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特開2015-229939累積損傷度評価システム、再生エネルギー型発電装置、累積損傷度評価方法及び油圧機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-229939(P2015-229939A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】累積損傷度評価システム、再生エネルギー型発電装置、累積損傷度評価方法及び油圧機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 11/02 20060101AFI20151124BHJP
   F01B 1/00 20060101ALI20151124BHJP
   F03D 9/00 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   F03D11/02
   F01B1/00
   F03D9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-115265(P2014-115265)
(22)【出願日】2014年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 伸
(72)【発明者】
【氏名】上原 修
(72)【発明者】
【氏名】落合 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】清水 將之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 将志
(72)【発明者】
【氏名】内田 満哉
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178AA47
3H178BB57
3H178DD02X
3H178DD12X
3H178DD17X
3H178DD18X
(57)【要約】
【課題】評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価可能な、油圧機械用の累積損傷度評価システムを提供する。
【解決手段】油圧機械用の累積損傷度評価システムであって、油圧機械は、複数のピストンと、少なくとも一つのシリンダブロックとを備え、評価期間における各々の油圧室の稼働率を示す稼働率情報を取得するよう構成された稼働率情報取得部と、稼働率情報取得部によって取得された稼働率情報に基づいて評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価するよう構成された全累積損傷度評価部とを備える。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機械用の累積損傷度評価システムであって、
前記油圧機械は、複数のピストンと、少なくとも一つのシリンダブロックとを備え、
前記シリンダブロックは、前記複数のピストンとともに複数の油圧室を形成し前記複数のピストンの往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダと、前記複数の油圧室の圧力をそれぞれ切り替えるための複数の高圧弁及び複数の低圧弁とを含み、
前記システムは、評価期間における各々の前記油圧室の稼働率を示す稼働率情報を取得するよう構成された稼働率情報取得部と、前記稼働率情報取得部によって取得された稼働率情報に基づいて前記評価期間全体における前記シリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価するよう構成された全累積損傷度評価部とを備える、油圧機械用の累積損傷度評価システム。
【請求項2】
前記シリンダブロック内における前記複数の油圧室の稼働パターンに従って、前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方を制御するよう構成された制御部を更に備え、
前記制御部は、前記評価期間全体における前記シリンダブロックの少なくとも一つの評価点の全累積損傷度が閾値を超えた場合に、前記累積損傷度が閾値を超えた評価点への応力集中を回避可能な前記稼働パターンを決定するように構成される請求項1に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記評価期間全体における前記シリンダブロックの少なくとも一つの評価点の全累積損傷度の増大速度が閾値を超えた場合に、警告のための報知信号を生成するよう構成される請求項1又は2に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項4】
全油圧室の数をn、前記ピストンが下死点から上死点を経て再び下死点に戻るサイクルの間、前記高圧弁を閉じて低圧弁を開いたままの状態を維持する油圧室の数をxとすると、前記制御部は、nに対するn−xの割合を表すF(x)を単位期間毎に調節することによって、前記油圧機械の押しのけ容積を制御するよう構成され、
当該システムは、前記単位期間における前記割合F(x)毎の前記各評価点の累積損傷度DFF(x)を算出する累積損傷度算出部を更に備え、
前記稼働率情報取得部は、前記評価期間全体における各々の前記割合F(x)の発生頻度fF(x)を含む前記稼働率情報を取得するように構成され、
前記全累積損傷度評価部は、以下の式に基づいて前記評価期間全体における前記シリンダブロックの各評価点の全累積損傷度DFtotalを評価するよう構成される請求項1〜3の何れか1項に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項5】
前記割合F(x)毎に前記単位期間における前記シリンダブロックの各評価点の応力平均値及び応力振幅の発生頻度を算出するよう構成された応力情報算出部を更に含み、
前記累積損傷度算出部は、前記応力情報算出部の算出結果と前記シリンダブロックの各評価点の材料に応じた疲労強度線図とに基づいて、前記累積損傷度DFF(x)を算出するよう構成される請求項4に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項6】
前記応力情報算出部は、前記シリンダブロックの各評価点における前記割合F(x)毎の応力の前記単位期間内の時系列変化を示す情報から、前記シリンダブロックの各評価点における前記割合F(x)毎の前記単位期間の応力平均値及び応力振幅の発生頻度を算出するよう構成される請求項5に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項7】
前記シリンダブロックに作用する複数の荷重の前記単位期間内の時系列変化を前記割合F(x)毎に取得するよう構成された荷重取得部と、
前記複数の荷重の各単位荷重について解析された前記シリンダブロックの各評価点に生じる応力と、前記荷重取得部によって前記割合F(x)毎に取得した前記複数の荷重の時系列変化とに基づいて、前記シリンダブロックの各評価点における前記割合F(x)毎の応力の前記単位期間内の時系列変化を示す情報を算出するように構成された応力経時変化算出部と、
をさらに備える請求項6に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項8】
前記複数の荷重の時系列変化を前記割合F(x)毎に計測するための計測装置と、前記複数の荷重の時系列変化を前記割合F(x)毎に記憶した記憶装置との少なくとも一方をさらに備え、
前記荷重取得部は、前記計測装置又は前記記憶装置から前記複数の荷重の時系列変化を前記割合F(x)毎に取得するよう構成される請求項7に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項9】
前記複数の荷重は、少なくとも、高圧弁の前後差圧に起因する荷重及び低圧弁の前後差圧に起因する荷重を含む請求項7又は8に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項10】
前記シリンダブロックの各評価点は、少なくとも前記高圧弁の各部位、前記低圧弁の各部位、及び前記シリンダの各部位を含む請求項1〜9の何れか1項に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項11】
前記評価期間は、現在から次回のメンテナンスまでの期間を含む請求項1〜10の何れか1項に記載の累積損傷度評価システム。
【請求項12】
再生エネルギーから電力を生成する再生エネルギー型発電装置であって、
再生エネルギーによって駆動される回転シャフトと、
前記回転シャフトによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧モータと、
前記油圧モータに連結された発電機と、
請求項1に記載の累積損傷度評価システムと、
を備え、
前記累積損傷度評価システムは、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの累積損傷度評価システムである再生エネルギー型発電装置。
【請求項13】
再生エネルギーは風力エネルギーである請求項12に記載の再生エネルギー型発電装置。
【請求項14】
油圧機械の累積損傷度評価方法であって、
前記油圧機械は、複数のピストンと、少なくとも一つのシリンダブロックと、を備え、
前記シリンダブロックは、前記複数のピストンとともに複数の油圧室を形成し前記複数のピストンの往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダと、前記複数の油圧室の圧力をそれぞれ切り替えるための複数の高圧弁及び複数の低圧弁とを含み、
前記評価方法は、
評価期間における各シリンダの稼働率を示す稼働率情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された稼働率情報に基づいて前記評価期間における前記シリンダブロックの各評価点における累積損傷度を評価する評価ステップと、
を含む、油圧機械の累積損傷度評価方法。
【請求項15】
油圧機械の制御方法であって、
前記油圧機械は、複数のピストンと、少なくとも一つのシリンダブロックと、コントローラとを備え、
前記シリンダブロックは、前記複数のピストンとともに複数の油圧室を形成し前記複数のピストンの往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダと、前記複数の油圧室の圧力をそれぞれ切り替えるための複数の高圧弁及び複数の低圧弁とを備え、
前記制御方法は、
評価期間における前記各油圧室の稼働率を示す稼働率情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された稼働率情報に基づいて前記評価期間における前記シリンダブロックの各評価点の累積損傷度を評価する評価ステップと、
前記評価ステップで評価された前記評価期間における前記シリンダブロックの少なくとも一つの評価点の累積損傷度が閾値を超えた場合に、前記累積損傷度が閾値を超えた評価点への応力集中を回避する制御を行う制御ステップと、
を含む、油圧機械の制御方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、累積損傷度評価システム、再生エネルギー型発電装置、累積損傷度評価方法及び油圧機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧機械は、比較的小型の構造で大きな力を発揮できること、出力や速度の制御が容易であること等の特徴を有しており、従来から様々な用途で利用されている。
【0003】
特許文献1には、油圧機械としての可変容量型の油圧ポンプ及び油圧モータを組み合わせた油圧トランスミッションによって、風車ロータの回転エネルギーを発電機に伝達するよう構成された風力発電装置が記載されている。この油圧ポンプは、複数のピストンと、シリンダブロックとを備えている。また、シリンダブロックには、複数のピストンとともに複数の油圧室を形成し複数のピストンの往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダと、複数の油圧室の圧力をそれぞれ切り替えるための複数の高圧弁及び複数の低圧弁とが設けられており、各油圧室の稼働状態を変化させることにより油圧ポンプの出力が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/002522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、機械装置における部材の疲労寿命を評価する手法として、累積疲労損傷則が知られている。累積疲労損傷則とは、機械装置の部材に入力される応力波形から求めた応力振幅とその発生頻度とを考慮して、機械装置の部材の累積損傷度を算出するものである。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されるような可変容量型の油圧ポンプにおけるシリンダブロック内の応力分布は、各油圧室の稼働状態に応じて変化する。そのため、上述した一般的な評価手法を可変容量型の油圧ポンプのシリンダブロックにそのまま適用しても、各油圧室の稼働状態を考慮した累積損傷度を得ることはできない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価可能な、油圧機械用の累積損傷度評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記油圧機械は、複数のピストンと、少なくとも一つのシリンダブロックとを備え、
前記シリンダブロックは、前記複数のピストンとともに複数の油圧室を形成し前記複数のピストンの往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダと、前記複数の油圧室の圧力をそれぞれ切り替えるための複数の高圧弁及び複数の低圧弁とを含み、
当該システムは、評価期間全体における各々の前記油圧室の稼働率を示す稼働率情報を取得するよう構成された稼働率情報取得部と、前記稼働率情報取得部によって取得された稼働率情報に基づいて前記評価期間全体における前記シリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価するよう構成された全累積損傷度評価部とを備える。
【0009】
油圧機械におけるシリンダブロック内の応力分布は、各油圧室の稼働状態に応じて変化するため、評価期間全体におけるシリンダブロック内の各位置での全累積損傷度は該評価期間全体における各油圧室の稼働率の影響を受ける。
そこで、上記(1)に記載の累積損傷度評価システムでは、評価期間全体における各々の油圧室の稼働率を示す稼働率情報を稼働率情報取得部によって取得し、該稼働率情報に基づいて評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を全累積損傷度評価部によって評価している。これにより、評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記シリンダブロック内における前記複数の油圧室の稼働パターンに従って、前記高圧弁又は前記低圧弁の少なくとも一方を制御するよう構成された制御部を更に備え、
前記制御部は、前記評価期間全体における前記シリンダブロックの少なくとも一つの評価点の全累積損傷度が閾値を超えた場合に、前記累積損傷度が閾値を超えた評価点への応力集中を回避可能な前記稼働パターンを決定するように構成される。
【0011】
上記(2)に記載の累積損傷度評価システムによれば、シリンダブロック内における疲労が既に蓄積された部位への応力集中を回避することにより、シリンダブロックの破損を効果的に抑制し、シリンダブロック全体の長寿命化やメンテナンス頻度の削減等を実現することができる。
【0012】
なお、「稼働パターン」とは、シリンダブロック内での各油圧室のアクティブ/ノンアクティブの切替制御(デジタル制御)の場合におけるシリンダブロック内でのアクティブシリンダの分布であってもよく、或いは、各油圧室の部分ストローク制御(ピストン1ストロークにおける押しのけ量の最大押しのけ容積に対する割合を調節することで油圧機械の出力を制御する方式)の場合におけるシリンダブロック内での各油圧室のアクティブ率の分布であってもよい。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記制御部は、前記評価期間全体における前記シリンダブロックの少なくとも一つの評価点の全累積損傷度の増大速度が閾値を超えた場合に、警告のための報知信号を生成するよう構成される。
【0014】
シリンダブロックの少なくとも一つの評価点の全累積損傷度の増大速度が閾値を超えた場合、想定外の応力分布の発生を招くような油圧機械の異常が起きていると推定される。したがって、上記(3)に記載の累積損傷度評価システムの制御部は、このような場合に警告のための報知信号を制御部が生成することにより、警告に応じて油圧機械の運転停止やメンテナンス等の適切な処置を行うことができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
全油圧室の数をn、前記ピストンが下死点から上死点を経て再び下死点に戻るサイクルの間、前記高圧弁を閉じて低圧弁を開いたままの状態を維持する油圧室の数をxとすると、前記制御部は、nに対するn−xの割合を表すF(x)を単位期間毎に調節することによって、前記油圧機械の押しのけ容積を制御するよう構成され、
当該システムは、前記単位期間における前記割合F(x)毎の前記各評価点の累積損傷度DFF(x)を算出する累積損傷度算出部を更に備え、
前記稼働率情報取得部は、前記評価期間全体における前記割合F(x)の発生頻度fF(x)を含む前記稼働率情報を取得するように構成され、
前記全累積損傷度評価部は、以下の式に基づいて前記評価期間全体における前記シリンダブロックの各評価点の全累積損傷度DFtotalを評価するよう構成される。
【0016】
上記(4)に記載の累積損傷度評価システムは、全油圧室の数に対する油圧機械の出力に寄与する油圧室の数の割合F(x)を単位期間毎(例えば油圧機械の回転軸の1回転毎)に調節することで押しのけ容積を調節する油圧機械のシリンダブロックを対象とした累積損傷度評価システムである。上記(4)に記載の累積損傷度評価システムでは、単位期間における上記割合F(x)毎の各評価点の累積損傷度DFF(x)を累積損傷度算出部によって算出し、評価期間における上記割合F(x)の発生頻度fF(x)(例えば、単位期間が油圧機械の回転軸の1回転に相当する期間であれば、評価期間全体のうち油圧機械の回転軸の何回転分に相当する期間上記割合F(x)が発生しているかを示す値)を稼働率情報取得部によって取得し、これらを用いて上記式から評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度DFtotalを評価している。これにより、油圧機械が、全油圧室の数に対する油圧機械の出力に寄与する油圧室の数の割合F(x)を単位期間毎(例えば油圧機械の回転軸の1回転毎)に調節することで押しのけ容積を調節する油圧機械であっても、該油圧機械のシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度DFtotalを上記割合F(x)を考慮して適切に評価することができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記割合F(x)毎に前記単位期間における前記シリンダブロックの各評価点の応力平均値及び応力振幅の発生頻度を算出するよう構成された応力情報算出部を更に含み、
前記累積損傷度算出部は、前記応力情報算出部の算出結果と前記シリンダブロックの各評価点の材料に応じた疲労強度線図とに基づいて、前記累積損傷度DFF(x)を算出するよう構成される。
【0018】
上記(5)に記載の累積損傷度評価システムによれば、シリンダブロックの各評価点の材料を考慮した適切な累積損傷度DFF(x)を算出することができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記応力情報算出部は、前記シリンダブロックの各評価点における前記割合F(x)毎の応力の前記単位期間内の時系列変化を示す情報から、前記シリンダブロックの各評価点における前記割合F(x)毎の前記単位期間の応力平均値及び応力振幅の発生頻度を算出するよう構成される。
【0020】
上記(6)に記載の累積損傷度評価システムによれば、シリンダブロックの各評価点における上記割合F(x)毎の応力の単位期間内の時系列変化を示す情報からシリンダブロックの各評価点における割合F(x)毎の単位期間の応力平均値及び応力振幅の発生頻度を算出し、その応力平均値及び応力振幅の発生頻度に基づいて上記(5)における累積損傷度DFF(x)を算出する。これにより、シリンダブロックの各評価点の材料及び該評価点における応力の時系列変化を考慮した適切な累積損傷度DFF(x)を算出することができる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムであって、
前記シリンダブロックに作用する複数の荷重の前記単位期間内の時系列変化を前記割合F(x)毎に取得するよう構成された荷重取得部と、
前記複数の荷重の各単位荷重について解析された前記シリンダブロックの各評価点に生じる応力と、前記荷重取得部によって前記割合F(x)毎に取得した前記複数の荷重の時系列変化とに基づいて、前記シリンダブロックの各評価点における前記割合F(x)毎の応力の前記単位期間内の時系列変化を示す情報を算出するように構成された応力経時変化算出部と、
をさらに備える。
【0022】
上記(7)に記載の累積損傷度評価システムによれば、シリンダブロックに作用する複数の荷重(高圧弁の前後差圧に起因する荷重、低圧弁の前後差圧に起因する荷重、ピストン荷重、サイド荷重、油圧機械へのオイルのブースト圧に起因する荷重、油圧機械からオイルタンクへのドレイン圧(例えば大気圧)に起因する荷重等)に起因して生じる応力を考慮した適切な累積損傷度DFF(x)を算出することができる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記複数の荷重の時系列変化を前記割合F(x)毎に計測するための計測装置と、前記複数の荷重の時系列変化を前記割合F(x)毎に記憶した記憶装置との少なくとも一方をさらに備え、
前記荷重取得部は、前記計測装置又は前記記憶装置から前記複数の荷重の時系列変化を前記割合F(x)毎に取得するよう構成される。
【0024】
上記割合F(x)毎の複数の荷重の時系列変化は、上記(8)に記載されるように、計測装置によって実測したものであってもよいし、記憶装置に予め記憶したものであってもよい。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)又は(8)に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記複数の荷重は、少なくとも、高圧弁の前後差圧に起因する荷重及び低圧弁の前後差圧に起因する荷重を含む。
【0026】
上記(9)に記載の累積損傷度評価システムによれば、シリンダブロックに作用する主たる荷重である高圧弁の前後差圧に起因する荷重及び低圧弁の前後差圧に起因する荷重を考慮して、評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価することができる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか1項に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記シリンダブロックの各評価点は、少なくとも前記高圧弁の各部位、前記低圧弁の各部位、及び前記シリンダの各部位を含む。
【0028】
上記(10)に記載の累積損傷度評価システムによれば、油圧室の稼働に伴って荷重が作用するシリンダブロック上の主たる部位について、評価期間全体における全累積損傷度を評価することができる。
【0029】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(10)の何れか1項に記載の油圧機械用の累積損傷度評価システムにおいて、
前記評価期間は、現在から次回のメンテナンスまでの期間を含む。
【0030】
上記(11)に記載の累積損傷度評価システムによれば、例えば統計的な風況データ等を用いて次回のメンテナンスまでの油圧機械の出力の発生頻度を予想可能な場合、その予想に基づいてシリンダブロックの各評価点について上述の全累積損傷度を評価することができる。また、この評価結果に応じて、例えば次回メンテナンスまでの残期間で上記(2)に記載されるように応力集中を回避可能な稼働パターンを制御部が決定してもよい。
【0031】
(12)幾つかの実施形態に係る再生エネルギー型発電装置は、
再生エネルギー(renewable energy)によって駆動される回転シャフトと、
前記回転シャフトによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される油圧モータと、
前記油圧モータに連結された発電機と、
上記(1)〜(11)の何れか1項に記載の累積損傷度評価システムと、
を備え、
前記累積損傷度評価システムは、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの累積損傷度評価システムである。
【0032】
上記(12)に記載の再生エネルギー型発電装置によれば、再生エネルギーよって駆動される回転シャフトの回転エネルギーを発電機に伝達するための油圧ポンプ又は油圧モータについて、評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価することができる。
【0033】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)に記載の再生エネルギー型発電装置において、再生エネルギーは風力エネルギーである。
【0034】
上記(13)に記載の再生エネルギー型発電装置によれば、風力エネルギーよって駆動される回転シャフトの回転エネルギーを発電機に伝達するための油圧ポンプ又は油圧モータについて、評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価することができる。
【0035】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る油圧機械の累積損傷度評価方法において、
前記油圧機械は、複数のピストンと、少なくとも一つのシリンダブロックと、を備え、
前記シリンダブロックは、前記複数のピストンとともに複数の油圧室を形成し前記複数のピストンの往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダと、前記複数の油圧室の圧力をそれぞれ切り替えるための複数の高圧弁及び複数の低圧弁とを含み、
前記評価方法は、
評価期間における各シリンダの稼働率を示す稼働率情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された稼働率情報に基づいて前記評価期間における前記シリンダブロックの各評価点における累積損傷度を評価する評価ステップと、
を含む。
【0036】
油圧機械におけるシリンダブロック内の応力分布は、各油圧室の稼働状態に応じて変化するため、評価期間全体におけるシリンダブロック内の各位置での全累積損傷度は該評価期間全体における各油圧室の稼働率の影響を受ける。
そこで、上記(14)に記載の累積損傷度評価方法では、評価期間全体における各々の油圧室の稼働率を示す稼働率情報を取得し、該稼働率情報に基づいて評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価している。これにより、評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価することができる。
【0037】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る油圧機械の制御方法において、
前記油圧機械は、複数のピストンと、少なくとも一つのシリンダブロックと、コントローラとを備え、
前記シリンダブロックは、前記複数のピストンとともに複数の油圧室を形成し前記複数のピストンの往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダと、前記複数の油圧室の圧力をそれぞれ切り替えるための複数の高圧弁及び複数の低圧弁とを備え、
前記制御方法は、
評価期間における前記各油圧室の稼働率を示す稼働率情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された稼働率情報に基づいて前記評価期間における前記シリンダブロックの各評価点の累積損傷度を評価する評価ステップと、
前記評価ステップで評価された前記評価期間における前記シリンダブロックの少なくとも一つ評価点の累積損傷度が閾値を超えた場合に、閾値を超えた評価点への応力集中を回避する制御を行う制御ステップと、
を含む。
【0038】
油圧機械におけるシリンダブロック内の応力分布は、各油圧室の稼働状態に応じて変化するため、評価期間全体におけるシリンダブロック内の各位置での全累積損傷度は該評価期間全体における各油圧室の稼働率の影響を受ける。
この点、上記(15)に記載の油圧機械の制御方法では、評価期間全体における各々の油圧室の稼働率を示す稼働率情報を取得し、該稼働率情報に基づいて評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価している。これにより、評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価することができる。さらに、シリンダブロック内での応力集中を回避することにより、シリンダブロックの破損を効果的に抑制し、シリンダブロック全体の長寿命化やメンテナンス頻度の削減等を実現することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、評価期間全体における各油圧室の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロックの各評価点の全累積損傷度を評価可能な、油圧機械用の累積損傷度評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】一実施形態に係る再生エネルギー型発電装置としての風力発電装置の全体構成を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る油圧ポンプの軸線に沿った断面図である。
図3】一実施形態に係る油圧ポンプにおけるシリンダブロック周りの構成例を示す、軸線に垂直な部分断面図である。
図4】一実施形態に係る累積損傷度評価システムの構成例を示す図である。
図5】一実施形態で用いる、評価期間全体における割合F(x)の発生頻度fF(x)を示す図である。
図6】一実施形態で用いる疲労強度線図を示す図である。
図7】(a)は、F(x)=0.5におけるピストン荷重及びサイド荷重の単位期間内の時系列変化の一例を示す図であり、(b)は、F(x)=1.0におけるピストン荷重及びサイド荷重の単位期間内の時系列変化の一例を示す図である。
図8】累積損傷度評価システムによる全累積損傷度DFtotalの評価フローの一例を示す図である。
図9図2及び図3に示したシリンダブロック本体の概略的な斜視図である。
図10】評価期間全体におけるシリンダブロック本体の各評価点の全累積損傷度DFtotalをグレースケールで表示した図である。
図11】全累積損傷度DFtotalに基づく油圧ポンプの制御フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」「一致」等の相対的な配置関係を表す表現は、厳密にそのような相対的配置関係を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、方形や円形等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での方形や円形等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0042】
図1は、一実施形態に係る再生エネルギー型発電装置としての風力発電装置を示す図である。
【0043】
同図に示すように、風力発電装置1は、少なくとも一本のブレード2及びハブ4で構成されるロータ3を備える。
【0044】
一実施形態では、ロータ3には、回転シャフト6を介して油圧ポンプ8が連結される。油圧ポンプ8には、高圧油ライン12及び低圧油ライン14を介して油圧モータ10が接続される。具体的には、油圧ポンプ8の出口が高圧油ライン12を介して油圧モータ10の入口に接続され、油圧ポンプ8の入口が低圧油ライン14を介して油圧モータ10の出口に接続される。油圧ポンプ8は、回転シャフト6によって駆動されて作動油を昇圧し、高圧の作動油(圧油)を生成する。油圧ポンプ8で生成された圧油は高圧油ライン12を介して油圧モータ10に供給され、この圧油によって油圧モータ10が駆動される。油圧モータ10で仕事をした後の低圧の作動油は、油圧モータ10の出口と油圧ポンプ8の入口との間に設けられた低圧油ライン14を経由して、油圧ポンプ8に再び戻される。
【0045】
油圧モータ10には発電機16が連結される。一実施形態では、発電機16は、電力系統に連系されるとともに、油圧モータ10によって駆動される同期発電機である。なお、発電機16は同期発電機に限定されない。
【0046】
回転シャフト6の少なくとも一部は、タワー19上に設置されたナセル18によって覆われている。一実施形態では、油圧ポンプ8、油圧モータ10及び発電機16は、ナセル18の内部に設置される。
【0047】
幾つかの実施形態では、油圧ポンプ8は、以下で説明するラジアルピストン式の油圧ポンプである。
【0048】
図2は一実施形態に係る油圧ポンプの断面図で、図3は一実施形態に係る油圧ポンプにおけるシリンダブロック周りの構成例を示す部分断面図である。以下、図2及び図3を参照しながら油圧ポンプ8の構成について説明する。
【0049】
これらの図に示す例示的な実施形態では、油圧ポンプ8は、その周方向及び軸方向に沿って配置される複数のピストン20と、複数のピストン20の往復運動をそれぞれ案内する複数のシリンダ22が設けられたシリンダブロック24とを備える。
【0050】
各々のピストン20は、リングカム26の外周側に放射状に複数配置されている。ピストン20の端部には、リングカム26のカム面に接触するローラ28が取り付けられている。このピストン20は、シリンダ22によって案内されて油圧ポンプ8の半径方向に沿って往復運動可能になっている。各々のピストン20がシリンダ22内で往復運動すると、ピストン20とシリンダ22によって形成される油圧室30の体積が周期的に変化する。このような油圧室30の周期的な体積変化を伴うピストン20の往復運動によって、油圧ポンプの回転運動との間で運動モードが変換されるようになっている。すなわち、油圧ポンプ8の回転シャフト32とともに回転するリングカム26の回転運動がピストン20の往復運動に変換され、油圧室30の周期的な体積変化が起こり、油圧室30で高圧の作動油(圧油)が生成される。
【0051】
リングカム26は、回転シャフト6と共に回転するポンプシャフト32の外周に固定されている。また、リングカム26は、ポンプシャフト32の周方向に沿って連続した波型形状のカム面を形成し、ポンプシャフト32の全周を囲むように環状に配置される。また、リングカム26は、ポンプシャフト32の軸方向(以下、単に軸方向と称する)に複数列設けられていてもよい。なお、リングカム26は、波型形状のカム面を有するものに限らず、単一カム面を有してリングカム26の中心をシャフト中心位置からずらした、いわゆる偏心カムのカム面を有するものであってもよい。
【0052】
シリンダブロック24は、リングカム26の外周側に設けられ、ポンプシャフト32の周方向に沿って複数配置される。シリンダブロック24は、シリンダブロック本体34と、複数の高圧弁36及び複数の低圧弁38を備えている。シリンダブロック本体34は、複数のシリンダ22、複数の高圧油流路40及び複数の低圧油流路42を備えている。高圧油流路40及び低圧油流路42は、シリンダ22内の油圧室30に連通するよう構成されている。高圧弁36及び低圧弁38はそれぞれ高圧油流路40及び低圧油流路42に設けられており、高圧弁36が開くと高圧油流路40が高圧油ライン12(図1参照)に連通し、低圧弁38が開くと低圧油流路42が低圧油ライン14に連通するよう構成されている。このように、高圧弁36及び低圧弁38は油圧室30の圧力を切り替え可能に構成されている。
【0053】
幾つかの実施形態では、一つのシリンダブロック本体34に対して、シリンダ22、高圧油流路40及び低圧油流路42からなるセットが、軸方向及び油圧ポンプ8の周方向に複数設けられていてもよい。図2及び図3に示す例示的な実施形態では、一つのシリンダブロック本体34に対して、シリンダ22、高圧油流路40及び低圧油流路42からなるセットが8個(軸方向に4セット、周方向に2セット)設けられている。
【0054】
油圧ポンプ8の軸方向に対してシリンダブロック24の両端には、第1エンドプレート44及び第2エンドプレート46が設けられている。第1エンドプレート44は、ハブ4(図1参照)側のシリンダブロック24端部を塞ぐように配置される。第2エンドプレート46は、ハブ4から遠い側の端部を塞ぐように配置される。第1エンドプレート44及び第2エンドプレート46は、シリンダブロック24を挟んで互いに対向して配置されており、シリンダブロック24を貫通するタイボルト(不図示)によって互いに固定されている。また、各シリンダブロック24は、油圧ポンプ8の径方向に挿入される径方向ボルト(不図示)によって、第1エンドプレート44及び第2エンドプレート46に固定されてもよい。
【0055】
次に、図1図3を用いて説明した油圧ポンプ8における、シリンダブロック24の累積損傷度を評価する累積損傷度評価システムについて説明する。
【0056】
図4は、一実施形態に係る累積損傷度評価システムの構成例を示す図である。
図4に示す累積損傷度評価システム100は、評価期間全体における各々の油圧室30(図2及び図3参照)の稼働率を示す稼働率情報を取得するよう構成された稼働率情報取得部48と、稼働率情報取得部48によって取得された稼働率情報に基づいて評価期間全体におけるシリンダブロック24(図2及び図3参照)の各評価点の全累積損傷度を評価するよう構成された全累積損傷度評価部50とを備える。
【0057】
油圧ポンプ8におけるシリンダブロック24内の応力分布は、各油圧室30の稼働状態に応じて変化するため、評価期間全体におけるシリンダブロック24内の各位置での全累積損傷度は該評価期間全体における各油圧室30の稼働率の影響を受ける。
【0058】
そこで、累積損傷度評価システム100では、上述のように、評価期間全体における各々の油圧室30の稼働率を示す稼働率情報を稼働率情報取得部48によって取得し、該稼働率情報に基づいて評価期間全体におけるシリンダブロック24の各評価点の全累積損傷度を全累積損傷度評価部によって評価している。これにより、評価期間全体における各油圧室30の稼働状態を適切に考慮して該評価期間全体におけるシリンダブロック24の各評価点の全累積損傷度を評価することができる。
【0059】
なお、ここでの評価期間とは、例えば、シリンダブロック24の設計上の製品寿命に相当する期間であってもよく、評価時点(現在)までのシリンダブロック24の累積使用期間であってもよく、該累積使用期間と現在から次回メンテナンスまでの期間とを足し合わせた期間であってもよい。
また、稼働率情報取得部48は、例えば計測装置62によって実際に計測された稼働率を取得してもよいし、統計的な風況データ等から油圧ポンプ8の出力の発生頻度を予想可能な場合には、その予想に基づく稼働率が記憶された記憶装置から該稼働率を取得してもよい。
【0060】
累積損傷度評価システム100は、シリンダブロック24(図2及び図3参照)内における複数の油圧室30の稼働パターンに従って、高圧弁36又は低圧弁38の少なくとも一方を制御するよう構成された制御部52を更に備える。
ここで、全油圧室30の数をn、ピストン20が下死点から上死点を経て再び下死点に戻るサイクルの間、高圧弁36を閉じて低圧弁38を開いたままの状態を維持する油圧室30の数をxとすると、制御部52は、nに対するn−xの割合を表すF(x)(すなわち、F(x)=(n‐x)/n)を単位期間毎(例えば油圧ポンプ8の回転軸の1回転毎)に調節することによって、油圧ポンプ8の押しのけ容積を制御するよう構成される。
【0061】
また、制御部52は、評価期間全体におけるシリンダブロック24の少なくとも一つの評価点の全累積損傷度が閾値を超えた場合に、累積損傷度が閾値を超えた評価点への応力集中を回避可能な稼働パターンを決定するように構成される。
このように、シリンダブロック24内における疲労が既に蓄積された部位への応力集中を回避することにより、シリンダブロック24の破損を効果的に抑制し、シリンダブロック24全体の長寿命化やメンテナンス頻度の削減等を実現することができる。
【0062】
制御部52は、評価期間全体におけるシリンダブロック24の少なくとも一つの評価点の全累積損傷度の増大速度が閾値を超えた場合に、警告のための報知信号を生成するよう構成される。
シリンダブロック24の少なくとも一つの評価点の全累積損傷度の増大速度が閾値を超えた場合、想定外の応力分布の発生を招くような油圧ポンプ8の異常が起きていると推定される。したがって、このような場合に警告のための報知信号を制御部52が生成することにより、警告に応じて油圧ポンプ8の運転停止やメンテナンス等の適切な処置を行うことができる。
【0063】
累積損傷度評価システム100は、単位期間(例えば油圧ポンプ8の回転軸の1回転毎)における割合F(x)毎の各評価点の累積損傷度DFF(x)を算出する累積損傷度算出部54を更に備える。
図4に示す実施形態では、稼働率情報取得部48は、評価期間全体における割合F(x)の発生頻度fF(x)図5参照。図5は、例えば単位期間が油圧ポンプ8の回転軸の1回転に相当する期間(1サイクル)であれば、評価期間全体のうち油圧ポンプ8の回転軸の何回転分に相当する期間上記割合F(x)が発生しているかを示すグラフである)を含む稼働率情報を取得するように構成され、全累積損傷度評価部50は、以下の式(数1)に基づいて評価期間全体におけるシリンダブロック24の各評価点の全累積損傷度DFtotalを評価するよう構成される。
このように、全累積損傷度評価部50は、単位期間における割合F(x)毎の各評価点の累積損傷度DFF(x)と、評価期間全体における割合F(x)の発生頻度fF(x)との積の、0≦F(x)≦1の全範囲についての総和である全累積損傷度DFtotalを算出するよう構成される。
【0064】
これにより、油圧ポンプ8が、全油圧室の数nに対する油圧ポンプ8の出力に寄与する油圧室の数の割合F(x)を単位期間毎(例えば油圧ポンプ8の回転軸の1回転毎)に調節することで押しのけ容積を調節する油圧ポンプであっても、シリンダブロック24の各評価点の全累積損傷度DFtotalを上記割合F(x)を考慮して適切に評価することができる。
【0065】
累積損傷度評価システム100は、シリンダブロック24の各評価点における割合F(x)毎の応力の単位期間内の時系列変化を示す情報から、割合F(x)毎の単位期間におけるシリンダブロック24の各評価点の応力平均値及び応力振幅の発生頻度をレインフロー処理によって算出するよう構成された応力情報算出部56を更に含む。
【0066】
累積損傷度算出部54は、応力情報算出部56の算出結果とシリンダブロック24の各評価点の材料に応じた疲労強度線図とに基づいて、累積損傷度DFF(x)を算出するよう構成される。一実施形態では、累積損傷度算出部54は、応力情報算出部56によって算出した応力平均値及び応力振幅を、例えばグッドマン線図を用いて等価応力振幅(平均応力が0の状態で、等価な損傷度を与える応力振幅)に変換してもよい。この場合、累積損傷度算出部54は、累積損傷度DFF(x)を、等価応力振幅σiの発生頻度Ni及び疲労強度線図から与えられる損傷繰り返し数Nfiを用いて以下の式(数2)により算出する。
したがって、シリンダブロック24の各評価点の材料及び該評価点における応力の時系列変化を考慮した適切な累積損傷度DFF(x)を算出することができる。なお、疲労強度線図は、図6に示すようにある応力振幅σiが何回繰り返されたら損傷するかを表す線図であり、例えば記憶装置64に保存し必要なタイミングで読み出せばよい。
【0067】
累積損傷度評価システム100は、シリンダブロック24に作用する複数の荷重(例えば、高圧弁36の前後差圧に起因する荷重、低圧弁38の前後差圧に起因する荷重、ピストン荷重、サイド荷重、油圧ポンプ8へのオイルのブースト圧に起因する荷重、油圧ポンプ8から不図示のオイルタンクへのドレイン圧(例えば大気圧)に起因する荷重、等の負荷モード)の単位期間内の時系列変化を割合F(x)毎に取得するよう構成された荷重取得部58を更に備える。図7(a)及び(b)は、それぞれF(x)=0.5及びF(x)=1.0におけるピストン荷重及びサイド荷重の単位期間内の時系列変化の一例を示している。なお、ピストン荷重及びサイド荷重とは、ピストン20の往復運動に伴ってシリンダ22がピストン20から受ける油圧ポンプ8の径方向の力及び周方向の力をそれぞれ意味する。
【0068】
また、累積損傷度評価システム100は、複数の荷重の各単位荷重について有限要素法(FEM)により解析されたシリンダブロック24の各評価点に生じる応力と、荷重取得部58によって割合F(x)毎に取得した複数の荷重の時系列変化とに基づいて、シリンダブロック24の各評価点における割合F(x)毎の応力の単位期間内の時系列変化を示す情報を算出するように構成された応力経時変化算出部60をさらに備える。
これにより、シリンダブロック24に作用する複数の荷重に起因して生じる応力を考慮した適切な累積損傷度DFF(x)を算出することができる。
【0069】
累積損傷度評価システム100は、複数の荷重の時系列変化を割合F(x)毎に計測するための計測装置62と、複数の荷重の時系列変化を割合F(x)毎に記憶した記憶装置64との少なくとも一方をさらに備え、荷重取得部58は、計測装置62又は記憶装置64から複数の荷重の時系列変化を割合F(x)毎に取得するよう構成される。
【0070】
次に、図8を用いて、累積損傷度評価システム100による全累積損傷度DFtotalの評価フローの一例を説明する。
【0071】
まず、S11で、上述した複数の荷重の各単位荷重よってシリンダブロック24の各評価点に生じる応力を、有限要素法(FEM)によって解析する。
【0072】
次に、S12で、荷重取得部58によって割合F(x)毎に取得した複数の荷重の単位期間における時系列変化(図7参照)と、S11の解析結果とに基づいて、シリンダブロック24の各評価点における割合F(x)毎の応力の単位期間内の時系列変化を応力経時変化算出部60が算出する。
【0073】
次に、S13で、シリンダブロック24の各評価点における割合F(x)毎の応力の単位期間内の時系列変化に対してレインフロー処理を行って、割合F(x)毎の単位期間におけるシリンダブロック24の各評価点の応力平均値及び応力振幅の発生頻度を応力情報算出部56が算出する。
【0074】
さらにS14で、応力情報算出部56の算出結果とシリンダブロック24の各評価点の材料に応じた疲労強度線図(図6参照)とに基づいて、単位期間における割合F(x)毎の各評価点の累積損傷度DFF(x)を累積損傷度算出部54が算出する。このS14では、上述したように、応力情報算出部56の算出結果である応力平均値及び応力振幅をグッドマン線図等を用いて等価応力振幅に変換してから累積損傷度DFF(x)を算出してもよい。
【0075】
そして、S15で、稼働率情報取得部48によって取得した評価期間全体における割合F(x)の発生頻度fF(x)図5参照)と、累積損傷度算出部54によって算出した上記累積損傷度DFF(x)とに基づいて、上述した式(数1)により、評価期間全体におけるシリンダブロック24の各評価点の全累積損傷度DFtotalを全累積損傷度評価部50が評価する。
【0076】
図9は、図2及び図3に示したシリンダブロック本体34の概略的な斜視図であり、図10は、評価期間全体におけるシリンダブロック本体34の各評価点の全累積損傷度DFtotalをグレースケールで表示した図である。
【0077】
幾つかの実施形態では、図10に示すように、評価期間全体における各評価点の全累積損傷度DFtotalをグレースケールや色分け等によって表示部66(図4参照)に表示することで、可視化してもよい。このように、全累積損傷度DFtotalをグレースケールや色分け等によって可視化することにより、メンテナンスの際に亀裂や損傷等が発生していないか重点的に確認すべき点を容易に把握することができ、メンテナンスを効率化することができる。
なお、図10に示す例では、シリンダブロック本体34の高圧弁取り付け部68及び低圧弁取り付け部70の全累積損傷度DFtotalが大きくなっていることが分かる。これは、高圧弁36の前後差圧及び低圧弁38の前後差圧に起因する荷重によるものである。なお、図10では、例示的にシリンダブロック本体34に対する全累積損傷度DFtotalの評価結果を示しているが、評価対象はこれに限らず、図2及び図3に示すシリンダブロック24全体に対して行ってもよい。評価対象(評価点)は、図2及び図3に示す高圧弁36の各部位、低圧弁38の各部位、及びシリンダ22の各部位や、図10に示すボルト取り付け部72や溝74等を含んでもよい。
【0078】
次に、図11を用いて、上述した全累積損傷度DFtotalに基づく油圧ポンプ8の制御フローの一例を説明する。
【0079】
S16では、S15で算出した各評価点の全累積損傷度DFtotalのうち、少なくとも一つの評価点の全累積損傷度DFtotalの増大速度が閾値を超えているかを制御部52が判断する。S16で、該増大速度が閾値を超えていると判断された場合は、S17で、制御部52が警告のための報知信号を生成し、該報知信号に応じてアラームを作動する。一実施形態では、アラームの作動後に、S18で、上記増大速度が閾値を超えた評価点への応力集中の回避する制御を制御部52によって実行してもよい。S16で、上記増大速度が閾値を超えていないと判断された場合は、S19で、評価期間全体における少なくとも一つの評価点の全累積損傷度DFtotalが閾値を超えているかどうかを制御部52が判断する。
【0080】
S19で少なくとも一つの評価点の全累積損傷度DFtotalが閾値を超えていると判断された場合は、S18で、全累積損傷度DFtotalが閾値を超えた評価点への応力集中を回避する制御を制御部52によって実行する。S19で、全累積損傷度DFtotalが閾値を超えている評価点が存在しないと判断された場合は、S15に戻って再び上述のフローを繰り返す。
【0081】
以上のように、シリンダブロック24内における疲労が既に蓄積された部位への応力集中を回避することにより、シリンダブロック24の破損を効果的に抑制し、シリンダブロック24全体の長寿命化やメンテナンス頻度の削減等を実現することができる。また、警告のための報知信号を制御部52が生成することにより、警告に応じて油圧ポンプ8の運転停止やメンテナンス等の適切な処置を行うことができる。
【0082】
なお、上述した累積損傷度評価システム100は、風力発電装置1が備えていてもよいし、風力発電装置1とは別のシステムとして設けられていてもよい。また、累積損傷度評価システム100のうちの一部(例えば図4における制御部52、計測装置62、記憶装置64)のみ風力発電装置1に設けられ、累積損傷度評価システム100のその他の構成が風力発電装置1とは別に設けられていてもよい。
【0083】
また、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0084】
1 風力発電装置
2 ブレード
3 ロータ
4 ハブ
6 回転シャフト
8 油圧ポンプ
10 油圧モータ
12 高圧油ライン
14 低圧油ライン
16 発電機
18 ナセル
19 タワー
20 ピストン
22 シリンダ
24 シリンダブロック
26 リングカム
28 ローラ
30 油圧室
32 ポンプシャフト
34 シリンダブロック本体
36 高圧弁
38 低圧弁
40 高圧油流路
42 低圧油流路
44 第1エンドプレート
46 第2エンドプレート
48 稼働率情報取得部
50 全累積損傷度評価部
52 制御部
54 累積損傷度算出部
56 応力情報算出部
58 荷重取得部
58 荷重条件取得部
60 応力経時変化算出部
62 計測装置
64 記憶装置
66 表示部
68 高圧弁取り付け部
70 低圧弁取り付け部
72 ボルト取り付け部
74 溝
100 累積損傷度評価システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11