【解決手段】 有機バインダが添着された無機繊維からなる保持シール材用のマットを準備するマット準備工程と、上記有機バインダが添着されたマットに対して、上記マット及び/又はニードルを加熱してニードルを突き刺す熱ニードル処理工程とからなる保持シール材の製造方法であって、得られる保持シール材は、JIS−K 6251に準拠する方法により測定した上記有機バインダの引張強さが、上記熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理された上記有機バインダと比較して4〜80%低いことを特徴とする保持シール材の製造方法。
前記熱ニードル処理工程において、表面温度が100〜250℃となるように加熱したニードルを前記マットに対して突き刺す請求項1又は2に記載の保持シール材の製造方法。
前記熱ニードル処理工程において、前記マットを100〜230℃で加熱しながらニードルを前記マットに対して突き刺す請求項1〜3のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
前記有機バインダはJIS−K 6251に準拠する方法により測定した引張強さが、0.7〜2.5MPaである請求項1〜5のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択された少なくとも1種から構成されている請求項1〜9のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の保持シール材の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図2】
図2は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
【
図3】
図3は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、排ガス浄化装置を製造する方法の一例を模式的に示した図である。
【0021】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の保持シール材について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0022】
以下、本発明のシール材の製造方法について説明する。
本発明の保持シール材の製造方法は、有機バインダが添着された無機繊維からなる保持シール材用のマットを準備するマット準備工程と、上記有機バインダが添着されたマットに対して、上記マット及び/又はニードルを加熱してニードルを突き刺す熱ニードル処理工程とからなる保持シール材の製造方法であって、得られる保持シール材は、JIS−K 6251に準拠する方法により測定した上記有機バインダの引張強さが、上記熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理された上記有機バインダと比較して4〜80%低いことを特徴とする。
【0023】
まず、本発明の保持シール材の製造方法を構成する各工程について説明する。
【0024】
(a)マット準備工程
本発明の保持シール材の製造方法では、まず、有機バインダが添着された無機繊維からなる保持シール材用のマットを準備するマット準備工程を行う。
【0025】
上記保持シール材用のマットを構成する無機繊維の種類及び特性は、本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材のマットを構成する無機繊維と同様であるので、上記無機繊維については、本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材についての説明において、説明することとする。
【0026】
保持シール材用のマットを構成する無機繊維は、種々の方法により得ることができるが、例えば、ニードリング法又は抄造法により製造することができる。
ニードリング法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、まず、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3〜10μmの平均繊維経を有する無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードルパンチング処理を施し、その後、焼成処理を施すことによりアルミナ繊維からなる無機繊維集合体を準備する。
続いて、上記無機繊維集合体に有機バインダを含む溶液を添着し、必要に応じて溶液中の溶媒を脱溶媒処理することで、有機バインダが添着された無機繊維からなる保持シール材用のマットの準備が完了する。
有機バインダを含む溶液を添着する方法としては、例えば、有機バインダを含む溶液を保持シール材に噴霧する方法、有機バインダを含む溶液に保持シール材を浸漬する方法、カーテンコート等が挙げられる。
【0027】
抄造法の場合、アルミナ繊維、シリカ繊維等の無機繊維と、有機バインダと、溶媒とを原料液中の無機繊維の含有量が所定の値となるように混合し、攪拌機で攪拌することで混合液を調製する。混合液には、必要に応じて、無機バインダとしての無機粒子やpH調整剤等を添加してもよい。さらに、上記混合液に対して、有機バインダと無機バインダを凝集剤により凝集させた凝集体を添加してもよい。続いて、底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込んだ後に、混合液中の溶媒を脱溶媒処理することにより、有機バインダが添着された無機繊維からなる保持シール材用のマットの準備が完了する。
【0028】
上記(a)マット準備工程で行われる脱溶媒処理としては、マットに含まれる溶媒を除去することができれば特に限定されないが、例えば、圧縮、回転、吸引、減圧等の手段により溶媒を除去することができる。
【0029】
本発明の保持シール材の製造方法で用いられるマットに添着された有機バインダを構成する高分子樹脂成分は、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、アクリル系樹脂であることが好ましく、さらに、上記有機バインダはエマルジョンであることが好ましい。
有機バインダを構成する高分子樹脂成分がアクリル系樹脂であると、有機バインダにより形成される有機バインダ皮膜の強度を後述する熱ニードル処理工程によって操作しやすく、本発明の保持シール材を構成する有機バインダとして適している。
さらに、有機バインダがエマルジョンであると、エマルジョンが無機繊維の表面全体を被覆し易く、無機繊維の表面全体に有機バインダによる皮膜を形成させやすくなるため、可撓性に優れた保持シール材を製造する方法として優れている。
【0030】
上記有機バインダのガラス転移温度は、−5℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。有機バインダのガラス転移温度が−5℃以下であると、有機バインダにより形成される皮膜の強度を高くすることができるため、可撓性に優れた保持シール材とすることができる。そのため、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際等に保持シール材が折れにくくなる。また、有機バインダにより形成される皮膜が硬くなり過ぎないため、無機繊維の飛散を抑制し易くなる。
なお、本発明の保持シール材の製造方法において、有機バインダのガラス転移温度は、後述する熱ニードル処理工程を施される前の有機バインダのガラス転移温度を示している。
【0031】
(b)熱ニードル処理工程
続いて、保持シール材を構成する所定の厚さのマットに対して、上記マット及び/又はニードルを加熱してニードルを突き刺す熱ニードル処理工程を行う。
【0032】
所定の厚さのマットに対してニードルを突き刺す処理方法をニードリング処理といい、具体的には、ニードルをマットに対して抜き差しする処理を行う。ニードリング処理が施された保持シール材では、比較的繊維長の長い無機繊維が3次元的に交絡する。この場合、ニードルマットの強度が向上することとなるが、比較的繊維長の短い無機繊維から構成される抄造法マットでは、このような効果はあまりみられない。
【0033】
ニードリング処理は、例えば、ニードリング装置を用いて行うことができる。ニードリング装置は、素地マットを支持する支持板と、この支持板の上方に設けられ、突き刺し方向(素地マットの厚さ方向)に往復移動可能なニードルボードとで構成されている。ニードルボードには、多数のニードルが取り付けられている。このニードルボードを支持板に載せた素地マットに対して移動させ、多数のニードルを素地マットに対して抜き差しすることで、素地マットを構成する無機繊維を複雑に交絡させることができる。
【0034】
本発明の保持シール材の製造方法ではニードルマットからなる保持シール材を製造することができる。その方法としては、加熱を伴わずに行われるニードリング処理によって製造されたニードルマットに対して熱ニードル処理工程を行ってもよく、加熱を伴わずに行われるニードリング処理のかわりに熱ニードル処理工程を行ってもよい。加熱を伴わずに行われるニードリング処理のかわりに熱ニードル処理工程を行う場合、無機繊維前駆体を一度焼成し、有機バインダを添着させてから熱ニードル処理工程を行うのが好ましい。
【0035】
熱ニードル処理工程を行う際、表面温度が100〜250℃となるように加熱したニードルをマットに対して突き刺すか、又は、上記マットを100〜230℃で加熱しながら、ニードルを上記マットに対して突き刺すことが好ましい。その際、有機バインダの劣化の程度を調整するために、ニードルをマット内に突き刺したまま保持し、所望の劣化の程度となったらニードルをマットから抜くことも可能である。
【0036】
ニードルを加熱する際には、ニードルボードにヒータを取り付け、ニードルが100〜250℃となるように加熱することが好ましい。
この後、熱したニードルをマットに対して抜き差しすることで、素地マットを構成する無機繊維を複雑に交絡させるとともに、有機バインダを一部劣化させる。
熱したニードルを用いることにより、マットの内部を均一に加熱することができ、広い範囲の有機バインダを一部劣化させることができる。
【0037】
マットを加熱する際にも、マットの上側及び/又は下側からヒータで加熱し、マットの温度を100〜230℃とした後、0.1〜30個/cm
2の密度となるように調整したニードルボードを用い、ニードルをマットに対して抜き差しする。
ニードルを抜き差しする際、ニードルが加熱され、加熱されたニードルがマットの内部を通過することにより、マットが厚み方向に対して均一に加熱される。
【0038】
本発明の保持シール材の製造方法においては、有機バインダが添着された無機繊維からなる保持シール材用のマットに対し、熱ニードル処理工程を行うことによって、保持シール材の形状を保ったまま、有機バインダを一部劣化させる。有機バインダを一部劣化させることによって、従来よりも低温、例えば600℃以下の状況下において有機バインダによる無機繊維の拘束が弱まり、保持シール材が膨張することとなる。そのため、本発明の保持シール材の製造方法を用いて製造された保持シール材は、600℃以下の低温域において充分な保持力を発揮し、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0039】
加熱したニードルを用いる場合、ニードルの表面温度が100℃未満であると、得られる保持シール材中の有機バインダを劣化させる効果が弱すぎることがあり、一方、ニードルの表面温度が250℃を超えると、得られる保持シール材中の有機バインダを劣化させる効果が強すぎ、ハンドリング等の衝撃により有機バインダが破壊されてしまい、マットの成形性を失うことがある。
【0040】
熱ニードル処理工程におけるニードル密度は特に限定されないが、0.1〜30個/cm
2であることが好ましい。
ニードル密度が0.1個/cm
2未満の場合、ニードル箇所が少なすぎるため、有機バインダの劣化による、マットが厚み方向に膨張するという効果が得られにくくなる。
抄造マットに対して熱ニードル処理を行う場合、ニードル密度が30個/cm
2を超えると、排ガス処理体へ巻回した際に、ニードル痕を起点としてマット表面に亀裂を生じやすくなる。
また、ニードルマットを製造する場合、ニードル密度が30個/cm
2を超えると、マットを構成する無機繊維同士の交絡が強くなりすぎるためにマットが湾曲し難くなり、排ガス処理体への巻回が困難となることがある。
【0041】
上記条件で熱ニードル処理工程を行うことにより、有機バインダの引張強さを、熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理した有機バインダと比較して4〜80%低下させることができる。また、このような保持シール材を300℃で10分間加熱すると、マットの厚さが2.2倍以上に変化する。得られる保持シール材の特性については、さらに詳しく説明する。
【0042】
その後、
図1に示すような凸部と凹部を備えた形状のマットとするためには、マットを所定の形状に切断する切断工程をさらに行えばよい。最初にマットを準備する工程において、上記形状のマットとするため、切断処理を行っていてもよい。
以上の工程を経ることにより、下記する特性を有する保持シール材を得ることができる。
【0043】
上記方法により得られる保持シール材を構成する有機バインダは、JIS−K 6251に準拠する方法により測定した引張強さが、熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理された上記有機バインダと比較して4〜80%低い。上記有機バインダの引張強さは、熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理されたものと比較して10〜80%低いことが好ましく、20〜80%低いことがより好ましい。
有機バインダの引張強さが、熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理された有機バインダと比較して4%未満しか低下していない場合、有機バインダの無機繊維同士を結束する力が強すぎるため、低温時に保持シール材がほとんど膨張しない。また、有機バインダの引張強さが、熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理されたものと比較して80%を超えて低下している場合、保持シール材をハンドリングする際の少しの衝撃で、有機バインダが破壊されてしまい、室温でも保持シール材が大きく膨張してしまうことがある。
すなわち、本発明の保持シール材を構成する有機バインダは、上記した製造工程を経ることにより、熱ニードル処理工程を行わずに105℃で熱処理した有機バインダと比較して、その引張強さが4〜80%低くなっている。
なお、上記有機バインダの引張強さを測定する温度は、特に規定しない限り室温20℃である。
【0044】
このような有機バインダが無機繊維に添着されていることによって、本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材は、300℃で10分間加熱した際に、保持シール材を構成するマットの厚さが2.2倍以上に変化するため、600℃以下、例えば300℃程度の低温環境下に晒された場合であっても、熱衝撃によって有機バインダが無機繊維同士を拘束する力が弱まり、保持シール材が膨張する。そのため、600℃以下の低温域においても充分な面圧を発揮し、保持シール材を安定的に保持することができる。
保持シール材は、300℃で10分間加熱した際にマットの厚さが3.5倍以下に変化することが好ましく、3.0倍以下に変化することがより好ましく、2.8倍以下に変化することがさらに好ましい。300℃で10分間加熱した際にマットの厚さが3.5倍を超えて変化する場合、低温域での保持性能が高くなりすぎるため、排ガス処理体を破壊してしまう可能性がある。
【0045】
得られる保持シール材を構成する有機バインダの引張強さは、0.7〜2.5MPaであることが好ましく、0.7〜2.0MPaであることがより好ましく、0.7〜1.5MPaであることがさらに好ましい。
有機バインダの引張強さが0.7〜2.5MPaであると、600℃以下の低温域において、保持シール材を拘束する力が弱まり、保持シール材を膨張させることができる。
また、有機バインダをこのような引張強さとするためには、上述した熱ニードル処理工程を施すことが好ましい。
得られる保持シール材を構成する有機バインダの引張強さが0.7MPa未満の場合、有機バインダの無機繊維同士を結束する力が弱いため、保持シール材をハンドリングする際の少しの衝撃で、有機バインダが破壊されてしまい、室温でも保持シール材が大きく膨張してしまうことがある。また、有機バインダの引張強さが2.5MPaを超える場合、有機バインダの無機繊維同士を結束する力が強すぎるため低温時に保持シール材がほとんど膨張しない。
なお、本発明の保持シール材の製造方法において、有機バインダの引張強さは、熱ニードル処理工程を施した後の有機バインダの引張強さを示している。
【0046】
上記保持シール材の製造方法により得られる保持シール材は、有機バインダを保持シール材全体の重量に対して固形分換算で0.1〜10重量%含有していることが好ましく、1〜9重量%含有していることがより好ましく、4〜8重量%含有していることがさらに好ましい。
有機バインダの含有量が0.1重量%未満の場合、保持シール材に充分な可撓性を付与することができないことがあり、保持シール材を排ガス処理体に巻きつける際に、クラックが発生することがある。一方、有機バインダの含有量が10重量%を超える場合、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
【0047】
本発明の保持シール材はさらに、無機バインダが添着されていてもよい。
無機バインダとしては、特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
【0048】
本発明の保持シール材は、無機バインダを保持シール材全体の重量に対して0.1〜10重量%含有していることが好ましく、1〜9重量%含有していることがより好ましく、4〜8重量%含有していることがさらに好ましい。
【0049】
本発明の保持シール材はさらに、有機バインダと無機バインダとが凝集した凝集体が添着されていてもよい。
凝集体を構成する有機バインダは、既に説明した上記有機バインダと同一であってもよく、異なっていてもよい。凝集体を構成する無機バインダは、既に説明した上記無機バインダと同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、凝集体を形成するために、凝集剤をさらに含んでいてもよい。
【0050】
本発明の保持シール材の製造方法より得られる保持シール材のマットを構成する無機繊維(又は、マット準備工程において用いられるマットを構成する無機繊維)は、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1種から構成されていることが好ましく、耐熱性や耐風蝕性等、マットに要求される特性等に応じて変更すればよく、各国の環境規制に適合できるような太径繊維や繊維長のものを使用するのが好ましい。
無機繊維が、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、及び、ムライト繊維の少なくとも1種である場合には、耐熱性に優れているので、排ガス処理体が充分な高温に晒された場合であっても、変質等が発生することはなく、保持シール材としての機能を充分に維持することができる。また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。
【0051】
上記無機繊維の中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が望ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。高結晶性アルミナ質であると、硬く脆いため、クッション材として用いられるマットには不向きである。
【0052】
さらに低結晶性アルミナ質かつスピネル型化合物を含む無機繊維の場合、結晶化比率は0.1〜30%の範囲が望ましく、0.4〜20%の範囲がさらに望ましい。この範囲の無機繊維で製作されたマットの反発力及び耐久試験後の復元面圧は高く、性能が良い。しかし、結晶化比率が0.1%未満または30%を超えると、急激に反発力や復元面圧は急激に低下してしまう。結晶化比率の測定方法は、ムライト回折線(2θ=26.4°)とγアルミナ回折線(2θ=45.4°)の積分強度比より算出することができる。
【0053】
上記マットを構成する無機繊維として生体溶解性繊維を用いてもよい。生体溶解性繊維は、例えば、シリカ等のほかに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる無機繊維である。
これらの化合物からなる生体溶解性繊維は、人体に取り込まれても溶解しやすいので、これらの無機繊維を含んでなるマットは人体に対する安全性に優れている。
【0054】
生体溶解性繊維の具体的な組成としては、シリカ60〜85重量%、並びに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を15〜40重量%含む組成が挙げられる。上記シリカとは、SiO又はSiO
2のことをいう。
【0055】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウムの酸化物等が挙げられ、上記アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの酸化物等が挙げられる。上記ホウ素化合物としては、ホウ素の酸化物等が挙げられる。
【0056】
生体溶解性繊維の組成において、シリカの含有量が、60重量%未満では、ガラス溶融法で作製しにくく、繊維化しにくい。
また、シリカの含有量が60重量%未満では、柔軟性を有するシリカの含有量が少ないため構造的にもろく、また、生理食塩水に溶けやすい、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の割合が相対的に高くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けやすくなりすぎる傾向にある。
【0057】
一方、シリカの含有量が85重量%を超えると、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の割合が相対的に低くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けにくくなりすぎる傾向にある。
なお、シリカの含有量は、SiO及びSiO
2の量をSiO
2に換算して算出したものである。
【0058】
また、生体溶解性繊維の組成においてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が40重量%を超えると、ガラス溶融法では作製しにくく、繊維化しにくい。また、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が40重量%を超えると、構造的にもろく、生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けやすくなりすぎる。
【0059】
本発明における生体溶解性繊維の生理食塩水に対する溶解度は、30ppm以上であることが好ましい。生体溶解性繊維の溶解度が30ppm未満では、無機繊維が体内に取り込まれた場合に、体外へ排出されにくく、健康上好ましくないからである。
【0060】
上記マットを構成する無機繊維のうち、ガラス繊維は、シリカとアルミナとを主成分とし、アルカリ金属のほかに、カルシア、チタニア、酸化亜鉛等からなるガラス状の繊維である。
【0061】
上記保持シール材を構成するマットは、上述したように、例えば、ニードリング法又は抄造法により製造することができる。
【0062】
交絡構造を呈するために、ニードリング法により得られるマットを構成する無機繊維はある程度の平均繊維長を有しており、例えば、無機繊維の平均繊維長は、1〜150mmであることが好ましく、10〜80mmであることがより好ましい。
無機繊維の平均繊維長が1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、無機繊維同士の交絡が不充分となり、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。また、無機繊維の平均繊維長が150mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、保持シール材を構成する繊維本数が減少するため、マットの緻密性が低下する。その結果、保持シール材のせん断強度が低くなる。
【0063】
抄造法により得られるマットを構成する無機繊維の平均繊維長は、0.1〜20mmであることが好ましい。
無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、もはや繊維としての特徴を実質上示さなくなり、マット状繊維集合体にしたときに繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、充分な面圧を得ることが困難になる。また、無機繊維の平均繊維長が20mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、抄造工程で水に無機繊維を分散したスラリー溶液中の無機繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、マット状繊維集合体としたときに無機繊維が不均一に集積しやすくなる。
繊維長の測定は、ニードリング法や抄造法ともにピンセットを使用して、マットから無機繊維が破断しないように抜き取り、光学顕微鏡を使用して繊維長を測定する。ここでは、無機繊維300本を抜き取り、繊維長を計測した平均を平均繊維長とした。マットから無機繊維を破断せずに抜き取れない場合、マットを脱脂処理して、脱脂済みマットを水の中へ投入し、無機繊維同士の絡みをほぐしながら無機繊維が破断しないように採取すると良い。
【0064】
上記保持シール材を構成する無機繊維の平均繊維径は、1〜20μmであることが好ましく、2〜15μmであることがより好ましく、3〜10μmであることがさらに好ましい。
なお、上記平均繊維径は、1000倍に拡大して表示されたSEM画像における30本の無機繊維の繊維径を平均したものである。
【0065】
本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材を構成するマットの形状等について説明する。なお、上記マットは、上記マット準備工程において用いるマットと同じ形状である。
【0066】
図1は、本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材の一例を模式的に示した斜視図である。
図1に示すように、保持シール材110は、所定の長手方向の長さ(以下、
図1中、矢印Lで示す)、幅(
図1中、矢印Wで示す)及び厚さ(
図1中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板形状のマットから構成されていてもよい。
【0067】
保持シール材110では、保持シール材の長さ方向側の端部のうち、一方の端部である第1の端部には凸部111が形成されており、他方の端部である第2の端部には凹部112が形成されている。保持シール材の凸部111及び凹部112は、後述する排ガス浄化装置を組み立てるために排ガス処理体に保持シール材を巻き付けた際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、「平面視略矩形」とは、凸部及び凹部を含む概念である。また、平面視略矩形には、角部が90°以外の角度を有する形状も含まれる。
【0068】
保持シール材の厚さは特に限定されないが、2.0〜20mmであることが好ましい。保持シール材の厚さが20mmを超えると、保持シール材の柔軟性が失われるので、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際に扱いづらくなる。また、保持シール材に巻きじわや割れが生じやすくなる。
保持シール材の厚さが2.0mm未満であると、保持シール材の面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなる。そのため、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。また、排ガス処理体に体積変化が生じた場合、保持シール材は排ガス処理体の体積変化を吸収しにくくなる。そのため、排ガス処理体にクラック等が発生しやすくなる。
【0069】
本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材の目付量(単位面積当たりの重量)は、特に限定されないが、200〜4000g/m
2であることが好ましく、1000〜3000g/m
2であることがより好ましい。保持シール材の目付量が200g/m
2未満であると、保持力が充分ではなく、保持シール材の目付量が4000g/m
2を超えると、保持シール材の嵩が低くなりにくい。そのため、このような保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体が脱落しやすくなる。
【0070】
また、本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材の嵩密度(巻き付ける前の保持シール材の嵩密度)についても、特に限定されないが、0.10〜0.30g/cm
3であることが好ましい。保持シール材の嵩密度が0.10g/cm
3未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、保持シール材の形状を所定の形状に保ちにくくなる。
また、保持シール材の嵩密度が0.30g/cm
3を超えると、保持シール材が硬くなるため、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
【0071】
本発明の保持シール材により得られる保持シール材を排ガス浄化装置の保持シール材として用いる場合、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の枚数は特に限定されず、一枚の保持シール材であってもよいし、互いに結合された複数枚の保持シール材であってもよい。複数枚の保持シール材を結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いで保持シール材同士を結合する方法、粘着テープ又は接着剤で保持シール材同士を接着する方法等が挙げられる。
【0072】
本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を保持するための保持シール材として使用することができる。
【0073】
以下、上記保持シール材を用いた排ガス浄化装置について説明する。
【0074】
図2は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
図2に示すように、排ガス浄化装置100は、金属ケーシング130と、金属ケーシング130に収容された排ガス処理体120と、排ガス処理体120及び金属ケーシング130の間に配設された保持シール材110とを備えている。
排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング130の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0075】
排ガス浄化装置を構成する保持シール材としては、
図1に示す保持シール材110をはじめとする本発明の保持シール材を使用することができる。
【0076】
続いて、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体(ハニカムフィルタ)及び金属ケーシングについて説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成する保持シール材の構成については、本発明の保持シール材としてすでに説明しているので省略する。
【0077】
排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0078】
排ガス浄化装置を構成するケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状等を好適に用いることができる。
【0079】
続いて、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
図3は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0080】
図3に示す排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル125のいずれかの端部は、封止材128で封止されている。さらに、排ガス処理体120の外周面には、外周コート層127が形成されている。
【0081】
図3に示す排ガス処理体120のように、セル125のいずれかの端部が封止されている場合、排ガス処理体120の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが好ましい。
【0082】
排ガス処理体を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0083】
排ガス処理体を構成するセルの断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0084】
排ガス処理体を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが好ましい。
これらの多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、
図2に示す排ガス浄化装置100では、排ガス処理体120の側面の周囲に保持シール材110が介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体120にクラック等が発生するのを防止することができる。
【0085】
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が好ましく、この中では、白金がより好ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0086】
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0087】
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0088】
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、外周面に外周コート層が形成されていてもよく、形成されていなくてもよい。排ガス処理体の外周面に外周コート層が形成されていると、排ガス処理体の外周部を補強したり、形状を整えたり、断熱性を向上させることができる。なお、排ガス処理体の外周面とは、柱状である排ガス処理体の側面部分を指す。
【0089】
上述した構成を有する排ガス浄化装置を排ガスが通過する場合について、
図2を参照して以下に説明する。
図2に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(
図2中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)120の排ガス流入側端面120aに開口した一のセル125に流入し、セル125を隔てるセル壁126を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁126で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面120bに開口した他のセル125から流出し、外部に排出される。
【0090】
次に、排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
図4は、排ガス浄化装置を製造する方法の一例を模式的に示した図である。
【0091】
図4に示すように、まず、排ガス処理体120の周囲に沿って保持シール材110を巻き付け、巻付体140とする。次に、この巻付体140を金属ケーシング130に収容することで、排ガス浄化装置を製造することができる。
【0092】
巻付体140を金属ケーシング130に収容する方法としては、例えば、金属ケーシング130内部の所定の位置まで周囲に保持シール材110が配設された排ガス処理体120を圧入する圧入方式(スタッフィング方式)、金属ケーシング130の内径を縮めるように外周側から圧縮するサイジング方式(スウェージング形式)、並びに、金属ケーシングを第1のケーシング及び第2のケーシングの部品に分離可能な形状としておき、巻付体140を第1のケーシング上に載置した後に第2のケーシングをかぶせて密封するクラムシェル方式等が挙げられる。
圧入方式によって巻付体を金属ケーシングに収容する場合、金属ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、上記巻付体の外径より若干小さくなっていることが好ましい。
【0093】
排ガス浄化装置は、互いに結合された2層以上の複数枚の保持シール材から構成されていてもよい。複数枚の保持シール材を結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いで保持シール材同士を結合する方法、粘着テープ又は接着剤で保持シール材同士を接着する方法等が挙げられる。
【0094】
以下、本発明の保持シール材の製造方法の作用効果について説明する。
【0095】
(1)本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材は、熱ニードル処理工程を行っており、無機繊維に添着された有機バインダの引張強さが、熱ニードル処理工程を行わずに105℃で加熱した有機バインダと比較して4〜80%低下している。そのため、本発明の保持シール材は600℃以下の低温域、例えば300℃程度の温度であっても保持シール材が膨張する。従って、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0096】
(2)本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材は、300℃で10分間加熱した際に、マットの厚さが2.2倍以上に変化する。そのため、600℃以下の低温域、例えば300℃程度の温度であっても保持シール材が充分に膨張し、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
【0097】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0098】
(a)マット準備工程
(a−1)紡糸工程
Al含有量が70g/Lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al
2O
3:SiO
2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製する。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して平均繊維径が5.6μmである無機繊維前駆体を作製する。続いてこの無機繊維前駆体を740℃で10分間加熱し、無機繊維を作製する。
【0099】
(a−2)開繊工程
次に、上記無機繊維168.3gを水75Lに投入し、60Hzで30分間、ミキサーを用いて撹拌し、開繊された上記無機繊維の溶液を得る。
【0100】
(a−3)スラリー調製工程
上記(a−2)開繊工程により得た開繊された上記無機繊維の溶液に対して、アクリル系樹脂を水溶性溶媒に分散させたアクリルラテックス溶液(BSAF社製、AcronalA420S)を12.3g投入し、60Hzで1分間撹拌する。続いて、アルミナゾル(SASOL社製、DISPERAL)を6.8g投入し、60Hzで1分間撹拌する。さらに、高分子凝集剤として、非イオン性ポリアクリルアミド(BSAF社製、Percol47NS)の0.5重量%水溶液を336.6g投入し、60Hzで1分間撹拌する。上記の方法により、スラリーを調製する。
【0101】
(a−4)抄造工程
335mm×335mmのタッピ式抄造機を用いて、上記スラリーを抄造することにより、目付量(単位面積当たりの重量)が1500g/m
2の無機繊維集合体を得る。
【0102】
(a−5)乾燥工程
プレス式乾燥機を用いて、得られた無機繊維集合体を厚さ7.0mmに圧縮した状態で、105℃で40分間熱処理して乾燥させる。
【0103】
(a−6)熱ニードル処理工程
(a−5)乾燥工程で得られるマットに対して、ニードルボードにヒータを取り付けて加熱したニードルを抜き差しすることにより、保持シール材を作製する。
【0104】
(膨張試験)
熱ニードル処理工程を行った保持シール材を300℃で10分間加熱し、加熱前のマットの厚みに対する加熱後のマットの厚みの割合(加熱後マットの厚み(%))を求める。
【0105】
(引張強さ試験)
本発明の保持シール材の製造方法により得られる保持シール材を構成する有機バインダ皮膜の引張強さを直接測定することは困難であるため、以下の手順により、熱ニードル処理工程を施された有機バインダ皮膜を模して引張強さを測定する。上記(a−3)スラリー調製工程で用いたアクリルラテックス溶液(BSAF社製、AcronalA420S)を100mm×100mmの型に流し込む。
続いて、型に流し込んだアクリルラテックス溶液を105℃で2.5時間かけて乾燥し、有機バインダシートを得る。続いて、有機バインダシートの両面に加熱した鉄板を接触させて、ニードルを差し込ませている時間と同様の時間だけ保持する。このような方法で有機バインダシートを加熱することで引張強さ試験シートを得る。
なお、各引張強さ試験シートの厚さが1mmとなるよう、型に流し込むアクリルラテックス溶液の量を調製する。
JIS−K 6251に規定される2号ダンベル形状となるよう各引張強さ試験シートを直径3mm以上の気泡を含まないように打ち抜き、引張強さ試験用の試験片を作製する。その際、試験片のダンベル形状のくびれた箇所に存在する直径1〜3mmの気泡の数は、5個以下であることが望ましく、0個だとさらに望ましい。試験片が気泡を含んでいると、断面積が低下して引張強さが低くなり、正確な値を測定することができない。型に流し込んだアクリルラテックス溶液を乾燥させる途中で、有機バインダが流動性を有している時に気泡を破壊したり、振動を加えて気泡を移動させたりすることによって、引張強さ試験シートを打ち抜く際に気泡を少なくする。続いて、インストロン型引張試験機で試験片を500mm/minの速度で引っ張り、破断した際の荷重から引張強さを求める。