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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-230087(P2015-230087A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】プーリ
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20151124BHJP
   F16C 23/08 20060101ALI20151124BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20151124BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20151124BHJP
   F16J 15/32 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   F16H55/36 A
   F16H55/36 H
   F16C23/08
   F16C19/26
   F16C19/36
   F16J15/32 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-117889(P2014-117889)
(22)【出願日】2014年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正人
【テーマコード(参考)】
3J006
3J012
3J031
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE25
3J006AE38
3J012AB02
3J012BB01
3J012BB03
3J012CB04
3J012DB01
3J012EB01
3J012EB20
3J012FB11
3J012GB10
3J031AA03
3J031BA03
3J031BA08
3J031CA03
3J701AA13
3J701AA15
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA77
3J701EA77
3J701FA42
3J701GA01
3J701GA60
(57)【要約】
【課題】 回転軸線の軸線方向に相対移動可能な内輪及び外輪を有し、無端状の動力伝達部材が巻き掛けられる回転部材において、内輪及び外輪の相対位置を安定させる。
【解決手段】 回転部材1であって、所定の回転軸線Aを中心として回転可能な内輪3と、内輪の外周側に同心状に配置され、伝達部材が巻き掛けられる外輪4と、内輪の外面と外輪の内面との間に介装され、内輪及び外輪の少なくとも一方に対して回転軸線の軸線方向に変位することによって、内輪に対する外輪の回転軸線の軸線方向への変位を許容する転動体5と、内輪の外面及び外輪の内面の一方に一体的に回転するように係止されると共に、内輪の外面及び外輪の内面の他方に周方向に相対回転可能に係止され、内輪及び外輪を互いに回転軸線の軸線方向に付勢する弾性部材38とを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の動力伝達部材が巻き掛けられる回転部材であって、
所定の回転軸線を中心として回転可能な内輪と、
前記内輪の外周側に同心状に配置され、前記伝達部材が巻き掛けられる外輪と、
前記内輪の外面と前記外輪の内面との間に介装され、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方に対して前記回転軸線の軸線方向に変位することによって、前記内輪に対する前記外輪の前記回転軸線の軸線方向への変位を許容する転動体と、
前記内輪の外面及び前記外輪の内面の一方に一体的に回転するように係止されると共に、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の他方に周方向に相対回転可能に係止され、前記内輪及び前記外輪を互いに前記回転軸線の軸線方向に付勢する弾性部材とを有することを特徴とする回転部材。
【請求項2】
前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記回転軸線の軸線方向における両端部のそれぞれに設けられ、前記内輪の外面及び前記外輪の内面と共に部屋を形成する一対のシール部材と、
前記部屋に封入された潤滑剤とを有することを特徴とする請求項1に記載の回転部材。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記回転軸線と同軸に配置される環状部と、前記環状部から前記回転軸線の径方向及び軸線方向に突出すると共に、前記回転軸線の軸線方向に弾性変形可能な突片部とを有し、
前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記一方は、前記突片部を前記回転軸線の周方向かつ軸線方向において変位不能に係止する係止凹部を有し、
前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記他方は、前記回転軸線の周方向に延在し、前記環状部を前記回転軸線の周方向に変位可能かつ前記回転軸線の軸線方向に変位不能に係止する係止溝を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転部材。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記突片部又は前記環状部から突出し、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の間に配置される遊端を形成する分岐部を有することを特徴とする請求項3に記載の回転部材。
【請求項5】
前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記一方に設けられ、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の他方側に向けて延びる隔壁部材を更に有し、
前記隔壁部材は、前記部屋を転動体が配置される部分と前記弾性部材が配置される部分とに区画すると共に、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記他方との間に連通路を形成することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1つの項に記載の回転部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状の伝達部材が巻き掛けられる回転部材に関し、例えばプーリやスプロケットに適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内燃機関において、クランクシャフトと発電機やウォータポンプ等のエンジン補機とが、プーリ及び無端状のベルトからなる動力伝達機構を介して連結されたものがある。この動力伝達機構では、クランクシャフト及び各エンジン補機の駆動軸に結合される各プーリは、互いに平行な回転軸線を有して同一平面上に配置され、ベルトは各プーリが配置された平面上に配置され、各プーリの周方向と平行に各プーリの外周部に進入することが好ましい。しかしながら、内燃機関に対するエンジン補機の組み付け誤差や、クランクシャフトや各エンジン補機の駆動軸に対するプーリの組み付け誤差、クランクシャフトや各エンジン補機に生じる負荷変動に起因して、各プーリが共通の平面からずれる場合がある。この場合には、ベルトは、回転軸線の軸線方向に蛇行し、各プーリの周方向に対して角度を持ってプーリの外周部に進入することになる。そのため、ベルトがプーリに片当りし、ベルト及びプーリに局所的な応力が加わると共に、摩擦に伴う異音が生じる問題がある。
【0003】
この問題に対して、プーリを内輪及び外輪と、内輪と外輪との間に介装されるボールとから構成し、回転軸線の軸線方向において内輪及び外輪の相対移動を可能にしたものがある(例えば、特許文献1)。このプーリでは、内輪に対して外輪が回転軸線の軸線方向に変位することによって、プーリ間のずれが緩和され、プーリの周方向に対するベルトの進入角が小さくなる。これにより、ベルト及びプーリの片当りが抑制される。内輪及び外輪の回転軸線の軸線方向への相対移動はストッパによって規制され、内輪に対する外輪の脱落が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−151216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るプーリでは、内輪及び外輪の相対変位に抗する抵抗力を与える構成がないため、内輪に対して外輪が回転軸線の軸線方向に容易に変位し、外輪の位置が振動して安定しない虞がある。特に、内輪及び外輪がストッパを介して互いに接触する位置付近で外輪の位置が変動すると、内輪及び外輪の衝突音が連続して発生するという問題がある。また、内輪及び外輪が互いに正対した初期位置に復帰することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、回転軸線の軸線方向に相対移動可能な内輪及び外輪を有し、無端状の伝達部材が巻き掛けられる回転部材において、内輪及び外輪の相対位置を安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、無端状の動力伝達部材(20)が巻き掛けられる回転部材(1)であって、所定の回転軸線(A)を中心として回転可能な内輪(3)と、前記内輪の外周側に同心状に配置され、前記伝達部材が巻き掛けられる外輪(4)と、前記内輪の外面と前記外輪の内面との間に介装され、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方に対して前記回転軸の軸線方向に変位することによって、前記内輪に対する前記外輪の前記回転軸線の軸線方向への変位を許容する転動体(5)と、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の一方に一体的に回転するように係止されると共に、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の他方に周方向に相対回転可能に係止され、前記内輪及び前記外輪を互いに前記回転軸線の軸線方向に付勢する弾性部材とを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、内輪に対して外輪が回転軸線の軸線方向に変位可能な回転部材において、弾性部材が内輪及び外輪を互いに正対させる初期位置に付勢するため、内輪に対する外輪の位置が安定する。
【0009】
また、上記発明において、前記内輪の外面(17)及び前記外輪の内面(18)の前記回転軸線の軸線方向における両端部のそれぞれに設けられ、前記内輪の外面及び前記外輪の内面と共に部屋(45)を形成する一対のシール部材(41)と、前記部屋に封入された潤滑剤とを有するとよい。
【0010】
この構成によれば、内輪及び外輪の間に封入される潤滑剤は、内輪及び外輪が互いに回転するときに、内輪及び外輪の一方と共に回転する弾性部材によって撹拌される。これにより、潤滑剤の局所的な温度上昇が抑制され、潤滑剤の劣化が抑制される。
【0011】
また、上記発明において、前記弾性部材は、前記回転軸線と同軸に配置される環状部(38A)と、前記環状部から前記回転軸線の径方向及び軸線方向に突出すると共に、前記回転軸線の軸線方向に弾性変形可能な突片部(38B)とを有し、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記一方は、前記突片部を前記回転軸線の周方向かつ軸線方向において変位不能に係止する係止凹部(36A)を有し、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記他方は、前記回転軸線の周方向に延在し、前記環状部を前記回転軸線の周方向に変位可能かつ前記回転軸線の軸線方向に変位不能に係止する係止溝(32)を有するとよい。
【0012】
この構成によれば、内輪及び外輪を回転軸線の軸線方向に付勢し、かつ内輪及び外輪の一方と一体に回転することができる弾性部材を簡素な構造とすることができる。また、弾性部材と係合する部分を係止溝及び係止凹部のように凹部としたため、内輪及び外輪の間に潤滑剤を封入する場合に、係止溝及び係止凹部と弾性部材との隙間に潤滑剤を保持することができ、封入可能な潤滑剤量を増加させることができる。
【0013】
また、上記発明において、前記弾性部材は、前記突片部又は前記環状部から突出し、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の間に配置される遊端を形成する分岐部(38D)を有する。
【0014】
この構成によれば、分岐部によって潤滑剤の撹拌作用を促進させることができる。
【0015】
また、上記発明において、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記一方に設けられ、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の他方側に向けて延びる隔壁部材(46)を更に有し、前記隔壁部材は、前記部屋を転動体が配置される部分(45A)と前記弾性部材が配置される部分(45B)とに区画すると共に、前記内輪の外面及び前記外輪の内面の前記他方との間に連通路(47)を形成するとよい。
【0016】
この構成によれば、弾性部材による潤滑油の撹拌作用が、転動体付近の潤滑油に与える影響を調整し、転動体付近の潤滑油の温度を適正な値に設定することができる。潤滑油は、一般に温度の低下に伴って粘性抵抗が増大するため、弾性部材の撹拌作用による冷却効果が大きい場合には転動体の回転抵抗が増加する虞がある。そのため、隔壁部材を配置し、連通路の面積を変更することによって、弾性部材による潤滑油の撹拌作用が転動体付近の潤滑油に与える影響を調整し、転動体付近の潤滑油の温度及び粘性抵抗を適切な状態にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成によれば、回転軸線の軸線方向に相対移動可能な内輪及び外輪を有し、無端状の伝達部材が巻き掛けられる回転部材において、内輪及び外輪の相対位置を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るプーリを一部破断して示す正面図
図2図1のII−II断面図
図3】(A)弾性部材の斜視図、(B)弾性部材の側面図
図4】第1実施形態に係るプーリの外輪が内輪に対して回転軸線の軸線方向に変位した状態を示す断面図
図5】第2実施形態に係るプーリの断面図
図6】第3実施形態に係るプーリの断面図
図7】第4実施形態に係るプーリを一部破断して示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明をプーリに適用した第1実施形態を説明する。本実施形態に係るプーリ1は、自動車の内燃機関のクランクシャフトや、発電機、ウォータポンプ、エアコンプレッサ、燃料ポンプ等を含むエンジン補機の駆動軸等の軸部材2に結合され、ベルト20が掛け渡されるものである。
【0020】
図1及び図2に示すように、プーリ1は、内輪3と、内輪3と同心状に配置された外輪4と、内輪3及び外輪4の間に配置された複数の転動体5とを有する。内輪3は、軸部材2に結合されるハブ11と、ハブ11から径方向外方に延出する複数のスポーク12と、各スポーク12の外端に結合され、ハブ11と同心状に配置されたリム13とを有する。
【0021】
ハブ11の中央部には中央孔14が形成され、中央孔14に軸部材2が圧入されることによって、ハブ11は軸部材2と一体的に回転するように結合される。ハブ11は、中央孔14の軸線(軸部材2の軸線)を回転軸線Aとして回転する。以下の説明では、回転軸線Aを中心とした周方向を単に周方向、回転軸線Aの径方向を単に径方向という。
【0022】
リム13は、回転軸線Aを中心とした環形状に形成され、回転軸線Aの軸線方向に所定の幅を有する。リム13の外周面17は、回転軸線Aを中心とした等径の円周面に形成されている。リム13の外周面17は、内輪3の外周面をなす。
【0023】
外輪4は、回転軸線Aを中心とした環形状に形成され、回転軸線Aの軸線方向に所定の幅を有する。外輪4の内周面18は、回転軸線Aを中心とした等径の円周面に形成されている。外輪4は、その内周面18が内輪3の外周面17と径方向において対向するように配置される。外輪4の内周面18の直径は内輪3の外周面17の直径よりも大きく、外輪4の内周面18と内輪3の外周面17との間には空間(隙間)が形成される。
【0024】
外輪4の外周面17には、ベルト20が巻き掛けられる。本実施形態では、ベルト20は一例として、長手方向に延在する複数のリブを有するVリブドベルトとして構成されている。外輪4の外周面17には、Vリブドベルトであるベルト20と係合可能なように、周方向に延在する複数のリブ22が突設されている。他の実施形態では、外輪4の外周面17は採用されるベルト20の形状に応じた形状に形成されるよい。外輪4の外周面17の回転軸線Aの軸線方向における両縁部には、径方向外方に突出すると共に、縁部に沿って周方向に延在する規制壁23がそれぞれ形成されている。ベルト20は一対の規制壁23によって回転軸線Aの軸線方向への移動が規制され、外輪4の外周面17からの脱落が抑制されている。
【0025】
外輪4の内周面18には、径方向外方に向けて凹設された受容部25(ポケット)が複数形成されている。受容部25は、回転軸線Aの軸線方向に外輪4の幅よりも小さい所定の幅を有し、周方向に所定の長さを有する。受容部25は、周方向における一端側(図1において反時計回り側)に進むほど径方向における深さが浅くなっている。受容部25は、周方向における一端部にカム面25A、他端部に滑り面25Bを有する。カム面25Aは回転軸線Aの径方向に対して傾斜しており、滑り面25Bは回転軸線Aの径方向に対して概ね平行に延在している。すなわち、カム面25Aの径方向に対する傾斜角は、滑り面25Bの径方向に対する傾斜角よりも大きく設定されている。外輪4の内面において、各受容部25は周方向に等間隔に配置されている。
【0026】
転動体5は、円柱形のころである。転動体5は、中心軸線が回転軸線Aと平行となるように配置され、各受容部25に対応して配置される。転動体5は、外周部の一部が受容部25内に受容され、他の部分が受容部25から内輪3の外周面17に向けて突出するように配置される。転動体5の長さ(回転軸線Aの軸線方向における長さ)は、受容部25の幅よりも小さく形成され、転動体5は受容部25内において回転軸線Aの軸線方向に変位可能になっている。また、転動体5は受容部25内において周方向に変位可能になっている。
【0027】
外輪4の内周面18には、一対の外輪シール溝31、一対の係止溝32、及び一対のクリップ溝33が形成されている。一対の外輪シール溝31、一対の係止溝32、及び一対のクリップ溝33は、それぞれ外輪4の内周面18に径方向外方に向けて凹設された溝であり、周方向に延在して環状に形成されている。外輪4の内周面18には、回転軸線Aの軸線方向に沿った一側から、外輪シール溝31、係止溝32、クリップ溝33、受容部25、クリップ溝33、係止溝32、及び外輪シール溝31の順で形成されている。一対の外輪シール溝31は、内周面18の回転軸線Aの軸線方向における両端部に形成されている。
【0028】
内輪3の外周面17には、一対の内輪シール溝35、及び一対の係止凹部群36が形成されている。一対の内輪シール溝35は、それぞれ内輪3の外周面17を径方向内方に凹設された溝であり、周方向に延在して環状に形成されている。一対の係止凹部群36は、それぞれ内輪3の外周面17を径方向内方に凹設された係止凹部36Aを周方向に複数含むものである。本実施形態では、各係止凹部群36は、周方向において等間隔に配置された複数の係止凹部36Aを含む。内輪3の外周面17には、回転軸線Aの軸線方向に沿った一側から、内輪シール溝35、係止凹部群36、係止凹部群36、及び内輪シール溝35の順で形成されている。一対の内輪シール溝35は、外周面17の回転軸線Aの軸線方向における両端部に形成されている。
【0029】
内輪3及び外輪4が径方向において互いに正対する位置を初期位置とすると、初期位置において、内輪シール溝35と外輪シール溝31とは、径方向において互いに正対する位置に配置されている。初期位置において、係止凹部群36は、対応する係止溝32よりも回転軸線Aの軸線方向において端部側に偏倚して配置されている。
【0030】
互いに対応する係止溝32及び係止凹部36Aには弾性部材38が装着される。図2及び図3に示すように、弾性部材38は、円環状に形成された環状部38Aと、環状部38Aの内周縁から径方向内側及び環状部38Aの軸線方向における一側に傾斜しつつ延びる複数の突片部38Bとを有する。弾性部材38は弾性率が高い材料から形成されている。本実施形態では、弾性部材38は、ばね鋼等の弾性率が高い鋼板を材料とし、プレス成形等の塑性加工によって形成されている。
【0031】
図3に示すように、突片部38Bには、断面がU字状の貫通孔38Cが形成されている。突片部38Bの貫通孔38Cに囲まれた部分は、突片部38Bの他の部分に対して曲げ起こされ、分岐部38Dを形成する。本実施形態では、貫通孔38CはU字状の開口部分が環状部38A側を向くように配置され、分岐部38Dの先端が突片部38Bの先端側を向くように配置されている。また、分岐部38Dは、環状部38Aに対してなす傾斜角度が、突片部38Bが環状部38Aに対してなす傾斜角度よりも小さくなるように形成されている。
【0032】
弾性部材38の環状部38Aの外周部は、外輪4の係止溝32に係止され、外輪4に対して回転軸線Aを中心として回動可能、かつ回転軸線Aの軸線方向に変位不能になる。なお、環状部38Aと係止溝32の壁部との間には若干の隙間があり、この隙間内で環状部38Aは回転軸線Aの軸線方向に若干変位することが可能である。また、弾性部材38の各突片部38Bの先端は、内輪3の各係止凹部36Aに係止され、内輪3に対して回転軸線Aを中心とした周方向、及び回転軸線Aの軸線方向に変位不能になる。なお、突片部38Bと係止凹部36Aの壁部との間には若干の隙間があり、この隙間内で突片部38Bは回転軸線Aの軸線方向に若干変位することが可能である。これにより、弾性部材38は、内輪3と一体に回転し、外輪4に対して相対回転可能となっている。
【0033】
弾性部材38を係止溝32及び係止凹部36Aに装着するときには、最初に環状部38Aを弾性変形させつつ係止溝32に挿入し、続いて各突片部38Bを弾性変形させつつ各係止凹部36Aに挿入するとよい。なお、環状部38Aの係止溝32への挿入を容易にするために、環状部38Aの周方向における一部に開裂部を設け、環状部38AをC字状にしてもよい。開裂部の存在によって、環状部38Aは縮径及び拡径が容易になる。
【0034】
図2に示すように、互いに対向する外輪シール溝31及び内輪シール溝35には、シール部材41が係止される。シール部材41は、円環状の本体部41Aと、本体部41Aの外周縁に沿って形成された外縁係止爪41Bと、本体部41Aの内周縁に沿って形成された内縁係止爪41Cとを有する。シール部材41は、可撓性を有する部材から形成されている。シール部材41は、外縁係止爪41Bが外輪シール溝31に周方向に変位可能、かつ回転軸線Aの軸線方向に変位不能に係止され、内縁係止爪41Cが内輪シール溝35に周方向に変位可能、かつ回転軸線Aの軸線方向に変位不能に係止されることによって、外輪4及び内輪3に対して周方向に回動可能に係止される。一対のシール部材41が、外輪シール溝31及び内輪シール溝35に係止されることによって、外輪4の内周面18と内輪3の外周面17との間に形成される空間の回転軸線Aの軸線方向における両端が閉じられる。シール部材41を外輪シール溝31及び内輪シール溝35に装着するときには、シール部材41を弾性変形させ、外輪シール溝31及び内輪シール溝35に挿入するとよい。
【0035】
外輪4の内周面18、内輪3の外周面17、及び一対のシール部材41は閉じた潤滑室45を形成する。潤滑室45には、グリース等の潤滑剤が封入される。
【0036】
各クリップ溝33には、C字状に形成されたクリップ46(隔壁部材)の外周部が突入することによって係止される。クリップ46は、板状に形成され、径方向に所定の幅を有する。また、クリップ46は、可撓性を有し、外径が縮小する方向に弾性変形することができる。クリップ46のクリップ溝33への装着は、クリップ46を弾性変形させつつ、クリップ溝33に挿入するとよい。
【0037】
クリップ46の内周部は、外輪4の内周面18から径方向内方に内輪3の外周面17側に延び、潤滑室45を区画する隔壁を構成する。一対のクリップ46は、潤滑室45を回転軸線Aの軸線方向において、中央室45Aと、中央室45Aの両側に配置された一対の側室45Bとに区画する。クリップ46の内周縁は、内輪3の外周面17から離間するように配置され、外周面17との間に各室45A、45Bを連通する連通路47を形成する。中央室45Aには転動体5が配置され、各側室45Bにはそれぞれ弾性部材38が配置される。
【0038】
以上のように構成した第1実施形態に係るプーリ1の作用及び効果を説明する。以下の説明では、図1を基準として各要素の時計回り方向、反時計回り方向を規定する。
【0039】
図1に示すように、内輪3が外輪4に対して回転軸線Aを中心として時計回り方向に回転するときには、各転動体5は内輪3から摩擦力を受けて、受容部25内を周方向において時計回り方向に移動する。受容部25は、周方向において時計回り方向における端部の深さが深くなっており、滑り面25Bが概ね径方向に延在しているため、転動体5は滑り面25B上を摺動しつつ自身の軸線を中心として自転する。これにより、内輪3及び外輪4間のトルク伝達は行われず、内輪3及び外輪4は相対回転する。
【0040】
一方、内輪3が外輪4に対して回転軸線Aを中心として反時計回り方向に回転するときには、各転動体5は内輪3から摩擦力を受けて、受容部25内を周方向において反時計回り方向に移動する。受容部25は、周方向において反時計回り方向における端部の深さが浅くなってカム面25Aを形成しているため、転動体5はカム面25Aと内輪3の外周面17との間に噛みこまれる。これにより、内輪3及び外輪4のトルク伝達が行われ、内輪3及び外輪4は一体となって回転する。このように、本実施形態に係るプーリ1はワンウェイクラッチとして機能する。
【0041】
図4に示すように、本実施形態に係るプーリ1では、内輪3及び外輪4の少なくとも一方が、転動体5に対して回転軸線Aの軸線方向に摺動することによって、外輪4が内輪3に対して回転軸線Aの軸線方向に変位することができる。これにより、ベルト20が複数のプーリ1に掛け渡される場合において、各プーリ1の内輪3間に回転軸線Aの軸線方向における位置ずれが生じていても、外輪4が内輪3に対して回転軸線Aの軸線方向に変位することによって、各外輪4間の位置ずれが低減される。各外輪4間の回転軸線Aの位置ずれが低減されると、ベルト20の各外輪4に対する進入角度(ベルト20の進入方向とプーリ1の周方向とがなす角度)が小さくなり、片当りが抑制されて、偏摩耗及び摩擦に起因する異音が抑制される。
【0042】
外輪4が内輪3に対して回転軸線Aの軸線方向に変位するときには、一対のシール部材41はそれぞれ変形して内輪3及び外輪4に追従し、潤滑室45を閉じた状態に維持し、潤滑剤の漏出を抑制する。具体的には、シール部材41の本体部41A、及び本体部41Aと外縁係止爪41B及び内縁係止爪41Cとの境界部が弾性変形し、外縁係止爪41Bが外輪シール溝31に係止された状態を維持すると共に、内縁係止爪41Cが内輪シール溝35に係止された状態を維持する。
【0043】
弾性部材38は、環状部38Aにおいて外輪4に回転軸線Aの軸線方向に変位不能に係止され、突片部38Bにおいて内輪3に回転軸線Aの軸線方向に変位不能に係止されているため、内輪3及び外輪4が回転軸線Aの軸線方向に変位するときに、回転軸線Aの軸線方向に荷重を受け、この荷重に対する抵抗力を生じる。この抵抗力は、内輪3及び外輪4が初期位置にあるときに最も小さく、内輪3及び外輪4の相対変位量が増加するに従って増加する。弾性部材38による抵抗力は、内輪3及び外輪4の相対変位を小さくする方向に作用し(内輪3及び外輪4を初期位置に復帰させる付勢力として作用し)、内輪3及び外輪4の相対変位が安定する。
【0044】
弾性部材38は、内輪3と一体に回転し、外輪4に対して相対回転するため、潤滑室45内に封入された潤滑剤を撹拌する。潤滑剤が撹拌されることによって、潤滑室45内の潤滑剤の温度分布が均質化され、転動体5と内輪3及び外輪4との接触部の摩擦熱による局所的な潤滑剤の温度上昇が抑制される。潤滑剤の温度上昇が抑制されることによって、潤滑剤の劣化が抑制される。
【0045】
突片部38Bから切り起こされた分岐部38Dは、弾性部材38が潤滑剤に衝突する面積を拡張すると共に、弾性部材38の表面の凹凸を増加させ、潤滑剤の撹拌効果を一層高める。
【0046】
潤滑室45を区画するクリップ46は、弾性部材38による潤滑剤の撹拌効果を調整する効果を奏する。潤滑剤は、温度の低下に伴って流動性が低下するものが多く、温度が低いと内輪3、外輪4及び転動体5の相対変位に対する抵抗力が増大する。そのため、クリップ46によって、転動体5が配置された中央室45Aと、弾性部材38が配置された側室45Bとを区画することによって、弾性部材38による潤滑剤の撹拌作用が転動体5付近の潤滑剤に影響を与え難くし、転動体5付近の潤滑剤の温度を比較的高く維持することができる。弾性部材38による潤滑剤の撹拌作用が、転動体5付近の潤滑剤に与える影響は、中央室45Aと側室45Bとを連通する連通路47の面積を増減させることによって調整することができる。連通路47の面積は、クリップ46の径方向における幅を変更することによって調整することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、上記の第1実施形態の一部を変更した第2実施形態に係るプーリ100について説明する。以下の説明では、第1実施形態と同様の構成は同一の符号を付して説明を省略する。図5に示すように、第2実施形態に係るプーリ100では、内輪3の外周面17に筒状のインナレース101が変位不能に装着され、外輪4の内周面18に筒状のアウタレース102が変位不能に装着されている。インナレース101の外周面103とアウタレース102の内周面104の間には空間が形成される。
【0048】
複数の受容部25、一対の外輪シール溝31、一対の係止溝32、及び一対のクリップ溝33はアウタレース102の内周面104に形成され、一対の内輪シール溝35及び一対の係止凹部群36はインナレース101の外周面103に形成される。
【0049】
第2実施形態に係るプーリ100では、インナレース101、アウタレース102、複数の転動体5、一対のシール部材41、一対の弾性部材38、及び一対のクリップ46を予め組み立てて、ワンウェイクラッチ110(軸受部材)としてユニット化することができる。これにより、複数の転動体5、一対のシール部材41、一対の弾性部材38、及び一対のクリップ46の内輪3及び外輪4への組付性を向上させることができる。
【0050】
(第3実施形態)
図6に示すように、第3実施形態に係るプーリ150では、転動体151が軸線方向における中間部の径が両端部の径に対して拡径されたたる形の形状に形成されている。内輪3の外周面17の回転軸線Aの軸線方向における中間部には凹面状の凹部153が形成され、外輪4の受容部25の底面の回転軸線Aの軸線方向における中間部には凹面状の凹部154が形成されている。各凹部153、154は、周方向に延在して環状をなし、回転軸線Aの軸線方向における中間部の深さが最も深くなっている。
【0051】
第3実施形態に係るプーリ150では、たる形に形成された転動体5を介して外輪4が内輪3に支持されるため、外輪4が内輪3に対して回転軸線Aの軸線方向に変位すると、外輪4は内輪3に対して傾斜し、ベルト20の支持面である外輪4の外周部が回転軸線Aに対して傾斜する。これにより、ベルト20が掛け渡される複数のプーリ150間に回転軸線Aの軸線方向に位置ずれが生じる場合に、ベルト20のプーリ150への進入角度を小さくすることができる。
【0052】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るプーリ200は、第2実施形態の一部を変形したものであり、図7に示すように、アウタレース102の受容部25が省略され、転動体5はインナレース101の外周面103とアウタレース102の内周面104とに転接している。インナレース101の外周面103とアウタレース102の内周面104との間には、回転軸線Aを中心とした筒形のリテーナ201が配置されている。リテーナ201は、その内径がインナレース101の外径より大きく、その外径がアウタレース102の内径よりも小さく形成されている。リテーナ201には、径方向に貫通する複数の保持孔202が形成されている。保持孔202は、転動体5の数と対応した数が形成され、周方向に等間隔に配置されている。各保持孔202には、転動体5が回転可能に受容される。リテーナ201の回転軸線Aの軸線方向のおける両端部は、一対のクリップ46の内側に配置されている。
【0053】
第4実施形態に係るプーリ200では、インナレース101、アウタレース102、及び転動体5を予め組み立てて、転がり軸受205としてユニット化することができる。第4実施形態に係るプーリ200は、アイドラプーリ等として使用することができる。
【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記の第1実施形態に係るプーリ1におけるクリップ溝33及びクリップ46は選択的な構成であり、他の実施形態では省略してもよい。また、上記の第1実施形態に係るプーリ1における外輪シール溝31、内輪シール溝35、及びシール部材41は選択的な構成であり、他の実施形態では省略してもよい。この場合には、プーリ1は潤滑剤の封入構造が省略された構成となる。
【0055】
上記の実施形態では、クリップ46を外輪4の内周面18に形成されたクリップ溝33に係止する構成としたが、クリップ溝33を内輪3の外周面17に形成し、クリップ46を内輪3に係止させる構成としてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、係止溝32を外輪4の内周面18に形成し、係止凹部群36を内輪3の外周面17に形成する構成としたが、周方向に延在する係止溝32を内輪3の外周面17に形成し、係止凹部群36を外輪4の内周面18に形成してもよい。この場合には、弾性部材38は、環状部38Aと、環状部38Aの外周縁から径方向外側かつ環状部38Aの軸線方向における一側に傾斜しつつ延びる複数の突片部38Bとを有するとよい。突片部38Bが外輪4の内周面18に形成されることによって、弾性部材38は外輪4と一体に回転する。
【0057】
上記の実施形態では、分岐部38Dの環状部38Aに対する傾斜角度が、突片部38Bの環状部38Aに対する傾斜角度よりも小さく設定されているが、大きく設定してもよい。また、分岐部38Dは、周方向に対して傾斜した面を有するように、ねじりが加えられてもよい。例えば、分岐部38Dがプロペラ(スクリュー)のブレード状に形成されることによって、潤滑剤の撹拌効果が一層高められる。また、上記実施形態では、分岐部38Dが突片部38Bから切り起こされた例について説明したが、他の実施形態では分岐部38Dは、突片部38Bと独立して環状部38Aから突出してもよい。
【0058】
上記の実施形態では、転動体5を円柱状のころとしたが、他の実施形態では転動体5を球体(ボール)としてもよい。また、上記の実施形態は、本発明をプーリに適用した例を示したが、本発明はスプロケットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1、100、150、200...プーリ、2...軸部材、3...内輪、4...外輪、5...転動体、17...外周面、18...内周面、20...ベルト、25...受容部、25A...カム面、25B...滑り面、31...外輪シール溝、32...係止溝、33...クリップ溝、35...内輪シール溝、36...係止凹部群、36A...係止凹部、38...弾性部材、38A...環状部、38B...突片部、38C...貫通孔、38D...分岐部、41...シール部材、45...潤滑室、45A...中央室、45B...側室、46...クリップ(隔壁部材)、47...連通路、101...インナレース、102...アウタレース、110...ワンウェイクラッチ、151...転動体、153...凹部、154...凹部、201...リテーナ、205...転がり軸受、A...回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7