号強度の内、いずれの受信信号強度を領域の内外判定に用いるかを示した情報を記憶している。
【0161】
車載機1及び携帯機2は、受信信号強度の測定、応答信号の受信、判別式の読み出しに係る実施形態2と同様の処理(ステップS211〜ステップS213)を実行する。
【0162】
次いで、車載機1の制御部11は、応答信号に含まれる受信信号強度の内、判定対象の領域における携帯機2の内外判定を行うために用いるべき成分を選択する。以下、選択された受信信号強度を用いて、各領域における携帯機2の内外判定、車室内外判定に係る実施形態2と同様の処理(ステップS214〜ステップS217)を実行する。
【0163】
以上の通り、本実施形態4に係る車両用通信システム及び車載機1によれば、受信信号強度ベクトルの成分の一部を用いて、各領域の内外判定を行う構成であるため、効率的に携帯機2の車室内外判定を行うことができる。また、利用する受信信号強度ベクトルの成分を削減することによって、携帯機2の車室内外判定精度を損なうこと無く、各領域における携帯機2の内外判定を行う判別式の作成工数を抑えることができる。
【0164】
(変形例4)
本実施形態4では、車載機1が携帯機2の車室内外判定を行う例を説明したが、携帯機2自身が車室内外判定を行うように構成しても良い。変形例4に係る車両用通信システムの構成は、実施形態4の構成と同様であり、車載機1及び携帯機2を備える。変形例4の携帯機2は、第1領域乃至第4領域61,62,63,64における携帯機2の内外判定を行うための判別式並びに本願のコンピュータプログラムを記憶部24に記憶している。変形例4の車両用通信システムでは、上述した処理を携帯機2の制御部11が実行し、車室内外判定結果を車載機1へ送信する。
【0165】
変形例4によれば、実施形態4と同様、受信信号強度ベクトルの成分の一部を用いて、各領域の内外判定を行う構成であるため、効率的に携帯機2の車室内外判定を行うことができる。その他の効果は実施形態2及び実施形態4と同様である。
【0166】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。