【解決手段】油圧ショベルは、アーム用制御弁14が伸び位置に切り換えられた状態でアーム用制御弁14から導出された作動油がオイルクーラ17を介してタンク15に案内されるようにアーム用制御弁14に接続された冷却油路R4と、アーム用制御弁14が中立位置に切り換えられた状態でアーム用制御弁14から導出された作動油がオイルクーラ17を迂回してタンク15に案内されるようにアーム用制御弁14に接続された非冷却油路R11とを備えている。アーム用制御弁14の中立位置には、油圧ポンプ12から吐出された作動油を非冷却油路R11に案内可能な案内通路14aが設けられている。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設機械の油圧回路内で循環する作動油は油圧機器における圧損等により発熱するため、建設機械には作動油を冷却するためのオイルクーラが設けられている。
【0003】
一方、寒冷地等、外気温の低い環境においては建設機械の停止期間中に作動油の温度は低下し、建設機械の始動時に低温の作動油が油圧機器の動作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
ここで、建設機械の始動時に作動油を温めることが考えられるが、オイルクーラを介して作動油を油圧回路内で循環させた状況においては作動油を温めるために長い時間が必要となる。
【0005】
そこで、建設機械の始動時にオイルクーラを介さずに作動油を油圧回路内で循環させることにより作動油の温度を上昇させて建設機械を暖機することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0006】
特許文献1に記載の油圧回路は、油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油により作動する油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータの動作を制御する制御弁と、オイルクーラを有する冷却油路とオイルクーラを迂回する非冷却油路との間で作動油の供給先の油路を切り換える切換弁とを備えている。
【0007】
前記制御弁は、油圧アクチュエータに対する作動油の供給を許容する許容位置と、油圧アクチュエータに対する作動油の供給を規制する規制位置(中立位置)との間で切換可能である。油圧ポンプから吐出された作動油は、制御弁が規制位置に切り換えられた状態で切換弁に導かれる。
【0008】
切換弁は、制御弁が許容位置に切り換えられた状態で冷却油路に作動油を導く一方、制御弁が規制位置に切り換えられた状態で作動油を非冷却油路に導くように切り換えられる。
【0009】
これにより、制御弁が規制位置に切り換えられた状態(油圧アクチュエータによる仕事が行われていない建設機械の始動時)において、オイルクーラを介さずに作動油を油圧回路内で循環させることにより建設機械の暖機を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧回路では、油圧アクチュエータの動作を制御する制御弁とは別に、作動油の供給先の油路を切り換えるための切換弁が設けられているため、油圧回路の構成が複雑となり、かつ、油圧回路のコストが増大する。
【0012】
本発明の目的は、新たな油圧機器の追加を避けながら建設機械の暖機を行うことができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、建設機械であって、作動油を吐出可能な油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油により作動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータから導出された作動油が導かれるタンクと、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの作動油の供給及び前記油圧アクチュエータからタンクへの作動油の導出を許容する許容位置と、前記作動油の供給及び前記作動油の導出を規制する規制位置との間で切換可能な制御弁と、前記作動油を冷却可能なオイルクーラを有し、前記制御弁が許容位置に切り換えられた状態で当該制御弁から導出された作動油が前記オイルクーラを介して前記タンクに案内されるように前記制御弁に接続された冷却油路と、前記制御弁が規制位置に切り換えられた状態で前記制御弁から導出された作動油が前記オイルクーラを迂回して前記タンクに案内されるように前記制御弁に接続された非冷却油路とを備え、前記制御弁の規制位置には、前記油圧ポンプから吐出された作動油を前記非冷却油路に案内可能な案内通路が設けられている、建設機械を提供する。
【0014】
本発明によれば、制御弁が許容位置に切り換えられることにより油圧アクチュエータから導出された作動油がオイルクーラを介してタンクに導かれ、当該作動油を冷却することができる。
【0015】
一方、制御弁が規制位置に切り換えられることにより案内通路及び非冷却油路を介して油圧ポンプから導出された作動油をオイルクーラを迂回してタンクに導くことができる。そのため、作動油を冷却することなく当該作動油を油圧回路内で循環させることができ、これにより、作動油の流通経路における圧損等によって作動油を温めて、建設機械の暖機を行うことができる。
【0016】
また、案内通路は、制御弁自体に設けられているため、従来のように制御弁とは別に切換弁を設けることが不要となる。これにより、建設機械の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
【0017】
したがって、本発明によれば、新たな油圧機器の追加を避けながら建設機械の暖機を行うことができる。
【0018】
ここで、案内通路は油圧ポンプから吐出された作動油を直接非冷却油路に案内するものであってもよいが、この場合、作動油の流通経路(油圧ポンプの吐出経路、案内通路、及び非冷却油路)が短いため、当該流通経路における圧損による作動油の発熱量が小さい。
【0019】
そこで、前記建設機械において、前記油圧ポンプは、前記制御弁の規制位置に設けられたバイパス通路を介して前記冷却油路のオイルクーラの上流側の位置に接続され、前記案内通路は、前記制御弁が規制位置に切り換えられた状態で前記冷却油路と前記非冷却油路とを接続することが好ましい。
【0020】
冷却油路を通過するための作動油の流動抵抗は、オイルクーラの存在によって非冷却油路を通過するための作動油の流動抵抗よりも大きい。そのため、冷却油路と非冷却油路とを連結した状態においてはオイルクーラを迂回する非冷却油路に対して優先して作動油が流れる。
【0021】
したがって、前記態様によれば、バイパス通路を介して一旦作動油を冷却油路に導いた上で案内通路を介して冷却油路から非冷却油路へ作動油を導くことができる。そのため、油圧ポンプの吐出油路と非冷却油路とを直接接続する場合よりも作動油の流通経路を長くすることができる。したがって、流通経路における圧損による作動油の発熱量を増やすことができる。
【0022】
また、冷却油路は、通常、制御弁が規制位置に切り換えられた状態においては当該制御弁から遮断されていればよい。しかし、前記態様では、制御弁の規制位置に案内通路を設けるという簡易的な設計変更によって、冷却油路の一部を建設機械の暖機のための作動油の流通経路として用いることができる。そのため、既存の構成をより有効に活用しつつ効率的に建設機械を暖機することができる。
【0023】
ここで、油圧ポンプから制御弁のバイパス油路を介して冷却油路に導かれた作動油のみが建設機械の暖機のために用いられてもよいが、この場合、作動油の流通経路における圧損が主な熱源となるため、暖機時間を短縮するのが難しい。
【0024】
そこで、前記建設機械において、前記油圧ポンプからの作動油により作動する他の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプに接続され、前記他の油圧アクチュエータに対する前記油圧ポンプの吐出圧が予め設定されたリリーフ圧以上である場合に開放するリリーフ弁とをさらに備え、前記冷却油路は、前記リリーフ弁が開放した場合に当該リリーフ弁から導出される作動油を受入可能となるように前記リリーフ弁に接続されていることが好ましい。
【0025】
この態様によれば、リリーフ弁の開放時に発熱した作動油が冷却油路に導かれ、この作動油が案内通路を通じて非冷却油路に導かれる。したがって、例えば、意図的にリリーフ弁を開放させるように他の油圧アクチュエータを操作することにより(例えば、ストロークエンドまでロッドが移動した状態でさらに作動油を油圧シリンダに供給するための操作を行うことにより)、当該リリーフ弁の開放時の熱を建設機械の暖機のために用いて暖機時間を短縮することができる。
【0026】
ここで、前記案内通路は、冷却油路の流動抵抗と非冷却油路の流動抵抗との差のみによって決まる流量で非冷却通路に作動油を流すものでもよいが、この場合、非冷却油路に過剰の作動油が流れて必要以上に作動油が加熱されるおそれがある。
【0027】
そこで、前記建設機械において、前記案内通路には、前記冷却油路から前記非冷却油路へ導入される作動油の流量を制限する制限手段が設けられていることが好ましい。
【0028】
この態様によれば、制限手段によって非冷却油路に導入される作動油の流量を制限して、相対的に、冷却油路へ導入される作動油の流量を増やすことができる。したがって、必要以上に作動油が加熱されるのを防止することができる。
【0029】
ここで、非冷却油路は、建設機械の暖機のためだけに用いられるものであってもよいが、この場合、暖機専用の油路を設けることとなり建設機械のスペースが圧迫されるとともにコストの増加を招く。
【0030】
そこで、前記建設機械において、前記油圧アクチュエータは、前記油圧ポンプからの作動油により伸縮可能な油圧シリンダであり、前記制御弁は、前記規制位置と、前記油圧シリンダの伸び動作を許容する前記許容位置としての伸び位置と、前記油圧シリンダの縮み動作を許容する縮み位置との間で切換可能であり、前記非冷却油路は、前記制御弁が縮み位置に切り換えられた状態で前記油圧シリンダから導出される作動油を受け入れるように前記制御弁に接続されていることが好ましい。
【0031】
この態様によれば、非冷却油路を、油圧シリンダから導出される作動油の圧損の低減のための油路としても兼用することができるため、建設機械のスペースを効率的に用いることができるとともにコストの増加を抑えることができる。
【0032】
具体的に、油圧シリンダの縮み動作時には、当該油圧シリンダのロッド側室とボトム側室との断面積の差に応じてロッド側室へ供給される作動油よりもボトム側室から導出される作動油の流量が多い。そのため、油圧シリンダの縮み動作時にボトム側室から導出される作動油が冷却油路に導かれると、多量の作動油がオイルクーラを流れ、当該作動油の圧損が大きい。特に、油圧シリンダにより駆動される被駆動物(例えば、アーム)の自重が作用する方向に当該被駆動物が移動する場合(例えば、アーム引き動作を行う場合)に前記圧損は大きなものとなる。
【0033】
これに対し、前記態様のように、油圧シリンダの縮み動作時にボトム側室から導出される作動油をオイルクーラを介さずにタンクに導く(非冷却油路に導く)ことにより、多量の作動油がオイルクーラを流れるのを防止して当該作動油の圧損を低減することができる。
【0034】
したがって、前記態様によれば、油圧シリンダの停止時に非冷却油路を用いて建設機械の暖機を行うことができるとともに、油圧シリンダの縮み動作時に非冷却油路を用いて作動油の圧損を低減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、新たな油圧機器の追加を避けながら建設機械の暖機を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0038】
<第1実施形態(
図1〜
図4)>
図1を参照して、本発明の実施形態に係る建設機械の一例としての油圧ショベル1は、一対のクローラ2aを有する下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に対して変位可能に取り付けられた作業機4とを備えている。
【0039】
作業機4は、上部旋回体3に対して上げ下げ可能(起伏可能)に取り付けられたブーム5と、押し動作及び引き動作可能となるようにブーム5の先端部に対して回転可能に取り付けられたアーム6と、アーム6の先端部に回転可能に取り付けられたバケット7とを備えている。
【0040】
また、作業機4は、上部旋回体3に対してブーム5を上げ下げ駆動するブームシリンダ(他の油圧アクチュエータの一例)8と、ブーム5に対してアーム6を回転駆動するアームシリンダ(油圧アクチュエータの一例)9と、アーム6に対してバケット7を回転駆動するバケットシリンダ10とを備えている。アームシリンダ9は、当該アームシリンダ9の縮み動作によりアーム6の押し動作が行われ、かつ、アームシリンダ9の伸び動作によりアーム6の引き動作が行われるようにブーム5とアーム6との間に設けられている。
【0041】
図2に示すように、上部旋回体3は、シリンダ8〜10(図ではシリンダ8、9のみを示す)を含む油圧回路11を有する。
【0042】
油圧回路11は、作動油を吐出可能な油圧ポンプ12と、ブームシリンダ8の動作を制御するブーム用制御弁13と、アームシリンダ9の動作を制御するアーム用制御弁14と、ブームシリンダ8及びアームシリンダ9から導出された作動油が導かれるタンク15とを備えている。
【0043】
油圧ポンプ12は、タンデム油路R1を介してブーム用制御弁13及びアーム用制御弁14に設けられたセンターバイパス通路(バイパス通路)13a、14cに接続されているとともに冷却油路R4を介してタンク15に接続されている。
【0044】
冷却油路R4は、作動油を冷却しながら当該作動油をタンク15に導くためのものである。具体的に、冷却油路R4には、上流側から順に背圧弁16、オイルクーラ17、及びフィルタ18が設けられている。背圧弁16は、両制御弁13、14の二次側に背圧を立てるためのものである。オイルクーラ17は、作動油を冷却するためのものである。フィルタ18は、作動油内の異物を除去するためのものである。
【0045】
また、油圧ポンプ12は、タンデム油路R1から分岐して両制御弁13、14を迂回するリリーフ油路R12を介して冷却油路R4に接続されている。リリーフ油路R12には、油圧ポンプ12の吐出圧が予め設定されたリリーフ圧を超えた場合に開放するリリーフ弁19が設けられている。つまり、冷却油路R4は、リリーフ弁19が開放した場合に当該リリーフ弁19から導出される作動油を受入可能となるようにリリーフ弁19に接続されている。これにより、シリンダ8、9の負荷が高くなって両制御弁13、14の一次側の圧力がリリーフ圧を超えるとリリーフ弁19が開放し、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、両制御弁13、14を通らずに冷却油路R4に導かれる。
【0046】
ブーム用制御弁13は、油圧ポンプ12に対し、パラレル油路R2を介してアーム用制御弁14と並列に接続されている。同様に、アーム用制御弁14は、油圧ポンプ12に対し、パラレル油路R3を介してブーム用制御弁13と並列に接続されている。したがって、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、パラレル油路R2、R3を介して両制御弁13、14に供給可能である。
【0047】
ブーム用制御弁13は、ブームシリンダ8に対する作動油の給排を調整することにより当該ブームシリンダ8の動作を制御する。具体的に、ブーム用制御弁13は、ブーム5の動作を停止するための中立位置(図の中央位置)と、ブーム5の上げ動作を実行する(ブームシリンダ8を伸ばす)ためのブーム上げ位置(図の上位置)と、ブーム5の下げ動作を実行する(ブームシリンダ8を縮める)ためのブーム下げ位置(図の下位置)との間で切換可能である。なお、ブーム用制御弁13は、通常中立位置に付勢され、図外の操作レバーから指令が入力されることによりブーム上げ位置又はブーム下げ位置に切り換えられるパイロット式又は電磁式の弁である。
【0048】
また、ブーム用制御弁13は、ロッド側油路R5を介してブームシリンダ8のロッド側室に接続されているとともに、ボトム側油路R6を介してブームシリンダ8のボトム側室に接続されている。
【0049】
さらに、ブーム用制御弁13には、当該ブーム用制御弁13がブーム上げ位置又はブーム下げ位置に切り換えられた状態で戻り側の油路に接続されるリターン油路R7が接続されている。リターン油路R7は、冷却油路R4の背圧弁16の上流の位置に接続されている。
【0050】
アーム用制御弁14は、アーム6の動作を停止するための中立位置(規制位置)と、アーム6の押し動作を実行する(アームシリンダ9を伸ばす)ための伸び位置(許容位置)と、アーム6の引き動作を実行する(アームシリンダ9を縮める)ための縮み位置との間で切換可能である。アーム用制御弁14が伸び位置及び縮み位置に切り換えられた状態において、油圧ポンプ12からアームシリンダ9への作動油の供給及びアームシリンダ9からタンク15への作動油の導出が許容される。一方、アーム用制御弁14が中立位置に切り換えられた状態において、油圧ポンプ12からアームシリンダ9への作動油の供給及びアームシリンダ9からタンク15への作動油の導出が規制される。
【0051】
具体的に、アーム用制御弁14は、ロッド側油路R8を介してアームシリンダ9のロッド側室に接続されているとともに、ボトム側油路R9を介してアームシリンダ9のボトム側室に接続されている。
【0052】
また、アーム用制御弁14には、当該アーム用制御弁14が伸び位置に切り換えられた状態でアーム用制御弁14から導出された作動油がオイルクーラ17を介してタンク15に案内されるように、リターン油路R10を介して冷却油路R4が接続されている。
【0053】
一方、アーム用制御弁14には、当該アーム用制御弁14が縮み位置に切り換えられた状態でアーム用制御弁14から導出された作動油が背圧弁16及びオイルクーラ17を迂回してタンク15に案内されるように、非冷却油路R11が接続されている。非冷却油路R11は、冷却油路R4のオイルクーラ17の下流側に接続されている。
【0054】
また、アーム用制御弁14の中立位置(規制位置)には、油圧ポンプ12から吐出された作動油を非冷却油路R11に案内するための案内通路14aが設けられている。案内通路14aは、アーム用制御弁14が中立位置に切り換えられた状態で冷却油路R4と非冷却油路R11とをリターン油路R10を介して接続する。これにより、アーム用制御弁14が中立位置に切り換えられた状態で作動油がオイルクーラ17を介さずに油圧回路11内を循環し、当該作動油を温めることができる。
【0055】
具体的に、
図2に示すように、ブーム用制御弁13及びアーム用制御弁14が中立位置に切り換えられている場合、油圧ポンプ12は、両制御弁13、14の中立位置に設けられたセンターバイパス通路13a、14cを介して冷却油路R4のオイルクーラ17の上流側の位置に接続される。そのため、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、センターバイパス通路13a、14cを介して冷却油路R4に導かれる。ここで、冷却油路R4を通過するための作動油の流動抵抗は、オイルクーラ17の存在によって非冷却油路R11を通過する作動油の流動抵抗よりも大きい。そのため、冷却油路R4と非冷却油路R11とが案内通路14aを介して接続されることにより、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、冷却油路R4、案内通路14a及び非冷却油路R11を介してタンク15に導かれ、タンク15内の作動油は再び油圧ポンプ12によって吐出される。このように、作動油がオイルクーラ17を介さずに油圧回路11内を循環することによりこの循環時に通過する流通経路における圧損により作動油が温められる。
【0056】
しかし、この場合には、作動油を加熱する熱源が主に流通経路を通過する際の圧損に限られるため、作動油を十分に加熱するために比較的長い時間が必要となる。
【0057】
そこで、リリーフ弁19を通過する際に生じる熱を利用して作動油を温めることもできる。例えば
図3に示すようにブーム用制御弁13が伸び位置に切り換えられ、かつ、ブームシリンダ8の伸びが規制されている場合(例えば、ブームシリンダ8がストロークエンドに到達している場合)、リリーフ弁19が開放する。この状態において、油圧ポンプ12から吐出された作動油は、リリーフ弁19を通過して冷却油路R4に導かれる。ここで、アーム用制御弁14が中立位置に切り換えられていると、リリーフ弁19を通過する際に加熱された冷却油路R4内の作動油は、
図3の矢印に示すように、冷却油路R4から案内通路14a及び非冷却油路R11を介してタンク15に導かれる。これにより、比較的短い時間で作動油を温めることができる。
【0058】
ここで、特にリリーフ弁19を通過する際に生じる熱を利用する場合、非冷却油路R11に導かれる作動油の流量が多すぎると、作動油が必要以上に加熱されてしまうおそれがある。そこで、案内通路14aには、冷却油路R4から非冷却油路R11へ導入される作動油の流量を制限する絞り14bが設けられている。これにより、作動油が必要以上に加熱されるのを抑制することができる。また、絞り14bは、アーム用制御弁14の中立位置に設けられたものであるためアーム用制御弁14が伸び位置又は縮み位置に切り換えられた状態で当該絞り14bが作動油の流動抵抗となるのを回避することができる。
【0059】
また、案内通路14aは、アーム用制御弁14の中立位置に設けられているため、アーム用制御弁14が伸び位置又は縮み位置に切り換えられることにより、冷却油路R4と非冷却油路R11とは自動的に遮断される。
【0060】
したがって、アーム用制御弁14が伸び位置に切り換えられた状態(図示省略)で、アームシリンダ9から導出される作動油は、冷却油路R4を介してタンク15に導かれ、オイルクーラ17によって冷却される。
【0061】
一方、非冷却油路R11は、
図4に示すように、アーム用制御弁14が縮み位置に切り換えられた状態でアームシリンダ9のボトム側油路R9に接続されるようにアーム用制御弁14に接続されている。これにより、アーム6の押し動作時においてはアームシリンダ9から導出される戻り油の圧損を低減することができる。
【0062】
具体的に、ボトム側室の断面積はロッド側室の断面積よりも大きいため、アームシリンダ9の縮み動作時にボトム側室から導出される作動油はロッド側室に供給される作動油よりも多い。そのため、アームシリンダ9の縮み動作時にボトム側室から導出される作動油が冷却油路R4に導かれると、多量の作動油が背圧弁16及びオイルクーラ17を流れ、当該作動油の圧損が大きい。この圧損は、アーム6の自重が作用する方向にアーム6の押し動作を行う場合に特に大きくなる。
【0063】
これに対し、アーム6の押し動作時にボトム側室から導出される作動油をオイルクーラ17を介さずにタンク15に導く(非冷却油路R11に導く)ことにより、多量の作動油が背圧弁16及びオイルクーラ17を流れるのを防止して当該作動油の圧損を低減することができる。
【0064】
以上説明したように、アーム用制御弁14が伸び位置(許容位置)に切り換えられることによりアームシリンダ9から導出された作動油がオイルクーラ17を介してタンク15に導かれ、当該作動油を冷却することができる。
【0065】
一方、アーム用制御弁14が中立位置(規制位置)に切り換えられることにより案内通路14a及び非冷却油路R11を介して油圧ポンプ12から導出された作動油をオイルクーラ17を迂回してタンク15に導くことができる。そのため、作動油を冷却することなく当該作動油を油圧回路11内で循環させることができ、これにより、作動油の流通経路における圧損等によって作動油を温めて、油圧ショベル1の暖機を行うことができる。
【0066】
また、案内通路14aは、アーム用制御弁14自体に設けられているため、従来のように制御弁とは別に切換弁を設けることが不要となる。これにより、油圧ショベル1の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
【0067】
したがって、新たな油圧機器の追加を避けながら油圧ショベル1の暖機を行うことができる。
【0068】
また、第1実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0069】
センターバイパス通路14cを介して一旦作動油を冷却油路R4に導いた上で案内通路14aを介して冷却油路R4から非冷却油路R11へ作動油を導くことができる。そのため、油圧ポンプ12の吐出油路(タンデム油路R1)と非冷却油路R11とを直接接続する場合よりも作動油の流通経路を長くすることができる。したがって、流通経路における圧損による作動油の発熱量を増やすことができる。
【0070】
また、冷却油路R4は、通常、アーム用制御弁14が中立位置(規制位置)に切り換えられた状態においては当該アーム用制御弁14から遮断されていればよい。しかし、第1実施形態では、アーム用制御弁14の中立位置に案内通路14aを設けるという簡易的な設計変更によって、冷却油路R4の一部を油圧ショベル1の暖機のための作動油の流通経路として用いることができる。そのため、既存の構成をより有効に活用しつつ効率的に油圧ショベル1を暖機することができる。
【0071】
リリーフ弁19の開放時に発熱した作動油が冷却油路R4に導かれ、この作動油が案内通路14aを通じて非冷却油路R11に導かれる。したがって、例えば、意図的にリリーフ弁19を開放させるようにブームシリンダ8を操作することにより(例えば、ストロークエンドまでロッドが移動した状態でさらに作動油をブームシリンダ8に供給するための操作を行うことにより)、当該リリーフ弁19の開放時の熱を油圧ショベル1の暖機のために用いて暖機時間を短縮することができる。
【0072】
絞り14bによって非冷却油路R11に導入される作動油の流量を制限して、相対的に、冷却油路R4へ導入される作動油の流量を増やすことができる。したがって、必要以上に作動油が加熱されるのを防止することができる。
【0073】
非冷却油路R11を、アームシリンダ9から導出される作動油の圧損の低減のための油路としても兼用することができるため、油圧ショベル1のスペースを効率的に用いることができるとともにコストの増加を抑えることができる。
【0074】
<第2実施形態(
図5)>
第1実施形態では、冷却油路R4と非冷却油路R11とを接続する案内通路14aについて説明したが、案内通路は、油圧ポンプ12から吐出された作動油を非冷却油路R11に案内可能であればよい。
【0075】
図5は、第2実施形態に係るアーム用制御弁20を示す回路図である。
図5において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
アーム用制御弁20の中立位置には、油圧ポンプ12から吐出された作動油を冷却油路R4を介さずに直接非冷却油路R11に導くことができる案内通路20aが設けられている。
【0077】
具体的に、案内通路20aは、アーム用制御弁20が中立位置に切り換えられた状態でタンデム油路R1(センターバイパス油路14c)と非冷却油路R11とを接続する。
【0078】
第2実施形態においても、アーム用制御弁20が中立位置に切り換えられた状態で、油圧ポンプ12から吐出された作動油をオイルクーラ17を介さずにタンク15に導くことができる。これにより、作動油を温めることができ、油圧ショベルを暖機することができる。
【0079】
また、非冷却油路R11に導かれる作動油の流量が多すぎると、作動油が必要以上に加熱されてしまうおそれがある。そこで、第1実施形態と同様に、案内通路20aには、タンデム油路R1から非冷却油路R11へ導入される作動油の流量を制限する絞り20bが設けられている。これにより、作動油が必要以上に加熱されるのを抑制することができる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0081】
建設機械として油圧ショベルを例示したが、本発明は、解体機やクレーン等を含む他の建設機械に適用することもできる。
【0082】
リリーフ弁19が設けられたリリーフ油路R12が冷却油路R4に接続された例について説明したが、リリーフ弁19及びリリーフ油路R12を省略することもできる。
【0083】
制限手段は、絞り14bに限定されない。案内通路14aにおける作動油の流動抵抗が大きくなるように案内通路14a全体の断面積を小さくしてもよい。また、制限手段を省略することもできる。
【0084】
アームシリンダ9の縮み動作時における作動油の圧損を防止するための油路と非冷却油路R11とを兼用する例について説明したが、暖機専用の非冷却油路を設けてもよい。
【0085】
油圧アクチュエータは、アームシリンダ9に限定されず、他の油圧アクチュエータはブームシリンダ8に限定されない。油圧アクチュエータ及び他の油圧アクチュエータは、ブーム5及びアーム6以外のもの(例えば、バケット7)を駆動する油圧シリンダでもよく、また、油圧シリンダ以外の油圧アクチュエータ(例えば、油圧モータ)でもよい。