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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231055(P2015-231055A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20151124BHJP
   H04J 1/02 20060101ALI20151124BHJP
   H04B 11/00 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   H04L27/26 Z
   H04J1/02
   H04B11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-114709(P2014-114709)
(22)【出願日】2014年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 泰央
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 信弥
【テーマコード(参考)】
5K004
【Fターム(参考)】
5K004AA06
5K004GC02
5K004GC12
(57)【要約】
【課題】音を伝送媒体に利用してデータを伝送する仕組みにおいて、受信側で特定のタイミングに処理を実行させる。
【解決手段】音響伝送システムは、情報を音響信号に重畳して音を放音する送信装置1と、その音を収音して情報を抽出する受信装置2とを少なくとも備えている。送信装置1は、コマンド及びElapse Timeを含むフレームを複数のブロックに分割して周波数帯域別に送信する。受信装置2は、これらのブロックを復調して、コマンド及びElapse Timeを取得し、Elapse Timeによって指定されたタイミングで、コマンドによって指定された処理を実行する。これにより、音を伝送媒体に利用してデータを伝送する仕組みにおいて、受信側で特定のタイミングに処理を実行させることが可能となる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信装置によって実行される処理を指定する処理指定情報と、前記受信装置による受信の時点から前記処理を実行するタイミングまでの経過時間によって当該処理を実行するタイミングを指定するタイミング指定情報とを含むフレームを複数にブロックに分割する分割手段と、
それぞれ異なる前記経過時間を含むフレームが複数に分割された各ブロックに基づいて、それぞれ異なる周波数帯域の搬送波を変調した変調信号を、前記処理を実行するタイミングが到来するまでに複数回生成する変調信号生成手段と
生成された前記変調信号に応じた音を放音する放音手段と
を備える送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置から放音された音を収音する収音手段と、
前記収音手段により収音された音に応じた変調音響信号をそれぞれ異なる周波数帯域に分離する分離手段と、
分離された前記周波数帯域ごとに前記変調音響信号を復調して得たブロックからなるフレームを生成するフレーム生成手段と、
生成された前記フレームに含まれる前記処理指定情報によって指定された処理を、前記タイミング指定情報によって指定されたタイミングで実行する処理実行手段と
を備える受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音(音波)を伝送媒体に利用してデータを伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
音響信号又は音(音波)を伝送媒体に利用してデータを伝送する技術が知られている。この種の技術において、人間には聞こえないような特定の周波数帯域に属する音にのみデータを重畳するような仕組みが考えられるが、例えばデータ伝送の環境が残響音(反射音)の多い空間である場合には、マルチパスフェージングやノイズ混入などの事象が発生することにより、音からデータを取り出せなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−288246号公報
【特許文献2】特開2006−251676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図10に示すように、送信側では、異なる周波数帯域F1、F2、F3の各々において、3つのブロックa、b、cからなる1つのフレームを送信するために要する期間の1/n(図では1/3)に相当する期間だけ遅延させながら、各フレームの送信を開始するような仕組みを想定する。例えば周波数帯域F1においては時点t6にフレームの先頭のブロックaの送信を開始し、周波数帯域F2においては時点t5にブロックaの送信を開始し、周波数帯域F3においては時点t4にブロックaの送信を開始する。そして、受信側では、例えば時点t0において受信を完了したブロックa1を起点として、ブロックa1とは異なる周波数帯域F2,F1において受信が完了したブロックb1およびブロックc1を選択する(図の手順1)。この手順1では、1ブロック送信期間において全周波数帯域のそれぞれから各ブロックを1つずつ選択するから、1フレーム分の伝送データが重畳された音を受信装置2が収音するのに要する期間は、1ブロック送信期間で済む。ただし、マルチパスフェージング等の影響でブロックc2を受信できなかった場合、受信側では例えば、ブロックa1とは異なる周波数帯域F2において受信が完了したブロックb1と、時点t7よりも1ブロック分前の時点t6の時点で、ブロックa1と同じ周波数帯域F3において受信が完了したブロックc2とを選択する(手順2)。つまり、この手順2では、1ブロック送信期間より長く、且つ、1つのフレームの送信に要する期間より短い期間で、複数の周波数帯域から各ブロックを任意の組み合わせで選択する。
【0005】
このように図10に示す仕組みでは、複数の周波数帯域を使用しているから、マルチパスフェージング等に対する耐性(いわゆるロバスト性)が向上するが、a,b,cからなる1フレームの受信完了時期が不定になる。このため、例えば送信側から送信されたフレームを用いて受信側にて特定のタイミングで或る処理を実行するよう指示するような利用シーンには向いていない。
【0006】
そこで、本発明は、音を伝送媒体に利用してデータを伝送する仕組みにおいて、受信側で特定のタイミングに処理を実行させるための仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る送信装置は、受信装置によって実行される処理を指定する処理指定情報と、前記受信装置による受信の時点から前記処理を実行するタイミングまでの経過時間によって当該処理を実行するタイミングを指定するタイミング指定情報とを含むフレームを複数にブロックに分割する分割手段と、それぞれ異なる前記経過時間を含むフレームが複数に分割された各ブロックに基づいて、それぞれ異なる周波数帯域の搬送波を変調した変調信号を、前記処理を実行するタイミングが到来するまでに複数回生成する変調信号生成手段と生成された前記変調信号に応じた音を放音する放音手段とを備える。
また、本発明に係る受信装置は、前記送信装置から放音された音を収音する収音手段と、前記収音手段により収音された音に応じた変調音響信号をそれぞれ異なる周波数帯域に分離する分離手段と、分離された前記周波数帯域ごとに前記変調音響信号を復調して得たブロックからなるフレームを生成するフレーム生成手段と、生成された前記フレームに含まれる前記処理指定情報によって指定された処理を、前記タイミング指定情報によって指定されたタイミングで実行する処理実行手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、音を伝送媒体に利用してデータを伝送する仕組みにおいて、受信側で特定のタイミングに処理を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る音響伝送システムの構成例を示すブロック図
図2】送信装置の変調部又は受信装置の復調部のハードウェア構成例を示すブロック図
図3】送信装置の変調部の機能構成例を示すブロック図
図4】(a)データのフレーム構造の一例を示す図、(b)フレームとブロックの関係を概念的に示す図
図5】フレームの送信タイミングを説明するための概念図
図6】フレーム送信のタイミングとイベント発生のタイミングとの関係を説明するための概念図
図7】送信装置の処理の手順を示すフローチャート
図8】受信装置の復調部の構成例を示すブロック図
図9】受信装置の処理の手順を示すフローチャート
図10】ロバストモードにおけるフレームの送信タイミングを説明するための概念図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.音響伝送システムの概要]
本発明の一実施形態に係る音響伝送システムは、音(音波)を伝送媒体として、伝送対象となる情報を送受信するシステムである。音響伝送システムは、情報を音響信号に重畳して音を放音する送信装置と、その音を収音して情報を抽出する受信装置とを、少なくとも備えている。情報が重畳された音の放音は、情報の送信に相当するから、以下では必要に応じて、送信装置が情報を送信する、と表現する。また、情報が重畳された音の収音は、情報の受信に相当するから、以下では必要に応じて、受信装置が情報を受信する、と表現する。
【0011】
この音響伝送システムは、例えば以下の(1)〜(3)の場面において利用されるが、必ずしもこれらの例に限るものではない。
(1)道路や店舗などといった複数のユーザが居る場所に設置された送信装置から、ユーザが所持するスマートホンなどの受信装置に対して、例えば或る処理を特定のタイミングで実行させるための情報を音に重畳して送信し、受信装置においてその情報に応じたタイミングで処理を行う。
(2)宅内のテレビジョン装置が送信装置として機能し、このテレビジョン装置からユーザが利用するスマートホンやパーソナルコンピュータなどの受信装置に対して、例えばテレビ番組と同期して或る処理を実行させるための情報を音に重畳して送信し、受信装置においてテレビ番組と同期した特定のタイミングで処理を行う。
(3)複数のユーザがそれぞれ所持するスマートホンなどの携帯機器の一方が送信装置として他方が受信装置として機能し、その送信装置からその受信装置に対して、例えば或る処理を実行させるための情報を音に重畳して送信し、受信装置において特定のタイミングで処理を行う。
上記の(1)〜(3)の場面では、伝送対象となる情報が非可聴域の音に重畳され、さらにこれがバックグラウンドミュージックなどの可聴域に属する音楽や音声に重畳されていてもよい。或いは、これらの可聴域の音楽や音声が存在せず、伝送対象となる情報が非可聴域の音にのみ重畳されていてもよい。
なお、以下の説明においては、受信装置において、送信装置から指定されたタイミングで指定された処理を行うことを、「イベントの発生」という。
【0012】
[2.音響伝送システムの全体構成]
図1は、音響伝送システムの構成例を示すブロック図である。ここでは説明を簡単にするため、送信装置1と受信装置2が備える最小限の構成を図示しているが、送信装置1と受信装置2はそれぞれ、図示したもの以外の構成を備えていてもよい。
【0013】
送信装置1は、本発明に係る送信装置の一例であり、変調部10、出力部11およびスピーカ12を備える。変調部10は、本発明に係る変調装置の一例であり、周波数が高帯域に属する搬送波を、伝送対象となる伝送データDで変調し、音響データSに重畳する手段である。ここでいう高帯域とは、人間が聞き取ることができる音の周波数帯域の上限値(十数kHzから20kHz程度)よりも高い周波数帯域である。例えば上記(2)の例の場合、音響データSは、テレビ番組の音声や音楽であり、伝送データDは、受信装置2においてそのテレビ番組の内容に合わせて特定のタイミングで或る処理を行うよう指定する情報である。音響データS及び伝送データDは、例えば送信装置1内の記憶媒体に記憶されているものであってもよいし、送信装置1の外部からこの送信装置1に供給されるものであってもよい。出力部11は、変調部10から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータと、D/Aコンバータから出力されるアナログ信号を増幅してスピーカ12に供給するアンプとを備える。スピーカ12は、出力部11から入力されたアナログ信号に応じた音を放音する放音手段である。放音された音は空間(大気)を伝搬して、受信装置2のマイク20によって収音される。
【0014】
受信装置2は、本発明に係る受信装置の一例であり、マイク20、入力部21、復調部22、制御装置23及び制御対象24を備える。マイク20は、スピーカ12から放音された音を収音し、その音に応じた音響信号を出力する収音手段である。入力部21は、マイク20から出力される音響信号を増幅するアンプと、アンプから出力されるアナログの音響信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータとを備える。復調部22は、本発明に係る復調装置の一例であり、A/Dコンバータから出力されるデジタル信号から伝送データDを復調する。この伝送データDは、「1」又は「0」で構成されるビット列であり、制御装置23に入力される。制御装置23は、マイクロプロセッサやRAM(Random Access Memory)などからなり、この伝送データDによって指定されたタイミングで、伝送データDによって指定された処理を実行する処理実行手段である。制御対象は、例えば伝送データDに基づく情報を画像や音声等で出力する出力装置や、伝送データDに基づいて動作する玩具やガジェットと呼ばれる装置・機構などを含む。
【0015】
変調部10及び復調部22の各構成は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアが協働することにより実現されてもよい。変調部10の構成がハードウェア及びソフトウェアの協働により実現される場合の変調部10のハードウェアは、例えば図2に示すように、コンピュータとして構成される。この場合、図2に示すように、変調部10は、マイクロプロセッサやRAMなどからなる制御部1000と、ハードディスクなどの大容量ストレージである記憶部1001とを少なくとも備える。制御部1000のマイクロプロセッサが記憶部1001に記憶されたプログラムをRAMに読み出して、読みだしたプログラムを実行することで、変調部10の各構成(後述)が実現される。また、復調部22の構成がハードウェア及びソフトウェアの協働により実現される場合の復調部22のハードウェアも、図2に示すような構成である。この場合、制御部1000のマイクロプロセッサが記憶部1001に記憶されたプログラムをRAMに読み出して、読みだしたプログラムを実行することで、復調部22の各構成(後述)が実現される。
【0016】
[3.送信装置における変調部の構成]
図3は、送信装置1の変調部10の構成例を示す図である。変調部10は、音響データSに対する処理系としてLPF101を備え、伝送データDに対する処理系として分割部104とLPF1021〜1023とVCO(Voltage-controlled oscillator)1031〜1033と加算器105とを備える。LPF101は加算器105に接続されている。LPF1021〜1023はそれぞれ、分割部104に接続されるとともに、VCO1031〜1033を介して加算器105に接続されている。
【0017】
LPF101は、音響データSにおいて高帯域の周波数成分を除去する。LPF101のカットオフ周波数は、聴取者による音響データSの聴感上の音質を確保し且つ変調に用いる帯域(変調帯域という)を確保できるよう、例えば可聴周波数帯域の上限値(十数kHzから20kHz程度)程度に設定される。このカットオフ周波数が、変調帯域の下限周波数になる。これは、例えばLPF101のカットオフ周波数を低くしすぎると音響データSの放音時の音質が劣化し、また、その低いカットオフ周波数に合わせて変調帯域の周波数を低くすると、この変調帯域に属する変調信号の放音時の音が聴取者の耳に付きやすくなるためである。逆に、LPF101のカットオフ周波数を高くしすぎると、変調帯域を広くすることができず、伝送データの伝送速度が低下するためである。LPF101から出力された信号は加算器105に入力される。
【0018】
送信装置1においては、1つのフレームはn(nは正の整数、本実施形態では一例としてn=3とする)個の単位に分割されて、この分割された単位で送信される。この分割された一つの単位をブロックと呼ぶ。ここで、図4(a)は、このフレームの構造の一例を示す図である。1つのフレームFは、その先頭から順に、フレーム長などのフレームの属性に関する情報が含まれるヘッダ、実データが含まれるペイロード、及び、フレームの後端に相当するフッタで構成される。ペイロードは、受信装置2において実行する処理を指定する処理指定情報であるコマンドと、受信装置2において処理を実行するタイミングを指定するタイミング指定情報であるElapse Timeとを含む。図4(b)は、フレームとブロックの関係を概念的に示す図である。図4(b)に示すように、1つのフレームは、データ長が均等な3つのブロックa,b,cで構成される。
【0019】
図3に示した変調部10の分割部104は、1フレームを複数(ここでは3つ)のブロックに分割する分割手段である。LPF1021〜1023はいずれも、ベースバンド信号の帯域を制限するべく、高帯域に相当する周波数成分を除去するためのフィルタであり、ナイキストフィルタと呼ばれるものである。ナイキストフィルタは、一般的にコサイン・ロールオフ・フィルタと呼ばれるFIRフィルタで構成されているが、フィルタの次数やロールオフ率等は適用条件に応じて決定される。伝送データDは、LPF1021〜1023によってフィルタリングされたのち、VCO1031〜1033にそれぞれ入力されて、変調信号が生成される。加算器105においては、伝送データDに基づく変調信号及び音響データSに基づく音響信号が加算される。LPF1021〜1023、VCO1031〜1033及び加算器105により変調信号生成手段が構成されている。変調信号が加算された音響信号は出力部11に供給され、スピーカ12からこの変調信号が加算された音響信号に基づく音が放音される。
【0020】
ここで、図5は、各ブロックの送信タイミングを説明するための概念図である。また、図6は、フレーム送信のタイミングとイベント発生のタイミングとの関係を説明するための概念図である。なお、図5において、「a」という表記はブロックaを意味し、「b」という表記はブロックbを意味し、「c」という表記はブロックcを意味する。また、F1、F2、F3は、伝送データの搬送波の周波数帯域を意味する。図5に示すように、送信装置1は、時点t4までに、異なる周波数帯域F1、F2、F3の各々において、1つのフレームを構成するブロックa1,b1,c1を送信する。例えば周波数帯域F1においてはフレームの先頭のブロックa1、周波数帯域F2においてはブロックb1、周波数帯域F3においてはブロックc1を送信する。図6に示すように、これらのブロックa1,b1,c1からなるフレームのペイロードには、受信装置2におけるこれらブロック(つまり1フレーム)の受信完了時点t4からイベント発生時点t0までの経過時間である「4000ms」がElapse Timeとして記述されている。受信装置2は、これらのブロックa1,b1,c1を復調してコマンド及びElapse Timeを取得し、このElapse Timeによって指定されたタイミングで、このコマンドによって指定された処理を実行する。
【0021】
送信装置1は、処理を実行するタイミング(イベント発生時点)が到来するまでに、コマンドが同一でElapse Timeが異なるフレームを複数回生成して送信する。例えば時点t3までに、送信装置1は、異なる周波数帯域F1、F2、F3の各々において、1つのフレームを構成するブロックa2,b2,c2を送信し、時点t2までに、送信装置1は、異なる周波数帯域F1、F2、F3の各々において、1つのフレームを構成するブロックa3,b3,c3を送信し、時点t1までに、送信装置1は、異なる周波数帯域F1、F2、F3の各々において、1つのフレームを構成するブロックa4,b4,c4を送信する。図6に示すように、ブロックa2,b2,c2からなるフレームのペイロードには、これらブロックの受信完了時点t3からイベント発生時点t0までの経過時間である「3000ms」がElapse Timeとして記述されている。また、ブロックa3,b3,c3からなるフレームのペイロードには、これらブロックの受信完了時点t2からイベント発生時点t0までの経過時間である「2000ms」がElapse Timeとして記述されている。ブロックa4,b4,c4からなるフレームのペイロードには、これらブロックの受信完了時点t1からイベント発生時点t0までの経過時間である「1000ms」がElapse Timeとして記述されている。
このように、送信装置1は、イベント発生までに、時間間隔を空けて複数回(ここでは4回)のフレーム送信を行うことで、通信成功率を向上させている。図6の例では、フレーム送信4回中3回は失敗しているが、1回成功しているので、音響通信自体は成功している。
【0022】
図7は、送信装置1における処理の手順を示したフローチャートである。まず、変調部10は、伝送データD(フレーム)を取得する(ステップS11)。分割部104が取得した時点における伝送データDにおけるElapse Timeは空欄である。次に、変調部10は、現時点からイベント発生時点までの時間から、フレームの送受信に要する時間を遅延時間(例えば0.7秒)として減算し、Elapse Timeを求め、それをフレームに記述する(ステップS12)。次に、変調部10は、フレームを3つに分割し(ステップS13)、周波数帯域ごとの変調処理を経たのちに(ステップS14)、送信する(ステップS15)。
【0023】
[4.受信装置における復調部の構成]
図8は、受信装置2の復調部22の構成例を示すブロック図である。復調部22は、ビット復号部220と、データ検出部230とを備える。ビット復号部220には、マイク20で収音されて入力部21でA/D変換された音響信号が入力される。このとき入力される音響信号には、送信装置1で変調された伝送データDに対応する音響信号が含まれるから、ビット復号部220に入力される音響信号を変調音響信号Aと呼ぶこととする。ビット復号部220は、入力された変調音響信号Aのうち、伝送データDに対応する音響信号を「1」又は「0」の2値データに変換してビット値を復号し、データ検出部230へと出力する。データ検出部230はビット復号部220から出力された2値データから伝送データDを取り出す。以下、これら各部の詳細を説明する。
【0024】
ビット復号部220は、HPF221と、STFT部222と、減算器2231〜2233と、DCカット部2251〜2253と、2値化部2261〜2263とを備える。HPF221は、入力された変調音響信号Aから、音響データSに対応する低帯域の信号成分を除去し、伝送データDに対応する高帯域の信号成分を抽出する。つまり、HPF221のカットオフ周波数は、変調帯域の下限周波数に設定される。
【0025】
STFT部222は、HPF221から出力される信号を、送信時に用いた周波数帯域f1、f2、f3に属する信号成分に分離する分離手段である。具体的には、STFT部222は、HPF221から出力される信号に対して短時間フーリエ変換(STFT:Short-Time Fourier Transform)を施し、前述した周波数帯域F1、F2、F3にそれぞれ属する信号成分に分離して、各信号成分の時間変化波形を出力する。このときの短時間フーリエ変換におけるオーバラップ率は50%、つまりSTFT部222はハーフオーバラップでSTFTを行う。また、例えばFFT長は1024サンプルであり、1シンボルサンプル長は1536サンプルであり、STFT後のサンプリング周波数は86.1328125Hzである。なお、1シンボルサンプル長はFFT長の例えば1倍、1.5倍、2倍などであるが、本実施形態では1.5倍である。STFT後のサンプリング周波数は、FFT長とオーバラップ率から算出される。
【0026】
LPF2241〜2243は、高帯域に相当する信号成分を除去して、ベースバンド信号が属する周波数帯域の信号成分を抽出する。なお、送信装置1のLPF1021〜1023及び受信装置2のLPF2241〜2243は、完全なナイキストフィルタとなるように構成されている。
【0027】
DCカット部2251〜2253は、周波数帯域F1、F2、F3に対応して設けられており、各LPF2241〜2243から出力された信号からベースバンド信号を抽出する。具体的には、DCカット部2251〜2253は、各LPF2241〜2243から出力された信号に対しエンベロープを補正する処理(エンベロープ処理という)を行うことで、DCオフセットを除去してベースバンド信号を抽出する。
【0028】
2値化部2261〜2263は、閾値thを利用してベースバンド信号を2値化し、ビット値を復号してデータ検出部230へと出力する。
データ検出部230は、2値化部2261〜2263から出力されてくるビットデータから伝送データを抽出する。そして、データ検出部230は、復号及び誤り検出を経て生成したフレームを伝送データとして出力する。
【0029】
図9は、受信装置2における処理の手順を示したフローチャートである。まず、受信装置2の復調部22は、音響変調信号を取得する(ステップS21)。復調部22がこれを復調して得た伝送データを制御装置23に供給する(ステップS22)。制御装置23は、自身の計時手段としてのタイマーを参照し、Elapse Timeが経過したか否かを判断する(ステップS23)。Elapse Timeが経過すれば(ステップS23;Yes)、制御装置23は、伝送データのコマンドによって指定された処理を実行する(ステップS24)。
【0030】
以上説明した実施形態によれば、音を伝送媒体に利用してデータを伝送する仕組みにおいて、受信側で特定のタイミングに処理を実行させることが可能となる。
【0031】
[変形例]
[変形例1:ロバストモードとの併用]
上記実施形態は、処理のタイミングを重視した実施の態様であり、ここではトリガモードという。一方、図10に示した仕組みはロバスト性向上を意図したものであり、ここではロバストモードという。音響伝送システムは、このトリガモードとロバストモードとを切り替えてもよい。以下にロバストモードについて説明する。図10は、ロバストモードにおいてブロックを抽出してフレームを生成するときの条件を説明するための概念図である。なお、図10において、a1,b1,b2,c1,c2は、それぞれ同じアルファベットで表記されるa,b,cと同じブロックであるが、選択するブロックの説明を分かりやすくするために1又は2の番号を付記して区別した。また、t0〜t6の各時刻の間隔は、1つのブロックの受信に要する期間(1つのフレームの送信に要する期間の1/3であり、以下、1ブロック送信期間という)とする。また、現在時は時点t0とし、時点t0までに受信装置2が各周波数帯域F1,F2,F3において受信したブロックは、受信装置2の図示せぬ記憶部に記憶されているものとする。
【0032】
送信装置1は、異なる周波数帯域F1、F2、F3の各々において、所定の期間、すなわち1つのフレームを送信するために要する期間(或る周波数帯域において1つのフレームが重畳された期間)の1/n(例えば1/3)に相当する期間だけ遅延させながら、各フレームの送信を開始する。例えば周波数帯域F1においては時点t6にフレームの先頭のブロックaの送信を開始し、周波数帯域F2においては時点t5にブロックaの送信を開始し、周波数帯域F3においては時点t4にブロックaの送信を開始している。従って、上記フレームの次のフレームの送信開始タイミングも、周波数帯域F1においては時点t3、周波数帯域F2においては時点t2、周波数帯域F3においては時点t1というように、常時、1つのフレームの送信期間の1/3に相当する期間だけ遅延する。従って、上述した「1つのフレームを送信するために要する期間の1/3」とは、1つのブロックを送信するために要する期間の長さに相当する。
【0033】
データ検出部230は、時点t0において受信を完了したブロックa、つまり1つのフレームの先頭のブロック(図ではブロックa1)を起点にして、フレームを構成するのに必要な残りのブロックb及びブロックcを予め決められた選択方法に従って選択する。予め決められた選択方法とは、以下に説明する4つの手順を含む。データ検出部230は、手順1から手順4の順に、フレームの復号及び誤り検出を試みて、或る手順において1フレーム分の伝送データを正しく復調できた場合には、それ以降の手順については処理を行わない。
【0034】
手順1:ブロックa1の受信が完了した時点t0で、ブロックa1とは異なる周波数帯域F2,F1において受信が完了したブロックb1およびブロックc1を選択する(図の実線で囲んだブロックa1、ブロックb1、ブロックc1)。つまり、この手順1では、1ブロック送信期間において全周波数帯域のそれぞれから各ブロックを1つずつ選択する。従って、1フレーム分の伝送データが重畳された音を受信装置2が収音するのに要する期間は、1ブロック送信期間で済む。
【0035】
手順2:ブロックa1の受信が完了した時点t0で、ブロックa1とは異なる周波数帯域F2において受信が完了したブロックb1と、時点t0よりも1ブロック分前の時点t1でブロックa1と同じ周波数帯域F3において受信が完了したブロックc2とを選択する。つまり、この手順2では、1ブロック送信期間より長く、且つ、1つのフレームの送信に要する期間より短い期間で、複数の周波数帯域から各ブロックを任意の組み合わせで選択する。
【0036】
手順3:時点t0よりも2ブロック分前の時点t2で、ブロックa1と同じ周波数帯域F3において受信が完了したブロックb2と、時点t0よりも1ブロック分前の時点t1でブロックa1と同じ周波数帯域F3において受信が完了したブロックc2とを選択する(図の点線で囲んだブロックa1、ブロックb2、ブロックc2)。つまり、この手順3では、1つのフレームの送信に要する期間で1つの周波数帯域から各ブロックを選択する。
【0037】
手順4:時点t0よりも2ブロック分前の時点t2で、ブロックa1と同じ周波数帯域F3において受信が完了したブロックb2と、ブロックa1の受信が完了した時点t0でブロックa1とは異なる周波数帯域F1において受信が完了したブロックc1とを選択する。つまり、この手順4では、1つのフレームの送信に要する期間で複数の周波数帯域から各ブロックを任意の組み合わせで選択する。手順4は、手順3の場合よりも、マルチパスフェージングやいずれかの周波数帯域に対するノイズ混入などの影響が大きい場合に採用されることになる。
【0038】
データ検出を開始した後の時点t0で、ブロックa,b,cが全て揃ったとすると、手順1でデータ検出に要した実質的な所要時間はt0−t1(つまり、1つのフレームの送信に要する期間の1/3)である。よって、手順1で、1フレームを構成する全ブロックの検出に成功した場合には、手順1〜4のうち、実質的な伝送速度が最も大きい。つまり、これらのブロックが重畳された音響をマイク20が収音するのに要した期間が最も短い。
【0039】
次に、手順2でデータ検出に成功した場合には、データ検出に要した実質的な所要時間はt0−t2(つまり、1つのフレームの送信に要する期間の2/3)となる。よって、手順2は、手順1の次に、実質的な伝送速度が大きい。
【0040】
そして、手順3,4でデータ検出に成功した場合には、データ検出に要した実質的な所要時間はt0−t3(つまり、1つのフレームの送信に要する期間と同じ期間)となる。よって、手順3,4でデータ検出に成功した場合は、実質的な伝送速度が最も低い。つまり、これらのブロックが重畳された音響をマイク20が収音するのに要した期間が最も長い。手順3,4は、マルチパスフェージングやノイズ混入などの影響を抑制することはできるが、単一の周波数帯域を用いた場合と比べて伝送速度は変わらない。
【0041】
従って、伝送品質に悪影響を及ぼすようなマルチパスフェージングなどがなければ、1フレームを伝送するのに要する期間は、最短で1つのフレームを周波数帯域で分割せずに送信するのに要する期間の1/3の期間ですむことになる。また、そのような悪影響により伝送品質の低下が見込まれる場合であっても、本実施形態においては、長くとも、1つのフレームを周波数帯域で分割せずに送信するのに要する期間をかければ、1つのフレームを伝送することができる可能性が高い。手順1から手順4の順にブロックを選択してフレームの復号及び誤り検出を試みるということは、要するに、選択対象となるブロックが重畳された音をマイク20が収音するのに要した期間をより短くすることを優先しているということである。つまり、データ検出部230は、選択したブロックが重畳された音を収音するのに要する期間がより短くなるようなアルゴリズムに従ってブロックを選択している。
【0042】
[変形例2:各種フィルタの省略]
復調部22の構成において、HPF221を用いていたが、変調帯域以外の帯域に属する信号が変調音響信号Aにあまり含まれていない場合、又はその影響が無視できる場合には、HPFによるフィルタリングを行わなくてもよい。同様に、変調部10や復調部22で用いられているLPFについても、これを備えていない場合の影響を無視できる場合には、不要である。
【0043】
[変形例3:ブロックの数及び周波数帯域の数]
実施形態においてフレームを構成するブロックの数は3であったが、必ずしもこれに限らない。また、変調に用いる周波数帯域F1,F2,F3の数も3であったが、必ずしもこれに限らない。
また、ブロックの数が周波数帯域の数よりも多いときには、伝送データの実質的な伝送速度が低下する。他方、周波数帯域の数がブロックの数よりも多いときには、周波数帯域が余ってしまい冗長な構成になる。このような伝送速度の低下や冗長な構成を許容するのであれば、ブロックの数と周波数帯域の数は同じでなくてもよい。例えば、1フレームを構成するブロックの数が6で、変調に用いる周波数帯域の数が3であってもよい。1フレームを構成するブロックの数と変調に用いる周波数帯域の数とをどのように決めるかは任意である。
【0044】
[変形例4:音の伝搬媒体]
上記の実施形態では、音が伝搬する媒体として大気を想定していたが、大気以外の気体のほか、例えば建物、構造物、家具などの固体や、水などの液体であってもよい。音が伝搬する媒体が固体の場合、送信装置1は、スピーカ12に代えて、出力部11から出力される信号に応じた振動を発生する加振手段を備える一方、受信装置2はマイク20に代えて、固体の振動を検知する加速度センサなどの振動検知手段を備える。また、送信装置1の加振手段により振動する固体から音を発する場合には、受信装置2は実施形態と同様にマイク20を備えていればよい。
【0045】
[変形例5:音響データおよび伝送データの態様]
上記の実施形態では、音響データに対して、Elapse Timeを含む伝送データをリアルタイムで重畳していたが、音響データにElapse Timeを含む伝送データが予め重畳された状態で送信装置1に供給されてもよい。
【0046】
[変形例6:音響データおよび伝送データの態様]
制御装置23は、同一コマンドでElapse Timeが異なるフレームが受信装置2側で複数回受信された場合には、時間的に後に受信されたフレームの内容を優先するようにしてもよい。つまり、受信装置2において先着のフレームと後着のフレームとでその内容が異なる場合には、後着のフレームの内容に従う。送信装置1側においてイベント発生に関する事情が急変してイベント発生時刻を微修正することもあり得るから、後着のフレームを優先するという考え方である。
【0047】
[変形例7:音響データおよび伝送データの態様]
制御装置23は、異なるコマンドを含む異なるフレームを受信した場合には、そのコマンドごとにイベント発生時の管理を行う。このようにすれば、受信装置2において複数の処理を並行して設定し実行することが可能となる。
【0048】
[変形例8:プログラム]
本発明は、送信装置1や受信装置2と同等の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムや、かかるプログラムを記憶させた光ディスク等の記録媒体としても特定され得る。本発明に係るプログラムは、インターネット等のネットワークを介して、コンピュータにダウンロードさせ、これをインストールして利用可能にするなどの形態でも提供され得る。
【符号の説明】
【0049】
1 送信装置、2 受信装置、10,10a 変調部、11 出力部、12 スピーカ、20 マイク、21 入力部、22,22a,22b,22c,22d 復調部、101,1021〜1023,2241〜2243 LPF、1031〜1033 VCO、104 分割部、105,2231〜2233 加算器、220 ビット復号部、221 HPF、222 STFT部、2251〜2253 DCカット部、2261〜2263,2261−1〜2263−1 2値化部、230 データ検出部、23 制御装置、24 制御対象。
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