【解決手段】車体に開閉可能に支持されたバックドア2の操作力をアシストするアクチュエータ5と、バックドア2の先端部2aに設けられ、バックドア2の開閉移動を検出するドア先端センサ20と、ドア先端センサ20がバックドア2の先端部2aの開または閉方向への移動を検出したことに基づいて、アクチュエータ5を開駆動制御または閉駆動制御を行う制御装置23とを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載されたパワードア開閉装置においては、アクチュエータとバックドアとの連結経路間にがたが必然的に発生するため、操作者がバックドアの手動操作を開始してから、アクチュエータ内のロータリエンコーダがバックドアの動きを検出するまでにがた分に相当するタイムラグが発生し、アシスト力を速やかに付与することができないという問題がある。
【0005】
そのため、バックドアの手動操作の初期に大きな操作力を必要とするとともに、アシスト力を付与する際に引っかかり感を生じ、手動操作に違和感が生じることとなる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、手動操作の開始からアシスト開始までの時間を短縮することにより、手動操作時の操作性をよくするようにしたパワードア開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
第1の発明は、車体に開閉可能に支持されたドアの操作力をアシストするアクチュエータと、前記ドアの先端部に設けられ、前記ドアの開閉移動を検出するドア先端センサと、前記ドア先端センサが前記ドアの先端部の開または閉方向への移動を検出したことに基づいて、前記アクチュエータを開駆動制御または閉駆動制御を行う制御装置とを備えることを特徴としている。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記ドアは、付勢手段の付勢力により少なくとも開方向へ付勢され、前記付勢手段は、環境温度で前記バックドアに付与する付勢力が変化する構成であって、前記制御装置は、前記付勢手段またはその近傍に設置される温度センサの検出温度に応じたデューティ比により前記アクチュエータを駆動制御することを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記制御装置は、前記ドアの角度に応じたデューティ比により前記アクチュエータを駆動制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ドアの開閉移動を検出しうるドア先端センサをドアの先端部に設け、ドア先端センサがドアの先端部の移動を検出したことに基づいて、ドアの手動開閉操作にアクチュエータのアシスト力を付与するようにしたことにより、ドアの手動操作の開始からアシスト開始までの時間を短縮することができ、もって手動操作時の操作性をよくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るパワードア開閉装置を備える車両を斜め後方から見た斜視図であり、車体1の後上部には、上下方向へ開閉可能な跳ね上げ式のバックドア2の上端部が、左右1対のドアヒンジ3により、左右方向を向く枢軸4を中心として上下方向へ開閉しうるように支持されている。
【0013】
バックドア2は、車体1の後上部に設けたアクチュエータ5の駆動力、及び手動操作におけるアクチュエータ5のアシスト力をもって、
図2に実線で示す全閉位置から、同じく2点鎖線で示す中間位置を経て、同じく2点鎖線で示す全開位置まで開いたり、その逆方向に閉じたりしうるようになっている。
【0014】
アクチュエータ5は、車体1のルーフ1a内に配設されており、
図3に示すように、左右方向を向く筒状のケース6を備えている。
このアクチュエータ5の構造は本発明には直接関係しないので、本発明に関係する部分と大まかな全体構成のみについて説明し、それ以外の詳細な説明は省略する。
なお、アクチュエータ5の詳細な構造に関しては、本出願人の他の特許出願である特願2014−82414号の明細書および図面に記載されている。
【0015】
アクチュエータ5におけるケース6内には、モータ7と、第1遊星歯車機構8と第2遊星歯車機構9と第3遊星歯車機構10とが順次配設されており、モータ7の回転軸11の回転力を、それと同一軸線上に配設した中間軸12および出力軸13に、順次減速して伝達し、出力軸13の先端部に固着したアーム14を、リンク15を介して左方のドアヒンジ3の中間部に連結し、モータ7の回転軸11を予め定めた方向に回転させることにより、バックドア2を全開位置に向かって開いたり、回転軸11を逆方向に回転させることにより、バックドア2を全閉位置に向かって閉じたりしうるようになっている。
【0016】
中間軸12には、1個または複数個の永久磁石(図示略)を円周方向に適宜の間隔(複数の場合)をもって設けた磁気リング16が、他のギヤとともに、中間軸12と一体となって回転するように外嵌されている。
ケース6内には、ホール素子等のセンサ部(図示略)を設けたセンサ基板17が、磁気リング16と対向し、かつケース6と一体となるように回り止めして設けられ、このセンサ基板17と磁気リング16とにより、バックドア2の開閉移動に応じたパルスを発生するユニット内センサ18が構成される。なお、ユニット内センサ18は、ロータリエンコーダとしても良い。
【0017】
全閉位置に位置しているときのバックドア2の下端部(先端部)2aには、先端部2aの開閉移動を検出するドア先端センサ20が設けられ、また、後述のガススプリング22またはその近傍には、ガススプリング22の環境温度を検出する温度センサ19が設けられている。
ドア先端センサ20は、例えば、1軸アナログジャイロの角速度センサとすることができるが、バックドア2の先端部2aの角度及び角度変化を正確に検出できるものであればどのような構成のものでもよい。
【0018】
ユニット内センサ18、温度センサ19及びドア先端センサ20が発生する各信号は、車両に搭載される制御装置23に送信される。
【0019】
バックドア2の先端部2aには、車体側のストライカ(図示略)に噛合することでバックドア2を全閉位置に保持するためのドアロック装置DL、また、同じく後面には、ドアロック装置DLとストライカとの噛合を解除してバックドアDLを手動で開ける際に操作されるリリーススイッチ21がそれぞれ設けられている。
【0020】
車体1の後端両側部には、バックドア2を開く方向に向けて付勢することにより、バックドア2の開操作を軽減できるようにしたガススプリング22が設けられている。
なお、バックドア2に作用するガススプリング22の付勢力は、
図2に示すように、バックドア2が全開位置を含む開方向エリアR1内にある場合には、バックドア2を全開位置まで持ち上げ可能な力であり、バックドア2が全閉位置を含む閉方向エリアR2内にある場合には、バックドア2が自重により閉移動可能な力であり、開方向エリアR1と閉方向エリアR2との間の中間エリアR3内にある場合には、バックドア2が自重により閉移動する力と平衡する力になるように設定される。
【0021】
次に、
図4を参照して、制御装置23の回路構成について説明する。
制御装置23は、内部メモリに記憶された制御プログラムの指示に従って一連の制御処理を実行するマイクロプロセッサにより構成される主制御部25と、主制御部25が指示するPWM制御に基づいて、モータ7に印加する電圧を制御するPWM制御部29と、主制御部25からの指示に基づいて、モータ7を正転及び逆転方向へ駆動しうるように切り替え可能なリレー出力部30とを含んで構成される。
【0022】
制御装置23の入力ポートには、ユニット内センサ18、温度センサ19、ドア先端センサ20及び操作者により操作されたことを検出するリリーススイッチ21の各信号が入力され、同じく出力ポートには、PWM制御部29及びリレー出力部30を介してモータ7が電気的に接続される。
【0023】
主制御部25は、ユニット内センサ18及びドア先端センサ20からの検出信号に基づいて、バックドア2が手動操作されたか否かを判定する判定部26と、当該判定部26により演算された処理結果に基づいて、PWM制御のデューティ比を決定するアシスト量演算部27と、判定部26により演算された処理結果に基づいて、リレー出力部30をオン、オフ制御するモータ回路切替部28とを有する。
【0024】
判定部26は、モータ7が停止していることを前提として、ユニット内センサ18から規定より短い幅のパルスが規定回数以上(例えば、4個以上)のパルス信号が連続して発生したとき、またはドア先端センサ20が角度変化の信号を発生したとき、バックドア2が手動操作されたと判定し、温度センサ19の検出温度に対応する温度データを含む手動操作コマンドをアシスト量演算部27に送信すると共に、モータ駆動制御コマンドをモータ回路切替部28に送信する。さらに、判定部26は、ユニット内センサ18から出力されるパルス信号の数、幅、間隔等に基づいて演算することで、バックドア2の位置、移動量、開閉速度、加速度、移動方向等を検出し、また、ドア先端センサ20からの角度信号を演算することで、車両の駐停車状態時におけるバックドア2の角度及び移動(角度変化)を検出する。
【0025】
アシスト量演算部27は、判定部26からの手動操作コマンドに基づいて、次のようにデューティ比を決定してPWM制御部29をPWM制御する。
【0026】
図6に示すように、温度センサ19により検出された温度(ガススプリング22の環境温度)に応じたPWM制御を行う。
例えば、
図6(a)に示すように、バックドア1の開操作時には、環境温度が予め定めた規定温度よりも高温になるほど、バックドア2に付与するアシスト力を減少させるようにデューティ比を下げてモータ7の動力を小さくし、環境温度が規定温度よりも低温になるほど、バックドア2に付与するアシスト力を増大させるようにデューティ比を上げてモータ7の動力を大きくする補正制御を行う。
また、
図6(b)に示すように、バックドア1の閉操作時には、環境温度が予め定めた規定温度よりも高温になるほど、バックドア2に付与するアシスト力を増大させるようにデューティ比を上げてモータ7の動力を大きくし、環境温度が規定温度よりも低温になるほど、バックドア2に付与するアシスト力を減少させるようにデューティ比を下げてモータ7の動力を小さくする補正制御を行う。
これにより、ガススプリング22のガス圧が環境温度により変化(環境温度が高温になるほど、ガス圧が高圧になって付勢力が増大し、環境温度が低温になるほど、ガス圧が低圧となって付勢力が低下する)して、バックドア2に作用する開方向への付勢力が変化しても、バックドア2の開操作時、閉操作時に付与するアシスト力を環境温度に適した力とすることができる。
【0027】
ユニット内センサ18により検出されたバックドア2の開度位置に応じたPWM制御を行う。例えば、
図6(a)、(b)に示すように、バックドア2が、中間エリアR3を移動する際には、アシスト力を漸次弱めるようにデューティ比を減少させる補正制御を行う。
【0028】
バックドア2の開閉操作速度に応じたPWM制御を行う。例えば、バックドア2の手動開閉速度が速いほどデューティ比を大きくし、遅いほどデューティ比を小さくする補正制御を行う。これにより、バックドア2の手動開閉速度に応じたアシスト力を付与することができるため、追従性の高いアシスト制御を行うことができ、バックドア2を自然な操作で手動操作できる。
【0029】
車両の駐停車時における車両姿勢、すなわち全閉位置にあるときのバックドア2の角度に応じたデューティ比を決定し、当該デューティ比に基づいて、バックドア2を全閉位置から開方向への初期アシスト制御を行う。なお、全閉位置にあるときのバックドア2の角度は、ドア先端センサ20により検出される。
例えば、車両の駐停車姿勢が後下がりである場合には、バックドア2を閉鎖位置から開方向へ移動させるときの初期の操作力が、駐停車姿勢が水平にあるときよりも大きくなるため、デューティ比を規定値よりも高くする補正制御を行う。
【0030】
判定部26から手動操作コマンドが無ければ、アシスト制御を停止する。例えば、ユニット内センサ18から規定時間以上経過してもパルス信号の入力がないか、またはドア先端センサ20からの角度変化信号の入力がない場合には、モータ5の駆動を停止制御する。
【0031】
なお、バックドア2における手動開閉操作のアシスト無しから有りへの切り替わり時、及びその逆への切り替わり時には、手動開閉操作における違和感を解消するために、デューティ比は、徐々に増加、減少させる。
【0032】
次に、
図5に示すフローチャートを参照して、バックドア2の手動操作時のアシスト制御について説明する。
【0033】
ステップS1は、制御装置23には何れの信号も入力されていない状態、すなわちバックドア2の操作なしと判定している最中である。ステップS2において、制御装置23がバックドア2が全閉位置と全開位置間の中間位置にあると判断(YES)した場合には、ドア先端センサ20が開方向の移動を検出すると(ステップS3)、判定部26は、手動操作コマンドをアシスト演算部27に送信すると共に、モータ回路切替部28に開駆動回路閉成コマンドを送信する。アシスト演算部27は、判定部26からの手動操作コマンドにより、そのときのバックドア2の位置及び開速度、並びにガススプリング22の環境温度に基づいて、最適なアシスト力を演算して、当該演算した結果に基づくデューティ比をもって、PWM制御部29を制御する。これにより、モータ7は、リレー出力部30の開駆動回路が閉成されることで開方向に回転して、バックドア2に対して開方向へのアシスト力が付与する(ステップS4)。この場合、バックドア2へのアシスト力の付与は、ドア先端センサ20の開方向移動の検出により開始されるため、バックドア2の開移動後、即座にモータ7が起動して、バックドア2に速やかにアシスト力を付与することができ、バックドア2を自然な動きで手動開操作することができる。
【0034】
ステップS3において、ドア先端センサ20が開方向移動を検出せず、ドア先端センサ20が閉方向移動を検出した場合には(ステップS5)、判定部26は、手動操作コマンドをアシスト演算部27に送信すると共に、モータ回路切替部28に閉駆動回路閉成コマンドを送信する。アシスト演算部27は、判定部26からの手動操作コマンドにより、そのときのバックドア2の位置及び閉速度、並びにガススプリング22の環境温度に基づいて、最適なアシスト力を演算して、当該演算した結果に基づくデューティ比をもって、PWM制御部29を制御する。これにより、モータ7は、リレー出力部30の閉駆動回路が閉成されることで閉方向に回転して、バックドア2に対して閉方向へのアシスト力が付与する(ステップS6)。この場合にも、バックドア2へのアシスト力の付与は、ドア先端センサ20の閉方向移動の検出により開始されるため、バックドア2の閉移動後、即座にモータ7が起動して、バックドア2に速やかにアシスト力を付与することができ、バックドア2を自然な動きで手動開操作することができる。
【0035】
ステップS5において、何らかの理由でドア先端センサ20が閉方向移動を検出する前に、ユニット内センサ18が開方向移動を検出し(ステップS7)、かつユニット内センサ18がパルス信号を4個以上(数は、適宜設定される)連続して発生した場合には(ステップS8)、判定部26は、手動操作コマンドをアシスト演算部27に送信すると共に、モータ回路切替部28に開駆動回路閉成コマンドを送信する。アシスト演算部27は、判定部26からの手動操作コマンドにより、そのときのバックドア2の位置及び開速度、並びにガススプリング22の環境温度に基づいて、最適なアシスト力を演算して、当該演算した結果に基づくデューティ比をもって、PWM制御部29を制御する。これにより、モータ7は、リレー出力部30の開駆動回路が閉成されることで開方向に回転して、バックドア2に対して開方向へのアシスト力が付与する(ステップS4)。
【0036】
ステップS7において、ユニット内センサ18が開方向の移動を検出しないで、ユニット内センサ18が閉方向の移動を検出し(ステップS10)、かつパルス信号を4個以上(数は、適宜設定される)連続して出力した場合には(ステップS11)、判定部26は、手動操作コマンドをアシスト演算部27に送信すると共に、モータ回路切替部28に閉駆動回路閉成コマンドを送信する。アシスト演算部27は、判定部26からの手動操作コマンドにより、そのときのバックドア2の位置及び開速度、並びにガススプリング22の環境温度に基づいて、最適なアシスト力を演算して、当該演算した結果に基づくデューティ比をもって、PWM制御部29を制御する。これにより、モータ7は、リレー出力部30の閉駆動回路が閉成されることで閉方向に回転して、バックドア2に対して閉方向へのアシスト力が付与する(ステップS12)。
【0037】
ステップS2においてバックドア2が中間位置にあることを検出しないで、ステップS13において全閉位置にあると検出し、この状態で、リリーススイッチ21が操作されたことを検知し、かつドアロック装置DLがストライカから外れたことを検出した場合には(ステップS14)、判定部26は、手動操作コマンドをアシスト演算部27に送信すると共に、モータ回路切替部28に開駆動回路閉成コマンドを送信する。アシスト演算部27は、判定部26からの手動操作コマンドにより、そのときのドア先端センサ20が検出している角度及びガススプリング22の環境温度に基づいて、最適なアシスト力を演算して、当該演算した結果に基づくデューティ比をもって、PWM制御部29を制御する。これにより、モータ7は、リレー出力部30の開駆動回路が閉成されることで開方向に回転して、バックドア2に対して開方向へのアシスト力が付与する(ステップS15)。
【0038】
以上により、本実施形態のパワードア開閉装置は、バックドア2の開閉動作を敏感に検出しうるドア先端センサ20をバックドア2の先端部2aに設けたことによって、バックドア2の手動操作時に、手動操作によるバックドア2の開閉移動を敏感に検出して、手動操作の開始からアシスト開始までの時間を短縮することができ、もって手動操作時の操作性をよくすることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
図7に示すように、ドア先端センサ20をサイドドアDの先端部D1に設けると共に、当該サイドドアDに前記実施形態と同様なアクチュエータ5を設けることで、サイドドアDの手動開閉操作に対して、アクチュエータ5を起動させてアシスト力を付与するようにする。このような構成であっても、前記実施形態と同様の効果を奏する。この場合には、ガススプリング20を省略して実施するのが好ましい。
なお、サイドドアDは、車体側面にドアヒンジDHにより上下方向の軸回りに開閉可能に枢支され、先端部D1に車体側のストライカに噛合することでサイドドアDを閉鎖位置に保持するドアロック装置、外側面にサイドドアDを開けるときに操作されるアウトサイドハンドルOHをそれぞれ設けた構成である。