【解決手段】圧電素子7の第2電極10と支持体5の第3電極6間に接着剤11を設け、ピストン24で圧電素子7を支持体5に押圧し、接着工程を実行しながら、圧電素子7の第1電極9と支持体5を結ぶ計測回路30のパルス発生手段31によって圧電素子7にパルス信号を加える。圧電素子7と支持体5の接着が進んで接触抵抗が減少し、回路の電流値が低下したことが電圧計32で確認された時に接着完了とする。圧電素子7の振動により接着剤11内の気泡が除去され、各電極面の酸化層が除去され、接着剤11は厚さが均一化して接着される。接着工程と検査工程が同時に行え、効率がよい。
前記計測回路に設けたパルス発生手段によって前記圧電素子にパルス信号を加え、前記計測回路に設けた電圧計によって電圧を測定し、前記電圧計が測定した電圧が所定の値よりも大きくなった場合に前記接着工程を終了することを特徴とする請求項1記載の圧電素子の接着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の圧電素子の貼着方法によれば、接着工程において圧電素子の上面側の電極をカバーで覆うため、圧電素子の上面側の電極に接着剤が付着して硬化するといった不都合を回避することはできる。しかしながら、この方法であっても、接着剤の厚さ等の接着条件を実際に管理しているわけではない。また貼り合わせ時に接着剤中に気泡が入ってしまった場合や、圧電素子や対象物の接着面に汚れや酸化層等があった場合に、その除去ができるわけでもない。従って、この方法では圧電素子と貼着対象物の接着剤による安定的かつ効率的な貼着は実際には困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術及びその課題に鑑みてなされたものであり、圧電素子を対象物に接着剤で接着する作業を高い信頼性で効率よく行うことができる接着方法及び接着装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された圧電素子の接着方法は、
第1電極と第2電極で圧電体を挟んでなる圧電素子を接着剤で対象物に接着し、前記第2電極と前記対象物を電気的に接続する圧電素子の接着方法において、
前記圧電素子の前記第2電極と前記対象物の間に接着剤を設けて前記圧電素子を前記対象物に押圧する接着工程を実行するとともに、前記圧電素子の前記第1電極と前記対象物を接続する計測回路によって前記圧電素子に交流信号を加え、前記計測回路に流れる電流の値に基づいて前記接着工程の完了時期を管理することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載された圧電素子の接着方法は、請求項1記載の圧電素子の接着方法において、
前記計測回路に設けたパルス発生手段によって前記圧電素子にパルス信号を加え、前記計測回路に設けた電圧計によって電圧を測定し、前記電圧計が測定した電圧が所定の値よりも大きくなった場合に前記接着工程を終了することを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載された圧電素子の接着装置は、
第1電極と第2電極で圧電体を挟んでなる圧電素子を接着剤で対象物に接着し、前記第2電極と前記対象物を電気的に接続する圧電素子の接着装置において、
前記第2電極と前記対象物の間に接着剤が設けられた状態で前記圧電素子を前記対象物に押圧する接着工程を実行する押圧手段と、
前記圧電素子の前記第1電極と前記対象物を接続し、前記圧電素子に交流信号を加えるとともに、前記押圧手段による前記接着工程の完了時期を管理するために電流を計測する計測回路と、
を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る圧電素子の接着方法又は圧電素子の接着装置によれば、圧電素子の第2電極と対象物との間に接着剤を設け、圧電素子を対象物に押圧して接着工程を実行すると同時に、計測回路によって圧電素子に交流信号を加え、その時に計測回路に流れる電流を計測する。交流信号を与えられた圧電素子は振動するため、接着剤内に気泡がある場合には振動によってこれが除去され、また圧電素子と対象物の各電極面に汚れや酸化層がある場合には、これも振動によって除去される。さらに、圧電素子は対象物に押し付けられながら振動するため、圧電素子と対象物の間にある接着剤はこの振動の影響を受けて厚さが位置によらず均一になっていく。このように圧電素子に交流を加えながら接着工程を実行し、圧電素子と対象物の接着状態が良好になっていくと、両者間の接着抵抗は低下し、従って計測回路に流れる電流値は増大していく。このような状態は、例えば計測回路に設けた電圧計における電圧の上昇として確認することができる。従って、このような手法で、圧電素子が対象物に適正な状態で接着されたと判断した場合には、交流信号を停止し、接着工程を終了する。圧電素子は対象物に対して好ましい所定の良好な状態で接着されたことが保証される。また、接着工程で同時に電気的接続状態の検査も行うこととなるため、接着工程と検査工程を分離して行う場合よりも効率がよく、接着不良で廃棄処分となる材料も減少するので製造上の歩留りが良くなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る圧電素子の接着装置と、これを用いた圧電素子の接着方法について、
図1〜
図6を参照して説明する。
実施形態に係る圧電素子の接着装置は、
図1に例示するようなインクジェットヘッド1の製造及び検査に用いることができる。このインクジェットヘッド1は、内部にインク室2を備えた筐体3を本体としている。インク室2には図示しない供給部からインクが供給されるようになっており、本体の一方の面にはインクの吐出孔4が形成されている。また、吐出孔4と対面する本体の他方の面は金属製の支持体5から構成されており、この支持体5の外面には金属の第3電極6が設けられている。そして、このように構成された筐体3のインク室2にあるインクを吐出孔4から吐出させる駆動源として、圧電素子7が利用されている。圧電素子7は、圧電体8の両面に第1電極9と第2電極10が設けられた素子であり、そのインクジェットヘッド1側にある第2電極10が支持体5の第3電極6と接着剤11によって接着され、導通している。
なお、上記第1乃至第3電極9,10,6なる名称は、各電極を区別するために便宜上定めたものにすぎない。
【0012】
図1に示すインクジェットヘッド1を使用する場合には、図示のように圧電素子7の第1電極9と、本体の支持体5に設けられた第3電極6の間に交流電源12を接続して駆動する。圧電素子7の圧電体8がD31モードで変位すると、支持体5がその板面と垂直な方向に凹凸の変形を繰り返すように振動し、インク室2内のインクに圧力が加わってインクは吐出孔4から外に吐出され、画像形成に供される。なお、この実施形態では、圧電素子7を設けた筐体3の他方の面と平行な一方の面に吐出孔4を形成したが、圧電素子7の圧電体8の変位モードがD33である場合には、
図1中に一点鎖線にて仮想的に示したように、前記吐出孔4に替えて、圧電素子7を設けた面と直交する面に吐出孔4’を形成する構成例とすることができる。
【0013】
以上説明したように、
図1に示すインクジェットヘッド1では、圧電素子7を支持体5に接着剤11で接着・固定し、圧電素子7の第2電極10と支持体5の第3電極6を電気的に導通させる必要があり、この導通が確実でないと、インクジェットヘッド1としての確実な作動が保証されない。なお、
図1では図示の便宜上、第2電極10と第3電極6の間に接着剤11の層が介在しており、両電極は接触していないように表されているが、適正に接着が行なわれれば、両電極が必要な接触面積で接触した状態になることはもちろんである。そこで、本実施形態では、インクジェットヘッド1の製造工程において、特に、支持体5に圧電素子7を接着剤11で接着して両者を導通させる接着工程において、接着工程中の支持体5と圧電素子7の貼着状態を電気的に管理しながら、押圧手段で圧電素子7を支持体5に押圧する接着装置を用いている。
【0014】
図2は、実施形態に係る圧電素子7の接着装置20と、これを用いた接着工程を示す模式的斜視図である。同図に示すように、この接着装置20は平板状の検査台21を備えている。圧電素子7の第2電極10と支持体5の第3電極6が間に接着剤11を挟んで対面するように、圧電素子7を支持体5の上に重ね、圧電素子7の第1電極9が上側になるように支持体5を検査台21の上面に載置する。検査台21の上面には図示しない接続電極があり、この接続電極は側面の外部端子部22に接続されており、支持体5を検査台21の上に載置すれば、支持体5及び第3電極6は外部端子部22に導通するようになっている。
【0015】
また、検査台21の上に載置された圧電素子7の第1電極9の上方には、図示しない固定部分に取りつけられた押圧部23が配置されている。押圧部23は、押圧制御部25によって駆動を制御される押圧手段としてのピストン24を有しており、必要な押圧力で圧電素子7及び支持体5を検査台21に押し付けることができる。ピストン24の押圧面には検出電極26が設けられており、ピストン24で圧電素子7を支持体5に押し付けると、この検出電極26と圧電素子7の第1電極9が導通するようになっている。
【0016】
そして、この接着装置20は、検査台21上に載置された圧電素子7の第1電極9と支持体5とを接続する計測回路30を備えている。この計測回路30には、圧電素子7に交流信号を加える手段であるパルス発生手段31と、押圧部23による接着工程の完了時期を管理するために電流を計測する計測手段としての電圧計32が設けられている。
【0017】
また、この接着装置20は、押圧部23による接着工程の完了時期を管理するための予備的管理手段として、振動検出手段40を有している。振動検出手段40は、圧電素子7の振動を音波として検出し、その振動数から圧電素子7と支持体5の貼着状態を確認する装置であり、圧電素子7の近傍に配置されるマイク等の集音手段41と、集音手段41で集めた振動を可聴音に増幅する増幅手段42と、増幅手段42からの出力を受けて可聴音を出力するスピーカ等の出力手段43とを備えている。
【0018】
図2を参照して説明した実施形態の接着装置20では、支持体5に接着剤11を介して貼り付けた圧電素子7をピストン24で所定時間にわたり支持体5側に押圧して完全な接着状態を得ることを目的としており、そのために、
図2を参照して説明した計測回路30を用いて圧電素子7と支持体5の接着状態を電気的に監視している。すなわち、ピストン24で圧電素子7を支持体5に押圧しながら、接着装置20の計測原理図である
図3において、パルス発生手段31が圧電素子7にパルス信号V
1 を加えると、計測回路30には電流I
0 が流れ、電圧計32は電圧V
2 を示す。ここで、ピストン24による押圧が継続するにつれて圧電素子7と支持体5の接着状態が変化すると、電圧計32の電圧V
2 が変化するので、これを基準として圧電素子7と支持体5の接着状態を判定する。
【0019】
図4の分図(a)は実施形態に係る接着装置20の電気等価回路図であり、分図(b)は分図(a)中の圧電素子7の電気等価回路図であり、分図(c)は分図(a)中の接着抵抗rの電気等価回路図である。
【0020】
分図(a)において、Zは圧電素子7のインピーダンスであり、rは圧電素子7と支持体5の接着抵抗であり、Rは電圧計32の検出抵抗の抵抗値であり、計測回路30全体としての合成抵抗は(Z+r+R)で表される。従って、計測回路30に加えられるパルス信号の電圧をV
1 とし、計測回路30に流れる電流をI
0 とすると、
I
0 =V
1 /(Z+r+R)
となる。
【0021】
さて、圧電素子7のインピーダンスZは、分図(b)の左図に示すように、直列に接続した誘導成分L
1 と第1の容量成分C
1 と抵抗成分R
1 と、これらと並列に接続した第2の容量成分C
0 から構成される。しかし、実施形態におけるパルス発生手段31のパルス信号V
1 の周波数は1kHz程度であり、この程度の低さである場合には、第2の容量成分C
0 によるインピーダンスが、その他の成分によるものに比べてはるかに大きく、分図(b)の右図に示すように、結局、圧電素子7のインピーダンスZは、Z=1/ωC
0 と見なすことができる。
【0022】
また、分図(c)において、同分図左に示す圧電素子7と支持体5の接着抵抗rは、同分図右に示すように、並列に接続された直流抵抗成分r
0 及び容量性インピーダンスZ
c と、これらと直列に接続されたリードインダクタンス成分L
2 とによって構成される。ここで、接着抵抗rを構成する各成分中、リードインダクタンス成分L
2 はパルス発生手段31のパルス信号V
1 の周波数が1kHz程度の低さである場合には無視することができる。
【0023】
そして直流抵抗成分r
0 及び容量性インピーダンスZ
c は、圧電素子7と支持体5の接着状態によって変動する値であり、その変動によって回路全体の合成抵抗(Z+r+R)も変化する。
図5は、接着開始後、接着時間の経過(横軸で示す)に伴って、圧電素子7の接着抵抗と回路全体の合成抵抗の値(縦軸で示す。但し各値によりスケールが異なる。)が変化していく様子を模式的に示したグラフである。より具体的には、接着後の時間経過に伴って、直流抵抗成分r
0 (実線)と、容量性インピーダンスZ
c (一点鎖線)と、合成抵抗(Z+r+R)(破線)が変化していく状態を表している。
【0024】
図5から分かるように、圧電素子7を支持体5に接着させた当初(図中「接着開始」)は、直流抵抗成分r
0 (実線)は高く、容量性インピーダンスZ
c (一点鎖線)も当初は圧電素子7の第2電極10と支持体5の第3電極6の間隔が相対的に大きいために高く、従って、計測回路30の全体としての合成抵抗(Z+r+R)(破線)も高い状態にある。このとき、接着抵抗rは、電圧計32の検出抵抗の抵抗値Rよりも圧倒的に大きい状態にある。
【0025】
その後、圧力を加える接着時間が経過し、圧電素子7の支持体5に対する接着が進むと(図中「接着中」)、圧電素子7の第2電極10と支持体5の第3電極6の接触面積が増大し、直流抵抗成分r
0 (実線)が低下するとともに、第2電極10と第3電極6の間隔が小さくなって容量が大きくなり、容量性インピーダンスZ
c (一点鎖線)も低くなる。これによって、直流抵抗成分r
0 (実線)>容量性インピーダンスZ
c (一点鎖線)の状態となる。
【0026】
そして、圧電素子7の第2電極10と支持体5の第3電極6の接着状態が好ましい状態になると(図中「接着完了領域」)、容量性インピーダンスZ
c (一点鎖線)>直流抵抗成分r
0 (実線)の状態となり、直流抵抗成分r
0 (実線)と容量性インピーダンスZ
c (一点鎖線)の値は最小値で安定化し、合成抵抗(Z+r+R)(破線)も最小となる。このとき、電圧計32の検出抵抗の抵抗値Rは、接着抵抗rよりも圧倒的に大きい状態にある。
【0027】
このように接着抵抗rが十分に小さくなり、従って合成抵抗(Z+r+R)(破線)も十分に小さい値となった時に、圧電素子7と支持体5が最も適正に接着されたと考えられる。適正に接着されたとは、実施形態ではインクジェットヘッド1の支持体5に圧電素子7が適正に取りつけられたことを意味する。そして、本実施形態では、この時の計測回路30の電流の値I
0 又はその変化を電圧計32が測定した検出電圧V
2 から検知し、その時点でパルス発生手段31によるパルス信号の印加を停止し、ピストン24による圧電素子7の押圧を停止して、圧電素子7の接着作業を終了する。
【0028】
図6は、実施形態の接着工程において、計測回路30に加えたパルス信号V
1 の波形(分図(a))と、計測回路30において電圧計32が計測した検出電圧V
2 の波形(分図(b))を示す図である。電圧計32の検出電圧V
2 =I
0 ・Rは、パルス信号V
1 のパルスが与えられる度に容量成分の放電による曲線を描くが、その最大値は計測回路30に流れる電流I
0 の変化によって変化する。
【0029】
すなわち、計測回路30に一定のパルス信号V
1 を加える中、圧電素子7の接着が進んで接着抵抗rが小さくなると、計測回路30に流れる電流I
0 は増加するので、回路の合成抵抗(Z+r+R)の各成分中、圧電素子7(インピーダンスZ)及び電圧計32の検出抵抗(抵抗値R)の各両端における電圧が上昇する。従って、電圧計32では、検出電圧V
2 =I
0 ・Rは接着開始当初よりも高くなる。この検出電圧V
2 が、予め定めておいた好ましい接着抵抗rの値に対応する基準値に達した時に、圧電素子7の接着が完了したものと見なしてパルス信号を停止し、ピストン24による圧電素子7の押圧を停止する。
【0030】
本実施形態によれば、圧電素子7と支持体5の好ましい接着抵抗rを概ね0.01〜1(Ω)とし、その他の条件、例えば圧電素子7のインピーダンスZ及び電圧計32の検出抵抗の抵抗値Rや、パルス電圧V
1 の具体的な値に基づき、圧電素子7の接着が完了したと判定できる電圧計32の検出電圧V
2 の具体的値を算出し、判断基準値として採用することができる。
【0031】
なお、このように接着剤11で貼り付けた圧電素子7と支持体5を所定位置に配置した後、圧電素子7をピストン24で押圧し、同時にパルス発生手段31によって計測回路30にパルス信号を与え、電圧計32の検出電圧V
2 を監視し、これが所定の基準値に達した場合にパルス信号の印加とピストン24の駆動を停止する操作又は制御は、作業者が装置の各部を手作業で操作することによって行なうことができるが、予め必要な制御手順を記述したプログラムを読み込んだ制御手段によって自動的に行うこともできる。
【0032】
実施形態に係る圧電素子7の接着装置20を用い、圧電素子7をインクジェットヘッド1の支持体5に接着する工程は、次のようにして実行する。
まず、圧電素子7の第2電極10と支持体5の第3電極6との間に接着剤11を設け、ピストン24を操作して圧電素子7を支持体5に押圧して接着工程を開始する。これと同時に計測回路30のパルス発生手段31によって圧電素子7にパルス信号を加え、その時に計測回路30に流れる電流I
0 を計測するために、電圧計32で電圧V
2 を測定する。
【0033】
パルス信号を与えられた圧電素子7は振動するため、接着剤11内に気泡がある場合には振動によってこれが除去される。また圧電素子7と支持体5の各電極面に汚れや酸化層がある場合には、これも振動によって除去される。さらに、圧電素子7はピストン24によって支持体5に押し付けられながら振動するため、圧電素子7と対象物の間にある接着剤11は、その厚さが位置によって不均一である場合には、この振動の影響を受けて厚さが均一になっていく。
【0034】
このように圧電素子7にパルス信号を加えながら接着工程を実行し、圧電素子7と支持体5の接着状態が良好になっていくと、両者間の接着抵抗rは低下し、従って計測回路30に流れる電流値I
0 は増大していく。このような状態は、計測回路30に設けた電圧計32における電圧V
2 の上昇として確認することができる。そして、電圧計32の検出電圧V
2 に鑑みて圧電素子7が支持体5に適正な状態で接着されたと判断できる場合には、パルス信号の出力とピストン24による圧電素子7の押圧を停止し、接着工程を終了する。
【0035】
なお、電圧計32の検出電圧V
2 に基づく判断に替えて、集音手段41で集めた圧電素子7の振動を増幅手段42で可聴音に増幅し、これを可聴音として出力手段43から出力することにより、圧電素子7が支持体5に適性に接着されたことを判断して接着工程を終了するようにしてもよい。
【0036】
以上の工程により、接着剤11の厚さの均一化と、接着剤11の内部の気泡の除去と、接着に係る電極面の活性化(酸化層等の除去)と、さらに圧電素子7の通電の確認が同時に行なわれ、その結果、圧電素子7は支持体5に対して好ましい所定の良好な状態で接着されたことが保証される。また、接着工程で同時に電気的接続状態の検査を行うこととなるため、接着工程と検査工程を分離して行う場合よりも効率がよく、製造される圧電素子7が支持体5に接着されたインクジェットヘッド1の部品の信頼性が高まり、また接着不良で廃棄処分となる材料も減少するので製造上の歩留りが良くなる効果も得られる。
【0037】
以上説明した実施形態は、インクジェットヘッド1の金属製の支持体5に圧電素子7を接着する工程に関するものであったが、圧電素子を接着する対象はインクジェットヘッドの支持体に限らず、圧電素子を接着剤で接着する状態を適正に管理したい対象物であれば、すべて本発明の対象となりうることはもちろんである。