特開2015-231303(P2015-231303A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231303(P2015-231303A)
(43)【公開日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】自動車用充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20151124BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20151124BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20151124BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   H02J7/00 P
   H02J13/00 B
   B60L11/18 C
   H02J7/00 301A
   B60L5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-117481(P2014-117481)
(22)【出願日】2014年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 遼
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】二井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 宏
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G064AA08
5G064AA09
5G064AB05
5G064DA11
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5H105AA16
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105CC17
5H105CC19
5H105CC20
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BE02
5H125FF11
(57)【要約】
【課題】共通の充電ケーブルを介して、AC充電及びDC急速充電のいずれかを選択して行うことを可能とし、かつDC急速充電時に安定したPLC通信を可能とする自動車用充電システムを提供する。
【解決手段】AC電力供給部とDC電力供給部のうち少なくともDC電力供給部を備えた給電装置と、充電ケーブルを介してAC充電あるいはDC充電されるバッテリーを搭載した車両と、充電ケーブルに備えられた制御用線を介して充電制御のための制御信号を送受信する給電制御部と、給電制御部との間で制御用線を介して制御信号を送受信する充電制御部と、給電装置と車両にそれぞれ設けられ、制御用線を介してPLC通信を行うPLCモデムを備えた自動車用充電システムにおいて、PLCモデム20には、PLC通信を行うための通信信号の振幅を、AC充電時よりDC充電時で大きくする振幅調整部31,32を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC電力供給部とDC電力供給部のうち少なくともDC電力供給部を備えた給電装置と、
前記DC電力供給部若しくは前記AC電力供給部及びDC電力供給部にそれぞれ接続された給電線を内包する充電ケーブルと、
前記充電ケーブルを介して供給されるAC電力若しくはDC電力に基づいてAC充電あるいはDC充電されるバッテリーを搭載した車両と、
前記給電装置に設けられ、前記充電ケーブルに備えられた制御用線を介して充電制御のための制御信号を送受信する給電制御部と、
前記車両に設けられ、前記給電制御部との間で前記制御用線を介して制御信号を送受信する充電制御部と、
前記給電装置と前記車両にそれぞれ設けられ、前記制御用線を介してPLC通信を行うPLCモデムと
を備えた自動車用充電システムにおいて、
前記PLCモデムには、前記PLC通信を行うための通信信号の振幅を、AC充電時よりDC充電時で大きくする振幅調整部を備えたことを特徴とする自動車用充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用充電システムにおいて、
前記振幅調整部は、
前記通信信号をデジタル信号で処理する送信制御回路に、前記AC充電時の通信信号の振幅値と前記DC充電時の通信信号の振幅値をあらかじめ格納した記憶装置を備え、格納されている振幅値に基づいて通信信号の振幅値をデジタル値で調整することを特徴とする自動車用充電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用充電システムにおいて、
前記振幅調整部は、前記AC充電時の通信信号の振幅値を初期値として設定し、前記DC充電時には、前記記憶装置に格納されているDC充電時の振幅値に基づいて前記通信信号の振幅を拡大することを特徴とする自動車用充電システム。
【請求項4】
請求項2に記載の自動車用充電システムにおいて、
前記振幅調整部は、前記DC充電時の通信信号の振幅値を初期値として設定し、前記AC充電時には、前記記憶装置に格納されているAC充電時の振幅値に基づいて前記通信信号の振幅を縮小することを特徴とする自動車用充電システム。
【請求項5】
請求項1に記載の自動車用充電システムにおいて、
前記振幅調整部は、前記AC充電時の通信信号の振幅値と、前記DC充電時の通信信号の振幅値をアナログ値であらかじめ格納した記憶装置を備え、格納されている振幅値に基づいて前記PLCモデムの出力回路の利得を調整することを特徴とする自動車用充電システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自動車用充電システムにおいて、
前記PLCモデムの変調方式は、OFDM方式としたことを特徴とする自動車用充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等に搭載されるバッテリーに電力を供給して充電する充電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリーに蓄えられた電力の供給に基づいて動作するモータを搭載し、そのモータの駆動力により走行可能とした電気自動車やプラグインハイブリッド車が実用化されている。
【0003】
このような自動車では、充電ステーションあるいは一般家屋に設置される給電装置と、自動車に搭載される充電装置及び充電制御装置を充電ケーブルを介して接続することにより、給電装置からバッテリーに電力を供給してバッテリーを充電可能となっている。
【0004】
充電ケーブルには、給電線に加えて、接地線、制御用線が内包されている。制御用線は、給電制御に用いられるコントロールパイロット信号等の制御信号の伝送に用いられる配線である。そして、制御用線を介して、給電装置と自動車間で制御信号を送受信することにより、充電ケーブルの接続状態、充電可否の状態、充電の状態等種々の状態が検知され、検知された状態に応じて充電制御が行われる。
【0005】
また、給電装置からの給電を要する自動車では、給電制御のための情報、給電量や課金の管理を行うための通信信号が、給電装置と自動車信号の間でPLC通信機能により送受信されている。
【0006】
これらの通信信号は、前記制御信号より高い周波数帯域の信号として、制御信号に重畳するinband通信で制御用線を介して送受信される。前記制御信号は、1kHzの矩形波を搬送波として送受信され、前記通信信号は例えば30kHz〜450kHzの周波数の搬送波が低速通信用の帯域として使用され、例えば2MHz〜30MHzの周波数の搬送波が高速通信用の帯域として使用される。
【0007】
また、給電装置に供給される商用電源に基づいてバッテリーをAC充電する場合には、制御用線に重畳される通信信号により給電線に発生するクロストークノイズの上限がCISPR22規格で設定されている。従って、制御用線に重畳するPLC通信電圧は、CISPR22規格をクリアするレベルに設定される。
【0008】
特許文献1には、自動車のバッテリーにAC充電を行う充電システムにおいて、制御用線に制御信号と通信信号を重畳しながら、制御信号による通信信号への悪影響を抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−115905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、共通のコネクタ及び充電ケーブルを使用して、AC充電と、DC急速充電とを任意に選択して行うことを可能とした自動車用充電システムが提案されている。
しかし、DC急速充電では給電線に載るノイズレベルがAC充電の場合に比して高くなるため、制御用線に載るクロストークノイズレベルが上昇する。従って、CISPR22規格をクリアするレベルに設定されたPLC通信電圧では、安定した通信を行うことができない。
【0011】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は共通の充電ケーブルを介して、AC充電及びDC急速充電のいずれかを選択して行うことを可能とし、かつDC急速充電時に安定したPLC通信を可能とする自動車用充電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する自動車用充電システムは、AC電力供給部とDC電力供給部のうち少なくともDC電力供給部を備えた給電装置と、前記DC電力供給部若しくは前記AC電力供給部及びDC電力供給部にそれぞれ接続された給電線を内包する充電ケーブルと、前記充電ケーブルを介して供給されるAC電力若しくはDC電力に基づいてAC充電あるいはDC充電されるバッテリーを搭載した車両と、前記給電装置に設けられ、前記充電ケーブルに備えられた制御用線を介して充電制御のための制御信号を送受信する給電制御部と、前記車両に設けられ、前記給電制御部との間で前記制御用線を介して制御信号を送受信する充電制御部と、前記給電装置と前記車両にそれぞれ設けられ、前記制御用線を介してPLC通信を行うPLCモデムとを備えた自動車用充電システムにおいて、前記PLCモデムには、前記PLC通信を行うための通信信号の振幅を、前記AC充電時より前記DC充電時で大きくする振幅調整部を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成により、DC充電時のPLC通信の通信信号の振幅は、AC充電時の振幅より大きく設定されるので、DC充電時のPLC通信の通信信号のS/N比が改善される。
また、上記の自動車用充電システムにおいて、前記振幅調整部は、前記通信信号をデジタル信号で処理する送信制御回路に、前記AC充電時の通信信号の振幅値と前記DC充電時の通信信号の振幅値をあらかじめ格納した記憶装置を備え、格納されている振幅値に基づいて通信信号の振幅値をデジタル値で調整することが好ましい。
【0014】
この構成により、DC充電時には通信信号の振幅値が記憶装置に格納されているDC充電時の振幅値に調整される。
また、上記の自動車用充電システムにおいて、前記振幅調整部は、前記AC充電時の通信信号の振幅値を初期値として設定し、前記DC充電時には、前記記憶装置に格納されているDC充電時の振幅値に基づいて前記通信信号の振幅を拡大することが好ましい。
【0015】
この構成により、前記DC充電時には、通信信号の振幅がAC充電時の振幅からDC充電時の振幅に拡大される。
また、上記の自動車用充電システムにおいて、前記振幅調整部は、前記DC充電時の通信信号の振幅値を初期値として設定し、前記AC充電時には、前記記憶装置に格納されているAC充電時の振幅値に基づいて前記通信信号の振幅を縮小することが好ましい。
【0016】
この構成により、前記AC充電時には、通信信号の振幅がDC充電時の振幅からAC充電時の振幅に縮小される。
また、上記の自動車用充電システムにおいて、前記振幅調整部は、前記AC充電時の通信信号の振幅値と、前記DC充電時の通信信号の振幅値をアナログ値であらかじめ格納した記憶装置を備え、格納されている振幅値に基づいて前記PLCモデムの出力回路の利得を調整することが好ましい。
【0017】
この構成により、DC充電時には通信信号の振幅値が記憶装置に格納されている振幅値となるようにPLCモデムの出力回路の利得が調整される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自動車用充電システムによれば、共通の充電ケーブルを介して、AC充電及びDC急速充電のいずれかを選択して行い得るとともに、DC急速充電時に安定したPLC通信を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態を示すブロック図である。
図2】PLCモデムを示すブロック図である。
図3】PLCモデムの別例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、自動車の充電システムの一実施形態を図1及び図2に従って説明する。図1に示す自動車の充電システムは、給電装置1とバッテリー2を搭載した車両3を充電ケーブル4で接続して、AC充電あるいはDC急速充電でバッテリー2を充電するものである。
【0021】
給電装置1内には、AC電力供給部5と、DC電力供給部6と、給電制御部7が配設される。AC電力供給部5は、例えば交流100Vの商用電源ACVが供給され、AC充電開始時に給電制御部7から出力されるAC充電開始信号as1の供給に基づいて、前記充電ケーブル4内の給電線8a,8bにAC電力を供給する。
【0022】
DC電力供給部6は、例えば交流100Vの商用電源ACVの供給に基づいて直流電圧を生成し、且つDC/DCコンバータ等の電圧変換部により所定の直流電圧DCVを生成して、リレー9に出力する。そして、DC急速充電開始時に給電制御部7から出力されるDC充電開始信号ds1の供給に基づいてリレー9が導通状態となり、前記充電ケーブル4内の給電線10a,10bにDC電力が供給される。
【0023】
前記給電制御部7には、コントロールパイロット信号等の制御信号cpを送受信する制御用線11a,11bが接続され、その制御用線11a,11bは前記充電ケーブル4内に延設されている。前記制御信号cpは、例えば1kHzの矩形波を搬送信号として送信される。また、制御用線11a,11bの一方は、接地線である。
【0024】
前記給電線8a,8b,10a,10b及び前記制御用線11a,11bは、充電ケーブル4の先端部に取着されるプラグ12にそれぞれ接続され、そのプラグ12は前記車両3に設けられる受電コネクタ13に接続可能である。
【0025】
そして、プラグ12が受電コネクタ13に接続されると、給電線8a,8bは受電コネクタ13及び車両3内の給電線14a,14bを介して充電装置15に接続される。
また、プラグ12が受電コネクタ13に接続されると、給電線10a,10bは受電コネクタ13及び車両3内の給電線16a,16b及びリレー17を介して前記バッテリー2に接続可能である。
【0026】
また、プラグ12が受電コネクタ13に接続されると、制御用線11a,11bは受電コネクタ13及び車両3内の制御用線18a,18bを介して充電制御部19に接続される。
【0027】
従って、給電制御部7と充電制御部19とは制御用線11a,11b,18a,18bを介して制御信号cpを送受信可能となっている。
前記充電制御部19は、DC充電開始時に前記リレー17にDC充電開始信号ds2を出力し、リレー17はDC充電開始信号ds2の入力に基づいて接点が導通状態となる。この結果、DC電力供給部6からリレー9、給電線10a,10b,16a,16b及びリレー17を介してバッテリー2にDC電力が供給される。
【0028】
また、前記充電制御部19は、AC充電開始時に前記充電装置15にAC充電開始信号as2を出力する。充電装置15は、AC充電開始信号as2の入力に基づいて、給電線14a,14bを介して供給されるAC電力でバッテリー2を充電する。
【0029】
前記給電装置1と車両3には、給電制御部7と充電制御部19との間で前記制御用線11a,11b,18a,18bを介したPLC通信を行うためのPLCモデム20,21が配設されている。給電制御のための情報、給電量や課金の管理を行うための通信信号が、給電装置1と車両3との間でPLC通信機能により送受信される。
【0030】
前記PLCモデム20,21の変調方式は、耐ノイズ性に優れたOFDM(orthogonal frequency division multiplex:直交周波数分割多重)方式が採用されている。
給電装置1側のPLCモデム20と制御用線11a,11bとの間には重畳分離部22が介在され、さらに重畳分離部22と制御用線11a,11bとの間にコンデンサ24a,24bが介在されている。そして、制御用線11aと給電制御部7との間にローパスフィルタ23が介在されている。
【0031】
同様に、車両3側のPLCモデム21と制御用線18a,18bとの間には重畳分離部25が介在され、さらに重畳分離部25と制御用線18a,18bとの間にコンデンサ27a,27bが介在されている。そして、制御用線18aと充電制御部19との間にローパスフィルタ26が介在されている。
【0032】
前記給電制御部7とPLCモデム20との間では、給電制御部7から送信される通信信号ts1と、PLCモデム20から給電制御部7に送信される通信信号ts2を相互に送受信可能である。また、前記充電制御部19とPLCモデム21との間では、充電制御部から送信される通信信号ts2と、PLCモデム21から充電制御部19に送信される通信信号ts1を相互に送受信可能である。
【0033】
通信信号ts1,ts2は、PLCモデム20,21の動作により、例えば30kHz〜450kHzの周波数の搬送波が低速通信用の帯域として使用され、例えば2MHz〜30MHzの周波数の搬送波が高速通信用の帯域として使用される。
【0034】
このような構成により、給電制御部7から送信される通信信号ts1は、PLCモデム20及び重畳分離部22を介して制御用線11a,11bに出力されるとともに、制御用線18a,18bから重畳分離部25を介してPLCモデム21で読み取られ、充電制御部19に出力される。
【0035】
また、充電制御部19から送信される通信信号ts2は、PLCモデム21及び重畳分離部25を介して制御用線18a,18bに出力されるとともに、制御用線11a,11bから重畳分離部22を介してPLCモデム20で読み取られ、給電制御部7に出力される。
【0036】
次に、前記PLCモデム20,21の具体的構成を説明する。図2に示すように、PLCモデム20は送信部28と受信部29を備えている。送信部28では、給電制御部7から送信される通信信号ts1がMAC/PHYインターフェース30を介して送信制御回路31に入力される。
【0037】
送信制御回路31は、デジタルデータとして受信した通信信号ts1を暗号化し、その暗号化データに誤り訂正処理を施す。誤り訂正処理は、受信部29側でビット誤り等の誤りに対する検出及び訂正処理を可能とするための処理であり、例えばパリティチェック等の処理に用いるパリティビット等の符号を付加する処理である。
【0038】
次いで、AC充電あるいはDC高速充電に対応して重畳分離部22から制御用線11a,11bに出力する通信信号の電圧振幅を調整するためのマッピング処理を行う。AC充電時あるいはDC高速充電時に対応した電圧振幅値がメモリ32にあらかじめ格納されていて、誤り訂正処理された通信信号に対しAC充電あるいはDC高速充電に対応する電圧振幅値が設定された後、逆フーリエ変換(IFFT)処理が施される。
【0039】
このようにして、送信制御回路31ではメモリ32にあらかじめデジタル値で格納されている電圧振幅値に基づいて、AC充電あるいはDC高速充電に対応する通信信号の電圧振幅値を設定する。
【0040】
ここで、AC充電に対応する電圧振幅として0.4Vが設定され、DC高速充電に対応する電圧振幅として1.3Vが設定される。
送信制御回路31の出力信号は、D/A変換回路33でアナログ信号に変換され、AFE34を介してアナログ電圧信号として重畳分離部22に出力する。重畳分離部22は、入力された通信信号を制御用線11a,11bに重畳して出力する。
【0041】
PLCモデム20の受信部29では、前記送信部28の処理の逆の処理を行う。すなわち、制御用線11a,11bに重畳されて送信されている通信信号ts2が重畳分離部で分離されてAFE35を介してA/D変換回路36に入力される。A/D変換回路36は、入力されたアナログ電圧信号をデジタルデータに変換して、受信制御回路37に出力する。
【0042】
受信制御回路37は、A/D変換回路36から出力されるデジタル信号にフーリエ変換(FFT)処理を施し、次いで誤り訂正処理を行った後、複合処理を行う。すると、充電制御部19から出力された通信信号ts2が再生され、その通信信号ts2がMAC/PHYインターフェース38を介して給電制御部7に出力される。
【0043】
車両3側のPLCモデム21は、送信部及び受信部に充電制御部19が接続される点を除いて、前記PLCモデム20と同様な構成であるので、詳細な説明を省略する。
次に、上記のように構成された給電システムの作用を説明する。
【0044】
充電ケーブル4のプラグ12を車両3の受電コネクタ13に接続すると、給電制御部7と充電制御部19間のコントロールパイロット信号は、給電制御部7と充電制御部19内で制御用線11a,11bと制御用線18a,18bとに接続される終端抵抗により、12Vから9Vに移行する。
【0045】
すると、給電制御部7と充電制御部19との間で各PLCモデム20,21を介したPLC通信が開始され、給電装置1及び車両3がともにDC急速充電に対応しているか否かを判定する。
【0046】
詳しくは、充電制御部19が給電制御部7に対しAC充電かDC急速充電かを見極めるメッセージを要求する。そして、給電制御部7から充電制御部19にDC急速充電が可能である旨のメッセージが送信されると、コントロールパイロット信号は9Vから6Vに移行する。
【0047】
すると、DC急速充電が開始されるが、これに先立って充電制御部19から給電制御部7に出力される通信信号に基づいて、給電制御部7ではメモリ32からDC急速充電を行う場合の通信信号の振幅値が読み出される。そして、初期値として設定されているAC充電時の通信信号の振幅値をDC急速充電を行う場合の通信信号の振幅値に書き換える。すると、PLC通信の通信信号の振幅が拡大される。
【0048】
次いで、給電制御部7から出力されるDC充電開始信号ds1によりリレー9が導通状態となる。そして、充電制御部19から出力されるDC充電開始信号ds2によりリレー17が導通状態となって、DC電力供給部6からバッテリー2に直流電力が供給されて、バッテリー2のDC急速充電が開始される。
【0049】
充電制御部19によりバッテリー2の満充電が検出されると、充電制御部19によりリレー17が不導通状態に切り替えられる。さらに、通信信号により充電制御部19から給電制御部7にバッテリー2の満充電が通知されると、リレー9が不導通状態に切り替えられて、DC急速充電が終了する。
【0050】
DC急速充電が終了すると、コントロールパイロット信号は6Vから9Vに移行するとともに、通信信号の振幅値は初期値に書き換えられる。そして、プラグ12を受電コネクタ13から取り外すと、コントロールパイロット信号は12Vに復帰する。
【0051】
給電装置1がDC急速充電に対応していない時には、通信信号の振幅値の書き換えは行われない。そして、初期値として設定されているAC充電時の通信信号の振幅値でPLC通信が行われるとともに,AC充電が開始される。
【0052】
上記のような自動車の充電システムでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)DC急速充電を行う場合には、PLC通信信号の振幅を拡大することができる。従って、充電ケーブル4内で給電線10a,10bで発生するノイズレベルの増大にともなって制御用線11a,11bのノイズレベルが上昇しても、S/N比の低下を防止して安定したPLC通信を行うことができる。
(2)AC充電を行うときには、通信信号の振幅をあらかじめ設定されている初期値としてPLC通信を行うことができる。
(3)DC急速充電を行う場合にはAC充電のための給電線8a,8bを使用しない。従って、規格を満足させる必要はないので振幅を拡大することができる。
(4)PLCモデム20,21の変調方式は、耐ノイズ性に優れたOFDM方式が採用されているので、PLCモデム20,21に近接して、ノイズ発生源となる電子デバイスが搭載されていても、PLC通信信号を安定して送受信することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図3に示すように、DC急速充電時に、メモリ40に格納されているDC充電時の通信信号の振幅に基づいて、PLCモデム20,21の出力回路であるAFE34の利得を引き上げて通信信号の振幅を拡大するようにしてもよい。
・DC急速充電のための通信信号の振幅値を初期値として設定し、AC充電の開始時に振幅値を縮小するように書き換え処理を行ってもよい。
・給電装置の外部から、例えば車両の運転手等により、PLC通信信号の振幅値を書き換える設定信号を入力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…給電装置、2…バッテリー、3…車両、4…充電ケーブル、5…AC電力供給部、6…DC電力供給部、7…給電制御部、20,21…PLCモデム、31…振幅調整部(送信制御回路)、32…振幅調整部(記憶装置、メモリ)、40…振幅調整部(記憶装置、メモリ)。
図1
図2
図3