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特開2015-231344魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法及び魚介類を原料とした食材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-231344(P2015-231344A)
(43)【公開日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法及び魚介類を原料とした食材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/327 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   A23L1/327
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-119040(P2014-119040)
(22)【出願日】2014年6月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、復興促進プログラム(産学共創)「亜臨界流体処理と粉末化技術を活用した水産加工残滓の新規高度利用法の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】502359013
【氏名又は名称】株式会社木の屋石巻水産
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】安達 修二
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬
(72)【発明者】
【氏名】インティラ クームヤート
(72)【発明者】
【氏名】永水 宏昇
(72)【発明者】
【氏名】脇屋 和紀
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝行
(72)【発明者】
【氏名】松友 倫人
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG12
4B042AH01
4B042AH02
4B042AP01
4B042AP03
4B042AP15
4B042AP17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】イサダ等の魚介類及びその蒸煮液の生臭さを減少させるとともに香ばしさを増加させることにより適食化を図り、これら魚介類の新たな食用用途範囲を広げることのできる、新規な魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法及び魚介類を原料とした食材の製造方法の提供。
【解決手段】魚介類を蒸煮S10した後、魚介類に含有される成分を適食化する方法において、前記魚介類に含有される成分は魚介類を蒸煮して得られる蒸煮液L及び固形成分の乾燥物S110に含まれるものであり、この蒸煮液L及び固形成分の乾燥物を、水の亜臨界条件下に置くことによりS13、S21生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させて適食化する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類を蒸煮した後、魚介類に含有される成分を適食化する方法において、
前記魚介類に含有される成分は魚介類を蒸煮して得られる蒸煮液に含まれるものであり、この蒸煮液を、水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させて適食化することを特徴とする魚介類の蒸煮液の適食化方法。
【請求項2】
前記魚介類はイサダであることを特徴とする請求項1記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法。
【請求項3】
前記蒸煮液は、魚介類を湯水または塩水によって蒸煮した後、濾過および/または圧搾して分離されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法。
【請求項4】
前記蒸煮液を水の亜臨界条件下に置くにあたっては、連続式の耐圧管を用いることを特徴とする請求項1、2または3記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法。
【請求項5】
前記請求項1乃至4記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法によって適食化された蒸煮液を乾燥することを特徴とする魚介類を原料とした食材の製造方法。
【請求項6】
魚介類を蒸煮した後、魚介類に含有される成分を適食化する方法において、
前記魚介類に含有される成分は、蒸煮液から分離した固形成分に含まれるものであり、この固形成分を水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させて適食化することを特徴とする魚介類の適食化方法。
【請求項7】
前記魚介類はイサダであることを特徴とする請求項6記載の魚介類の適食化方法。
【請求項8】
前記固形成分魚介類を水の亜臨界条件下に置くにあたっては、回分式の耐圧容器を用いることを特徴とする請求項6または7記載の魚介類の適食化方法。
【請求項9】
前記請求項6乃至8記載の魚介類の適食化方法によって適食化された魚介類を濾過および/または圧搾して固形成分と液体成分とに分離し、固形成分を乾燥することを特徴とする魚介類を原料とした食材の製造方法。
【請求項10】
前記請求項6乃至8記載の魚介類の適食化方法によって適食化された魚介類を濾過および/または圧搾して固形成分と液体成分とに分離し、液体成分を乾燥することを特徴とする魚介類を原料とした食材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイサダ等の魚介類及びその蒸煮液の生臭さを減少させるとともに香ばしさを増加させることにより、新たな食材としての用途を提供することのできる魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法及び魚介類を原料とした食材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イサダ(正式和名ツノナシオキアミ 学名 Euphausia pacifica )は、東北地方の太平洋沿岸等で水揚げされる海洋資源であり、現状ではその大部分が冷凍されて釣り餌、養殖魚用の餌として供されており、更に一部が乾燥物とされて食用に供されている。
乾燥物については、エビ様の香りがして美味ではあるものの、市場ではあくまでサクラエビ等の干しエビの代用品として捉えられていることは否めなかった。
ところで近時、中国産のイサダが日本に輸入されており、釣り餌、養殖魚用の餌としてのイサダの単価が押し下げられている。このため、イサダに高付加価値を付けることによる餌以外の用途の開発が試みられており、一例として本出願人の一が関与したイサダを原料としたスナック菓子が実用化されている(非特許文献1参照)。
このようにイサダの新たな用途開発が試みられてはいるものの、イサダ特有の以下のような理由により、現状では餌としての用途を凌駕するまでには至っていなかった。
【0003】
まずイサダは、含有されるタンパク質の自己消化による変性が起こり易いため鮮度低下が非常に早いものであり、冷凍保存した場合でも変性の抑制は困難であるとされている。その対策としてイサダを水揚げ後、ただちに蒸煮等の加熱処理を施し、更に乾燥することにより保存性を高めることが行われている(例えば特許文献1参照)。
そして蒸煮の際には、副産物として蒸煮液が生成されることになるが、従来この蒸煮液は有用成分が豊富に含まれているにも関わらず廃棄されており、廃棄処分のための設備が必須となり、廃棄コストの発生は避けられなかった。
更に東北地方におけるイサダの漁期は2〜3月と短く(他の漁場でも2カ月程度)、上記の理由により短期間のうちに加工を済ませなければならないが、そのために必要な設備を用意するとなると、設備資額に対して収益が少なく、更に設備の稼働率も低いものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−140872号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】三陸河北新報社、メディア猫の目、県産イサダでスナック 東北限定販売 木の屋石巻水産、カルビーに原料供給、インターネット<URL:http://ishinomaki.kahoku.co.jp/news/2013/09/20130920t13004.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、イサダ等の魚介類及びその蒸煮液の生臭さを減少させるとともに香ばしさを増加させることにより適食化を図り、これら魚介類の新たな食用用途範囲を広げることのできる、新規な魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法及び魚介類を原料とした食材の製造方法の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法は、魚介類を蒸煮した後、魚介類に含有される成分を適食化する方法において、前記魚介類に含有される成分は魚介類を蒸煮して得られる蒸煮液に含まれるものであり、この蒸煮液を、水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させて適食化することを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法は、前記要件に加え、前記魚介類はイサダであることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法は、前記要件に加え、前記蒸煮液は、魚介類を湯水または塩水によって蒸煮した後、濾過および/または圧搾して分離されたものであることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法は、前記要件に加え、前記蒸煮液を水の亜臨界条件下に置くにあたっては、連続式の耐圧管を用いることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載の魚介類を原料とした食材の製造方法は、前記請求項1乃至4記載の魚介類の蒸煮液の適食化方法によって適食化された蒸煮液を乾燥することを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載の魚介類の適食化方法は、魚介類を蒸煮した後、魚介類に含有される成分を適食化する方法において、前記魚介類に含有される成分は、蒸煮液から分離した固形成分に含まれるものであり、この固形成分を水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させて適食化することを特徴として成るものである。
【0013】
更にまた請求項7記載の魚介類の適食化方法は、前記請求項6記載の要件に加え、前記魚介類はイサダであることを特徴として成るものである。
【0014】
更にまた請求項8記載の魚介類の適食化方法は、前記請求項6または7記載の要件に加え、前記固形成分魚介類を水の亜臨界条件下に置くにあたっては、回分式の耐圧容器を用いることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項9記載の魚介類を原料とした食材の製造方法は、前記請求項6乃至8記載の魚介類の適食化方法によって適食化された魚介類を濾過および/または圧搾して固形成分と液体成分とに分離し、固形成分を乾燥することを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項10記載の魚介類を原料とした食材の製造方法は、前記請求項6乃至8記載の魚介類の適食化方法によって適食化された魚介類を濾過および/または圧搾して固形成分と液体成分とに分離し、液体成分を乾燥することを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0017】
まず請求項1記載の発明によれば、蒸煮液を余すことなく食材として利用することができる。
また、魚介類の新たな食用用途範囲を広げることができる。
更にまた、蒸煮液を廃棄処理するための設備が不要になるとともに、廃棄コストをカットすることができる。
【0018】
また請求項2記載の発明によれば、付加価値の高いイサダの加工を行うことができるため、食材としてのイサダの新たな用途を提供することができる。
【0019】
また請求項3記載の発明によれば、魚介類を蒸煮した後、固形成分の乾燥を行う既存の製造設備を踏襲しながらも、新たな魚介類の加工形態を実現することができる。
【0020】
また請求項4記載の発明によれば、適食化に要する工程を、容易且つ安価に実現することができ、更に効率的な稼働を実現することができる。
【0021】
また請求項5記載の発明によれば、蒸煮液に含まれる魚介類の成分を、余すことなく食材として利用することができる。
また食材としての魚介類の新たな用途を提供することができる。
【0022】
また請求項6記載の発明によれば、魚介類の固形成分を余すことなく食材として利用することができる。
また食材としての魚介類の新たな用途を提供することができる。
更にまた、魚介類を蒸煮した後、乾燥を行う既存の製造設備を踏襲しながらも、新たな魚介類の加工形態を実現することができる。
【0023】
また請求項7記載の発明によれば、付加価値の高いイサダの加工を行うことができるため、食材としてのイサダの新たな用途を提供することができる。
【0024】
更にまた請求項8記載の発明によれば、適食化に要する工程を、容易且つ安価に実現することができる。
【0025】
また請求項9記載の発明によれば、魚介類の固形成分を余すことなく食材として利用することができる。
また食材としての魚介類の新たな用途を提供することができる。
【0026】
更にまた請求項10記載の発明によれば、魚介類の液体成分に含有される成分を、余すことなく食材として利用することができる。
また食材としての魚介類の新たな用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の魚介類の蒸煮液の適食化方法、魚介類の適食化方法及び魚介類を原料とした食材の製造方法を示すフローチャートである。
図2】亜臨界処理に用いられる連続式の機器を示す骨格図である。
図3】亜臨界処理に用いられる回分式の機器を示す骨格図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法及び魚介類を原料とした食材の製造方法の最良の形態は以下に示すとおりであるが、この形態に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0029】
本発明の魚介類の蒸煮液の適食化方法及び魚介類の適食化方法は、水揚げ後、異物の除去や洗浄等の下処理が行われた生イサダEを、従来より行われているように鍋で茹でるものものであり(図1、ステップS10)、次いで濾過および/または圧搾して(ステップS11)分離された蒸煮液Lと固形成分としての蒸煮イサダE1とに、それぞれ適食化処理を施すものであって、生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させものである。
なお従来は、前記蒸煮イサダE1が適宜の乾燥機により乾燥品とされ、これが製品とされていた(ステップS110)。
以下、図1に示すフローチャートにしたがって詳しく説明する。
なお本明細書中において「蒸煮」とは、湯水または塩水によって処理対象物を茹でることを意味するものとする。
【0030】
〔魚介類の蒸煮液の適食化並びに魚介類を原料とした食材の製造〕
(1)濃縮と亜臨界処理
始めに前記蒸煮液Lを濃縮した後(ステップS12)、水の亜臨界条件下に置く(ステップS13)ものである。
このような一連の処理には一例として図2に示すように、濃縮装置50、ポンプ51、耐圧管5、冷却器52及び背圧弁53を配管により接続して構成された機器が用いられ、濃縮、亜臨界処理、冷却が順次連続的に行われるようにした。なお前記耐圧管5の外周には加熱器55が具えられている。
このように蒸煮液Lを濃縮することにより、亜臨界処理が行われる液量を減少することができ、上記亜臨界処理のための設備を小型化することができるといった利点がある。もちろん蒸煮液Lを濃縮することなく亜臨界処理を行ってもよい。
因みに前記蒸煮液Lの濃縮は、前記蒸煮(ステップS10)が湯水によるものであるとき、塩水によるものであるとき、共に固形分濃度5〜50重量%程度とする。
【0031】
また前記亜臨界処理は、温度調節器(図示省略)を操作して加熱器55によって耐圧管5を加熱し、耐圧管5の内部が水の亜臨界条件下となるようにして行うものであり、この実施例では一例として120〜200℃好ましくは200℃となるようにした。
このとき、密閉空間である耐圧管5内の圧力は0.2〜1.6MPaとなり、耐圧管5内は水の亜臨界条件下となるものであり、この状態を一例として2〜10分間、好ましくは10分間維持する。
そして上述のように蒸煮液Lを水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さが減少し、更に香ばしさが増加することが本発明者によって確認されており、この時点で蒸煮液Lは適食化された状態の亜臨界処理蒸煮液L1となる。
このような蒸煮液Lの変性は、蒸煮液L中の水分が亜臨界水として、蒸煮液L中に含まれる生イサダEの成分に有効に作用していることによるものと考えられる。
なおこのような亜臨界処理にあたっての耐圧管5内部の温度及び維持時間は、被処理物の色調、臭気及び嗜好性を考慮して決定されるものである。
また蒸煮液Lの亜臨界処理を回分式の装置を用いて行うことももちろん可能である。
【0032】
(2)冷却
次いで亜臨界処理蒸煮液L1は冷却器52に送られるものであり、この実施例では一例として20〜25℃に冷却されるようにした(ステップS14)。
【0033】
(3)蒸煮液調製
次に亜臨界処理蒸煮液L1に一例としてシクロデキストリン水飴を5〜50重量%添加して成分調製を行い、蒸煮調製液L2を得る(ステップS15)。
なおここで前記アスタキサンチンや他の有用成分を添加してもよい。
【0034】
(4)噴霧乾燥
次いで前記蒸煮調製液L2を、一例として噴霧乾燥機を用いて乾燥して粒径10〜150μm程度の粉粒体である蒸煮液成分粉末Pを得る(ステップS16)。
このようにして得られた蒸煮液成分粉末Pには香ばしい香り(エビの香り)があり、この蒸煮液成分粉末Pを機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできるものであり、例えば、パスタ、スープ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお前記亜臨界処理蒸煮液L1をそのまま乾燥することにより、蒸煮液成分粉末Pを得るようにしてもよい。
【0035】
〔魚介類の適食化並びに魚介類を原料とした食材の製造〕
次に前記ステップS11において、分離された固形成分としての蒸煮イサダE1の適食化及びこれを原料とする食材の製法方法について説明する。
(1)半乾燥
まず、前記蒸煮イサダE1を適宜の乾燥機によって、一例として37%W.B.程度にまで半乾燥して半乾燥イサダE2とする(ステップS110)。
なおここで半乾燥とするのは、保存性を高めるためであり、例えば水揚げ後の生イサダEを蒸煮して蒸煮イサダE1とした後の加工を各地に設けられた工場で行うような場合に有効な手法となる。
【0036】
(2)耐圧容器への投入
次いで前記半乾燥イサダE2及び水(ステップS110にて乾燥した量に相当する量)を、図3に示すような耐圧容器1内に投入する。(ステップS20)。
なおこの耐圧容器1は、一端に投入口11が形成された有底円筒状の容器本体10と、前記投入口11を塞ぐ蓋体12とを具えて成るものであり、この蓋体12にはバルブ15が具えられた管路13が接続されている。
また前記耐圧容器1は、一例として保温体内に電気ヒータが内蔵された加熱器2(マントルヒータ、ジャケットヒータ)に囲繞された状態とされる。
そして容器本体10への半乾燥イサダE2の投入後、容器本体10に蓋体12を組み付け、更にバルブ15を閉鎖する。
【0037】
(3)亜臨界処理
次いで温度調節器21を操作して加熱器2によって容器本体10を加熱し、容器本体10の内部が水の亜臨界条件下となるようにするものであり、この実施例では一例として100〜240℃好ましくは140〜160℃となるようにした(ステップS21)。このとき、密閉容器である耐圧容器1内の圧力は0.2〜3.5MPaとなり、耐圧容器1内は水の亜臨界条件下となるものであり、この状態を一例として所定温度に達温後、0〜20分間、好ましくは10分間維持する。
そして上述のように半乾燥イサダE2を水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さが減少し、更に香ばしさが増加することが本発明者によって確認されており、この時点で半乾燥イサダE2は適食化された亜臨界処理イサダE3となる。
このような半乾燥イサダE2から亜臨界処理イサダE3への変性は、耐圧容器1内の水分が亜臨界水として有効に半乾燥イサダE2の成分に作用していることによるものと考えられる。
なおこのような亜臨界処理にあたっての耐圧容器1内部の温度及び維持時間は、被処理物の色調、臭気及び嗜好性を考慮して決定されるものである。
因みに亜臨界条件下に置かれた亜臨界処理イサダE3は、圧力と温度により体組織が微細化された状態となっている。
【0038】
(4)冷却
次いで耐圧容器1と加熱器2とを分離し、容器本体10を冷水に浸けてその内容物を冷却するものであり、この実施例では一例として0℃の冷水に10分間浸けるようにした(ステップS22)。
【0039】
(5)固液分離
次いで蓋体12を外して容器本体10の内容物を取り出し、ろ紙を用いて濾過して半固形状物S(固体成分)と、分離液L3(液体成分)とに分離する(ステップS23)。
更に半固形状物Sをナイロンネット等に入れ、適宜の圧搾機により一例として7.86MPaの圧力で圧搾し、半固形状物S中の液体成分を絞り出す。
そして濾過によって得られた分離液L3に、圧搾によって得られた液体成分を合わせておく。
【0040】
〔半固形状物(固体成分)を原料とした食材〕
(6)凍結
次いでステップS23で得られた半固形状物S(固体成分)を原料とした食材の製造に移るものであり、まず半固形状物Sを一例として−30℃で2時間凍結する(ステップS24)。
【0041】
(7)凍結乾燥
次いで凍結した半固形状物Sを凍結乾燥するものであり、一例として24時間静置することにより、水分を昇華させて乾燥イサダE4を得る(ステップS25)。
なおこのような乾燥は、送風式の乾燥機等を用いて行うようにしてもよい。
【0042】
(8)粉砕
次いで乾燥イサダE4を粉砕するものであり、適宜の粉砕機を用いて一例として粒径100〜2500μm 程度の粉末イサダE5を得る(ステップS26)。
【0043】
上述のようにして得られた粉末イサダE5には、香ばしい香り(エビの香り)があり、また強い抗酸化力などの健康増進に有用な成分であるアスタキサンチンが多く含まれていることが確認されており、この粉末イサダE5を機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできるものであり、例えば、パスタ、スープ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお上述のような粉砕を行うことなく、前記乾燥イサダE4を食材としてもよい。
【0044】
〔分離液(液体成分)を原料とした食材〕
(9)分離液成分調製
次に前記ステップS23で得られた分離液L3(液体成分)を原料とした食材の製造に移るものであり、まず分離液L3に一例としてシクロデキストリン水飴を5〜50重量%添加して成分調製を行い、分離調製液L4を得る(ステップS27)。
なおここで前記アスタキサンチンや他の有用成分を添加してもよい。
【0045】
(10)噴霧乾燥
次いで前記分離調製液L4を、一例として噴霧乾燥機を用いて乾燥して粒径10〜150μm程度の分離液成分粉末P1を得る(ステップS28)。
このようにして得られた分離液成分粉末P1には香ばしい香り(エビの香り)があり、この分離液成分粉末P1を機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできるものであり、例えば、パスタ、スープ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお分離液L3をそのまま乾燥することにより、分離液成分粉末P1を得るようにしてもよい。
【0046】
〔他の実施例〕
以上の実施例では、魚介類としてイサダを用いたが、本発明の適用対象として、一例として以下に示すような他の魚介類を採用することも可能である。
まず、東北地方沿岸で4月頃から水揚げされるコウナゴを用いることも可能であり、この場合、コウナゴの漁期はイサダ漁が終わった直後であるため、製造施設の稼働率を高めることができる。
同様に、魚介類としてシラスを用いることもできる。
【0047】
またサクラエビを用いた場合には、従来、風味を増すため行われていた天日干しの必要がなくなるため、干しサクラエビを粉砕したものと同様の製品を工場生産することが可能になるとともに、製造時間を大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 耐圧容器
10 容器本体
11 投入口
12 蓋体
13 管路
15 バルブ

2 加熱器
21 温度調節器

5 耐圧管
50 濃縮装置
51 ポンプ
52 冷却器
53 背圧弁
55 加熱器

E 生イサダ
E1 蒸煮イサダ
E2 半乾燥イサダ
E3 亜臨界処理イサダ
E4 乾燥イサダ
E5 粉末イサダ

L 蒸煮液
L1 亜臨界処理蒸煮液
L2 蒸煮調製液
L3 分離液
L4 分離調製液

P 蒸煮液成分粉末
P1 分離液成分粉末

S 半固形状物
図1
図2
図3