特開2015-230235(P2015-230235A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-230235(P2015-230235A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】蓄電制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20151124BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20151124BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20151124BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20151124BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20151124BHJP
   B60L 11/12 20060101ALI20151124BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20151124BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20151124BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20151124BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20151124BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   G01R31/36 AZHV
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H02J7/00 P
   H02J7/00 Q
   H02J7/10 C
   H02J7/10 H
   H02J7/10 P
   H02J7/34 J
   B60L11/12
   B60L3/00 S
   B60L11/18 A
   B60K6/46
   B60K6/20 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-116342(P2014-116342)
(22)【出願日】2014年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】今井 伸治
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴志
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 健志
(72)【発明者】
【氏名】綾田 昌高
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕
【テーマコード(参考)】
2G016
3D202
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
2G016CA03
2G016CB00
2G016CB05
2G016CB06
2G016CC04
2G016CC07
2G016CC20
2G016CC23
2G016CD00
2G016CD10
2G016CD14
2G016CF06
2G016CF07
3D202AA07
3D202BB21
3D202DD44
3D202DD45
3D202DD46
3D202DD47
3D202DD48
3D202EE00
3D202EE04
5G503AA07
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA17
5G503CB11
5G503DA08
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H030AA10
5H030AS08
5H030AS18
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H125AA05
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC01
5H125BC08
5H125BC09
5H125BD17
5H125EE22
5H125EE23
5H125EE25
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】電池の内部抵抗を算出する際に通電される電流波形が、矩形波電流でなくても、蓄電池の内部抵抗を簡便な方法で計測し、蓄電池の充放電制御や電池の交換時期通知に反映させ、安全かつランニングコストを低く抑えた車両走行システムの提供。
【解決手段】蓄電池の内部抵抗を計測する電源制御装置であって、前記蓄電池に対して所定時間かけて電流値が徐々に変化する傾斜電流を入力し、前記所定時間と、前記所定時間における前記傾斜電流の変化量と、前記傾斜電流が入力されることによって変化する前記蓄電池の電圧変化量に基づいて、前記蓄電池の内部抵抗を算出する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出された蓄電装置の電流値及び電圧値の情報に基づいて蓄電装置の内部抵抗を算出する蓄電制御装置であって、
前記蓄電装置に対して所定時間かけて電流値が徐々に変化する傾斜電流を入力し、
前記所定時間と、前記所定時間における前記電流の変化量と、前記傾斜電流が入力されることによって変化する前記蓄電装置の電圧変化量と、に基づいて,前記蓄電装置の内部抵抗を算出することを特徴とする蓄電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電制御装置であって、
前記所定時間及び前記傾斜電流の変化量に基づき、電流値がステップ状に変化する矩形波電流が前記所定時間流れた場合の電気容量と前記傾斜電流が前記所定時間流れた場合の電気容量との差分により生じる電圧変化量を演算し、
前記差分により生じる電圧変化量を、前記傾斜電流が入力されることにより生じる電圧変化量に加算して得られる電圧変化量補正値に基づいて、前記蓄電装置の内部抵抗を演算することを特徴とする蓄電制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電制御装置であって、
前記SOCを算出する充電状態算出手段と、
前記蓄電装置のSOCの大きさに対応した電圧変化率の情報を予め記録し、算出された前記SOCに基づいて電圧変化率を決定する電圧変化率決定手段と、を備え、
前記電気容量の差分により生じる電圧変化量は、前記電気容量の差分に前記電圧変化率を掛け合わせることにより生成されることを特徴とする蓄電制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の蓄電制御装置であって、
前記SOCを算出する充電状態算出手段を有し、
前記充電状態算出手段から得られる前記蓄電池のSOCと、前記蓄電池の温度情報に基づいて、前記算出される前記蓄電池の内部抵抗を補正すること、を特徴とする蓄電制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の蓄電制御装置と、
エンジンにより駆動される発電手段が発生する交流電力を直流電力に変換するコンバータ装置を有する直流電力発生手段と、
前記直流電力を交流電力に変換するインバータ装置と、
前記インバータ装置によって変換された交流電力により駆動される電動機と、
前記直流電力を充電および放電する前記蓄電装置と、
前記蓄電装置制御部から送信される前記蓄電装置の内部抵抗に基づいて、前記エンジンと、前記発電手段と、前記コンバータ装置と、前記インバータ装置と、
を制御する統括制御部と、
を備えた車両の駆動システムであって、
前記蓄電制御装置は、前記蓄電装置の内部抵抗を算出し、前記統括制御部へ出力する、
ことを特徴とする、車両の駆動システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の駆動システムにおいて、
前記統括制御部は、前記エンジン、前記発電機、前記コンバータ装置を起動させた後に、前記傾斜電流を前記蓄電装置に流入させ、
前記蓄電制御装置は、算出した前記内部抵抗を前記統括制御部へ出力する、
ことを特徴とする、車両の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を制御する蓄電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車等の普及拡大に伴い、これらの駆動用電源としてリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の高容量蓄電池が多くの車両に搭載されている。
【0003】
蓄電池は充放電を繰り返すことにより、充電状態(SOC:State of Charge)や劣化状態(SOH:State of Health)が変化する。蓄電池の劣化が進行すると、充放電容量の低下や電池の内部抵抗の増加が生じる。そのため、電池の劣化に伴い、電池システムの出力が次第に低下する。
【0004】
電動車両や鉄道車両等に使用される蓄電池は、携帯電話やノートPC等の小型民生機器に使用される電池と比べて、高電圧かつ大容量が要求されるため、車両システム全体に占める電池コストの割合が高い。そのため、システムコストを抑えるために、搭載する電池容量の最適化と電池性能を有効利用するための電池状態検知と制御が必要となる。さらに、システムのランニングコストを抑えるためには、蓄電池の交換頻度が少ないことが望まれる。一般的に、電池の交換時期は、電池の使用期間や総充放電量に応じて規定されることが多いが、電池の使用環境や使用条件によっては、電池がまだ使用できるにもかかわらず交換されることも起こりうる。そこで、システムのランニングコストを抑えるためには、蓄電池の劣化状態を正確に把握した上で、的確なタイミングで電池交換することが望まれる。
【0005】
蓄電池の劣化状態を検知する方法として、ハイブリッド自動車においては特許文献1に記載されているような電池の内部抵抗測定による方法がある。特許文献1には、蓄電池の充電状態(SOC)が同一であると推定される時点での電流と電圧を測定し、それらの放電時と充電時の電圧と電流の測定値に基づいて電池の内部抵抗を検出する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、蓄電池への単位時間当たりの充放電切り替え頻度が少ない使用方法においても、蓄電池の劣化度を精度よく簡便に推定し、電池への過負荷を防ぐことを課題とし、装置の待機時に、蓄電池に対して特定の電流パターンが印加されるように周辺装置を制御し、電池の内部抵抗を算出する劣化測定法を実施し、この抵抗値が基準値に対して閾値以上の場合に、制御パラメータを変更して入出力の過負荷を防ぐ手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−21455号公報
【特許文献2】特開2010−93875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に代表される方法では、車両の走行中に電池の内部抵抗を検出する。ハイブリッド自動車は、通常、エンジン始動後すぐに走行を開始するため、電池の内部抵抗の検出は車両走行中に検出演算される。
【0009】
ハイブリッド自動車は、車両の加減速が頻繁に起こるため、電池の充電および放電の切り替わりが頻繁に起こる。さらに、電池に充放電される電流レートが大きい(例えば1Cレート以上。1Cは、公称容量値の容量を有する電池セルを定電流放電し、1時間で放電終了となる電流値である)ため、電流の入出力に伴う電池電圧変動が大きい。特許文献1では、この電流、電圧変動特性を利用し、放電時および充電時の電池電圧と、それぞれ対応する電流値を複数収集し、それらの情報を基に電池の内部抵抗を演算している。
【0010】
一方、鉄道車両や電気自動車等に搭載される蓄電池に流れる電流は、前述したハイブリッド自動車の蓄電池に流れる電流と特徴が異なる。具体的には、鉄道車両や電気自動車の方が大電流を要求される。また、電池の充電、放電の切り替わり頻度がハイブリッド自動車よりも少なく、蓄電池にとっては放電または充電の継続時間が長い。そのため、車両の走行中に電池の放電および充電の両方のデータを多数収集して電池の内部抵抗を演算する方式では、ハイブリッド自動車と同等量のデータを得ることが困難であり、特に短時間走行では電池の劣化状態(SOH)を精度よく求められない問題があった。
【0011】
また、一般に、電池の劣化度が同じであっても電池温度によって内部抵抗の値が変化する。そのため、電池の温度情報を基に内部抵抗の値を補正し、劣化度情報を得る方法が考えられる。しかし、この場合、温度情報として測定できるのは現実的に電池の表面温度である。車両走行中など、電池が充放電されるときには電池自体が発熱し、電池セルの内部・表面で温度分布が生じる。そのため、電池の表面温度が、電池の内部抵抗を補正するのに真に正しい温度とは限らないため、走行中の温度情報に基づく内部抵抗演算には誤差が生じる。
【0012】
また、特にリチウムイオン二次電池は、充放電状況によって電池劣化とは異なる要因で内部抵抗が増減する現象がある。具体的には、長時間走行が続いて大電流充放電が継続すると、一時的に電池の内部抵抗が上昇し、この状態から充放電されない休止期間を設けることで上昇した内部抵抗が減少する。このような可逆的な内部抵抗上昇は、電池のSOC演算や許容充放電電力演算をする上で誤差要因となる問題がある。
【0013】
特許文献2に代表される内部抵抗測定方法は、主にハイブリッド鉄道車両に搭載する蓄電池の内部抵抗を測定することを想定しており、車両走行中に内部抵抗を測定する場合に生じる上記課題の解決を試みた方法である。すなわち、電池温度が表面、内部ともに分布が一定であるタイミングで内部抵抗を測定するため、かつ、可逆的な内部抵抗上昇を避けるために、(長時間停止後の)車両システム起動後かつ車両が停車した状態において、所定の劣化測定電流パターンを蓄電池に通電し、電池の電圧変動と通電電流の値から電池の抵抗値を取得し、基準抵抗と比較することで電池の劣化度を計測する方法を採用している。
【0014】
加えて、同特許文献2には、車両停車時に、意図的にエンジンを制御することで、所定の劣化測定電流パターンを電池に流す方法が開示されているが、この電流パターンは、電流値がステップ状に変化する矩形波電流であることを想定している。
【0015】
しかしながら、電池に対して理想的な矩形波電流を通電させるには、エンジンの他、発電機やコンバータ等、蓄電池がつながる直流電力系統の動作を精密に制御する必要があり、理想的な矩形波電流の発現は、実現性に難点がある。エンジン動作を制御しても、実際には、所定時間かけて電流値が所定量変化する傾斜状電流が流れるため、矩形波電流が流れることを想定した上記の内部抵抗演算方法が実施できず、内部抵抗演算を精度良く実施することができない。
本発明は、再現することが難しい矩形波電流を用いなくとも電池の内部抵抗演算を可能とし、内部抵抗演算を簡便に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0017】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検出された蓄電装置の電流値及び電圧値の情報に基づいて蓄電装置の内部抵抗を算出する蓄電制御装置であって、前記蓄電装置に対して所定時間かけて電流値が徐々に変化する傾斜電流を入力し、前記所定時間と、前記所定時間における前記電流の変化量と、前記傾斜電流が入力されることによって変化する前記蓄電装置の電圧変化量と、に基づいて,前記蓄電装置の内部抵抗を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電池の内部抵抗を算出する際に通電される電流波形が、矩形波電流でなくても、蓄電池の内部抵抗を簡便な方法で計測することができる。更に、蓄電池の充放電制御や電池の交換時期通知に反映させた場合には、安全かつランニングコストを低く抑えた車両走行システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用したハイブリッド鉄道車両とその制御装置の一例を示したものである。
図2】蓄電装置制御部の構成と信号の流れを示したブロック図である。
図3】ハイブリッド鉄道車両システムが、停止状態から起動した直後の蓄電装置の電流および電圧の時間変化を示したグラフの例である。
図4】内部抵抗演算部500の構成と信号の流れを示したブロック図である。
図5】dV/dI演算部510の構成と信号の流れを示したブロック図である。
図6】t0/dt判定部511の処理を示すフローチャートの例である。
図7】電気容量差分算出部512が算出する電気容量を説明するための模式図である。
図8】電圧変化率マップ513に格納される電圧変化率マップテーブルを説明するための模式図である。
図9】蓄電池の温度毎のSOCと内部抵抗の関係を示したグラフ例である。
図10】換算係数マップ520に実装する換算係数マップテーブルの例である。
図11】リチウムイオン電池の等価回路モデルの例である。
図12】電池に対して入力される矩形波電流とそれに対する電圧過渡応答を示すグラフの例である。
図13】電池に対して入力される傾斜電流波形と、それをN個の矩形波電流に分割した波形例である。
図14】電池に矩形波電流を入力して無限時刻経過したときの電圧変化量を真値と仮定した場合の、傾斜電流を入力して時刻t(t≧t0)経過後に生じる電圧変化量の誤差値(%)をまとめた一覧表の例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
実施例を説明する前に、本発明に関する電池の電圧過渡応答について、電池の等価回路モデルを用いながら説明する。ここでは、従来、電流値がステップ状に変化する矩形波電流を電池に印加し、このときの電池電圧変動から電池の内部抵抗を算出する方法が広く採用されてきたが、印加する電流が矩形波電流ではなく、例えば、所定時間かけて電流値がゼロから所定値まで立ちあがる傾斜電流であっても、ある一定の精度で内部抵抗が求められることを説明する。
【0022】
図11(a)は、リチウムイオン電池の等価回路モデルの例である。Eは起電力を表す直流電圧源であり、R0は集電体や電解液等、電池の部材抵抗を合計したものである。抵抗RctとコンデンサCdlの並列回路部分は、電池セル内の各所に存在する界面(活物質や集電体の表面等)におけるリチウムイオンの移動に係わる抵抗成分と界面付近に生じる電気二重層によるキャパシタンス成分を表している。この部分の時定数はおおよそ1秒未満である。抵抗RDとコンデンサCDの並列回路部分は、リチウムイオンの拡散現象起因の応答遅れを表しており、この部分の時定数はおおよそ数十秒である。
【0023】
図11(a)等価回路に対して、同一方向に数秒以上の電流が流れ続けるときの電圧過渡応答を考える。上述の通り、RctとCdlの並列回路部の時定数は1秒未満であるため、数秒以上の過渡応答を考える場合、図11(a)の等価回路モデルは図11(b)のように簡略化することができる。ここで、R0とRctの合計をR1とし、RDとCD並列回路部分の時定数をτ=1/βとおく。さらに、tを時間として、この等価回路モデルに電流I(t)が流れたときの起電力Eを除いた部分の電圧をVi(t)と定義する。なお、実際の電池では電流が充放電されることで電池の起電力(E)の電圧値が増減するが、以降の説明では、数秒〜十数秒間の通電による起電力Eの変化量は、Vi(t)の変化量に比べて十分小さいものとみなし、起電力Eの電圧変化は無視する。
【0024】
まず、図11(b)の電池の等価回路モデルに対して、矩形波電流が流れるときの電圧過渡応答の理論式について説明する。図12は、電池の電流(図上側)および電圧(図下側)の時間変化を示したグラフの例である。図12に示すように、時刻t=0において電流値がゼロからIにステップ状に変化する矩形波電流が流れるものとする。電流が流れる前(時刻t<0)の電池電圧をVi(t)=V0とし、電流が流れることによって変動する電池の電圧変化量をΔVi(t)とすると、ΔVi(t)は(式1)に示す通りとなる。
【0025】
【数1】
【0026】
次に、電池に対してある所定の時間をかけて電流値がゼロからIまで変化する電流が入力される場合の電圧過渡応答について説明する。ここでは、図13(a)のように、時刻t=0から時刻t=t0にかけて電流値がゼロからIまで変化する電流を傾斜電流と呼ぶことにする。
【0027】
ここで、図13(a)の傾斜電流を、図13(b)のように、N個(Nは自然数)の矩形波電流に分割することを考える。個々の矩形波電流の高さはすべてI/Nである。そして、n番目(n=1〜N)の矩形波電流は、1番目の矩形波電流(t=0で立ちあがる電流)よりも時間t0(n-1)/Nだけ遅れて立ち上がることになる。したがって、n番目矩形波電流による電池電圧変化ΔVn(t)は、(式1)の電流値にI/Nを、時刻tにt-(t0(n-1)/N)をそれぞれ代入し、(式2)のようになる。ただし、(式2)はt≧t0(n-1)/Nの範囲に限る。
【0028】
【数2】
【0029】
N個の矩形波電流による電圧変化の合計ΔVsum(t)は、(式2)においてn=1からn=Nまでの総和であるので、ΔVsum(t)は(式3)のようになる。ただし、(式3)はt≧t0の範囲に限る。
【0030】
【数3】
【0031】
ここで、図13(a)の傾斜電流が流れたときの時刻t≧t0における電圧変化ΔV(t)は、(式3)のNを無限大とし、(式4)のように求められる。ただし、(式4)はt≧t0の範囲に限る。
【0032】
【数4】
【0033】
(式1)で示される矩形波電流が入力された時の電圧変化ΔVi(t)と、(式4)で示される傾斜電流が入力された時の電圧変化ΔV(t)の差をδ(t)とすると、δ(t)は(式5)のようになる。ただし、(式5)はt≧t0の範囲に限る。
【0034】
【数5】
【0035】
次に、矩形波電流が入力されてから時刻t=∞経過したときの電圧変化ΔVi(∞)は、(式6)のように表わされる。
【0036】
【数6】
【0037】
(式5)のδ(t)と、(式6)のΔVi(∞)の比をε(t)とおくと、ε(t)は(式7)のように求められる。ただし、(式7)はt≧t0の範囲に限る。
【0038】
【数7】
【0039】
(式7)のε(t)は、電池に矩形波電流を入力して無限時刻経過したときの電圧変化量ΔVi(∞)を真値と仮定した場合の、傾斜電流を入力して時刻t(t≧t0)における電圧変化量の理論誤差を表している。
【0040】
図14は、(式7)に示したε(t)について、t0/τおよびRD/(R1+RD)をそれぞれ0.1〜1まで0.1刻みに値を代入したときのε(t)の計算値をまとめた表である。なお、図14における計算では、一つの例として、時定数τ=10、計測時刻t=10に設定し、ε(t)の計算値はパーセント換算して表記した。
【0041】
図14の計算例を用いると、例えば、RD/(R1+RD)が0.5(すなわち、図11(b)の等価回路でR1=RDの場合)の電池について、矩形波電流を入力して10秒後(t=10)の電圧変化量(A)と、t=0から5秒かけて電流値がゼロから所定値まで立ち上がる傾斜電流(すなわちt0/τ=0.5)を入力してt=10における電圧変化量(B)との差分値(A-B)は、矩形波電流を入力して無限時刻経過後の電圧変化量に対して5.5%ということになる。
【0042】
したがって、従来、電池の内部抵抗を算出する際、電流値がステップ状に変化する矩形波電流が流れた時の電圧変化量と電流値を演算に用いられてきたが、矩形波電流でなくても、傾斜電流のように電流の変化にかかる時間と、その時間に応じた時刻経過後の電圧変化量を測定することで、一定の精度で電池の内部抵抗の演算が可能となる。また、電池の劣化度(内部抵抗の上昇率)を継続的に観測していく場合、測定された内部抵抗の変化量を観測することとなるため、傾斜電流によって測定された内部抵抗に含まれる誤差(矩形波電流によって測定される内部抵抗と比べた場合の誤差)の影響は相殺される。
[実施例]
以降に、ここまで説明した傾斜電流を用いた電池の内部抵抗演算を、実際のハイブリッド車両システムに適用した場合の具体的実施方法例を説明する。
【0043】
図1は本発明を適用したハイブリッド鉄道車両とその制御装置の一例を示したものである。ハイブリッド車両は、エンジン1、発電機2、コンバータ3、インバータ4、電動機5、減速機6、輪軸7、蓄電装置8から構成され、これらの制御装置として統括制御部9、蓄電装置制御部10を備えている。
【0044】
本実施形態におけるハイブリッド車両の駆動方式としては、シリーズハイブリッド方式を想定している。
【0045】
エンジン1は、ハイブリッド鉄道車両の動力源の一つとして機能する内燃機関である。エンジン1は統括制御部9からのエンジン出力指令に従って軸トルクを出力する。発電機2はエンジン1の軸トルクを入力とし、これを三相交流電力に変換して出力する。コンバータ3は、発電機2から出力される三相交流電力を入力として、これを統括制御部9からの指令電力量に対応した直流電力に変換して出力する。
【0046】
インバータ4はコンバータ3および蓄電装置8から出力される直流電力を入力として、これを三相交流電力に変換して出力する。電動機5は、インバータ4が出力する三相交流電力を入力として、これを軸トルクに変換して出力する。インバータ4は、電動機5の出力トルクが統括制御部9によって指令されるトルクとなるように可変電圧可変周波数制御される。
【0047】
減速機6は、電動機5の軸トルク出力を回転数の減速により増幅出力し、輪軸7を駆動して車両を加減速する。
【0048】
蓄電装置8は、コンバータ3とインバータ4との間の直流部に電気的に接続される。蓄電装置8は、システムに必要な電圧および蓄電容量を得るために、電池セルを多直列、多並列に組み合わせた組電池を構成している(図示せず)。具体的な例として、電池セルにリチウムイオン二次電池を用いる場合、この電池の1セルの電圧は約3.6Vであり、これを例えば200セル直列に接続することで約720Vの直流電圧が得られる。さらに、多直列接続した組電池をさらに複数並列接続することで蓄電装置の電池容量を増やすことができる。
【0049】
また、蓄電装置8はその内部に、電池の電圧情報、電流情報、温度情報を取得するためのセンシング手段(図示せず)が備えられている。蓄電装置8は、センシング手段で検出した電池の各情報を蓄電装置制御部10に対して送信する機能を有する。
【0050】
蓄電装置制御部10は、蓄電装置8から送信される電池の電圧、温度、電流に基づき、蓄電装置8に搭載される電池の充電状態(State of Charge :SOC)、内部抵抗、劣化状態(State of Health: SOH)、許容充放電電力などの電池状態情報を算出し、これら電池状態情報を統括制御部9へ送信する。
【0051】
統括制御部9は、車両の運転士からの運転指令(図示せず)と、蓄電装置制御部10からの電池状態情報(充電状態、劣化状態、充放電可能電力など)に基づいて蓄電装置8の充放電電力を決定する。統括制御部9は、蓄電装置8が所望の充放電を行うように、エンジン1、発電機2、コンバータ3、インバータ4にそれぞれ動作指令を出す。
【0052】
この構成において統括制御部9が、車両の停車中および低速走行時はエンジン1による発電を停止し、蓄電装置8の出力のみで車両システムの電力供給を行うことで、アイドルストップによる駅構内の静音化が実現できる。また、車両の走行中には、エンジン1による発電を最大エンジン効率点で定出力運転してインバータ4の要求電力に対する過不足分を蓄電装置8の充放電電力で負担することにより車両システムの省エネルギー化を実現できる。
【0053】
次に、蓄電装置制御部10の役割について詳しく説明する。図2は蓄電装置制御部10の構成と信号の流れを示したブロック図である。蓄電装置制御部10は、その内部に入力処理部100、出力処理部200、演算情報抽出部300、SOC算出手段400、内部抵抗演算部500、データ保持部600、許容電力算出手段700を備える。
【0054】
入力処理部100は、蓄電装置8より送信される電池の電圧、温度、電流といったセンシング情報を受信し、A/D変換などの必要な処理を行い、他の処理部へと情報を送る。また、入力処理部100は統括制御部9から車両システムの起動信号(IGN)を受信し、他の処理部へこの情報を送る。
【0055】
出力処理部200は、蓄電装置制御部10内の各処理部で算出された電池状態情報を通信手段など必要な手段を介して統括制御部9に伝達する。
【0056】
演算情報抽出部300は、蓄電装置8の電圧、電流、温度、さらに車両システムの起動信号(IGN)に基づいて、電池の内部抵抗を演算するのに必要な演算値を抽出し、これらの情報を内部抵抗演算部500へ送る。演算情報抽出部300が行う処理の詳細は後述する。
【0057】
SOC算出手段400は、入力処理部100を介して得られる蓄電装置8の電圧、電流、温度のセンシング情報に基づき電池の充電状態(SOC:State of Charge、以降SOCと略記)を算出する。算出した充電状態の情報は、データ保持部600及び出力処理部200に送信される。
【0058】
SOCの算出方法としては、これまでに複数の手段が考案されている。例を挙げると、電池の開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage、以降OCVと略記)からSOCを算出する方法がある。この方法では、当該電池のOCVとSOCの関係を示すテーブルデータを予め備えておき、検出または算出した電池のOCVからSOCを求める。電池のOCVは、電池に電流が流れていないときは検出された電池電圧をOCVとして扱い、一方、電流が流れているときは電池の内部抵抗(算出方法は後述)、充放電電流、電池電圧からOCVを算出する。
【0059】
もう一つ、SOCの算出方法の例を挙げると、電池の充放電電流を逐一時間積分して求められる電流積算値を用いる方法がある。この方法では、電池の満充電容量と電流積算値との比からSOCの変化を算出する。
【0060】
本実施例におけるSOC算出手段400は、上述したSOC算出方法例の一方または両方を組み合わせた方法で電池のSOCを算出することを想定するが、電池のSOCが算出できればこれら以外の方法であっても構わない。
【0061】
内部抵抗演算部500は、上記演算情報抽出部300およびSOC算出手段400から送られる情報に基づいて、蓄電装置8の内部抵抗を演算し、この演算した情報をデータ保持部600および出力処理部200へ出力する。この内部抵抗演算部500が行う処理の詳細は後述する。
【0062】
データ保持部600は、上記SOC算出手段400が算出したSOC情報、および内部抵抗演算部500が演算した内部抵抗の情報を、それらが算出された時間の情報とともに保存しておくためのものである。データ保持部600は、保持したデータを必要に応じてSOC算出手段400や許容電力算出手段700へと出力する。SOC算出手段400は、SOCを算出する際に、過去に算出したSOCデータを参照する必要があることがある。このとき、SOC算出手段400は、データ保持部600から過去のSOCデータを参照する。
【0063】
許容電力算出手段700は、ある時点で蓄電装置8が入出力できる最大電力値を算出する。電池に放電電流を流すと、電池電圧は、その内部抵抗と電流の積で決まる電圧だけOCVから低下した値となる。また、反対に、電池に充電電流を流すと、電池の内部抵抗と電流の積で決まる電圧だけOCVより上昇する。電池には性能上許容される電池電圧の最大値および最小値が定められており、それら上下限を超えないように通電する電流を制限する必要がある。ある時点でのOCVと内部抵抗から、許容上下限電圧を超えないような放電電流および充電電流の最大値がそれぞれ計算できるので、それらをもとに許容最大充電電力および許容最大放電電力が算出できる。ここで、許容電力算出手段700は、データ保持部600から得られる内部抵抗と、入力処理部から得られる蓄電装置8の電圧、電流、温度の情報をもとに、許容最大充電電力および許容最大放電電力を算出する。
【0064】
なお、電池の用途によっては、通電してよい最大の電流値を予め定めている場合がある。上述した最大電流よりも予め定められた最大電流値の方が小さい場合は、許容電力算出手段700は、小さいほうの電流値を用いて許容電力を算出する。
【0065】
次に、演算情報抽出部300が抽出する演算情報について説明する。図3は、図1に示したハイブリッド鉄道車両システムが、停止状態から起動した直後の蓄電装置8の電流および電圧の時間変化を示したグラフの例である。演算情報抽出部300は、車両システムの起動信号(IGN)の受信とともに、電池の内部抵抗計測を開始し、以下に記す内部抵抗演算に用いる演算情報を抽出する。
【0066】
統括制御部9は、システム起動の際に、エンジン1、発電機2、コンバータ3を起動させ、図3(a)のような傾斜電流Ib(t)が蓄電装置8に流入し、充電される。傾斜電流Ib(t)は、時刻t1からt2にかけて電流値がゼロからIpまで増加し、時刻t2以降は電流値Ipを維持するものとする。この傾斜電流Ib(t)が入力されたときの電圧応答Vb(t)は図3(b)のようになる。ここでは、電池の内部抵抗計測する方法として、発電機から得られる電力を用いて、傾斜電流により蓄電装置に充電する方法を説明するが、逆に、蓄電装置から負荷へ傾斜電流により放電する方法によっても本発明は実施可能である。
【0067】
演算情報抽出部300は、時刻t1からt3までの電流変化および電圧変化を計測し、電流変化量dIb、電圧変化量dVb、時間t0、時間dtを抽出する。また、図3には記載していないが、演算情報抽出部300は、電流および電圧計測中の電池温度Tを抽出する。時間t0は、電流値が電流値Ipまで増加しきるのにかかった時間(t2-t1)である。また時間dtは、t0の長さに応じて決定され、例えばdt=2t0 のように、電流が変化にするのにかかった時間と同じ長さの時間が経過したときをt3とするなど、統一した方法でdtを決める。ただし、dtはt0よりも大きく設定する。そして、演算情報抽出部300は、抽出したこれらのデータ(dIb、dVb、t0、dt、T)を後述する内部抵抗演算部500へと出力する。
【0068】
内部抵抗演算部500の詳細な構成と処理内容を説明する。図4は、内部抵抗演算部500の構成と信号の流れを示したブロック図である。内部抵抗演算部500は、その内部にdV/dI演算部510と、換算係数マップ520を有す。dV/dI演算部510は、演算情報抽出部300から出力される演算情報と、SOC算出手段400から出力されるSOCの情報に基づいて、所定時間における電池の電圧変化量と電流変化量の比(dV/dI)を演算する。換算係数マップ520は、電池のSOCおよび温度Tに基づいて、係数αを出力する。そして、内部抵抗演算部500は、dV/dI演算部510が出力した電圧変化量と電流変化量の比に対して係数αを乗じたものを電池の内部抵抗として出力する。dV/dI演算部510と、換算係数マップ520の詳細については後述する。
【0069】
次に、dV/dI演算部510の詳細構成と処理について説明する。図5は、dV/dI演算部510の構成と信号の流れを示したブロック図である。dV/dI演算部510は、t0/dt判定部511、電気容量差分算出部512、電圧変化率マップ513、dV補正量算出部514、dV/dI補正演算部515から構成される。以降で各部の役割について順に説明する。
【0070】
t0/dt判定部511は、時間情報t0およびdtに基づき、内部抵抗演算部500が演算する電池の内部抵抗値が、ある一定以上の精度を保っているかどうかを判定し、後述するdV/dI補正演算部に対して演算の許可信号を送信する。t0/dt判定部511の具体的な処理例を図6のフローチャートに示す。
【0071】
t0/dt判定部511は、ステップS100において時間情報t0とdtの比(t0/dt)を演算し、この値が予め定められた閾値よりも上か下かを判定する。ステップ100の判定条件を満たしていれば、ステップ200に進み、dV/dI演算許可信号を出力する。反対に、ステップ100の判定条件を満たしていない場合、t0/dt判定部511は、信号を出力しないで処理を終了する。
【0072】
ここでは例として、判定条件をt0/dt≦0.5とした。この値が小さければ小さいほど、システム始動時の電池への入力電流が急峻に立ち上がることを意味し、この入力電流によって変動する電池の電圧変化量が、矩形波電流を入力したものに近い値となる。これは、図14に示した表において、t0/τの値が少ないほど誤差ε(t)が低くなることと同じ意味である。なお、t0とdtは予め設定される値であるが、ステップS100において実際には計測した時間情報t0とdtの比(t0/dt)が所定条件に合致していることを確認することで、演算する内部抵抗値が一定以上の精度を保っていることを判断できる。
【0073】
電気容量差分算出部512は、時間情報t0および電流変化量dIbに基づいて、電気容量dQ[Ah]を算出する。この電気容量dQについて、図7を用いて説明する。
【0074】
図7は、図3に示したシステム起動時の傾斜電流Ib(t)および電圧波形Vb(t)に加えて、矩形波電流Ia(t)とそれに応じた電圧応答Va(t)を破線で記したものである。矩形波電流Ia(t)は、時刻t1において電流値がゼロからIpへとステップ状に変化するものとする。
【0075】
電気容量差分算出部512が算出する電気容量dQは、図7において、矩形波電流Ia(t)と傾斜電流Ib(t)に囲まれた斜線部分の面積Ip(t2-t1)/2に相当する。すなわち、dQは傾斜電流が入力されたときに電池に充電される電気量と、仮に矩形波電流が入力された場合に電池に充電される電気量の差分である。
【0076】
電圧変化率マップ513は、予め取得されたデータが格納されており、入力されるSOC情報に応じて電圧変化率mを出力する。電圧変化率マップ513に実装するデータの取得方法の例を、図8を用いて説明する。
【0077】
図8(a)は、蓄電装置8に搭載される蓄電池の電圧特性を模式的に表したものである。電池の充電状態(SOC)が高いほど電池電圧が高くなり、反対に、充電状態が低いほど電池電圧が低くなる。ここで、図8(a)の電圧の変化率(または曲線の傾き)に着目すると、SOCが高いほど電圧変化率は小さく、SOCが低くなるにしたがって電圧変化率が大きくなっている。図8(b)は、図8(a)に示した電圧特性の電圧変化率を表している。
【0078】
電圧変化率マップ513に格納するデータを取得する方法として、まず蓄電装置8に搭載される電池について、予め図8(a)のような電圧特性を取得する。そして、取得した電圧特性を基に、図8(b)のような電圧変化率を求める。ここで、図8(b)のように、SOCをいくつかのレベルに区分けし、各SOCレベルにおける電圧変化率の代表値をそれぞれ求める。図8の例では、SOCレベルをL1からL10まで10段階に分け、各レベルにおける電圧変化率の代表値m1からm10図8(c)のようにマップテーブルに格納している。
【0079】
電圧変化率マップ513は、入力されたSOCの値が、L1〜L10のなかのどのSOCレベルに該当するか判定し、対応する電圧変化率mを出力する。この電圧変化率mは、単位は単位電気量あたりの電圧変化量であり、mの単位は[V/Ah]である。
【0080】
dV補正量算出部514は、電気容量差分算出部512が出力した電気容量dQ[Ah]と、電圧変化率マップ513が出力した電圧変化率m[V/Ah]を掛け合わせ、dV補正量dV0を出力する。dV補正量dV0は、矩形波電流Ia(t)に応じた電圧応答Va(t)とVb(t)の差分を示すものであり、dVbに足し合わせることにより、理想的な矩形波電流Ia(t)を流した場合の電圧応答Va(t)を算出することができる。
【0081】
dV/dI補正演算部515は、電流変化量dIb、電圧変化量dVb、dV補正量dV0、さらにt0/dt判定部511からの演算許可信号を入力とし、この演算許可信号を受信したときに(式8)にしたがって電圧変化量と電流変化量の比dV/dIを算出、出力する。
【0082】
〔数8〕V/dI = (dVb+ dV0)/ dIb
つまり、電流変化量dIb及び時間t0を用いて、図7(a)に示す理想的な矩形波電流Ia(t)と実際の傾斜電流Ib(t)の電気容量の差分dQを得て、当該dQに伴う電圧変化量dV0を生成することで、理想的な矩形波電流Ia(t)が蓄電装置8に流れた場合の電圧変化量dVbを推定することが可能となる。そのため、理想的な矩形波電流Ia(t)を蓄電装置8に流すことが難しい電気回路システムであっても、傾斜電流Ib(t)を用いて蓄電装置の内部抵抗を推定することが可能となる。
【0083】
次に、図4の換算係数マップ520について説明する。換算係数マップ520は、dV/dI演算部が演算、出力する電圧変化率と電流変化率の比(dV/dI)の値を、予め決められた基準温度、基準SOCにおける値へと変換するための補正係数αを出力する。この補正係数αは、先に述べた電圧変化率マップ513と同様に、蓄電装置8に搭載する電池の特性を予め取得し、データを換算係数マップ520に格納しておく。換算係数αの具体例を図9図10にて説明する。
【0084】
図9は、蓄電装置8に搭載される蓄電池の、温度T1、T2、T3におけるSOCと内部抵抗の特性である。この内部抵抗は、蓄電池に対して理想的な矩形波電流を入力したときに得られる電圧変化量と入力電流値から得られるものである。
【0085】
一般的に、電池の内部抵抗は温度が低いほど高くなり、温度が高いほど低くなる。図9に示した3つの温度の大小関係は、T1<T2<T3のようになる。温度の具体的数値としては、例えばT1:35℃、T2:25℃、T3:15℃など、実際のシステムにおいて電池の内部抵抗演算が行われる際の温度を想定して設定する。なお、温度レベルは本実施例のような3段階ではなく、例えば2段階でも、また4段階以上設けても良い。
【0086】
図9において、温度に加えてSOCもレベル分けする。図9の例では、SOCレベルをL1〜L5の5段階に区分けしている。例えば、リチウムイオン電池は一般的にSOCが高いほど内部抵抗は低下し、SOCが低いほど内部抵抗が上昇する傾向にある。
【0087】
図9の例のように、電池温度を3レベル、SOCを5レベルに分けるとすると、合計15通りの電池状態に分けられる。換算係数αは、この電池状態毎に設定され、図9の例では15個の換算係数α11、α12…α35を定めることとなる。
【0088】
ここで、図9に示したように、SOCレベルL3かつ温度T2において取得した電池の内部抵抗Rsを基準抵抗と定める。この基準抵抗の他、各SOCレベル、温度レベルにおける内部抵抗値もそれぞれ取得する。例えば、図9に示したように、SOCレベルL2かつ温度T1における内部抵抗R12を取得したとすると、補正係数α12は、α12=Rs/R12で得られる。これと同様の方法で他の補正係数を取得し、図10のようなマップテーブルに補正係数を格納する。
【0089】
図4に戻って、換算係数マップ520の役割を再度説明する。換算係数マップ520には演算情報抽出部から温度Tを、SOC算出手段400から電池SOCをそれぞれ入力し、図10のマップデータに基づいて、該当する温度レベル、SOCレベルを判断して補正係数αを出力する。先にも説明した通り、dV/dI演算部510から出力される電圧変化量と電流変化量の比dV/dIに対してこの補正係数αを乗じることで、電池の基準状態(SOCレベルL3、温度T2)に換算した電池の内部抵抗αdV/dIを算出し、出力する。
【0090】
以上の手段をとることで、統括制御部9は、電池の内部抵抗を取得するときの電池のSOCや電池の温度条件が測定時毎に異なっても、統一の条件下での電池の内部抵抗に換算された値を監視していくことで、電池の劣化度を把握することができる。
【0091】
上述した実施例では、蓄電装置の一例としてリチウムイオン電池を用いることができるが、他の種類の二次電池を利用したシステムに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 エンジン
2 発電機
3 コンバータ
4 インバータ
5 電動機
6 減速機
7 輪軸
8 蓄電装置
9 統括制御部
10 蓄電装置制御部
100 入力処理部
200 出力処理部
300 演算情報抽出部
400 SOC算出手段
500 内部抵抗演算部
600 データ保持部
700 許容電力算出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14