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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-23106(P2015-23106A)
(43)【公開日】2015年2月2日
(54)【発明の名称】太陽追尾装置及び太陽追尾型太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20150106BHJP
   F24J 2/38 20140101ALI20150106BHJP
   H02S 99/00 20140101ALI20150106BHJP
【FI】
   H01L31/04 R
   F24J2/38
   H02N6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-149037(P2013-149037)
(22)【出願日】2013年7月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成24年度 電気電子工学専攻 修士論文公開発表会 開催日:平成25年2月15日 会場:学校法人日本大学生産工学部津田沼キャンパス(千葉県習志野市泉町一丁目2番1号) 卒業研究審査会 開催日:平成25年2月12日 会場:学校法人日本大学生産工学部津田沼キャンパス(千葉県習志野市泉町一丁目2番1号)
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100129894
【弁理士】
【氏名又は名称】橋田 知臣
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】清水 耕作
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151JA14
(57)【要約】
【課題】駆動対象物に対して駆動力を安定的に伝達させることが可能な太陽追尾装置及び太陽追尾型太陽電池を提供すること。
【解決手段】太陽光を吸収して発熱する光吸収体と、前記光吸収体に巻かれ、前記太陽からの輻射熱及び前記光吸収体で発生した熱を吸収して吸熱量に応じて所定の形状に変形するように形状記憶合金を用いて形成された変形可能部材と、前記変形可能部材の変形力を、太陽を追尾するための駆動力として駆動対象物に伝達する伝達部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を吸収して発熱する光吸収体と、
前記光吸収体に巻かれ、前記太陽からの輻射熱及び前記光吸収体で発生した熱を吸収して吸熱量に応じて所定の形状に変形するように形状記憶合金を用いて形成された変形可能部材と、
前記変形可能部材の変形力を、太陽を追尾するための駆動力として駆動対象物に伝達する伝達部と
を備える太陽追尾装置。
【請求項2】
前記光吸収体は、円筒面を有し、
前記変形可能部材は、前記円筒面の中心軸の軸線方向に伸縮可能となるように前記円筒面に沿ってばね状に巻かれている
請求項1に記載の太陽追尾装置。
【請求項3】
前記光吸収体及び前記変形可能部材は、複数組設けられており、
複数組の前記光吸収体は、それぞれの前記円筒面の前記中心軸の軸線同士が平行に配置されている
請求項2に記載の太陽追尾装置。
【請求項4】
前記伝達部は、前記変形可能部材に接続され、前記変形可能部材の前記変形力を受けて回転する回転部を有する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の太陽追尾装置。
【請求項5】
前記変形可能部材の放熱を抑制する放熱抑制部
を更に備える請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の太陽追尾装置。
【請求項6】
太陽光によって発電可能な太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの受光面の向きが前記太陽を追尾するように前記受光面の向きを調整する太陽追尾装置と
を備え、
前記太陽追尾装置として、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の太陽追尾装置が用いられている
太陽追尾型太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽追尾装置及び太陽追尾型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、温室効果ガスによる地球温暖化や原子力エネルギーの安全性の観点から地球環境に優しいクリーンエネルギーによる発電が求められている。このようなクリーンエネルギーを得る手段として、例えば太陽光発電などの発電方法が注目されており、太陽電池の開発が行われている。
【0003】
太陽電池は、太陽光を受けて発電するパネルを有している。太陽電池パネルとしては、定位置に固定される固定型のものと、太陽光を追尾する太陽追尾型のものとが知られている。太陽追尾型のパネルは、太陽の方向に応じて太陽に正対するように移動するため、固定型のパネルに比べて、効率が高くなることが知られている。例えば、特許文献1には、形状記憶合金の変形を用いてパネルを間欠的に回転させるようにした太陽追尾装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−150943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成においては、形状記憶合金の変形力を安定的に得られない場合があり、パネルに対して駆動力を安定的に伝達させることができないという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、駆動対象物に対して駆動力を安定的に伝達させることが可能な太陽追尾装置及び太陽追尾型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る太陽追尾装置は、太陽光を吸収して発熱する光吸収体と、前記光吸収体に巻かれ、前記太陽から放射される熱及び前記光吸収体で発生した熱を吸収して吸熱量に応じて所定の形状に変形するように形状記憶合金を用いて形成された変形可能部材と、前記変形可能部材の変形力を、太陽を追尾するための駆動力として駆動対象物に伝達する伝達部とを備える。
【0008】
また、上記の太陽追尾装置において、前記光吸収体は、円筒面を有し、前記変形可能部材は、バネ状に形成され、前記円筒面の中心軸の軸線方向に伸縮可能となるように前記円筒面に沿って巻かれている。
【0009】
また、上記の太陽追尾装置において、前記光吸収体及び前記変形可能部材は、複数組設けられており、複数組の前記光吸収体は、それぞれの前記円筒面の前記中心軸の軸線同士が平行に配置されている。
【0010】
また、上記の太陽追尾装置において、前記伝達部は、前記変形可能部材に接続され、前記変形可能部材の前記変形力を受けて回転する回転部を有する。
【0011】
また、上記の太陽追尾装置は、前記変形可能部材の放熱を抑制する放熱抑制部を更に備える。
【0012】
本発明の一形態に係る太陽追尾型太陽電池は、太陽光によって発電可能な太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルの受光面の向きが前記太陽を追尾するように前記受光面の向きを調整する太陽追尾装置とを備え、前記太陽追尾装置として、上記の太陽追尾装置が用いられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動対象物に対して駆動力を安定的に伝達させることが可能な太陽追尾装置及び太陽追尾型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態に係る太陽追尾装置の構成を示す斜視図。
図2】本実施形態に係る太陽追尾装置の一部の構成を示す斜視図。
図3】本実施形態に係る太陽追尾装置の動作を示す平面図。
図4】本実施形態に係る太陽追尾装置の動作を示す平面図。
図5】本実施形態に係る太陽追尾装置の動作を示す平面図。
図6】(a)はカーボンロッド及びばね部材の表面の温度分布を示す図、(b)は(a)におけるB−B断面に沿った構成を示す図、(c)はばね部材のばね定数の温度特性を示すグラフ。
図7】第二実施形態に係る太陽追尾型太陽電池の構成を示す斜視図。
図8】第三実施形態に係る太陽追尾型太陽電池の構成を示す側面図。
図9】変形例に係る太陽追尾装置の一部の構成を示す斜視図。
図10】変形例に係る太陽追尾型太陽電池の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る太陽追尾装置100の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、太陽追尾装置100は、ステージ10と、カーボンロッド(光吸収体)20と、ばね部材(変形可能部材)30と、伝達機構40とを有している。太陽追尾装置100は、所定の対象物(例、太陽電池パネルなど)が太陽を追尾するように当該対象物の位置や姿勢を調整する。
【0016】
ステージ10は、矩形台状に形成されている。ステージ10は、上記のカーボンロッド20、ばね部材30及び伝達機構40の各部を支持する。ステージ10は、例えば屋根などの屋外の所定位置に固定されて用いられる。ステージ10は、平坦に形成された支持面10fを有している。上記各部は、支持面10f上に支持されている。
【0017】
ステージ10は、太陽光を受けつつ上記各部を支持した状態で変形しない程度の所定の剛性を有する材料、例えば金属やプラスチックなどを用いて形成されている。ステージ10は、屋外に設置される場合も想定されるため、風雨や外部から加えられる力に対する耐性が高くなるように形成されている。
【0018】
本実施形態では、矩形台状のステージ10を例に挙げて説明するが、例えば円形台状や多角形台状、錘台状など、他の形状に形成された構成であってもよい。また、ステージ10は、例えば屋根などの傾斜した位置に配置される場合もあるため、当該傾斜に対応した斜面を有する構成であってもよい。
【0019】
カーボンロッド20は、太陽光を吸収して発熱する光吸収体として用いられている。カーボンロッド20は、炭素を主成分とした材料が所定の組成で形成されている。カーボンロッド20は、例えばステージ10よりも熱吸収率が高くなるようにその組成が選択されている。
【0020】
カーボンロッド20は、例えば円柱状に形成されている。カーボンロッド20には、円筒面20aが形成されている。カーボンロッド20の径は、例えば10mm程度に設定されている。なお、カーボンロッド20の形状は、円柱状に限られることは無く、角柱状、筒状、錘状であってもよいし、線状のカーボン繊維を複数束ねて棒状とした構成であってもよい。
【0021】
カーボンロッド20は、ステージ10の支持面10fのうち2箇所に配置されている。2つのカーボンロッド20のうち一方のカーボンロッド20(以下、「第一ロッド21」と表記する。)は、ステージ10の第一辺10aに沿って配置されている。また、他方のカーボンロッド20(以下、「第二ロッド22」と表記する。)は、ステージ10の第一辺10aと平行な第二辺10bに沿って配置されている。第一ロッド21及び第二ロッド22は、互いの中心軸の軸線方向同士が平行となるように配置されている。第一ロッド21と第一辺10aとの距離と、第二ロッド22と第二辺10bとの距離とは、互いに等しくなっている。
【0022】
第一ロッド21及び第二ロッド22は、ロッド保持部11、12によって保持されている。ロッド保持部11、12は、ステージ10の支持面10fに突出して形成されている。第一ロッド21、第二ロッド22は、ロッド保持部11、12に対して嵌め込まれている。
【0023】
ばね部材30は、太陽からの輻射熱及びカーボンロッド20で発生した熱を吸収し、吸熱量に応じて所定の形状に変形する。本実施形態では、ばね部材30は、例えばNi−Ti−Cu合金やNi−Ti合金などの形状記憶合金を用いて形成されている。なお、ばね部材30として、他の種類の形状記憶合金を用いて形成されていてもよい。
【0024】
形状記憶合金は、変態点と呼ばれる温度よりも高温ではオーステナイト相という結晶構造をとり、変態点よりも低温ではマルテンサイト相という結晶構造をとる。マルテンサイト相をとる場合の形状記憶合金は、結晶構造を破壊しない範囲で変形可能である。この形状記憶合金が変態点より高温となりオーステナイト相となる場合、剛性が高くなり、予め形状記憶した形に戻ろうとする性質を有する。このように形状記憶合金は、変態点よりも高温になった場合に形状記憶効果を生じる。
【0025】
本実施形態におけるばね部材30では、縮んだ状態のばね形状を予め記憶させている。したがって、ばね部材30は、変態点よりも低温である(マルテンサイト相をとる)場合、結晶構造を破壊しない範囲で変形可能である。つまり、外力によってカーボンロッド20の中心軸の軸線方向に弾性変形(伸縮)可能となる。また、ばね部材30は、変態点よりも高温である(オーステナイト相をとる)場合、剛性が高くなり、予め記憶させた形状に戻ろうとする、つまり、縮む方向に変形する。
【0026】
ばね部材30の構成材料としてNi−Ti−Cu合金が用いられる場合、変態点を30℃以上に調整可能であり、具体的には40℃〜70℃の範囲にまで調整可能である。この場合、夏場のように平均気温が30℃を上回るような環境下でも好適に用いることができる。また、ばね部材30の構成材料としてNi−Ti合金が用いられる場合、変態点を20℃〜100℃の幅広い範囲に調整することができる。また、Ni−Ti合金はばね定数が高いため、大きな駆動力を生じることができる。
【0027】
ばね部材30は、吸熱量に応じた形状記憶効果を生じるように各金属の組成(Ni含有量など)が設定されている。本実施形態では、ばね部材30は、縮んだ状態の形状が記憶されている。形状記憶合金の変態点は、形状記憶合金におけるNi含有量が多いほど低くなることが知られている。
【0028】
ばね部材30は、カーボンロッド20の円筒面20aに巻かれている。したがって、ばね部材30は、円筒面20aに沿って配置されている。ばね部材30は、カーボンロッド20の中心軸の軸線方向に伸縮(変形)可能に形成されている。ばね部材30の線径及び巻き数については、所望のばね定数及び熱応答性が得られるように設定することができる。なお、熱応答性は、熱によってばね部材30が変形する際、変形開始から変形完了までに要する時間である。本実施形態では、ばね部材30の線径は例えば1.0mm〜2.7mmの範囲が好ましく、ばね部材30の巻き数は例えば10〜100の範囲が好ましい。
【0029】
ばね部材30の巻き径は、カーボンロッド20の径(10mm程度)よりも大きく設定されている。これにより、ばね部材30が伸びて巻き径が小さくなる場合に、カーボンロッド20によってばね部材30の伸びが規制されないこととなる。ばね部材30が縮んだ状態にある場合、カーボンロッド20とばね部材30との間には隙間が形成されることになる。
【0030】
ばね部材30は、第一ロッド21に巻かれた第一ばね部材31と、第二ロッド22に巻かれた第二ばね部材32とを有している。第一ばね部材31の長手方向の両端部のうち一方の端部(基端部)31aは、ロッド保持部11aに固定されている。また、他方の端部(先端部)31bは、固定されておらず、第一ばね部材31の伸縮する方向に移動可能に設けられている。第二ばね部材32についても長手方向の両端部のうち一方の端部(基端部)32aはロッド保持部12aに固定されている。また、他方の端部(先端部)32bは固定されておらず、第一ばね部材31の伸縮する方向に移動可能に設けられている。
【0031】
図2は、カーボンロッド20及びばね部材30の断面構成を示す図であり、図1におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。なお、図1のA−A断面は、第一ロッド21及び第一ばね部材31の断面であるが、第二ロッド22及び第二ばね部材32についても同様の説明が可能である。このため、図2では、カーボンロッド20、ばね部材30として示すと共に、第一ロッド21及び第二ロッド22の符号と、第一ばね部材31及び第二ばね部材32の符号とを併せて示している。
【0032】
本実施形態では、ばね部材30の径がカーボンロッド20の径よりも大きくなっているため、ばね部材30に重力が作用すると、図2に示すように、ばね部材30がカーボンロッド20にぶら下げられた状態となる。このため、ばね部材30のうち重力方向の上端部はカーボンロッド20に接触した状態となる(接触部51)。また、ばね部材30のうち重力方向の下端部は、カーボンロッド20から離れた状態となる。すなわち、重力方向の下側において、ばね部材30とカーボンロッド20との間には、隙間52が形成された状態となる。
【0033】
図1に示すように、伝達機構40は、ばね部材30の変形力を、太陽を追尾するための駆動力として駆動対象物に伝達する。具体的には、ばね部材30の直線方向の駆動力が回転方向の駆動力に変換されるように伝達する。伝達機構40は、回転部41、伝達部材42、滑車43、44を有している。
【0034】
回転部41は、ステージ10の支持面10fに回転可能に支持されている。回転部41は、円柱状又は円筒状に形成されている。回転部41の外周面41aは、円筒面である。回転部41の中心軸は、支持面10fに垂直となっている。回転部41は、当該中心軸を中心として外周面41aの周方向に回転可能である。
【0035】
回転部41は、ステージ10の第一辺10aと第二辺10bとの中間の位置に配置されている。この配置により、回転部41は、第一ロッド21及び第二ロッド22との距離がそれぞれ等しくなっている。
【0036】
回転部41の端面41bには、駆動対象物を装着できるようになっている。回転部41の端面41bに駆動対象物を装着することにより、回転部41と駆動対象物とが一体的に連結される。この状態で回転部41が回転することにより、当該回転部41と一体に駆動対象物が回転することとなる。
【0037】
伝達部材42は、第一ばね部材31及び第二ばね部材32と、回転部41との間を接続する。伝達部材42としては、例えばワイヤーなどの線状部材が用いられている。伝達部材42は、一方の端部が第一ばね部材31の先端部31bに接続されており、他端の端部が第二ばね部材32の先端部32bに接続されている。伝達部材42は、例えば回転部41に巻かれている。
【0038】
回転部41に対する伝達部材42の巻き角θは、例えば300°以上が好ましい。伝達部材42は、第一ばね部材31と回転部41との間、第二ばね部材32と回転部41との間で張力が発生するように設けられている。伝達部材42がこのように配置されることにより、伝達部材42と回転部41の外周面41aとの間は、摩擦力が生じた状態となっている。したがって、伝達部材42が外周面41aの周方向に移動すると、伝達部材42の移動方向に沿って回転部41が回転するようになっている。
【0039】
滑車43、44は、第一ばね部材31及び第二ばね部材32と回転部41との間で伝達部材42を案内する。滑車43、44には、伝達部材42が掛けられている。滑車43は、第一ばね部材31の先端部31bから第一辺10aに沿った方向に延びる伝達部材42を回転部41へ向けて折り返している。滑車44は、第二ばね部材32の先端部32bから第二辺10bに沿った方向に延びる伝達部材42を回転部41へ向けて折り返している。滑車43、44と伝達部材42との間に生じる摩擦力は、極力小さいことが好ましい。
【0040】
次に、上記のように構成された太陽追尾装置100の動作を説明する。
図3図5は、太陽追尾装置100の動作を示す平面図である。
第一ばね部材31の温度及び第二ばね部材32の温度が共に形状記憶合金の変態点よりも低い場合、図3に示すように、第一ばね部材31及び第二ばね部材32は、弾性変形可能な状態となっている。この状態から、第一ばね部材31及び第二ばね部材32の温度が変態点を超えると、予め記憶された形状(縮んだ形状)に戻るように変形する。
【0041】
例えば、第一ばね部材31の温度のみが変態点を超える(第二ばね部材32の温度が変態点よりも低い)場合、第一ばね部材31のみが縮むように変形し、第二ばね部材32は弾性変形可能な状態のままとなる。第一ばね部材31、伝達部材42及び第二ばね部材32は、張力が発生した状態で連結されているため、第一ばね部材31の収縮力により、伝達部材42及び第二ばね部材32が第一ばね部材31側に引っ張られる。
【0042】
このため、図4に示すように、第一ばね部材31が縮み、第二ばね部材32が伸びる。また、伝達部材42は、第一ばね部材31の縮む方向に移動する。この移動により、伝達部材42のうち回転部41の外周面41aに巻かれた部分は、外周面41aとの間に摩擦力を生じさせた状態で図4の反時計回りに移動する。このため、回転部41は当該図4の反時計回りの方向に回転する。
【0043】
一方、第二ばね部材32の温度のみが変態点を超える(第一ばね部材31の温度が変態点よりも低い)場合、第二ばね部材32のみが縮むように変形し、第一ばね部材31は弾性変形可能な状態のままとなる。第二ばね部材32、伝達部材42及び第一ばね部材31は、張力が発生した状態で連結されているため、第二ばね部材32の収縮力により、伝達部材42及び第一ばね部材31が第二ばね部材32側に引っ張られる。
【0044】
このため、図5に示すように、第二ばね部材32が縮み、第二ばね部材31が伸びる。また、伝達部材42は、第二ばね部材32の縮む方向に移動する。この移動により、伝達部材42のうち回転部41の外周面41aに巻かれた部分は、外周面41aとの間に摩擦力を生じさせた状態で図5の時計回りに移動する。このため、回転部41は当該図5の時計回りの方向に回転する。
【0045】
以上のような動作を行う太陽追尾装置100を用いる場合、まず、図3図5に示すように、ステージ10の第一辺10aが東側、第二辺10bが西側に位置するようにステージ10を配置する。このようにステージ10を配置することにより、午前中は太陽がステージ10の東側に位置するようにする。
【0046】
第一ばね部材31及び第二ばね部材32には太陽からの熱が直接照射される。また、第一ロッド21及び第二ロッド22は、太陽から照射される光を吸収して発熱し、熱を放射する。このため、第一ばね部材31及び第二ばね部材32は、太陽から放射される熱と、第一ロッド21及び第二ロッド22からそれぞれ放射される熱とを吸収することになるため、温度上昇が安定的かつ効率的に行われる。また、第一ばね部材31及び第二ばね部材32が第一ロッド21及び第二ロッド21に沿って巻かれているため、第一ロッド21及び第二ロッド21からの熱が第一ばね部材31及び第二ばね部材32に効率的に伝達されることになる。
【0047】
図6(a)は、太陽光の照射を受けたカーボンロッド20及びばね部材30の表面の温度分布を示す模式図である。
図6(a)に示すように、カーボンロッド20は、太陽光の照射を受けることにより、太陽光を吸収して発熱する。太陽光はカーボンロッド20の下側よりも上側の方により多く照射される。このため、カーボンロッド20の表面には、太陽光の照射量により、温度分布が形成される。具体的には、カーボンロッド20の表面のうち下側よりも上側の方が温度は高くなる。
【0048】
図6(b)は、図6(a)におけるB−B断面に沿った構成を示す図であり、カーボンロッド20からばね部材30への熱の伝導を説明するための図である。図6(b)では、図6(a)に示す温度分布に対応するように、カーボンロッド20の断面における温度分布を示している。
図6(b)に示すように、カーボンロッド20のうち最も温度が高くなっている上端部には、ばね部材30が接触している。このため、カーボンロッド20の上端部からばね部材30の上端部に対して熱が伝わりやすくなっている。また、カーボンロッド20のうち最も温度が低くなっている下端部は、ばね部材30との間に隙間が形成されている。このため、ばね部材30の下端部には、カーボンロッド20からの熱が伝達されにくくなっている。このため、ばね部材30には、上側(太陽に対向する側)ほど温度が高くなり、下側(ステージSTに対向する側)ほど温度が低くなる。このように、ばね部材30に温度分布が形成される。
【0049】
図6(c)は、ばね部材30のばね定数の温度特性を示すグラフである。例えば、ばね部材30の全体の温度を均一に変化させる場合には、図6(c)のグラフ(2)に示すように、ある範囲の温度t1からt4の間で温度を変化させると、変態点(温度t2〜t3)よりも低温の場合(マルテンサイト相をとる場合)、変態点よりも高温の場合(オーステナイト相をとる場合)のいずれの場合についても、ばね定数は一定値をとる。また、変態点においては、ばね定数が急激に上昇する。このため、ばね部材30の温度が変態点を跨いで変化しなければ、ばね定数は変化しない。
【0050】
一方、本実施形態のように、ばね部材30に温度分布が形成される場合、図6(c)のグラフ(1)に示すように、例えば最も高温となる部分について温度t1からt4の間で温度を変化させると、ばね定数は緩やかに、かつ曲線的に上昇する。このため、ばね部材30のばね定数は、最も高温となる部分の温度が温度t1〜t4の範囲で変化する場合、温度変化と共に緩やかに変化することになる。したがって、本実施形態に係るばね部材30は、温度変化が大きい環境下であっても用いることができる。例えば、夏期と冬期とを通してばね部材30を用いることができるため、夏期と冬期とでばね部材を交換する必要が無い。
【0051】
このとき太陽がステージ10の東側に位置するため、太陽からの光及び熱は、ステージ10の第二辺10b側よりも第一辺10a側の方に多く照射される。したがって、第一ばね部材31の温度は、上記のような温度分布が形成された状態で上昇する。温度の上昇に伴い、第一ばね部材31のばね定数が高くなっていく。このため、図4に示すように、第一ばね部材31が縮み、当該第一ばね部材31の収縮により第二ばね部材32が引っ張られて伸びる。
【0052】
また、正午になると太陽はステージ10の南側に見かけ上移動する。このとき、太陽からの光及び熱は、ステージ10の第一辺10a側と第二辺10b側とで均一に照射される。すなわち、正午に近づくにつれて、第一辺10a側への光及び熱の照射量が減少し、第二辺10b側への光及び熱の照射量が増加するため、第一ばね部材31の温度が次第に低下し、第二ばね部材32の温度が次第に上昇する。
【0053】
したがって、第二ばね部材32の温度上昇に伴い、第二ばね部材32のばね定数が高くなっていく。このため、図3に示すように第二ばね部材32が縮み、当該第二ばね部材32の収縮によって伝達部材42が第一ばね部材31側から第二ばね部材32側へ移動し、回転部41は図3図5において時計回りの方向に回転する。つまり、太陽の見かけ上の移動方向と等しい方向に回転部41が回転する。
【0054】
更に、午後になると、太陽はステージ10の西側に見かけ上移動する。このとき、太陽からの光及び熱は、ステージ10の第一辺10a側よりも第二辺10b側の方に次第に多く照射されるようになる。すなわち、午後になると、第一辺10a側への光及び熱の照射量が更に減少していき、第二辺10b側への光及び熱の照射量が更に増加していくため、第一ばね部材31の温度が更に低下し、第二ばね部材32の温度が更に上昇する。
【0055】
したがって、第二ばね部材32の温度は、上記のような温度分布が形成された状態で上昇する。温度の上昇に伴い、第二ばね部材32のばね定数が高くなっていく。このため、図5に示すように、第二ばね部材32が更に縮み、当該第二ばね部材32の収縮により第一ばね部材31が引っ張られて伸びる。このような第一ばね部材31及び第二ばね部材32の変形により、伝達部材42が第一ばね部材31側から第二ばね部材32側へ更に移動し、回転部41は図3図5において時計回りの方向に更に回転する。つまり、太陽の見かけ上の移動方向と等しい方向に回転部41が更に回転する。
【0056】
また、第一ばね部材31及び第二ばね部材32の弾性力、巻き数、線径、材質、組成比などを調整したり、回転部41の外周面41aと伝達部材42との間の摩擦力を調整したりすることにより、太陽の見かけ上の移動に追従するように回転部41を回転させることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、太陽から放射される熱を吸収可能なカーボンロッド20と、当該カーボンロッド20に巻かれ、太陽から放射される熱及びカーボンロッド20から放射される熱を吸収して吸熱量に応じて所定の形状に変形するように形状記憶合金を用いて形成されたばね部材30と、当該ばね部材30の変形力を、太陽を追尾するための駆動力として駆動対象物に伝達する伝達機構40とを備えており、ばね部材30が、太陽から放射される熱と、カーボンロッド20から放射される熱とを吸収することになるため、温度上昇が安定的かつ効率的に行われる。これにより、駆動対象物に対して駆動力を安定的に伝達させることができる。また、ばね部材30がカーボンロッド20の円筒面20aに沿って巻かれているため、カーボンロッド20からの熱がばね部材30に対して効率的に伝達されることになる。
【0058】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
図7は、本実施形態に係る太陽電池200の構成を示す斜視図である。
図7に示すように、太陽電池200は、太陽電池パネルPと、太陽追尾装置Fと、連結部CNとを備えている。この太陽電池200は、太陽を追尾しつつ太陽光発電を行う太陽追尾型太陽電池である。
【0059】
太陽電池パネルPは、太陽光を受光して発電する発電素子である。太陽電池パネルPとしては、例えばシリコン太陽電池パネルなど、公知の太陽電池パネルを用いることができる。太陽電池パネルPは、受光面Paを有している。受光面Paは、水平面に対して所定の角度だけ傾けられている。
【0060】
太陽追尾装置Fは、太陽電池パネルPの受光面Paの向きが太陽を追尾するように受光面Paの向きを調整する。太陽追尾装置Fとしては、上記第一実施形態に記載の太陽追尾装置100を用いることができる。太陽追尾装置Fは、連結部CNによって太陽電池パネルPに連結されている。太陽追尾装置Fの駆動力は、連結部CN及び太陽電池パネルPの重量等に応じて適宜設定することができる。
【0061】
本実施形態によれば、太陽電池パネルPの受光面Paの向きは、太陽追尾装置Fに設けられた回転部41の回転により、太陽を追尾するように変化する。このとき、太陽追尾装置Fにより、回転部41が安定的に回転し、回転部41の回転力が太陽電池パネルPに対して安定的に伝達されることになるため、太陽追尾動作の信頼性が高い、太陽追尾型の太陽電池200を得ることができる。
【0062】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
図8は、本実施形態に係る太陽電池300の構成を示す側面図である。図8は、太陽電池300を第一ロッド側から見た時の構成を示している。
図8に示すように、太陽電池300は、太陽電池パネルPと、太陽追尾装置FAと、連結部CNとを備えている。太陽電池300は、太陽を追尾しつつ太陽光発電を行う太陽追尾型太陽電池である。
【0063】
太陽追尾装置FAは、上記実施形態に記載の太陽追尾装置に加えて、制御部51、モータ52、ベルト53、光センサ54を更に備える構成を有している。なお、当該太陽追尾装置FAは、連結部CNによって太陽電池パネルPに連結されている。
【0064】
太陽追尾装置FAは、太陽が沈んだ後、西側に向いている太陽電池パネルPの受光面Paの向きを東側に戻すことができる。光センサ54は、太陽光の有無(太陽が出ているか沈んでいるか)を検出可能である。光センサ54により太陽が沈んでいることが検出された場合、制御部51はモータ52を作動させる。
【0065】
モータ52と回転部41との間には、モータ52の回転を回転部41に伝達するベルト53が掛けられている。モータ52の回転により、回転部41が伝達部材42による回転方向とは逆方向に回転するように、予めモータ52の回転方向を設定しておく。制御部51がモータ52を作動させることにより、モータ52が回転し、モータ52の回転によって回転部41が回転して、太陽電池パネルPの受光面Paの向きを東側へ移動させる。制御部51は、受光面Paが東側に向けられた後、モータ52の回転を停止させる。
【0066】
このように、本実施形態では、モータ52を補助的に用いることにより、日の出と共に太陽電池パネルPの受光面Paが東側を向いた状態とすることができる。これにより、太陽電池300は、効率的に太陽光を受光することができるため、発電効率が向上することになる。
【0067】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、カーボンロッド20及びばね部材30が外気にむき出しの状態で設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることはない。
【0068】
図9は、変形例に係る太陽追尾装置100Aの一部の構成を示す図である。
図9に示すように、カーボンロッド20及びばね部材30の周囲には、円筒状に形成された放熱抑制部33が設けられている。放熱抑制部33は、ばね部材30からの放熱を抑制する。放熱抑制部33は、例えばアクリルなど、一定の剛性を有し、太陽光の少なくとも一部(例、可視光)を透過可能な材料を用いて形成されている。
【0069】
放熱抑制部33が設けられることにより、ばね部材30を風雨や温度変化などの外部環境から保護することができる。これにより、梅雨など降水量の多い季節や冬場など外気の温度が低下する季節であっても、好適に用いることができる。また、放熱抑制部33を着脱可能に設けることにより、夏場や乾燥時には放熱抑制部33を取り外しておくことも可能である。
【0070】
また、上記実施形態においては、ばね部材30が水平方向に配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることはない。
図10は、変形例に係る太陽電池400の構成を示す斜視図である。
図10に示すように、太陽電池400は、太陽電池パネルPと、太陽追尾装置100Bと、連結部CNとを備えている。太陽追尾装置100Bにおいては、ばね部材30Bが3つ設けられており、これら3つのばね部材30Bが鉛直方向に立った状態に配置されている。また、ばね部材30Bの内部にはカーボンロッド20Bが貫通した状態で配置されている。これにより、ばね部材30Bの変形を安定させることができる。
【0071】
このように、ばね部材30Bが鉛直方向に立った状態であっても、上記実施形態の適用は可能である。なお、上記実施形態では、2つのばね部材30が設けられた構成を例に挙げて説明したが、図10に示すようにばね部材30Bが3つであってもよい。また、4つ以上ばね部材30が設けられた構成であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態の構成に加えて、ばね部材30に電流を流すことでばね部材30の温度を調整可能な構成としてもよい。また、ばね部材30に対して太陽光を集光する集光部(例、凹面鏡など)が設けられてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、太陽からの光を吸収して発熱する光吸収体としてカーボンロッドを例に挙げて説明したが、これに限られることはなく、太陽からの光を吸収して発熱するように形成された部材であれば、他の材料を用いて形成されていてもよい。また、光吸収体の表面で光を吸収しやすくするように、例えば光吸収体の表面が黒く形成された構成であってもよい。この場合、光吸収体を構成する材料は、樹脂材料であってもよいし、金属材料であってもよい。また、筒状(例、円筒状)に形成されたカーボンロッドの内部が他の材料によって充填された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
P…太陽電池パネル
Pa…受光面
10…ステージ
10a…第一辺
10b…第二辺
10f…支持面
11、12…ロッド保持部
20、20B…カーボンロッド
20a…円筒面
21…第一ロッド
22…第二ロッド
30、30B…ばね部材
31…第一ばね部材
31a…基端部
31b…先端部
32…第二ばね部材
32a…基端部
32b…先端部
33…放熱抑制部
40…伝達機構
41…回転部
41a…外周面
41b…端面
42…伝達部材
43、44…滑車
100、100A、100B、F、FA…太陽追尾装置
200、300、400…太陽電池
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図8
図9
図10
図6