【実施例】
【0029】
本発明の魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法は、水揚げ後、異物の除去や洗浄等の下処理が行われた生イサダEを、従来より行われているように鍋で茹でるものものであり(
図1、ステップS10)、次いで濾過および/または圧搾して(ステップS11)分離された蒸煮液Lと固形成分としての蒸煮イサダE1とに、それぞれ適食化処理を施すものであって、生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させものである。
なお従来は、前記蒸煮イサダE1が適宜の乾燥機により乾燥品とされ、これが製品とされていた(ステップS110)。
以下、
図1に示すフローチャートにしたがって詳しく説明する。
なお本明細書中において「蒸煮」とは、湯水または塩水によって処理対象物を茹でることを意味するものとする。
【0030】
〔魚介類の蒸煮液の適食化並びに魚介類を原料とした食材の製造〕
(1)濃縮と亜臨界処理
始めに前記蒸煮液Lを濃縮した後(ステップS12)、水の亜臨界条件下に置く(ステップS13)ものである。
このような一連の処理には一例として
図2に示すように、濃縮装置50、ポンプ51、耐圧管5、冷却器52及び背圧弁53を配管により接続して構成された機器が用いられ、濃縮、亜臨界処理、冷却が順次連続的に行われるようにした。なお前記耐圧管5の外周には加熱器55が具えられている。
このように蒸煮液Lを濃縮することにより、亜臨界処理が行われる液量を減少することができ、上記亜臨界処理のための設備を小型化することができるといった利点がある。もちろん蒸煮液Lを濃縮することなく亜臨界処理を行ってもよい。
因みに前記蒸煮液Lの濃縮は、前記蒸煮(ステップS10)が湯水によるものであるとき、塩水によるものであるとき、共に固形分濃度5〜50重量%程度とする。
【0031】
また前記亜臨界処理は、温度調節器(図示省略)を操作して加熱器55によって耐圧管5を加熱し、耐圧管5の内部が水の亜臨界条件下となるようにして行うものであり、この実施例では一例として120〜200℃好ましくは200℃となるようにした。
このとき、密閉空間である耐圧管5内の圧力は0.2〜1.6MPaとなり、耐圧管5内は水の亜臨界条件下となるものであり、この状態を一例として2〜10分間、好ましくは10分間維持する。
そして上述のように蒸煮液Lを水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さが減少し、更に香ばしさが増加することが本発明者によって確認されており、この時点で蒸煮液Lは適食化された状態の亜臨界処理蒸煮液L1となる。
このような蒸煮液Lの変性は、蒸煮液L中の水分が亜臨界水として、蒸煮液L中に含まれる生イサダEの成分に有効に作用していることによるものと考えられる。
なおこのような亜臨界処理にあたっての耐圧管5内部の温度及び維持時間は、被処理物の色調、臭気及び嗜好性を考慮して決定されるものである。
また蒸煮液Lの亜臨界処理を回分式の装置を用いて行うことももちろん可能である。
【0032】
(2)冷却
次いで亜臨界処理蒸煮液L1は冷却器52に送られるものであり、この実施例では一例として20〜25℃に冷却されるようにした(ステップS14)。
【0033】
(3)蒸煮液調製
次に亜臨界処理蒸煮液L1に一例としてシクロデキストリン水飴を5〜50重量%添加して成分調製を行い、蒸煮調製液L2を得る(ステップS15)。
なおここで前記アスタキサンチンや他の有用成分を添加してもよい。
【0034】
(4)噴霧乾燥
次いで前記蒸煮調製液L2を、一例として噴霧乾燥機を用いて乾燥して粒径10〜150μm程度の粉粒体である蒸煮液成分粉末Pを得る(ステップS16)。
このようにして得られた蒸煮液成分粉末Pには香ばしい香り(エビの香り)があり、この蒸煮液成分粉末Pを機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできるものであり、例えば、パスタ、スープ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお前記亜臨界処理蒸煮液L1をそのまま乾燥することにより、蒸煮液成分粉末Pを得るようにしてもよい。
【0035】
〔魚介類の適食化並びに魚介類を原料とした食材の製造〕
次に前記ステップS11において、分離された固形成分としての蒸煮イサダE1の適食化及びこれを原料とする食材の製法方法について説明する。
(1)半乾燥
まず、前記蒸煮イサダE1を適宜の乾燥機によって、一例として37%W.B.程度にまで半乾燥して半乾燥イサダE2とする(ステップS110)。
なおここで半乾燥とするのは、保存性を高めるためであり、例えば水揚げ後の生イサダEを蒸煮して蒸煮イサダE1とした後の加工を各地に設けられた工場で行うような場合に有効な手法となる。
【0036】
(2)耐圧容器への投入
次いで前記半乾燥イサダE2及び水(ステップS110にて乾燥した量に相当する量)を、
図3に示すような耐圧容器1内に投入する。(ステップS20)。
なおこの耐圧容器1は、一端に投入口11が形成された有底円筒状の容器本体10と、前記投入口11を塞ぐ蓋体12とを具えて成るものであり、この蓋体12にはバルブ15が具えられた管路13が接続されている。
また前記耐圧容器1は、一例として保温体内に電気ヒータが内蔵された加熱器2(マントルヒータ、ジャケットヒータ)に囲繞された状態とされる。
そして容器本体10への半乾燥イサダE2の投入後、容器本体10に蓋体12を組み付け、更にバルブ15を閉鎖する。
【0037】
(3)亜臨界処理
次いで温度調節器21を操作して加熱器2によって容器本体10を加熱し、容器本体10の内部が水の亜臨界条件下となるようにするものであり、この実施例では一例として100〜240℃好ましくは140〜160℃となるようにした(ステップS21)。このとき、密閉容器である耐圧容器1内の圧力は0.2〜3.5MPaとなり、耐圧容器1内は水の亜臨界条件下となるものであり、この状態を一例として所定温度に達温後、0〜20分間、好ましくは10分間維持する。
そして上述のように半乾燥イサダE2を水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さが減少し、更に香ばしさが増加することが本発明者によって確認されており、この時点で半乾燥イサダE2は適食化された亜臨界処理イサダE3となる。
このような半乾燥イサダE2から亜臨界処理イサダE3への変性は、耐圧容器1内の水分が亜臨界水として有効に半乾燥イサダE2の成分に作用していることによるものと考えられる。
なおこのような亜臨界処理にあたっての耐圧容器1内部の温度及び維持時間は、被処理物の色調、臭気及び嗜好性を考慮して決定されるものである。
因みに亜臨界条件下に置かれた亜臨界処理イサダE3は、圧力と温度により体組織が微細化された状態となっている。
【0038】
(4)冷却
次いで耐圧容器1と加熱器2とを分離し、容器本体10を冷水に浸けてその内容物を冷却するものであり、この実施例では一例として0℃の冷水に10分間浸けるようにした(ステップS22)。
【0039】
(5)固液分離
次いで蓋体12を外して容器本体10の内容物を取り出し、ろ紙を用いて濾過して半固形状物S(固体成分)と、分離液L3(液体成分)とに分離する(ステップS23)。
更に半固形状物Sをナイロンネット等に入れ、適宜の圧搾機により一例として7.86MPaの圧力で圧搾し、半固形状物S中の液体成分を絞り出す。
そして濾過によって得られた分離液L3に、圧搾によって得られた液体成分を合わせておく。
【0040】
〔半固形状物(固体成分)を原料とした食材〕
(6)凍結
次いでステップS23で得られた半固形状物S(固体成分)を原料とした食材の製造に移るものであり、まず半固形状物Sを一例として−30℃で2時間凍結する(ステップS24)。
【0041】
(7)凍結乾燥
次いで凍結した半固形状物Sを凍結乾燥するものであり、一例として24時間静置することにより、水分を昇華させて乾燥イサダE4を得る(ステップS25)。
なおこのような乾燥は、送風式の乾燥機等を用いて行うようにしてもよい。
【0042】
(8)粉砕
次いで乾燥イサダE4を粉砕するものであり、適宜の粉砕機を用いて一例として粒径100〜2500μm 程度の粉末イサダE5を得る(ステップS26)。
【0043】
上述のようにして得られた粉末イサダE5には、香ばしい香り(エビの香り)があり、また強い抗酸化力などの健康増進に有用な成分であるアスタキサンチンが多く含まれていることが確認されており、この粉末イサダE5を機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできるものであり、例えば、パスタ、スープ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお上述のような粉砕を行うことなく、前記乾燥イサダE4を食材としてもよい。
【0044】
〔分離液(液体成分)を原料とした食材〕
(9)分離液成分調製
次に前記ステップS23で得られた分離液L3(液体成分)を原料とした食材の製造に移るものであり、まず分離液L3に一例としてシクロデキストリン水飴を5〜50重量%添加して成分調製を行い、分離調製液L4を得る(ステップS27)。
なおここで前記アスタキサンチンや他の有用成分を添加してもよい。
【0045】
(10)噴霧乾燥
次いで前記分離調製液L4を、一例として噴霧乾燥機を用いて乾燥して粒径10〜150μm程度の分離液成分粉末P1を得る(ステップS28)。
このようにして得られた分離液成分粉末P1には香ばしい香り(エビの香り)があり、この分離液成分粉末P1を機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできるものであり、例えば、パスタ、スープ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお分離液L3をそのまま乾燥することにより、分離液成分粉末P1を得るようにしてもよい。
【0046】
〔他の実施例〕
以上の実施例では、魚介類としてイサダを用いたが、本発明の適用対象として、一例として以下に示すような他の魚介類を採用することも可能である。
まず、東北地方沿岸で4月頃から水揚げされるコウナゴを用いることも可能であり、この場合、コウナゴの漁期はイサダ漁が終わった直後であるため、製造施設の稼働率を高めることができる。
同様に、魚介類としてシラスを用いることもできる。
【0047】
またサクラエビを用いた場合には、従来、風味を増すため行われていた天日干しの必要がなくなるため、干しサクラエビを粉砕したものと同様の製品を工場生産することが可能になるとともに、製造時間を大幅に削減することができる。