【実施例】
【0019】
本発明の魚介類の適食化方法は、イサダ等の魚介類を水の亜臨界条件下に置くことにより、生臭さを減少させるとともに、香ばしさを増加させものである。
以下、魚介類の適食化方法について、
図1に示すフローチャートにしたがって詳しく説明するものであり、併せて本発明の魚介類を原料とした食材の製造方法について説明する。
【0020】
〔固形成分を原料とした食材〕
(1)耐圧容器への投入
まず、水揚げ後、異物の除去や洗浄等の下処理が行われた生イサダEを、
図2に示すような耐圧容器1内に投入する。(ステップS1)。
なおこの耐圧容器1は、一端に投入口11が形成された有底円筒状の容器本体10と、前記投入口11を塞ぐ蓋体12とを具えて成るものであり、この蓋体12にはバルブ15が具えられた管路13が接続されている。
また前記耐圧容器1は、一例として保温体内に電気ヒータが内蔵された加熱器2(マントルヒータ、ジャケットヒータ)に囲繞された状態とされる。
そして容器本体10への生イサダEの投入後、容器本体10に蓋体12を組み付け、更にバルブ15を閉鎖する。
なお本発明にあっては、耐圧容器1へは生イサダEのみが投入され、従来手法の蒸煮のように湯水または塩水を投入する必要がないため、耐圧容器1の大型化を回避することができる。
【0021】
(2)亜臨界処理
次いで温度調節器21を操作して加熱器2によって容器本体10を加熱し、容器本体10の内部が水の亜臨界条件下となるようにするものであり、この実施例では一例として100〜240℃好ましくは140〜160℃となるようにした(ステップS2)。このとき、密閉容器である耐圧容器1内の圧力は0.2〜3.5MPaとなり、耐圧容器1内は水の亜臨界条件下となるものであり、この状態を一例として所定温度に達温後、0〜20分間、好ましくは10分間維持する。
そして上述のように生イサダEを水の亜臨界条件下に置くことにより加熱による肉身の変質が起こり、生臭さが減少し、更に香ばしさが増加することが本発明者によって確認されており、この時点で生イサダEは適食化された状態の亜臨界処理イサダE1となる。
このような生イサダEから亜臨界処理イサダE1への変性は、生イサダE中の水分が亜臨界水として有効に肉身や殻に作用していることによるものと考えられる。
なおこのような亜臨界処理にあたっての容器本体10内部の温度及び維持時間は、被処理物の色調、臭気及び嗜好性を考慮して決定されるものである。
因みに亜臨界条件下に置かれた亜臨界処理イサダE1は、圧力と温度により体組織が微細化された状態となっている。
【0022】
(3)冷却
次いで耐圧容器1と加熱器2とを分離し、容器本体10を冷水に浸けてその内容物である亜臨界処理イサダE1を冷却するものであり、この実施例では一例として0℃の冷水に10分間浸けるようにした(ステップS3)。
【0023】
(4)固液分離
次いで蓋体12を外して容器本体10の内容物を取り出し、ろ紙を用いて濾過して分離液L(液体成分)と半固形状物S(固形成分)とに分離する(ステップS4)。
更に半固形状物Sをナイロンネット等に入れ、適宜の圧搾機により一例として7.86MPaの圧力で圧搾し、半固形状物S中の液体成分を絞り出す。
そして濾過によって得られた分離液Lに、圧搾によって得られた液体成分と合わせておく。
【0024】
〔固形成分を原料とした食材〕
(5)凍結
次いで前記半固形状物S(固形成分)を原料とした食材の製造に移るものであり、まず半固形状物Sを一例として−30℃で2時間凍結する(ステップS50)。
【0025】
(6)凍結乾燥
次いで凍結した半固形状物Sを凍結乾燥するものであり、一例として24時間静置することにより、水分を昇華させて、乾燥イサダE2を得る(ステップS51)。
なおこのような乾燥は、送風式の乾燥機等を用いて行うようにしてもよい。
【0026】
(7)粉砕
次いで乾燥イサダE2を粉砕するものであり、適宜の粉砕機を用いて一例として粒径100〜2500μm 程度の粉末イサダE3を得る(ステップS52)。
【0027】
上述のようにして得られた粉末イサダE3には、香ばしい香り(エビの香り)があり、また強い抗酸化力などの健康増進に有用な成分であるアスタキサンチンが多く含まれていることが確認されており、この粉末イサダE3を機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできる。例えば、パスタ、スープ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお上述のような粉砕を行うことなく、前記凍結乾燥が行われた乾燥イサダE2を食材としてもよい。
【0028】
〔液体成分を原料とした食材〕
(8)液体成分調製
次に前記液体成分を原料とした食材の製造に移るものであり、まず分離液Lに賦形剤の一例としてシクロデキストリン水飴を5〜50重量%添加して成分調製を行い、分離調製液L1を得る(ステップS60)。
なおここで前記アスタキサンチンや他の有用成分を添加してもよい。
【0029】
(9)噴霧乾燥
次いで前記分離調製液L1を、一例として噴霧乾燥機を用いて乾燥して粒径10〜150μm 程度の成分粉末Pを得る(ステップS61)。
このようにして得られた成分粉末Pには香ばしい香り(エビの香り)があり、この成分粉末Pを機能性の高い食品添加物として、各種食品に利用することできる。
例えば、パスタ、お好み焼き、たこ焼き、チャーハン、炊き込みご飯等の味付け、風味付けに使用することができる。
なお前記分離液Lをそのまま乾燥することにより、成分粉末Pを得るようにしてもよい。
【0030】
〔他の実施例〕
以上の実施例では、魚介類としてイサダを用いたが、本発明の適用対象として、一例として以下に示すような他の魚介類を採用することも可能である。
まず、東北地方沿岸で4月頃から水揚げされるコウナゴを用いることも可能であり、この場合、コウナゴの漁期はイサダ漁が終わった直後であるため、製造施設の稼働率を高めることができる。
同様に、魚介類としてシラスを用いることもできる。
【0031】
またサクラエビを用いた場合には、従来、風味を増すため行われていた天日干しの必要がなくなるため、干しサクラエビを粉砕したものと同様の製品を工場生産することが可能になるとともに、製造時間を大幅に削減することができる。